JP3733376B2 - ペプチド並びにそれを含有するプロリルエンドペプチダーゼ阻害剤、機能性食品及び動物用飼料 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は新規ペプチド並びにそれを成分として含有するプロリルエンドペプチダーゼ阻害剤、機能性食品及び動物用飼料に関する。より詳細には、哺乳動物の脳その他の生体内に存在し、プロリルエンドペプチダーゼ阻害活性を有するペプチド、並びにそれを含有するプロリルエンドペプチダーゼ阻害剤、機能性食品及び動物用飼料に関する。
【0002】
【従来の技術】
生体内の生理活性ペプチドは、多くの場合プロリンを含有している。分子内にイミノ基を有するプロリンは、ペプチド形成の際に他のアミノ酸と酸イミド結合を形成する。ペプチド鎖は一般にプロリンの存在部位で折れ曲がり、プロリンが多数つながった場合には特異なヘリックス構造をとることなどから、ペプチドのプロリン周辺やプロリンを多く含むタンパク質(プロリン・リッチ・タンパク質)は通常のプロテア−ゼによる分解を受けることが少ない。そのため、プロリンは多くの生理活性ペプチドに含有されており、また、プロリン・リッチ・タンパク質は、植物の細胞壁や動物の細胞間に多量に存在して生体組織の構造維持などに重要な機能を果たしている。特に哺乳動物においては、組織の構造維持や細胞接着に関与するコラーゲンが古くから知られていたが、最近になって、神経系において神経伝達物質の放出を制御するシナプシン(Science, Vol.259, p780, 1993)、ヒト転写促進因子CTF1の酸性ドメイン(J. Biol. Chem., Vol.268, p20866, 1993)、マウスの中枢神経系の形成時に発現が特異的に制御されるNDPP-1(Biochim. Biophys. Acta, Vol.1132, p240, 1992)など、重要な機能を持つプロリン・リッチ・タンパク質やプロリン・リッチ・ペプチドの発見が相次いでなされている。
【0003】
一方、プロリルエンドペプチダーゼ(EC 3.4.21.26、以下PEPという)はペプチド鎖中のプロリン残基のカルボキシル基側のペプチド結合を特異的に認識し、切断するペプチダーゼであり、記憶の固定場所とされている脳の海馬部分に高い酵素活性が観られるほか、動物臓器に広く分布することが知られている(Science, Vol.173, p827, 1971、Molecular & Cellular Biochemistry, Vol.30, p111, 1980、日本農芸化学会誌, Vol.58, p1147, 1984)。また、同様の酵素が Flavobacterium 属細菌からも発見されている(J. Biol. Chem., Vol.255, p4786, 1980)。本酵素は神経伝達物質とされているサブスタンスP、TRH、ニューロテンシンやステップスルー型受動的回避学習法で記憶保持活性があるとされている脳内バソプレシン(Science, Vol.221, p1310, 1983、Nature, Vol.308, p276, 1984)に作用し、不活性化することが知られており、本酵素は脳機能の調節において重要な役割を果たしていることが示唆されている。実際に、Z-Gly-Pro-CH2Cl, Z-Pro-prolinal, Z-Val-prolinal, Boc-Pro-prolinal などの合成PEP阻害剤が抗痴呆作用を示すことが動物試験で確認され(日本農芸化学会誌, Vol.58, p1147, 1984、化学と生物, Vol.25, p554, 1987)、その後、微生物や食品成分から由来するPEP阻害剤も報告されている(1990年薬学会年会講演要旨集 p.35、Agric. Biol. Chem., Vol.55, p825, 1991、J. Antibiotics, Vol.44, p956, 1991、 特開平5-331072号公報)。
一方、動物由来の内因性PEP阻害物質として、豚膵臓由来の分子量6500の物質及びラット脳由来の分子量7000の物質が報告されている(J. Pharm. Dyn., Vol.5, p734, 1982、Chem. Pharm. Bull, Vol.33, p2445, 1985)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、合成PEP阻害剤を用いた痴呆症疾患治療が研究されているが、新規有用な痴呆症治療薬ひいてはPEP阻害剤は常に求められている。また、医薬品としてのみならず、日常の摂取を通して痴呆症等の症状の予防等を図る機能性食品も求められる昨今である。このような目的で使用するPEP阻害剤としては、哺乳動物が自ら作り出す内因性の阻害物質が副作用の軽減などの点から最も望ましいのであるが、これまでに報告されているPEP阻害剤の殆どは化学合成又は植物などから抽出したものであった。内因性の阻害物質としては前述の分子量6500の物質などが知られているが、未だ構造が明確でなく、分子量が大きいことから、体内への吸収性、安定性に問題があると考えられる。
また、前述のように哺乳動物からのプロリンを多量に含むタンパク質やペプチドの発見が相次いでいるが、それらの機能はまだ十分に解明されておらず、かかる物質の生体内機能、特に脳に対する機能の研究を目的とする研究用試薬として有用なペプチドや、プロリン・リッチ・タンパク質やプロリン・リッチ・ペプチドの機能に関連した疾患の改善を目的とする薬剤が求められている。
本発明はかかる問題を解消するもので、本発明はPEP阻害作用を有し、研究用試薬としてのみならず医薬品や機能性食品などとしても利用可能な内因性PEP阻害ペプチドを提供すると共に当該ペプチドを含有するPEP阻害剤、機能性食品及び動物用飼料を提供することも目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、プロリンを含むペプチドを特異的に加水分解するPEP(Mol. Cell. Biochem., Vol.30, p111, 1980)やオリゴプロリン配列を加水分解するアミノペプチダーゼP様酵素が脳内に多く存在することに着目し、脳にはPEPやアミノペプチダーゼPの基質又は阻害物質になり得る未知のペプチドが存在するものと考えた。そこで、牛脳を熱水抽出した液から、PEPの基質或は阻害物質となるペプチドを探索し、精製し、その構造を解析し、更に検討を重ねたところ、PEP阻害活性を有する8種類のペプチドを見出し、本発明を完成した。
【0006】
即ち、本発明のペプチドは、L体のアミノ酸からなり、下記のアミノ酸配列の何れかで示されるペプチド及びその塩である。
▲1▼ Met-Pro-Pro-Pro-Leu-Pro-Ala-Arg-Val-Asp-Phe-Ser-Leu-Ala-Gly-Ala-Leu-Asn
▲2▼ Gly-Val-Gln-Val-Glu-Thr-Ile-Ser-Pro-Gly-Asp-Gly-Arg-Thr-Phe-Pro-Lys
▲3▼ Gly-Val-Gln-Val-Glu-Thr-Ile-Ser-Pro-Gly-Asp-Gly-Arg
▲4▼ Glu-Pro-Pro-Pro-Pro-Glu-Pro-Pro-Pro-Ile
▲5▼ Met-Pro-Pro-Pro-Leu-Pro-Thr-Arg-Val-Asp-Phe-Ser-Leu-Ala-Gly-Ala-Leu-Asn
▲6▼ Met-Thr-Pro-Pro-Leu-Pro-Ala-Arg-Val-Asp-Phe-Ser-Leu-Ala-Gly-Ala-Leu-Asn
▲7▼ Met-Pro-Pro-Pro-Leu-Pro-Ala
▲8▼ Met-Pro-Pro-Pro-Leu-Pro
又、本発明のPEP阻害剤は、上記の▲1▼〜▲8▼のペプチド又はその塩の少なくとも1種を有効成分として含有することからなる。
更に、本発明の機能性食品及び動物用飼料は、上記の▲1▼〜▲8▼のペプチド又はその塩の少なくとも1種を含有することからなる。
【0007】
本発明のペプチドの塩としては、酸付加塩及び塩基付加塩が包含され、酸付加塩としては、製薬上許容される酸(無機酸及び有機酸)との塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、メタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩等が例示される。また、塩基付加塩としては、製薬上許容される塩基(無機塩基及び有機塩基)との塩、例えばナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩等の無機塩基との塩、塩基性アミノ酸(例えばアルギニン、リジン等)との塩などが例示される。
【0008】
本発明のペプチドは、牛等の哺乳動物の脳又は他の臓器・組織・体液などから単離することもできるが、通常、有機化学的な合成方法によりアミノ酸を段階的に導入する方法により合成することができる。他に、遺伝子工学的方法、加水分解酵素の逆反応を利用したペプチド合成法、又は天然タンパク質の酵素加水分解により製造することも可能である。
【0009】
本発明のペプチドは当該ペプチドを含有する生体成分から常法に準じて採取することができ、かかる方法としては、例えば、ウシ脳などのような当該ペプチドを含有する生体成分から熱水抽出を行い、得られた抽出液を、限外濾過膜、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー、逆相カラムによる高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などに付して精製することにより得ることができる。
【0010】
有機化学的な合成方法によりアミノ酸を段階的に導入する方法としては固相ペプチド合成又は液相ペプチド合成法が知られており、例えば泉屋信夫他著「ペプチド合成の基礎と実験」丸善発行などに詳細に記載されている。
液相ペプチド合成では、C末端に位置すべきアミノ酸のカルボキシル基をベンジル基(Bzl)、t-ブチル基(t-Bu)等で保護し、C末端から2番目に位置すべきアミノ酸のアミノ基をt-ブチルオキシカルボニル基(Boc)、ベンジルオキシカルボニル基(Z)等で保護し、これらをジメチルホルムアミド(DMF)等の適当な溶媒に溶解し、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)及び1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)の存在下4℃で18時間程度反応させる。ついで、生成物のアミノ保護基を常法(トリフルオロ酢酸などによる)により除去し、得られるジペプチドを第3のアミノ酸(これもアミノ基を保護してある)とともに上記と同様にして反応させる。更に、同様な手順を繰り返して順次必要なアミノ酸を結合させ、保護基の結合した状態の目的ペプチドを得る。なお、反応させるアミノ酸が側鎖官能基を有する場合にはペプチド合成反応に先だって保護する必要がある。例えば、Gluのω-カルボキシル基はベンジルエステル(OBzl)などにより、アルギニンのグアニジル基はトシル基(Tos)などにより保護する。最終反応の終了後、これらの保護基を接触還元やフッ化水素(HF)などにより除去し、目的とするペプチドを得ることができる。
【0011】
一方、固相ペプチド合成については、ペプチドシンセサイザー(例えば、アプライドバイオシステムズ社製430A型)を用いて行うことができる。この方法においては、目的とするペプチドのC末端アミノ酸が結合したフェニルアセトアミドメチル(PAM)樹脂、即ちアミノ酸-OCH2-PAMのN側にBoc基で保護したアミノ酸を自動制御により逐次結合させ、目的とするペプチドに保護基とPAM樹脂の結合した試料を得ることが出来る。次いで、この試料にアニソールなどのスカベンジャーを添加した後、HFを導入し-2℃、1時間反応させることにより目的ペプチドを遊離させることが出来る。遊離したペプチドは無水エーテルなどで洗浄後、酢酸を含む水で抽出、凍結乾燥後更に、高速液体クロマトグラフィーにより精製、減圧乾固することにより粉末として得ることが出来る。
【0012】
本発明のペプチドは遺伝子工学的方法によっても得ることができ、例えば、前記▲1▼〜▲8▼のアミノ酸配列をコードするDNA断片を合成し、このDNA断片を常法により適当な発現ベクターに組み込み、この発現ベクターで適当な宿主を形質転換し、得られた形質転換体を培養し、その培養物から単離・精製することにより、目的ペプチドを調製することができる。
なお、機能性食品動物用飼料に供することを目的として、本発明のペプチドを細菌及び/又は酵母を宿主として発現した場合には、培養物から本発明のペプチドを単離・精製して使用する以外に、細菌及び/又は酵母の死菌又はその粉末をそのまま使用してもよい。
【0013】
上記の方法で得られた本発明のペプチドは、必要に応じて、限外濾過膜、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)など慣用の手段に付して更に精製してもよい。
本発明のペプチドの塩は、常法に準じて、当該ペプチドに酸又は塩基を付加させることにより調製することができる。
【0014】
本発明のペプチドは、生体機能、特に脳機能の研究を目的とする研究用試薬として利用することができる。また、その機能が十分に解明されれば、生体、特に脳の疾患の治療・予防に利用できる。更に、本発明のペプチドはPEP阻害活性を有するから、PEPが関与する疾患、特にヒトの痴呆症(健忘症)を治療・予防するための医薬、機能性食品に利用でき、更にイヌ、ネコ、ウシなどの動物の痴呆症を治療・予防するための機能性動物用飼料として利用できる。
本発明のペプチドは、本来、動物の脳に存在するペプチド性阻害物質であることから安全性が高いと共に低分子量であるから吸収性などの問題も少ない。従って、本発明のぺプチドは、研究用試薬、代謝改善薬(例えば、痴呆症治療剤等)、機能性食品、動物用飼料などとして広く利用することができる。
【0015】
本発明のPEP阻害剤は、前記の▲1▼〜▲8▼のペプチド及びその塩の少なくとも1種を有効成分として含有することからなり、当該ペプチド単独又は通常少なくとも1つの製薬補助剤とともに一般的な医薬製剤の形態に調剤され、非経口的(即ち、静脈注射、直腸投与等)又は経口的に投与される。かかる医薬製剤としては各種の形態が治療目的に応じて選択でき、その代表的なものとして錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、坐剤、軟・硬カプセル剤、注射剤(液剤、懸濁剤等)、貼付剤、吸入剤などが挙げられる。これらの製剤は、通常、賦形剤、結合剤、保湿剤、崩壊剤、界面活性剤、吸着剤、滑沢剤などの担体を用いて、慣用の製剤化手段にて調製することができる。
製剤化に際して用いられる担体としては、例えば、錠剤の形態に成形する場合には、担体としてこの分野で従来公知のものを広く使用でき、例えば、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸等の賦形剤、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、セラック、メチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドンなどの結合剤、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン未、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン、乳糖などの崩壊剤、白糖、ステアリン、カカオバター、水素添加油などの崩壊抑制剤、第四級アンモニウム塩基、ラウリル硫酸ナトリウムなどの界面活性剤、グリセリン、デンプンなどの保湿剤、デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸などの吸着剤、精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ酸末、ポリエチレングリコールなどの滑沢剤などが例示できる。
更に、錠剤は必要に応じて通常の剤皮を施した錠剤、例えば、糖衣剤、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フイルムコーティング錠あるいは二重錠、多層錠とすることができる。
【0016】
丸剤の形態に成形するに際しては、担体としてこの分野で従来公知のものを広く使用でき、例えば、ブドウ糖、乳糖、デンプン、カカオ脂、硬化植物油、カオリン、タルクなどの賦形剤、アラビアゴム末、トラガント末、ゼラチン、エタノールなどの結合剤、ラミナラン、カンテンなどの崩壊剤などが例示できる。
注射剤として調製される場合には、液剤、乳剤および懸濁剤は殺菌され、かつ血液と等張であるのが好ましく、これら液剤、乳剤および懸濁剤の形態に成形するのに際しては、稀釈剤としてこの分野において慣用されているものをすべて使用でき、例えば、水、エチルアルコール、プロピレングリコール、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類などを挙げることができる。なお、この場合、等張性の溶液を調製するに充分な量の塩化ナトリウム、ブドウ糖あるいはグリセリンを医薬製剤中に含有せしめてもよく、また通常の緩衝剤(リン酸水素ナトリウム、クエン酸等)、溶解補助剤、無痛化剤などを、更に必要に応じて着色剤、保存剤などや他の医薬品を該製剤に含有せしめてもよい。注射剤は凍結乾燥製剤であってもよい。
【0017】
本発明の医薬製剤中に含有されるべき本ペプチド又はその塩の量は、特に限定されず広範囲に選択されるが、通常、全組成物中、5〜100%、特に10〜70%が適当である。
本発明の医薬製剤の投与方法は特に制限はなく、各種製剤形態、患者の年齢、性別その他の条件、疾患の程度などに応じた方法で投与される。例えば錠剤、丸剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤及びカプセル剤の場合には経口投与される。また注射剤の場合には単独であるいはブドウ糖、アミノ酸などの通常の補液と混合して静脈内投与され、さらには必要に応じて単独で筋肉内、皮内、皮下もしくは腹腔内投与される。本発明の医薬製剤の投与量は、用法、患者の年齢、性別その他の条件、疾患の程度などにより適宜選択されるが、有効成分として10〜300mg/kg体重/日程度が適当であり、該製剤は1日1回ないし数回に分けて投与することができる。
【0018】
本発明の機能性食品は、前記の▲1▼〜▲8▼のペプチド又はその塩を含有することからなり、そのまま、又は種々の栄養分を加えて、若しくは飲食品中に含有せしめて、痴呆症などの治療・予防を目的とする機能性食品(又は食品素材)として食される。例えば、上述した適当な助剤を添加した後、慣用の手段を用いて、食用に適した形態、例えば、顆粒状、粒状、錠剤、カプセル、ペースト等に成形して食用に供してもよく、また種々の食品(例えば、ハム、ソーセージ等の食肉加工食品、かまぼこ、ちくわ等の水産加工食品、バター、粉乳等の乳製品、パン、菓子など)に添加して使用されたり、水、果汁、牛乳、清涼飲料等の飲物に添加して使用してもよい。かかる機能性食品の形態における本発明ペプチドの摂取量は、年齢、体重、症状、疾患の程度、食品の形態等により、適宜選択・決定され、例えば、1日当り10〜300mg/kg体重程度とされる。
【0019】
本発明の動物用飼料は、前記の▲1▼〜▲8▼のペプチド又はその塩を含有することからなり、そのまま、又は種々の栄養分を加えて、若しくは飲食品中に含有せしめて、イヌ、ネコ、ウシなどの動物の痴呆症などの治療・予防を目的とする機能性飼料として給餌される。当該飼料は、対象とされる動物に応じて、常法に準じて調製することができ、例えば、イヌの場合には、固形状、半練り状、顆粒状などのペットフードやジャーキー状に調製される。また、飲用水用添加剤の形態としてもよい。動物用飼料の形態における本発明ペプチドの摂取量は、年齢、体重、症状、疾患の程度、飼料の形態等により、適宜選択・決定される。なお、本発明のペプチドは、動物用飼料として利用するほか、痴呆症などの治療・予防を目的とする動物用薬剤として利用することもできる。
【0020】
【発明の効果】
本発明によれば、PEP阻害活性を有するペプチドが提供され、当該阻害活性に基づき、脳機能の研究用試薬、PEP阻害剤、機能性食品などとして利用することができる。
また、本発明のPEP阻害剤、機能性食品及び動物用飼料は、上記のペプチドを有効成分とするもので、当該阻害剤、食品及び飼料によれば、PEPが関与する疾患、例えば痴呆症の治療・予防を図ることができる。特に、有効成分である本発明のペプチドは、内因性ペプチドであるので安全性が高く、また低分子物質であるので吸収性に優れるという特長を有する。
【0021】
【実施例】
以下、本発明を実施例、試験例及び調製例に基づいて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
実施例1
牛脳からの本発明ペプチドの分離・精製
凍結状態で破砕した牛脳 400gを80℃の熱水中に投入し、10分間加熱した後、ポリトロンを用いてホモジナイズした。7,000 xgで60分間、次いで27,000 xgで30分間の遠心分離を行い、沈澱を除去した後、分画分子量10,000の限外濾過膜PM-10(アミコン社)に付して、通過する低分子量の物質を回収した。この試料をセファデックスLH-20カラム(ファルマシア社、26 x 900mm)に負荷し、20%メタノールで溶出し、微生物PEPに対する阻害活性(測定法については試験例1に記述)を有するフラクション(即ち、204〜252mlのフラクション)を回収した。次いで、このフラクションを、DEAEトヨパール650Mカラム(16 x 650mm、東ソ−社製)に負荷した。そして、蒸留水で溶出される素通り画分(113〜115mlに溶出)と、0〜1Mのギ酸アンモニウムの直線濃度勾配により溶出される画分のうちの4種にPEP阻害活性が認められ、計5種の活性画分を回収した。
【0022】
上記のカラムからギ酸アンモニウムの直線濃度勾配により溶出された4種の活性画分は、それぞれ、μBondapak C18カラム(3.9 x 300mm、ウオーターズ社製)を用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で、0.1%トリフルオロ酢酸を含む0〜63%のアセトニトリルの直線濃度勾配溶出により分画した。この活性画分は更にイオン交換カラムShim-Pack PA-SP(島津製作所製)を用いたHPLCで0〜0.5Mの燐酸ナトリウム緩衝液(pH 6.5)の直線濃度勾配溶出により分画し、更にμBondasphere C18カラム(3.9 x 150mm、ウオーターズ社製)を用いたHPLC(0.1%トリフルオロ酢酸を含む0.7〜63%のアセトニトリルにより溶出)で分画し、3種の活性画分を得た(即ち、アセトニトリル濃度:26-34%程度で溶出される画分A、同20%程度で溶出される画分B、同17%程度で溶出される画分C)。得られた画分は、それぞれ、μBondasphere C18カラムによるHPLCを2回繰り返し、再精製した。回収できた3種のペプチドは、減圧乾固し最終標品とした。
【0023】
これらの阻害物質の構造は、アプライドバイオシステムズ社製プロテインシークエンサー477Aにより解析した。その結果、上記の画分A〜Cのペプチドの構造は、それぞれ下記のとおりであった。
Met-Pro-Pro-Pro-Leu-Pro-Ala-Arg-Val-Asp-Phe-Ser-Leu-Ala-Gly-Ala-Leu-Asn(配列番号1)
Gly-Val-Gln-Val-Glu-Thr-Ile-Ser-Pro-Gly-Asp-Gly-Arg-Thr-Phe-Pro-Lys(配列番号2)
Gly-Val-Gln-Val-Glu-Thr-Ile-Ser-Pro-Gly-Asp-Gly-Arg(配列番号3)
【0024】
また、前記のDEAE-トヨパール650Mカラムから蒸留水で溶出される素通り画分について、この画分を更に、μBondapak C18カラム(3.9 x 300mm、ウオーターズ社製)を用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で、0.1%トリフルオロ酢酸を含む0〜63%のアセトニトリルの直線濃度勾配溶出により分画した。この活性画分は更にイオン交換カラムShim-Pack PA-SP(島津製作所製)を用いたHPLCで0〜0.5Mの燐酸ナトリウム緩衝液(pH 6.5)の直線濃度勾配溶出により分画し、更にμBondasphere C18カラム(3.9 x 150mm、ウオーターズ社製)を用いたHPLCを2回繰り返し(1回目は0.1%トリフルオロ酢酸を含む0.7〜63%のアセトニトリルの濃度勾配により溶出、2回目は0.1%トリフルオロ酢酸を含む17.5〜22%のアセトニトリルの濃度勾配により溶出)、精製した。回収したペプチドは減圧乾固し最終標品とした。
本ペプチドの構造は、アプライドバイオシステムズ社製プロテインシークエンサー477Aにより解析した。その結果、下記に示すペプチドであることが明らかになった。
Glu-Pro-Pro-Pro-Pro-Glu-Pro-Pro-Pro-Ile(配列番号4)
【0025】
実施例2
配列番号1( Met-Pro-Pro-Pro-Leu-Pro-Ala-Arg-Val-Asp-Phe-Ser-Leu-Ala-Gly- Ala-Leu-Asn )で示されるペプチドの化学合成
アプライド・バイオシステムズ社製ペプチド合成装置(430A型)に、0.5ミリモルのBoc-Asn-O-CH2-PAM樹脂及び各2ミリモルのBoc-Met(1本)、Boc-Pro(4本)、Boc-Leu(3本)、Boc-Ala(3本)、Boc-Arg(Tos)(1本)、Boc-Val(1本)、Boc-Asp(OBzl)(1本)、Boc-Phe(1本)、Boc-Ser(Bzl)(1本)、Boc-Gly(1本)カートリッジ装填し、DCCによる無水対称法によりMet-Pro-Pro-Pro-Leu-Pro-Ala-Arg(Tos)-Val-Asp(OBzl)-Phe-Ser(Bzl)-Leu-Ala-Gly-Ala-Leu-Asn-O-CH2-PAMを合成した。なお、Bocはt-ブチルオキシカルボニル基、Tosはトシル基、OBzlはベンジルオキシ基、Bzlはベンジル基を示す。また、ここで用いるアミノ酸は全てL体である。
次に、ペプチド研究所製フッ化水素装置に上記合成ペプチド樹脂を導入し、アニソール1.5 mlを添加後、フッ化水素10mlを導入した。-2℃、1時間の反応後、フッ化水素を減圧下に除去し、ペプチドを無水エーテル、クロロホルムで交互に3回洗浄し、2N酢酸60mlにペプチドを溶解させ、凍結乾燥した。この方法により、目的とする標記ペプチドの白色粉末200mgを得た。次いで、本ペプチドはHPLCにより精製した。HPLCよる精製条件を下記に示す。
カラム:メルク社製 LiChrospher RP-18(e) (10 x 250mm)
溶出液:0.1%トリフルオロ酢酸を含む3.5〜67%アセトニトリルの直線濃度勾配
流速 :6ml/min
なお、合成したペプチドは、6N塩酸110℃24時間の加水分解後、日立835型アミノ酸分析装置によりアミノ酸分析を行うことにより、更に、日本電子製HX-110型質量分析装置によるFAB-MS法で構造を確認した。
合成したペプチドの下記条件下でのHPLCによる保持時間は7.45分であり、脳から精製したペプチドのそれと一致した。
HPLCの条件
カラム:μBondasphere C18(3.9 x 150mm)
溶出液:0.1%トリフルオロ酢酸を含む26〜34%(30分)アセトニトリルの直線濃度勾配
流速 :1ml/min
【0026】
実施例3
配列番号4( Glu-Pro-Pro-Pro-Pro-Glu-Pro-Pro-Pro-Ile )で示されるペプチドの化学合成
アプライド・バイオシステムズ社製ペプチド合成装置(430A型)に0.5ミリモルのBoc-Ile-O-CH2-PAM樹脂及び各2ミリモルのBoc-Glu(OBzl)(2本)、Boc-Pro(7本)を充填し、DCCによる無水対称法によりGlu(OBzl)-Pro-Pro-Pro-Pro-Glu(OBzl)-Pro-Pro-Pro-Ile-O-CH2-PAMを合成した。次に、ペプチド研究所製フッ化水素装置に上記合成ペプチド樹脂を導入し、アニソール3mlを添加後、フッ化水素30mlを導入した。-2℃、1時間の反応後、フッ化水素を減圧下に除去し、ペプチドを無水エーテル、クロロホルムで交互に3回洗浄し、2N酢酸60mlにペプチドを溶解させ、凍結乾燥した。この方法により、目的とする標記ペプチドの粉末130mgを得た。次いで、本ペプチドはHPLCにより精製した。HPLCよる精製条件を下記に示す。
カラム:メルク社製 LiChrospher RP-18(e) (10 x 250mm)
溶出液:0.1%トリフルオロ酢酸を含む3.5〜67%アセトニトリルのグラジエント
流速 :6ml/min
なお、合成したペプチドは、6N塩酸110℃24時間の加水分解後、日立835型アミノ酸分析装置によりアミノ酸分析を行うことにより、更に、日本電子製HX-110型質量分析装置によるFAB-MS法で構造を確認した。また、合成したペプチドは下記に示す逆相カラムを用いたHPLCでの保持時間が4.04分であり、牛脳から抽出したペプチドの保持時間4.05分とほぼ同一であった。
HPLCの条件
カラム:μBondasphere C18(3.9 x 150mm)
溶出液:0.1%トリフルオロ酢酸を含む17.5〜22%(30分)アセトニトリルの直線濃度勾配
流速 :1ml/min
【0027】
実施例4
配列番号2( Gly-Val-Gln-Val-Glu-Thr-Ile-Ser-Pro-Gly-Asp-Gly-Arg-Thr-Phe-Pro-Lys )及び配列番号3( Gly-Val-Gln-Val-Glu-Thr-Ile-Ser-Pro-Gly-Asp-Gly-Arg )で示されるペプチドの化学合成
実施例2と同様に、アプライド・バイオシステムズ社製ペプチド合成装置(430A型)を使用したDCCによる無水対称法により合成し、フッ化水素により保護基と樹脂を切断することにより、目的とする標記ペプチドを得た。ペプチドの精製、解析条件は前述と同一である。また、得られたペプチドのHPLCによる保持時間は、脳から精製したペプチドのそれらと一致した。
【0028】
試験例1
PEP阻害活性の測定
実施例1におけるPEP阻害活性の測定は下記の方法1)により行い、実施例2〜4により得たペプチドのPEP阻害活性の測定は下記の方法2)により行った。
1)微生物由来PEPに対する阻害活性の測定
生化学工業より購入したF. meningosepticum 由来PEPをpH7.0の0.1Mリン酸緩衝液に溶解し、0.1unit/mlの酵素溶液とした。また、2 mM Z-Gly-Pro-pNA(バッケム社製、Zはベンジルオキシカルボニル基、pNAはパラニトロアニリドを示す)を上記リン酸緩衝液(40%ジオキサンを含む)に溶解し基質溶液とした。
1.5ml容量のプラスチックチューブに、試験ペプチドを含有する試料溶液40μlを入れ、これにリン酸緩衝液80μl、基質溶液40μlを添加し、30℃で10分間保温した後、上記PEP溶液40μlを加えよく混合して、30℃で10分間の反応を行った。その後、1N-塩酸 200μlを添加することにより反応を停止させた。反応停止後、酵素反応により遊離してくるパラニトロアニリンをHPLCにより定量した。HPLC測定条件は以下の通りである。
【0029】
HPLC測定条件
カラム:ウオーターズ社製 μBondasphere 5μ C8-300A (3.9 x 150mm)
溶出 :0.1%トリフルオロ酢酸を含む53%アセトニトリル
検出 :410nmの吸収
このような実験を複数回行い、阻害率を次の式より算出した。
式中、A:阻害剤を含まない場合のパラニトロアニリンのピーク面積
B:阻害剤添加の場合のパラニトロアニリンのピーク面積
【0030】
2)牛脳由来PEPに対する阻害活性の測定
破砕した牛脳 400gに十分冷却(4℃)した10mM EDTA 及び10mM 2-メルカプトエタノールを含む20mM Tris-HCl緩衝液(pH 7.0)200mlを加え、容器を氷冷しながらポリトロンを用いてホモジナイズした後、4℃、30,000 x gで20分間の遠心分離を行い、上清を回収した。次いで、上清を硫安分画(50〜80%)し、更にQ-Sepharoseカラムクロマトグラフィー、PBE94カラムクロマトグラフィー、Superdex 200カラムクロマトグラフィーを順次行い、脳PEPを精製し、0.1unit/mlの酵素溶液とした。また、2mM Z-Gly-Pro-pNAを上記Tris-HCl緩衝液(40%ジオキサンを含む)に溶解し基質溶液とした。
1.5ml容量のプラスチックチューブに、試験ペプチドを含有する試料溶液40μlを入れ、これにリン酸緩衝液80μl、上記PEP溶液40μlを添加し、37℃で5分間保温した後、基質溶液40μlを加えてよく混合し、37 ℃で10分間反応させた。以下、微生物由来PEPに対する阻害活性の測定の場合と同様な条件下で測定を行い、阻害率50%のときのペプチドの濃度(IC50)と、ペプチドと酵素の複合体の解離定数(Ki)を求めた。
阻害活性の測定結果を表1に示す。表1に示されるように、配列番号1〜4で示される本発明のペプチドはPEP阻害活性を有することが明らかになった。
【0031】
【表1】
【0032】
実施例5
配列番号1のペプチドの類似ペプチドのPEP活性
▲1▼ 表1に示されるように、配列番号1のペプチドは強いPEP阻害作用を有するが、その相同性の検索の結果、配列番号1のペプチドはglial fibrillary acidic protein (神経膠筋原線維酸性ペプチド、GFAP)の38番(Met)〜55番(Asn)に相当するペプチド残基であることが明らかになった。動物種によりGFAPの38番〜55番のシーケンスは多少異なるので、この相違がPEP阻害活性に及ぼす影響を調べるために、ヒトGFAPの38番〜55番のアミノ酸配列を有するペプチド(配列番号5、配列番号1の7番目のアラニンがスレオニンに置換)及びマウスGFAPの38番〜55番のアミノ酸配列を有するペプチド(配列番号6、配列番号1の2番目のプロリンがスレオニンに置換)を合成し、それらのPEP阻害活性の測定を行った。
【0033】
▲2▼配列番号5(Met-Pro-Pro-Pro-Leu-Pro-Thr-Arg-Val-Asp-Phe-Ser-Leu-Ala-Gly-Ala-Leu-Asn)及び配列番号6(Met-Thr-Pro-Pro-Leu-Pro-Ala-Arg-Val-Asp-Phe-Ser-Leu-Ala-Gly-Ala-Leu-Asn)で示されるペプチドの化学合成並びにPEP阻害活性の測定
実施例2と同様に、アプライド・バイオシステムズ社製ペプチド合成装置(430A型)を使用したDCCによる無水対称法により合成し、フッ化水素により保護基と樹脂を切断することにより、目的とする標記ペプチドを得た。ペプチドの精製、解析条件は前述と同一である。
上記で得られたペプチドについて、試験例1−2)に準じて、牛脳由来PEPに対する阻害活性の測定を行った。その結果を表2に示す。
【0034】
【表2】
【0035】
表2に示されるように、配列番号5及び6のペプチドには、配列番号1のペプチドとほぼ同等なPEP阻害活性が認められ、動物種によらずGFAPの38番〜55番のアミノ酸配列を有するペプチドはPEP阻害作用を有することが明らかになった。
【0036】
実施例6
配列番号1のペプチドとPEPのプレインキュベーション
表1に示されるように、配列番号1のペプチドはPEP阻害活性を有することが示されたが、このペプチドが真の意味でPEP阻害作用を有する物質であるか、それとも実際にはPEPの基質となっており見かけ上阻害作用を示しているだけであるかを確認するため、牛脳由来PEPと配列番号1のペプチドのプレインキュベーション時間を60分まで延長して、経時的にその阻害活性を試験した。その結果を表3に示す。
また、この際のペプチドの分解の有無を確認するため、60分間のプレインキュベーション経過後の反応液を逆相クロマトグラフィーに付し、各ピークを分取し、それぞれをプロテインシーケンサーにより構造解析を行った。
【0037】
【表3】
【0038】
表3に示されるように、60分間のプレインキュベーションを行っても、配列番号1のペプチドのPEP阻害活性には変化が認められなかった。このことから、配列番号1のペプチドは、PEP阻害作用を有するペプチドであることが明らかとなった。
一方、インキュベーション後の反応液を逆相クロマトグラフィーに付した結果、ペプチドの10〜20%程度が分解を受けており、配列番号1のペプチドのN末端側の6残基からなるペプチド(配列番号7)が生成していることが判明した。このことは、配列番号1のペプチドはPEPの基質であることを示している。このように、配列番号1のペプチドはPEPの基質であり、PEPにより分解を受けることが明らかになったが、上記のように配列番号1のペプチドはPEPと60分間プレインキュベーションしてもPEP阻害活性に変化がみられなかったことから、本発明者らは配列番号7のペプチドにもPEP阻害作用があるのではないかと推察した。かかる推察に基づき、配列番号7のペプチドの合成を行い、そのPEP阻害活性の測定を行った。なお、比較のため、配列番号1のペプチドのN末端側の7残基からなるペプチド(配列番号8)及びN末端側の5残基からなるペプチド(Met-Pro-Pro-Pro-Leu、以下、比較ペプチドという)についても合成し、それらのPEP阻害活性の測定を行った。
【0039】
実施例7
配列番号7 (Met-Pro-Pro-Pro-Leu-Pro) 、配列番号8 (Met-Pro-Pro-Pro-Leu-Pro-Ala) で示されるペプチド及び比較ペプチドの化学合成並びにPEP阻害活性の測定
実施例2と同様に、アプライド・バイオシステムズ社製ペプチド合成装置(430A型)を使用したDCCによる無水対称法により合成し、フッ化水素により保護基と樹脂を切断することにより、目的とする標記ペプチドを得た。ペプチドの精製、解析条件は前述と同一である。また、得られた配列番号7のペプチドのHPLCによる保持時間は、脳から精製したペプチドのそれらと一致した。
上記で得られたペプチドについて、試験例1−2)に準じて、牛脳由来PEPに対する阻害活性の測定を行った。その結果を表4に示す。
【0040】
【表4】
【0041】
表4に示されるように、配列番号7のペプチドは配列番号1のペプチドとほぼ同等なPEP阻害活性を示した。また、配列番号8のペプチドにも弱いPEP阻害活性が認められた。一方、配列番号7のC末端のProが欠失したペプチドである比較ペプチドにはPEP阻害活性が認められなかった。このことから、配列番号7のペプチドが配列番号1のPEP阻害活性部位と考えられた。そこで、配列番号7のペプチドとPEPとのプレインキュベーションを行い、経時的にその阻害活性を試験した。その結果を表5に示す。
また、この際のペプチドの分解の有無を確認するため、60分間のプレインキュベーション経過後の反応液を逆相クロマトグラフィーに付し、各ピークを分取し、それぞれをプロテインシーケンサーにより構造解析を行った。
【0042】
【表5】
【0043】
表5に示されるように、配列番号7のペプチドはPEPと60分間プレインキュベーションしてもPEP阻害活性の低下は認められなかった。
また、インキュベーション後の反応液を逆相クロマトグラフィーに付した結果、配列番号7のペプチドの分解は実質的に認められなかった。
以上のことからして、配列番号7のペプチドは基質でなく、真の意味でのPEP阻害作用を有するペプチドであることが明らかになった。そして、配列番号1のペプチドは、PEPの基質であるが、7番目からC末端側に結合している残基の立体障害作用により、PEP阻害作用が発現すると共に分解を受けて生成した配列番号7のペプチドによりPEP阻害作用が発現していると考えられた。
【0044】
調製例1
配列番号1のペプチド 5 mg
ステアリン酸マグネシウム 5 mg
コーンスターチ 20 mg
乳糖 174.5mg
常法に準じ、上記の組成からなる混合物を、打錠成型し、錠剤を得た。
【0045】
調製例2
配列番号4のペプチド 5 mg
ステアリン酸マグネシウム 5 mg
コーンスターチ 20 mg
乳糖 174.5mg
常法に準じ、上記の組成からなる混合物を、打錠成型し、錠剤を得た。
【0046】
調製例3
配列番号7のペプチド 5 mg
ステアリン酸マグネシウム 5 mg
コーンスターチ 20 mg
乳糖 174.5mg
常法に準じ、上記の組成からなる混合物を、打錠成型し、錠剤を得た。
【0047】
調製例4
ウインナソーセージ用練り肉に、配列番号1のペプチドを当該練り肉50kg当り10gの割合で混合した後、常法に準じてソーセージケーシングに充填し、燻煙し、殺菌し、冷却後に包装し、ウインナソーセージを得た。
【0048】
調製例5
ジャーキー・タイプのペットフード用練肉に、配列番号1のペプチドを当該練肉50kg当り5gの割合で混合した後、常法に準じて、押出成形装置を用いて成形し、燻煙し、加熱殺菌し、乾燥し、水分活性0.84のペットフード用ジャーキーを得た。
【0049】
【配列表】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
Claims (4)
- L体のアミノ酸から構成され、下記のアミノ酸配列で示されるペプチド及びその塩。
(1) Met-Pro-Pro-Pro-Leu-Pro-Ala-Arg-Val-Asp-Phe-Ser-Leu-Ala-Gly-Ala-Leu-Asn
(2) Gly-Val-Gln-Val-Glu-Thr-Ile-Ser-Pro-Gly-Asp-Gly-Arg-Thr-Phe-Pro-Lys
(3) Gly-Val-Gln-Val-Glu-Thr-Ile-Ser-Pro-Gly-Asp-Gly-Arg
(4) Glu-Pro-Pro-Pro-Pro-Glu-Pro-Pro-Pro-Ile - 請求項1記載のペプチド又はその塩の少なくとも1種を有効成分として含有するプロリルエンドペプチダーゼ阻害剤。
- 請求項1記載のペプチド又はその塩の少なくとも1種を含有する機能性食品。
- 請求項1記載のペプチド又はその塩の少なくとも1種を含有する動物用飼料。
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