JP3726932B2 - 釣糸ガイドを有する中通し釣竿の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、竿管本体の内側に釣糸ガイドを突出配設させた中通し釣竿の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
中通し釣竿では、内部に釣糸を挿通させるため釣糸抵抗の低減が問題となり、このため釣糸を案内する個別の環状や螺旋状に連続した釣糸ガイドを竿管内面に突出して設ける工夫がなされている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
然しながら、内側に釣糸ガイドを設ける製造方法上の問題で、釣竿の撓んだ際に竿管本体側に応力集中が生じてそこから破損したり、また、釣糸ガイドに耐久性が乏しかったりする問題が有る。また、釣糸ガイドを設けるにしても、釣糸接触部の形状や大きさを適切に設定しなければ釣糸抵抗の低減効果を大きくできない。
【0004】
依って本発明は、竿管本体の内側に釣糸ガイドを突出配設させても竿管強度の低下が小さいと共に、形成された釣糸ガイドの耐久性や糸案内性の高い中通し釣竿の製造方法の提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的に鑑みて本発明は請求項1において、合成樹脂をマトリックスとし、強化繊維で強化した竿管本体の内側に釣糸ガイドを突出配設させる中通し釣竿の製造方法であって、テープを側縁間に互いに適宜な隙間を設けるように芯材に巻回し、その隙間に亘って薄肉のテープ又はシートを配設するか、或いは、適宜な溝を有するテープ又はシートを、その溝が外側に向くように芯材に巻回し、該隙間又は溝に、多数の繊維を束ね、該多数繊維の束全体に対してだけ撚りを設けて形成したものに合成樹脂を含浸させた釣糸ガイド素体を巻装し、この外側から竿管本体形成用の素材を巻装させ、前記隙間や溝の、前記釣糸ガイド素体を受け入れることの可能な断面面積が前記釣糸ガイド素体の横断面の面積と同程度であり、前記テープやシートは竿管成形後に除去することを特徴とする釣竿の製造方法を提供する。薄肉のテープやシートは残す場合がある。
【0006】
請求項1では、隙間や溝の、釣糸ガイド素体を受け入れることの可能な断面面積は、釣糸ガイド素体の横断面積と同程度であり、また、釣糸ガイド素体は繊維の束に撚りを設けて形成しているためばらけ難く、これらのため外側に竿管本体形成用の素材を巻装させて加圧成形しても、釣糸ガイド素体の構成繊維が大きく移動せず、竿管本体形成用素材がこの隙間や溝内に移動することが防止され、該隙間や溝内の残り隙間には釣糸ガイド素体に含浸した合成樹脂が主に流れ出す。従って、竿管本体形成用素材の強化繊維の乱れが防止されて竿管が高強度に形成される。
【0007】
また、釣糸ガイドは加圧によって芯材側に押付けられ、また撚りを掛けているため、構成繊維が殆ど移動できないため、釣糸ガイドの頂部側は繊維が多く占有し、釣糸摩擦に対して耐久性を有し、樹脂枯れ等が生じ難く、糸案内性も高い。更には、釣糸ガイド素体はその構成繊維の束全体に対してだけ撚りを設けて形成しており、小さな束要素に撚りを設け、これらを複数併せて大きな1束に構成することは行っておらず、こうした束要素の寄せ集めの場合では成形後もその束要素間に境界が残るため釣糸摩擦に対して釣糸ガイドの耐久性が小さくなるが、これに比較して本願の方法によって成形された釣竿の釣糸ガイドは耐久性が向上する。
【0008】
請求項2では、請求項1において、前記竿管本体の形成プリプレグの樹脂比率が30wt%未満であって、前記釣糸ガイド素体の樹脂比率が35〜50wt%であるようにする。
請求項2により、釣糸ガイド素体から釣糸ガイドを成形する際に、竿管本体形成プリプレグからの樹脂流入を含め、(厚肉)テープ間隙間内で樹脂流れが不足しないようにできる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下本発明を添付図面に示す実施の形態例に基づき、更に詳細に説明する。
図1は本発明に係る中通し釣竿の製造方法を説明するための図であり、芯金(芯材)10の上に通常使用する離型剤を塗布し、更には、エポキシ樹脂等の樹脂を塗布して、この上からフッ素材等の耐熱性の厚肉テープ12を適宜な隙間を設けながら巻回する。塗布された樹脂の接着作用によって厚肉テープは芯金10の上で巻回状態が安定する。この厚肉テープ12はその断面形状が台形状(寸法例として上底、下底、高さは、夫々0.4mm,1.2mm,0.4mm)になるように両側縁を図示の如く傾斜面12Kに形成しており、隣接したテープ間隙間の形状も台形状になっている。この台形隙間の上底長さBは0.1〜0.4mm程度がよい。
【0010】
テーパを有する芯金10に対してピッチを一定にして巻回すれば、径の大きな元側ではテープの方向はより円周方向に近く、径の小さな先側では、より長手方向に近くなる。この台形状隙間の両側の厚肉テープの上面にまで亘る幅を有し、ポリプロピレン等の薄肉テープ14を前記台形状隙間内に垂れるように巻回敷設し、その後、予め準備しておいた釣糸ガイド素体16を薄肉テープ14の上から台形状隙間の中に巻回配設する。
【0011】
その後は、竿管本体用プリプレグを巻回し、緊締テープ等によって加圧しつつ加熱成形する。この緊締テープの方向は、上記テープ間隙間に螺旋状に巻回した釣糸ガイド素体16の巻回方向に対して交差する方向(例えば、右巻に対して左巻き)に巻回すると、成形竿管内での釣糸ガイドの高さが均一化し易い。成形後には芯金10を抜き取り、厚肉テープ12を除去し、一般には、薄肉テープ14も除去するが、これは残す場合も有る。
【0012】
厚肉テープ間の台形状隙間内に侵入した薄肉テープ14と厚肉テープ12の高さである破線L1とによって囲まれた面積が釣糸ガイド素体16を受け入れることの可能な断面面積であり、これは釣糸ガイド素体16の横断面積と同程度に形成する。前者の面積を100とすれば釣糸ガイド素体16の横断面積を70〜110程度にする。薄肉テープ14はその巻回時張力を大きくすれば、厚肉テープ間の台形状隙間内に多く侵入でき、小さな張力では少ししか侵入できない。これによって釣糸ガイド素体16を受け入れることの可能な断面面積を調節可能である。
【0013】
釣糸ガイド素体16は炭素繊維等の繊維を数千本程度の多数本引き揃えて、これに撚りを掛け、これにエポキシ樹脂等を含浸させて形成する。3千本程度の束の場合は、1m当り80〜120回程度撚ると横断面が円形に近くなり易い。これ以上だと張力を掛けておかないと絡み合い、これ以下だと撚りにむらが生じてさばけ、テープ間の隙間に入り難くなる。6千本程度の束の場合は、1m当り60回程度の撚りがよい。即ち、釣糸ガイド素体16の径の大小で撚りの程度を変えるとよい。もし撚りを設けない場合は、孔に通して扱くようにすれば、テープ間の隙間に入り易くなる。何れにしても繊維方向は、ほぼ釣糸ガイドの長手方向に沿っている。
【0014】
釣糸ガイド素体の合成樹脂の含浸量は25〜50wt%にする。25wt%より少なくては樹脂量が少なくなり過ぎて気泡が発生し易く、釣糸案内表面が粗面化する。また、相対的に繊維量が多いため、釣糸ガイド素体が重くなり、ひいては釣竿が重くなる。50wt%を越えれば樹脂量が多過ぎて繊維が流され、釣糸ガイド素体の形が崩れ易い他、繊維量が不足して耐摩耗性が劣る。竿管本体形成プリプレグの樹脂比率が30wt%以上の場合は、釣糸ガイド素体の合成樹脂含浸量は25〜40wt%が好ましく、竿管本体形成プリプレグの樹脂比率が30wt%未満の場合は、釣糸ガイド素体の合成樹脂含浸量は35〜50wt%が好ましい。これは釣糸ガイド素体から釣糸ガイドを成形する際に、竿管本体形成プリプレグからの樹脂流入を含め、厚肉テープ間隙間内で樹脂流れが不足しないようにするためである。
【0015】
こうして形成された釣糸ガイドGを図3に示す。20は竿管本体の層である。テープ間隙間を釣糸ガイド素体16の横断面積と同程度に形成していると共に、釣糸ガイド素体は繊維の束に撚りを設けて形成しているためばらけ難く、加熱成形時に釣糸ガイド素体16の繊維が流動し難く、巻回後に緊締テープ等によって加圧されて芯金10の方に押付けられ、樹脂の含浸された繊維束GSのまま殆どそのままの位置に在り、本体プリプレグとの接触側(ガイドGの裾野側)の小さな隙間には釣糸ガイド素体の合成樹脂が流動し易くてガイドGの裾野GJを形成するが、釣糸との接触面となるガイドGの頂部付近は繊維が多くを占め、耐久性が向上する。また、既述のように、薄肉テープとラインL1との成す隙間は釣糸ガイド素体の大きさ程度であるため、本体層用のプリプレグの強化繊維が芯金方向へ流動することが防止され、本体層に蛇行が生じ難く、高強度な竿管が形成できる。
【0016】
釣糸ガイド間には、図3に示すような高さの低い凸部SGが形成されることがあるが、これは、テーパ付の芯金10に柔らかい厚手のフッ素テープに張力を付与して巻回しているため、フッ素テープは均等には伸びず、厚肉テープ12の上面部18が窪んで形成されるものと考えられるが、この存在は釣糸が直接に竿管内面に接触することを防止する。釣糸ガイドGのピッチPは高さHの50倍より大きくし、好ましくは100倍よりも大きくするとよい。釣糸を放出する場合は釣竿は軽く撓む程度であり、上記ピッチPでも釣糸は釣糸ガイドで受けられ、釣糸抵抗が大きくならず、飛距離が伸び、また正確な位置に投擲できる。また、仕掛けに掛った魚を巻き上げる場合のように釣竿が大きく撓む際には、ピッチPが大きければ、竿管本体層の内面で釣糸の大部分を直接に受けることになり、例え釣糸ガイドGが柔らかな合成樹脂部材で形成されていても、これの摩耗を防止できる。
【0017】
釣糸ガイドGの表面硬度を、使用する釣糸の硬度と同じ程度にすると互いに摩耗し難いのでよい。即ち、合成樹脂製釣糸に対し、同程度の硬度の合成樹脂材で釣糸ガイド全体を形成したり、表面部のみを形成したりである。また、釣糸と同一又は同種の材料で形成すると相互に傷がつき難く、好ましい。例えば、ポリアミド系の合成樹脂釣糸を使用する場合を想定しては、釣糸ガイドにポリアミド被膜を形成したり、ガイド全体をそれで形成したりである。何れかをやや硬い硬度にする場合は、釣糸ガイドの方をやや硬い硬度とすることが、釣糸よりも釣竿の耐久性を保持する意味で望ましい。また、釣糸ガイド表面を鏡面状に形成すれば釣糸抵抗の低減に寄与できる他、釣糸の摩損を防止できる。このためには、例えば熱可塑性樹脂の被膜を釣糸ガイドの表面に一体化させたり、釣糸ガイド頂部近くに設けた小さな孔部に硬質部材等を埋め込んだ後に研摩したり、加熱成形後に釣糸ガイドの表面を研摩したりする。
【0018】
スピニングリールとの関係から、螺旋状釣糸ガイドの螺旋方向が、釣糸がスピニングリールから放出された際の糸癖の旋回方向に対して逆方向であると、釣糸が釣糸ガイドによって充分に受けられ、糸抵抗低減から好ましい。
釣竿の穂先部では、釣糸ガイドの高さは0.2mm以下にする場合もある。これは内径を大きくして釣糸の挿通空間を大きく確保したり、釣糸ガイドの存在による穂先竿管本体に作用する応力集中を低減するためである。
釣竿の細径部(先部)では、釣糸ガイドの高さを高く形成できないため、釣糸ガイドと竿管内面とを共に撥水性に形成して水滴を付着させないようにし、糸抵抗を低減することが好ましく、大径部(元側部)は釣糸ガイドの高さを高く形成できるため、実際に高く形成した場合には、釣糸ガイド頂部の近くは撥水性に形成して水滴を竿管内面方向に流し、一方、竿管内面は10ミクロン以上の凹凸の粗面や親水性の面に形成して受けた水滴を吸い込むようにして消滅させたり薄く広げたりすることにより、挿通する釣糸が水滴と接触することを防止して糸抵抗を低減させる。
【0019】
穂先部は水滴が侵入し易いため、釣糸がその水滴に接触しないようにするためには釣糸ガイドの高さを可級的に高く設定することが好ましく、逆に、元側は水滴が侵入し難く、従って、釣糸ガイドの高さは低くてもよい。このため穂先部の釣糸ガイド高さを0.4〜0.5mm程度にし、元側(中竿)のそれを0.1〜0.4mm程度にしてもよい。例えば、穂先竿では0.4mm、中竿では0.2mmとする。
【0020】
釣糸ガイドの高さを1つの竿管内でほぼ同じにする。この条件で以下の態様がある。
イ)竿管の先側の本体層を釣糸ガイド高さよりも薄くし、元側を厚くすると、竿管の撓み性を向上させつつ糸抵抗が低減でき、また、大きな力の作用する元側本体層が厚肉であるため、釣糸ガイドに起因する応力集中に対しても高強度で耐久性がある。これは対象魚を中小の魚とする磯竿等に適する。
ロ)1本の竿管内では本体層の肉厚を釣糸ガイドの高さよりも薄肉にすると撓み易い竿管となり、軟調子の釣竿に適する。
ハ)1本の竿管内では本体層の肉厚を釣糸ガイドの高さよりも厚肉にすると丈夫な竿管となり、大物魚を対象魚とする磯竿や、船竿、ボート竿等に適する。
【0021】
螺旋状釣糸ガイドは、竿管の円周方向を角度基準のゼロ度とすれば60度程度まで傾斜(リード角が60度程度)させられる。穂先側は元側よりもリード角を大きくとれば、それだけ水滴が外に排出され易く好ましい。従って、穂先竿ではリード角を45〜60度程度に設定することが好ましい。50度を超えて60度程度までに形成させると更に好ましい。
【0022】
以上の説明で、薄肉テープ14は幅の広い薄肉シート部材でもよい。また、これら薄肉テープや薄肉シートに撥水性等の性質を付与し、加熱成形によって釣糸ガイドGや竿管本体層20の内面に接合する程度の耐熱度であれば、既述のように除去することなく残すとよい。一般には熱可塑性樹脂テープ等に撥水性を付与するのがよい。また、厚肉テープ間の隙間ではなく、厚肉テープや厚肉シートの外側面に所望断面形状の溝を形成したものを使用し、ここに釣糸ガイド素体16を巻回配設してもよい。この場合の溝の断面形状を曲面状にすれば、薄肉テープ14や薄肉シートを使用しなくても、成形された釣糸ガイドの釣糸案内面には角が生じない。
図2は厚肉テープ12’の断面が台形ではなく矩形の場合であり、このように本願の方法では厚肉テープの形状に特別な制約は無いが、後述のように、より耐久性の高い釣糸ガイドを有し、竿管本体の強度を保持する釣竿を製造するには、特定の台形状が良い。
【0023】
図4は釣糸ガイドGと竿管本体層20との境界に特徴を有する構造についての形態例を示す。竿管本体層20の構造の典型例は、強化繊維が主として軸長方向に指向した厚さの厚い中間層20Bと、この外側に配設され、強化繊維が主として円周方向に指向した薄肉の外側層20Aと、内側に配設され、強化繊維が主として円周方向に指向した薄肉の内側層20Cとで構成されている。本形態例ではこの内側層20Cの更に内側に、強化繊維が主として軸長方向に指向した同様な薄肉の軸長方向層20Dを配設しており、層20Cと層20Dとの強化繊維同士が直交方向に交差していることにより、釣糸ガイド素体を竿管本体層の内側に突出配設する成形時の加圧作用による釣糸ガイド素体の竿管本体層内への埋没を防止できる。このことは、竿管本体層20の、特に層20Bの強化繊維が蛇行して竿管強度が低下することを防止する。交差は必ずしも直交方向でなくて、斜交状態でもよい。
【0024】
図5は上記と同様な作用の竿管本体層の構造形態例である。20A,20B,20C,20Dは上記と同様であり、更に内側に、強化繊維が主として円周方向に指向した同様な薄肉の内側層20Eと、強化繊維が主として軸長方向に指向した同様な薄肉の軸長方向層20Fとを配設しており、直交方向に交差する強化繊維層の組が2組配設された構造である。図4の構造に比べて埋没防止の効果が強化される。その他の変形形態例として、層20Fが無くてもよく、この場合は、層20Dと層20Eとが埋没防止組と考えられる。各層厚の例としては、層20A,20B,20C,20D,20E,20Fの順に、0.05mm,0.4mm,0.03mm,0.03mm,0.03mm,0.03mmである。各層の厚さ範囲は一般に、層20Aは0.01〜0.1(好ましくは0.01〜0.05)mm、層20Bは0.08〜1mm、残りの各層はいずれも0.01〜0.05(好ましくは0.01〜0.03)mmである。
【0025】
図6には、芯金10に厚肉テープ12を巻回し、その隙間に亘って配設する薄肉テープ等は図示を省略しており、隙間に巻装された釣糸ガイド素体と、その上に巻装された竿管本体用プリプレグとが加圧加熱成形された後の状態の断面を図示している。芯金10に巻回された厚肉テープ12の形状寸法が、既述の例の通り、上底、下底、高さが夫々0.4mm,1.2mm,0.4mmの左右対称な台形の場合、下底両隅の角度θは45度であり、こうして現実に成形されるおむすび状釣糸ガイドGの裾野角度も概ね同じ角度θとなる。但し、この寸法例は1例に過ぎない。図7に示すように、この角度θが小さな場合は、成形時の加圧によってもテープ間隙間の裾野領域SPには撚りを掛けた釣糸ガイド素体16の変形は広がり難い。従って、この領域SPに繊維や樹脂の不足が生じる。また、この角度θが大きな場合を図8に図示するが、この場合では、加圧によってもテープ間隙間の頂部領域SP’には撚りを掛けた釣糸ガイド素体16の変形は広がり難い。従って、この領域SP’に繊維や樹脂の不足が生じる。
【0026】
こうした繊維や樹脂の不足領域は耐久性が弱く、釣糸ガイドGの頂部の場合は釣糸案内性も劣り、また裾野の場合はここに応力集中が生じ、竿管本体20の強度が低下する。角度θが大きな場合には、その成形釣糸ガイドの裾野部が竿管本体20に対して応力集中を生じせしめ、同様に竿管本体20の強度が低下する。従って、角度θには適切な範囲があり、概ね45±15度の範囲内であれば釣糸ガイドGの耐久性も竿管本体20の強度も保持できる。
【0027】
次に、おむすび状釣糸ガイドGの頂部は外に凸な曲面形状であるが、図6に示す台形状厚肉テープ12間の隙間間隔Bを小さくし過ぎれば、釣糸ガイドGの頂部が尖り過ぎて釣糸が切れ易く、また釣糸ガイドGの摩損が大きく、間隔Bを大きくし過ぎれば釣糸の接触長さが長過ぎて糸抵抗が増大する。従って、間隔Bには適切な範囲があり、0.1mm以上、0.4mm未満がよい。この釣糸ガイドGの頂部の幅を代表する寸法Bを釣糸ガイドGから測るには、釣糸ガイドの頂点Tを通り、竿管本体20の長手方向に平行なライン(図6では点P4とP1を通るライン)と、おむすび状釣糸ガイドGの両側面の延長ライン(図では点P3とP4を結んだライン、点P2と点P1を結んだライン)との交点P4,P1間の距離である。
【0028】
図6では釣糸ガイドGの形成にテープ12を使用した例を示したが、このテープに代って、横断面形状が釣糸ガイド断面形状である溝を形成した厚肉シートを使用し、この溝に釣糸ガイド素体を巻装する方法でもよい。この場合、溝の側壁面は必ずしも平面ではなく、緩い曲面であっても、側壁面の幅方向中央位置付近の接平面を、図6の点P1とP2を結ぶラインや点P3とP4を結ぶラインに相当する仮想平面(仮想ライン)として考えれば、後は図6のテープの場合と同様である。
【0029】
竿管本体20の内部に釣糸ガイドGを形成した場合、竿管本体が図9(a)のようにストレートであれば、その長手方向強化繊維がストレートなため竿管の強度上最も良いが、既述のように実際の釣糸ガイドの製造では、フッ素テープのような軟質なテープを使用して、該テープに張力を付与しつつ芯金に巻回すると、テープ中央部が縁部に比べて窪み、その結果、竿管本体20は図9(b)のようになり、釣糸ガイドG間の竿管本体部は、t2部位(中央部位)が厚く、t1部位(端部部位)が薄くなる。両者の差Δtは一般にt2の1/10程度以下であり、実寸では0.02mm程度である。t1部位は釣糸ガイドGの存在によって応力集中を生ずるが、t1部位もt2部位も繊維量が概ね同じであるためt1部位では薄肉となる分だけ繊維比率が高くなり、その分前記応力集中に対抗でき、竿管強度を保持できる。
【0030】
また、竿管本体20が(c)のようになれば、釣糸ガイドGの存在による釣糸ガイド元部の応力集中は(b)の場合よりは緩和され、更には、釣糸ガイドの元部(t1’部位)はt2’部位よりも厚肉であるため、釣糸ガイドの存在による釣糸ガイド元部の応力集中に充分対抗でき、結果として竿管本体20の強度を保持できる。
【0031】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように本発明によれば、竿管本体の内側に釣糸ガイドを突出配設させても竿管強度の低下が小さいと共に、形成された釣糸ガイドの耐久性や糸案内性が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は本発明に係る製造方法の説明用部分断面図である。
【図2】 図2は他の製造形態例の説明図である。
【図3】 図3は図1の方法によって形成された釣糸ガイド図である。
【図4】 図4は釣糸ガイドと竿管本体層との境界部に特徴を有する断面図である。
【図5】 図5は釣糸ガイドと竿管本体層との境界部に特徴を有する他の形態例の図である。
【図6】 図6は他の形態の釣糸ガイドを有する釣竿製造方法の説明図である。
【図7】 図7は図6に対比させた説明図である。
【図8】 図8は図6に対比させた説明図である。
【図9】 図9は図1や図6の方法によって形成された釣竿の縦断面形態図である。
【符号の説明】
10 芯材
12 厚肉テープ
14 薄肉テープ
16 釣糸ガイド素体
20 竿管本体
G 釣糸ガイド
Claims (2)
- 合成樹脂をマトリックスとし、強化繊維で強化した竿管本体の内側に釣糸ガイドを突出配設させる中通し釣竿の製造方法であって、
テープを側縁間に互いに適宜な隙間を設けるように芯材に巻回し、その隙間に亘って薄肉のテープ又はシートを配設するか、或いは、適宜な溝を有するテープ又はシートを、その溝が外側に向くように芯材に巻回し、
該隙間又は溝に、多数の繊維を束ね、該多数繊維の束全体に対してだけ撚りを設けて形成したものに合成樹脂を含浸させた釣糸ガイド素体を巻装し、
この外側から竿管本体形成用の素材を巻装させ、
前記隙間や溝の、前記釣糸ガイド素体を受け入れることの可能な断面面積が前記釣糸ガイド素体の横断面の面積と同程度であり、
前記テープやシートは竿管成形後に除去する
ことを特徴とする中通し釣竿の製造方法。 - 前記竿管本体の形成プリプレグの樹脂比率が30wt%未満であって、前記釣糸ガイド素体の樹脂比率が35〜50wt%である請求項1記載の中通し釣竿の製造方法。
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