JP3731293B2 - 光ファイバ・グレーティング及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、光ファイバと該光ファイバのコア領域の長手方向に沿って作り込まれた回折格子とを備えた光ファイバ・グレーティング(光部品)及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、光ファイバ通信技術の進展にともない光通信システムの構成も著しく高度化し、ネットワークの複雑化や信号波長の多重化などが進行している。このような光通信システムでは、光回路素子(光部品)の重要性が増大している。
【0003】
光回路素子における一般的構成の一例としてファイバ型素子は、小型で挿入損失が小さいことや、伝送路である光ファイバとの接続が容易であること等の利点を有している。そして、このようなファイバ型光部品として、ファイバ型フィルタがある。一方、酸化ゲルマニウム(GeO2)が添加されたガラスに、紫外光を照射照射することにより該照射領域における屈折率が変化することも知られている。
【0004】
そこで、最近では、このような光誘起による屈折率の変化を利用したファイバ型フィルタとして、光ファイバのコア領域中に回折格子が作り込まれた光ファイバ・グレーティングの研究開発が行われている。なお、この明細書において、光ファイバ・グレーティングとは、所定の屈折率を有するとともにGeO2が添加されたコア領域と、該コア領域の外周に設けられかつ該コア領域よりも低い屈折率を有するクラッド領域とからなる光ファイバと、該光ファイバのコア領域中に該コア領域の長手方向に沿って作り込まれた回折格子とを少なくとも備えた光部品である。また、上記回折格子は、紫外線が照射されたコア領域の長手方向に沿って、該コア領域の屈折率が周期的に変化している領域をいう。
【0005】
すなわち、この光ファイバ・グレーティングは、当該光ファイバ内を伝搬する光のうち特定波長(以下、回折格子の反射波長という)の光成分を反射する一方、残りの光成分(回折格子の反射波長からずれている波長を有する光成分)を透過する機能を有する。なお、回折格子の反射波長は、コア領域中の光誘起による屈折率変化のピッチによって決定される。また、このように紫外線照射により光ファイバ中に回折格子を作り込む製造方法は、生産性に優れているという利点もある。
【0006】
このような光ファイバ・グレーティングでは、その反射率Rが重要な特性となり、この反射率Rは、回折格子長(コア領域中の屈折率が該コア領域の長手方向に沿って周期的に変化している領域の長さ)と光誘起による屈折率の変化量に依存する。この関係は、
R=tanh2(LπΔn/λR)
ここで、R:反射率
L:回折格子長
Δn:光誘起による屈折率の変化量
λR:ブラッグ波長
で表される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、紫外光照射による屈折率変化は、コア領域に相当するガラス中に存在するゲルマニウム関連のガラス欠陥に起因することが知られている。しかしながら、発明者らの知見によれば、従来のように酸化ゲルマニウムをコア領域に添加されただけの光ファイバ(ガラス・ファイバ)ではガラス欠陥の数が少ないため、紫外光が照射されても屈折率変化量Δnが小さく、したがって、上記の式から明らかなように反射率Rも小さい。具体的には、紫外光照射によるコア領域の屈折率変化は10-5程度であり、反射率は数%と過小である。
【0008】
一方、回折格子の反射率Rを高くするためには、上記の式が示すように回折格子長Lを大きくする方法もある。しかしながら、紫外光レーザビームを照射するにあたっては、レーザビームに高い均一性が要求されるため、紫外光照射を行うための光学系が複雑になってしまう。また、ガラス欠陥が少ないと、光誘起による屈折率変化の速度も遅くなる。そのため、、反射率Rを高くしようとすると、照射時間が長くなって生産性が低下してしまう。
【0009】
加えて、特開平7−244210号公報には、回折格子の反射率Rを高くする方法として、紫外光の照射光量に対する光誘起による屈折率変加量を増大させるために、水素を光ファイバのコア領域に添加する技術が開示されている。この方法において、光ファイバへの水素の添加は、高圧の水素加圧処理によって行われるが、光誘起による屈折率の変化を大きくするためには、添加水素濃度が高いことが望ましい。このため、光ファイバへの水素の高濃度添加は、一般に高圧に加圧された水素を含む雰囲気中(以下、水素雰囲気という)に光ファイバを一定期間晒すことにより行われる。
【0010】
発明者らは、上述の水素添加技術について検討した結果、以下のような課題を発見した。すなわち、従来の水素添加技術により石英系ガラス・ファイバに水素を添加すると、ガラスの表面の劣化に起因して急激に引張り強度が低下するという課題があった。このように表面が劣化したガラスファイバ(光ファイバ)に対し回折格子を作り込んで光ファイバ・グレーティング(光部品)を製造した場合、機械的強度等の低下をきたし信頼性に欠ける。
【0011】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、光ファイバに水素を高圧状態で添加処理しても機械的強度等の低下をきたさない、信頼性の高い構造を備えた光ファイバ・グレーティング及びその製造方法を提供することを目的としている。さらに言及すれば、この発明は、GeO2を含むコア領域及びクラッド領域とを有するガラス・ファイバ(光ファイバ)と該光ファイバの外周に被覆された樹脂とを備えた光ファイバ素線に対し、回折格子を作り込む製造方法及び該製造方法により製造された光ファイバ・グレーティングに関するものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る光ファイバ・グレーティングの製造方法は、十分な光励起による屈折率変化を得るため、紫外線を照射する前に水素添加処理を行っており、特に、この製造方法における水素添加処理の対象は、ガラスファイバの外周が樹脂で被覆された光ファイバ素線であることを特徴としている。
【0013】
具体的に、この発明に係る光ファイバ・グレーティングの製造方法では、まず、所定の屈折率を有するとともに所定量のGeO2が添加されたコア領域と、該コア領域の外周に設けられかつ該コア領域よりも低い屈折率を有するクラッドからなる光ファイバと、該光ファイバの外周を被覆する樹脂(樹脂層)とを備えた光ファイバ素線が用意される。そして、当該製造方法は、用意された光ファイバ素線を所定加圧状態の水素雰囲気中(水素ガスが導入された容器内)に所定時間晒すことにより、該光ファイバ素線中に水素を添加する第1工程と、第1工程において水素が添加された光ファイバ素線の樹脂の一部を除去し、光ファイバの所定部位(回折格子が作り込まれる領域)の表面を露出させる第2工程と、そして、第2工程において樹脂が除去されて露出された光ファイバの所定部位に対して紫外線を照射し、該露出された所定領域に位置するコア領域の屈折率を、該コア領域の長手方向に沿って変化させる第3工程とを少なくとも備えている。なお、この発明に係る製造方法により製造された光ファイバ・グレーティングにおいて、回折格子が作り込まれた露出領域(水素添加処理後に樹脂層が取り除かれた領域)には、劣化防止のため再度樹脂が被覆される。
【0014】
この発明に係る製造方法によれば、回折格子が作り込まれる対象として、ガラス・ファイバの外周に樹脂層が設けられた光ファイバ素線が採用され、樹脂層の一部の除去が水素添加後に行われるので、光ファイバ素線を長時間水素雰囲気中に晒してもガラスファイバの表面は空気によって劣化されることがなく、また、光ファイバ自身の機械的強度は保持される。
【0015】
一方、この発明のように、回折格子が作り込まれる光ファイバの外周に樹脂が被覆された光ファイバ素線に対して水素添加処理を施す場合、ガラスファイバ(光ファイバ)と樹脂との界面に気泡や剥離の生じる可能性がある。当然のことながら、このように気泡や剥離の発生した光ファイバ素線に対し回折格子を作り込んで光ファイバ・グレーティング(光部品)を製造した場合、機械的強度等の低下をきたし信頼性に欠ける。
【0016】
なお、この明細書において、上記樹脂層と光ファイバ(回折格子を作り込むためにコア領域中にGeO2が添加されている)との界面に発生する気泡とは、当該光ファイバ・グレーティングの径方向の厚みが1μm〜20μmでありかつその最大長が1μm〜10mmの間隙(引張り強度に影響する程度の大きさを有する間隙)であって、微小な間隙を意味する。また、剥離とは、少なくとも1μm以上の径方向の厚みを有するとともにその最大長が10mmから光ファイバ・グレーティング全体に渡って発生するするような大きな間隙である。特に、このような剥離が発生している場合には、係る間隙で散乱光が強くなるため、得られた光ファイバ・グレーティングのうち剥離が発生している部位の表面は、剥離が発生していない部位の表面よりも、より輝いて見える。このため、この明細書において、剥離とは、上記気泡よりも大きな間隙を意味し、上記気泡には含まれない概念である。
【0017】
そこで、この発明に係る製造方法は、第1工程と第2工程との間に、水素雰囲気の圧力を所定速度で減圧する第4工程をさらに備えることを特徴としている。このように、水素雰囲気の圧力を所定速度で減圧することによって、光ファイバ内に添加された水素は徐々に拡散し気泡等は発生しない。具体的に、発明者らは、減圧速度として、加圧状態から常圧状態へ水素雰囲気中の圧力を低下させる際の最大降圧速度を、120atm/分以下、好ましくは2〜10atm/分の範囲に設定するのが効果的であることを発見した。なお、加圧状態とは、少なくとも40〜400atmの圧力が加えられている状態を意味し、また、常圧状態とは、1atmに限定されることはなく、水素が導入された容器の外部気圧と一致する圧力状態も含む。
【0018】
さらに、この発明に係る製造方法では、上記第1工程における加圧状態における水素雰囲気の圧力を、100〜300atmであり、雰囲気温度は0℃(好ましくは常温)〜100℃であることが好ましい。このような条件に加圧された水素雰囲気を設定することにより、被覆樹脂に熱的なダメージを与えることなく水素を短時間で効果的に添加できる。
【0019】
なお、上記光ファイバを被覆する樹脂としては、耐圧性、耐温度性の観点から紫外線硬化型樹脂が好ましい。
【0020】
以上の製造方法により製造された光ファイバ・グレーティングは、上記回折格子が作り込まれた光ファイバ表面と残った樹脂層とが密着しており、十分な引張り強度を有している。すなわち、得られた光ファイバ・グレーティングは、該光ファイバ表面と樹脂層との界面において、剥離(径方向の厚みが1μm以上かつ最大長が10mm以上の間隙)及び気泡(径方向の厚みが1μm〜20μmかつ最大長が1μm〜10mmの間隙)のそれぞれが発生した場合であっても、少なくとも発生した気泡の数は、1mの基準長当たり1000個以下程度に制限されている。したがって、上述のように定義された気泡の発生率が1000個/m以下に制限された光ファイバ・グレーティングは、気泡と剥離が混在していても、この発明に係る光ファイバ・グレーティングに含まれる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、この発明に係る光ファイバ・グレーティングの製造方法を、図1〜8を用いて説明する。なお、図中、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0022】
この発明に係る光ファイバ・グレーティングの製造方法では、まず、光ファイバ素線を用意し、温度を調整しながら水素雰囲気中に該用意された光ファイバ素線を設置した後、該水素雰囲気を高圧に加圧して水素を用意された光ファイバ素線のコアガラスまで圧入する。
【0023】
具体的には、図1に示されたように、光ファイバ10の周りが樹脂層14で被覆された光ファイバ素線15(図2参照)が設置された圧力容器20内に、バルブ21を介して水素(H2)ガスが導入される。この際、圧力容器20内は、ヒータなどの温度調節器23a、23bにより所定温度に設定されている。
【0024】
光ファイバ素線15は、図2に示されたように、酸化ゲルマニウム(GeO2)を含むコア領域12を備えた通常の石英系光ファイバ10と、該光ファイバ10の外周を被覆した樹脂層14で構成されている。また、この光ファイバ10は、上記コア領域12と、該コア領域12よりも低い屈折率を有するクラッド領域11を備えている。樹脂層14としてはシリコン樹脂を用いることができるが、耐圧性の大きい紫外線硬化型樹脂がより好ましい。また、水素添加処理は樹脂層14を備えた光ファイバ素線15に対して行われるため、0℃(好ましくは常温)以上かつ100℃以下の水素雰囲気中(容器20内の雰囲気温度)で行われるのが好ましい。
【0025】
導入される水素濃度は、水素添加処理の効率を考慮すると高いほど好ましく、爆発防止の観点から75%以上である必要がある。また、以下に説明される各実施例における容器20内の水素濃度は99%以上である。
【0026】
容器20内の水素雰囲気の圧力は、20〜400atmである。水素雰囲気の圧力を20atm以上とするのは、雰囲気圧力が20atm未満では水素の添加の効果が実質的に得られないからである。なお、水素添加の効果を十分に得るためには、水素圧力を100気圧以上とすることがより好ましい。一方、水素雰囲気の圧力を400atm以下とするのは、400atmを超えると水素添加の効果が飽和するからである。こうした効果の飽和の傾向は、雰囲気圧力が300atmを越えると見られるようになる。したがって、より効果的な雰囲気圧力の範囲は、100〜300atmである。
【0027】
以上のような水素添加処理のより、光ファイバ素線15中に水素が添加されると、添加された水素により光ファイバ10のコア領域12に添加された酸化ゲルマニウムが還元され易くなり、GeやSiと結合している酸素が一部取り除かれる現象が発生する。結合酸素が一部取り除かれたGeやSiが結合しあえば、酸素欠損型の欠陥が新たに生じることとなり、光ファイバ10のコア領域12において通常わずかしか存在しない、酸素欠損型の欠陥が増大する。
【0028】
以上説明された水素添加処理は、光ファイバ10が樹脂で被覆された光ファイバ素線15に対して実施される。これにより、当該光ファイバ10の表面が直接空気と接触することがなく、光ファイバ10の表面の劣化が防止できるので、光ファイバ10の強度を維持することができる。
【0029】
次に、水素ガスが導入された状態で高圧状態に維持されている加圧容器20の圧力を常圧(1atmあるいは容器20の外部の気圧と一致するまで)まで降下して光ファイバ素線15を取出す。このように水素添加処理された光ファイバ素線15は光ファイバ10の表面と樹脂層14との界面で気泡や剥離の生じる可能性がある。この原因について考察したところ、光ファイバ素線15を取出すために容器20内の圧力を急激に低下させたため、光ファイバ10と樹脂層14の中に大量に添加された水素ガスが膨張して生じたものと考えられる。
【0030】
そこで、水素添加後に光ファイバ素線15を取出す際、圧力容器20内の水素雰囲気の圧力を外部気圧まで降下させる速度について検討した。圧力容器20内の温度は25℃(常温)、圧力容器20内の水素雰囲気の圧力は300atmとし、加圧容器20の圧力を外部気圧(概ね1atm)まで降下させる速度と光ファイバ10の表面と樹脂層14との界面で生じる気泡の数との関係を調べた。その結果、発明者らは図3のグラフに示されたように、減圧速度が毎分10atm以下での気泡の発生率は平均1個/m程度、毎分2atm以下で気泡は殆ど発生しないことを確認した。また、図3のグラフから、気泡の発生率を平均1000個/m以下に抑えるためには、最大減圧速度を120atm/分以下に設定する必要があることも判る。
【0031】
こうして水素添加処理を経た長尺の光ファイバ素線15に回折格子の書込みに先立って、図4に示されたように回折格子が書込まれる部位の樹脂層14を除去する。樹脂層14を除去することによって回折格子を書込むための紫外線照射を効率的に行うことができ、樹脂層14の残された部分は光ファイバ10の機械的強度(特に、引張り強度)を維持するために、該光ファイバ10の表面と十分に密着した状態(気泡の発生率が1000個/m以下)で残されている。
【0032】
次に、水素添加処理された光ファイバ素線15の樹脂層14が除去された領域に紫外光による干渉光が照射される。図5は位相格子法による紫外光による干渉光の照射を説明するための図である。光ファイバ10の所定領域(光ファイバ素線15のうち、樹脂層14が取り除かれた領域)に所定波長の紫外光を照射するので、酸化ゲルマニウムが添加されたコア領域12における露光領域の屈折率が変化する。現在、このような紫外光照射による屈折率変化のメカニズムは、完全には解明されていない。しかしながら、この光誘起による屈折率変化には光ファイバ10のコア領域12に通常わずかに存在しているGeに関連した酸素欠損型の欠陥が関与しているものと、一般に推定されている。
【0033】
上述の水素添加処理により水素が添加された光ファイバ10のコア領域12では、通常わずかしか存在しない酸素欠損型の欠陥が増大しているので、紫外光の露光領域における屈折率変化が大きくなる。
【0034】
屈折率変化を誘発するための紫外線は、光源30から、位相パターンが所定間隔Λ´で配列された位相格子60の表面の法線方向に対して角度θで照射される。そのため、コア領域12の露光領域における干渉縞の間隔Λは、
Λ=Λ´
となる。したがって、コア領域12の露光領域には、異なる屈折率を有する領域が干渉縞の間隔Λを周期として光ファイバ10の軸方向(コア領域12の長手方向)に配列されるので、回折格子13が形成されることになる。
【0035】
周知なブラッグの回折条件に基づいてコア領域12の屈折率nと回折格子13の周期Λとを用い、この回折格子13の反射波長(ブラッグ波長λR)は、
となる。また、回折格子13の長さLと光誘起による屈折率の変化量Δnとを用い、この回折格子13の反射率Rは、
R=tanh2(LπΔn/λR)
となる。したがって、光ファイバ10のコア領域12では、回折格子13が10-4〜10-3程度の大きい屈折率変化で形成されているので、波長λRの光成分に対する反射率Rが 100%近い値に達する。また、紫外光干渉縞はホログラフィック法によっても形成することができる。
【0036】
こうして製造された光ファイバ・グレーティングは、樹脂層14が取り除かれた領域(回折格子が作り込まれた領域)の表面が、再度樹脂140により被覆される(図6参照)。
【0037】
図6に示された光ファイバ・グレーティングは、以下のようにして反射率Rが測定される。図7は、得られた光ファイバ・グレーティングの反射率測定を行う測定システムの構成を示す図である。
【0038】
図7に示されたように、この測定システムは光源70、光ファイバ素線15及び光スペクトルアナライザ90を光カプラ80で光結合して構成されている。
【0039】
光源70は、通常発光ダイオード等であり、光ファイバ素線15に作り込まれた回折格子13の反射波長λRと一致する波長を有する光成分を含む光を出射する。光カプラ80は、通常の溶融延伸型ファイバカプラであり、光源70からの入射光を光ファイバ素線15に出力するとともに光ファイバ素線15からの反射光を光スペクトルアナライザ90に出力する。光スペクトルアナライザ90は、光ファイバ素線15からの反射光における波長と光強度との関係を検出する。なお、光ファイバ素線15の開放端は、マッチングオイル100中に浸されている。このマッチングオイル100は、通常の屈折率整合液であり、不要な反射光成分を除去している。
【0040】
図7の測定システムによれば、光源70から出射された光は、光カプラ80を介して光ファイバ素線15に入射する。光ファイバ素線15では、コア領域12に形成されている回折格子13が特定波長の光成分を反射する。光ファイバ素線15から出射された光は、光カプラ80を介して光スペクトルアナライザ90で受光される。光スペクトルアナライザ90では、反射光の波長と光強度との関係を示す、光ファイバ素線15の反射スペクトルが検出される。
【0041】
なお、水素添加処理が施された光ファイバ素線における、光ファイバと樹脂層との密着の程度は、図8に示された測定システムを用いて、該光ファイバ表面と樹脂層との界面に存在する気泡(剥離は含まず)の数をカウントすることにより測定した。
【0042】
すなわち、図8の測定システムは、観察容器110を挟むように配置された光源(He−Neレーザ)500とCCDセンサ400を備える。測定対象である光ファイバ素線113(水素添加処理が既に施されている)の長さは1mであって、マッチングオイル112が既に充填された観察容器110中にセットされる。さらに、この測定システムは、上記光源500及びCCDセンサ400を観察容器110の長手方向(図中の矢印A、Bで示された方向)に沿って、それぞれ移動させるための駆動系300と、該光源500、駆動系300を制御するとともに、CCDセンサ400により得られた画像データ(電気信号)を取り込み、当該測定対象113中に発生している気泡をカウントする主制御部200とを備える。なお、主制御部200は、CCDセンサ400から入力された電気信号に基づいて輝度情報を得るための画像処理部210を有し、該画像処理部210は該CCDセンサ400の撮像領域内で輝度が変化している部位(気泡)の個数をカウントするためのカウンタ220を有している。
【0043】
特に、セットされた光ファイバ素線113の樹脂層と光ファイバ表面との間に気泡(引張り強度に影響を与える程度の大きさを有する間隙)が存在する場合には、係る間隙が存在する部位で散乱光が強くなる。したがって、CCDセンサ400は光源500から出射され測定対象113を透過したレーザビーム(測定対象113の像)を受光することにより、主制御部200の画像処理部210は得られたCCD画像中から輝度の違いを正確に認識することができる。
【0044】
なお、図3のグラフ中の縦軸は、各減圧条件ごとに、用意された20本の光ファイバ・グレーティング(1m)中に発生している気泡(カウント対象)の数を、図8の測定システムで測定した平均値である。また、剥離(径方向の厚みが1μm以上で最大長が10mm以上の間隙)は、図8の測定システムにおけるカウント対象からは除外されている。
【0045】
【実施例1】
直径125μmの石英系光ファイバの上に紫外線硬化樹脂が被覆された直径250μm、長さ100mの光ファイバ素線を用意する。そして、係る光ファイバ素線を温度25℃に保持された圧力容器20内に入れ、既に容器20内に導入された水素ガス(濃度99%以上)の圧力を240atmに維持して状態で、1週間該水素ガス中に放置した。その後、毎分4atmの減圧速度で水素ガスの圧力が外部気圧まで下げ、圧力容器20を開放して、水素処理が施された光ファイバ素線を取出した。取出された光ファイバ素線の被覆を除去してガラスファイバ(光ファイバ)についての引張強度試験を行ったところ、4.0GPaであった。
【0046】
さらに、発明者らは、この光ファイバ(光ファイバ素線の樹脂が除去された領域)のコア領域に回折格子を作り込み、その強度を調べたが、実用上問題のないことを確認した。
【0047】
(比較例1)
上述の実施例1と同一の手順によって樹脂被覆していないガラスファイバの水素添加処理を行った。圧力容器20からガラスファイバを取出し、引張強度試験を行ったところ、0.5GPaであった。ガラスファイバが長時間空気中に晒されたためにその表面が劣化し、強度が低下したものと考えられる。
【0048】
【実施例2】
上述の実施例2で水素が添加された光ファイバ素線を図8の測定システムで調査したところ、どこにも気泡等は見つからなかった。圧力容器20内の水素ガスの圧力を徐々に降下させたので、ガラスファイバ(光ファイバ)及び被覆樹脂(樹脂層)に含まれていた水素ガスは容器20内に拡散したものと考えられる。発明者らは、この光ファイバを用いてコア領域中に回折格子を作成し、その強度を調べたが、実用上問題のないことを確認した。また、光ファイバ素線について引張強度試験を行ったところ、ほぼ4.8GPaであった。
【0049】
【実施例3】
上述の実施例1と同一の光ファイバ素線を用い、かつ同様の手順によってガラスファイバ(光ファイバ)の水素添加処理を行った。ただし、この実施例3では減圧速度を毎分100atmとした。圧力容器20から光ファイバ素線を取出し、図8の測定システムで調査したところ、1m当たり50〜300個の気泡が発見された。この光ファイバ素線の引張り強度を調べたところ、ほぼ2.4GPaであった。このことから、減圧速度が120atm/分以下(少なくとも2〜100atm/分)の条件で、所望の引張り強度が得られることが判る。
【0050】
(比較例2)
上述の実施例1と同一の光ファイバ素線を用い、かつ同様の手順によってガラスファイバ(光ファイバ)の水素添加処理を行った。ただし、この比較例2では減圧速度を毎分200atmとした。圧力容器20から光ファイバ素線を取出し、図8の測定システムで調査したところ、1m当たり1500〜2000個の気泡が発見された。この光ファイバ素線の引張り強度を調べたところ、ほぼ2.0GPaであった。しかしながら、この比較例2のサンプルについて、240日間、85℃の温水に浸して劣化試験を行ったところ、その引張り強度が0.6GPaまで低下することを確認した。なお、当該光ファイバ・グレーティングのようなファイバ型光部品には、0.8GPa以上の引張り強度が要求される。この引張り強度は経時的な強度劣化も含め、長期に渡って保障されなければならない。
【0051】
以上の説明からも分るように、この発明に係る製造方法により得られた光ファイバ・グレーティングでは、製造誤差や得られる光ファイバ・グレーティングの実用上支障のない引張り強度等を考慮すると、1mの基準長当たりに発生する気泡の数(剥離と気泡が混在している状態を含む)は、1000個以下(減圧速度は120atm/分以下)である必要がある。
【0052】
【発明の効果】
この発明は以上のように、樹脂で被覆された状態の光ファイバ(光ファイバ素線)に対して水素の添加処理を行うので、ガラスファイバが直接空気と接触することがなく、光ファイバの強度(特に、引張り強度)を維持することができる。
【0053】
また、この発明によれば、光ファイバ素線を高圧状態で一定時間水素添加処理を行った後、外部気圧(例えば常圧)まで徐々に水素ガスの圧力を降下させるので、ガラスファイバおよび被覆樹脂(樹脂層)の中に圧入された水素が急速に膨張することがなく、徐々に外部へ拡散する。したがって、ガラスファイバの表面に気泡が発生したり、あるいは樹脂層との間で剥離を起こすことがない。
【0054】
さらに、以上の製造方法により製造された光ファイバ・グレーティングは、気泡及び/又は剥離が存在している場合であっても、所望の強度が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る光ファイバ・グレーティングの製造方法を実施するための加圧装置の概略構造を示す図である。
【図2】光ファイバ素線の構造を示す図である。
【図3】この発明に係る光ファイバ・グレーティングの製造方法における水素添加処理後の減圧速度(atm/分)と気泡発生率との関係素示すグラフである。
【図4】この発明に係る光ファイバ・グレーティングの製造方法に用いられる光ファイバ素線(樹脂層の一部が除去されている)を示す図である。
【図5】この発明に係る光ファイバ・グレーティングの製造方法における回折格子の書込み工程(位相格子法)を説明するための図である。
【図6】この発明に係る光ファイバ・グレーティングの製造方法により製造された光ファイバ・グレーティングの構造を示す断面図である。
【図7】光ファイバ・グレーティングの反射率を測定するための測定システムの構成を示す図である。
【図8】光ファイバ・グレーティング中に発生する気泡の数を測定するための測定システムの構成を示す図である。
【符号の説明】
10・・・光ファイバ、11・・・クラッド部、12・・・コア部、13・・・回折格子、14・・・樹脂層、15・・・光ファイバ素線、20・・・圧力容器、21、22・・・バルブ、23・・・温度調節器、60・・・位相格子、30、70・・・光源、80・・・光カプラ、90・・・光スペクトルアナライザ、100・・・マッチングオイル。
Claims (5)
- 所定の屈折率を有するコア領域と、該コア領域の外周に設けられかつ該コア領域よりも低い屈折率を有するクラッド領域からなる光ファイバと、該光ファイバの外周を被覆する樹脂とを備えた光ファイバ素線を用意し、該光ファイバ素線を所定加圧状態の水素を含む雰囲気中に所定時間晒すことにより、該光ファイバ素線中に水素を添加する第1工程と、
前記第1工程において水素が添加された光ファイバ素線の前記樹脂の一部を除去し、前記光ファイバの所定部位の表面を露出させる第2工程と、そして、
前記第2工程において樹脂が除去されて露出された光ファイバの所定領域に対して紫外線を照射し、該露出された光ファイバの所定部位におけるコア領域の屈折率を、該コア領域の長手方向に沿って変化させる第3工程とを備えた光ファイバ・グレーティングの製造方法において、
前記第1工程と第2工程との間に設けられた工程であって、前記水素を含む雰囲気の圧力を、120atm/分以下の最大降圧速度の状態で減圧していく第4工程をさらに備えたことを特徴とする光ファイバ・グレーティングの製造方法。 - 前記第1工程における加圧状態における前記水素を含む雰囲気の圧力は、100〜300atmであり、雰囲気温度は100℃以下であることを特徴とする請求項1記載の光ファイバ・グレーティングの製造方法。
- 前記第4工程において、前記所定加圧状態の水素を含む雰囲気の圧力を低下させる際の最大降圧速度は、2〜10atm/分であることを特徴とする請求項1記載の光ファイバ・グレーティングの製造方法。
- 前記光ファイバの外周を被覆する樹脂は、紫外線硬化樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の光ファイバ・グレーティングの製造方法。
- 請求項1記載の製造方法により製造された光ファイバ・グレーティングであって、
前記第2工程において残された樹脂と前記光ファイバの外周面は、1mの基準長当たり、該残された樹脂と該光ファイバの外周面との界面に存在する、径方向の厚みが1μm〜20μmかつその最大長が1μm〜10mmの気泡が1000個以下となる程度に密着していることを特徴とする光ファイバ・グレーティング。
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