JP3733165B2 - デジタルプリンタの画像データ変換方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、写真原画やデジタルカメラ等からの画像データをデジタル画像処理して画像を記録するデジタルプリンタの画像データ変換方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
写真フイルムを撮像して得られた画像データに基づき記録材料に画像を記録する場合に、記録する画像の品質を上げるために種々の画像処理が行われている。例えば、特開平7−159904号公報では、写真撮影された画像に対して撮影の際に入力された撮影情報により画質補正を行っている。撮影情報としては、撮影距離情報,連続撮影情報,フラッシュの発光情報,シャッタスピード情報,被写体輝度情報などがあり、画質補正として、エッジ(輪郭)強調やコントラスト強調を行っている。例えば、撮影距離情報により、撮影距離が基準距離例えば2m以上のときに、エッジ強調の画質補正を行っている。これにより、被写体距離が長くなってピントが甘くなり画像にボケが生じても、この画像のボケを改善することができる。また、特開平4−284442号公報では、撮影情報によって階調を変化させる補正量を求める手段と、この補正量により階調を変化させる手段とを有するプリンタが提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のエッジ強調補正は、写真撮影の際に記憶した撮影距離情報などの撮影情報を用いるため、撮影情報が記録されていない写真フイルムに対しては適用することができないという問題がある。また、撮影距離や撮影倍率等を固定して撮影を行うカメラで撮影した写真フイルムの画像や、デジタルカメラ等で撮影した画像に対しても適用することができないという問題がある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明のデジタルプリンタの画像データ変換方法は、画像データに基づき記録材料に画像を記録するデジタルプリンタの画像データ変換方法において、画像データから人物の顔画像エリアを抽出し、この顔画像エリアとこれを除いた背景画像エリアとに対し、異なる画像処理方法を適用し、前記顔画像エリアが小さくなるにしたがい全画像エリアに対するエッジ強調の度合いを次第に大きくし、又は顔画像エリアが小さくなるにしたがい全画像エリアに対する階調度を次第に大きくするようにしたものである。前記画像処理方法の変更は、エッジ強調の大きさの変更や、階調度の変更などにより行われる。
【0006】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明を実施したデジタルプリンタを示す機能ブロック図である。画像信号入力手段10には、MDやMOなどの記録媒体、デジタルカメラ、カラーフイルムスキャナなどからデジタル化されたR,G,B画像信号が入力され、このR,G,B画像信号が変換手段11に送られる。なお、アナログのR,G,B画像信号の場合には、内蔵するA/D変換器によりA/D変換される。
【0007】
変換手段11では、R,G,B画像信号を輝度信号と色信号とに分離する。輝度及び色信号への変換は、周知の変換方法、例えば輝度信号と色差信号の他に、L,a,b空間、L,u* ,v* 空間、L,H,Sなどを用いた変換方法により行ってもよい。分離した輝度信号と色信号とは顔エリア抽出処理手段12に送られる。
【0008】
顔エリア抽出処理手段12では顔エリアを抽出する。顔エリアの抽出は、例えば特開昭52−156624号公報や特開昭52−156625号公報に記載されているように、予め肌色領域に対応する輝度信号及び色信号の範囲を決定しておき、各画素の輝度信号及び色信号が肌色領域内にあるときにその点を肌色と判定する。同様にしてその他の点について肌色か否かを判定して、この判定結果により、肌色を有する1まとまりのエリアを肌色エリアとして抽出する。更に、抽出した肌色エリア内に、目,鼻,口,眉などによる肌色と異なるエリアが含まれるか否か、これら異なるエリアが予め定めた所定のパターン(このパターンは各種の撮影シーンを統計的に処理して抽出されるもので、複数個用意される)で配置されているか否か等を判定し、これらの異なるエリアが所定パターンで配置されている場合に人物の顔エリアと判定する。なお、上記のような顔判定のための複雑なアルゴリズムを実施することなく、単に肌色エリアのみから顔エリアと判定してもよい。また、特開平5−100328号公報、特開平5−165120号公報のように、色相や彩度の2次元ヒストグラムからクラスターを求め、クラスターの内部構造、形状、接続する外部構造から顔領域を判定する方法などを利用してもよい。
【0009】
顔サイズ推定手段13は、顔エリアのサイズを特定し、顔エリアサイズ信号を発生する。顔エリアサイズは、顔として特定されたエリアの一方向(X方向,Y方向,任意方向)における長さが用いられる。この他に、一方向における画素数、一方向における長さ又は画素数の最大値、直交する二方向の長さ又は画素数の平均値、顔エリアの面積、顔エリアの画素数、顔エリアの面積又は画素数の1/2乗などを用いることができる。更には、画面サイズとの比(例えば画面の長辺方向における顔エリアの長さ:画面の長辺方向の長さ)や、実際の顔との比として表してもよい。また、複数の顔がある場合には、全ての顔エリアにおける顔エリアサイズの平均値を用いてもよい。更には、画面の中心位置に近いものほど重み付き係数を大きくした重み付き平均値を用いてもよい。顔サイズ推定手段13の顔エリアサイズ信号と輝度信号とは、エッジ強調手段14に送られる。
【0010】
図2に示すように、エッジ強調手段14は、アンシャープ信号作成部15,ルックアップテーブルメモリ(LUT)16,乗算器17,18、加算器19を備えている。アンシャープ信号作成部15は輝度信号を平均化処理してアンシャープ信号Uを作成する。LUT16は重み付け係数発生手段であり、顔エリアサイズ信号Fに基づいて、重み付け係数P(F),Q(F)を発生する。これらアンシャープ信号U,輝度信号Y,重み付け係数P(F),Q(F)は、乗算器17,18で乗算された後に加算器19で加算され、エッジ強調処理後の輝度信号Tが求められる。この輝度信号Tは階調補正手段20に送られる。
【0011】
上記輝度信号Tは例えば次の数式1で表される。
【数1】
T=P(F)・U+Q(F)・Y
【0012】
なお、数式1において、Kを以下のように設定する場合には、以下の数式2に置き換えることができる。
【数2】
T=Y+K(Y−U)
P(F)=−K(但しKはエッジ強調係数であり、−1≦K≦1)
Q(F)=1+K
なお、上記のように設定するとP(F)+Q(F)は1となるが、Q(F)の値(1+K)の「1」を変更してもよく、この場合には当然のことながらP(F)+Q(F)は1にならない。
【0013】
図3は、LUT16に記憶されるテーブルデータの一例を表す線図であり、横軸に顔エリアサイズfが、縦軸にエッジ強調係数Kがとってある。上記エッジ強調係数Kは、顔エリアサイズfが小さくなる程に大きくなる。また、顔が存在しない場合には所定の値aが与えられる。逆に顔エリアサイズfが大きくなる程、エッジ強調係数Kが小さくなる。そして、顔エリアサイズfがある大きさ以上になると、所定の値b(b<a)が与えられる。このようにすることで、顔エリアサイズfが小さくなると、これにしたがいエッジ強調の度合いが次第に大きくなり、目鼻がより鮮明になる。また、人物が写っていない場合には撮影距離に関わらずシステムにおける最大のエッジ強調が行われる。また、顔エリアサイズfが大きくなると、これにしたがいエッジ強調の度合いが次第に小さくなり、入力装置のノイズや顔の毛穴などが目立つことなく、しかも皮膚感も失われることもない。なお、顔エリアサイズfが大きいときにエッジ強調をしすぎると入力装置のノイズや毛穴が目立ったり、皮膚感が失われるので、bは「0」よりも小さくすることが好ましい。
【0014】
図1に示すように、階調補正手段20は、エッジ強調された輝度信号Tに対して階調補正を行う。この階調補正は、入力系記録媒体及び出力系記録媒体等の相違に起因するずれなどを修正するために行われる。階調補正された輝度信号は変換手段21に送られる。また、色調補正手段22は色調補正を行う。この色調補正は、入力系及び出力系記録媒体の相違等に起因する色調のずれなどを修正するために行われる。これら階調補正処理や色調補正処理は周知の方法を用いて行われる。色調補正された輝度信号は変換手段21に送られる。なお、これら階調補正や色調補正は、顔エリア抽出処理手段12で抽出された顔エリアの平均濃度や色調を基準にして行うと、仕上りがより一層良くなる。
【0015】
変換手段21は、輝度信号及び色信号からR,G,B信号に変換する。このR,G,B信号は、画像記録制御量変換手段23に送られる。画像記録制御量変換手段23では、R,G,B信号を画像記録制御量に変換するとともに、D/A変換なども行う。これらR,G,B信号への変換処理や、画像記録制御量変換処理等は周知の方法が用いられる。変換処理された画像記録制御量は画像記録手段24に送られ、ここで画像記録制御量がレーザー光等の光信号強度や液晶シャッタの開口率に変換され、これによりカラー感光材料に画像が記録される。なお、変換手段21において、本スキャン画像データから直接に画像記録制御量に変換してもよい。
【0016】
上記実施形態では、変換手段21によるR,G,B信号への変換前に階調補正や色調補正を行ったが、これはR,G,B信号に変換した後に、周知の階調変換や色補正を行ってもよい。また、上記実施形態では、エッジ強調をする際に、顔エリアサイズ信号Fに基づきLUT16から対応する重み付け係数P(F),Q(F)を求めたが、このLUT16を用いる代わりに、演算器によりP(F),Q(F)の関数式を演算してもよい。また、上記実施形態では、人物が写っていない場合に最大のエッジ強調を行ったが、この他に、適当なエッジ強調度合いに別個に設定してもよい。また、上記実施形態ではR,G,B信号から輝度信号及び色信号に変換する変換手段11を設けたが、最初から輝度信号と色信号とに分離された状態で入力される場合には、変換手段11を用いることなく、顔エリア抽出処理手段12に輝度信号と色信号とを入力する。
【0017】
次に、ネガフイルムに記録された画像を撮像してプリントを行う別の実施形態について説明する。図4は、この実施形態におけるデジタルプリンタの機能ブロック図を示すものである。このデジタルプリンタは、大きく分けて、画像信号入力手段30と、画像データ蓄積手段31と、階調バランス検出手段32と、階調変換特性設定手段33と、変換テーブル作成手段34と、顔エリア抽出処理手段12と、顔サイズ推定手段13と、画像信号処理手段35と、画像記録制御量変換手段23,及び画像記録手段24とを備えている。なお、図1に示す上記実施形態と同一構成部材には同一符号が付してある。
【0018】
画像信号入力手段30は、周知のフイルムスキャナから構成されており、ネガフイルムの画像を読み取って画像信号に変換する。この画像信号入力手段30は、本スキャンとプレスキャンとが行えるようになっており、プレスキャンでは、ネガフイルムの画像を数千点の画像データとして読みだす。なお、プレスキャンにおける画像データ数は数千点に限られることなく、例えば処理時間の短縮やプリント品質の向上などの要請に応じて、数百〜数万点の画像データが読みだせればよい。また、本スキャンでは、ネガフイルムの画像を数十万〜数百万点の画像データとして読みだす。なお、プレスキャンと本スキャンとを行う他に、本スキャンの画像データを結合して、数百画素から数万画素の画素数に減少させ、これをプレスキャン画像データとして用いてもよい。
【0019】
図4において、本スキャンの画像データの流れは破線で表示されており、その他のプレスキャンの画像データ等の流れは実線で表示されている。画像信号入力手段30からの本スキャンによる画像データは顔エリア抽出処理手段12と画像信号処理手段35とに送られる。また、画像信号入力手段30からのプレスキャン画像データは、画像データ蓄積手段31に送られる。
【0020】
フイルム種識別手段40はバーコードリーダーから構成されており、読取り対象のカラーネガフイルムのDX用バーコードを読み取って、フイルムの種類を識別する。このフイルム種別信号は画像データ蓄積手段31及び階調特性データ記憶手段41に送られる。なお、磁気情報が記録されたネガフイルムに対しては磁気読取り装置が用いられる。
【0021】
画像データ蓄積手段31は、データ選択部とデータ蓄積部とから構成されている。データ選択部は、フイルム種別毎にプレスキャン画像データを予め定めた選択基準にしたがい選択する。そして、この選択した画像データをデータ蓄積部に送る。選択基準としては、データ蓄積部で蓄積した該当するフイルム種の画像データの平均値が用いられる。したがって、平均値を基準として所定範囲内の画像データのみが選択され、これがデータ蓄積部で蓄積される。なお、平均値の代わりに、最小二乗法などの統計的手法により決定した値を選択基準にしてもよい。このようにして選択した画像データはほぼグレー、またはグレーに近い一定範囲の被写体色の画像濃度となる。
【0022】
データ蓄積部は、フイルム種別信号に基づき対応する記憶エリアに、画像データのG濃度に対するR濃度と、G濃度に対するB濃度と、これらの画像データ数を加算して蓄積する。本実施形態では、G濃度を画像データの分類基準として用いている。そして、画像データのG濃度値が、例えば0.01間隔や0.1間隔で分類したレベルのどのレベルに該当するかを判定し、該当するレベルにR濃度,B濃度を蓄積する。同時に蓄積データ数もカウントして記憶する。次に、蓄積画像データを蓄積データ数で割って平均値を求める。なお、画像データの蓄積方法は例えば特開平3−53235号公報に詳しく説明されている。このようにして求めた多数の蓄積データの平均値は一定で、グレー又はグレーに近い色になる。蓄積が進むにしたがってこのフイルム種における固有のデータが精度よく得られるようになる。
【0023】
階調バランス検出手段32は、画像データ蓄積手段31からの前記平均値に基づき階調バランス特性を求める。図5は検出した階調バランス特性の一例を示すもので、G濃度に対するR濃度の関係を各濃度レベルの蓄積データの平均値で示したものである。各濃度レベルの平均値で表す場合には、図5に示すように多数の点が線上に並んだ状態になるが、これら各点に対して周知のスムージング処理を行って直線又は円滑な曲線に修正する。同様にして、G濃度に対するB濃度の関係を作成する。
【0024】
図6は、G濃度に対するR濃度の関係を示す階調バランス特性データの一例であり、図5に示すものをスムージング処理したものである。図6において、記録対象原画における最大濃度値の3色平均濃度を、G濃度の高濃度側基準値DXGとし、このDXGに基づき階調バランス特性からDXGに対するR濃度を求め、これをDXRとする。同様にして、G濃度に対するB濃度の関係からDXBを求める。DXG,DXR,DXBはDXGにおいてグレー濃度を得るためのR,G,B濃度である。同様にして、低濃度側基準値のG濃度DIG(記録対象原画における最小濃度値の3色平均濃度)を低濃度側基準値として、DIR,DIBを求める。このようにして求めたDXR,DXG,DXB、DIR,DIG,DIBは、原画中の高濃度のグレー被写体、及び低濃度のグレー被写体の色バランスを表し、これらを高濃度側基準バランス値、低濃度側基準バランス値とする。なお、本実施形態では、高濃度側基準値,低濃度側基準値として、3色平均濃度を用いたが、最大濃度,最小濃度の対応する各色を用いてもよい。得られた各基準バランス値DXR,DXG,DXB、DIR,DIG,DIBは階調変換特性設定手段33に送られる。
【0025】
階調変換特性設定手段33は、階調特性データ記憶手段41からの階調特性データと、階調バランス検出手段32からの各基準バランス値DXR,DXG,DXB、DIR,DIG,DIBとに基づき階調変換特性を設定する。先ず、図7に示すように、高濃度側基準バランス値DXi(iはR,G,Bのいずれか1つ)と低濃度側基準バランス値DIiを用いて、階調バランス変換テーブルを作成する。すなわち、基準バランス値DXR,DIRに対して予め定めた記録濃度をDhr、Dsrとし、これらDXRとDhr,DIRとDsrとで決定される座標点をつなぐことで、階調バランス変換テーブルを作成する。同様にして、他のB濃度,G濃度についても階調バランス変換テーブルを作成する。
【0026】
図7は、この階調バランス変換テーブルの一例を示すもので、横軸に入力値であるR濃度を、縦軸に出力値であるR濃度をとったものである。このように、記録濃度Dhi,Dsiを定めて、その間の全濃度に対し一律に割りつけているため、アンダー露光のネガ像に対しては必ずしも自然な画像として記録することができない。このため、以下に示す階調特性データを用いて、階調変換テーブルを作成する。
【0027】
階調特性データは、図4に示す階調特性データ記憶手段41に記憶されている。階調特性データはフイルム種別毎に記憶されており、フイルム種識別手段40からのフイルム種別識別信号により対応する階調特性データが階調変換特性設定手段33に送られるようになっている。図8は、階調特性データの一例を示したものである。この階調特性データは、カラーネガフイルムの特性曲線に対応する変換テーブルから構成されている。この変換テーブルは横軸に出力値Dout を縦軸に入力値Dinをとっている。そして、この変換テーブルに基づき入力値Dinから出力値Dout が求められる。この階調特性データからも分かるように、特性曲線の足部及び肩部は直線ではなく、画像濃度は圧縮されている。特性曲線の形は感光発色層やカラーフイルム種により異なるが、フイルムのラチチュードとカメラの露出技術との進歩により、肩部まで使用することはほとんどない。足部の特性は各フイルムで近似しているので、平均的な変換テーブルを用いてよく、特に各色別にもたなくてもよい。正確な階調特性を得るにはフイルム種別毎にフイルム濃度を測定し、この測定値を用いる。または、試行錯誤的に階調変換テーブルを設定し、フイルム種別信号に基づき選択してもよい。また、特性曲線を変換テーブルの形で表す他に、関数式で表して用いてもよい。
【0028】
次に、階調変換特性設定手段33は、原画像の高濃度側基準バランス値DXi、低濃度側基準バランス値DIiから図8に示す上記階調特性データの使用範囲を特定し、この範囲の階調特性と、図7に示す階調バランス変換テーブルとを合成して、図9に示すような階調変換テーブルを作成する。すなわち、階調バランス変換テーブルの横軸の値を、図8に示す階調特性データを用いて、対応する特性曲線の縦軸の値に置き換えることで、図9に示すような階調変換テーブルを作成する。図9の実線表示のものはアンダー露光ネガ画像のものであり、破線表示のものは適正露光ネガ画像のものである。実線表示のアンダー露光ネガ画像のものでは、適正な露光による画像の階調バランス特性に対して、コントラスト(DXiとDIiとの差)が小さくなり、シャドー部のしまりのない記録画像になるが、低濃度部画像の濃度が拡大して記録されることにより画像が改良されることが判る。他の方法として、DIRからDXRの各値をDinにセットしてDout に変換し、図7の階調バランステーブルの横軸としても同じ効果が得られる。この階調変換テーブルの修正は、画像毎に行っても、または修正済みの複数のテーブルを持ち、これを選択することを行ってもよい。また、別な方法として、上記階調特性データは高い精度を必要としないことから、公知な方法、例えば原画像のプレスキャン画像データから濃度ヒストグラムや濃度累積分布を自動的に求めて、これを用いてもよい。
【0029】
変換テーブル作成手段34は、記録条件記憶手段42からの記録条件と画像記録基本量演算手段47からの画像記録基本量に基づき、階調変換特性設定手段33からの階調変換テーブルを修正する。この修正は、階調変換テーブルの縦軸にそって階調変換特性を画像記録基本量に基づき上下にシフトさせることにより行う。この修正した階調変換テーブルは画像処理信号手段35のLUT45に書き込まれる。このように、画像記録基本量に基づき階調変換テーブルを修正するのは次の理由による。再現すべき最大基準値、最小基準値、又はハイライト点、シャドー点が正確であれば、画像記録基本量による修正は必要がない。このようなシーンの典型例は写真スタジオにおけるポートレートである。ハイライト点は例えば服の白であり、シャドー点は例えば黒髪である。これに対して、自然界を背景としたポートレートは必ずしもそうではない。ハイライト点として空や雲、反射する白い壁や窓の外、更にストロボ撮影における前景の白など多数ある。それらを除いて、服の白を正確に抽出することは非常に困難であり、多くの場合には画像記録基本量に基づく修正が必要である。
【0030】
画像記録基本量演算手段47は、画像信号入力手段30からのプレスキャン画像データに基づき画像記録基本量を求める。画像記録基本量は、各記録対象原画毎に原画の画像濃度から求められる値である。例えば、プレスキャン画像データに基づき、全画面エリア、特定エリア、選択エリアなどの各エリアにおける単純平均値を算出して、これらが選択的に用いられる。この他に、画像記録基本量としては、画素の位置に対する重み付き加算の平均値、選択した画素の平均値や重み付き加算の平均値などが用いられる。画像記録基本量は、特開昭55−26569号公報、特開昭61−223731号公報、特開平2−90140号公報、特開平3−53235号公報、特開平5−289207号公報等に記載されているような公知の方法を用いて求めることができる。更に、画像記録基本量は、最大値(またはハイライト部濃度)と最小値(またはシャドー部濃度)との重み付き平均値、各画素に重みを乗じた重み付き平均値(例えば、濃度ヒストグラムの各級に対し重みを乗じた重み付け平均値)、累積濃度ヒストグラムの特定頻度または選択した頻度に相当する値などの原画像の画像を特徴つける値などを画像記録基本量として用いることができる。また、濃度制御値を用いてもよく、この場合には、特開昭51−138435号公報、特開昭53−145621号公報、特開昭54−28131号公報、特開昭59−164547号公報等に記載されているような公知の方法から求めることができる。
【0031】
更に、画像信号処理手段35はエッジ強調手段46を備えており、本スキャン画像データに対してエッジ強調処理を行う。このエッジ強調手段46は、図2に示すエッジ強調手段14と同じ構成になっている。なお、上記実施形態では輝度信号Yに対してエッジ強調処理を行うのに対して、本実施形態では本スキャン画像データに対して行う点のみが異なっているだけであり、詳細な説明は省略する。このエッジ強調処理済の本スキャン画像データは、上記LUT45により記録画像データへ変換される。この変換により、グレイ画像のときにR,G,B信号が等しくなるようにされ、色バランスの優れた記録画像が得られるようになる。記録画像データは、画像記録制御量変換手段23で画像記録制御量に変換された後に、画像記録手段24により記録材料に画像が記録される。
【0032】
なお、上記実施形態では、画像記録基本量演算手段47により画像記録基本量を求めて、これに基づき階調変換特性を修正したが、この他に、顔エリア抽出処理手段12からの顔エリアの平均濃度値を用いて変換テーブル作成手段34で変換テーブルを修正するようにしてもよい。この場合に、顔エリアのサイズが所定値よりも小さい場合や、顔エリアが抽出されないときには、画面の全エリアの平均濃度等を顔エリア抽出処理手段12で求めて、この平均濃度を用いることが好ましい。
【0033】
また、上記実施形態では、エッジ強調手段46において、顔エリアの大きさに応じてエッジ強調の度合いを変更したが、この他に、図4に示す変換テーブル作成手段34に顔エリアサイズ信号Fを入力して、顔エリアの大きさに応じて階調を変更してもよい。これは、システムの有効なMTF(変調伝達関数)は、「システムのもつMTF」×「システムのもつガンマ」で表されるから、鮮鋭度(MTF)の代わりに階調度を上げて階調を硬くしてもMTFは上がることによる。したがって、顔サイズが小さくなるにしたがい次第に階調度を大きくし、顔が存在しないか、検出するには小さすぎる場合には所定の値を階調度として用いる。また、顔サイズが大きくなるにしたがい次第に階調度を小さくして階調を軟らかく設定する。階調度の変更は階調特性カーブに顔サイズの大きさから決まる係数を乗じて行う。この他に、予め定めて複数個記憶しておいた階調特性カーブから内挿によって定めてもよい。
【0034】
更には、特定の濃度域に対して階調変更を行うようにしてもよい。例えば、図10に示すように、主要部濃度DpOによって修正する場合には、二点鎖線で示すように階調変換テーブルを修正する。なお、DpOは原画像の主要部濃度を、DpRは記録画像の適正な主要部濃度を得るのに必要なデータを表す。図10は、主要部濃度を濃くしてハイライト部の画像の再現を極力変えないようにして階調度を上げて階調を硬くした例である。また、図11は、主要部濃度を変えないようにし、ハイライト部の画像濃度を下げるようにして階調度を上げて階調を硬くした例である。この他に、主要部濃度からハイライト部の階調をあまり変更しないで、主要部濃度よりもシャドー部側の階調度を変更するようにしてもよい。なお、実用的には上記変換テーブルは滑らかな曲線になるように修正してから用いられる。
【0035】
また、上記主要部濃度DpO,DpRの代わりに、原画像の画像特徴量から推定した記録画像濃度の修正量と、記録した全画像の平均濃度の加算値とからなる値をDpO,DpRとしてもよい。
【0036】
また、1画像中の顔エリアとこの顔エリアを除いた背景エリアとで、エッジ強調係数や階調パラメータを変えてもよい。例えば、顔エリアサイズ信号に応じて、顔エリアのエッジ強調係数、または階調パラメータを変更する。または、顔エリアサイズ信号に応じて、背景エリアのエッジ強調係数、または階調パラメータを変更する。
【0037】
図12は、顔エリアと背景エリアとのエッジ強調係数を個別に変更した一例を示すものである。顔エリアサイズfに対し基準エリアサイズfsを決めておき、この基準エリアサイズfsの場合に、顔エリアと背景エリアとに対するエッジ強調係数Kを同じ値cに設定し、基準エリアサイズfsよりも顔エリアサイズfが小さい場合には背景エリアのエッジ強調係数Kを顔エリアのエッジ強調係数Kよりも大きくし、基準エリアサイズfsよりも顔エリアサイズfが大きい場合には背景エリアのエッジ強調係数Kを顔エリアのエッジ強調係数Kよりも小さく設定する。更に、顔エリアサイズfに対し最小エリアサイズfmin 及び最大エリアサイズfmax を決めておき、顔エリアサイズfが最小エリアサイズfmin 及び基準エリアサイズfsの間にある場合には、顔エリアサイズfが最小エリアサイズfmin 又は基準エリアサイズfsに近づくに従い両エリアに対するエッジ強調係数Kの差が次第に小さくなるように設定する。更に、顔エリアサイズfが基準エリアサイズfs及び最大エリアサイズfmax の間にある場合には、顔エリアサイズfが最大エリアサイズfmax に近づくに従い両エリアに対するエッジ強調係数Kの差が次第に大きくなるように設定する。
【0038】
この場合には、顔エリアサイズfが基準エリアサイズfsに比べて大きい場合に、背景のエッジが強調されない。また、顔エリアサイズfが基準エリアサイズfsよりも小さくなり所定値fdに近づくほど、顔エリアよりも背景エリアのエッジが強調される。そして、顔エリアサイズfが所定値fdを越えて更に小さくなると、両者の差が次第になくなり、顔エリアがないとき(顔エリアサイズfがfmin になったとき)に、両者のエッジ強調度合いは同じになる。なお、顔エリアと背景エリアの境界で大きくエッジ強調係数が変わると、不自然な画像になるので、これらの境界領域では滑らかに変化が行われるようにするとよい。また、顔エリアと背景エリアとのエッジ強調係数は、外部から装置に設定可能にするとよい。また、エッジ強調の代わりに階調パラメータを変更する場合も同様に行うことができる。
【0039】
次に、図13を参照して階調特性データによる変換に関する別の実施形態について説明する。なお、図4に示す実施形態と同一構成部材には同一符号が付してある。この実施形態では、階調特性変換手段50により、本スキャンデータに対してネガフイルムの非線形特性を線形に修正するための変換を行う。この変換を行った後に、顔エリア抽出処理手段12により顔エリアの抽出を行う。変換テーブル作成手段51では、3色濃度バランスを修正するとともに、顔エリアサイズに応じた階調補正を行うためのデータ変換テーブルを作成する。画像信号処理手段52では、このデータ変換テーブルを用いて本スキャンデータを変換する。なお、顔エリアサイズに応じた階調補正の代わりに、画像信号処理手段52で顔サイズに応じたエッジ強調を行ってもよい。また、変換テーブル作成手段51では、顔エリアサイズに応じた階調補正用データ変換テーブルの他に顔エリアの濃度補正用データ変換テーブルを作成してもよく、これにより顔エリアの仕上りをより一層良くすることができる。
【0040】
なお、本発明において濃度は、光学濃度に限定されることなく、色彩学上の明度に相当する変換値、原画像の測光出力値、網点面積率などを含む。また、濃度のアンチ対数値を用いてもよい。また、エッジを強調する代わりに、逆に画像やエッジを平滑化してもよい。
【0041】
また、上記実施形態では、顔エリア抽出処理手段で肌色濃度を基準にして顔エリアを自動的に抽出するようにしたが、この他に顔の抽出は、仕上りをシミュレートした画像をCRT等のディスプレィに表示し、この表示された画像を観察してライトペンやマウス等を用いて顔エリアを指定することで、行ってもよい。また、上記実施形態では、デジタルカメラの画像データやネガフイルムからの画像データを用いたが、この他に、ポジフイルムや反射原稿に対して本発明を適用してもよい。また、画像表示装置に本発明を適用してもよい。
【0042】
なお、画像に対応して、被写体と画像の倍率や、被写体距離等の情報が記録されている場合には、特開平1−111086号公報に詳しく説明されているように、顔エリアを決定するためにこれらの情報を利用することが有効である。
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、顔エリアの大きさによってエッジ強調や階調補正等の画像処理を行うから、撮影距離情報などを持たない画像に対しても、シーンにあった適切な画像処理を施すことができる。しかも、撮影距離情報に応じてエッジ強調等の画像処理を行う従来のものに比べて、シーンにあった適正な画像処理を確実に行うことができる。すなわち、従来のものではメモリ容量の制限やカメラのコストから撮影距離情報は粗い場合が多く、シーンにあった適切な画像処理が困難であったが、本発明では顔エリアの大きさに応じて行うので精度のよい撮影距離情報が得られるようになる。
【0044】
顔エリアの大きさに基づきエッジ強調や階調補正等の画像処理を行うから、それぞれの画像にあった画質改善法を採用することができる。例えば、顔のアップのような近距離で撮影した画像の画質を損なうことなく、遠景などの被写体が小さくなった画像に対して輪郭を強調することができる。また、人物の写っていない風景中のミクロな濃淡を強調したり、集合写真中の人物を強調したりすることができる。更には、近距離であっても、人物の写っていない画像に対してエッジ強調や階調補正を行うことにより、物体の形状をより鮮明にすることができる。
【0045】
また、顔エリアの大きさに基づきエッジ強調の度合いや階調度を変更したから、画質改善の多様化が図れる。これにより、例えば顔のアップに対して僅かにアンシャープにすることによって肌の質感を向上させることができる。同時に背景をより一層アンシャープにすることによって、背景をデフォーカスしたような効果を得ることができる。更に、顔エリアとこれを除いた背景エリアとに対して別々の画像処理を行うことにより、画質改善の多様化をより一層図ることができる。
【0046】
顔エリアのサイズに対し基準エリアサイズを決めておき、この基準エリアサイズの場合に、顔エリアと背景エリアとに対するエッジ強調度合いを同じに設定し、基準エリアサイズよりも顔エリアが小さい場合には背景エリアのエッジ強調度合いを顔エリアのエッジ強調度合いよりも大きくし、基準エリアサイズよりも顔エリアが大きい場合には背景エリアのエッジ強調度合いを顔エリアのエッジ強調度合いよりも小さくすることにより、シーンに合った適正なエッジ強調処理を自動的に行うことができる。同様にして、エッジ強調度合いの変更に代えて、階調度を変更することで、同じような効果が得られる。
【0047】
更に、顔画像エリアのサイズに対し最小エリアサイズ及び最大エリアサイズを決めておき、顔画像エリアサイズが最小エリアサイズ及び基準エリアサイズの間にある場合には、顔画像エリアサイズが最小エリアサイズ又は基準エリアサイズに近づくに従い両エリアに対するエッジ強調度合いの差が次第に小さくなるように設定し、顔画像エリアサイズが基準エリアサイズ及び最大エリアサイズの間にある場合には、顔画像エリアサイズが最大エリアサイズに近づくに従い両エリアに対するエッジ強調度合いの差が次第に大きくなるように設定することにより、エッジ強調度合いや階調度の変更をより一層きめ細かく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施したデジタルプリンタの要部を示す機能ブロック図である。
【図2】エッジ強調手段を示す機能ブロック図である。
【図3】顔エリアサイズとエッジ強調係数との関係を示す線図である。
【図4】他の実施形態の要部を示す機能ブロック図である。
【図5】G濃度に対するR濃度の関係を示す階調バランス特性データの一例を示す線図である。
【図6】図5のデータをスムージング処理した後の階調バランス特性データの一例を示す線図である。
【図7】階調バランス特性から高濃度及び低濃度側基準バランス値を求めることを説明する線図である。
【図8】階調特性データの一例を示す線図である。
【図9】階調変換テーブルの一例を示す線図である。
【図10】データ変換テーブルの修正の一例を示す線図である。
【図11】データ変換テーブルの修正の一例を示す線図である。
【図12】顔エリアと背景エリアとに対し別々のエッジ強調係数を用いる実施形態における顔エリアサイズとエッジ強調係数との関係を示す線図である。
【図13】他の実施形態における要部を示す機能ブロック図である。
【符号の説明】
10 画像信号入力手段
11,21 変換手段
12 顔エリア抽出処理手段
13 顔サイズ推定手段
14 エッジ強調手段
20 階調補正手段
22 色調補正手段
23 画像記録制御量演算手段
24 画像記録手段
35 画像信号処理手段
Claims (1)
- 画像データに基づき記録材料に画像を記録するデジタルプリンタの画像データ変換方法において、
画像データから人物の顔画像エリアを抽出し、この顔画像エリアとこれを除いた背景画像エリアとに対し、異なる画像処理方法を適用し、
前記顔画像エリアが小さくなるにしたがい全画像エリアに対するエッジ強調の度合いを次第に大きくし、又は顔画像エリアが小さくなるにしたがい全画像エリアに対する階調度を次第に大きくすることを特徴とするデジタルプリンタの画像データ変換方法。
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