JP3727011B2 - 作動装置の軸受構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄道車両等のブレーキ装置を駆動する作動装置に用いられる軸受構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、特許協力条約に基づく国際公開番号WO98/47750のパンフレットに掲載された作動装置(電気式ブレーキアクチュエータ)は、モータの回転に基づいて、ブレーキ装置を駆動する押し棒をその軸方向に移動させる常用ブレーキ機構と、圧縮状態に保持したばねを放勢させることにより上記押し棒を軸方向に移動させる安全ブレーキ機構とを備えている。安全ブレーキ機構に用いられているねじ軸は、止め輪(C形)を介してスラストベアリングにより軸方向に作用する力を受けとめる。この止め輪は、ねじ軸のねじ山が形成されている部分の周方向に設けた溝に装着されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような従来の作動装置において、ねじ軸は、ピッチの大きいねじが螺旋状に形成されたものである。従って、ねじ軸に設けた上記溝の側壁面形状は、ねじ山の頂部近傍の断面(軸と直交する断面)が周方向に不連続に並んだものとなる。このため、止め輪とねじ軸との接触面積が十分に確保されない。従って、ねじ軸に対して軸方向に力が作用したとき、止め輪が外れることがあった。
【0004】
上記のような従来の問題点に鑑み、本発明は、止め輪を安定して保持する作動装置の軸受構造を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、モータの出力に基づいて押し棒を移動させる常用ブレーキ機構部と、ばねの出力に基づいて前記押し棒を移動させる安全ブレーキ機構部とを有する作動装置の軸受構造であって、前記ばねの出力に基づいて回転駆動され、ねじ部の周方向に溝が形成されたねじ軸と、前記溝に装着され、円弧状の外表面の周方向に溝が形成されたスペーサと、前記スペーサの溝に装着された止め輪と、前記止め輪を介して、前記ねじ軸の軸方向に作用する力を受けとめるスラストベアリングとを備えたことを特徴とするものである(請求項1)。
上記の軸受構造においては、スペーサの外表面が円弧状であることから、スペーサの溝の外周形状も円弧状である。この溝に止め輪を装着することにより、軸方向における止め輪とスペーサとの接触面積が十分に確保される。
【0006】
また、上記軸受構造において、スペーサはオープンエンドのリングであり、開端部に対して径方向反対側の位置に、軸方向と平行に延びる溝が設けられていてもよい(請求項2)。
この場合、溝の部分で肉厚が薄くなることにより、スペーサが外方に拡がりやすい。
【0007】
また、上記軸受構造(請求項1)において、スペーサは、周方向に分割されていてもよい(請求項3)。
この場合、スペーサをねじ軸に装着することが容易である。
【0008】
また、上記軸受構造(請求項1〜3)において、スペーサに支持リングが外挿されていてもよい(請求項5)
この場合、支持リングがスペーサの拡がりを規制する。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一実施形態による軸受構造を採用した作動装置を示す断面図である。図において、当該作動装置は、ハウジング本体1aと、上部カバー1bと、上部カバー1bの中央部に取り付けられた取付基部1cとによって構成されるハウジング1内(但し、一部突出している。)に、モータを駆動源とする常用ブレーキ機構部2と、ばねの力を駆動源とする安全ブレーキ機構部3と、これら両機構部によって、図の左右方向を軸方向として駆動される押し棒機構部4とを備えている。安全ブレーキ機構部3は、上記モータが使用不可の場合や、停電時等にのみ、非常ブレーキとして作動する。
【0010】
上記押し棒機構部4において、ガイドチューブ401は、ハウジング1により軸方向に摺動可能に保持されている。このガイドチューブ401に内挿された押し棒402は、左端部以外が円筒状であり、ガイドチューブ401に対して軸方向に摺動可能である。この押し棒402に内嵌されたボールハウジング403は、ねじ404と共に、「ボールねじ」を構成する。リング405は、ねじ404の右端側小径部404aに外嵌され、ガイドチューブ401の内径より小さい外径を有する。リング405とガイドチューブ401の右端部401aとの間には、スラストベアリング406が装着されている。外周側が歯車になっている歯車リング407は、ねじ404の右端部404bに外嵌されている。ラジアルベアリング408は、歯車リング407の内筒部407aとガイドチューブ401の右端部401aとの間に装着されている。力伝達リング409,410は、弾性材料のカラー411を挟持するように、ガイドチューブ401に外挿されている。また、カラー411の外周を取り囲むように、感圧リング412が装着されている。力伝達リング409及び410は、それぞれ、止め輪413及び414により、軸方向の一方向への移動を規制されている。力伝達リング410の両側面には一対の押し棒ローラ415が回転自在に取り付けられている。この押し棒ローラ415がねじ404の軸方向に移動すると、力伝達リング409,410を介してガイドチューブ401が移動する。また、一対のハウジングローラ416はハウジング1に取り付けられており、図示の位置で回転自在である。なお、上記力伝達リング409,410は、ガイドチューブ401と共に図の左方へ移動すると、図示しないリターンスプリングを蓄勢するように構成されている。従って、左方へ移動すると、リターンスプリングによって図1の位置に戻すように付勢される。
【0011】
一方、常用ブレーキ機構部2にはモータ200が設けられている。被駆動シャフト202は、モータ200のシャフト201の右端に対向して、かつ、シャフト201と同軸に配置されている。シャフト201と被駆動シャフト202との間には、クラッチ装置203が介在している。被駆動シャフト202の右端に設けられた小歯車204は、ハウジング1に対して回転自在に支持されている大歯車205と噛合して、これを駆動する。大歯車205は、歯車リング407と噛合して、これを駆動する。上記クラッチ装置203は、シャフト201の回転を被駆動シャフト202に伝達するとともに、シャフト201が回転停止したとき、それまで回転していた方向と逆方向に被駆動シャフト202が回転することを阻止する構成となっている。
【0012】
また、上記安全ブレーキ機構部3においては、上部カバー1bと一体に、その中央から下方へ円筒状に、案内スリーブ1b1が形成されている。くさび部材301は、案内スリーブ1b1に外挿される円筒部301aと、略円盤状のばね支持部301bと、紙面に垂直な方向に互いに離隔して一対設けられたくさび状の係合部301cとを備えている。くさび部材301のばね支持部301bと、上部カバー1bとの間には、大小2個のばね302が装着されている。ねじ軸303は、くさび部材301のばね支持部301bに形成された雌ねじに螺合して、ボールねじのような関係を構成している。ねじ軸303の上端側小径部303aには、円筒形のピンサポート304が取り付けられている。案内スリーブ1b1に取り付けられた円筒部材305は、ピンサポート304と同一の外径を有する。ピンサポート304と円筒部材305との間には、スラストベアリング306が装着されている。係止スリーブ307は、案内スリーブ1b1に対して径方向に隙間を保って内挿されている。係止ばね308は、ピンサポート304及び円筒部材305の外周に巻装され、その一端が係止スリーブ307に係止されている。取付基部1cに取り付けられた支持リング309の下端面には、電磁石310が取り付けられており、この電磁石310は、係止スリーブ307の上端部307aを電磁吸着することが可能である。
【0013】
図2は、上記安全ブレーキ機構部3のA部(一点鎖線の丸で示す)を拡大した図である。図2において、案内スリーブ1b1の下端部内周側には、スラストベアリング311が装着されている。支持リング312は、スラストベアリング311の下端面に当接して配置されている。一方、ねじ軸303の外周の雄ねじ部303bには、周方向に深さdの周溝303cが形成されている。この周溝303cにはスペーサ313が装着されている。スペーサ313は、図3の(a)に示すようなオープンエンドの金属製リングであり、外周面側に、周方向に連続した溝313aが形成されている。図3の(b)は(a)におけるB−B線断面図である。図示のように、スペーサ313は、厚さtより幅wの方が大きく、これによって、所定の厚さtを確保しつつ、拡径方向へ十分な弾性を有している。従って、装着が容易である。また、スペーサ313の厚さtは、上記周溝303cの深さdと等しいか若しくは若干これより大きい。従って、周溝303cに装着された状態でのスペーサ313の外径は、ねじ部303bの外径と同じか若しくはこれより若干大きい。周溝303cに装着されたスペーサ313の溝313aには、止め輪(通常、C形止め輪)314が装着される。装着されたスペーサ313には、上記支持リング312が外挿され、止め輪314が支持リング312に当接する。なお、支持リング312に通されたスペーサ313は、支持リング312によって拡径を規制され、周溝303cから出られない状態に保持される。
【0014】
上記のように構成された作動装置の動作について簡単に説明する。
まず、常用ブレーキ動作について説明する。図1に示す状態(ブレーキ解除状態)からモータ200が所定方向に回転すると、クラッチ装置203を介して被駆動シャフト202が回転駆動される。これにより、小歯車204、大歯車205、歯車リング407及びねじ404が回転し、ボールハウジング403及び押し棒402が図の左方向へ前進する。押し棒402の前進により、図示しないブレーキ装置が作動する。モータ200が逆方向に回転すると、押し棒402が後退する。
【0015】
次に、安全ブレーキ動作について説明する。図1に示す状態において、ばね302は蓄勢されている。ばね302を受けるくさび部材301のばね支持部301bは下方に付勢されており、これにより、ねじ軸303は、くさび部材301の下方移動に対応した回転方向に付勢されている。従って、ピンサポート304及び係止ばね308を介して、係止スリーブ307も所定の回転方向に付勢されている。しかしながら、通常は、係止スリーブ307の上端部307aが電磁石310に電磁吸着されている。従って、係止スリーブ307は回転できない。
【0016】
上記の状態から、安全ブレーキ指令に基づいて電磁石310が消磁されると、係止スリーブ307が釈放され、回転し始める。これに追随して、ピンサポート304及びねじ軸303も回転し、くさび部材301は下降する。下降するくさび部材301の係合部301cが、押し棒ローラ415とハウジングローラ416との間に入り込むことにより、可動側の押し棒ローラ415が左方へ移動する。これに伴って、力伝達リング410を介して、押し棒ローラ415が左方へ駆動され、ガイドチューブ401が左方へ前進する。このときガイドチューブ401は、押し棒402その他内部に含む全ての部材及び歯車リング407を引き連れて前進する。歯車リング407は、幅広な歯を有する大歯車205との噛合を維持したまま、左方へ移動する。こうして、前進する押し棒402により、図示しないブレーキ装置が作動する。
【0017】
一旦動作した安全ブレーキ機構部3を復帰させるには、モータ200が稼働可能となってから、所定方向に回転させ、ねじ404を制動方向に回転させる。このとき押し棒402は既に所定のストローク分前進してブレーキをかけた状態であるため、さらに前進することはできない。従って、ねじ404の回転力は、ねじ404自身を後退させる力に変換され、ガイドチューブ401、力伝達リング410及び押し棒ローラ415に後退方向への力が付与される。押し棒ローラ415に後退方向への力が付与されると、くさび部材301には上昇方向への力が付与される。その結果、くさび部材301は、ねじ軸303を回転させながら上昇し、再びばね302を圧縮して図1に示す位置に復帰する。
【0018】
上記安全ブレーキの復帰動作において、押し棒ローラ415がくさび部材301を押し上げるとき、ねじ軸303には軸方向上向きに力(スラスト)が付与される。このとき、その力は順に、図2のスペーサ313、止め輪314及び支持リング312を介して、スラストベアリング311により受けとめられる。ここで、前述のように、スペーサ313は所定の厚さtを確保しており、周溝303cの深さ分だけ、ねじ軸303に食い込んでいるので、ねじ軸303と接触して軸方向の力を受けとめる面積を十分に確保することができる。また、スペーサ313の外周面はねじではなく一定径の円筒面であるため、軸方向から見たスペーサ313と止め輪314との接触面は環状となる。この接触面の面積は、止め輪314を雄ねじ部303bに直接取り付ける場合と比較すると、十分に大きな値となる。従って、止め輪314とスペーサ313との係合が安定したものとなり、止め輪314はスペーサ313に対して軸方向に付与された力を、安定して受けとめることができる。またさらに、この力は支持リング312を介してスラストベアリング311により受けとめられる。こうして、止め輪31を安定して保持しながら、ねじ軸303の軸方向に付与される力を確実に受けとめることができる。
【0019】
図4は、他の形状からなるスペーサ313を示す図であり、(a)は側面図、(b)は(a)におけるB−B線断面図である。このスペーサ313には、開端部に対して径方向反対側の位置に、軸方向に平行に溝313bが形成されている。この溝313bの存在により、この部分で肉厚が薄くなり、スペーサ313が外方に拡がりやすい。従って、ねじ軸303への装着が容易である。
【0020】
図5は、さらに他の形状からなるスペーサ313を示す図であり、(a)は側面図、(b)は(a)におけるB−B線断面図である。このスペーサ313は、周方向に2分割された形態である。この場合、スペーサ313を拡げてねじ軸303に通す必要がないため、装着が極めて容易である。なお、分割は3分割以上にすることも可能である。
【0021】
【発明の効果】
以上のように構成された本発明は以下の効果を奏する。
請求項1の作動装置の軸受構造によれば、外周形状が円弧状であるスペーサの溝に止め輪を装着することにより、軸方向における止め輪とスペーサとの接触面積が十分に確保されるので、止め輪はスペーサに安定して保持される。
【0022】
請求項2の作動装置の軸受構造によれば、溝の部分で肉厚が薄くなることにより、スペーサが外方に拡がりやすいので、ねじ軸の溝へスペーサを装着することが容易である。
【0023】
請求項3の作動装置の軸受構造によれば、スペーサをねじ軸に装着することが容易である。
【0024】
請求項4の作動装置の軸受構造によれば、支持リングがスペーサの拡がりを規制するので、スペーサはねじ軸に安定して保持される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による軸受構造を採用した作動装置の断面図である。
【図2】上記作動装置のA部(一点鎖線の丸で示す)を拡大した図である。
【図3】上記作動装置の軸受構造におけるスペーサを示す図である。
【図4】上記軸受構造におけるスペーサの他の形態を示す図である。
【図5】上記軸受構造におけるスペーサのさらに他の形態を示す図である。
【符号の説明】
2 常用ブレーキ機構部
3 安全ブレーキ機構部
303 ねじ軸
303c 周溝
311 スラストベアリング
312 支持リング
313 スペーサ
313a,313b 溝
314 止め輪
402 押し棒
Claims (4)
- モータの出力に基づいて押し棒を移動させる常用ブレーキ機構部と、ばねの出力に基づいて前記押し棒を移動させる安全ブレーキ機構部とを有する作動装置の軸受構造であって、
前記ばねの出力に基づいて回転駆動され、ねじ部の周方向に溝が形成されたねじ軸と、
前記溝に装着され、円弧状の外表面の周方向に溝が形成されたスペーサと、
前記スペーサの溝に装着された止め輪と、
前記止め輪を介して、前記ねじ軸の軸方向に作用する力を受けとめるスラストベアリングと
を備えたことを特徴とする作動装置の軸受構造。 - 前記スペーサはオープンエンドのリングであり、開端部に対して径方向反対側の位置に、軸方向と平行に延びる溝が設けられた請求項1記載の作動装置の軸受構造。
- 前記スペーサは、周方向に分割されている請求項1記載の作動装置の軸受構造。
- 前記スペーサに支持リングが外挿されている請求項1〜3のいずれかに記載の作動装置の軸受構造。
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