JP3732193B2 - アルミニウム−炭化珪素質複合体及びその製造方法 - Google Patents

アルミニウム−炭化珪素質複合体及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、混成集積回路基板のベース板として好適なアルミニウム−炭化珪素質複合体の製造方法及びそれを用いる構造体に関する。なお、本発明における長軸は、平板の形状が四角形の場合は対角線を、円の場合は直径を、楕円の場合は長軸を、その他の形状の場合は最大長の軸をそれぞれ表す。
今日、半導体素子の高集積化、大型化に伴い、発熱量は増加の一途をたどっており、いかに効率よく放熱させるかが課題となっている。そして、高絶縁性・高熱伝導性を有する例えば窒化アルミニウム基板、窒化珪素基板等のセラミックス基板の表面に、銅製又はアルミニウム製の金属回路を、また裏面に銅製又はアルミニウム製の金属放熱板が形成されてなる回路基板が、例えばパワーモジュール用基板として使用されている。
従来の回路基板の典型的な放熱構造は、回路基板の裏面(放熱面)の金属板(例えば銅板)を介してベース板が半田付けされてなるものであり、ベース板としては銅、アルミニウムが一般的であった。しかしながら、この構造においては、半導体装置に熱負荷がかかった時に、ベース板と回路基板の熱膨張係数差に起因するクラックが半田層に発生し、その結果放熱が不十分となって半導体を誤作動させたり、破損させたりする問題があった。
そこで、熱膨張係数を回路基板のそれに近づけたベース板として、アルミニウム合金−炭化珪素質複合体が提案されている(特許文献1参照)。
特開平3−509860号公報。
また、ベース板は放熱フィンと接合して用いることが多く、その接合部分の形状や反りもまた重要な特性として挙げられる。例えば、ベース板を放熱フィンに接合する場合、一般的にはベース板の周縁部に設けられた穴を利用して放熱フィンや放熱ユニット等にねじ固定して用いられるが、ベース板の放熱フィン等に接する面が凹面であったり、凸面であっても微少な凹凸が多く存在すると、ベース板と放熱フィンとの間に隙間が生じ、高熱伝導性の放熱グリースを用いて接合を行っても、熱伝達性が著しく低下し、その結果セラミックス回路基板、ベース板、放熱フィン等で構成されるモジュール全体の放熱性が著しく低下してしまうという問題があった。
そこで、ベース板と放熱フィンとの間に出来るだけ隙間が出来ないように、予めベース板に凸型の反りを付けたものを用いることが多い。この反りは通常、所定の形状を有する治具を用い、加熱下、ベース板に圧力をかけることで得られるが、この方法によって得られた反りは、反り量のバラツキが大きく、且つ形状が一定でないため品質が安定しないという問題があった。また、反り形状のバラツキにより、放熱フィンとの間に大きな隙間が生じるといった問題があった。
ベース板表面を機械加工により切削することで反りを付ける方法もあるが、アルミニウム−炭化珪素質複合体は、非常に硬く、ダイヤモンド等の工具を用い多くの研削が必要となるので、製品価格が高くなるという問題があった。
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、混成集積回路基板用ベース板として好適なアルミニウム−炭化珪素質複合体の安価な反り付け方法とその構造体を提供することである。
即ち、本発明は、平板状の炭化珪素質多孔体にアルミニウムを主成分とする金属(以下、アルミニウム合金という)を含浸してなり、両主面の夫々にアルミニウム合金からなるアルミニウム層を有し、一主面が回路基板に接合され他の一主面が放熱面として用いられるアルミニウム−炭化珪素質複合体であって、該アルミニウム層を機械加工して、放熱面の長軸上の反りを200mmあたり0〜400μmとすることを特徴とするアルミニウム−炭化珪素質複合体であり、回路基板接合面のアルミニウム層の平均厚みが0.1mm以上であり、両主面のアルミニウム層の平均厚みの差が、厚い方のアルミニウム層の平均厚みの50%以内である該アルミニウム−炭化珪素質複合体であり、熱伝導率が180W/mK以上、熱膨張係数が9×10−6/K以下である該アルミニウム−炭化珪素質複合体である。さらに、機械加工後と、加工歪み除去のため大気中で530℃、10分間加熱処理(アニール処理)後の放熱面の長軸上の反り量の差が、200mmあたり30μm以下であることを特徴とする該アルミニウム−炭化珪素質複合体であり、高圧鍛造法により製造されることを特徴とする該アルミニウム−炭化珪素質複合体である。
本発明のアルミニウム−炭化珪素質複合体は、低熱膨張係数、高熱伝導率という特性を有し、両主面のアルミニウム層を機械加工し反りを形成させることが可能なため、従来の煩雑な反り付け方法に比べて、簡単に所定の形状に加工出来、特に高信頼性を要求される半導体部品を搭載するセラミックス回路基板のベース材として好適である。
金属-セラミックス複合体の製法については、大別すると含浸法と粉末冶金法の2種がある。このうち粉末冶金法は熱伝導率等の特性面で十分なものが得られておらず、実際に商品化されているのは、含浸法によるものである。含浸法にも種々の製法が有り、常圧で行う方法と、高圧下で行う方法(高圧鍛造法)がある。高圧鍛造法には、溶湯鍛造法とダイキャスト法がある。
本発明に適用出来る方法は、高圧下で含浸を行う高圧鍛造法であり、溶湯鍛造法とダイキャスト法のどちらも使用できるが、溶湯鍛造法がより好ましい。高圧鍛造法は、高圧容器内に、セラミックス多孔体(以下、プリフォームという)を装填し、これにアルミニウム合金の溶湯を高圧で含浸させて複合体を得る方法である。
以下、本発明について、溶湯鍛造法による製法を説明する。
原料である炭化珪素粉末(必要に応じて結合材を添加する)を、成型、仮焼してプリフォームを作製し、該プリフォームを型枠内に収めた後、前記型枠の両主面に1枚または多数枚の高純度アルミニウム板を直接接するように配置し、一つのブロックとする。前記ブロックを約500〜650℃で予備加熱後、高圧容器内に1個または2個以上配置し、ブロックの温度低下を防ぐために出来るだけ速やかにアルミニウム合金の溶湯を30MPa以上の圧力で加圧し、アルミニウム合金をプリフォームの空隙中に含浸させることで、両主面にアルミニウム層を設けたアルミニウム−炭化珪素質複合体が得られる。なお、含浸時の歪み除去の目的でアニール処理が行われることもある。アニール処理には、アルミニウム層と炭化珪素質複合体の接合をより強固にするという効果もある。
次に、得られたアルミニウム−炭化珪素質複合体の反り付け方法を説明する。放熱面のアルミニウム層を、旋盤等により任意の反り形状に加工でき、バラツキの殆ど無い球面形状に仕上げることも可能である。さらに、加工歪み除去の為のアニール処理を施すことにより、回路基板接合時の反りのバラツキを低減することが可能である。
本発明において使用する多孔質炭化珪素成形体(以下、SiCプリフォームという)の製造方法に関して特に制限はなく、公知の方法で得ることが可能である。例えば、炭化珪素粉末にシリカ或いはアルミナ等を結合材として添加して混合、成形し、800℃以上で焼成することによって得ることができる。成形方法についても特に制限は無く、プレス成形、押し出し成形、鋳込み成形等を用いることができ、必要に応じて保形用バインダーの併用が可能である。
アルミニウム−炭化珪素質複合体の特に重要な特性は、熱伝導率と熱膨張係数である。アルミニウム−炭化珪素質複合体中の炭化珪素(SiC)含有率の高い方が、熱伝導率が高く、熱膨張係数が小さくなるため好ましいが、あまりにも含有率が高い場合には含浸操作が容易でなくなる。実用的には、SiCプリフォームの相対密度が55〜75体積%の範囲にあって、粗い炭化珪素粒子を多く含むものが好ましい。また前記成形体の強度は、曲げ強度で3MPa以上あれば、取り扱い時や含浸中の割れの心配がなく、好ましい。
SiCプリフォームを得る為の、原料炭化珪素(SiC)粉については、粒度調整を行うことが好ましい。粗粉のみでは、強度発現に乏しく、微粉のみでは、得られる複合体が高い熱伝導率を望めないからである。本発明者の検討によれば、例えば、40μm以上の粒径の炭化珪素粗粉40〜80質量%と、15μm以下の粒径の炭化珪素微粉を60〜20質量%とを混合することが好ましい。
SiCプリフォームは、炭化珪素粉末の成形体を、脱脂、焼成することにより得られる。成形体を非酸化性雰囲気下或いは酸化性雰囲気下で焼成するが、焼成温度は、800℃以上であれば、3MPa以上の曲げ強度のプリフォームとすることができる。焼成温度が高い程、プリフォームが高強度となり好ましいが、酸化性雰囲気下で焼成する場合は炭化珪素(SiC)が酸化する場合がある。1100℃を超える温度で焼成すると、アルミニウム−炭化珪素質複合体の熱伝導率が低下してしまうので、1100℃以下の温度で焼成することが望ましい。焼成時間は、SiCプリフォームの大きさ、焼成炉への投入量、焼成雰囲気等の条件に合わせて、適宜決められる。
一方、本発明のアルミニウム−炭化珪素質複合体中のアルミニウム合金は、含浸時にプリフォームの空隙内に十分に浸透するために融点がなるべく低いことが好ましく、特に表面に高純度のアルミニウム層を有するアルミニウム−炭化珪素複合体を得る場合には、融点が一層低いことが好ましい。このようなアルミニウム合金として、例えばシリコンを7〜25質量%含有したアルミニウム合金が挙げられる。更にマグネシウムを含有させることは、炭化珪素粒と金属部分との結合がより強固になり好ましい。アルミニウム合金中のアルミニウム、シリコン、マグネシウム以外の金属成分に関しては、極端に特性が変化しない範囲であれば特に制限はなく、銅等が含まれていても良い。
本発明において、SiCプリフォーム表面のアルミニウム層は、SiCプリフォーム中の空隙に含浸されるアルミニウム合金よりも高融点のものであれば、どの様なものでも良いが、セラミックス回路基板との接合工程、モジュール組立て工程、電子部品の実装工程、及びモジュールとして使用される際に発生する応力を緩和しやすいことから、高純度のアルミニウムが選択されることが多い。通常、1枚または多数枚の高純度のアルミニウム板を、SiCプリフォームの表面に直接接するように配置する。アルミニウムは、98.5質量%以上の純度を有するものであれば、問題無く使用できる。またこの高純度アルミニウム板には、複合化時に用いるアルミニウム合金との反応を制御する目的で、必要に応じてアルマイト処理等の表面処理を施したものを用いることも可能である。
SiCプリフォームへのアルミニウム合金含浸時の歪み除去の目的で行うアニール処理は、400℃〜550℃の温度で行うことが好ましい。アニール温度が400℃未満であると、複合体内部の歪みが十分に開放されずに機械加工後のアニール処理工程で反りが大きく変化してしまう。また、アニール温度が550℃を越えると含浸で用いたアルミニウム合金が溶融する恐れがある。
更に、アニール温度が400℃〜550℃であってもアニール時間が10分未満であると、複合体内部の歪みが十分に開放されずにその後の機械加工工程後の加工歪み除去のためのアニール処理工程で反りが大きく変化してしまう恐れがある。
アルミニウム−炭化珪素質複合体表面に設けられるアルミニウム層の厚みは、機械加工で両主面を加工する場合には両主面の厚みを等しくしてもよいが、放熱面側のみを加工する場合は、加工後に両主面のアルミニウム層の厚みが大きく異ならないように、予め加工する放熱面側のアルミニウム層の厚みを厚くしておく必要がある。回路基板接合面のアルミニウム層の平均厚みは0.1mm以上であり、両主面のアルミニウム層の平均厚みの差が、厚い方のアルミニウム層の平均厚みの50%以内であることが好ましい。回路基板接合面のアルミニウム層の平均厚みが0.1mm未満であると、機械加工の際にAl−SiC部分に加工刃が当たってしまい、チッピングの原因となると共にAl−SiC層が露出しめっき不良の原因となる恐れがある。また、両主面のアルミニウム層の平均厚みの差が、厚い方のアルミニウム層の平均厚みの50%を越えると、その後の加工歪み除去のためのアニール処理の際に、両主面のアルミニウム層の熱膨張係数差により反り量が大きく変化する恐れがある。
本発明において、放熱面または、回路接合面の反り形成は旋盤等の機械加工にて行う。旋盤等への被加工品の固定は被加工品の周縁部に設けられた穴等を利用してねじ止めする方法が一般的に用いられる。本発明においては、アルミニウム合金からなるアルミニウム層を機械加工するため、理想的な球面形状の放熱面を得ることが可能であり、良好な放熱特性と共に応力緩和性を有するアルミニウム−炭化珪素質複合体を得ることができる。
機械加工前のベース板のアルミニウム層の厚みがほぼ等しい場合には、両主面とも加工を行い、両主面のアルミニウム層の平均厚みの差が、厚い方のアルミニウム層の平均厚みの50%以内にする必要がある。回路基板面を機械加工する際には、放熱面側の様な反り加工を行う必要はなく平面研削でも構わないが、加工費用が放熱面のみの加工に比べ高くなるという問題がある。加工前のベース板の放熱面側のアルミニウム層の厚みを予め厚くした場合は、放熱面のみを加工し、両主面のアルミニウム層の平均厚みの差が、放熱面のアルミニウム層の平均厚みの50%以内とすることが可能である。
さらに、機械加工後の両主面のアルミニウム層の平均厚みの合計は1.0mm以下にすることが望ましい。両主面のアルミニウム層の平均厚みの合計が1.0mmを越えるとベース板全体の熱膨張係数が大きくなり、半導体部品搭載後に熱負荷がかかった際、ベース板とセラミックス回路基板の熱膨張係数差に起因するクラックが半田層に発生し、その結果、放熱が不十分となって半導体を誤作動させたり、破損させたりする問題が起こる恐れがある。
機械加工後の反り量は、放熱面の長軸上で200mmあたり0〜400μmになるように加工することが好ましい。凹型の反りになるとその後のモジュール組み立て工程でベース板と放熱フィンとの間に隙間が生じ、高熱伝導性の放熱グリースを用いて接合を行っても、熱伝達性が著しく低下し、その結果セラミックス回路基板、ベース板、放熱フィン等で構成されるモジュール全体として放熱性が著しく低下してしまう。また、機械加工品の反り量が400μmを越えると、放熱フィンとの接合の際のネジ止め時に、ベース板、又はセラミックス回路基板にクラックが発生してしまう恐れがある。
また、回路基板面の長軸上の反りは200mmあたり−200μm〜200μmであることが好ましい。回路基板面の長軸上の反りが前記範囲をはずれると、回路基板接合の際の半田厚みが一定にならず、又半田付け時にボイドが発生し易く、放熱性が低下してしまう恐れがある。
加工歪み除去のためのアニール処理は400℃〜550℃の温度で10分間以上行う方が好ましい。アニール温度が400℃未満であったり、アニール温度が400℃〜550℃であってもアニール時間が10分未満であると、複合体内部の歪みが十分に開放されずにその後の回路基板の半田付け工程等で反りが大きく変化してしまう恐れがある。また、アニール温度が550℃を越えると含浸で用いたアルミニウム合金が溶融する恐れがある。
前記のとおり例示した方法により、本発明のアルミニウム−炭化珪素質複合体が得られるが、両主面上にアルミニウム層を有し、しかも放熱面が理想的な球面形状をしているので、良好な放熱特性と共に応力緩和性を有しており、例えば、セラミックス回路基板と放熱フィン等の放熱部品との間に介在するベース板として好適な材料である。
本発明のアルミニウム−炭化珪素質複合体は前記特徴を有するため、セラミックス回路基板のベース板として使用すると、ベース板と放熱フィン等の放熱部品との接触が良好となり、セラミックス回路基板、ベース板、放熱フィン等で構成されるモジュール全体の放熱特性に優れるという効果を奏するものである。
本発明のアルミニウム−炭化珪素質複合体は、熱伝導率が180W/mK以上、熱膨張係数が9×10−6/K以下であることが好ましい。前記効果に加えて、高熱伝導率で、しかも半導体部品やセラミックス回路基板と同等レベルの低膨張率であるため、これを用いた放熱部品、更にそれを用いたモジュールは、放熱特性に優れ、また、温度変化を受けても変形し難く、その結果、高信頼性が得られるという特徴がある。
また、高純度アルミニウム板の設置に関しては、SiCプリフォームへのアルミニウム合金含浸前の積層の段階で枠内に設置する方法の他に、含浸後に設置することも可能である。
型枠内にSiCプリフォームのみを配置しアルミニウム合金を含浸した後、得られたアルミニウム−炭化珪素質複合体の両主面を乾式ブラストや、エッチング等の処理により清浄化する。その後、高純度アルミニウム板とろう材合金箔からなる積層物のろう材合金箔面と、アルミニウム−炭化珪素質複合体が接触するよう積層後、非酸化性雰囲気下、高温で接合することによっても、アルミニウム−炭化珪素質複合体を得ることが可能である。
この方法で用いるろう材は、ペースト状のものも使用可能であるが、取り扱い上合金箔が好ましい。SiCプリフォーム含浸用のアルミニウム合金として、シリコンを12質量%含有したものを用いた場合、ろう材合金箔はAlとCuを主成分とし、アルミニウム合金よりも融点の低いものが好ましい。例示すればCu1〜6質量%、特に1.5〜5質量%のAl−Cu合金箔、Cu4質量%とMg0.5%質量を含む2018合金箔、0.5質量%のMnを含む2017合金箔、更にはJIS合金の2001、2003、2005、2007、2011、2014、2024、2025、2030、2034、2036、2048、2090、2117、2124、2218、2224、2324、7050、7075等の合金箔が使用可能である。また、Mg、Zn、In、Mn、Cr、Ti、Bi等の第三成分を、合計で5質量%まで含むものの使用も可能である。
Al−Cu合金箔またはこれに第三成分が付加された合金箔において、Cuが1質量%未満では、接合温度が高くなるため、アルミニウム−炭化珪素質複合体中のアルミニウム合金が溶融化する恐れがある。また6質量%を超えると、接合後のろう材の拡散部が特に硬くなって信頼性が低下する恐れがある。特に好ましいろう材合金箔は、Al86質量%以上、Cu1〜6質量%、Mg3質量%以下(0を含まず)、好ましくはMg0.2〜2.0質量%である。
ろう材合金箔の厚みは、高純度アルミニウム板の厚みに対し1/50〜1/10の厚みであることが好ましい。1/50未満の厚みでは、十分な接合が難しくなり、また1/10を超えるとろう材の拡散によりアルミニウム層が硬くなる。より好ましくは、100μm以下の厚みであって、しかも高純度アルミニウム板の厚みに対して1/40〜1/12である。即ち、高純度アルミニウム板の厚みが0.4〜0.6mmの場合、ろう材合金箔は、厚み10〜50μm、特に厚み15〜30μmが好適となる。
接合は、酸素濃度1〜100ppmの窒素、アルゴン、真空等の非酸化性雰囲気中で行われる。酸素濃度が100ppmを超えると、ろう材が酸化され、接合が不十分となる。また、酸素濃度が1ppm未満では、ろう材の濡れ性が極端に良くなり、温度制御が困難となるため好ましくない。また、装置が大がかりなものとなるので製品コストの面からも好ましくない。
接合は、温度530〜570℃で5〜60分間保持して行われる。530℃未満では接合が十分でなく、また570℃を超えると、銅成分等のアルミニウム板への拡散が過度となり、接合層が硬くなり、その後の熱不可により接合層から剥離する可能性がある。保持時間が5分間よりも短いと接合が不十分となり、また60分間よりも長くなると、銅成分等のアルミニウム板への拡散が過度となり、接合層が硬くなる。
ろう材を挟んだアルミニウム−炭化珪素質複合体と高純度アルミニウム板の積層体は、圧力3.0MPa以上で加圧しつつ接合される。3.0MPa未満であると、接合が不十分となる。加圧力の上限には限定はないが、4.5MPa程度で十分である。
炭化珪素粉末A(太平洋ランダム社製:NG−220、平均粒径:60μm)70g、炭化珪素粉末B(屋久島電工社製:GC−1000F、平均粒径:10μm)30g、及びシリカゾル(日産化学社製:スノーテックス)10gを秤取し、攪拌混合機で30分間混合した後、185mm×135mm×4.6mmの寸法の平板状に圧力10MPaでプレス成形した。
得られた成形体を、大気中、温度900℃で2時間焼成して、相対密度(嵩密度)が65体積%のSiCプリフォームを得た。
得られたSiCプリフォームを、溶湯が流入できる湯口のついた185×135×5.2mmの鉄製枠に入れ、片面に185mm×135mm×0.4mm、もう片方に185mm×135mm×0.2mmの高純度アルミニウム板(純度99.99質量%以上のアルミニウム板、以下4N材という)を配し、両面をカーボンコートしたSUS板で挟んで一体としたものを電気炉で600℃に予備加熱した。次にそれをあらかじめ加熱しておいた内径300mmのプレス型内に収め、シリコンを12質量%、マグネシウムを0.5質量%含有するアルミニウム合金の溶湯を注ぎ、100MPaの圧力で20分間加圧して炭化珪素質多孔体にアルミニウム合金を含浸させた。室温まで冷却した後、湿式バンドソーにて鉄枠等を切断し、挟んだSUS板をはがした後、含浸時の歪み除去のために530℃の温度で3時間アニール処理を行い、アルミニウム−炭化珪素質複合体を得た。
得られたアルミニウム−炭化珪素質複合体の縁周部4隅に直径8mmの加工穴を設け、旋盤治具に加工穴を利用してネジ固定し、アルミニウム層の厚みが0.4mmの面に200mmあたり200μmの反りを付け、球面形状になるよう加工した。また、研削量は、加工後の両主面のアルミニウム層平均厚みが等しくなるように、平均200μmの研削を行い平均厚み5.0mmとした。機械加工後、マッフル炉を用いて530℃の温度で3時間アニール処理を行い加工歪みの除去を行った。
実施例1で得られたアルミニウム−炭化珪素質複合体の縁周部4隅に直径8mmの加工穴を設け、旋盤治具に加工穴を利用してネジ固定した。アルミニウム層の厚みが0.4mmの面に、長辺方向に200mmあたり216μmの反りを、また、短辺方向に200mmあたり74μmの反りを付け、カマボコ形状になるよう加工した。研削量は、加工後の両主面のアルミニウム層平均厚みが等しくなるように平均200μmの研削を行い平均厚み5.0mmとした。機械加工後、マッフル炉を用いて530℃の温度で3時間アニール処理を行い加工歪みの除去を行った。
実施例1で得られたSiCプリフォームを、溶湯が流入できる湯口のついた185×135×4.6mmの鉄製枠に入れ、両面をカーボンコートしたSUS板で挟んで一体としたものを電気炉で600℃に予備加熱した。次にそれをあらかじめ加熱しておいた内径300mmのプレス型内に収め、シリコンを12質量%含有するアルミニウム合金の溶湯を注ぎ、100MPaの圧力で20分間加圧して炭化珪素質多孔体にアルミニウム合金を含浸させた。室温まで冷却した後、湿式バンドソーにて鉄枠等を切断し、挟んだSUS板をはがした後、含浸時の歪み除去のために530℃の温度で3時間アニール処理を行い、アルミニウム−炭化珪素質複合体を得た。
得られたアルミニウム−炭化珪素質複合体表面を、圧力0.4MPa、搬送速度1.0m/minの条件でアルミナ砥粒にてブラスト処理を行い清浄化した後、一主面には185mm×135mm×0.02mmのアルミニウム箔(7075材)と、その外側に185mm×135mm×0.4mmの高純度アルミニウム板(4N材)を、もう一主面には185mm×135mm×0.02mmのアルミニウム箔(7075材)と、その外側に185mm×135mm×0.2mmの高純度アルミニウム板(4N材)を配置した後、圧力3.5MPaで加圧を行い10ppmの窒素雰囲気中にて550℃の温度で15分保持し接合した。
接合後、得られた複合体の縁周部4隅に直径8mmの加工穴を設け、旋盤治具に加工穴を利用してネジ固定し、アルミニウム層の厚みが0.4mmの面に200mmあたり200μmの反りを付け、球面形状になるよう加工した。また、研削量は、加工後の両主面のアルミニウム層平均厚みが等しくなるように平均200μmの研削を行い平均厚み5.0mmとした。機械加工後、マッフル炉を用いて530℃の温度で3時間アニール処理を行い加工歪みの除去を行った。
実施例1で得られたSiCプリフォームを、溶湯が流入できる湯口のついた185×135×5.4mmの鉄製枠に入れ、片面に185mm×135mm×0.4mm、もう片方に185mm×135mm×0.4mmの4N材を配し、両面をカーボンコートしたSUS板で挟んで一体としたものを電気炉で600℃に予備加熱した。次にそれをあらかじめ加熱しておいた内径300mmのプレス型内に収め、シリコンを12質量%含有するアルミニウム合金の溶湯を注ぎ、100MPaの圧力で20分間加圧してSiCプリフォームにアルミニウム合金を含浸させた。室温まで冷却した後、湿式バンドソーにて鉄枠等を切断し、挟んだSUS板をはがした後、含浸時の歪み除去のために530℃の温度で3時間アニール処理を行い、アルミニウム−炭化珪素質複合体を得た。
得られた複合体の縁周部4隅に直径8mmの加工穴を設け、旋盤治具に加工穴を利用してネジ固定し、片側のアルミニウム層には平面加工を、また、もう片側のアルミニウム層には200mmあたり200μmの反りを付け、球面形状になるよう加工した。また、研削量は、両主面とも平均200μmの研削を行い平均厚み5.0mmとした。機械加工後、マッフル炉を用いて530℃の温度で3時間アニール処理を行い加工歪みの除去を行った。
実施例1で得られたSiCプリフォームを、溶湯が流入できる湯口のついた185×135×5.2mmの鉄製枠に入れ、片面に185mm×135mm×0.5mm、もう片方に185mm×135mm×0.1mmの4N材を配し、両面をカーボンコートしたSUS板で挟んで一体としたものを電気炉で600℃に予備加熱した。次にそれをあらかじめ加熱しておいた内径300mmのプレス型内に収め、シリコンを12質量%含有するアルミニウム合金の溶湯を注ぎ、100MPaの圧力で20分間加圧してSiCプリフォームにアルミニウム合金を含浸させた。室温まで冷却した後、湿式バンドソーにて鉄枠等を切断し、挟んだSUS板をはがした後、含浸時の歪み除去のために530℃の温度で3時間アニール処理を行い、アルミニウム−炭化珪素質複合体を得た。
得られた複合体の縁周部4隅に直径8mmの加工穴を設け、旋盤治具に加工穴を利用してネジ固定し、アルミニウム層の厚みが0.5mmの面に200mmあたり200μmの反りを付け、球面形状になるように加工した。また、研削量は、平均200μmの研削を行い平均厚み5.0mmとした。機械加工後、マッフル炉を用いて530℃の温度で3時間アニール処理を行い加工歪みの除去を行った。
(比較例1)
実施例1で得られたSiCプリフォームを、溶湯が流入できる湯口のついた185×135×5.0mmの鉄製枠に入れ、両面をカーボンコートしたSUS板で挟んで一体としたものを電気炉で600℃に予備加熱した。次にそれをあらかじめ加熱しておいた内径300mmのプレス型内に収め、シリコンを12質量%含有するアルミニウム合金の溶湯を注ぎ、100MPaの圧力で20分間加圧してSiCプリフォームにアルミニウム合金を含浸させた。室温まで冷却した後、湿式バンドソーにて鉄枠等を切断し、挟んだSUS板をはがした後、含浸時の歪み除去のために530℃の温度で3時間アニール処理を行い、アルミニウム−炭化珪素質複合体を得た。
得られたアルミニウム−炭化珪素質複合体の上下に250mmあたり250μmの球面形状の凹凸カーボン型を配置し、大気中、530℃の温度で10分間加熱し5MPaの圧力にて10分間加圧し200mmあたり200μmの反りが付くように反り付けを行った。
前記実施例、比較例で得られたアルミニウム−炭化珪素質複合体より、機械加工により各サンプルの対角線に沿って切断を行い、切断により露出した両主面のアルミニウム層の厚みをそれぞれ対角線に等間隔に20点測定し、その平均の厚みを算出した後、((両主面のアルミニウム層の平均厚みの差)/(厚い方のアルミニウム層の平均厚み)×100)の値を算出した。また、研削加工により熱膨張係数測定用試験体(直径3mm長さ10mm)、熱伝導率測定用試験体(直径11mm厚さ3mm)、反り形状測定用試験体(100mm×50mm×3mm)の試験片を作製した。それぞれの試験片を用いて、25〜250℃の熱膨張係数を熱膨張計(セイコー電子工業社製;TMA300)で、25℃での熱伝導率をレーザーフラッシュ法(理学電機社製;LF/TCM−8510B)で測定した。反り形状については、輪郭形状測定機(東京精密社製;コンターレコード1600D−22)を使用した。機械加工後およびアニール後の反りについて、加工面の対角線上200mmあたりの反りを各20枚分測定し、反りのバラツキを知るために2本の対角線上の反りの差の標準偏差を算出した。結果を表1に示す。
Figure 0003732193
また、前記実施例1及び比較例1で得られたアルミニウム−炭化珪素質複合体の放熱特性を確認するため、各複合体を機械加工により中央部分から36mm×36mmに切り出しを行った。切り出した複合体の凹面中央部に13mm×13mm×0.4mmのシリコンチップを半田の厚みが0.1mmになるように共晶半田にて半田付けを行い、凸面には36mm×36mm×6mmのアルミニウム(5052材)をグリース(熱伝導率1.09W/mK品)の厚みが0.05mmになるようにグリースを塗布し熱抵抗評価サンプルを作成した。サンプルのシリコンチップ上に6.6mm□の発熱部を設け、大気中25℃の温度下で、発熱部に100Wの熱量を負荷し平衡状態とした後、複合体中央部の温度を熱電対により測定した。結果を表2に示す。
Figure 0003732193

Claims (5)

  1. 平板状の炭化珪素質多孔体にアルミニウムを主成分とする金属を含浸してなり、両主面の夫々にアルミニウムを主成分とする金属からなるアルミニウム層を有し、一主面が回路基板に接合され他の一主面が放熱面として用いられるアルミニウム−炭化珪素質複合体であって、アルミニウム層を機械加工して、放熱面の長軸上の反り量を200mmあたり0〜400μmとし、且つ、機械加工後と、加工歪み除去のため大気中で530℃、10分間加熱処理した後の放熱面の長軸上の反り量の差が、200mmあたり30μm以下であることを特徴とするアルミニウム−炭化珪素質複合体。
  2. 回路基板接合面のアルミニウム層の平均厚みが0.1mm以上であり、両主面のアルミニウム層の平均厚みの差が、厚い方のアルミニウム層の平均厚みの50%以内であることを特徴とする請求項1記載のアルミニウム−炭化珪素質複合体。
  3. 熱伝導率が180W/mK以上、熱膨張係数が9×10 −6 /K以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のアルミニウム−炭化珪素質複合体。
  4. アルミニウム−炭化珪素質複合体が高圧鍛造法で製造されることを特徴とする、請求項1〜3のうちいずれか一項記載のアルミニウム−炭化珪素質複合体。
  5. 高圧鍛造法によって、平板状の炭化珪素質多孔体にアルミニウムを主成分とする金属を含浸させるとともに、その表面をアルミニウムを主成分とする金属で被覆した後、機械加工により反り量を調整することを特徴とする、請求項1〜4のうちいずれか一項記載のアルミニウム−炭化珪素質複合体の製造方法。
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