JP3727027B2 - 遠心式羽根車及びその設計方法 - Google Patents
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Description
また、羽根の形状については、回転方向に対して凸面となる曲面としたり(特許文献2参照)、多円弧で構成したり(特許文献3参照)する技術が公知となっている。また、羽根間に形成される流路を、通過する流体の相対速度がほぼ一定となるように形成したものもある(特許文献4参照)。
図27は従来のインペラを示す模式図、図28は従来のインペラの回転時を示す平面図、図29は従来のインペラを外壁で覆った状態を示す側面断面図、図30は同じく吐出側が閉鎖された状態を示す図、図31は翼車内誘起速度の発生過程を示す説明図、図32は従来のインペラを示す図、図33は従来のインペラを示す図である。
図27から図29に示す如く、台形板状の12枚の羽根103を、円盤状の基部102に周方向に対して等角度間隔に、該基部102の回転中心に対して放射状に配置した単純な構造のインペラ101を例に、このインペラ101を外壁109で覆い、モータ107で回転させた場合について説明する。
この場合、低速回転においては、吸入側(回転中心側)と吐出側(外周側)との間に圧力差が無い限り、吸入側より吸入された流体(気体・液体)は、インペラ101の回転による遠心力によって吐出側に排出される。ところが、高速回転にしていくと、回転数の上昇に伴い乱流などが発生して流体の流れが悪くなっていく。このようなインペラ101の高速回転時における流体の流れの悪化は、例えば図30に示すような、羽根103の吐出側が閉鎖壁108によって密閉状態とされている場合においては、インペラ101が高速回転となると吸入側と吐出側との圧力が等しくなり、それ以上流体は圧縮されることなく逆に吸入側へ流体が噴出するという逆流現象を発生させてしまう。こうした現象は流体が気体の場合に顕著であり、液体の場合は、ある程度静圧は上昇するが、キャビテーションの発生が多くなり不安定とある。
図32に示すインペラ111においては、図中(a)に示す翼間ピッチPが、吸入側から吐出側にかけて広くなっている。そのため、翼高(羽根113の基部112表面に対する突出方向の高さ)を考慮しても、流体通過面積は吸入側から吐出側にかけて広くなっている。つまり上述したように、インペラ111が高速回転する場合、気体においては分子の拡散により速度が下がって翼車内誘起速度が発生し、液体においては真空スポットが発生して流量の低下を招くことになる。
ここで、「動圧」とは流体が示す圧力のうち、運動すると発生する圧力、つまり、流れの速度に関係する部分であり、運動エネルギーの密度であって圧力そのものではないが、流れをせき止めたときに得られる圧力上昇を意味する。これに対し「静圧」とは本来の圧力、つまり、静止流体中で想定した面にはたらく、面に垂直な応力であり、運動している流体の場合は、各方向の圧力の法線成分の平均値を意味する。
図1は本発明に係る遠心式羽根車の一実施の形態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面断面図、図2は本発明に係る遠心式羽根車の一実施の形態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面断面図、図3は図1に示す遠心式羽根車の通過面積を示す説明図、図4は図2に示す遠心式羽根車の通過面積を示す説明図、図5は流体の通過面積を模式的に示す図、図6は流体の通過面積の変化を示す図、図7は流体の周方向の圧縮を示す説明図、図8は流体の回転軸方向の圧縮を示す説明図、図9は壁面による流体の偏向を示す図、図10は翼面による流体の偏向を示す図9におけるE矢視図である。
図11は本発明に係る遠心式羽根車の設計方法に用いる双曲線を示す図、図12はインペラ外形の一実施の形態を示す図、図13はインペラ外形の一実施の形態を示す図、図14はインペラ外形の設計方法の一実施例を示す図、図15はインペラ外形の設計方法の一実施例を示す図、図16は双曲線の角度変化を示す説明図、図17は基本中心線の導出方法を示す説明図、図18は翼長方向の形状の設計方法の一実施例を示す説明図、図19は翼長方向の形状の設計方法の一実施例を示す説明図、図20は翼長方向の形状の設計方法の一実施例を示す説明図、図21は翼長方向のそりの三次元展開方法を示す説明図である。
図22は本発明に係る遠心式羽根車の一実施の形態を示す斜視図、図23は18枚の羽根を有する遠心式羽根車を示す平面図、図24は同じく側面図、図25は12枚の羽根を有する遠心式羽根車を示す平面図、図26は24枚の羽根を有する遠心式羽根車を示す平面図である。
まず、図1及び図2を用いて本発明に係る遠心式羽根車(以下、インペラ1)の概略構成について説明する。
本発明に係るインペラ1は、回転軸5に固定される平面視円状の基部2と、該基部2上に中心部から外周方向(径方向)に設けられ、周方向(回転方向)に等間隔を隔てて配設される複数の羽根3とを備え、これら基部2及び複数の羽根3によってその外形が形成されている。
また、インペラ1回転方向において羽根3の前側の面を「翼表」、後側の面を「翼裏」とし、隣り合う羽根間の距離、即ち翼表の任意の点における接線に直交する線を引き、この線と回転方向前側の羽根3の裏面との交点と、前記任意の点との距離を「翼間ピッチP」とする。
このような構成のインペラ1が回転軸5を中心に回転駆動することによって、流体がインペラ1の中心部から回転軸方向に吸入され、羽根3によって形成される流路を通過して、該インペラ1の外周部から回転軸と垂直方向に吐出され、その圧力によって圧縮効果を得るしくみとなっている。
つまり、上述した遠心式羽根車の代表的な2種類の形状とは、図1及び図22示すような、羽根3の翼高が水平面に対して垂直方向となっているもの(以下、垂直型)と、図2に示すような、羽根3の翼高が水平面に対して平行となっているもの(以下、平行型)である。
ここでいう流体の通過面積とは、羽根3によって形成される流路における流体進行方向に対して垂直な面の面積であり、隣り合う一対の羽根間のものではなく、インペラ1の全周に亘る吸入側から吐出側にかけてのことである。すなわち、前記吸入面翼高3cを回転軸5を中心に回転させた場合の軌跡となる図形を吸入面S1とすると、この吸入面S1の面積が吸入面通過面積となり、同様にして前記吐出面翼高3dを回転軸5を中心に回転させた場合の軌跡となる図形を吐出面S2とすると、この吐出面S2の面積が吐出面通過面積となるのである。
同様に、図4に示す平行型のインペラ1の場合も、図中の斜線部のように、吸入面S1及び吐出面S2は吸入面翼高3c及び吐出面翼高3dを、回転軸5を中心に回転させた場合の軌跡となる形状それぞれの面積が吸入面通過面積及び吐出面通過面積となっている。
また、垂直型及び平行型それぞれのインペラ1において、吸入面S1と吐出面S2と間の流路における途中の通過面積も、その径方向における位置での、基部2の表面に沿った円周の長さと、羽根3の翼高との積によって決まる。
つまり、流体通過面積という面から見ると、羽根3というのは、該羽根3の形状によって決まるインペラ1の流路の仕切りの役割を果たすに過ぎないこととなる。
まず、最初に挙げる流体の通過面積変化のパターンは、吸入側から吐出側にかけて徐々に広がっている場合である。つまり、図6(a)に示すように、インペラ内において、流体の吸入面S1の面積よりも吐出面S2の面積方が広くなっており、吸入側から吐出側に向かって通過面積が徐々に広くなっている。
これは、一般的に渦巻き式と呼ばれる翼形状を有する羽根車を用いた送風機やポンプ等のように、吸入側の負圧で仕事をするようなものに顕著に見られる。しかし、この場合は吸入面S1よりも吐出面S2の方が広いため、吐出面S2において流体の分子密度が外部よりも低くなり、流体が渦を巻いて逆流し、サージングと呼ばれる不安定現象が発生して圧縮機に用いる場合は十分な圧縮効果を得難い。
まず、周方向の圧縮について、図7を用いて隣り合う一対の羽根間内の流体を示して説明する。なお、便宜上隣り合う一対の羽根において、インペラ1回転方向の前側の羽根を羽根3f、後側の羽根を羽根3rとして説明する。
回転体(インペラ1)が回転して羽根3によって流体を圧送する際、この流体には主として二方向の力がはたらく。それは遠心力と慣性力である。
流体にはたらく遠心力の特徴として、径方向の外側に行くに従い大きくなるということがある。そのため、図7(a)に示すように、流体分子の微小時間の段階的な動きで見ると、インペラ1の回転によって生じる遠心力により外周側に先行する分子にかけてその間隔が広がり、静圧が低下する。
この羽根間の流体の偏在を補うように配置した羽根を、羽根3f’とすると、羽根3rの翼表に対しては、羽根3f’の翼裏によって羽根3f’と羽根3rとの翼間ピッチPが決まり、羽根3f’は理論的に羽根間の流体の密度が一定となるように配置されているため、該羽根3f’の翼間ピッチ面(翼裏面)は、静圧変化面と言うこともできる。
なお、このようにインペラ1の高速回転にともなう羽根間における流体の偏在を補うための翼間ピッチPの設定は、使用する圧縮機の回転速度や必要な圧縮能力に応じたものとする。
以上の説明のように、翼間ピッチPを設定することにより、流体に対しての周方向の圧縮は、十分にその効果を得ることができる。
この場合も、インペラ1回転時に流体分子に対してはたらく遠心力の作用によって、吸入側から吐出側へ向けての流体の微小時間の段階的な動きを見ると、図8(a)に示すように、遠心力の特徴から、流体の吐出側(外周側)にかけて流体分子の密度が低くなり、それに伴い静圧が低下する。
そして、同図(b)に示すように、遠心力によって円周方向に向けて加速された流体分子の、翼高よりも高い部分は外壁(ファンケース)9に衝突して進行方向が偏向される。この偏向は粘性流での現象でなく分子レベルの話であって、この分子を偏向する力のベクトルは次々に伝播して行き、全体的には静圧を高める作用を持つ。
この流体分子が外壁9に衝突して受けた反発力は、静圧の圧力変化として伝播され、同図(c)に示すように、遠心力によって密度が低下した部分の分子間の間隔を埋めることで静圧を高める。このため、流体分子の乱流が発生し、安定した流体の流れを得ることができない。つまり、同図(d)が理想的な流体の流れとなる。
この場合の乱流の原因を詳しく分析してみると、適切な流体通過面積を持った外形面に衝突した流体分子は、図9(a)に示すように連続して緩やかに偏向角を変化させていくが、通過面積の変化が不適切で外径面の角度変化が不適切であると、図9(b)に示すように、分子が外径面に衝突したときの偏向角に影響し、静圧バランスを崩して乱流発生の原因となる。
これらの原因を解消するため、本発明のインペラ1は、図10に示すように、羽根3の翼高方向にそりを持たせることで、分子の前記壁面9aとの衝突を避けている。すなわち、羽根3の翼高方向のそりを、回転方向に対して前進方向に湾曲させているのである。これにより、流体が翼面以外の部分に接することなく、流体の通過が翼面内に限られ、分子の衝突による急激な偏向がなくスムーズな流れとなり、乱流の発生を防止することができる。
一般的に、遠心力を利用して流体を搬送または圧縮する遠心式羽根車は、図32に示すように渦巻き状の翼を円周状に配置する形状となる。また、より高い圧縮効果を得るためには、図33に示すようなターボ型の遠心圧縮機などに用いられる形状となる。これら二種類の基本的な翼形状における共通点は、流体の吸入側と吐出側があることであり、相違点は吸入面翼高(113c・123c)の水平面に対する角度が垂直か平行かである。これらの形状における問題点は、大別すると上述したような通過面積の不適正化と翼車内誘起速度の発生という二点に尽きる。
つまり、本発明に係るインペラ1の羽根3の翼形状は、この双曲線を加工・変換・展開し、双曲線の形状及びその変化率を利用することによって作成される設計図に基づいて形成され、流体の吸入側から吐出側にかけての流体通過面積の適正な減少と、翼車内誘起速度の発生を防止するための翼間ピッチの適正な減少を可能としている。以下、この設計方法について順次説明していく。
インペラ外形とは、インペラ1の側面視における二次元形状と言い換えることができる。つまり、このインペラ外形は、図1(b)に示すように、羽根3の外形線3a・内形線3b・吸入面翼高3c・吐出面翼高3d及び基部2の形状によって決定される。
図11に示す本実施例における基本双曲線となる直角双曲線(以下、双曲線H)は、その基本性質として、該双曲線H上の点におけるX座標とY座標との積の絶対値が常に一定であるということがある。本発明においては、この双曲線の基本性質を翼形状の設計に利用しているのである。
この双曲線Hを、底辺をX軸上に持ち、原則として双曲線Hの頂点Cを通る任意の長方形Rで囲み、この長方形Rと双曲線HとのX軸方向原点側の交点P1(この場合頂点C)及びX軸方向反原点側の交点P2からそれぞれX軸対して垂線を下ろす。各象限において、これらの垂線によって挟まれた部分の双曲線、及びX軸で囲まれた部分(図11中の斜線部)、これがこの場合のインペラ外形における羽根3の翼形状となる。
このようにして第2象限において決定された羽根3の外形を、Y軸を対称に複写し、これら第1象限及び第2象限に示された形状が、この場合の羽根3の外形となり、図12に示すような形状となる。つまり図12に示すように、前記X軸方向原点側の垂線が吸入面翼高3cとなり、X軸方向反原点側の垂線が吐出面翼高3dとなり、これらの間に挟まれた双曲線の一部及びX軸の一部がそれぞれ外形線3a及び内形線3bとなるのである。言い換えると、双曲線H上の任意の点におけるX座標をインペラ1の回転中心から径方向に対する距離、Y座標をその位置での羽根3の翼高としているのである。なお、この場合回転軸はY軸となる。
このような外形を有するインペラは、工作が容易となるので、一般的なポンプ送風機に向いている。
これら図12及び図13に示したインペラ外形は、吸入面翼高3cが水平面に対して垂直となっており、種類としては図1で示した垂直型のインペラにあたる。
このようなインペラ外形のいくつかの変形例を図に従って説明していく。なお、便宜上双曲線Hの第2象限の部分(以下、双曲線H2)を用いて説明する。
また、図14(a)において、双曲線H2をX軸方向に反原点側及び原点側へ移動したものを、それぞれ回転させてその傾きを変えることにより、吸入面翼高3c及び吐出面翼高3dを調整することができる。この一例として、吐出面通過面積が吸入面通過面積と同じになるように調整した場合を、図14(c)に示す。このような外形を有するインペラは、汎用ポンプ等に用いられるインペラに適している。
また、図15(c)に示すのは、同図(b)に示したインペラ外形と略同一であるが、圧縮効率を上げるために、吐出側の通過面積を約1/2にしている。つまり、吐出面の面積が同図(b)に示したものの約1/2となっているのである。このように、前記双曲線H2’をX軸方向に平行移動したものを、回転させて傾けることによって、羽根3の吸入面翼高3c及び吐出面翼高3dを調節することができる。
図15(c)に示すような吐出面を狭くしたインペラは、軸方向からの流入速度が高速であったり、流体の密度が大きかったりする場合に有効なものとなり、高圧ポンプ、遠心圧縮機、ターボ等に利用されることが考えられる。
この翼長方向のそりを設計する上で重要な点は、羽根3と羽根3と間の距離、即ち翼間ピッチの設定である。この翼間ピッチを自由に設定可能とすることが本設計方法の目的である。なお、ここでは翼長方向のそりについてのみを説明するため、翼高方向のそりがないインペラについて説明する。
双曲線においては上述したように、その双曲線上の点のX座標とY座標との積が常に一定となる。つまり、双曲線H2上の任意の点を取り、この点からのX軸及びY軸に対しての垂線によって決定される長方形(正方形)の面積は常に一定となる。
そこで、翼長方向のそりを設定する場合において、この双曲線上の点におけるX座標とY座標との安定した関係を、双曲線上の各点における接線の角度変化率として利用する。
すなわち、双曲線H2上の点のX軸方向に沿った前記角度変化を、該双曲線H2上の任意の点のX座標を半径とする円に対応させながら一つの曲線を導出するのである。
この翼間ピッチを変化させる一例として、例えば、図17(a)における双曲線H2を、原点Oを中心に15°回転させた場合の双曲線を基に導出される基本中心線は、図18(a)に示す基本中心線Qとなる。この基本中心線Qに基づいて羽根3を周方向に等間隔を隔てて(基部2の中心に対して等角度ずつずらせて)配置させると、同図(b)に示すような配置となり、この場合は中心部から外周部、即ち吸入側から吐出側にかけて翼間ピッチPが略同じとなる。
さらに、図20(a)に示すように、図18に示した基本中心線Qを径方向外側に平行移動させた基本中心線Q’’を用いることによって、翼間ピッチPを回転中心側から外周にかけて減少させることが可能となる、そして、この基本中心線Q’’を基に羽根3を配置した場合は、同図(b)に示すような配置となる。
すなわち、前記基本中心線Qを回転させることで翼長を、また、平行移動させることで翼間ピッチをそれぞれ調整することができるのである。
つまり、インペラ1の設計の原則は、羽根3の翼形状の三次元変化の各要素(翼高・翼長・翼長方向のそり・翼高方向のそり)にどのように双曲線の変化率を同期させて行くかによってその形状が決定され、この双曲線の変化率は、流体の種類・密度・速度・圧力・温度など、様々な使用目的に適応すべく選定され、万能のインペラ形状というものは存在しないものの、各使用条件に応じた設計が可能となる。
始めに、双曲線の三次元曲面への展開方法について説明する。
図21(b)に示すような略円錐形状の斜面に、その展開図である同図(a)上の基線K(前記基本中心線Q)を転写して行くには、この基線Kに任意(略半径方向に同間隔)の点をプロットして周回線を作図し、この周回線の開始点、即ち基線Kとインペラ1において吸入面S1にあたる円との交点k1を通る垂直線からの周回線の周長(太線部分)と同じ長さを平面図上にとり、この平面図上の対応している周回線上のポイントをつなげる。そうすると展開平面図上の基線Kの転写が完了する。
これらのことは、図21(a)に示すような二次元展開図上の基線Kは、展開図・平面図・側面図それぞれの周回線と連動していれば転写が可能であることを示している。すなわち、図21(a)における基線Nから基線Kまでの周回線上の距離を、図21(b)における基線Nから同じ周回線上の距離をプロットすることで、円錐台上に基線K’を描くことができる。よって、二次元から曲線の複雑な三次元変化に置き換えることが可能であり、本発明に係るインペラのような加工データも作成可能だということである。
翼高方向のそりとは、羽根3の翼形状の内形線から外形線までの間の翼の高さの形状、即ち翼高方向の湾曲具合である。
現在、一般的に使用されている遠心式羽根車においては、そのほとんどの翼高形状は平面であり殆ど曲面とはなっていない(但し、翼長方向は曲面となる場合はある)。しかし、図10を用いて説明したように、翼高方向にそりを形成することは、流体の圧縮効率の向上を図るためには不可避となってくる。ところが、この翼高方向のそりを形成するには、形状の策定上、及び加工方法上、三次元非ユークリッド幾何学的な構造解析や、6軸・8軸機械切削加工などの問題があり、非常な困難が伴っている。それでいてその統一された設計方法は定まっておらず、各者各様の設計方式とボールエンドミル加工などの加工時間のかかる方法で試行錯誤的に行われているのが現状である。
つまり、翼高方向のそりを形成する際においても、上述した翼長方向のそりと同様に、基本双曲線となる直角双曲線の変化率を、翼高方向に同期させて行くことによって、理想的な翼高方向のそりを形成することが可能となる。これにより、インペラ1の回転による遠心力で径方向に動圧を加えられた流体は、図9等に示したように壁面9aに衝突することなく、翼面上を滑らかに流れて行くこととなるのである。
これらの図に示すインペラ1は、流体の吸入側から吐出側にかけての流体通過面積及び翼間ピッチの適正な減少と、乱流の発生を抑制する翼高方向のそりの形成をすべて満足し、高速回転時における羽根間の流体に対して理想的な翼形状となっている。つまり、これらは同じ双曲線を用いた設計方法によって形成され、羽根全体が三次元的に規則性を持った形状となっており、理想的な圧縮効果を発揮する。さらに、羽根全体に一貫した規則性が存在するため、加工時においても、比較的簡単な方法で連続的に翼形状を加工することができ、製造能率の向上が図れる。
以上のように、平面視円状の基部と、該基部上に中心部から外周方向に設けられ、周方向に等間隔を隔てて配設され、外形線・内形線・翼高・翼長の各要素によって形状が決定される複数の羽根とを有する遠心式羽根車であって、前記羽根を形成する各要素のうち、少なくとも一つを、双曲線の形状またはその変化率を用いて設計することにより、つまり、羽根の外形または内形、翼長方向のそり、翼高方向のそりのいずれか一つ、または二つ、または三つ、または全てを、基本曲線である双曲線に基づいて、三次元的に規則性を持った設計方法によって設計することにより、様々な使用条件、使用用途に応じて効率の良い圧縮効果が得られる翼形状の設計が可能となる。
なお、この設計方法に用いる基本曲線としては、上述したような双曲線に限定されず、サイクロイド曲線やインボリュート曲線、また円弧等を近似曲線として用いることも可能である。
2 基部
3 羽根
3a 外形線
3b 内形線
3c 吸入面翼高
3d 吐出面翼高
H 双曲線
Claims (7)
- 平面視円状の基部2と、該基部2上に中心部から外周方向に設けられ、周方向に等間隔を隔てて配設される複数の羽根3・3・・・とを有する遠心式羽根車1において、前記羽根3・3・・・によって形成される流路の流体通過面積を、流体の吸入面から吐出面にかけて一定の変化率で縮小するように、双曲線H2の一部によって外形線3aを形成し、該外形線3aを平行移動して内形線3bを形成してなる遠心式羽根車。
- 前記外形線3aと内形線3bを原点Oを中心にして翼高3cが水平となる位置まで回転させてなる請求項1に記載の遠心式羽根車。
- 平面視円状の基部2と、該基部2上に中心部から外周方向に設けられ、周方向に等間隔を隔てて配設される複数の羽根3・3・・・とを有する遠心式羽根車1において、隣り合う羽根3・3間の距離が、流体の吸入面S1から吐出面S2にかけて一定となるように、双曲線H2上に前記吸入面S1に対応する点M0及び複数の任意の点M1・M2・M3・・・をとり、前記吸入面S1に対応する点M0におけるX座標に対応するX軸上の点m0から前記吐出面S2にかけて、前記双曲線H2上の前記吸入面S1に対応する点M0及び前記任意の点M1・M2・M3・・・に対応するX座標を半径とする円と交わるごとに、前記吸入面S1に対応する点M0及び前記任意の点M1・M2・M3・・・における角度変化となる角度ずつ加えて屈曲させた直線を延ばし、この屈曲させた直線から前記複数の任意の点M1・M2・M3・・・の間隔を狭くすることで形成される曲線Qを描き、該曲線Qを翼長方向のそりとする遠心式羽根車。
- 前記曲線Qを、平面視円状の基部2の径方向に平行移動して羽根Q’’とし、隣り合う羽根3・3間の距離を、流体の吸入面S1から吐出面S2にかけて徐々に狭くしたことを特徴とする請求項3に記載の遠心式羽根車。
- 前記羽根3・3・・・を、翼高方向、かつ、回転方向に対して前進方向に翼高方向のそりとして湾曲させたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の遠心式羽根車。
- 前記翼高方向のそりは、双曲線の変化率を用いた曲線から形成されることを特徴とする請求項5に記載の遠心式羽根車。
- 平面視円状の基部2と、該基部2上に中心部から外周方向に設けられ、周方向に等間隔を隔てて配設される複数の羽根3・3・・・とを有する遠心式羽根車1において、隣り合う羽根3・3間の距離が、流体の吸入面S1から吐出面S2にかけて一定となるように、双曲線H2上に前記吸入面S1に対応する点M0及び複数の任意の点M1・M2・M3・・・をとり、前記吸入面S1に対応する点M0におけるX座標に対応するX軸上の点m0から前記吐出面S2にかけて、前記双曲線H2上の前記吸入面S1に対応する点M0及び前記任意の点M1・M2・M3・・・に対応するX座標を半径とする円と交わるごとに、前記吸入面S1に対応する点M0及び前記任意の点M1・M2・M3・・・における角度変化となる角度ずつ加えて屈曲させた直線を延ばし、この屈曲させた直線から前記複数の任意の点M1・M2・M3・・・の間隔を狭くすることで形成される曲線Qを描き、該曲線Qを翼長方向のそりとし、前記曲線Qを、回転させることで、流体の吸入面S1から吐出面S2にかけての羽根3・3・・・の翼長が変更することを特徴とする遠心式羽根車の設計方法。
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