JP3729350B2 - 有機絶縁膜の形成方法およびその装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、化合物半導体系の超高速IC−混成マイクロ波回路等の半導体集積回路における層間絶縁膜及び保護膜、特に膜厚1μm以下の膜に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、化合物半導体系の超高速IC・混成マイクロ波回路等の半導体集積回路における層間絶縁膜及び保護膜のうち、特に膜厚1μm以下の膜に関しては、プラズマCVD法によるSiN及びSiO2が一般に用いられている。
【0003】
近年、通信機器の急速な成長にともない、前述の半導体デバイスにおいてもさらなる高速化が望まれるようになった。
【0004】
デバイスの高速化を図る有効な手段として、配線間容量低減がある。配線間容量を低減する手段としては、誘電率の低い材料を用いるのが最も有効である。なお、配線間距離を大きくする方法もあるが、デバイスサイズが大きくなるため、配線長が長くなり、高速化に逆行する。
【0005】
一般的な絶縁膜であるSiN及びSiO2膜の誘電率は文献値として、7.5及び3.9あり、プラズマCVD法で形成した場合、水素原子等が含まれるためそれよりさらに大きめになる。一方、有機系絶縁膜(例えば、ポリイミド及びBCBで3.5及び2.7)はSiN及びSiO2膜に比べ誘電率が低く、高速ICの絶縁膜として期待されている。
【0006】
有機系絶縁膜の形成方法としては、スピンコート法が一般的である、実際にデバイスを製作している基板には数百nm程度の段差が存在する。このような基板の上にスピンコート法で絶縁膜を形成する場合、膜厚が1μm以上と厚い場合は、段差のある部分と無い部分での膜厚差が小さく、その後のプロセス上問題になることはほとんどない。
【0007】
一方、膜厚が1μm以下と薄い場合は、段差のある部分と無い部分での膜厚差が無視できなくなる。後の絶縁膜加工工程で、場所により加工する時間が異なり、工程が複雑になるという問題が発生する。また、段差が壁となりその周辺で塗布した材料が溜まり、結果としてその部分の膜厚が異常に厚くなるという問題も発生する。従って、1μm以下の領域では、スピンコート法での膜形成は非常に難しい、一方、表面の段差に影響されず薄い膜を形成できる方法として、プラズマによる化学気相成長法(CVD)があるが、材料を気化する必要がある。しかし、有機系絶縁膜材料は、気化できるように作られたものではないことから、CVD法による膜堆積法はほとんど考えられていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記課題を解決するため、本発明は、段差がある基板表面にも誘電率の低い有機系絶縁膜を均一性よく薄く堆積できる有機系絶縁膜の形成方法およびその装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の有機系絶縁膜の形成方法は、有機系絶縁膜材料を溶かした有機溶剤を60℃以上150℃以下で加熱気化する工程と、気化した材料を60℃以上150℃以下で加熱した配管を通して反応室に供給する工程と、有機系絶縁膜を堆積する半導体基板が反応室内において前記有機溶剤の気化温度以上で加熱し、前記有機絶縁膜はプラズマによる化学気相成長法を用いて堆積する工程と、を有し、前記有機絶縁膜材料は、ポリイミド系材料、またはベンゾシクロブテン( BCB )系材料であり、前記有機絶縁膜材料の有機溶剤中の濃度が50%以下であることを特徴とする。
【0010】
前記有機系絶縁膜の形成方法において、前記有機溶剤は、ポリイミド系材料に対してN-メチル2ピロリドン、ベンゾシクロブテン(BCB)系材料に対してメシチレンであることが好ましい。
【0011】
また、本発明の有機系絶縁膜の形成装置は、有機系絶縁膜材料を溶かした有機溶剤を加熱気化するためのタンクと、気化した材料を反応室に供給するための配管と、有機系絶縁膜を半導体基板へプラズマによる化学気相成長法により堆積するための反応室と、を少なくとも有する有機絶縁膜の形成装置において、前記タンクは加熱手段を有し、前記有機系絶縁膜材料を溶かした有機溶剤を、60℃以上150℃以下で加熱気化し、前記配管は加熱手段を有し60℃以上150℃以下で加熱し、前記反応室は基板加熱手段を有し、有機系絶縁膜を堆積するための半導体基板が反応室内において前記有機溶剤の気化温度以上で加熱され、前記有機絶縁膜材料は、ポリイミド系材料、またはベンゾシクロブテン( BCB )系材料であり、前記有機絶縁膜材料の有機溶剤中の濃度が50%以下であることを特徴とする。
【0012】
前記有機系絶縁膜の形成装置において、前記有機溶剤は、ポリイミド系材料に対してN-メチル2ピロリドン、ベンゾシクロブテン(BCB)系材料に対してメシチレンであることが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明においては、表面の段差に影響されず薄い膜を形成できるプラズマCVDを採用する。材料として、有機溶剤の割合が50%以上の粘度の低い材料を用いる。この多量に含まれた有機溶剤を加熱気化することにより、同時に絶縁膜材料も一緒に気化させる。この気化した材料を再度液化しないように、加熱した配管を通して、反応室に導入する。さらに、膜を堆積する半導体基板の温度も溶剤の加熱気化温度以上にし、再液化を防ぐ。これにより有機系絶縁膜材料は気化され、プラズマCVD法が可能となる。なお、加熱気化温度は、有機溶剤の蒸気圧が高くなる60℃以上であれば、堆積に必要な流量が得られ、高いほど流量に余裕ができるが、150℃を越えると有機絶縁膜材料が重合化を始め、固まりとなり、気化できなくなるため、この温度以下である必要がある。
【0014】
【実施例】
図1に本発明の形成方法を説明する図を示す。
先ず、有機系絶縁膜材料を溶かした有機溶剤1として本実施例ではBCBを溶かしたメシチレンを用いた。メシチレンに溶けているBCBの量は32%とした。そして、この有機溶剤1をタンク2に入れ、マスフローコントローラ4に接続する。
【0015】
タンク2は、タンク用ヒータ3によって加熱される。加熱温度は、ここでは100℃に設定した。これにより、有機系絶縁膜材料を含んだ有機溶剤が気化する。
【0016】
気化した有機系絶縁膜材料を含んだ有機溶剤は、マスフローコントローラ4で流量制御され、さらに配管5を通り、反応室7に供給される。マスフローコントローラ4の設定は10sccmで行ったが、1〜100sccmの範囲が好ましい。
【0017】
ここで、有機溶剤の再液化を防ぐため、マスフローコントローラ4はタンク用ヒータ3により、配管5は配管用ヒータ6により100℃で加熱した。
【0018】
反応室7はポンプ8で減圧され、圧力制御されている。本実施例において圧力は80Paとしたが、10〜200Paの範囲が好ましい。
【0019】
反応室には、プラズマを発生させるため上部電極9と下部電極10があり、下部電極10の上に半導体基板11を載せた。ここでは基板としてSiを用いた。下部電極10の下にある基板用ヒータ12を用い基板11を加熱する。温度は150℃とした。
【0020】
RF電源13を用い電極間にパワーを印加することにより膜の堆積を行った。パワー密度は0.4W/cm2としたが、0.1W/cm2〜1W/cm2の範囲が好ましい。
【0021】
以上の手順で有機系絶縁膜を形成した。
【0022】
本実施例により作製された有機系絶縁膜は均一性がよく誘電率の低い良好な膜であった。以上本発明の実施例を図面によって詳述したが、本発明は本実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等が可能で、例えば、本実施例では半導体基板としてSiを用いたがGaAs, InP等の半導体基板を用いても同様の効果が得られる。
【0023】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明により誘電率の低い有機系絶縁膜を均一性よく薄く堆積することが可能となる。
【0024】
これにより、化合物半導体系通信用IC・混成マイクロ波回路等の半導体集積回路の高速化に寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による形成方法を説明する図である。
【符号の説明】
1 有機系絶縁膜材料を含む有機溶剤、
2 タンク、
3 タンク用ヒータ、
4 マスフローコントローラ、
5 配管、
6 配管用ヒータ、
7 反応室、
8 ポンプ、
9 上部電極、
10 下部電極、
11 半導体基板、
12 基板用ヒータ、
13 RF電源。
Claims (4)
- 有機系絶縁膜材料を溶かした有機溶剤を60℃以上150℃以下で加熱気化する工程と、
気化した材料を60℃以上150℃以下で加熱した配管を通して反応室に供給する工程と、
有機系絶縁膜を堆積する半導体基板が反応室内において前記有機溶剤の気化温度以上で加熱し、前記有機絶縁膜はプラズマによる化学気相成長法を用いて堆積する工程と、
を有し、
前記有機絶縁膜材料は、ポリイミド系材料、またはベンゾシクロブテン( BCB )系材料であり、前記有機絶縁膜材料の有機溶剤中の濃度が50%以下であることを特徴とする有機系絶縁膜の形成方法。 - 前記有機溶剤は、ポリイミド系材料に対してN-メチル2ピロリドン、ベンゾシクロブテン(BCB)系材料に対してメシチレンであることを特徴とする請求項1に記載の有機系絶縁膜の形成方法。
- 有機系絶縁膜材料を溶かした有機溶剤を加熱気化するためのタンクと、
気化した材料を反応室に供給するための配管と、
有機系絶縁膜を半導体基板へプラズマによる化学気相成長法により堆積するための反応室と、
を少なくとも有する有機絶縁膜の形成装置において、
前記タンクは加熱手段を有し、前記有機系絶縁膜材料を溶かした有機溶剤を、60℃以上150℃以下で加熱気化し、
前記配管は加熱手段を有し60℃以上150℃以下で加熱し、
前記反応室は基板加熱手段を有し、有機系絶縁膜を堆積するための半導体基板が反応室内において前記有機溶剤の気化温度以上で加熱され、
前記有機絶縁膜材料は、ポリイミド系材料、またはベンゾシクロブテン( BCB )系材料であり、前記有機絶縁膜材料の有機溶剤中の濃度が50%以下であることを特徴とする有機系絶縁膜の形成装置。 - 前記有機溶剤は、ポリイミド系材料に対してN-メチル2ピロリドン、ベンゾシクロブテン(BCB)系材料に対してメシチレンであることを特徴とする請求項3に記載の有機系絶縁膜の形成装置。
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