JP3726665B2 - 柱状コンクリート部材用横拘束筋及びそれを使用したコンクリート部材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は橋梁の橋脚や建物の柱等、柱状のコンクリート部材の軸力やせん断力、曲げモーメントに対する破壊時の靱性を向上させるために使用される横拘束筋とそれを使用したコンクリート部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
柱状のコンクリート部材の内、例えば橋梁の鉄筋コンクリート橋脚や建物の鉄筋コンクリート柱のように地震時に大きな軸力や曲げモーメントを受ける部材では被りコンクリートが剥落した後の軸方向鉄筋の座屈や内部コンクリートのはらみだしを防止し、部材の靱性を向上させる目的から、スターラップ、フープ鉄筋、スパイラル筋、あるいは帯鉄筋と呼ばれる鉄筋がコンクリートを取り囲むように配筋される。
【0003】
これらの鉄筋の配筋方法にはコンクリート部材の断面が長方形状やそれに近い形状の場合、道路橋の橋脚の場合を示す図4に示す方法と図5に示す方法の2通りの方法がある。
【0004】
図4は帯鉄筋と呼ばれるコンクリート部材の外形に沿った形に加工された鉄筋を軸方向鉄筋を取り囲むように配筋すると共に、中間帯鉄筋と呼ばれる鉄筋を帯鉄筋の間隔を固定するように配筋することで、帯鉄筋の外側への変形を拘束し、帯鉄筋内部のコンクリートに対する拘束効果を高める方法である。
【0005】
図5は90°に屈曲する矩形状平面の鉄筋より引張力が均等に生じ、コンクリートの拘束効果の大きい円形状の平面を持つ複数本のスパイラル筋を互いに重複させて配筋することにより、図4の場合の中間帯鉄筋を省略しながら、図4の場合よりコンクリートの拘束効果を高めた場合であるが、以下の不利益がある。図6−(a) ,(b) は図5−(a) の詳細例を示す。
【0006】
柱状コンクリート部材におけるコンクリートは軸方向に分割して打設されるが、軸方向鉄筋に継手を設けることは、構造上の弱点となり易いことと経済性の面から好ましくないため、図5の場合、軸方向鉄筋はスパイラル筋より先に組み立てられることになる。この場合、先行する軸方向鉄筋に対し、スパイラル筋を落とし込んで配筋することになるが、隣接するスパイラル筋は互いに重複し、干渉し合うため、配筋作業性が悪い。
【0007】
また図5の場合、スパイラル筋が重複する部分の内側にも、スパイラル筋が受ける引張力をコンクリートに分散させて伝達し、コンクリートの拘束効果を上げる必要から、軸方向鉄筋が配筋されるが、曲げモーメントに対しては軸方向鉄筋を部材の外縁寄りに配筋することが有効であるため、曲げモーメントに対しては必要以上の鉄筋を使用することになり、不経済となる。
【0008】
スパイラル筋が重複する部分の内側に配筋される軸方向鉄筋はコンクリート部材の幅方向(長辺方向)、例えば橋脚の場合の橋軸直角方向のせん断力に対して各スパイラル筋が独立して挙動せず、全スパイラル筋が一体性を確保したまま抵抗する上でも必要とされる。
【0009】
この発明は上記背景より、スパイラル筋を用いる場合と同等程度のコンクリートの拘束効果を得ながら、配筋作業性と経済性を向上させる横拘束筋を提案するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明では軸方向鉄筋を包囲するように配筋される帯鉄筋の形状を、複数個の円形が互いに部分的に重複してできる外形で、屈曲部分を有する形にし、帯鉄筋の対向する屈曲部分間に、その屈曲部分をつなぐ中間帯鉄筋を配筋することにより、スパイラル筋を用いる場合と同等程度のコンクリートの拘束効果を得ながら、配筋作業性と経済性を向上させる。横拘束筋は帯鉄筋と中間帯鉄筋から構成される。
【0011】
帯鉄筋は円形が部分的に重複してできる外形の平面形状を持ち、中間帯鉄筋によってつながれることで、矩形状の平面形状を持つ鉄筋より引張力が均等に生ずるため、コンクリートの拘束効果が大きく、円形状の平面を持つスパイラル筋と同等程度のコンクリートの拘束効果を発揮する。
【0012】
中間帯鉄筋は帯鉄筋の対向する屈曲部分間に配筋され、屈曲部分を互いにつなぐことで、帯鉄筋の外周側への変形を拘束し、帯鉄筋の形状を維持する働きをし、帯鉄筋によるコンクリートの拘束効果を発揮させる役目を果たす。
【0013】
表1に図4に示す中間帯鉄筋を用いた従来構造のコンクリートと本発明の横拘束筋を用いたコンクリートの強度と歪みの関係を、図7に従来構造のコンクリートの応力度−歪み度曲線を、図8に本発明の横拘束筋を用いたコンクリートの応力度−歪み度曲線を示す。
【0014】
【表1】
道路橋示方書V耐震設計編によれば、橋脚の断面形状(円形か矩形か)に応じ、拘束効果を考慮するための強度に関する係数αと最大歪みに関する係数βが異なることから、表1ではこれらの係数α,βに基づき、従来構造のコンクリート部材を矩形断面として、本発明のコンクリート部材を円形断面として計算し、それぞれのコンクリートの応力度と歪み度を求め、図7,図8にその関係を示している。なお、本発明の被りコンクリートの強度は従来構造と変わらず、帯鉄筋の内側のコンクリートの面積は従来構造と同一とはなっていない。
【0015】
表1から、本発明の帯鉄筋と中間帯鉄筋(横拘束筋)を用いた場合にはコンクリートの強度(39.886MPa)が従来構造のコンクリートの強度(29.106MPa)より37%増加し(39.886≒29.106×1.37)、タイプIの地震動の場合の最大歪み(0.00642)は従来構造の最大歪み(0.00377)より70%増大している(0.00642 ≒0.00377 ×1.70)ことが分かる。図7,図8はタイプIIの地震動の場合の応力度と歪み度の関係を示している。
【0016】
このことから、本発明の横拘束筋を用いれば、拘束効果が働く帯鉄筋の内側のコンクリートの強度と歪みを図4に示す従来構造より増大させることが可能になり、スパイラル筋を用いる場合と同等程度のコンクリートの拘束効果を得ることが可能になると言える。コンクリート強度の増加がそのまま断面の曲げ耐力に反映される訳ではないとしても、少なくとも同一断面のコンクリートで対比した場合に耐力の増大が期待されることになる。
【0017】
帯鉄筋は具体的には請求項2,3に記載のように端部で互いに重なる1本の、もしくは2本の鉄筋で形成され、例えば先行して配筋されている軸方向鉄筋に対して上方から落とし込まれ、端部に形成されるフックにおいて軸方向鉄筋に係合する等により軸方向鉄筋を包囲する形で配筋される。
【0018】
帯鉄筋の配筋が落とし込みのみによって行われ、帯鉄筋が軸方向鉄筋を包囲するように配筋されることで、配筋上、帯鉄筋同士や帯鉄筋と軸方向鉄筋との干渉は生じないため、配筋作業性がよい。
【0019】
また帯鉄筋はスパイラル筋のように重複する部分がないことから、スパイラル筋の場合のように一体性を確保するための重複部分への軸方向鉄筋の配筋の必要がないため、曲げモーメントに対して必要以上の鉄筋を使用することはなく、軸方向鉄筋量が削減され、経済性が向上する。
【0020】
加えてコンクリート部材の断面上、帯鉄筋が全軸方向鉄筋を包囲するように配筋されれば、スパイラル筋の場合のように帯鉄筋がコンクリート部材の長辺方向に分離することがなく、帯鉄筋自体の一体性が確保されているため、スパイラル筋を用いる場合よりせん断耐力が向上する。
【0021】
【発明の実施の形態】
この発明の横拘束筋1は図1に示すように複数本の軸方向鉄筋4を包囲するように配筋される帯鉄筋2と、帯鉄筋2の対向する部分をつなぐ中間帯鉄筋3から構成される。帯鉄筋2は実際には後述のように1本の鉄筋20で形成される場合も、2本の鉄筋20,20から形成される場合もコンクリート部材6中に配筋される全軸方向鉄筋4を包囲するように配筋される。
【0022】
帯鉄筋2は複数個の円形が部分的に重複してできる外形を平面形状として持ち、円形が交わる部分に屈曲部分2aを有する。図1は2個の円形を重複させた形に形成した場合、図2は3個の円形を重複させた形に形成した場合を示すが、横拘束筋1は図1の形の帯鉄筋2を組み合わせて使用される場合もある。いずれの形の場合も屈曲部分2aの屈曲角度は90°〜120 °程度であり、曲げ加工による強度低下の問題は生じない。
【0023】
中間帯鉄筋3は帯鉄筋2の対向する屈曲部分2a,2a間に、屈曲部分2a,2aをつなぐように配筋され、両端において屈曲部分2a,2aに接続される。図1では中間帯鉄筋3の両端に帯鉄筋2の屈曲部分2aに係合し得るフック3a,3aを形成し、係合によって中間帯鉄筋3の両端を屈曲部分2a,2aに接続しているが、結束や溶接、あるいは金物等を介した嵌合や螺合等の手段で中間帯鉄筋3の両端を屈曲部分2a,2aに接続することもある。
【0024】
中間帯鉄筋3と帯鉄筋2の屈曲部分2aとのなす角度は屈曲部分2aの屈曲角度に応じ、90°〜120 °程度であり、屈曲部分2aの屈曲角度が120 °程度であれば、中間帯鉄筋3と帯鉄筋2の屈曲部分2aとのなす角度も120 °程度になり、両者の接続部分において力の釣合いが取れるため、中間帯鉄筋3による屈曲部分2a,2aの連結効果を維持する上では、中間帯鉄筋3の断面積は帯鉄筋2の断面積と同等以上であれば足りる。
【0025】
図3−(a) は帯鉄筋2を端部で互いに重なる1本の鉄筋20で形成し、両端に軸方向鉄筋4に係合し得るフック20a,20aを形成した場合、(b) は端部で互いに重なる2本の鉄筋20,20で形成し、同様に両端にフック20a,20aを形成した場合を示す。
【0026】
軸方向鉄筋4と帯鉄筋2との一体性を高める上ではフック20aを軸方向鉄筋4に係合させることが望ましいが、フック20aはコンクリート5への定着効果も持つため、必ずしも係合させる必要はない。
【0027】
図3に示すように鋭角に折り曲げられた鉄筋20のフック20aを軸方向鉄筋4に係合させることはフック20aが直角の場合より一般に難しくなるが、フック20a以外の部分が自由に変形でき、(a) の場合では両端のフック20a,20a間距離が広がるため、係合作業が格別困難になることはない。
【0028】
またコンクリート部材6の軸方向に間隔をおいて配筋される全帯鉄筋2のフック20a,20aをコンクリート部材6の断面上、同一位置に配置したときにはコンクリート5の拘束効果が低下する可能性があるが、上下に隣接する帯鉄筋2,2の各フック20a,20aの位置を交互にずらして配置することで、拘束効果の低下の問題は回避される。
【0029】
コンクリート部材6は基本的に軸方向鉄筋4の配筋後に帯鉄筋2を上方から落とし込んで配筋する毎に、中間帯鉄筋3を配筋し、コンクリート5を打設することにより構築されるが、配筋の手順は必ずしもこれに限定されない。
【0030】
【発明の効果】
軸方向鉄筋を包囲するように配筋される帯鉄筋の形状を、複数個の円形が互いに部分的に重複してできる外形で、屈曲部分を有する形にし、帯鉄筋の対向する屈曲部分間に、その屈曲部分をつなぐ中間帯鉄筋を配筋するため、帯鉄筋によるコンクリートの拘束効果が大きく、円形状の平面を持つスパイラル筋と同等程度のコンクリートの拘束効果を発揮させることができる。
【0031】
帯鉄筋の配筋は軸方向鉄筋に対し、軸方向鉄筋を包囲するように落とし込むことによって行え、配筋上、帯鉄筋同士や帯鉄筋と軸方向鉄筋との干渉がないため、配筋作業性がよい。
【0032】
また帯鉄筋はスパイラル筋のように重複する部分がなく、スパイラル筋の場合のように一体性を確保するための重複部分への軸方向鉄筋の配筋の必要がないため、曲げモーメントに対して必要以上の鉄筋を使用せずに済み、軸方向鉄筋量が削減され、経済性が向上する。
【0033】
加えてコンクリート部材の断面上、帯鉄筋が全軸方向鉄筋を包囲するように配筋されれば、スパイラル筋の場合のように帯鉄筋がコンクリート部材の長辺方向に分離することがないため、スパイラル筋を用いる場合よりせん断耐力が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の横拘束筋と軸方向鉄筋の関係を示した平面図である。
【図2】横拘束筋の変形例を示した平面図である。
【図3】 (a) ,(b) は帯鉄筋の形成例を示した平面図である。
【図4】 (a) は従来の中間帯鉄筋を用いた場合の配筋状態を示した平面図、(b) は(a) の立面図、(c) は(b) の側面図である。
【図5】 (a) は従来のスパイラル筋を用いた場合の配筋状態を示した平面図、(b) は(a) の立面図、(c) は(b) の側面図である。
【図6】 (a) ,(b) は図5の場合の配筋例を示した平面図である。
【図7】従来の中間帯鉄筋を用いた場合のコンクリートの応力度−歪み度曲線を示したグラフである。
【図8】本発明の横拘束筋を用いた場合のコンクリートの応力度−歪み度曲線を示したグラフである。
【符号の説明】
1……横拘束筋、2……帯鉄筋、2a……屈曲部分、20……鉄筋、20a……フック、3……中間帯鉄筋、3a……フック、4……軸方向鉄筋、5……コンクリート、6……コンクリート部材。
Claims (4)
- 複数本の軸方向鉄筋を包囲するように配筋され、複数個の円形が互いに部分的に重複してできる外形で、屈曲部分を有する形をする帯鉄筋と、帯鉄筋の対向する屈曲部分間に配筋され、その屈曲部分をつなぐ中間帯鉄筋からなる柱状コンクリート部材用横拘束筋。
- 帯鉄筋は端部で互いに重なる1本の鉄筋で形成されている請求項1記載の柱状コンクリート部材用横拘束筋。
- 帯鉄筋は端部で互いに重なる2本の鉄筋で形成されている請求項1記載の柱状コンクリート部材用横拘束筋。
- 複数本の軸方向鉄筋と、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の横拘束筋がコンクリート中に配筋されて構成されるコンクリート部材。
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