JP3732260B2 - 2マス型フライホイール - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンのクランク軸に連結されて、該クランク軸の振動を第1フライホイールと第2フライホイールで動的に減衰させるようにした、2マス型フライホイールに関する。
【0002】
【従来の技術】
2マス型のフライホイールとしては、例えば実開平5-22900号公報に示されたものが知られており、この従来のフライホイールは、第1フライホールの内部にオイルダンパーと緩衝バネを配置し、これらを介して第2フライホイールを接続したものであり、第1フライホイールの各部には切削加工が施され、オイルダンパには複雑なオイル通路が連通されている。したがって、該フライホイールは生産性に問題があり高価にならざるを得ない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、生産性が高く、かつ摩擦による減衰作用をもつ2マス型フライホイールを得ることを課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための手段は、請求項1に記載したとおり、第1フライホイールの回転を緩衝バネを介して第2フライホイールに伝えるようにし、かつ、第1フライホイールと緩衝バネの間に、一端が第1フライホイールと摩擦結合し、他端が前記緩衝バネの両端面に係合する被動摩擦板をもつ摩擦連結部を並設した2マス型フライホイールにおいて、第2フィライホイールのハブに嵌着される内輪を持つベアリングを備え、第1フライホイールの内周側に、前記ベアリングの外輪の外周を囲む筒部と一端面に当接するフランジとをプレス加工により連設するとともに、第1フライホイールの回転軸線と同心に、前記筒部より外側の筒部と該外側の筒部の基部を囲んで軸線方向に凹むリング溝と該リング溝を囲む摩擦面とを該第1フライホイールをプレス加工することにより形成し、被動摩擦板の一端を前記外側の筒部に嵌合すると共に摩擦リングを介して第1フライホイールの摩擦面に圧接し、該被動摩擦板の他端を緩衝バネに係合したことを特徴とするものであり、プレス加工を用いるために生産性が高く、また、第1フライホイールの摩擦面に対する摩擦リングの密着性がリング溝によって向上し、被動摩擦板の作動が確実になる。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図1,2において1は2マス型のフライホイールであり、2はその駆動板でボルト3によってエンジンのクランク軸4に固定される。5は第1のマス部の主部を形成する板状の第1フライホイール、6はエンジン始動のために図外のピニオン及び始動モータで駆動されるリングギアである。
【0006】
駆動板2には、外周寄りの2〜4個所に位置決め突起21が設けられると共にボルト穴22が穿設され、第1フライホイール5には位置決め穴51とボルト穴52が穿設され、リングギア6には、位置決め穴61とねじ穴62が穿設される。そして、位置決め突起21を位置決め穴51,61に嵌合して3部材2,5,6の位置決めをしたのち、ボルト7をボルト穴52に挿入してねじ穴62にねじ込むことにより、一体に固定される。
【0007】
前記第1フライホイール5は、図3〜5に示す工程で作られる。図3は第1工程用のプレス機40を示し、41はそのベース、42は半球状の加圧面をもつパンチ,43は上向きに弾発されたクランパであり、上部の加圧部44にはダイ45が取付けられている。図中46はノックアウトピン、47は位置決めピン、48は押さえ部材である。
【0008】
軟鋼板よりなるワークWは、クランパ43とダイ45に保持されてパンチ2に向けて加圧され、球面部49が成形される。
【0009】
図4は第2工程用のプレス機50を示し、第1工程で成形した球面部49を反転して、図1に示すリング溝5a、筒部15,16になる部分と段部51,52とを2段形状に荒加工する。図4において53は外ダイ、54は外ダイ53中で上向きに弾発された内ダイである。パンチ55には、ダイ53,54の型面と板厚以上の間隙をもつ型面が形成され、中心に位置決めピン56を備える。
【0010】
このプレス機50でワークWの球面部49をその頂部から加圧すると、反転による変形と段付けの変形はなされるが、ワークWに新たな伸びは殆ど生じないため、2段形状の成形が容易に行われる。
【0011】
図5は第3工程用のプレス機60を示し、下型としては、クランプ61を中心にしてリング状のダイ62,63,64が嵌まり合い、上型としては内パンチ65と外パンチ66が嵌まり合っている。図中67,68は、後記する緩衝バネのバネ座を支持する段部を形成するためのパンチである。
【0012】
このプレス機60によりワークWを加圧することにより、第1フライホイール5の成形が終り、筒部15,16が成形されると共にリング溝5aと摩擦面5bが形成されるが、リング溝5a部分においては、図4の曲率半径の大きい状態から図5の曲率半径の小さい状態に変形するため、増肉作用が生じてリング溝5aの薄肉化が防止され、強度が大になる。また、ダイ63と外パンチ66の加圧によって平坦な摩擦面5bが成形される。
【0013】
そして、第1フライホイール5には、前記摩擦面5b、筒部15,16等を利用した摩擦連結部11が設けられ、該第1フライホイール5は、摩擦連結部11、バネ装置12を介してハブ13と一体の被動板33に接続され、該ハブ13には第2マス部の主部を形成する第2フライホイール14が固定される。131はクラッチ接続用のねじ孔、141はマスである。
【0014】
また内側の筒部15内にはベアリング17が保持され、第1フライホイール5、は該ベアリング17を介してハブ13に支持される。ベアリング17を保持する手段として、その外輪を筒部15から伸びるフランジ151とリベット18で固定された押し板19で挟持し、内輪をハブ13の段部132とCリング20で挟持している。
【0015】
前記摩擦連結部11は、エンジンからバネ装置12に伝わる振動回転を摩擦により減衰させるもので、外側の筒部16に摩擦リング22、被動摩擦板21の内端、摩擦リング23が順次嵌合され、一方の摩擦リング22は第1フライホイール5の摩擦面5bに接し、他方の摩擦リング23はワッシャ24に接し、該ワッシャ24には皿ばね25、押し板26が順次重ねられ、該押し板26はリベット27で第1フライホイール5に固定され、皿バネ25の弾発力が各接触面に作用する。この際、摩擦リング22の左面内縁はリング溝5aに対向するが、該リング溝5aは逃げ溝として作用するので、接触面に片当りは生じない。
【0016】
また、ワッシャ24と押板26の外周には爪241,261が設けられて互いにかみ合って係止されているから、第1フライホイール5のトルクは、摩擦リング22,23を介して被動摩擦板21に両側から伝達される。
【0017】
図2に示すように、被動摩擦板21にはコ字形の2種の凹部211,212が設けられ、両凹部間に舌片213が形成され、一方の凹部211に弱いバネ28が保持され、他の凹部212に2重の強いバネ29が保持されている。該バネ28,29は、図1でバネ装置12として示したものである。281,291は各バネの両端に嵌着したバネ座で、該バネ座281,291が舌片213に接する。
【0018】
また図1,2で明らかなように、バネ28,29の一側部を覆うと共に前記凹部211,212と共同してバネ座281,291を保持するバネ保持板30が溶接部31で第1フライホイール5に溶接されている。該バネ保持板30には、内向きの一対の段部301,301(図2)が2組設けられて、これにより前記のとおり凹部212と共に強いバネ29のバネ座291を保持し、更に第1フライホイール5とバネ保持板30によってグリースを収容する油室32が形成される。
【0019】
前記バネ保持板30の溶接に先立って、ハブ13に被動板33が溶接される。該被動板33には大小のコ字形の凹部331,332が設けられて舌片33が形成されている。この被動板33と一体のハブ13には前記第2フライホイール14が溶接されているから、被動板33も第2フライホイール14のマスの一部として作用する。34は油室32を閉じるオイルシールである。
【0020】
第1フライホイール5が図2で矢印A方向に回転すると、段部301で強いバネ29が押され、摩擦被動板21も矢印A方向に回転し、弱いバネ28は被動板33の舌片333に直ちにトルクを伝えるが、強いバネ29は舌片333に接触するに至らず、弱いバネ28のみが圧縮される。そして伝達トルクが更に増大すると強いバネ29が舌片333に接してこれにトルクを伝える。
【0021】
このとき、弱いバネ28の右側のバネ座281は、被動板33の凹部331の右側の端面と摩擦板21の凹部211の右側の端面に圧接され、左側のバネ座281は、バネ28の左側に位置する第1フライホイール5の段部301で押されてバネ28を圧縮する。これにより、第1フライホイール5と摩擦板21は相対運動し摩擦連結部11に摩擦抵抗が生じ、該相対運動は、トルクの変動に伴って往復運動として作用する。相対運動が矢印Aと逆方向の場合は前記と反対の作用をするから、振動回転が伝達されるとバネによる緩衝作用に加えて摩擦抵抗による振動減衰作用が生じる。
【0022】
トルク変動が大きく、弱いバネ28のみならず強いバネ29が圧縮される状態のときも、振幅に応じた振動減衰作用が得られる。
【0023】
このフライホイール1において、第1フライホイール5と第2フライホイール14による動的減衰作用は前記の従来のものと同じであるが、摩擦連結部11による減衰作用が加わり、かつ摩擦リング22と接する摩擦面5bの内周側にはリング溝5aが形成されているので、摩擦リング22と摩擦面5bの片当りが防止され、所要の摩擦抵抗を生じさせることができる。
【0024】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなとおり、請求項1の発明によれば、第1フライホイールと緩衝バネの間に摩擦連結部を設けたから、第1フライホイールと第2フライホイールによる動的振動減衰作用のほかに摩擦による振動減衰作用を加えることができる。しかも摩擦面の内周にリング溝を設けたから、摩擦リングの片当りを防止できると共に、グリース保持溝として作用して耐摩耗性が向上する効果がある。また、第1フライホイールをプレス成形により作るから、安価に多量生産をすることができ、しかも切削加工したもののように切削屑が発生しないから、切削屑の除去工程が不要である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明を実施したフライホイールの縦断面図
【図2】 同上正面図
【図3】 第1工程の金型の縦断面図
【図4】 第2工程の金型の縦断面図
【図5】 第3工程の金型の縦断面図
【符号の説明】
2 駆動板 5 第1フライホイール
5a リング溝 5b 摩擦面
11 摩擦連結部 12 バネ装置
13 ハブ 14 第2フライホイール
21 被動摩擦板 22,23 摩擦リング
30 バネ保持板 33 被動板

Claims (1)

  1. 第1フライホイールの回転を緩衝バネを介して第2フライホイールに伝えるようにし、かつ、第1フライホイールと緩衝バネの間に、一端が第1フライホイールと摩擦結合し、他端が前記緩衝バネの両端面に係合する被動摩擦板をもつ摩擦連結部を並設した2マス型フライホイールにおいて、
    第2フィライホイールのハブに嵌着される内輪を持つベアリングを備え、
    第1フライホイールの内周側に、前記ベアリングの外輪の外周を囲む筒部と一端面に当接するフランジとをプレス加工により連設するとともに、
    第1フライホイールの回転軸線と同心に、前記筒部より外側の筒部と該外側の筒部の基部を囲んで軸線方向に凹むリング溝と該リング溝を囲む摩擦面とを該第1フライホイールをプレス加工することにより形成し、被動摩擦板の一端を前記外側の筒部に嵌合すると共に摩擦リングを介して第1フライホイールの摩擦面に圧接し、該被動摩擦板の他端を緩衝バネに係合したことを特徴とする2マス型フライホイール。
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