JP3728701B2 - 粘着性に優れたプリプレグ - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、粘着性に優れたプリプレグに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
強化繊維とマトリックス樹脂とからなるプリプレグを中間基材とする繊維強化複合材料は、特にその機械特性が優れているために、ゴルフクラブ、テニスラケット、釣り竿などのスポーツ用途をはじめ、航空機や宇宙往環機の構造材料といった最先端の分野に至る幅広い用途に適用されてきている。
【0003】
このような繊維強化複合材料は、積層工程において中間基材であるプリプレグを複数枚積み重ねた後に、成形工程でマトリックス樹脂を加熱硬化させることによって作製することができる。
【0004】
この時、強化繊維が一定方向に正確に引き揃えられ、かつボイドのない緻密な成形体を得るためには、プリプレグが適度の粘着性を示し、良好なハンドリング性能を有していることが望まれる。
【0005】
繊維強化複合材料を作製するために用いられるプリプレグは、ガラス繊維、炭素繊維あるいは有機繊維などの少なくとも1種の強化繊維に、エポキシ樹脂に代表される熱硬化性樹脂またはポリイミド、ポリエーテルスルホンに代表される熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂として含浸することによって得ることができる。この際、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を単独でマトリックス樹脂とする場合には、一般に熱硬化性樹脂自身が本来優れた粘着性を有しているために、プリプレグに粘着性を付与することができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、マトリックス樹脂として熱可塑性樹脂を単独で用いる場合やエポキシ樹脂に熱可塑性樹脂を配合する場合には、マトリックス樹脂の粘着性が大幅に減少してしまうために、得られたプリプレグの粘着性も著しく損われてしまう。
【0007】
そこで、プリプレグの粘着性を上げるために、マトリックス樹脂中に粘着剤をブレンドすることによってマトリックス樹脂自身の粘着性を改善する方法も考えられる。
【0008】
しかし、この方法によれば、所望の粘着性を得るにはマトリックス樹脂中に多量の粘着剤をブレンドすることが必要になり、複合材料とした時に機械物性の著しい低下を招くことが予想される。
【0009】
また、複合材料をより軽量化するために、プリプレグ中の繊維含有率を大きくすることがしばしば要請されるが、この場合には、マトリックス樹脂の粘着性が優れていてもマトリックス樹脂の含有量が低下し、プリプレグの粘着性が損われる傾向となり、改善が望まれていた。
【0010】
さらに、用いる強化繊維に撚りがかかっている場合には、強化繊維に解撚方向に復元力が働くために、マトリックス樹脂を強化繊維に含浸した後に、経時的にマトリックス樹脂がプリプレグの内部に潜り込むという現象がみられる。そのために、プリプレグの表面部分のマトリックス樹脂量が減少する結果、マトリックス樹脂の粘着性が優れていてもプリプレグの粘着性が低下してしまうことになる。
【0011】
そこで、本発明は、上記欠点がなく、マトリックス樹脂の種類、強化繊維の繊維含有率、強化繊維の撚の有無にかかわらず優れた粘着性を有するプリプレグを提供することを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本願発明は上記課題を解決するために次の構成を有する。すなわち、
炭素繊維とマトリックス樹脂を含有してなる繊維含有量70重量%以上のプリプレグであって、マトリックス樹脂がエポキシ樹脂からなり、かつ、離型紙若しくは離型フィルムが貼付されている側の反対面の表層部分に0.5〜5.0g/m2のエポキシ樹脂とニトリルゴムからなる粘着剤が塗布されてなることを特徴とする粘着性に優れたプリプレグである。
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
(強化繊維の説明)
本発明の構成要素の1つである強化繊維としては、一般に高性能強化繊維として用いられる耐熱性及び引張強度の良好な炭素繊維を用いることができる。これらの強化繊維は、長繊維、単繊維の何れであっても構わない。またこれらの繊維を2種以上混合してもかまわない。
【0014】
強化繊維の形状や配列については限定されず、たとえば、単一方向、ランダム方向、シート状、マット状、織物(クロス)状、組み紐状などいずれの形状・配列でも使用可能である。
【0015】
(マトリックス樹脂の説明)
本発明の構成要素の1つであるマトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂及びビニルエステル樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂を混合して用いてもかまわない。これらのエポキシ樹脂やビニルエステル樹脂は、一般に硬化剤や硬化触媒と組み合わせて用いられる。
【0016】
エポキシ樹脂としては、得られる複合材料の物性を向上させる観点からアミン類、フェノール類、炭素炭素二重結合を有する化合物を前駆体とするエポキシ樹脂が好ましい。
【0017】
具体的には、アミン類を前駆体とするエポキシ樹脂として、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、トリグリシジル−m−アミノフェノール、トリグリシジルアミノクレゾールの各種異性体が挙げられる。
【0018】
フェノール類を前駆体とするエポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0019】
炭素炭素二重結合を有する化合物を前駆体とするエポキシ樹脂としては、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0020】
ビニルエステル樹脂としては、エポキシ樹脂と同様の観点からエピビス型、ノボラック型、ウレタン含有型、カルボキシ基含有型などが好ましく用いられる。
ビニルエステル樹脂としては、同様の観点からエピビス型、ノボラック型、ウレタン含有型、カルボキシ基含有型などが好ましく用いられる。また、これらのエポキシ樹脂やビニルエステル樹脂は、単独で用いてもよいし、適宜配合して用いてもよい。
【0021】
エポキシ樹脂は、エポキシ硬化剤と組み合わせて好ましく用いられる。エポキシ硬化剤はエポキシ基と反応し得る活性基を有する化合物であればよく、具体的には、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、3,3′−ジアミノジフェニルスルホン、ジシアンジアミド、三沸化ホウ素錯体、ポリフェノール化合物などを使用することが出来る。また、これらの硬化剤に、イミダゾール類や尿素化合物などを硬化促進剤として併用することも出来る。
【0022】
ビニルエステル樹脂は、単独でも硬化し得るが、好ましくは、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイドなどの有機過酸化物を触媒として硬化せしめる。
【0023】
本発明において、マトリックス樹脂としてエポキシ樹脂若しくはビニルエステル樹脂を用いるに際し、更に、マレイミド樹脂、アセチレン末端を有する樹脂、ナジック酸末端を有する樹脂、シアン酸エステル末端を有する樹脂、ビニル末端を有する樹脂、アリル末端を有する樹脂が好ましく併用される。これらは、適宜、エポキシ樹脂や、その他の樹脂と混合してもよい。また、反応性希釈剤を用いたり、熱可塑性樹脂やエラストマーなどの改質剤を混合して用いることができる。
【0024】
マレイミド樹脂は、末端にマレイミド基を平均2個以上含む化合物である。このマレイミド樹脂は、単独で用いることも出来るが、ジアリルビスフェノールAなどの反応性希釈剤と組み合わせて用いることによって、プリプレグに好適な樹脂とすることが出来る。シアン酸エステル末端を有する樹脂は、ビスフェノールAに代表される多価フェノールのシアン酸エステル化合物が好適である。シアン酸エステル樹脂は、特に、ビスマレイミド樹脂と組み合わせることにより、プリプレグに適した樹脂とすることが出来る。
【0025】
本発明のマトリックス樹脂として、上記した熱硬化性樹脂を用いる際に、熱可塑性樹脂を混合して用いることもできる。熱可塑性樹脂としては、主鎖に炭素炭素結合、アミド結合、イミド結合、エステル結合、エーテル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、尿素結合、チオエーテル結合、スルホン結合、イミダゾール結合、カルボニル結合から選ばれる結合を有するものが本発明に好適である。
【0027】
(粘着剤の説明)
粘着剤としては、ジエンゴム系、アクリルゴム系、シリコーンゴム系などの粘着剤を用いることができるが、本発明においては、後述の理由からジエン系ゴム粘着剤に熱硬化性樹脂を配合して用いることが好ましい。
【0028】
ジエンゴム系粘着剤としては、ポリイソプレンゴム、SBRゴム、カルボキシル変性SBRゴム、SISゴム、SBSゴム、SEBSゴム、ブチルゴム、ポリイソブチレゴムンなどからなる粘着剤が挙げられる。
【0029】
アクリルゴム系粘着剤としては、アクリル酸やメタクリル酸のアルキルエステルポリマーからなる粘着剤が挙げられる。かかるポリマーに粘着性を発現させるためには、エステル基として長鎖アルキルエステル基が適している。さらに、ガラス転移温度を容易に−50℃以下として十分な粘着性を発現させる観点からは、アルキル基の炭素数を2から10とすれば好適である。
【0030】
もちろん、最終的に得られるアクリルゴム系ポリマーのガラス転移温度が、−50℃以下となるのであれば、アルキル基の炭素数が2〜10の範囲以外のアクリルモノマーを適宜共重合することは差し支えない。
【0031】
これらのアクリルゴム系粘着剤は、その粘着性能を向上させるために、アクリルゴムポリマーをカルボキシル基、水酸基、グリシジル基、アミノ基などで変性することも好ましく行なわれる。
【0032】
シリコーン系粘着剤としては、たとえば、東レ・ダウコーニングシリコーン(株)製の“SH4280”などが好ましく用いられる。
【0033】
(粘着性改善方法の説明)
これらのジエン系ゴム粘着剤は、複合材料の力学物性や耐熱性の低下を抑制するため、熱硬化性樹脂さらには硬化剤、硬化触媒を組み合わせた熱硬化性樹脂を配合して用いることが好ましい。
【0034】
プリプレグの粘着性、粘着剤の塗工性及び該プリプレグから作製される複合材料の力学物性保持の観点から、50重量%以上の熱硬化性樹脂、好ましくは70〜90重量%の熱硬化性樹脂をジエン系ゴム粘着剤と配合して用いることが好ましい。
【0035】
熱硬化性樹脂としては、マトリックス樹脂組成中の樹脂を用いることが複合材料とした時の力学物性保持の観点から好ましく、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂が用いられる。
【0036】
具体的には、アミン類を前駆体とするエポキシ樹脂として、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、トリグリシジル−m−アミノフェノール、トリグリシジルアミノクレゾールの各種異性体が挙げられる。
【0037】
フェノール類を前駆体とするエポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0038】
炭素炭素二重結合を有する化合物を前駆体とするエポキシ樹脂としては、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0039】
ビニルエステル樹脂としては、エポキシ樹脂と同様の観点からエピビス型、ノボラック型、ウレタン含有型、カルボキシ基含有型などが好ましく用いられる。本発明のプリプレグにおいて、粘着剤はプリプレグ表層部分に0.5〜5.0g/m2 の範囲、好ましくは1.0〜3.0g/m2 の範囲で塗布されるものである。粘着剤の塗布量が0.5g/m2 より少ないと、プリプレグに充分な粘着性を付与することが出来ない。一方、粘着剤の量が5.0g/m2 より多い場合には、そのプリプレグを用いて得られた複合材料の層間剪断強度などの機械物性が低下する。なお、プリプレグ表層部分とは、通常、離型紙または離型フィルムが貼付されている側の反対面の表層部分をいう。
【0040】
これらの粘着剤の塗布方法としては、直接塗布法、間接塗布法がある。直接塗布法は、粘着剤塗布時にプリプレグ表面へ熱、溶剤等による悪影響を及ぼすおそれがある。これに対し、粘着剤を離型紙上に塗布して得た粘着剤シートの上にプリプレグを置き、加圧によりプリプレグ上に粘着剤を転写する間接塗布法は、粘着剤塗布時にプリプレグ表面への悪影響が排除できるために適している。
【0041】
間接塗布法には、粘着剤を溶剤に溶解した後に塗布する溶剤法、アクリル酸エステルのごとき乳化重合で得られるポリマ−エマルジョンを塗布するエマルジョン法、粘着剤を加熱溶融して塗布するホットメルト法などが挙げられ、いずれの方法を用いてもプリプレグ表面に粘着性を付与する有効な方法として用いることが出来る。
【0042】
また、粘着剤の塗布形態は、膜状、ストライプ状(スジ状)、ドット状、不織布状のいずれの形態であっても構わない。しかしながら、ホットメルト法での粘着剤の塗布を考えた場合には、塗布量制御の観点からストライプ状(スジ状)、ドット状、不織布状塗布が適している。
【0043】
粘着剤の塗布を行うプリプレグとしては、複合材料の軽量化を目的に従来のプリプレグ中の繊維含有量をより大きくした繊維含有量70重量%以上のプリプレグ、すなわちマトリックス樹脂の樹脂含有量低下に伴い粘着性が損なわれたプリプレグへの適用が好適である。
【0044】
本発明のように、粘着剤をプリプレグ表層に塗布する手段を採れば、プリプレグ表面に必要最少量の粘着剤を塗布することが可能であるために、得られる複合材料の機械物性や耐熱性の低下を最低限にとどめることができる。また、粘着剤はプリプレグ表面に存在する強化繊維上に多く点在すると考えられ、かかる状態で存在する粘着剤は、強化繊維に撚りがかかり、経時的にマトリックス樹脂がプリプレグ内に沈み込みがちな場合においても多くの粘着剤がプリプレグ表層に保持される。このために、プリプレグ表層部分の粘着性が長く持続することになる。
【0045】
【実施例】
(比較例1)
東レ(株)製エポキシ樹脂“#2500”を東レ(株)製炭素繊維“トレカ”T300を一方向に引き揃えたシートに含浸して得られたプリプレグ(繊維重量含有率:70%)を10cm角にカットし、これに住友3M(株)製アクリル系ゴム粘着剤スプレー“55”タイプを20cmの高さから2秒間噴霧した。室温で10分間放置した後に塗布量を計ったところ、1.85g/m2のアクリルゴム系粘着剤がプリプレグ表層に塗布されていた。
【0046】
このプリプレグを23℃,RH40%の雰囲気中に一定時間放置した後、直径10mmのスチール製円柱に、繊維引揃え方向が円柱長手方向に対して45°の角度になるように巻き付けた。これらを23℃、RH40%の雰囲気中に放置して、一定時間経過後のプリプレグの巻き付き状況を観察した。その結果、円柱巻き付け24時間後においても、良好な巻き付け性能を有していた。この傾向は、プリプレグを64時間放置した後に行なっても同様にその効果を持続していることが判った。結果を表1に示す。
【0047】
【表1】
また、このプリプレグを1方向に積層した後に、オートクレーブ中で130℃,2時間処理して硬化させた。得られた複合材料を、煮沸水中に45時間浸漬して吸水処理した後、室温で層間剪断強度(ILSS)の測定を行なった。得られたILSSの値は4.1kgf/mm2 となった。これは、後述する粘着剤を塗布しないプリプレグ(比較例)についてILSSを測定した値の85%であり、良好な保持率を示していた。結果を表2に示す。
【0048】
【表2】
(比較例2)
比較例1で用いたと同じ10cm角のプリプレグに、東レ・ダウコーニングシリコーン系ゴム粘着剤“SH4280”のトルエン溶液を塗布した。80℃、3分乾燥した後に塗布量を計ったところ、1.81g/m2のシリコーン系ゴム粘着剤がプリプレグ表層に塗布されていた。
【0049】
このプリプレグを23℃、RH40%の雰囲気中に一定時間放置した後、直径10mmのスチール製円柱に繊維引揃え方向が円柱長手方向に対して45°の角度になるように巻き付けた。これらを23℃、RH40%の雰囲気中に放置して、一定時間経過後のプリプレグの巻き付き状況を観察した。その結果、円柱巻き付け24時間後においても、良好な巻き付け性能を有していた。この傾向は、プリプレグを64時間放置した後においても同様でその効果を持続していることが判った。更に、比較例1のアクリルゴム系粘着剤を用いた場合と比較して、より優れた巻き付き性能を有していることも判った。結果を表3に示す。
【0050】
【表3】
また、比較例1と同様に、層間剪断強度(ILSS)の測定を行った。得られたILSSの値は4.0kgf/mm2となった。これは、粘着剤を塗布しないプリプレグのILSS測定値の83%であり、比較例1と同様、良好な保持率を示していた。結果を表2に併せて示す。
【0051】
(比較例3)
比較例1で用いたと同じプリプレグに何ら接着剤を塗布することなく、23℃,RH40%の雰囲気中に一定時間放置した後、直径10mmのスチール製円柱に、繊維方向が円柱長手方向に対して45°の角度になるように巻き付けた。これらを23℃、RH40%の雰囲気中に放置して、一定時間経過後のプリプレグの巻き付き状況を観察した。粘着剤を塗布した場合に比べると、プリプレグの巻き付け性は極端に劣り、円柱に巻き付けることは全く不可能であった。
【0052】
また、層間剪断強度(ILSS)の測定を行なった結果を表2に併せて示す。
(実施例1)
ニトリルゴム“Nipol1072(日本ゼオン(株)製)”50重量部、エポキシ樹脂“Ep828(油化シェル(株)製)”50重量部に硬化剤ジシアンジアミド“DICY”、硬化助剤3,4−ジクロロフェニル−1,1−ジメチルウレア“DCMU”を添加した濃度10wt%のメチルエチルケトン溶液を離型紙上にバーコーターNo.22(江藤器械(株)製)を用いて塗布し、50℃で10分間熱風乾燥器で乾燥を行い、熱硬化性樹脂配合ジエン系ゴム粘着剤シートを得た。
【0053】
エポキシ樹脂“#2500(東レ(株)製)”を炭素繊維“M46J(東レ(株)製)”に含浸して得られたプリプレグ(繊維重量含有率76%)を10cm角にカットし、これを先に作製した熱硬化性樹脂配合ジエン系ゴム粘着剤シート上に載せ、さらにその上に離型紙を載せてニップロールを通し、プリプレグ上への熱硬化性樹脂配合ジエン系ゴム粘着剤を転写した。転写後のプリプレグ重量を計ったところ、35mgの熱硬化性樹脂配合ジエン系ゴム粘着剤がプリプレグ表面に塗布されていた。
【0054】
このプリプレグを25℃、相対湿度50%の雰囲気中に一定時間放置した後に、プリプレグをアルミ板に両面テープを用いて貼付け、剥離強度の測定を行ったところ、熱硬化性樹脂配合ジエン系ゴム粘着剤の塗布を行わなかったプリプレグと比較して、一定時間後の剥離強度が大きく改善されていた。結果を表4に示す。
【0055】
【表4】
また、このプリプレグを一方向に積層した後に、オートクレーブ中で130℃×2時間硬化させた。得られた複合材料について、室温で層間剪断強度(ILSS)、曲げ強度、曲げ弾性率を測定した。得られたILSSの値は7.7kgf/mm2 であった。これは、粘着剤を塗布しない場合のILSSの値8.3kgf/mm2 と比較して良好な保持率を示した。結果を表5に示す。
【0056】
【表5】
(実施例2)
ニトリルゴム“Nipol1072(日本ゼオン(株)製)”50重量部、エポキシ樹脂“Ep828(油化シェル(株)製)”50重量部を混合した濃度10wt%のメチルエチルケトン溶液から実施例1と同様な操作で熱硬化性樹脂配合ジエン系ゴム粘着剤シートを得た。
【0057】
実施例1で用いたものと同じ10cm角のプリプレグに、熱硬化性樹脂配合ジエン系ゴム粘着剤を実施例1と同様な操作で転写した。転写後のプリプレグ重量を計ったところ、35mgの熱硬化性樹脂配合ジエン系ゴム粘着剤がプリプレグ表面に塗布されていた。
【0058】
このプリプレグを25℃、相対湿度50%の雰囲気中に一定時間放置した後に、実施例1と同様に剥離強度の測定を行った結果、実施例1で求められた剥離強度の値に若干劣るものの、熱硬化性樹脂配合ジエン系ゴムの塗布を行わなかったプリプレグと比較すると、一定時間後の剥離強度が大きく改善された。結果を表4に併せて示す。
【0059】
また、このプリプレグを一方向に積層した後に、オートクレーブ中で130℃×2時間硬化させた。得られた複合材料について、室温で層間剪断強度(ILSS)、曲げ強度、曲げ弾性率を測定した。得られたILSSの値は7.2kgf/mm2 であり良好な保持率を示した。結果を表5に併せて示す。
【0060】
(比較例4)
エポキシ樹脂“#2500(東レ(株)製)”を炭素繊維“M46J(東レ(株)製)”に含浸して得られたプリプレグ(繊維重量含有率は、76%)のカバーフィルムを剥離し、25℃、相対湿度50%の雰囲気中に一定時間放置した後に、そのプリプレグの剥離強度を一定時間経過後測定した。カバーフィルム剥離後から剥離強度は経時的に減少し、熱硬化性樹脂配合ジエン系ゴム粘着剤を塗布した系に比べると、プリプレグ表面の剥離強度は極端に劣っていた。結果を表4に併せて示す。
【0061】
また、実施例1と同様に、層間剪断強度(ILSS)、曲げ強度、曲げ弾性率の測定を行った。結果を表5に併せて示す。
【0062】
【発明の効果】
本発明によれば、プリプレグの粘着性が増大するので、プリプレグのハンドリング性が著しく改善でき、得られたプリプレグの粘着性は時間を経ても変化しにくい。また、粘着剤を塗布しても、得られる複合材料の層間剪断強度の低下の度合いは小さく、機械物性に与える影響は少ない。また、マトリックス樹脂の種類、強化繊維の撚の有無にかかわらず粘着性のプリプレグを得ることが出来る。
【産業上の利用分野】
本発明は、粘着性に優れたプリプレグに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
強化繊維とマトリックス樹脂とからなるプリプレグを中間基材とする繊維強化複合材料は、特にその機械特性が優れているために、ゴルフクラブ、テニスラケット、釣り竿などのスポーツ用途をはじめ、航空機や宇宙往環機の構造材料といった最先端の分野に至る幅広い用途に適用されてきている。
【0003】
このような繊維強化複合材料は、積層工程において中間基材であるプリプレグを複数枚積み重ねた後に、成形工程でマトリックス樹脂を加熱硬化させることによって作製することができる。
【0004】
この時、強化繊維が一定方向に正確に引き揃えられ、かつボイドのない緻密な成形体を得るためには、プリプレグが適度の粘着性を示し、良好なハンドリング性能を有していることが望まれる。
【0005】
繊維強化複合材料を作製するために用いられるプリプレグは、ガラス繊維、炭素繊維あるいは有機繊維などの少なくとも1種の強化繊維に、エポキシ樹脂に代表される熱硬化性樹脂またはポリイミド、ポリエーテルスルホンに代表される熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂として含浸することによって得ることができる。この際、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を単独でマトリックス樹脂とする場合には、一般に熱硬化性樹脂自身が本来優れた粘着性を有しているために、プリプレグに粘着性を付与することができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、マトリックス樹脂として熱可塑性樹脂を単独で用いる場合やエポキシ樹脂に熱可塑性樹脂を配合する場合には、マトリックス樹脂の粘着性が大幅に減少してしまうために、得られたプリプレグの粘着性も著しく損われてしまう。
【0007】
そこで、プリプレグの粘着性を上げるために、マトリックス樹脂中に粘着剤をブレンドすることによってマトリックス樹脂自身の粘着性を改善する方法も考えられる。
【0008】
しかし、この方法によれば、所望の粘着性を得るにはマトリックス樹脂中に多量の粘着剤をブレンドすることが必要になり、複合材料とした時に機械物性の著しい低下を招くことが予想される。
【0009】
また、複合材料をより軽量化するために、プリプレグ中の繊維含有率を大きくすることがしばしば要請されるが、この場合には、マトリックス樹脂の粘着性が優れていてもマトリックス樹脂の含有量が低下し、プリプレグの粘着性が損われる傾向となり、改善が望まれていた。
【0010】
さらに、用いる強化繊維に撚りがかかっている場合には、強化繊維に解撚方向に復元力が働くために、マトリックス樹脂を強化繊維に含浸した後に、経時的にマトリックス樹脂がプリプレグの内部に潜り込むという現象がみられる。そのために、プリプレグの表面部分のマトリックス樹脂量が減少する結果、マトリックス樹脂の粘着性が優れていてもプリプレグの粘着性が低下してしまうことになる。
【0011】
そこで、本発明は、上記欠点がなく、マトリックス樹脂の種類、強化繊維の繊維含有率、強化繊維の撚の有無にかかわらず優れた粘着性を有するプリプレグを提供することを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本願発明は上記課題を解決するために次の構成を有する。すなわち、
炭素繊維とマトリックス樹脂を含有してなる繊維含有量70重量%以上のプリプレグであって、マトリックス樹脂がエポキシ樹脂からなり、かつ、離型紙若しくは離型フィルムが貼付されている側の反対面の表層部分に0.5〜5.0g/m2のエポキシ樹脂とニトリルゴムからなる粘着剤が塗布されてなることを特徴とする粘着性に優れたプリプレグである。
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
(強化繊維の説明)
本発明の構成要素の1つである強化繊維としては、一般に高性能強化繊維として用いられる耐熱性及び引張強度の良好な炭素繊維を用いることができる。これらの強化繊維は、長繊維、単繊維の何れであっても構わない。またこれらの繊維を2種以上混合してもかまわない。
【0014】
強化繊維の形状や配列については限定されず、たとえば、単一方向、ランダム方向、シート状、マット状、織物(クロス)状、組み紐状などいずれの形状・配列でも使用可能である。
【0015】
(マトリックス樹脂の説明)
本発明の構成要素の1つであるマトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂及びビニルエステル樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂を混合して用いてもかまわない。これらのエポキシ樹脂やビニルエステル樹脂は、一般に硬化剤や硬化触媒と組み合わせて用いられる。
【0016】
エポキシ樹脂としては、得られる複合材料の物性を向上させる観点からアミン類、フェノール類、炭素炭素二重結合を有する化合物を前駆体とするエポキシ樹脂が好ましい。
【0017】
具体的には、アミン類を前駆体とするエポキシ樹脂として、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、トリグリシジル−m−アミノフェノール、トリグリシジルアミノクレゾールの各種異性体が挙げられる。
【0018】
フェノール類を前駆体とするエポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0019】
炭素炭素二重結合を有する化合物を前駆体とするエポキシ樹脂としては、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0020】
ビニルエステル樹脂としては、エポキシ樹脂と同様の観点からエピビス型、ノボラック型、ウレタン含有型、カルボキシ基含有型などが好ましく用いられる。
ビニルエステル樹脂としては、同様の観点からエピビス型、ノボラック型、ウレタン含有型、カルボキシ基含有型などが好ましく用いられる。また、これらのエポキシ樹脂やビニルエステル樹脂は、単独で用いてもよいし、適宜配合して用いてもよい。
【0021】
エポキシ樹脂は、エポキシ硬化剤と組み合わせて好ましく用いられる。エポキシ硬化剤はエポキシ基と反応し得る活性基を有する化合物であればよく、具体的には、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、3,3′−ジアミノジフェニルスルホン、ジシアンジアミド、三沸化ホウ素錯体、ポリフェノール化合物などを使用することが出来る。また、これらの硬化剤に、イミダゾール類や尿素化合物などを硬化促進剤として併用することも出来る。
【0022】
ビニルエステル樹脂は、単独でも硬化し得るが、好ましくは、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイドなどの有機過酸化物を触媒として硬化せしめる。
【0023】
本発明において、マトリックス樹脂としてエポキシ樹脂若しくはビニルエステル樹脂を用いるに際し、更に、マレイミド樹脂、アセチレン末端を有する樹脂、ナジック酸末端を有する樹脂、シアン酸エステル末端を有する樹脂、ビニル末端を有する樹脂、アリル末端を有する樹脂が好ましく併用される。これらは、適宜、エポキシ樹脂や、その他の樹脂と混合してもよい。また、反応性希釈剤を用いたり、熱可塑性樹脂やエラストマーなどの改質剤を混合して用いることができる。
【0024】
マレイミド樹脂は、末端にマレイミド基を平均2個以上含む化合物である。このマレイミド樹脂は、単独で用いることも出来るが、ジアリルビスフェノールAなどの反応性希釈剤と組み合わせて用いることによって、プリプレグに好適な樹脂とすることが出来る。シアン酸エステル末端を有する樹脂は、ビスフェノールAに代表される多価フェノールのシアン酸エステル化合物が好適である。シアン酸エステル樹脂は、特に、ビスマレイミド樹脂と組み合わせることにより、プリプレグに適した樹脂とすることが出来る。
【0025】
本発明のマトリックス樹脂として、上記した熱硬化性樹脂を用いる際に、熱可塑性樹脂を混合して用いることもできる。熱可塑性樹脂としては、主鎖に炭素炭素結合、アミド結合、イミド結合、エステル結合、エーテル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、尿素結合、チオエーテル結合、スルホン結合、イミダゾール結合、カルボニル結合から選ばれる結合を有するものが本発明に好適である。
【0027】
(粘着剤の説明)
粘着剤としては、ジエンゴム系、アクリルゴム系、シリコーンゴム系などの粘着剤を用いることができるが、本発明においては、後述の理由からジエン系ゴム粘着剤に熱硬化性樹脂を配合して用いることが好ましい。
【0028】
ジエンゴム系粘着剤としては、ポリイソプレンゴム、SBRゴム、カルボキシル変性SBRゴム、SISゴム、SBSゴム、SEBSゴム、ブチルゴム、ポリイソブチレゴムンなどからなる粘着剤が挙げられる。
【0029】
アクリルゴム系粘着剤としては、アクリル酸やメタクリル酸のアルキルエステルポリマーからなる粘着剤が挙げられる。かかるポリマーに粘着性を発現させるためには、エステル基として長鎖アルキルエステル基が適している。さらに、ガラス転移温度を容易に−50℃以下として十分な粘着性を発現させる観点からは、アルキル基の炭素数を2から10とすれば好適である。
【0030】
もちろん、最終的に得られるアクリルゴム系ポリマーのガラス転移温度が、−50℃以下となるのであれば、アルキル基の炭素数が2〜10の範囲以外のアクリルモノマーを適宜共重合することは差し支えない。
【0031】
これらのアクリルゴム系粘着剤は、その粘着性能を向上させるために、アクリルゴムポリマーをカルボキシル基、水酸基、グリシジル基、アミノ基などで変性することも好ましく行なわれる。
【0032】
シリコーン系粘着剤としては、たとえば、東レ・ダウコーニングシリコーン(株)製の“SH4280”などが好ましく用いられる。
【0033】
(粘着性改善方法の説明)
これらのジエン系ゴム粘着剤は、複合材料の力学物性や耐熱性の低下を抑制するため、熱硬化性樹脂さらには硬化剤、硬化触媒を組み合わせた熱硬化性樹脂を配合して用いることが好ましい。
【0034】
プリプレグの粘着性、粘着剤の塗工性及び該プリプレグから作製される複合材料の力学物性保持の観点から、50重量%以上の熱硬化性樹脂、好ましくは70〜90重量%の熱硬化性樹脂をジエン系ゴム粘着剤と配合して用いることが好ましい。
【0035】
熱硬化性樹脂としては、マトリックス樹脂組成中の樹脂を用いることが複合材料とした時の力学物性保持の観点から好ましく、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂が用いられる。
【0036】
具体的には、アミン類を前駆体とするエポキシ樹脂として、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、トリグリシジル−m−アミノフェノール、トリグリシジルアミノクレゾールの各種異性体が挙げられる。
【0037】
フェノール類を前駆体とするエポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0038】
炭素炭素二重結合を有する化合物を前駆体とするエポキシ樹脂としては、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0039】
ビニルエステル樹脂としては、エポキシ樹脂と同様の観点からエピビス型、ノボラック型、ウレタン含有型、カルボキシ基含有型などが好ましく用いられる。本発明のプリプレグにおいて、粘着剤はプリプレグ表層部分に0.5〜5.0g/m2 の範囲、好ましくは1.0〜3.0g/m2 の範囲で塗布されるものである。粘着剤の塗布量が0.5g/m2 より少ないと、プリプレグに充分な粘着性を付与することが出来ない。一方、粘着剤の量が5.0g/m2 より多い場合には、そのプリプレグを用いて得られた複合材料の層間剪断強度などの機械物性が低下する。なお、プリプレグ表層部分とは、通常、離型紙または離型フィルムが貼付されている側の反対面の表層部分をいう。
【0040】
これらの粘着剤の塗布方法としては、直接塗布法、間接塗布法がある。直接塗布法は、粘着剤塗布時にプリプレグ表面へ熱、溶剤等による悪影響を及ぼすおそれがある。これに対し、粘着剤を離型紙上に塗布して得た粘着剤シートの上にプリプレグを置き、加圧によりプリプレグ上に粘着剤を転写する間接塗布法は、粘着剤塗布時にプリプレグ表面への悪影響が排除できるために適している。
【0041】
間接塗布法には、粘着剤を溶剤に溶解した後に塗布する溶剤法、アクリル酸エステルのごとき乳化重合で得られるポリマ−エマルジョンを塗布するエマルジョン法、粘着剤を加熱溶融して塗布するホットメルト法などが挙げられ、いずれの方法を用いてもプリプレグ表面に粘着性を付与する有効な方法として用いることが出来る。
【0042】
また、粘着剤の塗布形態は、膜状、ストライプ状(スジ状)、ドット状、不織布状のいずれの形態であっても構わない。しかしながら、ホットメルト法での粘着剤の塗布を考えた場合には、塗布量制御の観点からストライプ状(スジ状)、ドット状、不織布状塗布が適している。
【0043】
粘着剤の塗布を行うプリプレグとしては、複合材料の軽量化を目的に従来のプリプレグ中の繊維含有量をより大きくした繊維含有量70重量%以上のプリプレグ、すなわちマトリックス樹脂の樹脂含有量低下に伴い粘着性が損なわれたプリプレグへの適用が好適である。
【0044】
本発明のように、粘着剤をプリプレグ表層に塗布する手段を採れば、プリプレグ表面に必要最少量の粘着剤を塗布することが可能であるために、得られる複合材料の機械物性や耐熱性の低下を最低限にとどめることができる。また、粘着剤はプリプレグ表面に存在する強化繊維上に多く点在すると考えられ、かかる状態で存在する粘着剤は、強化繊維に撚りがかかり、経時的にマトリックス樹脂がプリプレグ内に沈み込みがちな場合においても多くの粘着剤がプリプレグ表層に保持される。このために、プリプレグ表層部分の粘着性が長く持続することになる。
【0045】
【実施例】
(比較例1)
東レ(株)製エポキシ樹脂“#2500”を東レ(株)製炭素繊維“トレカ”T300を一方向に引き揃えたシートに含浸して得られたプリプレグ(繊維重量含有率:70%)を10cm角にカットし、これに住友3M(株)製アクリル系ゴム粘着剤スプレー“55”タイプを20cmの高さから2秒間噴霧した。室温で10分間放置した後に塗布量を計ったところ、1.85g/m2のアクリルゴム系粘着剤がプリプレグ表層に塗布されていた。
【0046】
このプリプレグを23℃,RH40%の雰囲気中に一定時間放置した後、直径10mmのスチール製円柱に、繊維引揃え方向が円柱長手方向に対して45°の角度になるように巻き付けた。これらを23℃、RH40%の雰囲気中に放置して、一定時間経過後のプリプレグの巻き付き状況を観察した。その結果、円柱巻き付け24時間後においても、良好な巻き付け性能を有していた。この傾向は、プリプレグを64時間放置した後に行なっても同様にその効果を持続していることが判った。結果を表1に示す。
【0047】
【表1】
また、このプリプレグを1方向に積層した後に、オートクレーブ中で130℃,2時間処理して硬化させた。得られた複合材料を、煮沸水中に45時間浸漬して吸水処理した後、室温で層間剪断強度(ILSS)の測定を行なった。得られたILSSの値は4.1kgf/mm2 となった。これは、後述する粘着剤を塗布しないプリプレグ(比較例)についてILSSを測定した値の85%であり、良好な保持率を示していた。結果を表2に示す。
【0048】
【表2】
(比較例2)
比較例1で用いたと同じ10cm角のプリプレグに、東レ・ダウコーニングシリコーン系ゴム粘着剤“SH4280”のトルエン溶液を塗布した。80℃、3分乾燥した後に塗布量を計ったところ、1.81g/m2のシリコーン系ゴム粘着剤がプリプレグ表層に塗布されていた。
【0049】
このプリプレグを23℃、RH40%の雰囲気中に一定時間放置した後、直径10mmのスチール製円柱に繊維引揃え方向が円柱長手方向に対して45°の角度になるように巻き付けた。これらを23℃、RH40%の雰囲気中に放置して、一定時間経過後のプリプレグの巻き付き状況を観察した。その結果、円柱巻き付け24時間後においても、良好な巻き付け性能を有していた。この傾向は、プリプレグを64時間放置した後においても同様でその効果を持続していることが判った。更に、比較例1のアクリルゴム系粘着剤を用いた場合と比較して、より優れた巻き付き性能を有していることも判った。結果を表3に示す。
【0050】
【表3】
また、比較例1と同様に、層間剪断強度(ILSS)の測定を行った。得られたILSSの値は4.0kgf/mm2となった。これは、粘着剤を塗布しないプリプレグのILSS測定値の83%であり、比較例1と同様、良好な保持率を示していた。結果を表2に併せて示す。
【0051】
(比較例3)
比較例1で用いたと同じプリプレグに何ら接着剤を塗布することなく、23℃,RH40%の雰囲気中に一定時間放置した後、直径10mmのスチール製円柱に、繊維方向が円柱長手方向に対して45°の角度になるように巻き付けた。これらを23℃、RH40%の雰囲気中に放置して、一定時間経過後のプリプレグの巻き付き状況を観察した。粘着剤を塗布した場合に比べると、プリプレグの巻き付け性は極端に劣り、円柱に巻き付けることは全く不可能であった。
【0052】
また、層間剪断強度(ILSS)の測定を行なった結果を表2に併せて示す。
(実施例1)
ニトリルゴム“Nipol1072(日本ゼオン(株)製)”50重量部、エポキシ樹脂“Ep828(油化シェル(株)製)”50重量部に硬化剤ジシアンジアミド“DICY”、硬化助剤3,4−ジクロロフェニル−1,1−ジメチルウレア“DCMU”を添加した濃度10wt%のメチルエチルケトン溶液を離型紙上にバーコーターNo.22(江藤器械(株)製)を用いて塗布し、50℃で10分間熱風乾燥器で乾燥を行い、熱硬化性樹脂配合ジエン系ゴム粘着剤シートを得た。
【0053】
エポキシ樹脂“#2500(東レ(株)製)”を炭素繊維“M46J(東レ(株)製)”に含浸して得られたプリプレグ(繊維重量含有率76%)を10cm角にカットし、これを先に作製した熱硬化性樹脂配合ジエン系ゴム粘着剤シート上に載せ、さらにその上に離型紙を載せてニップロールを通し、プリプレグ上への熱硬化性樹脂配合ジエン系ゴム粘着剤を転写した。転写後のプリプレグ重量を計ったところ、35mgの熱硬化性樹脂配合ジエン系ゴム粘着剤がプリプレグ表面に塗布されていた。
【0054】
このプリプレグを25℃、相対湿度50%の雰囲気中に一定時間放置した後に、プリプレグをアルミ板に両面テープを用いて貼付け、剥離強度の測定を行ったところ、熱硬化性樹脂配合ジエン系ゴム粘着剤の塗布を行わなかったプリプレグと比較して、一定時間後の剥離強度が大きく改善されていた。結果を表4に示す。
【0055】
【表4】
また、このプリプレグを一方向に積層した後に、オートクレーブ中で130℃×2時間硬化させた。得られた複合材料について、室温で層間剪断強度(ILSS)、曲げ強度、曲げ弾性率を測定した。得られたILSSの値は7.7kgf/mm2 であった。これは、粘着剤を塗布しない場合のILSSの値8.3kgf/mm2 と比較して良好な保持率を示した。結果を表5に示す。
【0056】
【表5】
(実施例2)
ニトリルゴム“Nipol1072(日本ゼオン(株)製)”50重量部、エポキシ樹脂“Ep828(油化シェル(株)製)”50重量部を混合した濃度10wt%のメチルエチルケトン溶液から実施例1と同様な操作で熱硬化性樹脂配合ジエン系ゴム粘着剤シートを得た。
【0057】
実施例1で用いたものと同じ10cm角のプリプレグに、熱硬化性樹脂配合ジエン系ゴム粘着剤を実施例1と同様な操作で転写した。転写後のプリプレグ重量を計ったところ、35mgの熱硬化性樹脂配合ジエン系ゴム粘着剤がプリプレグ表面に塗布されていた。
【0058】
このプリプレグを25℃、相対湿度50%の雰囲気中に一定時間放置した後に、実施例1と同様に剥離強度の測定を行った結果、実施例1で求められた剥離強度の値に若干劣るものの、熱硬化性樹脂配合ジエン系ゴムの塗布を行わなかったプリプレグと比較すると、一定時間後の剥離強度が大きく改善された。結果を表4に併せて示す。
【0059】
また、このプリプレグを一方向に積層した後に、オートクレーブ中で130℃×2時間硬化させた。得られた複合材料について、室温で層間剪断強度(ILSS)、曲げ強度、曲げ弾性率を測定した。得られたILSSの値は7.2kgf/mm2 であり良好な保持率を示した。結果を表5に併せて示す。
【0060】
(比較例4)
エポキシ樹脂“#2500(東レ(株)製)”を炭素繊維“M46J(東レ(株)製)”に含浸して得られたプリプレグ(繊維重量含有率は、76%)のカバーフィルムを剥離し、25℃、相対湿度50%の雰囲気中に一定時間放置した後に、そのプリプレグの剥離強度を一定時間経過後測定した。カバーフィルム剥離後から剥離強度は経時的に減少し、熱硬化性樹脂配合ジエン系ゴム粘着剤を塗布した系に比べると、プリプレグ表面の剥離強度は極端に劣っていた。結果を表4に併せて示す。
【0061】
また、実施例1と同様に、層間剪断強度(ILSS)、曲げ強度、曲げ弾性率の測定を行った。結果を表5に併せて示す。
【0062】
【発明の効果】
本発明によれば、プリプレグの粘着性が増大するので、プリプレグのハンドリング性が著しく改善でき、得られたプリプレグの粘着性は時間を経ても変化しにくい。また、粘着剤を塗布しても、得られる複合材料の層間剪断強度の低下の度合いは小さく、機械物性に与える影響は少ない。また、マトリックス樹脂の種類、強化繊維の撚の有無にかかわらず粘着性のプリプレグを得ることが出来る。
Claims (2)
- 炭素繊維とマトリックス樹脂を含有してなる繊維含有量70重量%以上のプリプレグであって、マトリックス樹脂がエポキシ樹脂からなり、かつ、離型紙若しくは離型フィルムが貼付されている側の反対面の表層部分に0.5〜5.0g/m2のエポキシ樹脂とニトリルゴムからなる粘着剤が塗布されてなることを特徴とする粘着性に優れたプリプレグ。
- エポキシ樹脂が硬化剤および/または硬化触媒を含有することを特徴とする請求項1記載の粘着性に優れたプリプレグ。
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