JP3729355B2 - スパツタ装置 - Google Patents
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Description
【目次】
以下の順序で本発明を説明する。
産業上の利用分野
従来の技術
発明が解決しようとする課題
課題を解決するための手段
作用
実施例
発明の効果
【0002】
【産業上の利用分野】
本発明はスパツタ装置に関し、例えば光デイスクの反射膜の形成工程に使用するスパツタ装置に適用して好適なものである。
【0003】
【従来の技術】
従来、コンパクトデイスク(CD)やレーザデイスク(LD)などの光デイスクは、一面(以下、これを信号記録面と呼ぶ)に記録信号に応じた凹凸パターンが形成されてなる円盤形状の基板をポリカーボネイト等の透明な合成樹脂材を用いて作成し、当該凹凸パターンの表面上に反射膜を形成した後、当該反射膜上に保護膜を積層形成するようにして製造されている。
【0004】
かくしてこの種の光デイスクでは、基板の他面側から光ビームを照射したときに当該光ビームが反射膜において基板(及び反射膜)の凹凸パターンに応じた反射光となつて反射するため、この反射光に基づいて記録信号を再生し得るようになされている。
ところでこのような光デイスクの製造工程において、反射膜の形成作業は、通常、専用のスパツタ装置を用いて基板の信号記録面上に高反射物質(通常はアルミニウム)をスパツタリングにより堆積させることにより行われている。
【0005】
図7はこのようなスパツタ装置のうち、従来提案されているマグネトロン方式のスパツタ装置1を示すものであり、このスパツタ装置1では、ハウジング2の内部にスパツタリングを行うための空間領域(以下、これをスパツタリング領域と呼ぶ)2Aが設けられ、当該スパツタリング領域2A内にガス導入部3を介してアルゴン(Ar )ガスを導入し得るようになされている。
【0006】
このハウジング2の上部にはスパツタリング領域2Aを上側から閉塞するように絶縁材4を介してバツキングプレート5が固定されており、バツキングプレート5の下面には高反射物質(通常はアルミニウム)からなるターゲツト6が取り付けられている。
またターゲツト6の中央部には、加工対象の基板7のセンター部に反射膜が形成されるのを防止するための棒状のセンターマスク8が取り付けられていると共に、ハウジング2の内部下端にはこの基板7の外周部に反射膜が形成されるのを防止するためのリング状の外周マスク9が取り付けられている。
【0007】
さらにターゲツト6はバツキングプレート5及び絶縁体10に嵌め込まれたボルト11を順次介して陰極電源(図示せず)に接続される一方、ハウジング2はボルト12を介してアース接地されており、動作時にはターゲツト6及びセンターマスク8がアノードとして作動し、その他のスパツタリング領域2Aの周囲がカソードとして作動することにより、ターゲツト6及びセンターマスク8とこれ以外のスパツタリング領域2Aの周囲との間に放電を生じさせて当該スパツタリング領域2A内にプラズマを発生させ得るようになされている。
【0008】
一方ハウジング2の下方には搬送テーブル13と、プツシヤ部14と、プツシヤ部14の先端に取り付けられた基板受部15とが配設されており、搬送テーブル13により搬送されてきた加工対象の基板7を基板受部15で支持してプツシヤ部14で押し上げることにより、この基板7をターゲツト6の下面と平行で、かつその信号記録面がセンターマスク8及び外周マスク9の各下面にそれぞれ密着するような所定位置(以下、これをスパツタリング位置と呼ぶ)に位置させるようになされている。
【0009】
かくしてこのスパツタ装置では、動作時、スパツタリング領域2A内に発生されるプラズマによつて、スパツタリング領域2A内にAr ガスとして供給されたAr 原子がイオン化してターゲツト6に衝突することによりターゲツト6表面からアルミニウム原子が飛び出し、これがスパツタリング位置にある基板7の信号記録面上に堆積する。これによりこのスパツタ装置1では、スパツタリング時間等の種々の条件を選定してAr 原子の堆積量を調整することで加工対象の基板7上に所望厚の反射膜を形成し得るようになされている。
【0010】
この場合このような構成のスパツタ装置1では、Ar 原子の衝突により当該Ar 原子のもつ運動エネルギーがターゲツト6の表面に与えられることにより、当該表面が発熱する問題がある。
【0011】
このためこの種のスパツタ装置1では、通常、バツキングプレート5の内部に図8(A)及び(B)に示すような所定形状の水路5Aが設けられていると共に、当該水路5A内には給水器16(図7)及び図示しない排水器をそれぞれ介して入口5B又は出口5Cからそれぞれ冷却水を供給し又は排出し得るようになされている。
【0012】
これによりこの種のスパツタ装置1では、この冷却水によつてバツキングプレート5を介してターゲツト6を冷却し得、かしくてスパツタリング時におけるターゲツト6表面の温度上昇を抑え得るようになされている。
【0013】
またこの種のスパツタ装置1では、通常、バツキングプレート5の上方に、例えば図9(A)及び(B)に示すような板状のヨーク20の一面にリング状の第1の磁石21と円柱状の第2の磁石22とが同心状に固定されてなる磁界装置23が、図7のようにモータ(図示せず)の出力軸24に偏心をもつて連結されるようにして配設されている。
【0014】
かくしてこの種のスパツタ装置1では、この磁界装置23によつてスパツタリング領域2A内に磁界を形成してイオン化されたAr 原子をこの磁界内に閉じ込めることにより、当該Ar 原子を効率良くターゲツト6表面に衝突させ得る一方、発生させた磁界を偏心をもつて回転させることにより効率良くターゲツト6を利用し得るようになされている。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
ところでこの種のスパツタ装置1に用いられている磁界装置23は、上述のようにリング状に形成された外側の磁石21(以下、これを外磁21と呼ぶ)と円柱状に形成された内側の磁石22(以下、これを内磁22と呼ぶ)とで形成されており、このような磁界装置23では発生させる磁力ピークが図9(C)に示すようにX方向及びY方向にそれぞれ1点ずつの合わせて2点しかない。
【0016】
このためこのような磁界装置23を用いたスパツタ装置1では、上述のように磁界装置23を偏心をもつて回転させてもスパツタリング領域2Aの中央部には常に磁力ピークが通るため、この場所にプラズマが集中し易く、過酷な運転条件(例えば短サイクルでの運転や放電出力がハイパワーな場合)になるとセンターマスク8や基板7が加熱されるために、オーバーヒートしてセンターマスク8及び基板7間にプラズマのアーキング(異常放電)が発生したり、基板7に傷が生じ又は不純物が付着するなどのトラブルが生じる問題があつた。
【0017】
かかる問題を解決するための1つの方法としては、例えばバツキングプレート5と同様にセンターマスク8の内部にも冷却水を供給することにより当該センターマスク8や当該センターマスクを介して基板7を冷却してオーバーヒートを防止する方法が考えられる。
【0018】
しかしながら通常この種のスパツタ装置1では、バツキングプレート5の水路5A(図8)はターゲツト6の冷却のみを目的として形成されているために当該バツキングプレート5を介して冷却水をセンターマスク8に供給するようなことは難しく、またこの種のスパツタ装置1では、通常、上述のようにバツキングプレート5のすぐ上側に磁界装置があるためにセンターマスク8用の特別の水路を設けることも難しい問題があつた。
【0019】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、アーキングや皮膜形成対象物に不良が発生するのを実用上十分に防止し得るスパツタ装置を提案しようとするものである。
【0020】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するため本発明においては、所定のガスが導入される容器と、容器内に固定されたリング状のターゲツトと、成膜形成対象物をターゲツトと対向するように支持する支持手段と、ターゲツトに負電圧を印加することにより、ターゲツト及び成膜形成対象物で挟まれる空間領域内のイオン化されたガスの構成成分を加速させてターゲツトに衝突させる負電圧印加手段と、ターゲツトの成膜形成対象とは反対側にターゲツトと当接するように配置され、内部にターゲツトを冷却するための冷却水を流す第1の冷却水路が設けられたバツキングプレートと、ターゲツトのセンターホールを嵌挿してバツキングプレートに絶縁材を介して取り付けられた冷却ブロツクに固定され、皮膜形成対象物の皮膜形成領域を規制するマスク部とを設け、マスク部を、第1の冷却水路とは独立して設けられ、バツキングプレート及び冷却ブロツクを通る第2の冷却水路を流れる冷却水により冷却される冷却ブロツクを介して冷却するようにした。
【0021】
【作用】
マスク部を、バツキングプレートに絶縁材を介して取り付けると共に、第2の冷却水路を流れる冷却水により冷却するようにしたことにより、マスク部がオーバーヒートするのを防止することができ、ターゲツトと皮膜形成対象物との間の空間領域内にアーキング等が発生するのを未然に防止することができる。
【0022】
【実施例】
以下図面について、本発明の一実施例を詳述する。
【0023】
図1において、30は全体として実施例によるマグネトロン方式のスパツタ装置を示し、ハウジング31、第1の外枠ブロツク32、第2の外枠ブロツク33、外周器34、第3の外枠ブロツク35、上壁ブロツク36、モータ取付けプレート37及び上面プレート38をそれぞれ順次積み重ねることにより形成された容器39内部に、バツキングプレート40、ターゲツト41、センターマスク42、外周マスク43及び磁界装置44がそれぞれ収納されている。
【0024】
実際上このスパツタ装置の場合、バツキングプレート40は外周器34の下面に絶縁材50を介して固定されており、その下面に高反射物質からなるドーナツ状のターゲツト41が支持ブロツク51を介してねじ52により固定されている。
【0025】
またバツキングプレート40の下面中央部には、特に図2において明らかなように、ターゲツト41のセンターホールを嵌通するように、かつターゲツト41及びバツキングプレート40と導通しないように冷却ブロツク60がテフロンからなる絶縁材61を介して止めねじ62により固定されており、この冷却ブロツク60の下面にセンターマスク42が止めねじ63を用いて固定されている。
【0026】
一方図1に示すように、外周マスク43はハウジング31の内部下端にねじ止めされており、この外周マスク43上にはハウジング31の内周面と外周マスク43の上面とを一体に覆うように防着シールド64が固定され、ハウジング31の内部上端にはターゲツト41を避けて当該ハウジング31を覆うように防壁ブロツク65が固定されている。
【0027】
さらにハウジング31及び外周マスク43の下方には、搬送テーブル66と、プツシヤ部67と、プツシヤ部67の先端に取り付けられた基板受部68とが配設されており、搬送テーブル66により順次搬送されてくる加工対象の基板70を基板受部68で支持してプツシヤ部67で押し上げることにより当該基板70をスパツタリングセツト状態にセツトし得るようになされている。
【0028】
従つてこのスパツタ装置30では、ターゲツト41、防壁ブロツク65、防着シールド64、外周マスク43及び基板70に囲まれるようにしてスパツタリング領域71が形成される。
このためハウジング31の周側壁にはガス導入部72が設けられていると共に、外周マスク43には排気口43Aが設けられており、かしくて動作時にスパツタリング領域71内にガス導入部72を介してArガスを供給し得る一方、不要なArガスを排気口43Aを介してスパツタリング領域71外に排出し得るようになされている。
【0029】
またターゲツト41はバツキングプレート40と、絶縁体73により容器39から絶縁されたボルト74とを順次介して陰極電源に接続されていると共に、容器39は上壁ブロツク36に固定されたボルト75を介してアース接地されており、かくして動作時にはターゲツト41がカソードとして作動し、かつスパツタリング領域71の他の周囲がアノードとして作動し得るようになされている。
【0030】
かくしてこのスパツタ装置30では、動作時、ターゲツト41にマイナス電圧が与えられられたときに、ターゲツト41と、スパツタリング領域71のその他の周囲との間で放電が生じてスパツタリング領域71内にプラズマが生じ、この結果図7のスパツタ装置1の場合と同様にして、スパツタリング状態にセツトされた基板70上に反射膜を形成し得るようになされている。
【0031】
このときターゲツト41の表面は、上述のようにイオン化されたAr 原子が衝突するときに当該Ar 原子から与えられる運動エネルギーによつて発熱する。
このためこのスパツタ装置30では、バツキングプレート40を銅等の熱伝導率の高い材料を用いて形成すると共に、その内部に図3に示すような所定形状の第1の水路40Aを設け、当該第1の水路40A内に給水器80(図1)及び図示しない排水器をそれぞれ介して入口40B又は出口40Cからそれぞれ冷却水を供給し又は排出し得るようになされている。これによりこのスパツタ装置30では、給水器80(図1)からバツキングプレート40に順次供給される冷却水によつて当該バツキングプレート40を介してターゲツト41を冷却することができ、かくしてスパツタリング時におけるターゲツト41表面の温度上昇を抑え得るようになされている。
【0032】
一方上壁ブロツク36の内周部には環状のベアリング保持ブロツク81及びモータ取付けブロツク37とによつて外輪を固定保持されるようにしてベアリング82が取り付けられていると共に、当該ベアリング82の内輪には中央部に楕円形状の凹部83Aを有するマグネツト取付けプレート83が取り付けられ、このマグネツト取付けプレート83の下面に磁界装置44が当該マグネツト取付けプレート83の回転中心に対して偏心をもつように取り付けられている。
【0033】
この場合モータ取付けブロツク37上にはモータ85がその出力軸の先端をマグネツト取付けプレート83の凹部83A内に差し込むようにして固定されていると共に、当該モータ85の出力軸の先端部には両端部に丸みが形成された直方体形状の回転力伝達板86が固定されており、かくしてモータ85が駆動したときに当該モータ85の出力軸の回転に伴つて回転力伝達板86の先端部がマグネツト取付けプレート83の凹部83Aの内周面に当接し、当該マグネツト取付けプレート83に対して回転力を与えることにより、このマグネツト取付けプレート83と一体に磁界装置44を偏心をもつて滑らかに回転駆動させ得るようになされている。
【0034】
従つてこのスパツタ装置30では、動作時、モータ85が駆動して磁界装置44を回転させることにより、この磁界装置44がスパツタリング領域71内に生じさせる磁界を当該スパツタリング領域71内において回転させ得るようになされ、これによりスパツタリング領域71内の磁界を平均化させ得ると共に、ターゲツト41の利用効率を向上させ得るようになされている。
【0035】
なおこの実施例の場合には、ハウジング31にその内部を一周するように水路31Aが設けられていると共に、当該水路31Aには注水口31B及び図示しない排水口をそれぞれ介して冷却水を供給し、又は排出し得るようになされており、これにより必要に応じてハウジング31を冷却し得るようになされている。
【0036】
かかる構成に加えこの実施例のスパツタ装置の場合、図3からも明らかなように、バツキングプレート40の内部には第1の水路40Aとは独立して、バツキングプレート40の外周部から中心部に延びる第2及び第3の水路40D、40Eがそれぞれ個別に設けられている。
【0037】
この場合これら第2及び第3の冷却水路40D、40Eの外周部に位置する各一端にはそれぞれ図示しない給水器及び排水器と連結される入口40F、40Gが設けられていると共に、中心部に位置する各他端にはバツキングプレート40の下面に通じる貫通孔40H、40Jがそれぞれ設けられている。
【0038】
またこれら貫通孔40H、40Jは、特に図3において明らかなように、絶縁材61に独立して設けられた貫通孔61A、61Bをそれぞれ介して冷却ブロツク60内部の水溜部60Aに連結されている。
従つてこのスパツタ装置30においては、冷却ブロツク60の水溜部60Aに対してバツキングプレート40に設けられた第2の水路40D及び貫通孔40Hと、絶縁材61に設けられた貫通孔61Aとを順次介して冷却水を順次供給し得る一方、この水溜部61Aに供給された冷却水を絶縁材61の貫通孔61Bと、バツキングプレート40の貫通孔40J及び第3の水路40Eとを順次介して水冷ブロツク60から及びバツキングプレート40の外部に排出しうるようになされ、これにより冷却ブロツク60を介して当該冷却ブロツク60と接触するセンターマスク42を冷却し得るようになされている。
【0039】
このためこのスパツタ装置30では、冷却ブロツク60が銅等の熱伝導率の高い材料を用いて形成されており、これにより効率良くセンターマスク42を冷却し得るようになされている。
またこの実施例のスパツタ装置30の場合、磁界装置44は図4(A)及び(B)に示すように、楕円形のリング状に形成された外磁90と、円形のリング状に形成された内磁91とをヨーク92に同心に一体に取り付けることにより構成されており、これにより図4(C)及び(D)に示すようにX方向及びY方向にそれぞれ2点ずつ、合わせて4点の強弱のある磁界ピークを生じさせることができるようになされている。
【0040】
これよりこのスパツタ装置30では、磁界装置44の回転時にスパツタリング領域71内により均一的な磁界空間を形成することができるため、プラズマがスパツタリング領域71の中央部に集中するのを防止でき、かくしてセンターマスク42がオーバーヒートするのを未然に防止し得るようになされている。
以上の構成において、このスパツタ装置30では、動作時にバツキングプレート40と冷却ブロツク60とにそれぞれ冷却水が供給されることによりターゲツト41に加えてセンターマスク42も冷却される。従つてこのスパツタ装置30ではセンターマスク42がオーバーヒートするのを未然に防止することができる。
【0041】
この場合センターマスク42はバツキングプレート40及びターゲツト41のいずれもと絶縁された状態でアノードとして冷却されるため、センターマスク41及び基板70間においてアーキングも発生せず、従つて基板70が傷つくことも加熱することも防止できる。
さらにこのスパツタ装置30では、これに加えて磁界装置44の外磁90(図4(A))が楕円形のリング状に選定されると共に内磁91が円形のリング状に選定されているため、当該磁界装置44が回転しているときにスパツタリング領域71内に均一的な磁界を形成することができる。従つてプラズマの局部集中を効果的に防止でき、かくしてセンターマスク42のオーバーヒートをより確実に防止できる。
【0042】
従つてこのスパツタ装置30によれば、従来のスパツタ装置1(図7)において、センターマスク8のオーバーヒートに起因して発生し易かつたプラズマのアーキングや加工対象の基板70の不良などのトラブルを未然に防止でき、かくして加工対象の基板70に対して良好な反射膜を形成することができる。
【0043】
実際上、サイクルタイムを2.0 〔sec 〕とし、スパツタタイムを1.5 〔sec 〕として基板を順次連続してスパツタする実験を行つたところ、センターマスク42を従来の冷却方法で冷却しながら行つた場合にはセンターマスク42の先端部の温度が90〜120 〔°C〕、基板の表面が70〔°C〕になつたのに対して、センターマスク42を実施例による冷却方法で冷却しながら行つた場合にはセンターマスク42の先端部の温度が40〜50〔°C〕、基板の表面が40〔°C〕であつた。
【0044】
またこのとき10000 枚の基板に対する連続スパツタ時にもアーキングが発生せず(従来の方法では0.1 〜0.2 〔%〕程度発生)、膜の均一性も600 〔Å〕±5〔%〕に向上(従来の方法では600 〔Å〕±10〔%〕)することが確認できた。さらにターゲツトライフも従来の方法に比べて20〔%〕向上させることができ、1.5 〔sec 〕のスパツタタイムで10万回のシヨツトが可能であつた。
【0045】
以上の構成によれば、マグネトロン方式のスパツタ装置30において、センターマスク42を内部に水溜部60Aを有する冷却ブロツク60を介してバツキングプレートに取り付けると共に、当該冷却ブロツク60内部にバツキングプレート42を介して冷却水を順次供給するようにしたことにより、センターマスク42のオーバーヒートを未然に防止でき、かくしてアーキングや基板の不良の発生を実用上十分に防止し得るスパツタ装置を実現できる。
【0046】
またマグネトロン方式のスパツタ装置30において、磁界装置44の外磁90を楕円形のリング状に形成すると共に、内磁91を円形のリング状に形成するようにしたことにより、スパツタリング領域71内におけるプラズマの局部集中を防止でき、かくしてアーキングや基板の不良の発生を実用上十分に防止し得るスパツタ装置を実現できる。
【0047】
従つてスパツタ装置をこのように構成することによつて、シンプルな構造で複数部分の冷却が可能である。またデイスク(プラスチツク)のような熱変形物の成膜にも有効であり、さらに加熱防止によつてシール部分の耐久性を向上させる効果を得ることもできる。
【0048】
なお上述の実施例においては、磁界装置44の外磁90を楕円形のリング状に形成すると共に、内磁91を円形のリング状に形成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば図5(A)のように磁界装置の外磁100及び内磁101ともに楕円形のリング状に選定するようにしたり、又は図5(B)のように外磁102を楕円形のリング状に選定する一方、内磁103を独立した2個の円形のリング状の磁石103A、103Bで構成するようにしても良く、要は、X方向及びY方向にそれぞれ複数点の磁力ピークをもち、できる限りセンターマスク42を避けてスパツタリング領域71内に磁界を発生させることができるように磁界装置44を形成することができるのであれば、外磁90及び内磁91の外形形状としてはこの他種々の外形形状を適用できる。
【0049】
また上述の実施例においては、絶縁体61をテフロンで形成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、この他セラミツク、プラスチツク又はポリエチレン等の他の絶縁材を用いて絶縁体61を形成するようにしても良い。
【0050】
さらに上述の実施例においては、磁界装置44を図4のように形成し、この磁界装置44を偏心をもつて回転させることによりスパツタリング領域71内に均一的な磁界を発生させ得るようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば内磁91をバツキングプレート40上に絶縁体を介して固定し、外磁90のみをマグネツト取付けプレート83に取り付けることによりモータ85から与えられる回転力に基づいて偏心をもつて回転するように磁界装置を構成するようにしても良く、このようにしても実施例の場合と同様の効果を得ることができる。
【0051】
さらに上述の実施例においては、バツキングプレート40を図3のように形成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、要は、バツキングプレート内部に複数の水路をそれぞれ独立に形成し、各水路を介してそれぞれ所定の冷却対象に対して冷却水を供給するようにするのであれば、バツキングプレートの構造としてこの他種々の構造を適用できる。
【0052】
ここで例えば図6(A)及び(B)は、複数の水路がそれぞれ互いに独立して設けられたバツキングプレートの一構成例を示すものであり、このバツキングプレート120は下面に取り付けられる図示しないターゲツトと、3つの水冷ブロツク130〜132とを同時に冷却し得るようになされている。
すなわちこのバツキングプレート120では、その内部にターゲツトを冷却する冷却水が流れるための第1の水路120Aが設けられ、当該第1の水路内に入口120Bを介して冷却水を供給し、この冷却水を出口120Cを介してバツキングプレート120外部に排出し得るようになされている。
【0053】
またバツキングプレート120の内部にはこの第1の水路120Aとは独立に第2及び第3の水路120D、120Eが設けられており、これら第2及び第3の水路120D、120Eには入口120Fを介して冷却水を供給し得るようになされている。
【0054】
この場合第2の水路120の入口120F側とは異なる端部は、貫通孔120Gを介して当該バツキングプレート120の下面に取り付けられた第1の水冷ブロツク130内部の水溜130Aと連結されていることにより、入口120Fから供給される冷却水をこの第1の水冷ブロツク130の水溜130Aに供給し得るようになされていると共に、当該第1の水冷ブロツク130の水溜130Aに供給される冷却水は、バツキングプレート120に設けられた貫通孔120H及び水路120Jを順次介して第1の水路120A内に排水し得るようになされ、これにより第1の冷却ブロツク130を冷却し得るようになされている。
【0055】
これと同様にして第2の冷却ブロツク131を冷却するため、バツキングプレート120には貫通孔120K、120Lと水路120Mとがそれぞれ設けられている。
さらにバツキングプレート120には同様にして第4の水路120Nと、貫通孔120P、120Qと水路120Rと、第4の水路120Nに冷却4を供給するための入口120Sとが設けられている。
【0056】
従つてバツキングプレートをこのように構成することによつて、例えば3枚の基板を同時に成膜処理し得るようなスパツタ装置にも本発明を適用することができる。
【0057】
【発明の効果】
上述のように本発明によれば、所定のガスが導入される容器と、容器内に固定されたリング状のターゲツトと、成膜形成対象物をターゲツトと対向するように支持する支持手段と、ターゲツトに負電圧を印加することにより、ターゲツト及び成膜形成対象物で挟まれる空間領域内のイオン化されたガスの構成成分を加速させてターゲツトに衝突させる負電圧印加手段と、ターゲツトの成膜形成対象とは反対側にターゲツトと当接するように配置され、内部にターゲツトを冷却するための冷却水を流す第1の冷却水路が設けられたバツキングプレートと、ターゲツトのセンターホールを嵌挿してバツキングプレートに絶縁材を介して取り付けられた冷却ブロツクに固定され、皮膜形成対象物の皮膜形成領域を規制するマスク部とを設け、マスク部を、第1の冷却水路とは独立して設けられ、バツキングプレート及び冷却ブロツクを通る第2の冷却水路を流れる冷却水により冷却される冷却ブロツクを介して冷却するようにしたことにより、マスク部がオーバーヒートするのを防止することができる。かくするにつき、ターゲツトと皮膜形成対象物とのアーキングや皮膜形成対象物に不良が発生するのを実用上十分に防止し得るスパツタ装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例によるスパツタ装置の全体構成を示す断面図である。
【図2】バツキングプレート及び冷却ブロツクの構成を示す断面図である。
【図3】バツキングプレートを上面側から透視して見たときの様子を示す平面図である。
【図4】実施例の磁界装置の構成を示す上面図及び断面図と、この磁界装置の磁力分布を示す特性曲線図である。
【図5】磁界装置の他の構成例を示す略線図である。
【図6】バツキングプレートの他の構成例を示す略線図である。
【図7】従来のスパツタ装置の構成を示す断面図である。
【図8】従来のバツキングプレートの構成を示す上面図及び断面図である。
【図9】従来の磁界装置の構成を示す上面図及び断面図と、この磁界装置の磁力分布を示す特性曲線図である。
【符号の説明】
30……スパツタ装置、39……容器、40……バツキングプレート、40A、40D、40E……水路、41……ターゲツト、42……センターマスク、43……外周マスク、44……磁界装置、60……冷却ブロツク、70……基板、71……スパツタリング領域、90……外磁、91……内磁、92……ヨーク。
Claims (1)
- 所定のガスが導入される容器と、
上記容器内に固定されたリング状のターゲツトと、
成膜形成対象物を上記ターゲツトと対向するように支持する支持手段と、
上記ターゲツトに負電圧を印加することにより、上記ターゲツト及び上記成膜形成対象物で挟まれる空間領域内のイオン化された上記ガスの構成成分を加速させて上記ターゲツトに衝突させる負電圧印加手段と、
上記ターゲツトの上記成膜形成対象とは反対側に上記ターゲツトと当接するように配置され、内部に上記ターゲツトを冷却するための冷却水を流す第1の冷却水路が設けられたバツキングプレートと、
上記ターゲツトのセンターホールを嵌挿して上記バツキングプレートに絶縁材を介して取り付けられた冷却ブロツクに固定され、上記皮膜形成対象物の皮膜形成領域を規制するマスク部と
を具え、
上記マスク部は、
上記第1の冷却水路とは独立して設けられ、上記バツキングプレート及び上記冷却ブロツクを通る第2の冷却水路を流れる冷却水により冷却される上記冷却ブロツクを介して冷却される
ことを特徴とするスパツタ装置。
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