JP3731226B2 - ミシンの糸案内装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、縫い針の目孔に糸を通す等のために、糸を所定の位置へ導くためのミシンの糸案内装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、図9に示すように、縫い針162の目孔163に糸を通す糸通し装置100を備えたミシンが知られている。この糸通し装置100は、縫い針162に対して移動可能な図示しない支持体上に、縫い針162の目孔163に対して貫通及び脱出可能な図示しない糸通しフックを設け、目孔163付近に供給される糸を、前記糸通しフック先端部に設けられた開口部の内側に掛止した後、前記糸通しフックを前記目孔163から脱出させることによって、前記目孔163への糸通しを行うものが知られている。
【0003】
そして、縫い出し前に糸供給源としての糸駒107から引き出した糸wを糸通し装置100側に導くために、後述する糸掛け準備経路111、112に沿って作業者が糸wを持って導くものであった。前記糸掛け準備経路は、ミシンヘッド101の上部に設けられた上部糸掛け109の直前からミシンヘッド101の上面を横切って正面に回り、正面上部から下部へ下がる糸掛け準備経路111と、糸案内部材171を経た後、ミシンヘッド101の頭部を覆う面板103の下部正面から側面まで至る糸掛け準備経路112とで構成されている。また、前記糸掛け準備経路112の終端上部には、糸保持部材184と、糸切り部材186とが配置されている。
【0004】
そこで、作業者は、糸wを糸掛け準備経路111に導入して下方に導き、糸案内部材171に掛けて略水平方向(図9において左側)に屈曲させ、糸端を引きながら矢印YA方向に誘導する。このとき、糸掛け準備経路112内に配置された図示しない糸把持部、糸係止部等に糸wがそれぞれ把持、係止される。その後、糸掛け準備経路112の終端部からは矢印YB方向に誘導して糸保持部材184に糸wを保持させ、糸切り部材186によって糸を切る一連の操作をすることになる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の案内方法では、糸掛け準備経路112において、糸wを略水平方向に導くため、作業者が意識して糸wに張力を与えながら誘導しないと、誘導中に糸wに弛みが生じ糸の軌跡が安定せず、糸掛け準備経路112に確実に導くことができなかった。
【0006】
また、前記糸wの弛みによって、前記糸掛け準備経路112内に配置された図示しない糸把持部及び糸係止部に糸wを確実に誘導しきれなかった。
【0007】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、糸通し装置等へ糸を導く際、操作性を向上させると共に、確実に糸掛け準備経路に糸を導くことができるミシンの糸案内装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、請求項1記載のミシンの糸案内装置は、糸供給源から縫針の近傍に亙って糸を掛ける糸掛け準備経路を備えているものを対象とし、特に、前記糸を係止しながら、前記糸掛け準備経路の少なくとも一部分に沿って移動することによって前記糸を前記糸掛け準備経路に導く糸誘導手段を備えている。従って、作業者は、前記糸誘導手段によって前記糸を係止させ、更に、前記糸掛け準備経路の少なくとも一部分に沿って移動させることによって、容易に、かつ確実に前記糸掛け準備経路に前記糸を導くことができる。
【0009】
また、請求項2記載のミシンの糸案内装置は、前記糸掛け準備経路と略平行な溝を備え、前記糸誘導手段を、前記糸を係止する係止部と、その係止部を支持すると共に、前記溝に沿って移動可能な支持部とで構成している。従って、前記係止部に前記糸を係止させた後、前記溝に沿って移動させることにより、前記糸掛け準備経路に、前記糸を導くことができる。
【0010】
また、請求項3記載のミシンの糸案内装置は、前記支持部を常時糸供給源側に付勢させる付勢部と、前記糸掛け準備経路上において、前記糸を把持し、その把持力が前記係止部の係止力より強い把持部とを備えている。従って、前記係止部に前記糸を係止させ、更に、前記溝に沿って移動させて、前記把持部に前記糸を把持させる。その後、前記付勢部によって前記支持部が前記糸供給源側に戻されるとにき、前記係止部から前記糸が解放される。
【0011】
更に、請求項4記載のミシンの糸案内装置は、前記糸掛け準備経路の終端近傍で、前記糸掛け準備経路と前記溝との間に配置され、かつ前記糸を切断する糸切断部を備え、前記溝を、前記糸切断部が配置された位置よりも前記支持部が付勢される方向とは反対側まで延長して形成している。従って、前記係止部を前記糸掛け準備経路よりも長い前記溝の終端まで移動させることによって、前記糸切断部に前記糸が接触し、その糸が切断される。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のミシンの糸案内装置を糸通し装置に具体化した実施の形態について図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、糸誘導手段の構成を示す図であり、図2は、糸誘導手段の作用を説明する図であり、図3は、糸通し装置を備えたミシン頭部の概略斜視図であり、図4は、糸通し装置の構成を示す拡大図である。
【0014】
本実施の形態の糸通し装置150は、図3に示すように、縫製に先立ち糸wを掛ける糸掛け準備経路として、ミシンヘッド1に形成された2つの糸案内溝11、12と、その糸案内溝12上に設けられた糸係止部5と(図4に示す)、糸案内溝12の内側に設けられた糸把持部70と(図4に示す)、糸案内溝12の終点位置に設けられた糸保持部84及び糸切断部86と、前記糸案内溝12に沿って往復作動可能な糸誘導手段としての糸掛け誘導部材14とを備えている。
【0015】
前記糸案内溝11は、図3に示すように、ミシンヘッド1の上部に設けられた上部糸掛け9から下方へ上下方向に延びて形成され、図4に示す針棒台20に固定された糸案内部材71の近傍まで延びている。一方、糸案内溝12は、ミシンの頭部を覆う面板3の操作者側下方から奥側まで水平方向に形成されている。
【0016】
前記面板3には、前記糸案内溝12に略平行に、かつ前記糸切断部86が配置された位置よりも後述する支持板23が付勢される方向とは反対側まで延長して形成されたガイド溝16が設けられている。
【0017】
前記糸把持部70は、図4に示すように、ミシン機枠に固定される針棒台20に上下移動可能に挿通支持される針棒21に平行で、前記針棒台20に上下動可能に挿通支持される糸通し棒61を備えている。その糸通し棒61の下端部には、フック保持部31が固着されており、このフック保持部31には水平に延出して略直角方向に折曲するフック部33が取り付けられている。また、前記糸通し棒61の下端部には、糸を把持する把持部6も備えている。
【0018】
前記フック部33は、図6(a)に示すように、先端に鈎の手状の鈎部35が形成されたフック37と、フックの両側に位置し先端に「V」字状に糸導入溝39が形成された2枚のフックガード41、43とからなる。
【0019】
また、図4に示すように、フック保持部31にはフック部33と反対方向に延出する突出片45が一体に形成されている。この突出片45の先端には、皿支持片80が突出して形成されている。
【0020】
前記糸通し棒61の下端には、更に、フック保持部31を「コ」字状に上下に挟み、糸通し棒61に対して回転可能に形成されたリンクレバー51が取り付けられており、このリンクレバー51の水平方向に延出された端部にピン53(図5に示す)が垂直に突設されている。また、リンクレバー51の「コ」字状背面には、前記糸係止部5が固着されている。
【0021】
前記把持部6は、図7に示すように、先端がやや下がるように下斜め方向に突出した前記皿支持片80の先端付近において、支持ピン90に摺動可能に軸支される押さえ皿82の内側にコイルバネ91を装着している。従って、前記押さえ皿82を前記皿支持片80方向に付勢するため、前記押さえ皿82と前記皿支持片80とによって糸を保持する。尚、前記皿支持片80には、前記押さえ皿82に面して支持ピン90から所定距離離れた位置に糸抜き溝93が糸道に沿って凹設されている。
【0022】
前記糸係止部5は、図8に示すように、前記リンクレバー51の背部に固定される固定板58と、その固定板58の上、下端から水平方向に突出し中央部が湾曲したアーム57、59と、そのアーム57の突出方向先端から下方向に延出した押え爪67と、前記アーム59の突出方向先端から上方向に延出した糸掛け爪66とからなり、これらは一体に形成されている。前記押え爪67は、その先端が前記固定板58から離れる方向に湾曲されると共に、その湾曲開始位置に糸掛け溝65が形成されている。
【0023】
前記糸通し棒61には、図4に示すように、前記フック保持部31の上部において、摺動ガイド55が前記針棒21の反対方向に突出して遊挿されており、Eリング69により上下位置が規制されている。更に、前記摺動ガイド55には、前記糸通し棒61に平行で軸方向に溝56が形成された支持枠73が一体に形成されており、この溝56内に前記針棒台20に突設されたピン75が遊嵌している。従って、前記糸通し棒61が上下動すると、これに伴いこの摺動ガイド55及び前記支持枠73も一体的に上下動するが、前記糸通し棒61の軸回転に対しては追従しない。
【0024】
前記摺動ガイド55には、所要長のガイド溝77が穿設され、このガイド溝77内にリンク機構を構成するリンクピン79が摺動自在に遊嵌される。このリンクピン79は、第1リンク板81及び第2リンク板85を軸支する。前記第1リンク板81は、図5(a)に示すように、両端に、リンクピン79と、リンクレバー51に突設されたピン53とが各々回転可能に挿通されている。
【0025】
また、一端が前記リンクピン79に軸支された前記第2リンク板85の他端は、前記突出片45の先端と共通にピン89が回転可能に挿通されている。
【0026】
このように、前記リンクピン79により共通に軸支される前記第1リンク板81及び前記第2リンク板85と、この第1リンク板81にピン53を介して連結する前記リンクレバー51と、前記第2リンク板85にピン89を介して連結する前記突出片45とによってリンク機構が構成される。
【0027】
前記糸案内部71は、略舌片状に形成され、その固定端は前記針棒台20の側面に固定されている。一方、自由端である先端部は、図3において、前記糸案内溝11側に突出している。
【0028】
前記糸保持部84及び糸切断部86は、前記糸案内溝12の終端部上方の前記面板3に設けられている。前記糸保持部84は、基本的には前記把持部6と同様の構成であり、前記把持部6における前記押さえ皿82と同様のものが前記面板3方向に付勢されている。そして、前記糸切断部86は、図2において、前記糸保持部84よりも手前側(ミシン前面側)に配置されている。そして、前記糸切断部86は、上方に刃面が向いたカッターを備えている。
【0029】
前記糸掛け誘動部材14は、図1に示すように、前記面板3に固定された固定軸15に一端が軸支され、他端は前記ガイド溝16に挿通され、前記面板3から突出している支持部としての支持板23と、その支持板23の先端部に、糸wを係止するための切り欠きを有する係止部としての糸係止部材19と、バネ止め軸18に当接し、前記糸係止部材19を前記糸案内溝11側へ常時付勢させる付勢部としての板バネ17とで構成されている。
【0030】
次に、縫製に先立ち、準備作業としての糸掛け操作について説明する。
【0031】
ミシンの使用者は、図3に示すように、糸供給源としての糸駒7から供給される糸wを以下の手順で準備する。まず、糸wを上部糸掛け9に掛け、糸案内溝11に導入し、糸案内部71に掛ける。そして、その糸案内部71で糸wを屈曲させることで糸案内溝12の口元に糸wを誘導し、やや上方に糸wを導き糸掛け誘導部材14の糸係止部材19の切り欠きに係止する(図1に示した状態)。その後、図3に示すように、前記糸係止部材19を前記ガイド溝16に沿って矢印YC方向に移動させる。
【0032】
図2(a)に示すように、前記糸保持部材84及び糸切断部86を越えて終端まで動かすと、この過程において、糸wは、前記糸掛け爪66に係止され、続いて、図7(a)に示すように、前記皿支持片80の先端部下面を矢印e方向に摺動して、前記押さえ皿82と前記皿支持片80との間に挿入される。次に、前記糸係部材19を放すと、前記板バネ17の付勢力によって、図2(b)に示すように、矢印YD方向に糸掛け誘導部材14が移動する。その際、前記糸保持部84及び糸切断部86に糸wが誘導され、前記糸掛け誘導部材14が前記糸切断部86を通過するときに、前記糸wが前記糸切断部86に接触し、切断される。その後、前記糸掛け誘導部材14は、図1に示された位置まで戻され、前記糸wは、前記糸保持部84に保持された状態となる。
【0033】
次に、糸案内機構を備えた糸通し装置150の動作について説明する。尚、この動作は、糸通し棒61の昇降・回転動作に基づいてなされ、本実施の形態では、図示しないパルスモータによって糸通し棒61を移動させている。以下は、糸通し装置150の各部の動きを中心に説明する。
【0034】
上述したように糸wが準備されると、操作者は、操作レバー(図示略)を操作することによって前記パルスモータが駆動する。すると、前記糸通し棒61が下降すると共に、図5(a)の矢印g方向に回転する。このとき、前記糸通し棒61に固着された前記フック部33及び前記突出片45は、前記糸通し棒61の回転と共に、それぞれ同図(b)の矢印h、i方向に回転し、前記フック部33のフック37は、前記縫い針62の目孔63に貫通する。前記突出片45の回転により、前記ガイド溝77内に遊嵌された前記リンクピン79は、前記第2リンク板85を介して矢印j方向に移動し、更に、前記第1リンク板81を介してピン53を矢印k方向に移動させる。そのため、前記リンクレバー51も矢印k方向に回転し、前記リンクレバー51の背部に固定された前記糸係止部5が矢印m方向に回転し前記縫い針62に接近する。
【0035】
このような動作により、一端を前記把持部6に把持された糸wは、その把持部6と前記糸係止部5との離隔が大きくなるため、その間の糸wは緊張される。このとき、前記糸係止部5の回転により、前記糸掛け爪66は、前記把持部6との間の糸wの緊張を保持しつつ、前記糸駒7側に摺動し、その糸駒7側の糸wの弛みを吸収する。更に、回転して前記糸掛け爪66が前記縫い針62に近づくと、糸wは、前記糸掛け爪66から外れて前記押さえ爪67の前記糸掛け溝65に導入され、この糸掛け溝65と前記把持部6との間で糸wが緊張されて、前記縫い針62の目孔63前に誘導される。この状態においては、前記フック37は図6(a)に示すように、前記縫い針62の目孔63に貫入しており、緊張された糸wが前記鈎部35の内側に導入される。
【0036】
一方、前記把持部6に把持された糸wは、前記リンクピン79と共に前記押え皿82が前記糸通し棒61から遠ざかるため、糸wは緊張すると共に、中へ中へと、つまり前記支持ピン90方向にくい込んでいき、一層強固に挟持され、糸wの緊張に対して前記糸掛け爪66、前記押さえ爪67の方向に摺動しない。従って、この把持部6と前記糸係止部5との間にて、糸wが充分に緊張されるため、糸wは前記フックガード41、43の前記糸導入溝39に導入されて前記鈎部35に確実に捕捉される。
【0037】
次に、前記糸通し棒61を図5(c)の矢印n方向に逆回転させると、前記フック部33は、前記縫い針62から矢印o方向に遠ざかると共に、前記突出片45が矢印p方向に回転する。従って、リンク機構を構成する各部材は、上述した動作に対して戻るように動作し、前記把持部6が矢印q方向に移動すると共に、前記糸係止部5が矢印r方向に回転して前記縫い針62から遠ざかる。このとき、前記糸掛け溝65に係止されていた糸wは、この移動によりそこから外れて緊張が解かれ、図6(b)に示すように、前記フック37に捕捉されて前記縫い針62の目孔63から引き出されていく。このフック37の引き抜き動作により、糸wは前記鈎部35で折れ曲がり、この鈎部35と前記把持部6との間の糸wの弛みが吸収されて、再び糸wが緊張する。
【0038】
更に、前記フック37に図5(c)の矢印o方向の力が働き続けると、前記把持部6に把持された糸wは、その把持力が前記フック37の引き抜く力に負けて、図5(c)の矢印s方向に摺動する。この摺動が始まると、糸wは、図7(b)に示すように、前記押え皿82と前記皿支持片80との間隙がくさび状になっていることから、前記糸抜き溝93方向に移動し、その糸抜き溝93に落ち込む(図7(c))。従って、糸wが前記押え皿82からの押圧が解除されて、この糸抜き溝93内を抵抗少なく摺動するため、前記把持部6と前記鈎部35との間の糸wの緊張がゆるみ、前記フック37の引き抜き動作に伴い、糸wが容易に前記縫い針62の目孔63から引き抜かれる。
【0039】
前記糸通し棒61は、所定角度の逆回転が終了すると、上昇動作に入る。この上昇動作により、前記フック部33、前記糸係止部5、前記糸把持部70は、リンク機構を構成する各部材と共に一体に上昇する。このとき、前記鈎部35に捕捉された糸wは、引き上げられて前記目孔63から引き抜かれるが、その上昇過程において、糸wの目孔63における摩擦力や糸wの自重等により、前記フック37が糸wを保持しきれなくなり、糸wは前記鈎部35から外れる。
【0040】
以上説明したことから明かなように、本実施の形態のミシンの糸案内装置によれば、係止部材19を糸案内溝12よりも長いガイド溝16の終端まで移動させることによって、ガイド溝16の途中に配置された糸切断部86に糸wが接触するため、糸wの弛みをなくし、常に張力を与えながら誘導することができ、かつ糸wを係止した支持部材23を往復移動させることによって糸切りまで行うことができ、一連の作業が簡単になり、確実性、操作性ともに向上させることができる。
【0041】
尚、本発明は以上詳述した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々な変更を加えることができる。
【0042】
例えば、本実施の形態では、前記糸切断部86を前記糸案内溝12の終端近傍で、前記糸案内溝12と前記ガイド溝16との間に配置しているが、前記糸切断部86を取り除くように構成してもよい。この場合、前記把持部6の把持力が前記糸係止部材19の係止力より強くなるように構成する。従って、前記糸係止部材19に糸wを係止させた後、前記糸係止部材19を前記ガイド溝16の終端まで移動させて前記把持部6に糸wを把持させる。その後、前記糸係止部材19を手放すと、前記板バネ17の付勢力によって前記糸駒7側に前記糸係止部材19が戻るときに、前記把持部6の把持力が前記糸係止部材19の係止力よりも強いため、前記糸係止部材19から糸wが解放され、糸wは、前記糸案内溝12に導かれると共に、前記把持部6に把持される。
【0043】
また、本実施の形態では、糸掛け準備経路としての糸案内溝12に略平行なガイド溝16を設けているが、糸案内溝11に略平行な溝を設け、前記支持部材を鉛直方向に移動可能に構成するようにしてもよい。
【0044】
また、本実施の形態では、糸誘導手段を糸係止部材19と、支持板23とで構成しているが、糸係止部材をガイド溝16に嵌合し、かつそのガイド溝16に対して摺動可能なように構成してもよい。この場合、ガイド溝16の終端まで摺動させた後、作業者の手によって元の位置まで戻す。
【0045】
更に、本実施の形態では、糸切断部材86のカッターを上向きに配置し、支持板23が糸駒7側に戻るときに、糸を切断しているが、前記カッターを前記糸切断部材86の下側に、かつ下方を向くように配置してもよい。この場合、支持板23をガイド溝16の終端に移動させる最中に、糸wが切断される。
【0046】
【発明の効果】
以上説明したことから明かなように、本発明の請求項1記載のミシンの糸案内装置によれば、糸誘導手段によって、糸を係止しながら、糸掛け準備経路の少なくとも一部分に沿って移動することによって前記糸を前記糸掛け準備経路に導くため、作業者は、確実に前記糸掛け準備経路に前記糸を導くことができる。
【0047】
また、本発明の請求項2記載のミシンの糸案内装置は、前記係止部に前記糸を係止させた後、前記溝に沿って移動させることにより、前記糸掛け準備経路に、前記糸を導くため、容易に、かつ確実に前記糸掛け準備経路に前記糸を導くことができる。
【0048】
また、請求項3記載のミシンの糸案内装置は、前記係止部に前記糸を係止させ、更に、前記溝に沿って移動させて、前記把持部に前記糸を把持させ、その後、前記付勢部によって前記支持部が前記糸供給源側に戻されるとにき、前記係止部から前記糸が解放されるため、糸案内装置を初期の状態に戻す手間を省くことができる。
【0049】
更に、請求項4記載のミシンの糸案内装置は、前記係止部を前記糸掛け準備経路よりも長い前記溝の終端まで移動させることによって、前記溝の途中に配置された糸切断部に前記糸が接触するため、前記糸の弛みをなくし、常に張力を与えながら誘導することができ、かつ前記糸を係止した支持部を往復移動させることによって糸切りまで行うことができ、一連の作業が簡単になり、確実性、操作性ともに向上させることができる等の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】糸誘導手段の構成を示す図である。
【図2】糸誘導手段の作用を示す図であり、(a)は、係止部を溝終端に移動させたときの面板側から見た図であり、(b)は、係止部を溝終端で手放したときの面板側から見た図である。
【図3】糸通し装置を備えたミシン頭部の斜視図である。
【図4】糸通し装置の構成を示す拡大斜視図である。
【図5】把持部を備えた糸通し装置の動作を示す説明図であり、(a)は、糸通し装置が作動する前の状態を示し、(b)は、フックが縫針の目孔を貫通したときの状態を示し、(c)は、糸が縫針の目孔を脱出したときの状態を示す。
【図6】フック部の動作を示す説明図であり、(a)は、糸を縫針の目孔に通す前の状態を示し、(b)は、糸を縫針の目孔に通したときの状態を示している。
【図7】糸保持部の構成及び動作示す断面図であり、(a)は、糸把持部の構成を示す図であり、(b)は、糸把持部に糸が把持された状態を示す図であり、(c)は、糸把持部から糸が抜けるときの図である。
【図8】糸係止部の構成を示す斜視図である。
【図9】従来の糸通し装置を備えたミシン頭部の斜視図である。
【符号の説明】
6 把持部
11 糸案内溝
12 糸案内溝
14 糸掛け誘導部材
16 ガイド溝
17 板バネ
19 糸係止部材
23 支持板
86 糸切断部
w 糸
【発明の属する技術分野】
本発明は、縫い針の目孔に糸を通す等のために、糸を所定の位置へ導くためのミシンの糸案内装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、図9に示すように、縫い針162の目孔163に糸を通す糸通し装置100を備えたミシンが知られている。この糸通し装置100は、縫い針162に対して移動可能な図示しない支持体上に、縫い針162の目孔163に対して貫通及び脱出可能な図示しない糸通しフックを設け、目孔163付近に供給される糸を、前記糸通しフック先端部に設けられた開口部の内側に掛止した後、前記糸通しフックを前記目孔163から脱出させることによって、前記目孔163への糸通しを行うものが知られている。
【0003】
そして、縫い出し前に糸供給源としての糸駒107から引き出した糸wを糸通し装置100側に導くために、後述する糸掛け準備経路111、112に沿って作業者が糸wを持って導くものであった。前記糸掛け準備経路は、ミシンヘッド101の上部に設けられた上部糸掛け109の直前からミシンヘッド101の上面を横切って正面に回り、正面上部から下部へ下がる糸掛け準備経路111と、糸案内部材171を経た後、ミシンヘッド101の頭部を覆う面板103の下部正面から側面まで至る糸掛け準備経路112とで構成されている。また、前記糸掛け準備経路112の終端上部には、糸保持部材184と、糸切り部材186とが配置されている。
【0004】
そこで、作業者は、糸wを糸掛け準備経路111に導入して下方に導き、糸案内部材171に掛けて略水平方向(図9において左側)に屈曲させ、糸端を引きながら矢印YA方向に誘導する。このとき、糸掛け準備経路112内に配置された図示しない糸把持部、糸係止部等に糸wがそれぞれ把持、係止される。その後、糸掛け準備経路112の終端部からは矢印YB方向に誘導して糸保持部材184に糸wを保持させ、糸切り部材186によって糸を切る一連の操作をすることになる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の案内方法では、糸掛け準備経路112において、糸wを略水平方向に導くため、作業者が意識して糸wに張力を与えながら誘導しないと、誘導中に糸wに弛みが生じ糸の軌跡が安定せず、糸掛け準備経路112に確実に導くことができなかった。
【0006】
また、前記糸wの弛みによって、前記糸掛け準備経路112内に配置された図示しない糸把持部及び糸係止部に糸wを確実に誘導しきれなかった。
【0007】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、糸通し装置等へ糸を導く際、操作性を向上させると共に、確実に糸掛け準備経路に糸を導くことができるミシンの糸案内装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、請求項1記載のミシンの糸案内装置は、糸供給源から縫針の近傍に亙って糸を掛ける糸掛け準備経路を備えているものを対象とし、特に、前記糸を係止しながら、前記糸掛け準備経路の少なくとも一部分に沿って移動することによって前記糸を前記糸掛け準備経路に導く糸誘導手段を備えている。従って、作業者は、前記糸誘導手段によって前記糸を係止させ、更に、前記糸掛け準備経路の少なくとも一部分に沿って移動させることによって、容易に、かつ確実に前記糸掛け準備経路に前記糸を導くことができる。
【0009】
また、請求項2記載のミシンの糸案内装置は、前記糸掛け準備経路と略平行な溝を備え、前記糸誘導手段を、前記糸を係止する係止部と、その係止部を支持すると共に、前記溝に沿って移動可能な支持部とで構成している。従って、前記係止部に前記糸を係止させた後、前記溝に沿って移動させることにより、前記糸掛け準備経路に、前記糸を導くことができる。
【0010】
また、請求項3記載のミシンの糸案内装置は、前記支持部を常時糸供給源側に付勢させる付勢部と、前記糸掛け準備経路上において、前記糸を把持し、その把持力が前記係止部の係止力より強い把持部とを備えている。従って、前記係止部に前記糸を係止させ、更に、前記溝に沿って移動させて、前記把持部に前記糸を把持させる。その後、前記付勢部によって前記支持部が前記糸供給源側に戻されるとにき、前記係止部から前記糸が解放される。
【0011】
更に、請求項4記載のミシンの糸案内装置は、前記糸掛け準備経路の終端近傍で、前記糸掛け準備経路と前記溝との間に配置され、かつ前記糸を切断する糸切断部を備え、前記溝を、前記糸切断部が配置された位置よりも前記支持部が付勢される方向とは反対側まで延長して形成している。従って、前記係止部を前記糸掛け準備経路よりも長い前記溝の終端まで移動させることによって、前記糸切断部に前記糸が接触し、その糸が切断される。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のミシンの糸案内装置を糸通し装置に具体化した実施の形態について図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、糸誘導手段の構成を示す図であり、図2は、糸誘導手段の作用を説明する図であり、図3は、糸通し装置を備えたミシン頭部の概略斜視図であり、図4は、糸通し装置の構成を示す拡大図である。
【0014】
本実施の形態の糸通し装置150は、図3に示すように、縫製に先立ち糸wを掛ける糸掛け準備経路として、ミシンヘッド1に形成された2つの糸案内溝11、12と、その糸案内溝12上に設けられた糸係止部5と(図4に示す)、糸案内溝12の内側に設けられた糸把持部70と(図4に示す)、糸案内溝12の終点位置に設けられた糸保持部84及び糸切断部86と、前記糸案内溝12に沿って往復作動可能な糸誘導手段としての糸掛け誘導部材14とを備えている。
【0015】
前記糸案内溝11は、図3に示すように、ミシンヘッド1の上部に設けられた上部糸掛け9から下方へ上下方向に延びて形成され、図4に示す針棒台20に固定された糸案内部材71の近傍まで延びている。一方、糸案内溝12は、ミシンの頭部を覆う面板3の操作者側下方から奥側まで水平方向に形成されている。
【0016】
前記面板3には、前記糸案内溝12に略平行に、かつ前記糸切断部86が配置された位置よりも後述する支持板23が付勢される方向とは反対側まで延長して形成されたガイド溝16が設けられている。
【0017】
前記糸把持部70は、図4に示すように、ミシン機枠に固定される針棒台20に上下移動可能に挿通支持される針棒21に平行で、前記針棒台20に上下動可能に挿通支持される糸通し棒61を備えている。その糸通し棒61の下端部には、フック保持部31が固着されており、このフック保持部31には水平に延出して略直角方向に折曲するフック部33が取り付けられている。また、前記糸通し棒61の下端部には、糸を把持する把持部6も備えている。
【0018】
前記フック部33は、図6(a)に示すように、先端に鈎の手状の鈎部35が形成されたフック37と、フックの両側に位置し先端に「V」字状に糸導入溝39が形成された2枚のフックガード41、43とからなる。
【0019】
また、図4に示すように、フック保持部31にはフック部33と反対方向に延出する突出片45が一体に形成されている。この突出片45の先端には、皿支持片80が突出して形成されている。
【0020】
前記糸通し棒61の下端には、更に、フック保持部31を「コ」字状に上下に挟み、糸通し棒61に対して回転可能に形成されたリンクレバー51が取り付けられており、このリンクレバー51の水平方向に延出された端部にピン53(図5に示す)が垂直に突設されている。また、リンクレバー51の「コ」字状背面には、前記糸係止部5が固着されている。
【0021】
前記把持部6は、図7に示すように、先端がやや下がるように下斜め方向に突出した前記皿支持片80の先端付近において、支持ピン90に摺動可能に軸支される押さえ皿82の内側にコイルバネ91を装着している。従って、前記押さえ皿82を前記皿支持片80方向に付勢するため、前記押さえ皿82と前記皿支持片80とによって糸を保持する。尚、前記皿支持片80には、前記押さえ皿82に面して支持ピン90から所定距離離れた位置に糸抜き溝93が糸道に沿って凹設されている。
【0022】
前記糸係止部5は、図8に示すように、前記リンクレバー51の背部に固定される固定板58と、その固定板58の上、下端から水平方向に突出し中央部が湾曲したアーム57、59と、そのアーム57の突出方向先端から下方向に延出した押え爪67と、前記アーム59の突出方向先端から上方向に延出した糸掛け爪66とからなり、これらは一体に形成されている。前記押え爪67は、その先端が前記固定板58から離れる方向に湾曲されると共に、その湾曲開始位置に糸掛け溝65が形成されている。
【0023】
前記糸通し棒61には、図4に示すように、前記フック保持部31の上部において、摺動ガイド55が前記針棒21の反対方向に突出して遊挿されており、Eリング69により上下位置が規制されている。更に、前記摺動ガイド55には、前記糸通し棒61に平行で軸方向に溝56が形成された支持枠73が一体に形成されており、この溝56内に前記針棒台20に突設されたピン75が遊嵌している。従って、前記糸通し棒61が上下動すると、これに伴いこの摺動ガイド55及び前記支持枠73も一体的に上下動するが、前記糸通し棒61の軸回転に対しては追従しない。
【0024】
前記摺動ガイド55には、所要長のガイド溝77が穿設され、このガイド溝77内にリンク機構を構成するリンクピン79が摺動自在に遊嵌される。このリンクピン79は、第1リンク板81及び第2リンク板85を軸支する。前記第1リンク板81は、図5(a)に示すように、両端に、リンクピン79と、リンクレバー51に突設されたピン53とが各々回転可能に挿通されている。
【0025】
また、一端が前記リンクピン79に軸支された前記第2リンク板85の他端は、前記突出片45の先端と共通にピン89が回転可能に挿通されている。
【0026】
このように、前記リンクピン79により共通に軸支される前記第1リンク板81及び前記第2リンク板85と、この第1リンク板81にピン53を介して連結する前記リンクレバー51と、前記第2リンク板85にピン89を介して連結する前記突出片45とによってリンク機構が構成される。
【0027】
前記糸案内部71は、略舌片状に形成され、その固定端は前記針棒台20の側面に固定されている。一方、自由端である先端部は、図3において、前記糸案内溝11側に突出している。
【0028】
前記糸保持部84及び糸切断部86は、前記糸案内溝12の終端部上方の前記面板3に設けられている。前記糸保持部84は、基本的には前記把持部6と同様の構成であり、前記把持部6における前記押さえ皿82と同様のものが前記面板3方向に付勢されている。そして、前記糸切断部86は、図2において、前記糸保持部84よりも手前側(ミシン前面側)に配置されている。そして、前記糸切断部86は、上方に刃面が向いたカッターを備えている。
【0029】
前記糸掛け誘動部材14は、図1に示すように、前記面板3に固定された固定軸15に一端が軸支され、他端は前記ガイド溝16に挿通され、前記面板3から突出している支持部としての支持板23と、その支持板23の先端部に、糸wを係止するための切り欠きを有する係止部としての糸係止部材19と、バネ止め軸18に当接し、前記糸係止部材19を前記糸案内溝11側へ常時付勢させる付勢部としての板バネ17とで構成されている。
【0030】
次に、縫製に先立ち、準備作業としての糸掛け操作について説明する。
【0031】
ミシンの使用者は、図3に示すように、糸供給源としての糸駒7から供給される糸wを以下の手順で準備する。まず、糸wを上部糸掛け9に掛け、糸案内溝11に導入し、糸案内部71に掛ける。そして、その糸案内部71で糸wを屈曲させることで糸案内溝12の口元に糸wを誘導し、やや上方に糸wを導き糸掛け誘導部材14の糸係止部材19の切り欠きに係止する(図1に示した状態)。その後、図3に示すように、前記糸係止部材19を前記ガイド溝16に沿って矢印YC方向に移動させる。
【0032】
図2(a)に示すように、前記糸保持部材84及び糸切断部86を越えて終端まで動かすと、この過程において、糸wは、前記糸掛け爪66に係止され、続いて、図7(a)に示すように、前記皿支持片80の先端部下面を矢印e方向に摺動して、前記押さえ皿82と前記皿支持片80との間に挿入される。次に、前記糸係部材19を放すと、前記板バネ17の付勢力によって、図2(b)に示すように、矢印YD方向に糸掛け誘導部材14が移動する。その際、前記糸保持部84及び糸切断部86に糸wが誘導され、前記糸掛け誘導部材14が前記糸切断部86を通過するときに、前記糸wが前記糸切断部86に接触し、切断される。その後、前記糸掛け誘導部材14は、図1に示された位置まで戻され、前記糸wは、前記糸保持部84に保持された状態となる。
【0033】
次に、糸案内機構を備えた糸通し装置150の動作について説明する。尚、この動作は、糸通し棒61の昇降・回転動作に基づいてなされ、本実施の形態では、図示しないパルスモータによって糸通し棒61を移動させている。以下は、糸通し装置150の各部の動きを中心に説明する。
【0034】
上述したように糸wが準備されると、操作者は、操作レバー(図示略)を操作することによって前記パルスモータが駆動する。すると、前記糸通し棒61が下降すると共に、図5(a)の矢印g方向に回転する。このとき、前記糸通し棒61に固着された前記フック部33及び前記突出片45は、前記糸通し棒61の回転と共に、それぞれ同図(b)の矢印h、i方向に回転し、前記フック部33のフック37は、前記縫い針62の目孔63に貫通する。前記突出片45の回転により、前記ガイド溝77内に遊嵌された前記リンクピン79は、前記第2リンク板85を介して矢印j方向に移動し、更に、前記第1リンク板81を介してピン53を矢印k方向に移動させる。そのため、前記リンクレバー51も矢印k方向に回転し、前記リンクレバー51の背部に固定された前記糸係止部5が矢印m方向に回転し前記縫い針62に接近する。
【0035】
このような動作により、一端を前記把持部6に把持された糸wは、その把持部6と前記糸係止部5との離隔が大きくなるため、その間の糸wは緊張される。このとき、前記糸係止部5の回転により、前記糸掛け爪66は、前記把持部6との間の糸wの緊張を保持しつつ、前記糸駒7側に摺動し、その糸駒7側の糸wの弛みを吸収する。更に、回転して前記糸掛け爪66が前記縫い針62に近づくと、糸wは、前記糸掛け爪66から外れて前記押さえ爪67の前記糸掛け溝65に導入され、この糸掛け溝65と前記把持部6との間で糸wが緊張されて、前記縫い針62の目孔63前に誘導される。この状態においては、前記フック37は図6(a)に示すように、前記縫い針62の目孔63に貫入しており、緊張された糸wが前記鈎部35の内側に導入される。
【0036】
一方、前記把持部6に把持された糸wは、前記リンクピン79と共に前記押え皿82が前記糸通し棒61から遠ざかるため、糸wは緊張すると共に、中へ中へと、つまり前記支持ピン90方向にくい込んでいき、一層強固に挟持され、糸wの緊張に対して前記糸掛け爪66、前記押さえ爪67の方向に摺動しない。従って、この把持部6と前記糸係止部5との間にて、糸wが充分に緊張されるため、糸wは前記フックガード41、43の前記糸導入溝39に導入されて前記鈎部35に確実に捕捉される。
【0037】
次に、前記糸通し棒61を図5(c)の矢印n方向に逆回転させると、前記フック部33は、前記縫い針62から矢印o方向に遠ざかると共に、前記突出片45が矢印p方向に回転する。従って、リンク機構を構成する各部材は、上述した動作に対して戻るように動作し、前記把持部6が矢印q方向に移動すると共に、前記糸係止部5が矢印r方向に回転して前記縫い針62から遠ざかる。このとき、前記糸掛け溝65に係止されていた糸wは、この移動によりそこから外れて緊張が解かれ、図6(b)に示すように、前記フック37に捕捉されて前記縫い針62の目孔63から引き出されていく。このフック37の引き抜き動作により、糸wは前記鈎部35で折れ曲がり、この鈎部35と前記把持部6との間の糸wの弛みが吸収されて、再び糸wが緊張する。
【0038】
更に、前記フック37に図5(c)の矢印o方向の力が働き続けると、前記把持部6に把持された糸wは、その把持力が前記フック37の引き抜く力に負けて、図5(c)の矢印s方向に摺動する。この摺動が始まると、糸wは、図7(b)に示すように、前記押え皿82と前記皿支持片80との間隙がくさび状になっていることから、前記糸抜き溝93方向に移動し、その糸抜き溝93に落ち込む(図7(c))。従って、糸wが前記押え皿82からの押圧が解除されて、この糸抜き溝93内を抵抗少なく摺動するため、前記把持部6と前記鈎部35との間の糸wの緊張がゆるみ、前記フック37の引き抜き動作に伴い、糸wが容易に前記縫い針62の目孔63から引き抜かれる。
【0039】
前記糸通し棒61は、所定角度の逆回転が終了すると、上昇動作に入る。この上昇動作により、前記フック部33、前記糸係止部5、前記糸把持部70は、リンク機構を構成する各部材と共に一体に上昇する。このとき、前記鈎部35に捕捉された糸wは、引き上げられて前記目孔63から引き抜かれるが、その上昇過程において、糸wの目孔63における摩擦力や糸wの自重等により、前記フック37が糸wを保持しきれなくなり、糸wは前記鈎部35から外れる。
【0040】
以上説明したことから明かなように、本実施の形態のミシンの糸案内装置によれば、係止部材19を糸案内溝12よりも長いガイド溝16の終端まで移動させることによって、ガイド溝16の途中に配置された糸切断部86に糸wが接触するため、糸wの弛みをなくし、常に張力を与えながら誘導することができ、かつ糸wを係止した支持部材23を往復移動させることによって糸切りまで行うことができ、一連の作業が簡単になり、確実性、操作性ともに向上させることができる。
【0041】
尚、本発明は以上詳述した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々な変更を加えることができる。
【0042】
例えば、本実施の形態では、前記糸切断部86を前記糸案内溝12の終端近傍で、前記糸案内溝12と前記ガイド溝16との間に配置しているが、前記糸切断部86を取り除くように構成してもよい。この場合、前記把持部6の把持力が前記糸係止部材19の係止力より強くなるように構成する。従って、前記糸係止部材19に糸wを係止させた後、前記糸係止部材19を前記ガイド溝16の終端まで移動させて前記把持部6に糸wを把持させる。その後、前記糸係止部材19を手放すと、前記板バネ17の付勢力によって前記糸駒7側に前記糸係止部材19が戻るときに、前記把持部6の把持力が前記糸係止部材19の係止力よりも強いため、前記糸係止部材19から糸wが解放され、糸wは、前記糸案内溝12に導かれると共に、前記把持部6に把持される。
【0043】
また、本実施の形態では、糸掛け準備経路としての糸案内溝12に略平行なガイド溝16を設けているが、糸案内溝11に略平行な溝を設け、前記支持部材を鉛直方向に移動可能に構成するようにしてもよい。
【0044】
また、本実施の形態では、糸誘導手段を糸係止部材19と、支持板23とで構成しているが、糸係止部材をガイド溝16に嵌合し、かつそのガイド溝16に対して摺動可能なように構成してもよい。この場合、ガイド溝16の終端まで摺動させた後、作業者の手によって元の位置まで戻す。
【0045】
更に、本実施の形態では、糸切断部材86のカッターを上向きに配置し、支持板23が糸駒7側に戻るときに、糸を切断しているが、前記カッターを前記糸切断部材86の下側に、かつ下方を向くように配置してもよい。この場合、支持板23をガイド溝16の終端に移動させる最中に、糸wが切断される。
【0046】
【発明の効果】
以上説明したことから明かなように、本発明の請求項1記載のミシンの糸案内装置によれば、糸誘導手段によって、糸を係止しながら、糸掛け準備経路の少なくとも一部分に沿って移動することによって前記糸を前記糸掛け準備経路に導くため、作業者は、確実に前記糸掛け準備経路に前記糸を導くことができる。
【0047】
また、本発明の請求項2記載のミシンの糸案内装置は、前記係止部に前記糸を係止させた後、前記溝に沿って移動させることにより、前記糸掛け準備経路に、前記糸を導くため、容易に、かつ確実に前記糸掛け準備経路に前記糸を導くことができる。
【0048】
また、請求項3記載のミシンの糸案内装置は、前記係止部に前記糸を係止させ、更に、前記溝に沿って移動させて、前記把持部に前記糸を把持させ、その後、前記付勢部によって前記支持部が前記糸供給源側に戻されるとにき、前記係止部から前記糸が解放されるため、糸案内装置を初期の状態に戻す手間を省くことができる。
【0049】
更に、請求項4記載のミシンの糸案内装置は、前記係止部を前記糸掛け準備経路よりも長い前記溝の終端まで移動させることによって、前記溝の途中に配置された糸切断部に前記糸が接触するため、前記糸の弛みをなくし、常に張力を与えながら誘導することができ、かつ前記糸を係止した支持部を往復移動させることによって糸切りまで行うことができ、一連の作業が簡単になり、確実性、操作性ともに向上させることができる等の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】糸誘導手段の構成を示す図である。
【図2】糸誘導手段の作用を示す図であり、(a)は、係止部を溝終端に移動させたときの面板側から見た図であり、(b)は、係止部を溝終端で手放したときの面板側から見た図である。
【図3】糸通し装置を備えたミシン頭部の斜視図である。
【図4】糸通し装置の構成を示す拡大斜視図である。
【図5】把持部を備えた糸通し装置の動作を示す説明図であり、(a)は、糸通し装置が作動する前の状態を示し、(b)は、フックが縫針の目孔を貫通したときの状態を示し、(c)は、糸が縫針の目孔を脱出したときの状態を示す。
【図6】フック部の動作を示す説明図であり、(a)は、糸を縫針の目孔に通す前の状態を示し、(b)は、糸を縫針の目孔に通したときの状態を示している。
【図7】糸保持部の構成及び動作示す断面図であり、(a)は、糸把持部の構成を示す図であり、(b)は、糸把持部に糸が把持された状態を示す図であり、(c)は、糸把持部から糸が抜けるときの図である。
【図8】糸係止部の構成を示す斜視図である。
【図9】従来の糸通し装置を備えたミシン頭部の斜視図である。
【符号の説明】
6 把持部
11 糸案内溝
12 糸案内溝
14 糸掛け誘導部材
16 ガイド溝
17 板バネ
19 糸係止部材
23 支持板
86 糸切断部
w 糸
Claims (4)
- 糸供給源から縫針の近傍に亙って糸を掛ける糸掛け準備経路を備えたミシンの糸案内装置において、
前記糸を係止しながら、前記糸掛け準備経路の少なくとも一部分に沿って移動することにより前記糸を前記糸掛け準備経路に導く糸誘導手段を備えたことを特徴とするミシンの糸案内装置。 - 前記糸掛け準備経路と略平行な溝を備え、
前記糸誘導手段を、前記糸を係止する係止部と、その係止部を支持すると共に、前記溝に沿って移動可能な支持部とで構成したことを特徴とする請求項1に記載のミシンの糸案内装置。 - 前記支持部を常時糸供給源側に付勢させる付勢部と、
前記糸掛け準備経路上において、前記糸を把持し、その把持力が前記係止部の係止力より強い把持部とを備え、
前記支持部を前記溝に沿って移動させたときに前記把持部に前記糸を把持させ、その後、前記付勢部によって前記支持部を前記糸供給源側に戻したときに、前記係止部から前記糸を解放するようにしたことを特徴とする請求項2に記載のミシンの糸案内装置。 - 前記糸掛け準備経路の終端近傍で、前記糸掛け準備経路と前記溝との間に配置され、かつ前記糸を切断する糸切断部を備え、
前記溝を、前記糸切断部が配置された位置よりも前記支持部が付勢される方向とは反対側まで延長して形成したことを特徴とする請求項3に記載のミシンの糸案内装置。
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