JP3733450B2 - フィルター用シート素材、およびそれを使った巻取状フィルター - Google Patents
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Description
【発明の目的】
この発明は、流体中の不純物を濾過するためのフィルターに関するものであり、特に食用油を始めとする各種液体用のものに使用してその有効性が顕著に期待できる新規な構造からなるフィルター用シート素材、およびそれを使った巻取状フィルターを提供しようとするものである。
【0002】
【従来の技術】
社会基盤の整備が見過ごされたまま、急激且つ飛躍的な経済復興だけが求め続けられてきた反動等から、社会構造の様々な部分に歪みを生じ、その精算、是正という困難な課題を抱える時代に突入している。それら課題の一つである、かっての大量生産、大量消費という産業構造の結果、招来してしまった資源の無駄使い、各種公害の拡散、浸透等という地球規模的な問題に対し、ようやく法規制が敷かれ始めると同時に、企業はもとより、国民一人一人が次第にその意識を強め、自発的な行動によって問題を解決しようとする動きも見られ始めるようになってきている。
【0003】
大気汚染を止めるために、自動車排気ガス規制を強めるだけではなく、クリーンエンジン搭載自動車の開発やその使用の税制上の優遇措置、焼却炉の構造改善や一般家庭における使用抑制、制限する等といった具体的な行動があり、また資源の有効活用のために、例えば、一般家庭では食品用トレイの返却、回収、企業ではそれらの再生、使用に加え、自然に優しい紙製トレイの開発、実用化等が進み、また、食品工場等食品関連企業からの生ゴミのコンポジット化、家庭からの生ゴミの堆肥化やそのための関連商品の実用化等々、各種分野でのリサイクル対策等は、それら動きのほんの一例に過ぎない。こうした流れの中で、食用油の取り扱いに関する反省も、最近各方面、特に大量の揚げ物を取り扱う食材工場やレストランを始め、テンプラやトンカツ、コロッケ等といった食材を取り扱う和洋食専門店、惣菜店で極めて強く、食味、食感に影響しない範囲での再利用と、廃油処理量の減少化とによって経営効率を高めたいとする願いと共に、不用意な廃油投棄による水質汚染の防止が望まれている。
【0004】
我が国における食用油の生産量は、年間約120万トンにも及び、健康食品ブームで揚げ物の摂取が盛んであることと、生活の効率化によるチルド食品に対する需要が増加していること等の理由により、今後益々食用油の消費は増加傾向になることが予想されるが、それらの分野で使用される食用油は、専ら利用者であるユーザーの管理下に委ねられたままとなり、食用油としての機能が低下してしまうと、食材の食味、食感に大きく影響してしまうことから、有効且つ経済的な再生手段を持たない現状下では、最終的に廃油として有料の廃棄処分に回さざるを得ず、新食用油の補充に加え、廃油処理についてまでも経済的な負担を強いられてしまっているのが実情である。
【0005】
食用油の油脂分の劣化は、フライヤーによる加熱使用によって過酸化の傾向が進行すると同時に、食材片の混入による揚げカスの炭化でその過酸化傾向がより助長されてしまうことと、食材からの水分が油脂内に混入することによる酸化傾向の促進とが影響するものと考えられることから、それらを極力押さえるようにした使用を心掛ける同時に、使用油種の混合比率の適格な設定や、調理品数量に応じた油中成分の変化や香味、色沢、濁り等をこまめに感知し、その都度適量を補充したり、全量を浄化するといった適格な管理をする必要があり、したがって、素材の食味特性を最大に引き出し、食用油の香と食感とを最良に維持しようとする専門店や専門工場では、新しい食用油による所定量の揚げ物調理を繰り返し、酸価が2.5〜3を越える3回程度の使用で、その全量を廃油として廃棄処分に回してしまうという極めて贅沢な取り扱いを断行するしかなかったり、あるいは経済性と資源の有効利用とを優先しようとすれば、使用の度毎に綿布や金網等を通して揚げカスだけを除去する等して、できるだけ酸化傾向を押さえるために気配りした使用を心掛け、使用回数を1回でも多くできるよう努めたり、既に提供されているかなり高額な浄化装置に掛けて酸価が2以下に戻るよう再生した後、更に1,2回追加使用するようしているところ等も見受けられる。
【0006】
こうした状況に対処するため、これまでに提案されている食用油の浄化装置あるいはそれに関連する技術としては、例えば特開平8−107830号公報に開示された発明「使用済み高温油清浄化装置」や、それに使用する特開平9−70505号公報の発明「フィルターケースおよびフィルター」、あるいは特開平9−220415号公報に見られる発明「フィルタ」等が散見され、それらは、主として従前からの綿布や金網等では漉し切れない使用済み食用油中の細かい揚げカス等の残留物を除去することを狙いとし、幾層にも重ね巻きしたロール状フィルターの一方の木口側から他方の木口側に向けて廃油を強制圧送するようにし、その過程で油中の残留物を漉し取るようにしたもので、原理的には、従前からの自動車エンジンオイル用エレメントと何等変わらず、辛うじて活性白土や活性炭等の吸着材を漉き込んだものでは、それらを脱色、脱臭するようにして、褐変した油の色を幾分元のもに近付けるようにしたり、揚げ物の匂いをできるだけ取り去ることができるようにしただけのものであり、また、アルカリ性物質を使った脱酸法によって酸化の進んだ油脂分の酸価を下げるようにしたものでは、装置自体が複雑で取り扱いが難しい上、高価な物が多いため、個別購入に不向きで、それら特別の浄化装置を所有する業者の巡回サービスに依存し、かなり高額な処理料を支払っての浄化、再使用ということになってしまう。
【0007】
この発明は、以上のような状況に鑑み、特に食用油としての性状回復にも繋がり、少しでも長く貴重な食用油の継続使用が可能になり、ユーザーの経済的負担を軽減すると共に、資源の有効利用と公害対策にも繋がる上、健康食品としての食用油の摂取にも利することになるようにした使用済み油の浄化方法について、逸早く開発、研究に着手し、幾多の試行錯誤と試作実験とを積み重ねてきたところ、ここにきて、遂に、使用済みの食用油はもとよりのこと、使用済みのエンジンオイルや切削用機械オイル、肉、水産物等といった油脂分を含む加工食料品の煮汁、あるいは異臭を含んだガスや空気といった各種流体の浄化に有効性の認められる新規な構造のフィルター用シート素材を完成、その実用化の目途が得られたものであり、以下では、その構成の詳細を示していくことにする。
【0008】
【発明の構成】
この発明に包含されるフィルター用シート素材は、基本的に次のとおりの構成を要旨としている。
即ち、繊維長0.1〜25mmのセルロース繊維を抄紙して密度0.1〜0.5g/cm3としてなるシート体中に、CMC等の紙力増強材を使い、粒度5〜50μmのトルマリン粉末を1〜30重量%までと,粒度20〜30μmを中心とした活性白土を、前記トルマリン粉末との総量で30重量%までの範囲を越えない割合とで混入、定着すると共に、クレープ率6〜40%の凹凸加工を施してなるものとしたフィルター用シート素材である。
【0009】
この基本的な構成からなるフィルター用シート素材には、繊維長0.1〜25mmのセルロース繊維を抄紙して密度0.1〜0.5g/cm3としてなるシート体中に、CMC等の紙力増強材を使い、粒度5〜50μmのトルマリン粉末を1〜30重量%までと,粒度20〜30μmを中心とした活性白土および/または活性炭等の機能性夾雑物を、前記トルマリン粉末との総量で30重量%までの範囲を越えない割合とで混入、定着すると共に、クレープ率6〜40%の凹凸加工を施してなる構成のフィルター用シート素材が包含される。
【0010】
そして、望ましい構成のものとして示せば、繊維長0.1〜25mmのセルロース繊維を抄紙して密度0.15〜0.3g/cm3としてなるシート体中に、CMC等の紙力増強材を使い、粒度20〜40μmを中心としたトルマリン粉末を3〜5重量%までと,粒度20〜30μmを中心とした活性白土を、前記トルマリン粉末との総量で20重量%となるようにした割合とで混入、定着すると共に、クレープ率25〜30%の凹凸加工を施してなるものとし,100〜200℃の温熱域の使用済み食用油等使用済み油再生用に使用するものとしたフィルター用シート素材となるる。
【0011】
セルロース繊維としては、木材パルプが最も望ましく、通常のティッシュペイパーや生理用品用紙等といった各種繊維長のセルロース繊維が混在してポーラスなシート状構造となる抄紙等と同様に、抄紙機による製紙方法で製造可能であり、フィルターの用途に応じて有効となるポーラスなシート状構造が実現されるよう、適宜範囲の繊維長(それが使用済み食用油再生用のフィルター用シート素材とする場合には繊維長0.1〜25mm程度)のセルロース繊維から、密度で0.1〜0.5g/cm3(10〜150g/m2)程度、特に食用油のフィルター用としては、0.15〜0.3g/cm3(13〜35g/m2)程度となるシート状構造のものに形成するようにし、その機械的強度を補強したり、木材パルプ使用量の調節を必要とするとき等には、それらの目的に応じた割合で合成繊維を混入、製造することができる。
【0012】
トルマリン粉末は、最近その特性から注目されてきている、(Na,Ca)(Al,Fe,Li,Mg)3Al6(BO3 )3Si6O18(OH)4のように複雑な化学組成を有する環状珪酸塩鉱物「電気石」を粉末化したものであって、用途によっては0.5〜150μm程度の範囲の粒度からなるものの使用も可能になるが、抄紙したときの定着率や裁断機への影響、鉱物特性としての作用等を考慮して5〜50μm程度の範囲の粒度のものを使用すべきであり、特に使用済み食用油の浄化用としては、油中への離脱、混入を極力防止し、期待する作用効果を得るために、粒度20〜30μm程度を中心としたトルマリン粉末を使用するのが最も望ましい。
【0013】
セルロース繊維に対するトルマリン粉末の混入、定着率は、その用途によっては最大70〜80重量%程度の範囲までが実質的に可能といえるが、抄紙機による従来方法と略同様にした製造、裁断加工の可能性、混入・定着率との兼ね合い、フィルター効果が得られる程度とトルマリン価格との兼ね合いからくる販売価格帯の問題等といった実用価値を考慮すると、略30重量%程度の範囲のものに止めておくのが望ましく、特に使用済み食用油用のものとしては、最小で3〜5重量%前後で十分トルマリン効果が得られことを確認済みであり、したがって、特に使用済み食用油用フィルターとするフィルター用シート素材としては、最大でも略10重量%程度までのものに止めるようにし、その代わりに、他の浄化機能を果たす目的で、既に公知となっている活性白土を単独で、あるいは活性白土と活性炭その他機能性夾雑物とを適宜割合で組み合わせ、トルマリン粉末を含む総量で略30重量%程度のものに落ち着くようにして併用、混入するようにすることも可能になり、それが使用済み食用油用フィルターとするためのフィルター用シート素材の場合には、トルマリン粉末:活性白土、トルマリン粉末:活性白土および/または活性炭等の機能性夾雑物の組み合わせ割合が、略1:(20〜30)程度となるよう規制した割合のものとする。
【0014】
また、セルロース繊維へのトルマリン粉末および/または活性炭等の機能性夾雑物の定着手段としては、従前から採用されている公知の樹脂結合剤の混入によるものとしたり、抄紙過程の濾過残としてセルロース繊維間に残留、定着させるようにした手段によるものとすることもできるが、定着率を安定させるためには、カチオンのトルマリン粉末に対し、アニオンのCMCやポリアミドエピクル、ヒドリン等といった紙力増強剤を0.1〜2重量%程度となるような割合で混入、使用するようにして抄紙する手段によるものとするのが極めて有効である。
【0015】
【関連する発明】
上記のとおりの構成を要旨とするこの発明のフィルター用シート素材に関連し、この発明には、それらフィルター用シート素材を使って形成した巻取状フィルターが包含されている。
即ち、少なくともトルマリン粉末が1〜30重量%程度までの割合で均質に混入、定着されているシート体に、クレープ率6〜40%程度の凹凸加工を施してなるものとした所定幅のフィルター用シート素材が、所定長さの心材外側面に捲回され、巻取状フィルターとするに際し、当該巻取状フィルターの一端側木口から150℃前後の温度の使用済み食用油を略1kg/cm2程度で圧送したときに、他端側木口から毎分略35〜40cc/cm2 前後の流出量となって通過し得る積層密度の重巻き構造となるようにして捲回、形成されてなるものとした構成を要旨とする、この発明のフィルター用シート素材を使った巻取状フィルターである。
【0016】
巻取状フィルターの一端側木口側から圧送され、同他端側木口から流れ出すときの流出量は、浄化対象となる流体の粘性に大きく左右されるため、150℃前後の温度の使用済み食用油を略1kg/cm2程度で圧送(但し、圧送開始直後では、全体に浸透するまでの抵抗があることから、その段階の圧送段階は条件から除かれ、その後の安定した段階で圧送)したときの、他端側木口から流出量が毎分略35〜40cc/cm2前後となるようにした積層密度を目安とするものである。
【0017】
なお、この発明の巻取状フィルターは、心材として、紙製、木製、金属製、プラスチック製等耐圧性、耐熱性のある適宜素材の棒体、管体によるものとすることができ、しかもその断面形も、円形の外、楕円形、多角形、星型等、特に制限を受けるものではなく、浄化対象物やその浄化目的等に応じて適宜選択、採用することができる。
以下、使用済み食用油の浄化に有効な巻取状フィルターの代表的な一具体例を取り上げ、この発明に包含されるフィルター用シート素材、およびそれを使用した巻取状フィルターの構成がより一層明確に把握できるようにする。
【0018】
【実施例】
この発明のフィルター用シート素材、特に使用済み食用油の浄化に使用するフィルター用シート素材は、繊維長が0.1〜25mm程度の範囲にある木材パルプを水に分散状としたパルプ混入液に、約1重量%程度のCMC(紙力増強剤:アニオン)を混入すると共に、20〜30μmの範囲の粒度のものが80%以上の粒度分布に調整したトルマリン粉末(カチオン)が、仕上がりシート素材総重量において4〜5重量%程度、活性白土(水沢化学工業株式会社製「ガレオンアースV2 」)が略15重量%程度の、合わせて約20重量%程度を占める割合となるよう調整して投入され、全体を十分に撹拌して均質な混ざり具合となるようにすることによって混合液に形成した上、これら混合液を大量の水で希釈した状態にし、従前からの抄紙機をそのまま使い、ティッシュペーパー用原紙等ポーラス構造で巾広のシート状原紙を製造する工程に略準じた製法により、厚さ0.25〜0.35mm程度の長尺のシート素材用原紙として巻き取り、作リ上げられる。
【0019】
巻取状とした当該シート素材用原紙1は、改めて長さ約45〜50m程度毎に、直径3.8cmの紙管心材2の外周に、その巻き厚が35mm前後に納まる積層構造となるように規制されて巻き取られた後、紙管心材2の軸心方向の長さで160mm単位となるように裁断され、直径約108mm、長さ160mmの円筒状とした、図1の斜視図に示すとおりの構造のこの発明の巻取状フィルター3に形成するものである。
【0020】
【作用】
この巻取状フィルター3は、図2の浄化装置の要部を示す断面図のように、上端を出入れ密閉蓋41とし、内径を略110mm程度にした圧力容器4の中に密閉状に装填、固定された上、該圧力容器4上方側面から圧送されてくる、予め金網等で予備濾過をしてある150〜180℃程度の使用済み食用油を、当該巻取状フィルター3の下端木口側から毎分略35〜40cc/cm2前後となる流出割合で、シート素材の積層間隙およびシート素材の繊維間を上から下に向けて通過させ、その過程で、使用済み食用油に混入する細かい揚げカス等の不純物を濾過すると同時に、活性白土の作用で脱色と脱臭とを進行させる.
【0021】
更に、この濾過過程で、使用済み食用油が、上記活性白土と共に所定の割合で略均質な状態で抄き込んであるトルマリン粉末に接触し、その油の温度で略150℃前後の相当高い温度に加熱されることになり、加温された状態のトルマリン固有の鉱物特性が接触中の油に作用することになる。
即ち、加温状態のトルマリンが発する遠赤外線は、その有効光線としての電磁波が、不飽和脂肪酸の油分に含まれる二重結合を切断し、結合部分に酸素結合が行われなくなるようにして、過酸化脂質の生成がされ難くなるようにすることから、食用油に適した性状を判断する遊離脂肪酸類による酸の生成をみる酸価AV(酸アルカリ滴定法)は下がり、油脂の改善が成されることになる。このことは、不飽和二重結合のOHによる付加反応と、炭素部位に共有結合している水素部位からの水素引き抜きが進行することに起因しているものと考えられる。
【0022】
また、このトルマリンの電磁波作用は、劣化程度の指標とするチオバルビツール法(TBA)や、油脂を直接検査する過酸化物価(POV)等での測定結果によってもその有効性が確認される。
図3の実験データは、油脂劣化の進んだサラダオイルとゴマ油とを、恒温器で30℃に維持したまま、その中にトルマリン粉末を直接投入し、5日間経過した後の値を示したものであり、酸価AVでは、ゴマ油が色度判定でやや増加傾向となったものの、油脂劣化に係るTBAテストでは、カルボニル化合物等有害成分が殆ど痕跡程度検出されただけに止まり、また、油脂にヨウ化カリウムを加える時に遊離されるヨウ素を、試料1kgに対するミリ当量数(meq/kg)で評価するPOVテストでも、両検体とも健全で純度の良いものとして結果が出ており、加温状態のトルマリンにより、明らかに油脂の改善が成されることが立証された。
【0023】
しかも、このように油脂としての性状が改善された濾過後の食用油は、図4〜7の顕微鏡写真(何れも、オリンパス社製の倒立顕微鏡IMT−2型、470倍。山形県工業技術センター作成の食品分析成績書に添付された写真)に見られるように、少なくとも140μm程度の揚げカスその他の不純物を含んだままの使用済食用油(図4)を、120メッシュの金網でプレフィルターに掛け、未だ50μm程度の揚げカスを残すプレフィルター済みの使用済食用油(図5)とした上、当該使用済食用油の半分は、15μm以下の粒度に規制したトルマリン粉末を抄き込んだこの発明のフィルター用シート素材を使って形成した巻取状フィルターで濾過して濾過済み食用油(図6、検体A)とし、残る半分を20〜40μmの範囲の粒度に規制したトルマリン粉末を抄き込んでなるこの発明のフィルター用シート素材を使って形成した巻取状フィルターで濾過して濾過済み食用油(図7、検体B)とした結果、濾過後でも、検体Aの食用油中には、プレフィルター済みの使用済食用油(図5)には検出されていなかった5〜6μm以下の多数の混入物質が写し出されており、他方検体Bの方にはそれが認められないという結果が得られている。
【0024】
この実験データから、検体Aを濾過した15μm以下の粒度のトルマリン粉末を抄き込んだフィルター用シート素材によるものでは、その濾過過程でトルマリン微粉末がセルロース繊維から遊離してしまうことが判明し、したがって、少なくとも食用油用の巻取状フィルターに使用するためのこの発明のフィルター用シート素材としては、セルロース繊維に混入、定着するトルマリン粉末の粒度を略20μm以上のものとする必要があり、なお且つ、セルロース繊維への混入、定着具合や、混入総量と接触総面積との兼ね合い、裁断加工性、均質混入具合等といった実用面での判断から、その最大値も略40μm程度のものに止めるのが最も望ましいものとの結論を得ている。
【0025】
【効果】
以上のとおり、この発明のフィルター用シート素材、およびそれを使った巻取状フィルターは、セルロース繊維に所定粒度のトルマリン粉末を混入、定着してなる構成シート素材からなるか、それを使用したものであって、従前までの単にセルロース繊維に活性白土を混入あるいは塗布しただけのもののように、脱色、脱臭しながら食用油等流体内の不純物を漉し取り、劣化して変色した色を幾分回復させると共に、流体中に残存してしまっている揚げ物等の匂いを極力消し去ってしまおうとするだけのものと違い、液体の劣化、特に使用済みの食用油のような過酸化傾向にある流体に対し、トルマリンの鉱物特性が作用して流体自体を活性化する効果も同時に得られることとなり、その浄化効果が極めて秀れたものになるという大きな特徴を有している。
【0026】
また、劣化した液体の従前からの活性化手段として知られるアルカリ性物質を使った脱酸法によるものに比較しても、その装置自体は、上記した従前からのフィルターによる装置と殆ど同程度の構成からなる簡便なもので足り、極めてコンパクトで比較的安価なものとなり、しかも、取り扱い操作性も非常に簡単で、従前までの専門家かそれに近い知識を有する者しか取り扱えないといった不都合もなく、したがって、使用済み食用油等浄化を必要とする流体を抱え、それまで専門家の巡回処理に頼るか、有料の廃棄処分に回さざるを得なかったところでも、積極的に取り入れて自らが処理した上、活性化された流体として再利用するようにしたり、公害に繋がることがない流体としての処理を可能にすることになるという有利な特徴も得られ、大量の揚げ物を取り扱う食材工場やレストランを始め、テンプラやトンカツ、コロッケ等といった食材を取り扱う和洋食専門店、惣菜店は勿論のこと、各種マニシングマシーンを操り大量の切削オイルを消費する金属加工業者、その他の機械オイルを使用する機械工場、自動車整備工場等にとって、それら流体の購入や処理に要する経費を大幅に削減可能にして経営効率を改善すると共に、公害対策上にも大いに役立つものとなる。
【0027】
特に、実施例に取り上げたこの発明を代表する構成のフィルター用シート素材、およびそれを使った巻取状フィルターは、特定された構成によってその用途となる使用済み食用油の浄化、再生に極めて有効であることが確認されたものであり、貴重な資源の一つでもある食用油の有効利用を促し、それだけ公害要因とともなり兼ねない食用油の消費絶対量を減少させることにも繋がることから、社会的に見ても、この発明によってもたらされる効果は甚大なものとなる。
【0028】
叙述の如く、この発明のフィルター用シート素材、およびそれを使った巻取状フィルターは、その新規な構成によって所期の目的を遍く達成可能とするものであり、浄化、再生を必要とする各種流体、特に我が国の食材として欠かすことのできない揚げ物類のための調理資材として重要な食用油の有効利用のために大いに威力を発揮することとなって、それら業種に係わる人々からは特に高い評価が得られると共に、食用油以外での浄化、再生を必要とする流体を抱える分野の人々からも十分な評価がなされ、しかも、その結果として、公害源ともなり兼ねない物資を減少させることに繋がって、社会的貢献度の面でも高い評価を受け、今後各方面に広く採用、普及していくものになると予想される。
【図面の簡単な説明】
図面は、この発明を代表する実施例を説明すると共に、作用効果に係わるものである。
【図1】 このフィルター用シート素材を使った巻取状フィルターの全体斜視図である。
【図2】 同巻取状フィルターの使用状態における要部縦断面図である。
【図3】 同巻取状フィルターによる濾過液の改善度合いを示す実験データである。
【図4】 470倍倒立顕微鏡で写し出された使用済み食用油の顕微鏡写真である。
【図5】 同、使用済み食用油をプレフィルターに掛けた後の状態を写し出した顕微鏡写真である。
【図6】 プレフィルターに掛けた使用済み食用油を、粒度15μm以下のトルマリン粉末を抄き込んだフィルター用シート素材を使って形成した巻取状フィルターで濾過した後の状態を写し出した顕微鏡写真である。
【図7】 プレフィルターに掛けた使用済み食用油を、粒度20〜40μm以下のトルマリン粉末を抄き込んだフィルター用シート素材を使って形成した巻取状フィルターで濾過した後の状態を写し出した顕微鏡写真である。
【符号の説明】
1 シート素材用原紙
2 紙管心材
3 巻取状フィルター
4 圧力容器
41 同 出入れ密閉蓋
Claims (6)
- 繊維長0.1〜25mmのセルロース繊維を抄紙して密度0.1〜0.5g/cm3としてなるシート体中に、CMC等の紙力増強材を使い、粒度5〜50μmのトルマリン粉末を1〜30重量%までと,粒度20〜30μmを中心とした活性白土を、前記トルマリン粉末との総量で30重量%までの範囲を越えない割合とで混入、定着すると共に、クレープ率6〜40%の凹凸加工を施してなるものとしたことを特徴とするフィルター用シート素材。
- 繊維長0.1〜25mmのセルロース繊維を抄紙して密度0.1〜0.5g/cm3としてなるシート体中に、CMC等の紙力増強材を使い、粒度5〜50μmのトルマリン粉末を1〜30重量%までと,粒度20〜30μmを中心とした活性白土および/または活性炭等の機能性夾雑物を、前記トルマリン粉末との総量で30重量%までの範囲を越えない割合とで混入、定着すると共に、クレープ率6〜40%の凹凸加工を施してなるものとしたことを特徴とするフィルター用シート素材。
- 繊維長0.1〜25mmのセルロース繊維を抄紙して密度0.15〜0.3g/cm3としてなるシート体中に、CMC等の紙力増強材を使い、粒度20〜40μmを中心としたトルマリン粉末を3〜5重量%までと,粒度20〜40μmを中心とした活性白土を、前記トルマリン粉末との総量で20重量%となるようにした割合とで混入、定着すると共に、クレープ率25〜30%の凹凸加工を施してなるものとし,100〜200℃の温熱域の使用済み食用油等使用済み油再生用に使用するものとしたことを特徴とするフィルター用シート素材。
- セルロース繊維が、木材パルプを主体とし、適宜割合で合成繊維を混入してなるものとした、請求項1ないし4何れか記載のフィルター用シート素材。
- トルマリン粉末対活性白土、トルマリン粉末対活性白土および/または活性炭等の機能性夾雑物の組み合わせ割合が、1:(20〜30)となるよう規制した割合でシート体中に混入、定着してなるものとした、請求項4記載の主として使用済み食用油再生用に使用するものとしたフィルター用シート素材。
- 少なくともトルマリン粉末が1〜30重量%までの割合で均質に混入、定着されているシート体に、クレープ率6〜40%の凹凸加工を施してなるものとした所定幅のフィルター用シート素材が、所定長さの心材外側面に捲回され、円筒状フィルターとするに際し、当該円筒状フィルター一端側木口側から150℃前後の温度の使用済み食用油を1kg/cm2で圧送したときに、他端側木口から毎分35〜40cc/cm2の流出量となって通過し得る積層密度の重巻き構造となるようにして捲回、形成されてなるものとしたことを特徴とする、請求項1〜5何れか記載のフィルター用シート素材を使った巻取状フィルター。
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