JP3731090B2 - タイヤ用艶だし剤組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はタイヤ表面に塗布するだけでタイヤ表面に美観と光沢を与えるタイヤ用艶だし剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
タイヤは種々の条件下(乾路、泥道、雨道、雪道等)を走行し、又タイヤ内部からの析出物(老化防止剤、添加物等)により、タイヤサイドウォーム部は種々の汚染物により著しく美観が損なわれ、水及び洗剤洗いだけではおちにくい。従来タイヤ等ゴム表面の艶だし剤として、シリコンオイル(ジメチルポリシロキサン及び種々の変成シリコンオイル)及び樹脂を併用したものを有機溶剤で希釈した溶剤タイプ、或いは界面活性剤を用いてシリコンオイルを乳化した水性タイプが使用されてきた。
【0003】
しかしながら溶剤タイプのものは、初期の光沢、艶は優れているがゴム表面に塗布した時、溶剤がゴム内部に浸透しゴムを膨潤させたり、又ゴム中の添加剤を溶出させゴムの物性を低下させる事がある。水性タイプは環境問題、ゴム材質に対しては優れているが光沢及び艶の持続性に於いて充分でない。
【0004】
又従来の艶だし剤は艶の成分が液状物を主原料としているため、タイヤ表面にベタツキや粘着性となり、塗布直後は良いが走行後種々の汚れが付着し反対に美観を損なう。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はタイヤ等ゴム製品、特に過酷な条件下で使用される自動車タイヤに於いて黒さ、光沢、耐久持続性のあるベタツキのないタイヤ用艶だし剤組成物を提供する事を目的とするものであり、タイヤ表面に塗布するだけでゴムの性能を損なうこと無く外観を長期にわたって美しく保つとともに、光沢を失ったゴム表面を復活させるものである。
【0006】
【課題を解決するための手段及び作用】
上記問題を解決するため、種々の物質について試験研究を重ねた結果本発明に到達したもので、下記成分(1)−(4)を水に乳化分散してなり、その割合は、天然又は/及び合成ワックス5−30wt%、オルガノポリシロキサン油0.5−10wt%、カーボン ブラック0.5−10wt%、ポリウレタン樹脂0.5−10wt%からなる事を特徴とするタイヤ用艶だし剤組成物である。
(1)天然又は/及び合成ワックス
(2)オルガノポリシロキサン油
(3)カーボンブラック
(4)ポリウレタン樹脂
即ちワックス皮膜は、オゾン・紫外線等の外部要因からゴムを保護しゴムの物性を損なわないこと、又ベタツキのない撥水皮膜となり汚れ防止、再汚染性に優れていること、更に、ポリウレタン樹脂を混合使用する事によりワックス皮膜を強化し艶皮膜のハガレ防上を改善出来ること、又艶成分がゴム内部へ浸透するのをシリコンオイルが調節し、タイヤ表面での滑りを改善して塗布時の作業を楽にする事を見出したものである。
【0007】
又、上記組成物にカーボンブラックを混合使用することによりワックス皮膜の硬度が上がりベタツキによる再汚染を防止し、耐摩擦、耐衝撃性の向上及び耐熱性が向上し走行時の温度上昇するタイヤ面での艶の耐久性が良くなること、種々の汚染物を隠蔽し薄い保護皮膜でも美観を回復することを見出した。
【0008】
本発明においては、ワックス、オルガノポリシロキサン油、カーボンブラック、ポリウレタン樹脂を界面活性剤を用いて乳化しても、又ワックス、オルガノポリシロキサン油、カーボンブラック、ポリウレタン樹脂をそれぞれ単成分又は/及び複成分を乳化分散したものを混合して使用してもよい。
【0009】
本発明で用いられるワックスは、天然ワックス、合成ワックスを問わず単独又は/及びこれらの混合物も使用でき、その融点が60−130℃である事が好ましい。本発明で用いられるワックスとしては、カルナバワックス、キャンデリラワックス、モンタンワックス、セレシン、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、オゾケライト等に代表される天然ワックス、フィッシャー・トロプシュワックス及びその誘導体、低分子量ポリエチレン及びその誘導体、モンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリン誘導体、カスターワックス、ラノリン誘導体、石油系のオレフィンと無水マレイン酸あるいはアクリル酸、又は酢酸ビニルからなるワックス、高級脂肪酸、硬化油、塩素化炭化水素、フッソ変成ワックス、シリコン変成ワックス、樹脂変成ワックス等の合成ワックスを使用する事が出来る。
【0010】
融点が60℃以下のワックスは温度上昇するタイヤに於いて、ワックスが溶出する事により艶の低下、ベタツキによる汚染が生じ、融点が130℃以上のワックスを使用した場合艶皮膜が硬くヒビ割れを生じる。
【0011】
これらのワックスを乳化した水分散液としては、ワックスを界面活性剤の使用、又ワックスの酸をアルカリにより中和し石鹸として水に分散した分散液が用いられる。この際、ワックスを加熱溶解する際の希釈剤として炭化水素系の溶剤(ターペン、ケロシン、流動パラフィン等)、乳化安定化剤としてエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類はゴムの性能を低下させない範囲であれば使用可能である。
【0012】
本発明で用いられるポリウレタン樹脂は、多価アルコール及び/又は多価アミンと多価イソシアネート化合物を反応させて得られるポリウレタン生成物であり、そのフィルム化物性(室温で1日放置後80℃で2日乾燥、膜厚:約0.3mmに作成)が引張強度:150−500kg/cm2、伸び:100−800%、最低造膜温度:40℃以下が好ましい。フィルムにした物性が引張強度150kg/cm2以下の場合ワックス皮膜の強化の目的にならずワックスのみの皮膜と同等の強度となる。又500kg/cm2以上の場合は皮膜が強固になり又硬さも増してワレ、ハガレが生じる。
【0013】
フィルムの伸びが100%以下の場合は走行時、複雑に振動するタイヤゴムの伸びに追従出来ず艶膜のワレが生じ800%以上では皮膜が軟弱化しワックス皮膜の強化にならない。又最低造膜温度は温度上昇する自動車タイヤにおいて40℃以下である事が好ましい。
【0014】
ポリウレタン樹脂は上記皮膜物性を持つポリウレタン生成物であれば組成を選ばず使用でき又、その水性化方法として自己乳化法、強制乳化法で製造されたを問わず使用出来る。ポリウレタン樹脂を20−50%含有する乳化物も容易に入手出来、これらも使用可能である。
【0015】
本発明で用いられるシリコンオイルは、ジメチルポリシロキサン及び/又はエポキシ、アルキル、アミノ、カルボキシル、アルコール、ポリエーテル等の変成物であり、25℃での粘度が350cst以上であることが好ましい。350cst以下ではシリコンオイルがワックスと相溶して皮膜の可塑化が起こり皮膜が軟質化してベタツキを生じる。これらシリコンオイルを乳化した水分散液としては、シリコンオイルを界面活性剤の存在下水に分散させた分散液が用いられる。これらシリコンオイルを15−60%含有する乳化物も容易に入手出来、これらも使用可能である。
【0016】
本発明で用いられるカーボンブラックは、塗料用黒色顔料として通常用いられるチャンネルブラック、ファネスブラック、アセチレンブラック、ランプブラック等のカーボンブラックが使用でき特に限定するものではない。その使用量は0.5−10%で、使用する場合は予め20−70%に分散したものが容易に入手出来これらを使用すると便利である。
【0017】
本発明で用いられる(1)ワックス(2)シリコンオイル(3)カーボンブラック(4)ポリウレタン樹脂の割合は、それぞれ5−30wt%、0.5−10wt%、0.5−10wt%、0.5−10wt%である。
【0018】
(1)の固形分が5%未満もしくは(4)の固形分が10%を越える場合は、艶の皮膜が強固な連続皮膜となり長期走行時タイヤ内部より析出した成分により皮膜の剥離が生じ、又(1)が30%を越えるかもしくは(4)が0.5%未満の場合は高温時にベタツキを生じ汚れを抱き込みやすい。
【0019】
(2)が0.5%未満では塗布時及び生成した艶皮膜のタイヤ表面での滑りが悪く作業性が劣り、10%を越える時はベタツキが生じ汚れやすい。
【0020】
(3)が0.5%未満では種々、特にタイヤ表面に固着したドロ汚れに対して隠蔽性が劣り黒みの復元性及び耐熱性も期待できない。10%を越える時は皮膜の硬さが増しタイヤの伸びちぢみに適応出来ず長期的にワレが生じる。
【0021】
本発明組成物には、その他各種成分の混合使用が可能で、艶皮膜の外観、塗布のし易さ、皮膜及び素材の劣化防止等の為に各種添加剤が用いられる。これらは通常、分散剤、タレ防止剤、増粘剤、レベリング剤、紫外線防止剤、酸化防止剤、凍結防止剤等として一般に市販されているものから選ばれる。
【0022】
【実施例、比較例】
次に、実施例、比較例を示し本発明を更に具体的に説明するが、これらは本発明を何ら拘束するものではない。尚「部」とは重量部を示す。
【002
実施例
酸化マイクロクリスタリンワックス(融点・82℃、酸価・38、日本精蝋社 OX−120)20部、オレイン酸2部、ジメチルポリシロキサン(信越化学社 KF96 3000cs)2部を100℃に加熱しワックスを溶解させる。溶解物を撹拌下モルホリン4部を加え均一化した後85−90℃に加熱した水55部を加える。30−35℃迄冷却した後、ネオタンUE 1100(ウレタン樹脂エマルジョン:引張強度・430kg/cm2、伸び・200%、固形分・35%、最低造膜温度・0℃以下、東亜合成化学製)7部、カーボンブラック分散液(DISPERSE BLACK SD−9020 固形分・40%、大日本インキ製)6部、エチレングリコール4部を加え30分間均一になるまで撹拌して調整した。
【002
比較例1
実施例で使用した酸化マイクロクリスタリンワックス3部、オレイン酸2部、ジメチルポリシロキサン20部を実施例と同様の方法でモルホリン4部でオレイン酸のモルホリン塩として乳化し、同様にウレタン樹脂エマルジョン7部、カーボンブラック分散液6部、エチレングリコール4部を加えて30分間均一になるまで撹拌して比較液を作成した。
【002
以上の配合原液をスポンジを塗布具としタイヤに塗布し25℃、2時間乾燥後以下の比較試験をおこなった。その結果を表1に示す。
【0026
試験方法
(艶のベタツキ)
塗布面を指で触り艶のベタツキを調べた。
○ 指で撫でても跡が残らない
△ ベタツキは無いが跡が若干残る
× ベタツイテ跡が残る
(隠蔽性)
タイヤにクレヨン(白)で線を入れその上からスポンジで原液を塗布した時のクレヨンの見え具合を調べた。
○ 1回の塗布で隠れる
△ 2回の塗布で隠れる
× 3回以上でも隠れない
(艶の耐水性)
塗布面を水を付けた洗車ブラシで30回擦った後、乾燥させ艶の残り具合を調べた。
○ 塗布時と大差なし
△ 若干薄くなっている
× 艶の残りなし
(撥水性)
艶の耐水性試験後の塗布面の水の弾き具合を調べた。
○ 全面撥水している
△ 部分的に撥水している
× 全面濡れている
(防汚性)
ドロ水を塗布面にかけた後乾燥させタイヤ面に付着したドロ(白色)を水を付けたスポンジで3回擦った後のドロの取れ具合を調べた。
○ 残り無く取れている
△ 若干残っている
× 残っている
(曲げ割れ性)
3×10cmに切断したタイヤのサイドウォーム部に塗布し塗布部を90°曲げて艶皮膜の状態を調べた。
○ ワレ、ヒビ等無く変化無し
△ ワレ、ヒビ等無いが、元に戻したとき曲げた部分が白化している
× ワレ、ヒビが生じる
【0027
【表1】
Figure 0003731090
【0028
【発明の効果】
本発明の艶だし剤組成物はタイヤ表面に塗布するだけでゴムの性能を損なうことなく外観を長期にわたって美しく保つとともに、光沢を失ったゴム表面を復活させるという効果を奏する。

Claims (4)

  1. 下記成分(1)−(4)を水に乳化分散してなり、その割合は、天然又は/及び合成ワックス5−30wt%、オルガノポリシロキサン油0.5−10wt%、カーボンブラック0.5−10wt%、ポリウレタン樹脂0.5−10wt%からなる事を特徴とするタイヤ用艶だし剤組成物。
    (1)天然又は/及び合成ワックス
    (2)オルガノポリシロキサン油
    (3)カーボンブラック
    (4)ポリウレタン樹脂
  2. 天然又は/及び合成ワックスの融点が60−130℃の範囲である請求項1記載のタイヤ用艶だし剤組成物。
  3. オルガノポリシロキサン油の粘度が25℃で350cst以上である請求項1または請求項2記載のタイヤ用艶だし剤組成物。
  4. ポリウレタン樹脂は引張強度:150−500kg/cm2、伸び:100−800%、最低造膜温度:40℃以下である請求項1ないし請求項3のいずれか記載のタイヤ用艶だし剤組成物。
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