JP3732654B2 - 黒鉛粒子、リチウム二次電池用負極及びリチウム二次電池 - Google Patents

黒鉛粒子、リチウム二次電池用負極及びリチウム二次電池 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、黒鉛粒子リチウム二次電池用負極炭素材料、リチウム二次電池用負極及びリチウム二次電池に関する。さらに詳しくは、ポータブル機器、電気自動車、電力貯蔵等に用いるのに好適な、高容量でかつサイクル特性に優れたリチウム二次電池及び負極並びにそれを得るための負極炭素材料、及び黒鉛粒子に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のリチウム二次電池の負極材には、例えば天然黒鉛粒子、コークスを黒鉛化した人造黒鉛粒子、有機系高分子材料、ピッチ等を黒鉛化した人造黒鉛粒子、これらを粉砕した黒鉛粒子などが用いられている。これらの黒鉛粒子は有機系結着剤及び有機溶剤と混合して黒鉛ペーストとし、この黒鉛ペーストを銅箔の表面に塗布し、溶剤を乾燥して、リチウム二次電池用負極として使用されている。
例えば、特公昭62−23433号公報に示されるように、負極に黒鉛を使用することでリチウムのデンドライトによる内容短絡の問題を解消し、サイクル特性の改良を図っている。
【0003】
しかしながら、黒鉛結晶が発達している天然黒鉛は、C軸方向の結晶の層間の結合力が、結晶の面方向の結合に比べて弱いため、粉砕により黒鉛層間の結合が切れ、アスペクト比が大きいいわゆる鱗状の黒鉛粒子となる。鱗状黒鉛は、アスペクト比が大きいために、バインダと混練して集電体に塗布して電極を作製したときに、鱗状黒鉛粒子が集電体の面方向に配向し、その結果、充放電容量や急速充放電特性が低下しやすいばかりでなく、黒鉛結晶へのリチウムの吸蔵・放出の繰り返しによって発生するC軸方向の膨張・収縮により電極内部の破壊が生じ、サイクル特性が低下する問題がある。
【0004】
一方、コークス、ピッチ、有機系材料等を2000℃以上で焼成した人造黒鉛は、天然黒鉛に比べ比較的アスペクト比が小さくすることができるが、黒鉛結晶の発達が悪いため充放電容量が低い。人造黒鉛は、黒鉛化触媒とともに焼成することでその結晶性を高め充放電容量を向上させることが可能である。しかし、人造黒鉛の結晶性を高めると、人造黒鉛粒子の表面に、黒鉛結晶のエッジが増大しやすくなる。人造黒鉛粒子表面の結晶のエッジは、充放電時に電解液と反応しやすく、作製するリチウム二次電池のサイクル特性、高温特性を低下させる問題がある。
そこで、サイクル特性、高温特性及び急速充放電特性が向上でき、かつ高容量のリチウム二次電池が作製できる負極用炭素材料が要求されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高容量のリチウム二次電池負極炭素材料に好適な黒鉛粒子を提供するものである。
本発明は、さらに、サイクル特性及び高温特性に優れたリチウム二次電池負極炭素材料に好適な黒鉛粒子を提供するものである。
【0006】
本発明は、さらに、急速充放電特性に優れたリチウム二次電池用負極炭素材料に好適な黒鉛粒子を提供するものである。
【0007】
本発明は、さらに、高容量で、サイクル特性、高温特性及び急速充放電特性に優れたリチウム二次電池に好適なリチウム二次電池用負極炭素材料を提供するものである。
本発明は、さらに、高容量で、サイクル特性、高温特性及び急速充放電特性に優れたリチウム二次電池用負極を提供するものである。
本発明は、さらに、高容量で、サイクル特性、高温特性及び急速充放電特性に優れたリチウム二次電池を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下に示すリチウム二次電池負極用黒鉛粒子、リチウム二次電池用負極及びリチウム二次電池を提供するものである。
(1)黒鉛化可能な材料と、異なる金属元素を含む少なくとも2種類の化合物とを含む混合物を、焼成して黒鉛化することにより得られるリチウム二次電池負極用黒鉛粒子であって、前記異なる金属元素を含む少なくとも2種類の化合物が、B元素を含む化合物とFe、Si、Ni及びTiの少なくとも1種類の元素を含む化合物であり、前記B元素を含む化合物の量が、黒鉛化可能な材料と金属元素を含む化合物の合計量に対して、B元素換算で0.05〜5重量%であり、Fe、Si、Ni及びTiの少なくとも1種類の元素を含む化合物の量が、黒鉛化可能な材料と金属元素を含む化合物の合計量に対して、元素換算で0.1〜30重量%であり、
該黒鉛粒子が、B元素と、Fe、Si、Ni及びTiの少なくとも1種類の元素とを含み、
該黒鉛粒子結晶の層間距離d(002)が3.38Å以下、C軸方向の結晶子サイズLc(002)が500Å以上、平均粒径が10〜100μm、比表面積が8 m 2 /g 以下、アスペクト比が1.1〜5であるリチウム二次電池負極用黒鉛粒子。
【0009】
(2)該黒鉛粒子中の、B元素と、Fe、Si、Ni及びTiの少なくとも1種類の元素合計の含有量が0.01〜5重量%である上記(1)記載のリチウム二次電池負極用黒鉛粒子。
【0010】
(3)上記(1)又は(2)記載のリチウム二次電池負極用黒鉛粒子を集電体に塗布、一体化してなるリチウム二次電池用負極。
【0011】
(4)上記(3)記載の負極と、リチウム化合物を含む正極を有してなるリチウム二次電池。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明において、リチウム二次電池用負極炭素材料に好適な黒鉛粒子は、黒鉛化可能な材料に、異なる金属元素を含む少なくとも2種類の化合物を添加し、その混合物を焼成する工程を経て黒鉛化することにより製造できる。このように、黒鉛化可能な材料に異なる金属元素を含む少なくとも2種類の化合物を添加すると、黒鉛化可能な材料が黒鉛化される際にこれらの金属元素が黒鉛化触媒として働き、結晶性が向上し、充放電容量が増大する。この理由は明確ではないが、金属元素の触媒効果はそれらの元素の種類によって触媒効果を発揮する温度領域が異なり、2種類以上の金属元素を添加することで、触媒効果を発揮する温度領域が広くなるため、結晶が発達を進行させることができると思われる。また、触媒効果を発揮する温度が異なる2種類の金属元素のうち、高温側で効果を発揮する金属元素は、それよりも低温側で触媒効果を発揮する金属元素によって、その効果を増幅させることができると思われる。
【0013】
添加する金属元素を含む化合物としては、B、Fe、Si、Ti、Ni金属、それらの酸化物、炭化物、窒化物が、得られる黒鉛粒子の結晶性の点で好ましい。さらに、添加する2種類以上の金属元素を含む化合物のうち、1種類はB元素を含む化合物である。黒鉛化可能な材料の結晶性は、触媒を添加することによって高度に発達させることができるが、結晶が発達するに従い、粒子表面に黒鉛結晶のエッジが多く存在するようになるが、B元素を含む化合物を添加することで、粒子表面の黒鉛結晶のエッジの量を抑制しかつ比表面積を低下させさらには結晶性を向上させることが可能となる。黒鉛結晶のエッジは、電解液と反応しやすく、高温ではその反応が更に進行するため、表面の黒鉛結晶のエッジの量を減らすことによって、作製するリチウム二次電池のサイクル特性及び高温特性を向上させることができる。
【0014】
また、もう一種類の金属元素を含む化合物は、Fe、Si、Ti又はNiを含む化合物(酸化物、炭化物、窒化物等)である。これにより、サイクル特性、高温特性を維持して、高容量化を図ることができる。
【0015】
添加する異なる金属元素を含む2種類以上の化合物の配合量としては、特に制限はないが、B元素を含む化合物は、黒鉛化可能な材料と金属元素を含む化合物の合計量に対して、B元素換算で0.05〜5重量%である。この範囲が作製する黒鉛粒子を用いた負極炭素材料の表面状態及び作製するリチウム二次電池の第一サイクル目の不可逆容量の点で好ましく、0.05〜3重量%の範囲であればより好ましく、0.05〜1重量%の範囲であればさらに好ましい。B元素を含む化合物がB元素換算で0.05重量%未満であると作製する黒鉛粒子を用いた負極炭素材料の表面に黒鉛結晶のエッジが多くなり、その結果作製するリチウム二次電池のサイクル特性及び高温特性が低下する傾向がある。また、B元素を含む化合物がB元素換算で5重量%を超えると、作製する負極炭素材料中に、B元素が残存しやすく、残存したBによって第一サイクル目の不可逆容量が大きくなる傾向にある。
【0016】
また、Fe、Si、Ni、Tiの少なくとも1種類の元素を含む化合物の添加量は、黒鉛化可能な材料と金属元素を含む化合物の合計量に対して、各元素の元素換算で0.1〜30重量%の範囲であり、0.1〜15重量%の範囲がより好ましく、0.5〜10重量%の範囲であればさらに好ましく、0.5〜5重量%の範囲であれば特に好ましい。Fe、Si、Ni、Tiの少なくとも1種類の元素を含む化合物の添加量が、各元素の元素換算で0.1重量%未満であると、得られる黒鉛粒子の結晶性が低下し、リチウム二次電池の放電容量が低下する傾向がある。一方、30重量%を超えると、得られる黒鉛粒子を用いた負極炭素材料の表面に黒鉛結晶のエッジが多くなり、作製するリチウム二次電池のサイクル特性及び高温特性が低下する傾向がある。
【0017】
異なる金属元素を含む2種類以上の化合物と黒鉛化可能な材料との混合方法としては、特に制限はなく、粉末で混合してもよく、また、前記化合物を液体に溶融または分散させてから混合してもよい。
【0018】
黒鉛化可能な材料としては、特に制限はないが、平均粒径が好ましくは1〜50μmの炭素質粉末と黒鉛化可能なバインダを含む材料であることが好ましい。前記炭素質粉末と黒鉛化可能なバインダを混合することで、得られる黒鉛粒子のアスペクト比を小さくすることができ、その結果、作製するリチウム二次電池の急速充放電特性を向上させることができる。金属元素を含む化合物は、炭素質粉末と黒鉛化可能なバインダを混合する際に添加し、同時に混合することが好ましい。混合する温度は、黒鉛化可能なバインダが軟化溶融する温度であることが好ましく、その温度は使用する材料によって異なるが、50〜350℃の範囲が好ましい。また、黒鉛化可能なバインダを溶剤等によって、溶液にする場合には常温で混合しても良い。
【0019】
炭素質粉末としては、例えば、ニードルコークス等のコークス粉末、樹脂の炭化物、天然黒鉛粉末、人造黒鉛粉末等の黒鉛粉末が使用できる。
黒鉛化可能なバインダとしては、ピッチ、タール等の他、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等の有機系材料があげられる。
【0020】
前記の如く、黒鉛化可能な材料と金属元素を含む2種類以上の化合物を混合した黒鉛前駆体は、2500℃以上の温度で焼成して黒鉛化することが好ましい。本発明において、該黒鉛前駆体を2500℃以上の温度で黒鉛化する前に、粉砕、成形を行い、さらに700〜1300℃程度の温度で焼成しておいてもよい。また、700〜1300℃程度の温度で焼成した後、粉砕し、粒度を調整してから、粉体で2500℃以上の温度で焼成して黒鉛化してもよい。黒鉛化時の焼成温度は、得られる負極炭素材料の結晶性及び放電容量の点で2500℃以上が好ましく、2800℃以上であればより好ましく、3000℃以上であればさらに好ましい。焼成時の雰囲気は、酸化しにくい条件であれば特に制限はなく、例えば、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気、真空中等が挙げられる。
【0021】
次いで、粉砕し、粒度を調整して黒鉛粒子とするが、粉砕方法としては、特に制限はなく、例えば、ジェットミル、ハンマーミル、ピンミル等の衝撃粉砕方式をとることができる。粉砕後の黒鉛粒子の平均粒径は、10〜100μm、特に10〜50μmが好ましい。但し、黒鉛化前に粉砕し、粒度を調整してある場合は、黒鉛化後に粉砕しなくとも良い。
なお、本発明において平均粒径は、レーザー回折式粒度分布計により測定することができる。
【0022】
以上のように作製した黒鉛粒子は、その黒鉛粒子中に2種類以上の金属元素を含んでなるが、その含有量は0.01〜5重量%であることが好ましい。5重量%を超えると、作製するリチウム二次電池の第一サイクル目の不可逆容量が大きくなる傾向があり、かつ、リチウム二次電池の自己放電特性が低下する傾向にある。
【0023】
また、得られる黒鉛粒子は、結晶の層間距離d(002)が3.38Å以下、C軸方向の結晶子サイズLc(002)が500Å以上、平均粒径が10〜100μm、比表面積が8m2/g以下、アスペクト比が1.1〜5であるものであり、高容量で、サイクル特性、高温特性、急速充放電特性に優れたリチウム二次電池が得られる。
【0024】
ここで結晶の層間距離d(002)は、黒鉛粒子のX線広角回折における値であり、この値が3.38Åを超えると放電容量が小さくなる傾向がある。また、C軸方向の結晶子サイズLc(002)も、黒鉛粒子のX線広角回折における値であり、この値が500Å未満であると、放電容量が小さくなる傾向がある。
また、アスペクト比が1.1未満では、粒子間の接触面積が減ることにより、導電性が低下する傾向にある。一方、黒鉛粒子のアスペクト比が5より大きくなると、急速充放電特性が低下し易くなる傾向がある。なお、アスペクト比は、黒鉛粒子の長軸方向の長さをA、短軸方向の長さをBとしたとき、A/Bで表される。本発明におけるアスペクト比は、顕微鏡で黒鉛粒子を拡大し、任意に100個の黒鉛粒子を選択し、A/Bを測定し、その平均値をとったものである。
【0025】
また、黒鉛粒子の比表面積が8m2/gを超えると、得られるリチウム二次電池の第一サイクル目の不可逆容量が大きくなり、エネルギー密度が小さく、さらに負極を作製する際多くの結着剤が必要になるという問題がある。比表面積の測定は、BET法(窒素ガス吸着法)などの既知の方法をとることができる。
そして、得られる黒鉛粒子は、平均粒径で、10〜100μmが好ましく、10〜50μmがより好ましい。
【0026】
以上のようにして得られる黒鉛粒子は、そのまま本発明のリチウム二次電池用負極材料として使用することができる。
【0027】
本発明になるリチウム二次電池用負極炭素材料は、有機系結着剤及び溶剤と混練して、ペースト状にし、シート状、ペレット状等の形状に成形できる。
有機系結着剤としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレンターポリマー、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、イオン伝導率の大きな高分子化合物等が使用できる。
【0028】
前記イオン伝導率の大きな高分子化合物としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド、ポリエピクロルヒドリン、ポリファスファゼン、ポリアクリロニトリル等が使用できる。
炭素材料と有機系結着剤との混合比率は、炭素材料100重量部に対して、有機系結着剤を1〜20重量部用いることが好ましい。
【0029】
前記溶剤としては、特に制限はなく、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、イソプロパノール等があげられる。
溶剤の量も特に制限はなく、炭素材料は、有機系結着剤及び溶剤と混練し、粘度を調整した後、集電体に塗布し、該集電体と一体化して負極とされる。集電体としては、例えばニッケル、銅等の箔、メッシュなどの金属集電体が使用できる。なお一体化は、例えばロール、プレス等の成形法で行うことができ、またこれらを組み合わせて一体化しても良い。
【0030】
このようにして得られた負極は、リチウム化合物を含む正極とともに、本発明のリチウム二次電池に用いられる。
リチウム二次電池は、例えば、正極と負極をセパレータを介して対向して配置し、かつ電解液を注入することにより得ることができ、これは従来の炭素材料を負極に使用したリチウム二次電池に比較して、高容量でサイクル特性、高温特性、急速充放電特性に優れる。
【0031】
本発明におけるリチウム二次電池の正極はリチウム化合物を含むが、その材料に特に制限はなく、例えばLiNiO2、LiCoO2、LiMn24等を単独又は混合して使用することができる。
本発明におけるリチウム二次電池は、正極及び負極とともに、通常リチウム化合物を含む電解液を含む。
【0032】
電解液としては、LiClO4、LiPF6、LiAsF、LiBF4、LiSO3CF4等のリチウム塩を、例えばエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメトキシエタン、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、テトラヒドロフラン等の非水系溶剤に溶かしたいわゆる有機電解液や、固体若しくはゲル状のいわゆるポリマー電解質を使用することができる。
【0033】
セパレータとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを主成分とした不織布、クロス、微孔フィルム又はそれらを組み合わせたものを使用することができる。なお、作製するリチウム二次電池の正極と負極が直接接触しない構造にした場合は、セパレータを使用する必要はない。
【0034】
なお、図1に円筒型リチウム二次電池の一例の一部断面正面図を示す。図1に示す円筒型リチウム二次電池は、薄板状に加工された正極1と、同様に加工された負極2がポリエチレン製微孔膜等のセパレータ3を介して重ねあわせたものを捲回し、これを金属製等の電池缶7に挿入し、密閉化されている。正極1は正極タブ4を介して正極蓋6に接合され、負極2は負極タブ5を介して電池底部へ接合されている。正極蓋6はガスケット8にて電池缶(正極缶)7へ固定されている。
【0035】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明する。
実施例1
平均粒径10μmのコークス粉末50重量部、ピッチ15重量部、コールタール10重量部、ほう酸を1重量部(B元素換算で0.175重量部)及び酸化鉄5重量部(Fe元素換算で3.5重量部)を230℃で1時間混合した。次いで、この混合物を平均粒径25μmに粉砕し、該粉砕物を金型に入れプレス成形し、直方体に成形した。この成形体を窒素雰囲気中で1000℃で熱処理した後、さらに窒素雰囲気中で3000℃で熱処理し、黒鉛成形体を得た。さらにこの黒鉛成形体を粉砕し、黒鉛粒子とした。得られた黒鉛粒子の平均粒径、d(002)、Lc(002)、比表面積、アスペクト比及び灰分(金属残存量)の測定値を表1に示す。表1において灰分(%)とは、黒鉛粒子中の金属元素の残存量を示すものである。
【0036】
次いで、得られた黒鉛粒子をそのまま負極炭素材料として、この負極炭素材料90重量%に、N−メチル−2ピロリドンに溶解したポリフッ化ビニリデン(PVDF)を固形分で10重量%加えて混練して黒鉛ペーストを作製した。この黒鉛ペーストを厚さが10μmの圧延銅箔に塗布し、真空乾燥して、試験電極とした。
【0037】
作製した試料電極を3端子法による定電流充放電を行い、充放電容量の測定を行った。試料電極の評価は、図2に示すようにガラス製ビーカ型セル9に電解液10としてLiPF6をエチレンカーボネート(EC)及びジエチルカーボネート(DEC)(ECとDECは体積比で1:1)の混合溶媒に1モル/リットルの濃度になるように溶解した溶液を入れ、試料電極11、セパレータ12及び対極13を積層して配置し、さらに参照極14を上部から吊るしてモデル電池を作製した。なお、対極13及び参照極14には金属リチウムを使用し、セパレータ4にはポリエチレン微孔膜を使用した。得られたモデル電池を用いて試料電極11と対極13の間に、試料電極の面積に対して、0.3mA/cm2の定電流で0V (V vs. Li/Li+)まで充電し、1V(V vs. Li/Li+)まで放電する試験を行った。表1に負極炭素材料の1サイクル目の単位重量当りの放電容量及び不可逆容量を示す。
【0038】
次いで、得られた負極炭素材料を使用してリチウム二次電池を作製した。図1に示した本発明のリチウム二次電池を以下のようにして作製した。
正極活物質としてLiCoO2 88重量%を用いて、導電剤として平均粒径2μmの鱗片状黒鉛を7重量%、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)5重量%添加して、これにN−メチル−2−ピロリドンを加えて混合して正極合剤のペーストを調整した。
【0039】
同様に負極活物質として、前記の方法で作製した負極炭素材料に、結着剤としてPVDFを10重量%添加して、これにN−メチル−2−ピロリドンを加えて混合して負極合剤のペーストを調整した。
正極合剤を厚み25μmのアルミニウム箔の両面に塗付し、その後120℃で1時間真空乾燥した後、ロールプレスによって電極を加圧成形し、さらに巾40mm長さ285mmの大きさに切り出して正極を作製した。但し、正極の両端の長さ10mmの部分は正極合剤が塗布されておらずアルミニウム箔が露出しており、この一方に正極タブを超音波接合によって圧着している。
【0040】
一方、負極合剤は厚み10μmの銅箔の両面に塗布し、その後120℃で1時間真空乾燥した。真空乾燥後、ロールプレスによって電極を加圧成形し、さらに巾40mm長さ290mmの大きさに切り出して負極を作製した。正極と同様に、負極の両端の長さ10mmの部分は負極合剤が塗布されておらず銅箔が露出しており、この一方に負極タブを超音波接合によって圧着した。
【0041】
セパレータは、厚み25μm巾44mmのポリエチレン製の微孔膜を用いた。正極、セパレータ、負極、セパレータの順で重ね合わせ、これを捲回して電極群とした。これを単三サイズの電池缶に挿入して、負極タブを缶底溶接し、正極蓋をかしめるための絞り部を設けた。体積比が1:1のエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合溶媒に六フッ化リン酸リチウムを1モル/リットル溶解させた電解液を電池缶に注入した後、正極タブを正極蓋に溶接した後、正極蓋をかしめ付けて電池を作製した。
この電池を用いて、充放電電流300mA、充放電終止電圧をそれぞれ4.2V、2.8Vとして、45℃で充放電を繰り返した。45℃サイクル特性の測定結果を図3に示す。
【0042】
実施例2
平均粒径10μmのコークス粉末50重量部、ピッチ15重量部、コールタール10重量部、ほう酸を10重量部(B元素換算で1.75重量部)及び酸化鉄10重量部(Fe元素換算で7重量部)を230℃で1時間混合した。次いで、この混合物を平均粒径25μmに粉砕し、該粉砕物を金型に入れプレス成形し、直方体に成形した。この成形体を窒素雰囲気中で1000℃で熱処理した後、さらに窒素雰囲気中で3000℃で熱処理し、黒鉛成形体を得た。さらにこの黒鉛成形体を粉砕し、黒鉛粒子とした。得られた黒鉛粒子をそのまま負極炭素材料として用い、この負極炭素材料を実施例1と同様の方法で測定した平均粒径、d (002)、Lc(002)、比表面積、アスペクト比及び灰分、1サイクル目の炭素単位重量当りの放電容量及び不可逆容量の測定値を表1に示す。
また、負極に前記負極炭素材料を使用した以外は、実施例1と同様の方法で単三サイズのリチウム二次電池を作製し、実施例1と同様に45℃でのサイクル特性を測定した。その結果を図3に示す。
【0043】
実施例3
実施例2で作製した黒鉛粒子を、真空中で2600℃で熱処理して、黒鉛粒子を得た。得られた黒鉛粒子を負極炭素材料として、実施例1と同様の方法で測定した平均粒径、d(002)、Lc(002)、比表面積、アスペクト比及び灰分、1サイクル目の炭素単位重量当りの放電容量及び不可逆容量の測定値を表1に示す。
また、負極に前記負極炭素材料を使用した以外は、実施例1と同様の方法で単三サイズのリチウム二次電池を作製し、実施例1と同様に45℃でのサイクル特性を測定した。その結果を図3に示す。
【0044】
実施例4
平均粒径10μmのコークス粉末50重量部、ピッチ15重量部、コールタール10重量部、ほう酸を0.5重量部(B元素換算で0.0875重量部)及び炭化けい素25重量部(Si元素換算で17.5重量部)を230℃で1時間混合した。次いで、この混合物を平均粒径25μmに粉砕し、該粉砕物を金型に入れプレス成形し、直方体に成形した。この成形体を窒素雰囲気中で1000℃で熱処理した後、さらに窒素雰囲気中で3000℃で熱処理し、黒鉛成形体を得た。さらにこの黒鉛成形体を粉砕し、黒鉛粒子とした。得られた黒鉛粒子を負極炭素材料として、この負極炭素材料を実施例1と同様の方法で測定した平均粒径、d(002)、Lc(002)、比表面積、アスペクト比及び灰分、1サイクル目の炭素単位重量当りの放電容量及び不可逆容量の測定値を表1に示す。
また、負極に前記負極炭素材料を使用した以外は、実施例1と同様の方法で単三サイズのリチウム二次電池を作製し、実施例1と同様に45℃でのサイクル特性を測定した。その結果を図3に示す。
【0045】
比較例1
平均粒径10μmのコークス粉末50重量部、ピッチ15重量部、コールタール10重量部及びほう酸を10重量部(B元素換算で1.75重量部)を230℃で1時間混合した。次いで、この混合物を平均粒径25μmに粉砕し、該粉砕物を金型に入れプレス成形し、直方体に成形した。この成形体を窒素雰囲気中で1000℃で熱処理した後、さらに窒素雰囲気中で3000℃で熱処理し、黒鉛成形体を得た。さらにこの黒鉛成形体を粉砕し、黒鉛粒子とした。得られた黒鉛粒子を負極炭素材料として、この負極炭素材料を実施例1と同様の方法で測定した平均粒径、d(002)、Lc(002)、比表面積、アスペクト比及び灰分、1サイクル目の炭素単位重量当りの放電容量及び不可逆容量の測定値を表1に示す。
また、負極に前記負極炭素材料を使用した以外は、実施例1と同様の方法で単三サイズのリチウム二次電池を作製し、実施例1と同様に45℃でのサイクル特性を測定した。その結果を図3に示す。
【0046】
比較例2
平均粒径10μmのコークス粉末50重量部と、ピッチ15重量部と、コールタール10重量部と、酸化鉄5重量部(Fe元素換算で3.5重量部)を230℃で1時間混合した。次いで、この混合物を平均粒径25μmに粉砕し、該粉砕物を金型に入れプレス成形し、直方体に成形した。この成形体を窒素雰囲気中で1000℃で熱処理した後、さらに窒素雰囲気中で3000℃で熱処理し、黒鉛成形体を得た。さらにこの黒鉛成形体を粉砕し、黒鉛粒子とした。得られた黒鉛粒子を負極炭素材料として、この負極炭素材料を実施例1と同様の方法で測定した平均粒径、d(002)、Lc(002)、比表面積、アスペクト比及び灰分、1サイクル目の炭素単位重量当りの放電容量及び不可逆容量の測定値を表1に示す。
また、負極に前記負極炭素材料を使用した以外は、実施例1と同様の方法で単三サイズのリチウム二次電池を作製し、実施例1と同様に45℃でのサイクル特性を測定した。その結果を図3に示す。
【0047】
比較例3
平均粒径10μmのコークス粉末50重量部、ピッチ15重量部、コールタール10重量部及び炭化けい素25重量部(Si元素換算で17.8重量部)を230℃で1時間混合した。次いで、この混合物を平均粒径25μmに粉砕し、該粉砕物を金型に入れプレス成形し、直方体に成形した。この成形体を窒素雰囲気中で1000℃で熱処理した後、さらに窒素雰囲気中で3000℃で熱処理し、黒鉛成形体を得た。さらにこの黒鉛成形体を粉砕し、黒鉛粒子とした。得られた黒鉛粒子を負極炭素材料として、この負極炭素材料を実施例1と同様の方法で測定した平均粒径、d(002)、Lc(002)、比表面積、アスペクト比及び灰分、1サイクル目の炭素単位重量当りの放電容量及び不可逆容量の測定値を表1に示す。
また、負極に前記負極炭素材料を使用した以外は、実施例1と同様の方法で単三サイズのリチウム二次電池を作製し、実施例1と同様に45℃でのサイクル特性を測定した。その結果を図3に示す。
【0048】
【表1】
Figure 0003732654
【0049】
表1及び図3に示されるように、本発明の負極用炭素材料は、高容量で、高温サイクル特性に優れたリチウム二次電池として好適であることが示された。
【0050】
【発明の効果】
請求項1記載の黒鉛粒子の製造法によれば、高容量のリチウム二次電池炭素材料に好適な黒鉛粒子が得られる。
請求項2、3及び4記載の黒鉛粒子の製造法によれば、請求項1記載の発明の効果を奏し、さらにサイクル特性及び高温特性に優れたリチウム二次電池負極炭素材料に好適な黒鉛粒子が得られる。
請求項5記載の黒鉛粒子の製造法によれば、請求項1〜4記載の発明の効果を奏し、さらに急速充放電特性に優れたリチウム二次電池負極炭素材料に好適な黒鉛粒子が得られる。
【0051】
請求項6記載の黒鉛粒子は、負極炭素材料として、高容量で、リチウム二次電池に好適なものである。
請求項7及び8記載の黒鉛粒子は、請求項6記載の発明の効果を奏し、さらに、サイクル特性及び高温特性に優れたリチウム二次電池の負極炭素材料として好適なものである。
請求項9記載の黒鉛粒子は、請求項6〜8記載の発明の効果を奏し、さらに、急速充放電特性に優れたリチウム二次電池の負極材量として好適なものである。
【0052】
請求項10記載のリチウム二次電池用負極炭素材料は、高容量で、サイクル特性、高温特性及び急速充放電特性に優れるものである。
請求項11記載のリチウム二次電池用負極は、高容量で、サイクル特性、高温特性及び急速充放電特性に優れるものである。
請求項12記載のリチウム二次電池は、高容量で、サイクル特性、高温特性及び急速充放電特性に優れるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のリチウム二次電池の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の実施例で、充放電容量及び不可逆容量の測定に用いたリチウム二次電池の概略図である。
【図3】高温サイクル特性を示すグラフである。
【符号の説明】
1 正極
2 負極
3 セパレータ
4 正極タブ
5 負極タブ
6 正極蓋
7 電池缶
8 ガスケット
9 ガラスセル
10 電解液
11 試料電極
12 セパレータ
13 対極
14 参照極

Claims (4)

  1. 黒鉛化可能な材料と、異なる金属元素を含む少なくとも2種類の化合物とを含む混合物を、焼成して黒鉛化することにより得られるリチウム二次電池負極用黒鉛粒子であって、前記異なる金属元素を含む少なくとも2種類の化合物が、B元素を含む化合物とFe、Si、Ni及びTiの少なくとも1種類の元素を含む化合物であり、前記B元素を含む化合物の量が、黒鉛化可能な材料と金属元素を含む化合物の合計量に対して、B元素換算で0.05〜5重量%であり、Fe、Si、Ni及びTiの少なくとも1種類の元素を含む化合物の量が、黒鉛化可能な材料と金属元素を含む化合物の合計量に対して、元素換算で0.1〜30重量%であり、
    該黒鉛粒子が、B元素と、Fe、Si、Ni及びTiの少なくとも1種類の元素とを含み、
    該黒鉛粒子結晶の層間距離d(002)が3.38Å以下、C軸方向の結晶子サイズLc(002)が500Å以上、平均粒径が10〜100μm、比表面積が8m2/g以下、アスペクト比が1.1〜5であるリチウム二次電池負極用黒鉛粒子。
  2. 該黒鉛粒子中の、B元素と、Fe、Si、Ni及びTiの少なくとも1種類の元素合計の含有量が0.01〜5重量%である請求項1記載のリチウム二次電池負極用黒鉛粒子。
  3. 請求項1又は2記載のリチウム二次電池負極用黒鉛粒子を集電体に塗布、一体化してなるリチウム二次電池用負極。
  4. 請求項3記載の負極と、リチウム化合物を含む正極を有してなるリチウム二次電池。
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