JP3728947B2 - 油孔を有する回転体の摺動部の高周波焼入れ処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関のクランクシャフトのピン部やジャーナル部に用いて好適の、回転体の摺動部の高周波焼入れ処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
クランクシャフトのピン部にはコネクティングロッド(以下、コンロッドという)の端部が連接され、ジャーナル部は軸受によってクランクケースに支承され、ピン部やジャーナル部の外周は摺動部となる。このような摺動部の潤滑を良くするために、ピン部及びジャーナル部に油孔を設けて、この油孔よりピン部及びジャーナル部に潤滑油の供給を行なえるようにしている。
【0003】
図7は、このような摺動部に高周波焼入れ処理を施した、従来のクランクシャフトのピン部の模式的構造を示す図であり、(a)はその正面図、(b)は(a)のC−C矢視断面図である。
図7(a)に示すように、クランクシャフト1には、ジャーナル部10,10の間に、アーム部12を介してピン部20が設けられ、このピン部20にはコンロッド13の端部が連接されている。そして、ピン部20には、図7(a),(b)に示すように、油孔30が穿設されており、油孔30はジャーナル部10,アーム部12内に形成された図示しない油孔と連通しており、エンジンオイル(潤滑油)の一部が、このピン部20に設けられた油孔30を介して、ピン部20の外周表面に供給されるようになっている。そして、ピン部20の外周表面には、高周波焼入れ処理により硬化された、高周波焼き入れ層(以降、焼入れ層と略す)40が形成されている。
【0004】
この焼入れ層40によって、ピン部20の表面(摺動部)の耐摩耗性が向上する。
なお、このようなピン部20の外周表面の高周波焼入れ処理は、例えば、図8に示すように、ピン部20の周囲に、略円形の加熱コイル2を配置して、この加熱コイル2に接続される高周波電源3から電流を供給してピン部20の外周表面に電磁誘導による熱を発生させることにより行なっている。加熱コイル2は、上部コイル2aと下部コイル2bとからなる2つ割れに形成され、上部コイル2a,下部コイル2bは互いに離接して開閉できるようになっている。これにより、ピン部20を加熱コイル2内に設置または加熱コイル2内から取外すときには、上部コイル2a,下部コイル2bを離隔して加熱コイル2を開放状態にし、そして、ピン部20に高周波焼入れ処理を行なうときには、上部コイル2a,下部コイル2bを互いに近接させて加熱コイル2を略閉状態にさせるようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図7に示すような熱処理を施した従来の回転体の摺動部構造では、次のような課題がある。
つまり、図7(b)に示すような熱処理を施された部分と熱処理の施されない部分との境界、即ち、高周波焼入れ境界(以降、焼入れ境界と略す)45には、熱処理により引張内部応力が発生する。このため、焼入れ境界45を中心とした部分は内燃機関の運転中に作用する荷重に対する強度が弱い。
【0006】
さらに、焼入れ境界45の存在する油孔30の内周面37は、構造的に表面加工しにくいために表面が粗く切欠き感度が比較的大きい上に、高周波焼入れされて硬度が強化されることで、この切欠き感度がさらに上昇するため、上述の引張内部応力による強度の低下に加えて、この部分の強度が一層低下してしまう。
このため、焼入れ境界45が疲労破壊の起点となって、ピン部20が疲労破壊を起こす虞がある。
【0007】
こうした疲労破壊を防止するために、従来より、幾つかの構造や方法が開発されている。
例えば、油孔内周にその開口部からピン部軸心付近にかけて高周波焼入れ層を形成して、高周波焼入れ処理を施された部分と高周波焼入れ処理の及ばない部分との境界を、応力の小さいピン部軸心側に移動させるもの(実開昭63−72314)や、ピン部又はジャーナル部の外周面に焼入れを施すとともに、ピン部,ジャーナル部に形成され油孔の全内周面にも焼入れ層を形成するもの(実開平2−78807)や、油孔の内部において、高周波焼入れ処理を施された部分と高周波焼入れ処理の及ばない部分との境界近傍にレーザ焼入れ又はショットピーニングを施すもの(特開平09−014252)等があり、窒化処理を施した被化合物(例えば、ピン部の油孔)の場合は、その表面に沿って化学研磨液を流して、被化合物表面の化合物層を除去するとともに被化合物表面を加工して強度を高めるもの(特開平03−232984)等がある。
【0008】
しかし、これらの技術は、何れも、疲労破壊を防止するための処理が困難であったり、複雑な加工作業が必要であるという不具合がある。つまり、油孔のような小径の穴の内部に焼入れやショットピーニングを施すことは困難な技術であり、また、小径穴である油孔の表面に沿って化学研磨液を流して化合物層の除去や加工を行なうことは簡単な処理ではない。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑み創案されたもので、容易な加工作業により製造することができ、耐摩耗性が高く、且つ、強度の高い、回転体の摺動部の高周波焼入れ処理方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
このため、請求項1記載の本発明の回転体の摺動部の高周波焼入れ処理方法は、軸受け部材に対し摺動する回転体の摺動部の表面に開口するように油孔が形成され、該摺動部の周囲に加熱コイルを配置して、該摺動部の表面のうち該油孔の開口部の周辺を除いた部位に高周波焼入れ処理を施す方法において、前記油孔の開口部近傍の前記摺動部表面と加熱コイルとの離間距離を、前記油孔の開口部近傍以外の前記摺動部表面と加熱コイルとの離間距離より大きくした状態で高周波焼入れ処理を施すことを特徴としている。
また、請求項2記載の本発明の回転体の摺動部の高周波焼入れ処理方法は、請求項1の方法において、前記加熱コイルは、前記油孔の開口部の外周付近は覆わないことを特徴としている。
また、請求項3記載の本発明の回転体の摺動部の高周波焼入れ処理方法は、前記油孔の開口部に、前記加熱コイルによる熱を吸収するマスキング部材を差し込んだ状態で高周波焼入れ処理を施すことを特徴としている。
いずれの処理方法も、油孔の開口部の周辺は高周波焼入れ処理されずに、高周波焼入れ処理を施した部位と高周波焼入れ処理を施さない部位との境界が表面の強度を確保し易い回転体の摺動部表面に形成されることになる。したがって、かかる境界が油孔内に形成されなくなるため、油孔内には、引張内部応力は発生しない。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面により、本発明の実施形態について説明する。各実施形態としては、本発明の回転体の摺動部の高周波焼入れ処理方法をクランクシャフトのピン部に適用した例を説明する。
まず、図1〜図4を参照して本発明の第1実施形態としての回転体の摺動部構造について説明する。
【0012】
図1は本実施形態にかかるクランクシャフトのピン部120を示す模式的構造図であって、(a)は正面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図、図2は本実施形態にかかるクランクシャフトの要部構造を示す正面図、図3はその高周波焼入れ処理を示す断面図、図4はその高周波焼入れ処理の変形例を示す断面図である。
【0013】
図2に示すように、クランクシャフト1には、ジャーナル部10,10間にアーム部12を介してピン部120が設けられており、このピン部120にコンロッド(軸受け部材)13が連接されていて、本実施形態では、このピン部120が回転体の摺動部に相当する。
図1(a),(b),図2に示すように、本実施形態のピン部(回転体の摺動部)120は、直径方向に貫通する油孔130をそなえている。この油孔130の両端は、油孔開口部135においてピン部120の外周に開口している。
【0014】
そして、ピン部120の外周には、高周波焼入れ処理が施されている。この高周波焼入れ処理は、ピン部120の外周面全体ではなく、油孔130の内周面137及び油孔開口部135周辺を含んでピン部120の幅方向に拡がる部分(焼入れ未処理部150)を除いた部分(焼入れ部140)に施されている。
したがって、焼入れ部140と焼入れ未処理部150との境界(焼入れ境界)145は、ピン部120の外周面であって且つ油孔130から離隔した位置に形成されている。
【0015】
ところで、油孔130は、ピン部120の外周のうち、図2に太線で示すピン谷部160aと丁度その反対側(反対外周)160bとを外れた場所に開口するように配置されている。本実施形態の場合、ピン谷部160a並びにその反対外周160bを含む直径と直交する直径上に油孔130が配置されている。したがって、油孔開口部135の周辺位置に設けられる焼入れ未処理部150は、ピン谷部160a並びにその反対外周160bとの何れからも外れるように設けられている。
【0016】
なお、油孔130は、ピン谷部160a並びにその反対外周160bを含む直径と直交する直径(以降、直交直径と言う)上に位置するとは限らず、直交直径に対して適当な角度を持つ直径上に配置することもある。しかし、かかる角度は、油孔130を通る焼入れ未処理部150がピン谷部160a並びにその反対外周160b上に位置してしまう程のものではない。
【0017】
ピン部120は、コンロッド13の端部を軸支しながら、ジャーナル部10の軸心線15を中心に回転する。この時、コンロッド13はピン部120の軸心線125を中心に自転しながら、ジャーナル部10の軸心線15を中心に公転する。そして、ピン部120に一端を連接されたコンロッド13及びコンロッド13の他端に接続されるピストン(図示略)が上下運動するため、この上下運動の際の慣性力により、ピン部120とコンロッド13との接触圧力はピン谷部160a並びにその反対外周160bで最大となる。このため、ピン谷部160a並びにその反対外周160bは最も摩耗し易い部分となる。
【0018】
したがって、本実施形態のピン部120は、油孔130を通ってピン部120の幅方向に拡がる焼入れ未処理部150を有するが、この焼入れ未処理部150はピン谷部160a並びにその反対外周160bの何れからも離隔した位置にあり、一方、ピン谷部160a並びにその反対外周160bには焼入れ処理が施されているので、ピン部120の摩耗を低減させることができる。
【0019】
ここで、最も摩耗の生じやすいピン谷部160a並びにその反対外周160bにのみ高周波焼入れ等の熱処理を施すということも考えられるが、この場合、ピン部120の一部分のみの偏った加熱となって、ピン部120が熱変形してしまう。したがって、ピン谷部160a並びにその反対外周160bにのみ熱処理を施すことは実用的ではない。
【0020】
ところで、本実施形態のピン部120の焼入れ処理は、既に説明した従来技術(図8参照)と同様に高周波電源に接続された加熱コイルを用いて行なうが、本実施形態の場合、加熱コイル200をオーバル状に形成しており、図3に示すように、ピン部120の周囲に、このオーバル形状の加熱コイル200を配置して、この加熱コイル200を作動させてピン部120の外周面に電磁誘導による熱を発生させることにより行なっている。この際、加熱コイル200には高周波電源から電流が送られ、これにより加熱コイル200が作動する。
【0021】
この時、加熱コイル200は、オーバル形状を構成するその長手方向がピン部120の油孔130方向に沿うようにして、ピン部120の周囲に配置される。したがって、加熱コイル200とピン部120の表面との距離は、油孔開口部(開口部)135付近では他の部分よりも離隔した位置になっており、油孔開口部135の周辺及び油孔内部137については加熱コイル200の電磁誘導の作用が弱くなって高周波焼入れ処理がなされないようになっている。
【0022】
なお、図3に示すように、加熱コイル200は上部コイル201と下部コイル202とからなる2つ割れに形成されており、上部コイル201,下部コイル202は互いに離接して開閉できるようになっている。これにより、ピン部120を加熱コイル200内に設置または加熱コイル200内から取外すときには、上部コイル201,下部コイル202を離隔して加熱コイル200を開放状態にし、そして、ピン部120に高周波焼入れ処理を行なうときには、上部コイル201,下部コイル202を互いに近接させて、ピン部120を挟むように加熱コイル200を略閉状態にさせるようにしている。
【0023】
したがって、ピン部120を加熱コイル200の内部に設置し、この後、加熱コイル200を閉じて加熱コイル200に電流を流すことで、焼入れ未処理部150を除いた部分、即ち、ピン谷部160a並びにその反対外周160bを含む焼入れ部140に高周波焼入れ処理を施すことができるのである。
なお、図1(b),図3において、焼入れ部140をスマッジングで示しているが、高周波焼入れ処理される部分の厚みについては誇張して示している。
【0024】
本発明の第1実施形態にかかる回転体の摺動部としてのピン部120は、上述のように構成され、焼入れ境界145がピン部120の外周面に位置するので、以下のような作用,効果が得られる。
ピン部120の外周面は、油孔130の内面に比較して、表面加工作業を行ない易いため表面粗さが細かく(即ち、滑らかで)切欠き感度も低い。本構造では、焼入れ境界145が、このように切欠き感度の低いピン部120の外周面に位置しているので、油孔内部137に位置する場合よりも、焼入れ境界145の疲労強度が高くなって疲労破壊の起点部となりにくい。即ち、ピン部120が疲労破壊しにくくなる。
【0025】
また、油孔内部137は、高周波焼き入れ処理されず、したがって、油孔内部137が硬化されることもない。このため、切欠き感度が高くなることもないので、油孔130の強度の低下が防止される。
また、油孔内部137には焼入れ境界も存在しないので、これに起因する引張内部応力も発生しない。このため、内燃機関の運転中に作用する荷重に対する疲労強度の低下も防止される。
【0026】
したがって、本構造によれば、ピン部(回転体の摺動部)120の強度低下を招くことなしに、ピン部120の耐摩耗性を向上させることができるという利点がある。
さらに、高周波焼き入れ処理による疲労強度の低下がないために疲労強度を向上させるための作業が不要となって、作業が容易になるという利点もある。
【0027】
また、本実施形態の加熱コイルは、油孔開口部135の周辺で加熱コイル200をピン部120から大きく離隔させているが、高周波焼入れ処理が油孔開口部135の周辺と油孔内部137とを除いた部分に施されるようなものであれば良く、例えば、図4に示すように、2つの加熱コイル201a,202aを、高周波焼入れ処理中にピン部120の周囲のうちの油孔開口部135の外周付近は覆わないように形成して、この油穴開口部135の外周付近に電磁誘導が発生しないようにしたものでもよい。
【0028】
なお、図4においても、図1(b),図3と同様に、スマッジングで示す高周波焼入れ処理される部分(焼入れ部140を)の厚みについては誇張して示している。
次に、第2実施形態について説明する。
図5及び図6は本発明の第2実施形態にかかるクランクシャフトのピン部220について示すもので、図5はその模式的構造を示す図であって、(a)は正面図、(b)は(a)のB−B矢視断面図であり、図6はその高周波焼入れ処理を示す断面図である。
【0029】
本実施形態のピン部220は、図5(a),(b)に示すように、第1実施形態と同様に、直径方向に貫通する油孔230をそなえ、ピン部220の表面の油孔開口部235の周辺及び油孔内部237(焼入れ未処理部250)を除いた部分(焼入れ部240)に、高周波焼入れ処理が施されている。これにより、第1実施形態と同様に、焼入れ部240と焼入れ未処理部250との境界(焼入れ境界)245が、ピン部220の外周面に形成される。
【0030】
本実施形態のピン部220は、図6に示すように、ピン部220の周囲に、図示しない高周波電源を接続された略円形状の加熱コイル300を配置して、この加熱コイル300により、ピン部220の外周面に高周波焼入れ処理を施して製作される。
この高周波焼入れ処理の際、ピン部220の油孔開口部235には、加熱コイル300による熱を吸収するマスキング(冷し金)340が差し込まれている。
【0031】
マスキング340は、油孔230の径よりも僅かに径の小さい円柱状の胴体部341と、油孔230の径よりも大きい円板状のヘッド部342とが同一軸心線上に並んだ形状のものである。このマスキング340には、磁力線を通したときに透磁率が高くてヒステリシス損失と渦電流損失が小さい金属を用いることが望ましい。
【0032】
ここで、マスキング340は、ヘッド部342がピン部220に当接するまで胴体部341を油孔内部237に差し込まれ、この際、ヘッド部342は油孔開口部235及びその周辺部を覆う。
このようにマスキング340を油孔230に差し込むことで、マスキング340に当接する油孔開口部235の周辺及び油孔内部237はマスキング340に冷やされ、また、マスキング340に当接しないピン部220の外周面であっても、ヘッド部342に覆われた部分は加熱コイル300による電磁誘導の影響を直接には受けず、したがって焼入れ処理されないようになっている。同様に、油孔内部237のピン部220中心側についても、ヘッド部342に覆われているので焼入れ処理されない。
【0033】
そして、加熱コイル300は上部コイル301と下部コイル302とからなる上下2つ割れに形成されており、上部コイル301,下部コイル302は互いに離接方向に移動できるようになっている。これにより、ピン部220の設置及び取外し時には、上部コイル301,下部コイル302を離隔して加熱コイル300を開放状態にし、そして、高周波焼入れを行なうときには、上部コイル301,下部コイル302を互いに近接させて、ピン部220を挟むように加熱コイル300を略閉状態にさせるようになっている。
【0034】
したがって、加熱コイル300に電気を流すと、加熱コイル300内のピン部220の外周には電磁誘導による熱が発生するが、マスキング340により覆われた油孔開口部235の周辺及び油孔内部237は、マスキング340によって、吸熱作用で冷やされたり、電磁波シールドされて電磁誘導されないため、これらの油孔開口部235の周辺及び油孔内部237(焼入れ未処理部250)を除いた、ピン部220の外周面に焼入れ部240が形成されるのである。
【0035】
なお、図5(b)及び図6においても、図1(b),図3,図4と同様に、スマッジングで示す高周波焼入れ処理される部分(焼入れ部240を)の厚みについては誇張して示している。
本発明の第2実施形態の回転体の摺動部にかかるピン部220は、上述のように構成され、焼入れ境界245がピン部220の外周面に位置するので、第1実施形態と同様にピン部(回転体の摺動部)220の疲労強度を低下させることなしに、ピン部220の耐摩耗性を向上させることができるという利点がある。さらに、高周波焼き入れ処理による疲労強度の低下がないために疲労強度を向上させるための作業が不要となって、作業が容易になるという利点もある。
【0036】
この第2実施形態では、マスキング340として吸熱性と電磁波シールド性とを共にそなえるものとして、油孔開口部235周辺及び油孔内部237を焼入れしないようにしているが、焼入れを確実に阻止できるならば、マスキング340は、吸熱性,電磁波シールド性のいずれかをそなえるものでもよい。
なお、本発明の回転体の摺動部構造は、上述の実施形態に限定されるものではなく、種々変形して実施することができる。例えば、クランクシャフトのジャーナル部や、トランスミッション等、回転体の摺動部の耐摩耗性を向上させたい部分に、広く適用しうるものである。
【0037】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の回転体の摺動部の高周波焼入れ処理方法によれば、回転体の疲労強度を低下させることなしに、回転体の摺動部の耐摩耗性を向上させることができるという利点がある。
さらに、回転体の疲労強度を高める作業が不要となって、回転体の摺動部の表面に高周波焼入れ処理を行なうだけでよいので、加工作業が容易になるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる回転体の摺動部(クランクシャフトのピン部)を示す模式的構造図であって、(a)は正面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態にかかるクランクシャフトの要部構造を示す側面図であり、ピン部(回転体の摺動部)の油孔及び高周波焼入れ未処理部の位置を示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態にかかる回転体の摺動部の高周波焼入れ処理を示す断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態にかかる回転体の摺動部の高周波焼入れ処理の変形例を示す断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態にかかる回転体の摺動部(クランクシャフトのピン部)を示す模式的構造図であって、(a)は正面図、(b)は(a)のB−B矢視断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態にかかる回転体の摺動部の高周波焼入れ処理工程を示す断面図である。
【図7】従来のクランクシャフトのピン部の模式的構造を示す図であって、(a)は正面図、(b)は(a)のC−C矢視断面図である。
【図8】従来のクランクシャフトのピン部の高周波焼入れ処理を示す斜視図である。
【符号の説明】
10 ジャーナル部
12 アーム部
13 コネクティングロッド(軸受け部材)
120,220 ピン部(回転体の摺動部)
130,230 油孔
135,235 油孔開口部(開口部)
140,240 焼き入れ部
145,245 高周波焼入れ境界
200,201a,202a,300 加熱コイル
340 マスキング(冷し金)
Claims (3)
- 軸受け部材に対し摺動する回転体の摺動部の表面に開口するように油孔が形成され、該摺動部の周囲に加熱コイルを配置して、該摺動部の表面のうち該油孔の開口部の周辺を除いた部位に高周波焼入れ処理を施す方法において、
前記油孔の開口部近傍の前記摺動部表面と加熱コイルとの離間距離を、前記油孔の開口部近傍以外の前記摺動部表面と加熱コイルとの離間距離よりも大きくした状態で高周波焼入れ処理を施す
ことを特徴とする、回転体の摺動部の高周波焼入れ方法。 - 前記加熱コイルは、前記油孔の開口部の外周付近は覆わないことを特徴とする、請求項1記載の回転体の摺動部の高周波焼入れ処理方法。
- 軸受け部材に対し摺動する回転体の摺動部の表面に開口するように油孔が形成され、該摺動部の周囲に加熱コイルを配置して、該摺動部の表面のうち該油孔の開口部の周辺を除いた部位に高周波焼入れ処理を施す方法において、
前記油孔の開口部に、前記加熱コイルによる熱を吸収するマスキング部材を差し込んだ状態で高周波焼入れ処理を施す
ことを特徴とする、回転体の摺動部の高周波焼入れ処理方法。
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