JP4268739B2 - クランクシャフトの高周波焼入れ方法及び装置 - Google Patents

クランクシャフトの高周波焼入れ方法及び装置 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、クランクシャフトの高周波焼入れ方法及び装置に関し、詳細には、クランクシャフトのジャーナル部あるいはピン部にある油穴開口部を高周波焼入れにより硬化させることにより高い疲労強度のクランクシャフトを得る方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、エンジン内のクランクシャフトは、シリンダー内で燃料を爆発させて得た直線的な推力をクランクシャフトのピン部に回転自在に接続されたコネクティングロッドによって回転運動に変換している。この直線連動を回転運動に変換するために、クランクシャフトのピン部には強いねじり応力が加わる。さらに、近年エンジンの高出力化にともない、高速高回転が要求されておりクランクシャフトのピン部に負荷されるねじり応力も強大なものとなっている。そしてクランクシャフトのジャーナル部やピン部は高速高回転による摩耗にも耐えねばならない。
【0003】
クランクシャフト摩耗対策として高周波焼入れを行う方法がある。これは、クランクシャフトの軸心に位置してクランクシャフトを回転させつつ支えるジャーナル部のフラット(平坦)な表面部と、コネクティングロッドが装着されてシリンダー内の燃料を爆発させて得た直線的な推力を回転運動に変換するピン部のフラットな表面部とに高周波焼入れを施す方法で、一般にクランクシャフトのジャ一ナル部あるいはピン部の外径のフラット部のみ焼入れをおこなうのでフラット焼入れといわれている。この焼入れは、平坦部分のみの焼入れであるのでクランクシャフトのねじり疲労に対する強化に直接結びつくものではない。そこで、ねじり疲労強化対策としてはフラット部の高周波焼入れ後、ピン部のフィレットR部分にロールを当接させて高い荷重を負荷しながらクランクシャフトを回転させることにより、ピン部のフィレットR部に高い圧縮応力を発生させる、いわゆるローリング加工が施される。また、直接的なクランクシャフトのねじり疲労強化を目的として、クランクシャフトのジャーナル部とピン部の前記フラット部とフラット部に続くフィレットR部に高周波焼入れにより焼入硬化層を形成する方法もある。これは、フィレットR部にも焼入硬化層を形成するのでフィレットR焼入れとして知られている。フィレットR焼入れは、高周波焼入れにより焼入硬化層を形成するとその表面層には高い圧縮応力が残留応力として形成されることに着目したもので、クランクシャフトのピン部で応力集中の発生し易いフィレットR部に焼入硬化層を形成することで、フラット焼入れのローリング施工に変わって、高周波焼入れにより直接的にフィレットR部に高い圧縮応力を付与しようというものである。
【0004】
クランクシャフトは高速で回転しているので、ジャーナル部及びピン部のベアリングと接している部分では摩擦係数が最小になるように設計されてはいるが摩擦がゼロではなく熱が発生する。長時間運転しているとこの熱が無視出来なくなり高温となり焼付けを起こす原因となる。そのためクランクシャフトにはジャーナル部とピン部に潤滑油が循環するように油穴が形成されている。この油穴はジャーナル部とピン部の表面に開口され潤滑油を循環することで摩擦係数をさらに小さくするとともに、発生した熱をクランクシャフトの外に運び出すようにしている。
【0005】
近年エンジンの高出力化にともない、クランクシャフトはますます高速・高回転を求められており、クランクシャフトに負荷されるねじり疲労応力も増大しており、このこととクランクシャフトのジャーナル部及びピン部表面に油穴が開口された事とが相反する結果となっている。すなわち、ジャーナル部とピン部表面に開口された油穴部には応力(引張応力)が集中しやすく、特に表面部の高周波焼入れによる焼入硬化層が形成されている場合には、油穴開口部表面の焼入硬化層の直下に引張応力が集中し、この部位が起点となって甚だしい場合にはクランクシャフトの折損に到るという問題があった。そこで、ピン部でのねじり疲労強度を上げるために、ピン部の表面層を高周波焼入れした後、油穴開口部の高周波焼入層の下部にレーザー光線を照射して焼入処理を施すことにより、ピン部でのねじり疲労強度を向上する方法が、特開平9−14252号公報に開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記公知の潤滑油通路の開口部へのレーザー焼入処理は、既に施された高周波焼入層近傍にレーザー光を照射して加熱するため、開口部近傍のクランクシャフト表面の高周波焼入層が軟化してねじり疲労強度が低下してしまうという問題がある。また、ジャーナル部あるいはピン部表面に垂直に閉口された油穴には、レーザー光を照射しても目的とする部位に届かず、照射そのものが困難であるという問題もあった。さらに、クランクシャフトには、そのクランクシャフトのジャーナル部とピン部に対応する数だけ(例えば、4気筒の場合、ジャーナル部が5個、ピン部が4個あり、それぞれに1つの油穴が開口している場合ではジャーナル部5カ所とピン部4カ所の合計9カ所、また、それぞれに2つの油穴が開口している場合では合計18カ所)のレーザー照射が必要になる。このため、1カ所づつのレーザー照射では熱処理時間(サイクルタイム)が非常に長くなる。熱処理時間を短くするためには、多数の油穴開口部を一度にレーザー照射することが必要になり、複雑旦つ高価な設備が必要となる。このように、高周波焼入後にレーザー照射による焼入れを行うことは熱処理工程を複雑にする。
【0007】
従って、本発明は、上記の従来技術の問題点を解消するため、熱処理工程を複雑にすることなく、低コストで、高周波焼入れによって油穴開口部の引っ張り応力の集中する部位にも焼入硬化層を形成することができ、疲労強度の高い、特にねじり疲労強度の高いクランクシャフトを得ることができる高周波焼入れ方法及び装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するため、請求項1の発明によれば、ジャーナル部又はピン部に油穴開口部を有するクランクシャフトの高周波焼入れ方法が提供され、この方法は、半開放鞍型の高周波加熱コイル装置を、クランクシャフトのジャーナル部又はピン部を跨ぐように配置するステップと、前記クランクシャフトの軸心を中心に回転させ、且つこの回転中に前記高周波加熱コイル装置に高周波電力を供給して前記ジャーナル部又はピン部を加熱する加熱ステップと、加熱した前記ジャーナル部又はピン部に冷却液を給水して急速に冷却する冷却ステップとから成り、前記半開放鞍型の高周波加熱コイル装置は、前記クランクシャフトのジャーナル部又はピン部を跨いだ状態で該高周波加熱コイル装置の高周波加熱コイルを前記ジャーナル部又はピン部に近接させるように配置され、該高周波加熱コイル装置は、前記クランクシャフトが前記軸心回りの回転をしても、前記のジャーナル部又はピン部を跨いだ状態のままで前記高周波加熱コイルが前記ジャーナル部又はピン部に近接した状態で追随できるように上下左右に遊動可能に固定の装置本体に対して支持されており、前記加熱ステップにおいて、前記高周波加熱コイル装置は、前記クランクシャフトが前記軸心回りの回転をしても、前記軸心回りに回転することなく前記高周波加熱コイルが前記ジャーナル部又はピン部に近接した状態で前記のジャーナル部又はピン部を跨いだ状態のままに維持され続けており、前記加熱ステップにおいて、前記ジャーナル部又はピン部の前記油穴開口部及びその近傍では、その焼入れ硬化層深さを増大するように、他の部分より前記高周波加熱コイル装置への通電量を増大させていることを特徴とする。従って、レーザ加工等を必要とせず、熱処理工程を複雑にすることなく、低コストで、ジャーナル部又はピン部の油穴開口部及びその近傍の焼入れ硬化層深さを増大して、高いねじり疲労強度のクランクシャフトを得ている。
【0009】
上記のクランクシャフトの高周波焼入れ方法において、冷却ステップでは、前記油穴開口部及びその近傍を、他の部分に先行して、該油穴開口部に所定深さの焼入れ硬化層を形成するように前記冷却液を給水して冷却するのが好ましい。また、高周波加熱コイル装置への高周波電力の周波数は20kHz以下にして、表面層の過熱を防止するのが好ましい。更に、クランクシャフトのジャーナル部及びピン部の表面に、高周波焼入れによってフラット焼入れ又はフィレットR焼入れを行い、前記ジャーナル部あるいはピン部の油穴開口部の高周波焼入れによる焼入硬化層範囲を6mm以上11mm以下とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、ジャーナル部又はピン部に油穴開口部を有するクランクシャフトの高周波焼入れ装置を提供する。この装置は、クランクシャフトのジャーナル部又はピン部を跨ぐ半開放鞍型形状に形成されており、前記ピン部を跨いだ状態で該ピン部の偏心運動に追随できるように遊動可能に装置本体に支持された半開放鞍型の高周波加熱コイル装置と、前記クランクシャフトを、前記半開放鞍型の高周波加熱コイル装置が前記ジャーナル部又はピン部を跨ぐ位置に支持する手段と、前記支持されたクランクシャフトを、その軸心を中心に回転させる手段と、前記高周波加熱コイル装置に高周波電力を供給する高周波電源と、加熱した前記ジャーナル部又はピン部に冷却液を給水して急速に冷却する冷却液給水手段とを備え、前記半開放鞍型の高周波加熱コイル装置は、前記クランクシャフトのジャーナル部又はピン部を跨いだ状態で該高周波加熱コイル装置の高周波加熱コイルを前記ジャーナル部又はピン部に近接させるように配置され、該高周波加熱コイル装置は、前記クランクシャフトが前記軸心回りの回転をしても、前記のジャーナル部又はピン部を跨いだ状態のままで前記高周波加熱コイルが前記ジャーナル部又はピン部に近接した状態で追随できるように上下左右に遊動可能に固定の装置本体に対して支持されており、前記高周波加熱コイル装置は、前記クランクシャフトが前記軸心回りの回転をしても、前記軸心回りに回転することなく前記高周波加熱コイルが前記ジャーナル部又はピン部に近接した状態で前記のジャーナル部又はピン部を跨いだ状態のままに維持され続けており、更に、前記ジャーナル部又はピン部の前記油穴開口部及びその近傍では、その焼入れ硬化層深さを増大するように、他の部分より前記高周波加熱コイル装置への通電量を増大させる制御手段とから成ることを特徴とする。このような簡単な構成で、高いねじり疲労強度のクランクシャフトを得ることができる。
【0011】
上記のクランクシャフトの高周波焼入れ装置において、前記制御手段は、油穴開口部及びその近傍に、他の部分に先行して、油穴開口部に所定深さの焼入れ硬化層を形成するように前記冷却液給水手段を作動させて冷却液を給水するのが好ましい。また、高周波加熱コイル装置に供給する電力の周波数は20kHz以下であるのが好ましい。更に、前記制御手段は、回転するクランクシャフトのピン部の上死点付近及び下死点付近において、前記高周波加熱コイル装置への通電量を減少して油穴開口部以外の部分の加熱量を小さくするとともに前記上死点と前記下死点の中間位置において、高周波加熱コイル装置への通電量を増大して油穴開口部の部分の加熱量を大きくするよう、高周波電源と高周波加熱コイル装置を制御するのが好ましい。そして、複数の前記半開放鞍型の高周波加熱コイル装置が、クランクシャフトの軸方向に沿って並設されており、各高周波加熱コイル装置がそれぞれ対応する前記ジャーナル部又はピン部に跨ぐように配置されて高周波焼入れを行って、1度に多数のピン部又はジャーナル部を高周波焼入れするのが好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて、本発明に係る実施の形態を説明する。先ず、図1(A)及び(B)を参照して、クランクシャフト1について説明する。クランクシャフト1は、代表的には炭素鋼等の材料から成る一体成形した鍛造品である。また、鍛造時の温度を利用して冷却速度をコントロ一ルして焼ならし処理を行った材質であるのが好ましい。クランクシャフト1は、軸心に位置しベアリング(図示せず)に支持される複数のジャーナル部2と、コネクティングロッド(図示せず)が装着されてシリンダー内の燃料を爆発させて得た直線的な推力を回転運動に変換する複数(気筒数に対応する数)のピン部3と、ピン部3をジャーナル部2にクランクシャフトの軸心から所定のストロークを持って連結する複数のバランスウエイト5とを包含する。バランスウエイト5は、クランクシャフト1が高速で回転する時にもクランクシャフト自体の振動を最小にするように、ピン部3を重量バランスをもってジャーナル部2に連結している。ピン部3は、図1(B)の中央上部に示すように、バランスウエイト5によってジャーナル部2に連結されているウエイト側部分6と、その反対側でバランスウエイト5の一部も除去して質量が小さくなるように作られたトップ側部分7とがある。
【0013】
クランクシャフトは高速で回転しているので、長時間運転の焼付けの防止のため、クランクシャフトにはジャーナル部とピン部に潤滑油が循環するように油穴が形成され、この油穴はジャーナル部とピン部の表面に開口して摩擦係数を小さくするとともに、発生した熱をクランクシャフトの外に放出する。図2及び図3は、ピン部3とジャーナル部2に設けられた油穴を示している。図2において、潤滑油通路用の油穴9は、ジャーナル部2を直径方向に貫通する第1穿孔部10と、この第1穿孔部10の中央からピン部3のトップ側部分7のフラット面に延びる第2穿孔部11とから構成されている。第1穿孔部10は、ジャーナル部2のフラット面において開口し、油穴開口部13を形成している。また、第2穿孔部11はピン部3のフラット面に開口して、油穴開口部14を形成している。潤滑油が油穴9を循環してジャーナル部2及びピン部3の面を潤滑する。図2の第1穿孔部10の油穴開口部13は、ジャーナル部2のフラット面に垂直に形成されているが、第2穿孔部11は、ピン部3のフラット面に対して斜めに進入する通路として形成され、油穴開口部14はピン部3のフラット面に対して斜めになっている。
【0014】
図3の油穴15は、ジャーナル部2を直径方向に貫通する第1穿孔部17と、ピン部3を直径方向に貫通する第2穿孔部18と、第1穿孔部17の中央から第2穿孔部18の中央に延びて第1及び第2穿孔部17、18を相互に連通する第3穿孔部19とから構成されている。図3の油穴15の場合、第1穿孔部17の油穴開口部21は、ジャーナル部2のフラット面に垂直に形成されており、第2穿孔部18の油穴開口部22も、ピン部3のフラット面に対して垂直に形成されている。図2の油穴9も図3の油穴15も、潤滑油をジャーナル部2とピン部3とに循環させてそれらの面を潤滑する。なお、図2の油穴9も図3の油穴15もクランクシャフト1に高周波焼入れ等の表面処理が施される前にドリル等で穿設される。
【0015】
クランクシャフトの高周波焼入れによる表面硬化法として、高周波加熱コイルを内蔵した半開放鞍型の高周波加熱コイル装置を用いたクランクシャフト回転式高周波焼入れ法が知られている。本発明は、かかる高周波焼入れ法を用いて、クランクシャフトの高周波焼入れを改良する。本発明は、加熱ステップにおいて、油穴開口部及びその近傍に他の部分より深い焼入硬化層を得るため、ジャーナル部又はピン部の油穴開口部及びその近傍の加熱時、他の部分より高周波加熱コイルへの電力量を増大させている。さらに冷却液の噴射による冷却ステップにおいては、ピン部又はジャーナル部の油穴開口部及びその近傍を、他の部分に先行して(最初に)、冷却液を通水することによって焼入硬化層とした。これらによって、引張応力のかかる油穴開口部の位置に、6mm以上から11mm以下の焼入硬化層を形成し、これによって圧縮残留応力が与えられクランクシャフトのねじり疲労強度が向上させている。
【0016】
図4は、本発明に係る高周波焼入れ法に用いる高周波焼入れ装置23の全体を示している。高周波焼入れ装置23は、固定設置される装置本体25と、この装置本体25に支持されて、クランクシャフト1のジャーナル部2又はピン部3を跨ぐ半開放鞍型形状に形成された高周波加熱コイル装置26と、装置本体25に設けられ、クランクシャフト1を半開放鞍型の高周波加熱コイル装置26がジャーナル部2又はピン部3(図示の例では、ピン部3)を跨ぐ位置に支持する手段(図示しないが、図4の紙面を貫通する方向に延びるクランクシャフト1の両端部を回転可能に支持するベアリング付き支持装置)と、支持されたクランクシャフト1を、その軸心Oを中心に回転させる手段(図示しないが、前記の支持装置で支持されたクランクシャフト1を回転させるモータ及びベルトやギヤ等の伝達機構等)と、装置本体25に設けられて、高周波加熱コイル装置26に高周波電力を供給する高周波電源27と、加熱したジャーナル部2又はピン部3に冷却液を給水して急速に冷却する冷却液給水手段としての、装置本体26に設けられた冷却液給水装置29と、ジャーナル部2又はピン部3の油穴開口部(13、14、21、22)及びその近傍では、その焼入れ硬化層深さを増大するように、他の部分より高周波加熱コイル装置26への通電量を増大させる制御手段としての制御装置30とを有する。
【0017】
制御装置30のハードウエアは、専用の電子回路で形成されていてもよく、あるいは、CPUとROMとRAM等を備えたコンピュータシステムで形成されていてもよい。制御装置30の位置は、装置本体25の制御パネル(図示せず)に近い位置であるのが普通であるが、他の任意の場所でもよい。制御装置30は、制御パネルで設定された指示を受けて、高周波加熱コイル装置への通電量のほかに、高周波加熱コイル装置26の動作の制御、高周波電源27の制御、冷却液給水装置29の制御も行う。制御装置30は、更に、クランクシャフト1の回転、高周波加熱の開始、急速冷却のタイミング、動作全体の停止等、装置全体の制御も行う。高周波加熱コイル装置への通電量について、1例として、制御装置30は、回転するクランクシャフト1のピン部3の上死点付近及び下死点付近において通電量を減少し油穴開口部以外の部分の加熱量を小さくするとともに、上死点と下死点の中間位置において通電量を増大して油穴開口部の部分の加熱量を大きくするように制御する。また、制御装置30は、油穴開口部及びその近傍に、他の部分に先行して、油穴開口部に所定深さの焼入れ硬化層を形成するように冷却液給水装置29を作動させて冷却液を給水するのを制御する。
【0018】
高周波加熱コイル装置26は、銅パイプをヘアピン形状、Sの字形状又は8の字形状に巻回した、2つの高周波加熱コイル31と、高周波加熱コイル31をクランクシャフトのジャーナル部2あるいはピン部3の外表面の1/3〜1/2を2箇所で覆うように支持する半開放鞍型の形状に形成されたハウジング33と、ハウジング33に取付けられてジャーナル部2又はピン部3を高周波加熱コイル31に接触せずに十分に近づけるように案内する3つのガイドチップ34と、冷却液給水装置29からパイプ35を経由して、ジャーナル部2またはピン部3に冷却液を高周波加熱コイル31と対向する側から大量に噴出する2つのジャケット37とを有している。高周波加熱コイル装置26は、装置本体25に上下左右に遊動できるように支持されている。更に詳しくは、図4に示すように、半開放鞍型の高周波加熱コイル装置26がピン部3を跨いだ状態にあるとき、クランクシャフト1が軸心Oを中心に回転してピン部3が軸心回りを偏心運動しても、ピン部3を跨いだ状態のままですなわち高周波加熱コイル31がピン部3に十分に近接した状態のままで追随できるように、上下左右に遊動可能に装置本体25に支持されている。また、高周波加熱コイル装置26には、配置されたジャーナル部2又はピン部3の油穴開口部13、14、21、22等の位置を知るために、油穴開口部用センサを設けてもよい。高周波加熱コイル31の頭部すなわちワークピースとしてのピン部3に面する側には磁束集中材38(例えば珪素鋼板を積層したもの)が取付けられ、高周波加熱の効率を向上させている。なお、この半開放鞍型の高周波加熱コイル装置26は、複数のジャーナル部又はピン部を同時に焼入れできるように、クランクシャフトの軸方向に沿って複数(好ましくはジャーナル部又はピン部の数に等しいかそれ以上の数)、並設されており、各高周波加熱コイル装置31がそれぞれ対応する間隔でジャーナル部又はピン部に跨ぐように配置されている。
【0019】
上記の構成で成る高周波焼入れ装置23を用いて、クランクシャフト1を高周波焼入れする本発明の実施例について、説明する。例示として、図3に示す油穴15を有するピン部3の部分の高周波焼入れについて説明する。しかし、この部分に限らず、例えば、図2のピン部3でもよく、その他の部分、図2や図3のジャーナル部2の部分でも同様に高周波焼入れすることができる。
【0020】
図4において、クランクシャフト1が支持装置(図示せず)によって図4の紙面に垂直に貫通するように支持される。次に、高周波加熱コイル装置26が装置本体25から下降して、クランクシャフト1のピン部3を跨ぐように位置決めされる。図1のクランクシャフト1のようにピン部3が4個ある場合は、4つの高周波加熱コイル装置26が対応するピン部3にそれぞれ位置決めされる。各高周波加熱コイル装置26の3つのセラミック製のガイドチップ34が、ピン部3の外面に接触して高周波加熱コイル31とピン部3の間に適正なクリアランスを保つ。図4の例では、最上部のガイドチップ31がピン部3のトップ側部分7(図1(B)参照)に接している。左右のガイドチップ31のチップ間距離はピン部3の直径よりやや大きく設定されている。高周波加熱コイル31とピン部3の間のクリアランスは、例えば、1.0mm前後に設定されている。従って、ピン部3が回転しても高周波加熱コイル31に接触することはない。このように、高周波加熱コイル31とワークピースとなるピン部3のクリアランスを小さくすることが可能である点は、クランクシャフト1を回転しつつ高周波焼入れする本発明の利点であり、加熱効率のよい、質量の影響を受けにくい良好な焼入れが可能である。本発明の高周波焼入れ方法は、ワークピースであるピン部3(又はジャーナル部2)の表面と高周波加熱コイル31とは十分に小さいクリアランスとし、クランクシャフト1を回転させながら、高周波加熱コイルに高周波電力を供給して高周波加熱をおこない、所定時間加熱した後、冷却液を噴出させて焼入れを行う方法である。この方法によれば、クランクシャフトのピン部の如きクランクシャフトの軸心から離れて回転する部位であっても、高周波加熱コイルはガイドチップによってクランクシャフトのピン部の動きに追従して加熱・冷却ができるため焼入硬化層深さ、あるいは焼入硬化層範囲が均一になる。
【0021】
次に、ジャーナル部2の軸心Oを中心にクランクシャフト1を回転させると、ピン部3は、所定のストロークをもってジャーナル部2の軸心Oを中心として偏心回転を行う。このとき、高周波加熱コイル装置26は、装置本体25に遊動可能に支持されているので、3つのガイドチップ31でピン部3に接しながら上下・左右に揺動しつつピン部3の回転に追従することができる。この状態で、制御装置30の指令によって高周波加熱コイル31に高周波電源27から高周波電力が供給される。なお、高周波電源の周波数は、20kHz以下に設定された。これは、高周波加熱によるピン部又はジャーナル部の表面層の過熱を防止するためである。高周波電力の供給によって、高周波加熱コイル31から強力な高周波磁界が生成されて、ピン部3の表面に誘導電流が発生し、ピン部3の表面は前記の誘導電流によって赤熱する(加熱温度は、約950°Cと推定される)。ジャーナル部2の焼入れの場合には、クランクシャフト1の回転ではジャーナル部2は偏心運動しないので、高周波加熱コイル装置26は揺動することなくジャーナル部2に一定のクリアランスを保った状態でジャーナル部2の回転に追随する。
【0022】
本発明においては、上記の加熱ステップにおいて、ピン部3の油穴開口部22及びその近傍では、その焼入れ硬化層深さを増大するように、他の部分より高周波加熱コイル装置26の高周波加熱コイル31への電力量を増大させている。そして、所定の時間の加熱後、制御装置30は冷却液給水装置29を動作させて、パイプ35を介して高周波加熱コイル装置26に取付けられたジャケット37より冷却液を大量に噴射しピン部3を冷却させている。本発明の冷却ステップでは、ピン部3の油穴開口部22及びその近傍を、他の部分に先行して(すなわち最初に)、冷却液を通水することによって焼入硬化層とした。これによって、引張応力のかかる油穴開口部22の位置に、6mm以上から11mm以下の焼入硬化層が形成され、これによって圧縮残留応力が与えられクランクシャフトのねじり疲労強度が向上させた。
【0023】
以下、本発明の実施例の詳細について、図5以降の図面も参照しながら説明する。先ず、図5を用いて加熱ステップについて説明する。図5は、ジャーナル部2の軸心Oを中心に回転させた時のピン部3と高周波加熱コイル31の位置関係を示している。今、ピン部3が下死点位置にある位置を0度とする。図5は、0度の位置と、この位置から時計回りに回転した90度の位置と、更に回転した上死点すなわち180度の位置と、更に回転した270度の位置の4つの位置について、偏心回転するピン部3とそれに追従する高周波加熱コイル31の相対関係を示している。図5は、また、加熱の開始位置及び加熱のための電力供給の変化のタイミングも示している。
【0024】
本実施例では、下死点すなわち0度の位置にあるピン部3に高周波加熱コイル装置26をセッティングして高周波加熱コイル31をピン部3のバランス側部分7(図1(B)参照)に隣接するように配置した。図示のように、この位置では、ピン部3の油穴となる第2穿孔部18は水平な姿勢にあり、油穴開口部22は高周波加熱コイル31から離れた位置にある。なお、油穴開口部用センサがある場合、油穴開口部22の位置を確認することもできる。本実施例において、クランクシャフト1は、高周波加熱の対象となるピン部3が、下死点の位置からジャーナル部2の軸心Oを中心として時計方向に回転させた。回転速度は30rpmとした。すなわち、ピン部3は2秒で1回転する。最初の1回転は、高周波加熱コイル31がピン部3に接触(コイルタッチ)しないことを検出(確認)するための回転であり、高周波加熱コイル31には高周波電力は供給されず、コイルタッチを検出するための微弱な電流が流れているのみである。1回転して異常が検知されなければ(高周波加熱コイル31がピン部3に接触しなければ)、下死点位置で高周波加熱コイル31への高周波電力の供給が開始され、高周波加熱動作を開始する。
【0025】
開始時の高周波電源27からの供給電力は50kWとした。この開始位置では、ピン部3の油穴となる第2穿孔部18の油穴開口部22は、高周波加熱コイル31から離れた位置にある。クランクシャフト1が回転してピン部3の第2穿孔部18の油穴開口部22が高周波加熱コイル31に接近する60度の位置で、高周波加熱コイル31に供給する高周波電力を、50kWから57kWに増大した。この57kWの高周波電力の供給の範囲は90度の位置を越えて120度までにした。これによって、ピン部3の第2穿孔部18の一方の油穴開口部22及びその近傍は、0度から60度の回転によって加熱された部分より、焼入れ硬化層深さが増大する。前記の60度から120度までの範囲を(I)とする。次に、120度を越えた時点で供給高周波電力を、50kWに下げる。この50kWの低い電力は、180度を越えて240度の位置まで続けられる。図5において、120度から240度までの範囲を(II)とする。この範囲(II)では、ピン部3のトップ側部分6が高周波加熱され、油穴開口部22及びその近傍は加熱されない。ピン部3の回転が240度を越えると、再度、高周波加熱コイル31に供給する高周波電力を、50kWから57kWに増大した。57kWの高周波供給電力の範囲は270度の位置を越えて300度までにして、ピン部3の第2穿孔部18の他方の油穴開口部22及びその近傍の焼入れ硬化層深さを、120度から240度の回転によって加熱された部分より増大させた。240度から300度までの範囲を(III)とする。300度を越えた時点で、供給高周波電力を50kWに下げて、この低電力状態は、下死点すなわち0度を越えて次の60度の範囲まで続けられる。図5において、300度から60度の範囲を(0)とする。範囲(0)では、ピン部3のバランス側部分7が高周波加熱され、油穴開口部22及びその近傍は加熱されない。
【0026】
このように、高周波加熱コイル31へ供給する高周波電力を、油穴開口部22及びその近傍を高周波加熱する範囲(I)及び(II)では57kWとし、それ以外の範囲(III)及び(0)では50Kwとして供給電力を変化させ、範囲(I)及び(II)では電力を増大することによって、高周波加熱コイル31が隣接する位置にあるピン部3の油穴開口部22及びその近傍の焼入れ硬化層深さを他の部分より増大させた。この電力の変化(パワーリダクション)を所定回転(所定加熱時間)繰り返した。本実施例では、所定回転数を10回転として、回転速度が30rpmであるので、所定加熱時間を20秒とした。この加熱によって、ピン部3の油穴開口部22及びその近傍は、その焼入れ硬化層深さが他の部分より増大した。その後下死点位置(0度位置)で電力の供給を停止し、更に、クランクシャフト1の回転を続行しながら、一定時間後に冷却液の噴射を開始して冷却ステップへ進めた。
【0027】
次に冷却ステップについて、図6及び図7を参照して説明する。高周波加熱されたピン部3の表面は、油穴開口部22を含めて、冷却液給水装置29からパイプ35を経由してジャケット37から大量に噴出される冷却液によって急速に冷却される。図6はジャケット37から大量の冷却液が噴出して加熱されたピン部3の表面を冷却している様子を示している。本発明において、油穴開口部22及びその近傍は、他の部分に先行して、油穴開口部に所定深さの焼入れ硬化層を形成するように冷却液を給水して冷却される。本実施例において、上記説明のように、高周波加熱コイル31への電力の供給はピン部3が下死点(0度位置)にきたところで停止される。このときのピン部3の第2穿孔部18の姿勢は水平である。他方、ジャケット37は、図示のように高周波加熱コイル31に対向する側にあって、約45度の向きで上方に冷却液を噴出するように配置されている。いま、0度位置で冷却液を噴射させると、制御装置30からの冷却液給水装置への給水指令信号から実際にジャケット37から冷却液が噴出するまでの機械的な時間遅れ(タイムラグ)があり、30rpmで回転を続けているピン部3は、そのタイムラグによって、第2穿孔部18の油穴開口部22は冷却液の噴射されていない下死点位置方向を向いてしまい油穴開口部22に通水されず不完全焼入れとなってしまう。この様子が図7に示されている。図7(A)の加熱停止の位置では第2穿孔部18は水平になっているが、その時点で制御装置からの冷却液噴出開始信号を送ると前記のタイムラグによって第2穿孔部18は、図7(B)の垂直の姿勢になって油穴開口部22が真下を向いてジャケット31からの冷却液が第2穿孔部へ給水されないことが分かる。
【0028】
そこで、本実施例では、高周波加熱コイル31への電力供給停止の後、0.5秒の空冷時間後に冷却液を噴射させた。前記タイムラグに前記の0.5秒を加えると、ピン部3は、図7(B)の位置から更に回転して、図6の位置、すなわち第2穿孔部18の一方の油穴開口部22が一方のジャケット37に隣接し対面する位置となる。この位置で、冷却液がジャケット37から噴射されて、一方の油穴開口部22に最初の冷却液が噴射され、この冷却液は第2穿孔部18を通過してその油穴通路の表面部を冷却し、更に他方の側の油穴開口部22を冷却して焼入硬化層を形成する。本実施例では、冷却液としてユーコンクエンチャントIN(ナガセケムスベック社)を使用し、その濃度は7.0%であった。また、冷却液の温度は28℃、ジャケット37からの噴射量は90L/分、噴射時間(冷却時間)は25秒であった。なお、上記実施例において、他方のジャケット37からの冷却液の噴射は、その開始時においては、冷却液の量を少なくするかあるいは噴射を控え、その後上記の大量噴出を行うのが好ましい。
【0029】
ピン部3の第2穿孔部18の油穴開口部22に焼入硬化層を形成した結果を、図8に示す。図8は、ピン部3の第2穿孔部22の油穴開口部22の焼入硬化層39を図にしたものである。焼入硬化層39は、外表面側の有効硬化層41(図8では白く示す)と、その内側の中間層42とを有する。焼入硬化層39の内、重要なのは外表面側の有効硬化層41であり、鋼種によりJISで定められた硬さ以上の層となっている。この有効硬化層41は、油穴開口部22から第2穿孔部18の奥の側に沿って延びているのがわかる。図9は、図8の▲1▼、▲2▼の矢印に示すように、図10は、図8の▲3▼、▲4▼の矢印に示すように、第2穿孔部18の表面から0.5mm位置の深さの硬さを、油穴開口部22の表面から測定したもので、第2穿孔部18の表面の焼入硬化層の有効硬化層41の範囲を測定したデータである。図9及び図10から、明らかなように、有効硬化層硬さをHv450とすると、約10.5mmの焼入硬化層となっているのがわかる。すなわち、かかる簡単な方法で、油穴開口部に約10mmの焼入硬化層を得ることができた。
【0030】
このように、ピン部又はジャーナル部の外径のフラット部の焼入れと油穴開口部のフィレットR部の焼入れとを同時に行って、フラット部だけでなく引張応力のかかる油穴開口部にも焼入硬化層を形成し、しかも、油穴開口部の焼入硬化層を他のフラット部よりも深くするとともに層厚さ範囲を6mm以上11mm以下に制御するのも簡単にできる。これにより油穴開口部内の引張応力のかかる部位に圧縮残留応力が与えられるので潤滑油通路の開口部近傍の疲労強度が上がり、ねじり疲労強度の高い高疲労強度クランクシャフトとする事ができる。なお、焼入硬化層の層厚さを増大しすぎるとピン部又はジャーナル部に割れや曲がりを生じる惧れあるので好ましくない。
【0031】
前記したのとは別の実施の形態として、加熱ステップにおいて、高周波電源からの高周波加熱コイルへの高周波電力の供給を、断続して行う高周波焼入れ方法が考えられる。例えば、前記の実施例において、30rpmで回転しているピン部又はジャーナル部に対して、1回転毎(すなわち2秒毎)に高周波電力の供給を断続する。あるいは、複数回転毎に高周波電力の供給を断続する。すなわち、最初の1回転又は複数回転の間は高周波電力を供給し、次の1回転又は複数回転は高周波電力の供給を絶ち、更に次の1回転又は複数回転は高周波電力を供給するというやり方で、高周波電力の供給を交互に断続する。このような電力の供給によって、油穴開口部及びその近傍だけでなく、他の部分も焼入硬化層の厚さが増大するが、これによっても、ねじり疲労強度の高いクランクシャフトを期待できる。更に別の形態として、ピン部又はジャーナル部の1回転の間を半サイクルに分けて、前の半サイクルでは高周波電力を高周波加熱コイルに供給し、後の半サイクルでは高周波電力を遮断することも考えられる。更に、例えば、前記実施例において示した範囲(I)及び(III)において高周波電力を高周波加熱コイルに供給し、範囲(0)及び(II)において電力を遮断するようにしてもよい。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、耐摩耗性を目的としたフラット焼入れ又はフィレットR部の耐疲労強度を目的としたフィレットR焼入れを、高周波焼入れによって行うことによって、ピン部やジャーナル部の、引張応力のかかる油穴開口部に、他のフラット部の焼入硬化層より厚い焼入硬化層を形成出来る。これにより油穴開口部内の引張応力のかかる部位に圧縮残留応力が与えられるので潤滑油通路の開口部近傍の疲労強度が上がり、ねじり疲労強度の高い高疲労強度クランクシャフトとする事ができる。従って、本発明によれば、熱処理工程を複雑にすることなく、低コストで、高周波焼入れによって油穴開口部に厚さを増大した焼入硬化層を形成することができ、疲労強度の高い、特にねじり疲労強度の高いクランクシャフトを得ることができる。本発明の高周波焼入れでは、レ一ザやショットピーニング等の設備は必要なく経済的で生産コストの低減も可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 クランクシャフトを示す図であり、(A)はクランクシャフトの斜視図、(B)はクランクシャフトの正面図である。
【図2】 クランクシャフトの油穴の形態を示すクランクシャフトの部分破断斜視図である。
【図3】 図2とは別の形態の、クランクシャフトの油穴の形態を示すクランクシャフトの部分破断斜視図である。
【図4】 本発明に係る高周波焼入れ装置の構成図である。
【図5】 本発明に係る加熱ステップを説明する図であり、回転するピン部と高周波加熱コイルとの関係を、0度、90度、180度、270度で図示するともに、電力の供給のタイミングを示す。
【図6】 本発明に係る冷却ステップを説明する図であり、冷却ステップの開始時を示している。
【図7】 本発明に係る冷却ステップを説明する図であり、(A)は加熱ステップの停止時のピン部の回転位置を示す図、(B)は不都合な冷却の開始時を示すピン部の回転位置を示す図である。
【図8】 本発明の高周波焼入れ方法によって形成されたピン部の油穴の油穴開口部の焼入硬化層の断面図である。
【図9】 本発明によって形成したピン部油穴の油穴開口部の焼入硬化層の範囲を、図8の▲1▼及び▲2▼の矢印から測定したグラフである。
【図10】 本発明によって形成したピン部油穴の油穴開口部の焼入硬化層の範囲を、図8の▲3▼及び▲4▼の矢印から測定したグラフである。
【符号の説明】
1 クランクシャフト
2 ジャーナル部
3 ピン部
5 バランスウエイト
6 ピン部のウエイト側部分
7 ピン部のトップ側部分
9 油穴(潤滑油通路)
10 第1穿孔部
11 第2穿孔部
13、14 油穴開口部
15 油穴
17 第1穿孔部
18 第2穿孔部
19 第3穿孔部
21、22 油穴開口部
23 高周波焼入れ装置
25 装置本体
26 高周波加熱コイル装置
27 高周波電源
29 冷却液給水装置
30 制御装置
31 高周波加熱コイル
33 ハウジング
34 ガイドチップ
35 パイプ
37 ジャケット

Claims (9)

  1. ジャーナル部又はピン部に油穴開口部を有するクランクシャフトの高周波焼入れ方法において、
    半開放鞍型の高周波加熱コイル装置を、クランクシャフトのジャーナル部又はピン部を跨ぐように配置するステップと、
    前記クランクシャフトの軸心を中心に回転させ、且つこの回転中に前記高周波加熱コイル装置に高周波電力を供給して前記ジャーナル部又はピン部を加熱する加熱ステップと、
    加熱した前記ジャーナル部又はピン部に冷却液を給水して急速に冷却する冷却ステップとから成り、
    前記半開放鞍型の高周波加熱コイル装置は、前記クランクシャフトのジャーナル部又はピン部を跨いだ状態で該高周波加熱コイル装置の高周波加熱コイルを前記ジャーナル部又はピン部に近接させるように配置され、該高周波加熱コイル装置は、前記クランクシャフトが前記軸心回りの回転をしても、前記のジャーナル部又はピン部を跨いだ状態のままで前記高周波加熱コイルが前記ジャーナル部又はピン部に近接した状態で追随できるように上下左右に遊動可能に固定の装置本体に対して支持されており、
    前記加熱ステップにおいて、前記高周波加熱コイル装置は、前記クランクシャフトが前記軸心回りの回転をしても、前記軸心回りに回転することなく前記高周波加熱コイルが前記ジャーナル部又はピン部に近接した状態で前記のジャーナル部又はピン部を跨いだ状態のままに維持され続けており、
    前記加熱ステップにおいて、前記ジャーナル部又はピン部の前記油穴開口部及びその近傍では、その焼入れ硬化層深さを増大するように、他の部分より前記高周波加熱コイル装置への通電量を増大させている、
    ことを特徴とするクランクシャフトの高周波焼入れ方法。
  2. 請求項1に記載の方法において、前記冷却ステップでは、前記油穴開口部及びその近傍を、他の部分に先行して、該油穴開口部に所定深さの焼入れ硬化層を形成するように前記冷却液を給水して冷却することを特徴とする方法。
  3. 請求項2に記載の方法において、前記高周波加熱コイル装置への高周波電力の周波数は20kHz以下であることを特徴とする方法。
  4. 請求項1に記載の方法において、クランクシャフトの前記ジャーナル部及びピン部の表面に、高周波焼入れによってフラット焼入れ又はフィレットR焼入れを行い、前記ジャーナル部あるいはピン部の油穴開口部の高周波焼入れによる焼入硬化層範囲を6mm以上11mm以下としたことを特徴とする方法。
  5. ジャーナル部又はピン部に油穴開口部を有するクランクシャフトの高周波焼入れ装置において、
    クランクシャフトのジャーナル部又はピン部を跨ぐ半開放鞍型形状に形成されており、前記ピン部を跨いだ状態で該ピン部の偏心運動に追随できるように遊動可能に装置本体に支持された半開放鞍型の高周波加熱コイル装置と、
    前記クランクシャフトを、前記半開放鞍型の高周波加熱コイル装置が前記ジャーナル部又はピン部を跨ぐ位置に支持する手段と、
    前記支持されたクランクシャフトを、その軸心を中心に回転させる手段と、
    前記高周波加熱コイル装置に高周波電力を供給する高周波電源と、
    加熱した前記ジャーナル部又はピン部に冷却液を給水して急速に冷却する冷却液給水手段とを備え
    前記半開放鞍型の高周波高周波加熱コイル装置は、前記クランクシャフトのジャーナル部又はピン部を跨いだ状態で該高周波加熱コイル装置の高周波加熱コイルを前記ジャーナル部又はピン部に近接させるように配置され、該高周波加熱コイル装置は、前記クランクシャフトが前記軸心回りの回転をしても、前記のジャーナル部又はピン部を跨いだ状態のままで前記高周波加熱コイルが前記ジャーナル部又はピン部に近接した状態で追随できるように上下左右に遊動可能に固定の装置本体に対して支持されており、
    前記高周波加熱コイル装置は、前記クランクシャフトが前記軸心回りの回転をしても、 前記軸心回りに回転することなく、前記高周波加熱コイルが前記ジャーナル部又はピン部に近接した状態で前記のジャーナル部又はピン部を跨いだ状態のままに維持され続けており、
    更に、前記ジャーナル部又はピン部の前記油穴開口部及びその近傍では、その焼入れ硬化層深さを増大するように、他の部分より前記高周波加熱コイル装置への通電量を増大させる制御手段とから成る
    ことを特徴とするクランクシャフトの高周波焼入れ装置。
  6. 請求項5に記載の装置において、前記制御手段は、前記油穴開口部及びその近傍に、他の部分に先行して、前記油穴開口部に所定深さの焼入れ硬化層を形成するように前記冷却液給水手段を作動させて冷却液を給水することを特徴とする装置。
  7. 請求項6に記載の装置において、前記高周波加熱コイル装置に供給する電力の周波数は20kHz以下であることを特徴とする装置。
  8. 請求項5に記載の装置において、前記制御手段は、回転するクランクシャフトのピン部の上死点付近及び下死点付近において、前記高周波加熱コイル装置への通電量を減少して前記油穴開口部以外の部分の加熱量を小さくするとともに前記上死点と前記下死点の中間位置において、前記高周波加熱コイル装置への通電量を増大して前記油穴開口部の部分の加熱量を大きくするよう、前記高周波電源と前記高周波加熱コイル装置を制御することを特徴とする装置。
  9. 請求項5に記載の装置において、複数の前記半開放鞍型の高周波加熱コイル装置が、クランクシャフトの軸方向に沿って並設されており、各高周波加熱コイル装置がそれぞれ対応する前記ジャーナル部又はピン部に跨ぐように配置されて高周波焼入れを行うことを特徴とする装置。
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