JP3871527B2 - 作動装置のばね力保持構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄道車両等のブレーキ装置を駆動する作動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、特許協力条約に基づく国際公開番号WO98/47750のパンフレットに掲載された作動装置(電気式ブレーキアクチュエータ)は、モータの回転に基づいて、ブレーキ装置を駆動する押し棒をその軸方向に移動させる常用ブレーキ機構部と、圧縮状態に保持したばねを放勢させることにより特殊な形状のピストンを駆動して、上記押し棒を軸方向に移動させる安全ブレーキ機構部とを備えている。図3は、このような作動装置における安全ブレーキ機構部の構造の概略を示す断面図である。
【0003】
図において、ハウジング101の一部と一体に円筒状に形成された案内スリーブ102には、楔ピストン103のピストン部103aが上下方向に摺動可能に外挿されている。楔ピストン103は、上記ピストン部103aの他、ばね支持部103b及び楔部103cを有して、一体に形成されている。楔部103cは紙面に垂直な方向に互いに距離をおいて一対設けられている。楔ピストン103の中心部にはねじ軸104が螺合し、このねじ軸104の回転により楔ピストン103が上下方向に移動可能である。楔ピストン103のばね支持部103bとハウジング101の上部との間には、2個のばね105が装着されている。
【0004】
ねじ軸104の上端部には、ねじ軸サポート106が取り付けられている。ねじ軸サポート106の外周には係止ばね107が巻かれ、その外側に係止スリーブ108が配置されている。図示の状態は、ばね105が圧縮された状態であり、この状態では、ばね支持部103bが下方に付勢されている。ばね支持部103bが下方に付勢されると、その付勢方向に対応する回転方向への回転駆動力がねじ軸104に付与されている。この回転駆動力は、係止ばね107を介して係止スリーブ108に付与される。係止スリーブ108の上端面には磁性体のリング109が取り付けられている。リング109は、ハウジング101の一部を構成する上部カバー101aに固定された電磁石110との間に、微小なギャップを介して対向配置されている。電磁石110が励磁されると、リング109が吸引され、係止スリーブ108は回転できない。従って、ねじ軸104は回転せず、ばね105を蓄勢した状態が維持される。電磁石110が消磁されると、リング109が釈放され、係止スリーブ108の回転が許容される。従って、ねじ軸104が回転し、楔ピストン103が下降する。
【0005】
一方、ブレーキ装置(図示せず。)を作動させる押し棒111は、ガイドチューブ112に保持されている。ガイドチューブ112はハウジング101により、図の左右方向に移動可能に保持されており、その両側面には押し棒ローラ113が設けられている。また、ハウジング側には、ハウジングローラ114が設けられている。楔部103cは、押し棒ローラ113及びハウジングローラ114と係合している。図示の状態から、楔ピストン103が下降すると、押し棒ローラ113が左方に押しのけられ、これによって、ガイドチューブ112及び押し棒111が左方に移動し、ブレーキ装置を作動させる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような従来の作動装置では、列車走行時等において、比較的重量の大きな楔ピストン103の振動が、ねじ軸104からねじ軸サポート106及び係止ばね107を介して、係止スリーブ108及びリング109へ直接的に伝わる。その振動によってリング109に作用する上下方向の力が電磁石110の吸引力を超えると、係止スリーブ108の回転を止めることができなくなる。この結果、楔ピストン103が下降し、安全ブレーキ機構部が意に反して作動することになる。
【0007】
また、上記のような従来の作動装置において、電磁石110は上部カバー101aに取り付けられている。一方、リング109は係止スリーブ108に取り付けられており、係止スリーブ108はねじ軸サポート106に巻かれた係止ばね107によって支持されている。すなわち、電磁石110とリング109とは互いに別々に支持される。従って、ギャップが容易には定まらず、組立時にギャップの調整が必要である。この調整が不完全であればギャップが本来の値に維持されず、電磁石による吸引及び釈放が確実に行われない。この結果、安全ブレーキ機構部の正常な機能が損われる。
【0008】
このように、従来の作動装置は、安全ブレーキ機構部の機能の信頼性が低かった。
上記のような従来の問題点に鑑み、本発明は、作動装置において、安全ブレーキ機構部の機能の信頼性を高める構造を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、モータの出力に基づいて押し棒を移動させる常用ブレーキ機構部と、ばねの出力に基づいて前記押し棒を移動させる安全ブレーキ機構部とを有する作動装置のばね力保持構造であって、
前記安全ブレーキ機構部のハウジング側に取り付けられた電磁石と、前記電磁石に対向する回転体部を有し、軸方向に固定されるとともに軸周りに回転可能に取り付けられた軸部材と、前記電磁石と前記回転体部との隙間に配置され、前記電磁石の励磁及び消磁によりそれぞれ吸引及び釈放されるリングと、前記リングと前記回転体部とを周方向に互いに係合させるとともに、前記電磁石の励磁によって前記リングに作用する吸引力より弱い力で前記リングを前記回転体部側に引き付ける戻しばねと、前記軸部材に対して軸方向に移動可能に、かつ、軸周りには相対回転が規制される状態で当該軸部材と係合した係止スリーブと、前記ばねの出力に基づいて前記係止スリーブに軸周りの回転駆動力を付与するねじ軸とを備えたものである(請求項1)。
【0012】
上記のように構成された作動装置のばね力保持構造(請求項1)において、ねじ軸に回転駆動力が付与されることにより、係止スリーブ及びこれと係合した軸部材に回転駆動力が付与されるが、電磁石の励磁によってリングが吸引されることにより、戻しばねを介して軸部材の回転が規制される。また、振動等の理由により係止スリーブを軸方向に移動させる力が作用しても、係止スリーブが軸部材に対して軸方向に移動可能であることにより、この力は軸部材に及ばない。従って、電磁石が軸部材を吸引する一定の状態は維持され、安全ブレーキ機構部のばね力が保持される。一方、電磁石の消磁によりリングは戻しばねによって戻され、所定のギャップが確保される。従って、軸部材は確実に釈放され、係止スリーブが回転して安全ブレーキが作動する。
【0013】
また、上記のばね力保持構造(請求項1)において、電磁石、軸部材、リング及び戻しばねは、1ユニットを構成していてもよい(請求項2)。
この場合、電磁石、軸部材、リング及び戻しばねは1つのユニットとして組み立てられた後、ハウジングに取り付けられる。このようなユニット内で電磁石とリングとの間のギャップを一定の値にすることは容易であり、また、その調整も容易である。また、ハウジングへの取り付け後に、ギャップ調整を行う必要がない。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一実施形態によるばね力保持構造を採用した作動装置を示す断面図である。また、図2は、図1の上部を拡大した断面図である。図1において、当該作動装置は、ハウジング本体1aと、上部カバー1bと、上部カバー1bの中央部に取り付けられた蓋1cとによって構成されるハウジング1内(但し、一部突出している。)に、モータを駆動源とする常用ブレーキ機構部2と、ばねの出力を駆動源とする安全ブレーキ機構部3と、これら両機構部によって、図の左右方向を軸方向として駆動される押し棒機構部4とを備えている。安全ブレーキ機構部3は、上記モータが使用不可の場合や、停電時等にのみ、非常ブレーキとして作動する。
【0015】
上記押し棒機構部4において、ガイドチューブ401は、ハウジング1により軸方向に摺動可能に保持されている。このガイドチューブ401に内挿された押し棒402は、左端部以外が円筒状であり、ガイドチューブ401に対して軸方向に摺動可能である。この押し棒402にはボールねじが内蔵されており、当該ボールねじを構成するねじ403の右端側小径部403aに、ガイドチューブ401の内径より小さい外径を有するリング404が外嵌されている。リング404とガイドチューブ401の右端部401aとの間には、スラストベアリング405が装着されている。外周側が歯車になっている歯車リング406は、ねじ403の右端部403bに外嵌されている。ラジアルベアリング407は、歯車リング406の内筒部406aとガイドチューブ401の右端部401aとの間に装着されている。
【0016】
また、力伝達リング408は、ガイドチューブ401に外挿され、かつ、固定されている。力伝達リング408の両側面には、一対の押し棒ローラ409が回転自在に取り付けられている。この押し棒ローラ409がねじ403の軸方向に移動すると、力伝達リング408を介してガイドチューブ401が移動する。一方、押し棒ローラ409と対向してガイドチューブ401の両側面に配置された一対のハウジングローラ410は、ハウジング1に回転自在に支持されている。
【0017】
一方、常用ブレーキ機構部2にはモータ200が設けられている。被駆動シャフト202は、モータ200のシャフト201の右端に対向して、かつ、シャフト201と同軸に配置されている。シャフト201と被駆動シャフト202との間には、クラッチ装置203が介在している。被駆動シャフト202の右端に設けられた小歯車204は、ハウジング1に対して回転自在に支持されている大歯車205と噛合して、これを駆動する。大歯車205は、歯車リング406と噛合して、これを駆動する。上記クラッチ装置203は、シャフト201の回転を被駆動シャフト202に伝達するとともに、シャフト201が回転停止したとき、それまで回転していた方向と逆方向に被駆動シャフト202が回転することを阻止する構成となっている。
【0018】
また、安全ブレーキ機構部3においては、上部カバー1bの中央に、鍔状部301aと円筒状部301bとを有する案内スリーブ301が取り付けられている。案内スリーブ301の円筒状部301bには、略円筒状の押さえ部材302が外挿されている。押さえ部材302は、案内スリーブ301に対して、軸方向に微小な所定範囲で摺動可能である。押さえ部材302の外周には、リング状のばね受け303が係合している。
【0019】
一方、楔ピストン304は、押さえ部材302に外挿される円筒状のピストン部304aと、略円盤状のばね支持部304bと、紙面に垂直な方向に互いに離隔して一対設けられた楔部304cとを備えている。この楔部304cの先端は、前述の押し棒ローラ409及びハウジングローラ410と係合している。大小2個のコイルばねのうち外側のばね305は、楔ピストン304のばね支持部304bと、ばね受け303との間に装着されている。また、内側のばね306は、ばね支持部304bとばね受け303との間に、リング状の他のばね受け307を介して装着されている。ねじ軸308は、楔ピストン304のばね支持部304b内周に装着された雌ねじ部材309に螺合して、ボールねじのような関係を構成している。
【0020】
上記ねじ軸308の上端側には、円筒形のねじ軸サポート310が取り付けられている。押さえ部材302に取り付けられた円筒部材311は、ねじ軸サポート310と同一の外径を有する。ねじ軸サポート310と円筒部材311との間には、スラストベアリング312が装着されている。係止スリーブ313は、案内スリーブ301に対して径方向に隙間を保って内挿されている。係止ばね314は、ねじ軸サポート310及び円筒部材311の外周に巻装され、その一端が係止スリーブ313に係止され、他端がねじ軸サポート310に係止されている。
【0021】
案内スリーブ301の鍔状部301aの内側には、電磁石315が取り付けられている。すなわち電磁石315は、案内スリーブ301を介して、ハウジング1の上部カバー1bに取り付けられている。電磁石315の内側には、ベアリング317を介して、軸部材318が回転可能に支持されている。ベアリング317は電磁石315及び軸部材318に対して緊密に嵌合されており、従って、軸部材318は、電磁石315に対して軸方向には固定されている。軸部材318は回転体部としての円盤部318aを備えており、円盤部318aの複数箇所(例えば3箇所)に、孔318bが周方向に等間隔で設けられている。各孔318bには戻しばねとしての板ばね319が装着され、この板ばね319を介して、円盤部318a上に、磁性体からなるリング316が取り付けられている。
上記軸部材318、リング316及び板ばね319は、全体として、電磁石315に対する一つの回転部材を構成している。
【0022】
上記板ばね319は、リング316に対して、これを円盤部318a側に引き付ける力を付与している。この力は、電磁石315が励磁されたときリング316に作用する吸引力より弱い。また、板ばね319を介して、リング316と円盤部318aとは周方向に互いに係合している。従って、リング316と円盤部318aとは周方向に相対回転できない(すなわち一体に回転する)関係となっている。電磁石315が励磁されるとリング316はこれに吸引され、軸部材318は回転することができない。一方、電磁石315が消磁されるとリング316は釈放され、軸部材318は回転可能となる。このとき、リング316は板ばね319により円盤部318a上に引き戻され、リング316と電磁石315の下端面との間に所定のギャップが確保される。
【0023】
上記軸部材318の下端部318cは、外周形状が多角形である。また、係止スリーブ313も同様の多角形の孔313aを有している。このような多角形の孔313aを有する係止スリーブ313を、外周形状が多角形の下端部318cに軸方向から外挿することにより、係止スリーブ313は、軸方向に移動可能に、かつ、軸周りには軸部材318との相対回転が規制される状態で当該軸部材318に係合する。従って、係止スリーブ313と軸部材318とは、軸方向の力伝達に関しては互いに遮断された関係にあり、周方向には互いに一体に回転して駆動力を伝達する。但し通常は電磁石315が励磁されており、軸部材318及び係止スリーブ313は回転できない。
なお、安全ブレーキ機構部3内の上記各部材は、ねじ軸308を中心として同軸的に配置されている。
【0024】
上記押さえ部材302の下端中央部は、ねじ軸308の外周の一部に設けた溝に係止された支持リング321と係合している。これにより、押さえ部材302の下方への移動が規制されている。また、図2に示すように、押さえ部材302の上端部302aは、案内スリーブ301に形成された周溝301cに挿入され得る形状となっている。この周溝301cにはリング状の弾性部材(ゴム等)322が装着され、その下端面が上端部302aの端面全周に当接している。また、上端部302aの内側には2段の段部302bが設けられており、これらの段部302bが、対応する案内スリーブ301の段部301dに当接する位置が押さえ部材302の上限位置となる。すなわち、押さえ部材302は、支持リング321(図1)によって規制された下限位置から、当該上限位置までの範囲で、軸方向に摺動可能である。また、押さえ部材302は案内スリーブ301に対して、軸方向への僅かな移動を妨げられない程度に緊密に外挿されている。こうして、固定部材である案内スリーブ301は、押さえ部材302を、ばね305,306の伸縮方向に沿った軸方向に案内するとともに、軸方向に対して傾斜する方向への押さえ部材302の移動を規制する。
【0025】
一方、圧力センサ323は案内スリーブ301の上面から装着され、弾性部材322の上端面の一部に当接している。圧力センサ323は案内スリーブ301に螺着されたロックナット324によって固定され、ロックナット324にはキャップ325が被せられている。
押さえ部材302が摺動して弾性部材322が押圧されると、その荷重に応じた出力信号が圧力センサ323から出力される。
【0026】
上記のような構成において、電磁石315、リング316、ベアリング317、軸部材318及び板ばね319は、1つの小ユニットを構成しており、ユニットとして組み立てられた後、案内スリーブ301に取り付けられる。このような小ユニット内で電磁石315とリング316との間のギャップを一定の値にすることは容易であり、また、その調整も容易である。従って、所望の一定のギャップを容易に得ることができる。また、案内スリーブ301への取り付け後に、ギャップ調整を行う必要がないため、作動装置の組立が容易になる。
【0027】
次に、上記のように構成された作動装置の動作について説明する。
まず、常用ブレーキ動作について簡単に説明する。図1に示す状態(ブレーキ解除状態)からモータ200が所定方向に回転すると、クラッチ装置203を介して被駆動シャフト202が回転駆動される。これにより、小歯車204、大歯車205、歯車リング406及びねじ403が回転し、押し棒402が図の左方向へ前進する。押し棒402の前進により、図示しないブレーキ装置が作動する。モータ200が逆方向に回転すると、押し棒402が後退して、ブレーキが解除される。
【0028】
次に、安全ブレーキ動作について説明する。図1に示す状態において、ばね305,306は蓄勢され、楔ピストン304のばね支持部304bは下方に付勢されている。これにより、ねじ軸308は、楔ピストン304の下方移動に対応した軸周りの回転方向に回転駆動力を付与されている。従って、ねじ軸サポート310及び係止ばね314を介して、係止スリーブ313及び軸部材318も所定の回転方向に回転駆動力を付与されている。しかしながら、通常は、軸部材318及び係止スリーブ313が回転できないので、ねじ軸308は回転しない。
【0029】
列車走行時の振動等により、係止スリーブ313に対してこれを軸方向へ移動させる力が作用した場合、係止スリーブ313は軸方向に若干移動するが、係止スリーブ313が軸部材318に対して軸方向に移動可能であることにより、軸部材318にはこの力が及ばない。また、軸部材318は、軸方向には固定されているので、軸方向に移動することはない。従って、リング316は、電磁石315に吸引された状態を維持する。すなわち、係止スリーブ313は回転せず、ばね力は保持される。
係止スリーブ313が回転及び停止を繰り返すことにより軸方向に若干移動した場合も同様に、ばね力が保持される。
【0030】
上記の状態から、安全ブレーキ指令に基づいて電磁石315が消磁されると、リング316に作用する吸引力が失われる。このとき、板ばね319により、リング316は円盤部318a上に引き戻され、電磁石315とリング316との間に所定のギャップが確保される。従って、リング316は釈放され、軸部材318及び係止スリーブ313は円滑に回転し始める。これに追随して、ねじ軸サポート310及びねじ軸308も回転し、楔ピストン304は下降する。下降する楔ピストン304の楔部304cが、押し棒ローラ409とハウジングローラ410との間に押し入ることにより、可動側の押し棒ローラ409が左方へ移動する。これに伴って、力伝達リング408を介して、ガイドチューブ401が左方へ前進する。このときガイドチューブ401は、押し棒402その他内部に含む全ての部材及び歯車リング406を引き連れて前進する。歯車リング406は、幅広な歯を有する大歯車205との噛合を維持したまま、左方へ移動する。こうして、前進する押し棒402により、図示しないブレーキ装置が作動する。
【0031】
ブレーキ装置の作動により、その反力が、楔部304cを介して楔ピストン304の軸方向への反力に変換される。この反力が、ばね305,306、ばね受け307、ばね受け303、押さえ部材302及び弾性部材322を介して、圧力センサ323により検出される。従って、圧力センサ323が所定の反力を検出することにより、実際に所定のブレーキ力が生じたことを確認することができる。
【0032】
一旦動作した安全ブレーキ機構部3を復帰させるには、モータ200が稼働可能となってから、所定方向に回転させ、ねじ403を制動方向に回転させる。このとき押し棒402は既に所定のストローク分前進してブレーキをかけた状態であるため、さらに前進することはできない。従って、ねじ403の回転力は、ねじ403自身を後退させる力に変換され、ガイドチューブ401、力伝達リング408及び押し棒ローラ409に後退方向への力が付与される。押し棒ローラ409に後退方向への力が付与されると、楔ピストン304には上昇方向への力が付与される。その結果、楔ピストン304は、ねじ軸308を回転させながら上昇し、再びばね305,306を圧縮して図1に示す位置に復帰する。
【0033】
なお、上記実施形態では軸部材318に板ばね319を設けたが、これは板ばねに限られず、他の種類のばねによって代用することもできる。
また、軸部材318と係止スリーブ313との係合は多角形の雌雄係合としたが、軸方向に相対移動が許容され、周方向に相対回転が規制される構成は、これに限られるものではない。例えば円形の雌雄係合を基調としてどちらか一方に凹部を設け、他方には当該凹部と合致する形状の凸部を設けることによっても、同様の作用効果が得られる。
【0034】
【発明の効果】
以上のように構成された本発明は以下の効果を奏する。
【0035】
請求項1の作動装置のばね力保持構造によれば、振動等の理由により係止スリーブを軸方向に移動させる力が作用しても、係止スリーブが軸部材に対して軸方向に移動可能であることにより、この力は軸部材に及ばない。従って、電磁石が軸部材を吸引する一定の状態は維持され、安全ブレーキ機構部のばね力が保持される。一方、電磁石の消磁によりリングは戻しばねによって戻され、所定のギャップが確保されるので、軸部材は確実に釈放され、係止スリーブが回転して安全ブレーキが作動する。このようにして、安全ブレーキ機構部の機能の信頼性を高めることができる。
【0036】
請求項2の作動装置のばね力保持構造によれば、電磁石、軸部材、リング及び戻しばねは1つのユニットとして組み立てられた後、ハウジングに取り付けられるので、電磁石とリングとの間のギャップを一定の値にすることが容易であり、また、その調整も容易である。従って、所望の一定のギャップを容易に得ることができる。また、ハウジングへの取り付け後に、ギャップ調整を行う必要がないため、作動装置の組立が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態によるばね力保持構造を採用した作動装置を示す断面図である。
【図2】図1における上部の拡大図である。
【図3】従来の作動装置における安全ブレーキ機構部の構造の概略を示す断面図である。
【符号の説明】
1 ハウジング
2 常用ブレーキ機構部
3 安全ブレーキ機構部
200 モータ
305,306 ばね
308 ねじ軸
313 係止スリーブ
315 電磁石
316 リング
318 軸部材
319 板ばね
402 押し棒
Claims (2)
- モータの出力に基づいて押し棒を移動させる常用ブレーキ機構部と、ばねの出力に基づいて前記押し棒を移動させる安全ブレーキ機構部とを有する作動装置のばね力保持構造であって、
前記安全ブレーキ機構部のハウジング側に取り付けられた電磁石と、
前記電磁石に対向する回転体部を有し、軸方向に固定されるとともに軸周りに回転可能に取り付けられた軸部材と、
前記電磁石と前記回転体部との隙間に配置され、前記電磁石の励磁及び消磁によりそれぞれ吸引及び釈放されるリングと、
前記リングと前記回転体部とを周方向に互いに係合させるとともに、前記電磁石の励磁によって前記リングに作用する吸引力より弱い力で前記リングを前記回転体部側に引き付ける戻しばねと、
前記軸部材に対して軸方向に移動可能に、かつ、軸周りには相対回転が規制される状態で当該軸部材と係合した係止スリーブと、
前記ばねの出力に基づいて前記係止スリーブに軸周りの回転駆動力を付与するねじ軸と
を備えたことを特徴とする作動装置のばね力保持構造。 - 前記電磁石、軸部材、リング及び戻しばねは、1ユニットを構成している請求項1記載の作動装置のばね力保持構造。
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