JP3729020B2 - 静電荷像現像用トナーの製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真方式の複写機及びプリンターに用いられる静電荷現像用トナーの製造方法に関する。更に詳しくは、凝集工程において粒径制御を行い、微粉、粗粉の少ない粒度分布のシャープなトナー粒子を得る静電荷現像用トナーの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真法において従来一般に広く用いられてきた静電荷像現像用トナーは、樹脂にカーボンブラックや顔料のような着色剤、ワックス及び又は磁性体を含む混合物を押出機により溶融混練し、次いで粉砕・分級することによって製造されてきた。しかし、上記のような溶融混練/粉砕法で得られる従来のトナーは、原料の分散が困難であった。
【0003】
一方、近年プリンターや複写機の性能として、高画質化及び高速化が求められている。高画質化のためには、トナー粒径が3〜8μmと小さく、かつ粒度分布が狭いことが必要である。又、高速化のためには、定着速度を速くすること、つまり低温定着にすることで、待機時間が短縮される以外に高熱を発しない、消費電力が小さくなる等の環境に優しいプリンターや複写機を実現することができる。
【0004】
トナーを低温定着可能にするためには樹脂の軟化点を下げればよい。ところが、溶融混練/粉砕法で得られる従来のトナーは、樹脂の軟化点を下げれば低温定着性は改善されるが、同時にトナーのTgが下がり耐ブロッキング性は悪化するといった裏腹の関係にあった。つまり原料の分散の制御は不可能であり耐ブロッキング性と低温定着性を両立する構造制御はほぼ不可能であった。
【0005】
ワックス等の添加剤を混合する方法もあるが、溶融混練では添加剤の添加量には限度があり、樹脂100部に対して4〜5部程度であり、十分な低温定着性を加味することができなかった。また、溶融混練して得られたフレークを機械的に粉砕してトナーとするため小粒径であればある程、歩留まりが悪くなり、粒度分布も悪くなった。
【0006】
一方、近年、溶融混練/粉砕法に変わる製造法として乳化重合凝集法や懸濁重合法等による重合トナーの製造法が知られている。これらの方法を用いれば溶融混練/粉砕法と違い原料の分散の制御は可能である。また、小粒径で粒度分布の良いトナーを得ることも可能である。特に乳化凝集重合法では、粒径及び粒径分布もトナー形状も制御可能である。
【0007】
乳化重合法によりトナーを製造する場合、重合により得られた粒子径0.05μm〜0.5μmの樹脂一次粒子をを含む樹脂乳化分散液に、顔料,電荷制御剤等を加え、更に電解質等を加えて一次粒子を凝集させ、3〜8μmのトナー粒子とし、次いでトナー粒子スラリーを洗浄,乾燥して製品のトナー粒子を得る。しかし、凝集工程で、ただ攪拌させ凝集させたのであれば、均一な粒径のトナー粒子は得られない。この一次粒子を凝集させるには、攪拌工程が重要な役割をもっており、凝集時の粘度変化に対応出来る翼の選定が凝集粒子の制御には不可欠であるが、未だ、凝集粒子の制御は十分でなく、小粒径で均一なトナーを得ることは困難であり、重合法によって得られたトナーであっても、目的の性能を達成するために、さらに分級等を行う必要があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、凝集時の粘度変化に対応し、小粒径であり且つ粒度分布がシャープである乳化凝集重合トナーの製造方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、トナーの凝集工程で、一定の条件で攪拌することで、凝集時の増粘時凝集液の混合均一性の面、凝集粒子の粒度分布のシャープさ、粒径制御のし易さから、上記課題が解決できることを見出し、本発明に達した。
即ち、本発明の要旨は、少なくとも、バインダー一次粒子及び着色剤粒子を含む混合分散液を、加温することにより凝集粒子を得る凝集工程を有する静電荷像現像用トナーの製造方法であって、トナーの体積平均粒径(DV )が3〜8μmであり、体積平均粒径(Dv )と個数平均粒径(DN )との関係が、DV /DN =1〜1.5であることを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法に存する。
【0010】
本発明の別の要旨は、少なくとも、バインダー一次粒子及び着色剤粒子を含む混合分散液に、電解質を添加することにより凝集粒子を得る凝集工程を有する静電荷像現像用トナーの製造方法であって、トナーの体積平均粒径(DV )が3〜8μmであり、体積平均粒径(Dv )と個数平均粒径(DN )との関係が、DV /DN =1〜1.5であることを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法に存する。
【0011】
【発明の実施形態】
以下本発明の詳細について説明する。
本発明のトナーの製造は、乳化重合凝集法による。乳化重合法によりトナーを製造する場合、重合により得られた通常粒子径0.05μm〜0.5μmの樹脂一次粒子(以下、バインダー一次粒子と称することがある)をを含む乳化分散液に、顔料、電荷制御剤等を混合し、一次粒子を凝集させて体積平均粒径3〜8μmのトナー粒子(以下、洗浄前のトナー粒子を単に凝集粒子と称することがある)とし、次いで凝集粒子スラリーを洗浄,乾燥して製品のトナー粒子を得る。
【0012】
ここで、凝集工程においては、1)加温して凝集を行う方法と、2)電解質を加えて凝集を行う方法とがある。
加温して凝集を行う場合に、凝集温度としては具体的には、Tg−20℃〜Tgの温度範囲(但し、Tgはバインダー一次粒子のガラス転移温度)であり、Tg−10℃〜Tg−5℃の範囲が好ましい。上記温度範囲であれば、電解質を用いることなく好ましいトナー粒径に凝集させることができる。
【0013】
所定の体積平均粒径(3〜8μm)及び体積平均粒径(DV)と個数平均粒径(DN)との関係(DV/DN=1〜1.5)を満足するために、凝集温度は所定の温度で通常少なくても30分保持することにより所望の粒径のトナー粒子とする。所定の温度までは一定速度で昇温しても良いし、ステップワイズに昇温しても良い。保持時間は、Tg−20℃〜Tgの範囲で30分以上8時間以下が好ましく、1時間以上4時間未満がさらに好ましい。
【0014】
更に、凝集で得られた凝集粒子(トナー粒子)の安定性を増すためにTg〜Tg+80℃であり、かつバインダー一次粒子の軟化点以下の温度範囲で、凝集した粒子間の融着を起こす熟成工程を加えることが好ましい。熟成工程を加えることにより、トナー粒子の形状も球状に近いものすることができ、形状制御も可能になる。この熟成工程は、通常1時間から24時間であり、好ましくは2時間から10時間である。
【0015】
加温して凝集を行う場合、凝集工程に引き続いて熟成工程を行う場合には、凝集工程と熟成工程が連続的に行われその境界は曖昧となる場合があるが、本発明においては、Tg−20℃〜Tgの温度範囲に少なくとも30分間保持する工程があれば、これを凝集工程とみなす。
【0016】
また、電解質を加えて凝集を行う場合には、凝集温度は20℃〜40℃が好ましく、25℃〜35℃が更に好ましい。電解質を加えて凝集を行ったのちに、上述した熟成工程を経てもよい。
また、こうして得られた、トナーの体積平均粒径(DV)は、4〜6μmであることが好ましく、体積平均粒径(DV)と個数平均粒径(DN)との関係が、DV/DN=1.1〜1.45であることが好ましい。
【0017】
乳化重合凝集法に用いられるバインダー樹脂は、従来公知のものがもちいられるが、好ましいものとしては、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレンーメタクリル酸エステル共重合体、又はこれらの樹脂のアクリル酸共重合体等のスチレン系ポリマー、飽和もしくは不飽和ポリエステル系ポリマー、エポキシ系ポリマーを挙げることができる。また、上記バインダー樹脂は単独で使用するに限らず2種以上併用することもできる。バインダー樹脂は乳化重合によって、樹脂一次粒子とし、凝集工程で用いられるが、ワックス微粒子ををシードとしてシード重合したものも用いることができる。
【0018】
着色剤としては、従来公知の無機顔料又は有機顔料、有機染料のいずれでも良く、またはこれらの組み合わせでもよい。これらの具体的な例としては、カーボンブラック、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエロー、ローダミン系染顔料、クロムイエロー、キナクリドン、ベンジジンイエロー、ローズベンガル、トリアリルメタン系染料、モノアゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系染顔料など、公知の任意の染顔料を単独あるいは混合して用いることができる。フルカラートナーの場合にはイエローはベンジジンイエロー、モノアゾ系、縮合アゾ系染顔料、マゼンタはキナクリドン、モノアゾ系染顔料、シアンはフタロシアニンブルーをそれぞれ用いるのが好ましい。着色剤は、通常、バインダー樹脂100重量部に対して3〜20重量部となるように用いられる。
混合分散液中の着色剤の平均粒径は、0.05〜3μmであることが好ましく、0.1〜1μmであることが更に好ましい。
【0019】
荷電制御剤としては、公知の任意のものを単独ないしは併用して用いることができる。カラートナー適応性(荷電制御剤自体が無色ないしは淡色でトナーへの色調障害がないこと)を勘案すると、正荷電性としては4級アンモニウム塩化合物が、負荷電性としてはサリチル酸もしくはアルキルサリチル酸のクロム、亜鉛、アルミニウムなどとの金属塩、金属錯体や、ベンジル酸の金属塩、金属錯体、アミド化合物、フェノール化合物、ナフトール化合物、フェノールアミド化合物等が好ましい。
【0020】
混合分散液中の荷電制御剤の平均粒径は、0.01〜1μmであることが好ましく、0.05〜0.8μmであることが更に好ましい。平均粒径が上記範囲より著しく大きいと良好な帯電性及び帯電安定性を発揮する必要量が多くなったり、付着が弱くなったりする傾向にある。また、同様の理由で最大粒径は3μm 以下であることが好ましく、粒径分布の良好なものが好ましい。なお、粒径分布、平均粒径は、各種の微粒子測定装置(例えば、マイクロトラック社製UPA)を用いて測定することができる。
【0021】
荷電制御剤の使用量はトナーに所望の帯電量により決定すればよいが、通常はバインダー樹脂100重量部に対し通常0.001〜5重量部であり、好ましくは0.003〜2重量部、更に好ましくは0.01〜1重量部用いる。本発明の製造法によれば帯電制御剤を確実にトナー表面に付着することができるので、通常より少量の添加量で良好な帯電性及び帯電安定性を発揮することができる。本発明の製造法を用いることで、使用する帯電制御剤を少量に抑えることができ、トナーをより安価に製造することができる。
【0022】
また、必要に応じて静電荷像現像用トナー中に、ワックスを含有させることができる。ワックスとしては公知のワックス類の任意のものを使用することができるが、具体的には低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、共重合ポリエチレン等のオレフィン系ワックス、パラフィンワックス、ベヘン酸ベヘニル、モンタン酸エステル、ステアリン酸ステアリル等の長鎖脂肪族基を有するエステル系ワックス、水添ひまし油、カルナバワックス等の植物系ワックス、ジステアリルケトン等の長鎖アルキル基を有するケトン、アルキル基を有するシリコーン、ステアリン酸等の高級脂肪酸、長鎖脂肪酸アルコール、ペンタエリスリトール等の長鎖脂肪酸多価アルコール、及びその部分エステル体、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド、等が例示される。ワックスは、通常、バインダー樹脂100重量部に対して、1〜25重量部となるように用いられる。
【0023】
トナー中にワックスを含有させる方法としては、バインダー一次粒子、着色剤粒子、荷電制御剤粒子を含む混合分散液に、さらにワックス微粒子を混合し、これに、電解質を添加して凝集粒子をえる方法の他、前述のバインダー一次粒子を作製する際、酸性極性基又は塩基性極性基を有する単量体を含む単量体にワックス微粒子を加え、そのワックス微粒子をシードとしてシード重合してバインダー一次粒子中にワックスを含有させることもできる。
【0024】
混合分散液中にワックス微粒子を混合する場合のワックス微粒子の平均粒径は、0.03〜1μmであることが好ましく、0.05〜0.8μmであることが更に好ましい。また、シードとして、バインダー一次粒子中に含有させる場合には、ワックス微粒子の平均粒径は、0.03〜1μmであることが好ましく、0.05〜0.8μmであることが更に好ましい。
上記各成分の粒子は、乳化剤を用いて水中に分散し、混合分散液とする。乳化剤としては、公知のカチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤の中から選ばれる少なくともひとつの乳化剤を用いることができる。これらの界面活性剤は2種以上を併用してもよい。
【0025】
カチオン界面活性剤の具体例としては、ドデシルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、等があげられる。また、アニオン界面活性剤の具体例としては、ステアリン酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウム、等の脂肪酸石けん、硫酸ドデシルナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、等があげられる。さらに、ノニオン界面活性剤の具体例としては、ドデシルポリオキシエチレンエーテル、ヘキサデシルポリオキシエチレンエーテル、ノニルフェニルポリオキシエチレンエーテル、ラウリルポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンモノオレアートポリオキシエチレンエーテル、スチリルフェニルポリオキシエチレンエーテル、モノデカノイルショ糖、等があげられる。これらの中でアニオン界面活性剤及び/又はノニオン界面活性剤が好ましい。
この他、分散安定剤として、保護コロイドを使用することもできる。保護コロイドの具体例としては、ポリビニルアルコール類、セルロース誘導体、天然多糖類、リン酸カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等があげられる。
【0026】
また、着色剤、荷電制御剤、必要に応じてワックスの各成分の粒子は、バインダー一次粒子分散液に混合して分散するが、予めそれぞれの成分の分散液、即ち着色剤分散液、荷電制御剤分散液、必要に応じワックス微粒子分散液を作製しておき、これらを混合して混合分散液を得ることが好ましい。
凝集を行う各成分のうち、荷電制御剤分散液は、凝集工程の途中で添加しても良く、凝集工程後に添加しても良い。
【0027】
混合分散液に電解質を添加して凝集を行う場合の電解質としては、有機の塩、無機塩のいずれでも良いが、好ましくは1価あるいは2価以上の多価の金属塩が好ましく用いられる。具体的には、NaCl、KCl、LiCl、Na2SO4、K2SO4、Li2SO4、MgCl2、CaCl2、MgSO4、CaSO4、ZnSO4、Al2(SO4)3、Fe2(SO4)3等が挙げられる。
【0028】
電解質の添加量は、電解質の種類によっても異なるが、通常は混合分散液の固形成分100重量部に対して、0.05〜25重量部が用いられる。好ましくは0.1〜15重量部、更に好ましくは0.1〜10重量部である。
電解質添加量が上記範囲より著しく少ない場合には、凝集反応の進行が遅くなり凝集反応後も1μm以下の微粉が残ったり、得られた凝集粒子の平均粒径が3μm以下となるなどの問題を生じる傾向にある。また、電解質添加量が上記範囲より著しく多い場合には、急速で制御の困難な凝集となりやすく、得られた凝集粒子の中に25μm以上の粗粉が混じったり、凝集体の形状がいびつで不定形の物になるなどの問題を生じる傾向にある。
【0029】
混合分散液は、加温するか、または電解質を添加して各成分の粒子を凝集させ、凝集粒子を得るが、この凝集工程において、各成分が均等に凝集し、且つ凝集粒子を小粒径とし、粒度分布を制御するには、混合分散液を均等に且つ相応の強度で攪拌を行う必要がある。しかし、乳化重合凝集法の凝集工程は、種々の成分の粒子が分散したスラリー状となっており、液の粘度が比較的高いので、均等に且つ相応の強度で攪拌を制御することが困難であった。
【0030】
本発明の製造方法が上記した優れた効果を発揮する理由は必ずしも明確ではないが、凝集時の粒径は、凝集時にネットワークが生成し増粘し、攪拌翼のせん断力の大きさで粒径が決まり、増粘時の混合均一性で粒径分布が決まると推定され、混合均一性を確保するために、発泡を抑えしかも相応のせん断力を保持した翼が
有効であると推定している。
【0031】
本発明の凝集工程に用いられる反応槽は、通常攪拌槽型の反応槽が用いられ、形状としては、略円筒状のものあるいは略球状のものが好ましく用いられる。反応槽のが略円筒状の場合、底面の形状は特に制限はないが、通常の略円弧状のものが好ましく用いられる。
攪拌効率を良好にするためには、混合分散液の体積は、反応槽の体積の1/2以下が好ましく、2/5以下が更に好ましい。また、極端に混合分散液の体積が反応溶液の体積に比べて小さいと、泡立ちが激しく増粘が大きくなり、粗粉粒子が発生しやすく、攪拌翼の形状によっては攪拌されない場合があり、また、生産効率も低下するので、この比率は、1/10以上が好ましく、1/5以上が更に好ましい。
【0032】
凝集工程に用いる攪拌翼としては、従来公知であり、市販されている各種の形状の攪拌翼を用いることが出来る。
市販の攪拌翼としては、例えば、アンカー翼(自社制作)、フルゾーン翼(神鋼パンテック社製)、サンメラー翼(三菱重工社製)、マックスブレンド翼(住友重機械工業社製)、Hi−Fミキサー翼(綜研化学社製)、ダブルヘリカル翼(神鋼パンテック社、自社共同製作)、バッフル付ダブルヘリカル翼等の攪拌翼を挙げることができる。
【0033】
通常はこれらの攪拌翼の中から、反応液の粘度その他の物性、あるいは反応形態、反応槽の形状及び大きさ等により好適なものを選択し使用されるが、好ましい攪拌翼としては具体的には、ヘリカル翼またはアンカー翼が挙げられる
ヘリカル翼の場合は、中でも中心軸を有さないヘリカルリボン翼が好ましい。また、ヘリカル翼の場合、螺旋構造を1つ有するシングルヘリカル、螺旋構造を2つ有するダブルヘリカル、さらにトリプルあるいはそれ以上のものがあるが、攪拌効率とヘリカル翼の製造面とを合わせて考慮すると、ダブルヘリカル翼が好ましい。ヘリカル翼の場合、ピッチ(1つの螺旋構造における横幅と1周期を含む縦幅との比)は、横幅:縦幅=1:1〜1:2が好ましい。
また、アンカー翼の場合は、攪拌の均一性を確保する目的で、反応槽にじゃま板(バッフル)を設けることが好ましい。
【0034】
【実施例】
以下に実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
以下の例で「部」とあるは「重量部」を意味する。また、凝集粒子の平均粒子径は、下記の方法により測定した。
平均粒子径:島津製作所社製 SALD2000J レーザー回析式粒度分布計を用いて測定した。
【0035】
(乳化重合分散液:バインダー一次粒子分散液の作製)
攪拌装置、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えたガラス製反応器に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(以下DBSと略)0.268部、脱イオン水367部を仕込み、窒素気流下で90℃に昇温。
その後、下記の開始剤−1を添加し、モノマー類+DBS+脱イオン水を5 時間で添加し、開始剤−2を6時間で添加し乳化重合を行った。
【0036】
【表1】
<モノマー類>
スチレン 79 部
アクリル酸ブチル 21 部
アクリル酸 3 部
トリクロロブロモメタン 0.5 部
<乳化剤>
DBS 0.27 部
1%ノニオン系界面活性剤 0.01 部
脱イオン水 22 部
<開始剤−1>
8%過酸化水素水溶液 0.13 部
8%アスコルビン酸水溶液 0.13 部
<開始剤−2>
8%過酸化水素水溶液 0.72 部
8%アスコルビン酸水溶液 0.72 部
【0037】
重合反応終了後冷却し、乳白色のバインダー一次粒子分散液(A)を得た。得られたエマルションの平均粒径は188nm(マイクロトラック社製UPAで測定)、重合体のMw=7.1万、Mp=5.4万であった。また、ガラス転移温度は73℃であり、軟化温度は128℃であった。
【0038】
【表2】
【0039】
[実施例1]
ガラス製セパラブルフラスコ(内径100mm×高さ300mm)凝集槽にダブルヘリカルリボン翼(内側φ10丸棒バッフル2本付;翼径90mm;翼幅9mm;回転数500rpm)をセットし、上記の分散液の混合物(バインダー一次粒子分散液400g,EP70014.7g,E−433N14.3g)をダブルヘリカルリボン翼で分散攪拌しながら、25℃より60℃まで1℃/minで昇温し2時間保持し、65℃で2時間保持し、、その後荷電制御剤添加し、72℃で1時間保持、さらに80℃で1時間保持、さらに90℃で1時間保持した。
各温度でレーザ回析式粒度分布計で体積平均粒子径を測定したところ、65℃〜90℃まで約6μmで推移しており粒径は安定していた。昇温過程においても粒径変化は起きず均一に攪拌混合されていた。更に、凝集物の粒度分布も狭く小粒径であった。また、増粘時の泡の巻き込みも少なかった。
実施例1で得たトナーの粒度分布を表すグラフを図1に示す。
【0040】
[比較例1]
実施例1で用いたダブルヘリカルリボン翼を、アンカー翼(翼径93mm;翼幅10mm;回転数480rpm)に変更した以外は実施例1と同様に凝集工程を行ったところ、90℃での体積平均粒子径は20.0μmになり、粒度分布も広く、大粒径で、攪拌の不均一混合が起こっていた。また、泡を巻き込み、増粘が激しすぎて攪拌翼だけが空回りしていた。
比較例1で得たトナーの粒度分布を表すグラフを図2に示す。
【0041】
[実施例2]
実施例1で用いたダブルヘリカルリボン翼を、アンカー翼(翼径54mm;翼幅8mm;回転数700rpm)+バッフル付(4枚板バッフル8mm幅;長さ140mm)に変更した以外は実施例1と同様に凝集工程を行ったところ、90℃での体積平均粒子径は7.4μmになり、バッフルの効果は大きく、粒度分布も狭く、小粒径で、機械的せん断力の効果が起こっていた。但し、凝集中の液状は泡を巻き込んでいた。
【0042】
[比較例2]
実施例1で用いたダブルヘリカルリボン翼を、Hi−Fミキサー翼(翼径62mm;回転数610rpm)に変更した以外は実施例1と同様に凝集工程を行ったところ、90℃での体積平均粒子径は11.7μmになり、粒度分布も広く、大粒径で、攪拌の不均一混合が起こっていた。また、泡を巻き込み、増粘が激しすぎて攪拌翼だけが空回りしていた。
【0043】
[比較例3]
実施例1で用いたダブルヘリカルリボン翼を、サンメラー翼(翼径60mm;回転数630rpm)に変更した以外は実施例1と同様に凝集工程を行ったところ、90℃での体積平均粒子径は11.7μmになり、粒度分布も広く、大粒径で、攪拌の不均一混合が起こっていた。また、泡を巻き込み、増粘が激しすぎて攪拌翼だけが空回りしていた。
【0044】
[実施例3]
凝集槽(内径400mm×高さ550mm)及び、アンカー翼(翼径370mm;翼幅30mm;翼長200mm;バッフルなし)を用い、実施例1で用いた分散液中の青色色素を、黒色色素カーボンブラックMA−100 7.2%分散液(三菱化学(株)製)に変更して分散混合(バインダー一次粒子分散液30kg,カーボンブラック5.25kg,E−433N1.06kg,荷電制御剤28.5g)しながら、60℃まで1℃/minで昇温し1時間保持し、65℃4時間保持し、5%トリエタノールアミン水溶液でpHを3.5→6.2(3.2リットル添加)に上げ、94℃で6時間保持し、続いて96℃で2時間保持した。
レーザ回析式粒度分布計で体積平均粒子径を測定したところ、96℃で2時間保持した後は、7.4μmであった。
昇温過程において、増粘時の泡の巻き込みがあり上部液面は停止したが、その後全体は停止することなく攪拌混合されていた。
最終的には、粒度分布の狭いシャープな凝集粒子を得た。
実施例3で得たトナーの粒度分布を表すグラフを図3に示す。
【0045】
各実施例及び比較例を、島津製作所社製 SALD2000J レーザー回析式粒度分布計による凝集終了時の体積平均粒径及び、体積平均粒径(DV)/個数平均粒径(DN)の値を下記第1表に示す。
【0046】
【表3】
【発明の効果】
本発明により、増粘時の混合均一性は良くなり、凝集粒子は小粒径、粒径分布も狭いトナー粒子の製造が可能となる。また、分級工程を必要としない事から安価にトナーを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1で得たトナーの粒度分布を表すグラフである。
【図2】 比較例1で得たトナーの粒度分布を表すグラフである。
【図3】 実施例3で得たトナーの粒度分布を表すグラフである。
Claims (6)
- 少なくとも、バインダー一次粒子及び着色剤粒子を含む混合分散液を、加温することにより凝集粒子を得る凝集工程を有する静電荷像現像用トナーの製造方法であって、該凝集工程に用いられる攪拌翼がダブルヘリカル翼であって、かつトナーの体積平均粒径(Dv)が3〜8μmであり、体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(DN)との関係が、Dv/DN=1〜1.5であることを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
- 凝集工程において、Tg−20℃〜Tgの温度範囲に30分以上保持する請求項1に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。(但しTgはバインダー一次粒子のガラス転移温度)
- 凝集工程後に、Tg〜Tg+80℃であり且つバインダー一次粒子の軟化点以下の温度範囲に1時間以上保持する熟成工程を有する請求項2に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。(但しTgはバインダー一次粒子のガラス転移温度)
- 少なくとも、バインダー一次粒子及び着色剤粒子を含む混合分散液に、電解質を添加することにより凝集粒子を得る凝集工程を有する静電荷像現像用トナーの製造方法であって、該凝集工程に用いられる攪拌翼がダブルヘリカル翼であって、かつトナーの体積平均粒径(Dv)が3〜8μmであり、体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(DN)との関係が、Dv/DN=1〜1.5であることを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
- バインダー一次粒子が、ワックス微粒子をシードとして単量体がシード重合したものである請求項1乃至4のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
- トナーの体積平均粒径(Dv)が、4〜6μmである請求項1乃至5のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
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