JP3725923B2 - 植物活力剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、植物又は土壌に付与することにより、植物の耐病性を高め、健全な生長を促す効果を有する植物活力剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
農業生産上において、単位面積当たりの収穫量を増すことは重要課題であり、植物の耐病性を向上させ、生長を促進させるために、各種の肥料、農薬等が用いられている。しかし、化学合成によって製造される農薬等の薬剤は、いったん散布すると土壌中等に長期間残存することが多く、環境汚染や公害等にもつながるという問題があった。このため、環境汚染や公害等の問題がなく、植物の耐病性を向上させ、生長を促進させる物質が求められている。
【0003】
このような中で、近年、カニ、エビ等の甲殻類の殻等に含まれる天然多糖類であるキチンから調製されたキトサン、あるいはその部分分解物が抗菌性を有していることが見い出され、キチン、キトサンあるいはその部分分解物を利用した植物病害防除剤、土壌改良剤、植物生長促進剤等が種々提案されている。
【0004】
例えば、キトサンを主成分とする土壌改良剤(特開昭63-146982 号公報)、キチン、キチン質含有有機物又はキトサンと、ゼオライト及び/又は貝殻と、ストレプトミセス・シアノゲナスまたはストレプトミセス・オリバセウスとを含む土壌病害防除資材(特開平7-2614号公報)、キトサンまたは低粘度キトサンにEDTAを配合した植物病害の発生を抑制する液体肥料(特開平1-239077号公報)、キトサン有機酸塩及びアルキルフェノキシポリアルコキシアルコールを水に溶解してなる園芸用植物病害防除液(特開平4-253901号公報)、キトサン分解物及び酢酸を有効成分として含有する芝草の生育活性剤(特開平6-181636号公報)、キチン、キトサン類より選ばれた少なくとも1種を有効成分とする植物生長促進剤(特開昭63-33310号)等が提案されている。
【0005】
一方、近年、植物体が、植物病原菌あるいは植物自身の細胞表層由来の多糖断片であるオリゴ糖を感染のシグナル(エリシター)として認識し、ファイトアレキシン誘導体などを産生して、植物病原菌に対する防御機構を作動させるということが解明されてきている(A.G.Darvill and P.Albershaim; Ann.Rev.Plant.Physiol., 35, 243, 1984 )。
【0006】
そして、キチンオリゴ糖が、イネの植物細胞においてエリシター効果を有すること(渋谷直人、日本農薬学会誌、19,67-71,1994 )、トマトに対してエリシター効果を有すること(G.Felix, M.Regenass, T.Boller. The Plant Journal, 4(2), 307-316, 1993 )が報告されている。更に、キチンオリゴ糖は、植物が産生する病原菌細胞壁分解酵素であるキチナーゼの誘導因子にもなり得ることも明らかになってきた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の植物病害防除剤、土壌改良剤、植物生長促進剤は、主としてキトサン、キトサンオリゴ糖の有する、植物病原菌に対する抗菌活性に着眼したものが多かった。しかしながら、キトサン、キトサンオリゴ糖の抗菌性は、静菌作用であって、通常の使用濃度においては、十分な殺菌作用を有するものではなく、また、自然界に存在する多種多様な植物病原菌すべてに対応できるものではない。このため、各種の植物病原菌に対する防除効果が十分に得られるとは言い難いものであった。
【0008】
また、本発明者らの実験によれば、エリシター効果を有するとされるキチンオリゴ糖も、単独で用いた場合には、植物病原菌に対する防除効果が十分に得られるとは言えないものであった。
【0009】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、植物病原菌に対する防除効果及び植物の生長促進効果を有し、植物や土壌に散布しても生分解を受けて、長期間残存するという問題がなく、環境にやさしく、安全性の高い植物活力剤を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究した結果、エリシター効果を有するとされるキチンオリゴ糖と、抗菌活性を有するキトサン、キトサンオリゴ糖及びそれらの塩から選ばれた少なくとも一種とを併用することにより、これらの効果が相乗的に作用して、これらを単独に用いた場合より、植物の耐病性を高め、生長を促進させる効果が顕著に得られることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明の植物活力剤は、キチンオリゴ糖と、キトサン、キトサンオリゴ糖及びそれらの塩から選ばれた少なくとも一種とを含有することを特徴とする。
【0012】
本発明の植物活力剤は、キチンオリゴ糖と、キトサン、キトサンオリゴ糖及びそれらの塩から選ばれた少なくとも一種とを組み合わせて用いることにより、キチンオリゴ糖の有するファイトアレキシン誘導活性(エリシター活性)と、キトサン、キトサンオリゴ糖及びそれらの塩から選ばれた少なくとも一種が有する植物の病原菌に対する抗菌活性とが相乗的に作用して、優れた耐病性付与効果と生長促進効果をもたらすことができる。
【0013】
また、キチンオリゴ糖、キトサン、キトサンオリゴ糖及びそれらの塩は、いずれも自然界に多量に存在する天然物であるキチンから得られるものであって、植物や土壌に散布しても生分解を受けるため、長期間残存するという問題がなく、環境にやさしく、安全性が高い。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明において、キチンオリゴ糖、キトサン、キトサンオリゴ糖及びそれらの塩は、カニ、エビ等の甲殻類の殻等から常法によって調製されるキチンを、化学的又は酵素的に処理することにより得られる。
【0015】
すなわち、キチンオリゴ糖は、キチンを、酸又は酵素によって部分加水分解することにより得られる。キチンオリゴ糖としては、N−アセチルキトビオース、N−アセチルキトトリオース、N−アセチルキトテトラオース、N−アセチルキトペンタオース、N−アセチルキトヘキサオースから選ばれた1種又は2種以上の混合物が好ましく用いられる。なお、キチンオリゴ糖又はその混合物は、各社から市販されており、例えば「NA-COS-Y」(商品名、焼津水産化学株式会社製)などを用いることができる。
【0016】
また、キトサンは、キチンを濃アルカリ中で加熱処理して脱アセチル化することにより得られる。なお、キトサンは、ケカビの一種であるムコル・ルキシー(Mucor rouxii)などの接合菌類の細胞壁成分として、天然にも存在するので、それを用いてもよい。
【0017】
キトサンオリゴ糖は、キトサンを部分加水分解することにより得られる。キトサンの部分加水分解は、キトサンを、塩酸、酢酸、蟻酸等の酸とともに加熱した後、酸を除去するか、又は、キトサンを中和脱塩した後、結晶化し、更に乾燥粉末化するか、あるいは、キトサンを希酸に溶解後、キトサナーゼ、D−グルコサミニダーゼ等のキトサン分解酵素を作用させる等の方法によって行うことができる。これらの方法によって得られるキトサンオリゴ糖は、通常、キトビオース、キトトリオース、キトテトラオース、キトペンタオース、キトヘキサオース、キトヘプタオース、キトオクタオースなどの混合物である。本発明においては、キトサンオリゴ糖の混合物の状態で使用することが可能であるが、カラムクロマトグラフィーや、溶剤分画法等の方法によって、所望の重合度のものに分画、精製して用いてもよい。なお、キトサンオリゴ糖又はその混合物も各社から市販されており、例えば「COS-Y 」(商品名、焼津水産化学株式会社製)などを用いることができる。
【0018】
また、本発明において、キトサン又はキトサンオリゴ糖の塩としては、例えば塩酸塩、硫酸塩等の無機塩や、酢酸塩、乳酸塩、蟻酸塩等の有機酸塩等が好ましく用いられる。
【0019】
本発明の植物活力剤において、キチンオリゴ糖と、キトサン、キトサンオリゴ糖及びそれらの塩から選ばれた少なくとも一種との配合比は、重量比で1:1〜50であることが好ましい。キチンオリゴ糖と、キトサン、キトサンオリゴ糖及びそれらの塩から選ばれた少なくとも一種との配合比が、上記の範囲から外れると、いずれか一方を単独で用いたのと効果上変わらなくなり、上記2種類の成分による相乗効果を十分に得ることができない。
【0020】
本発明の植物活力剤は、粉状、顆粒状、液状等のいずれでの形態で製品化してもよい。また、散布に際しては、上記製品を直接散布しても、あるいは水等で適当な濃度になるように希釈して散布してもよい。水に希釈する場合、キチンオリゴ糖0.0001〜0.1 %、キトサン、キトサンオリゴ糖及びその塩0.01〜1%となるように希釈して用いることが好ましい。更に、散布方法も特に限定されず、例えば、植物の葉、茎等に直接散布する方法、植物を栽培する培養基や土壌中に散布する方法、肥料等に配合して培養基や土壌中に散布する方法等のいずれであってもよい。なお、肥料中に配合する場合、肥料としては、窒素、燐酸、カリウムを含有する化学肥料、油カス、魚カス、骨粉、海藻粉末、アミノ酸、糖類、ビタミン類などの有機質肥料等、その種類は限定されない。
【0021】
また、本発明の植物活力剤の製剤化に際しては、デキストリン等の通常用いられる賦形剤を用いてもよいが、モンモリロナイト、バーミュキュライト等の粘土鉱物や、ゼオライト、ケイソウ土、活性炭、木炭等の徐放化剤(有効成分を保持して長期間に亙って徐々に放出させるもの)としての作用を有するものを用いることがより好ましい。これらを用いる場合には、モンモリロナイト、バーミュキュライト、ゼオライト、ケイソウ土、活性炭、木炭から選ばれた少なくとも一種100 重量部に対して、キチンオリゴ糖0.01〜1重量部、キトサン、キトサンオリゴ糖及びそれらの塩から選ばれた少なくとも一種0.1 〜10重量部となるように配合することが好ましい。
【0022】
なお、本発明の植物活力剤には、必要に応じて、ソルビン酸カリウム等の防腐剤、色素等を配合してもよい。
【0023】
【実施例】
以下の実施例において、キチンオリゴ糖としては、下記表1に示す組成のキチンオリゴ糖混合物である「NA-COS-Y」(商品名、焼津水産化学株式会社製)を用いた。また、キトサンオリゴ糖酢酸塩、キトサンオリゴ糖乳酸塩としては、キトサナーゼを用いて酵素法により調製された、下記表2に示す組成のキトサンオリゴ糖混合物である「COS-Y 」(商品名、焼津水産化学株式会社製)を、それぞれ酢酸塩、乳酸塩にしたものを用いた。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
実施例1
キチンオリゴ糖「NA-COS-Y」100 gと、キトサンオリゴ糖「COS-Y 」の酢酸塩100 gとに、デキストリン800 gを加えて十分混合し、流動造粒機を用いて造粒して、顆粒状の植物活力剤980 gを得た。
【0027】
比較例1
実施例1において、キチンオリゴ糖「NA-COS-Y」100 gを配合せず、キトサンオリゴ糖「COS-Y 」の酢酸塩と、デキストリンとだけを混合し、あとは実施例1と同様にして顆粒剤を得た。
【0028】
実施例2
キチンオリゴ糖「NA-COS-Y」10gと、キトサン100 gとに、モンモリロナイトナトリウム10kgを混合し、湿式加圧造粒して、粒状の植物活性剤10kgを得た。
【0029】
比較例2
実施例2において、キチンオリゴ糖「NA-COS-Y」を配合せず、キトサンと、モンモリロナイトナトリウムとだけを混合し、あとは実施例2と同様にして粒剤を得た。
【0030】
比較例3
実施例2において、キトサンを配合せず、キチンオリゴ糖「NA-COS-Y」と、モンモリロナイトナトリウムとだけを混合し、あとは実施例2と同様にして粒剤を得た。
【0031】
実施例3
キチンオリゴ糖「NA-COS-Y」0.1 gと、キトサンオリゴ糖「COS-Y 」の乳酸塩1gと、防腐剤としてソルビン酸カリウム0.5 gと、色素黄色0.01gとを、水10L(リットル、以下同様)に溶解させて、液状の植物活力剤10Lを得た。
【0032】
試験例1
実施例1で得られた顆粒状の植物活力剤を、1重量%、0.1 重量%、0.01重量%、0.001 重量%、0.0001重量%、0.00001 重量%の濃度となるように水道水に溶解して試験液を調製した。また、比較のため、グルコースをそれぞれ同濃度で溶解させた液も調製した。
【0033】
カイワレ大根の種25粒ずつを、13個の脱脂綿を敷いたプラスチック製シャーレ上にそれぞれ播種し、1個のシャーレには、対照として水道水を、他の6個のシャーレには植物活力剤を各濃度で溶解させた試験液を、残りの6個のシャーレには、グルコースを各濃度で溶解した液を、各40mlずつ注入した。
【0034】
それぞれのシャーレを、25±2℃で、暗所に5日間、明所に2日間置いて、カイワレ大根を栽培した。なお、栽培3日目に、各液を20mlずつ補給した。
【0035】
それぞれのシャーレから、カイワレ大根を収穫し、茎葉長を測定し、その平均値を求めた。その結果を、水道水のみで栽培した対照のカイワレ大根の茎葉長を100 とした値に換算し、表3に示す。
【0036】
【表3】
【0037】
表3の結果から、植物活力剤を溶解させた液を用いてカイワレ大根を栽培したものは、0.01〜0.0001重量%の濃度において、水道水を用いて栽培したもの、及びグルコースを用いて栽培したものより、よく生長していることがわかる。
【0038】
試験例2
市販のたい肥を30重量%含有する培養土5Lに、N:P:Kが4:3:2である化成肥料を5g混合した後、実施例2で得られた粒状の植物活力剤、比較例2で得られた粒剤、及び比較例3で得られた粒剤を、それぞれ0.2 重量%、0.1 重量%、0.02重量%混合して、二十日大根栽培用の土を得た。なお、対照として、同様の培養土に、上記と同様の化成肥料だけを混合した土を調製した。
【0039】
それぞれの土を、栽培用ポットである、外径24cm、高さ22cm、内容積5.4 Lの8号菊鉢に入れ、二十日大根の種を8粒ずつ播種し、平成7年7月1日から7月29日の間、屋外で栽培した。なお、雨天時以外は、1日1回散水し、追肥や農薬の散布は行わなかった。
【0040】
収穫後、風乾し、地上部(茎葉)と地下部(根)とに分けて、それぞれの重量を測定し、平均値を求めた。それらの結果を表4に示す。なお、表4において、実施例2で得られた粒状の植物活力剤を配合した土を用いて栽培したものを実施例2、比較例2で得られた粒剤を配合した土を用いて栽培したものを比較例2、比較例3で得られた粒剤を配合した土を用いて栽培したものを比較例3と表す。これは以下の表5、6においても同様である。
【0041】
【表4】
【0042】
表4の結果から、実施例2の粒状の植物活力剤、比較例2の粒剤、比較例3の粒剤を配合した土で栽培した二十日大根は、比較例2の粒剤を濃度0.2 重量%、0.1 重量%で配合した土を用いて栽培した根部、比較例3の粒剤を濃度0.2 重量%、0.1 重量%で配合した土を用いて栽培した根部、比較例3の粒剤を濃度0.2 重量%で配合した土を用いて栽培した茎葉部以外は、いずれも対照より大きく生長しているが、キチンオリゴ糖とキトサンとを併用した実施例2の粒状の植物活力剤を配合した土で栽培したものは、キトサンのみを含む比較例2の粒剤、キチンオリゴ糖のみを含む比較例3の粒剤を配合した土を用いて栽培したものより、茎葉部も、根部も明らかに生長がよいことがわかる。
【0043】
試験例3
育苗用ポットで、キュウリの種を発芽させ、双葉段階で、実施例1で得られた顆粒状の植物活力剤を、水に0.1 重量%、0.01重量%濃度で溶解させた液を散布して育苗し、キュウリ苗を得た。
【0044】
肥料成分として、N:P:Kが4:3:2である化成肥料と、牛フンたい肥とを適当量施した土壌に、実施例1で得られたキチンオリゴ糖とキトサンオリゴ糖酢酸塩とを併用した顆粒状の植物活力剤、比較例1で得られたキトサンオリゴ糖酢酸塩のみを含む顆粒剤を、それぞれ土壌に対して0.1 重量%、0.01重量%となるように鋤込みながら、温室内に畝を造成した。また、対照として、植物活力剤も顆粒剤も鋤込まない畝を造成した。
【0045】
次いで、それぞれの畝に、上記キュウリ苗のうち平均長7cmのものを各3本ずつ植え込んで、平成6年3月10日から5月25日まで栽培を行った。原則として水やりは1日1回とし、期間中に2回液肥による追肥を行った。また、一般管理作業は通常通り行ったが、農薬による病害虫防除は行わなかった。
【0046】
キュウリの収穫を、4月26日から5月25日の1カ月間に、都合3回行った。収穫したキュウリの本数、重量を測定し、個体当たりの平均重量を算出した。また、栽培期間中の病気の発生、害虫による被害状況などを観察した。これらの結果を表5に示す。
【0047】
【表5】
【0048】
表5の結果から、実施例1で得られた顆粒状の植物活力剤を散布した土壌及び比較例1で得た顆粒剤を散布した土壌で栽培したキュウリは、対照の土壌で栽培したキュウリより、総重量が重く、平均個体重量も重く、したがって、増収効果が認められるが、実施例1で得られたキチンオリゴ糖とキトサンオリゴ糖酢酸塩とを併用した顆粒状の植物活力剤を散布した土壌で栽培したもののほうが、比較例1で得られたキトサンオリゴ糖酢酸塩のみを含む顆粒剤を散布した土壌で栽培したものより、収穫本数、総重量、平均個体重量ともに明らかに優れていることがわかる。また、うどんこ病の発生、葉ダニ及びアブラムシによる被害とも、実施例1で得られた顆粒状の植物活力剤を散布した土壌で栽培した場合のほうが、対照の土壌及び比較例1で得られた顆粒剤を散布した土壌で栽培した場合より少なかった。
【0049】
試験例4
鳥取県の二十世紀梨園3箇所(第1〜3試験区とする)において、それぞれの梨園の1/3には実施例1で得られた顆粒状の植物活力剤を0.05重量%濃度に水で希釈した液を、1/3に比較例1で得られた顆粒剤を0.05重量%濃度に水で希釈した液を、残りの1/3には無添加の水(対照)を、20日おきに散布して梨の栽培を行った。試験期間は平成7年4月15日から9月4日とし、それぞれ任意の1000個の果実に、着色によりマークした袋を掛け、主として黒斑病の発病により腐敗、落下した果実の個数を測定した。なお、施肥、薬剤防除、摘果、袋掛け等の管理作業は、全く同様の条件下に行った。それぞれの試験区の発病落下個数を表6に示す。
【0050】
【表6】
【0051】
表6の結果から、実施例1で得られた顆粒状の植物活力剤、比較例1で得られた顆粒剤ともに梨の黒斑病による落下を抑制する効果が認められるが、実施例1で得られたキチンオリゴ糖とキトサンオリゴ糖酢酸塩とを併用した植物活力剤のほうが、比較例1で得られたキトサンオリゴ糖酢酸塩のみを含む顆粒剤より黒斑病による落下を軽減する効果が顕著であることがわかる。
【0052】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、キチンオリゴ糖と、キトサン、キトサンオリゴ糖及びそれらの塩から選ばれた少なくとも一種とを併用することにより、キチンオリゴ糖の有するファイトアレキシン誘導活性(エリシター活性)と、キトサン、キトサンオリゴ糖及びそれらの塩から選ばれた少なくとも一種が有する植物の病原菌に対する抗菌活性とが相乗的に作用して、それらを単独に用いた場合より、顕著に優れた耐病性付与効果と生長促進効果とが得られることがわかる。また、本発明の植物活力剤に配合する成分は、天然物であって、植物や土壌に散布しても生分解を受けるので、長期間残存するという問題がなく、環境にやさしく、安全性も高い。
Claims (4)
- キチンオリゴ糖と、キトサン、キトサンオリゴ糖及びそれらの塩から選ばれた少なくとも一種とを含有することを特徴とする植物活力剤。
- 前記キチンオリゴ糖と、前記キトサン、キトサンオリゴ糖及びそれらの塩から選ばれた少なくとも一種との配合比が、重量比で1:1〜50である請求項1記載の植物活力剤。
- キチンオリゴ糖と、キトサン、キトサンオリゴ糖及びそれらの塩から選ばれた少なくとも一種と、モンモリロナイト、バーミュキュライト、ゼオライト、ケイソウ土、活性炭、木炭から選ばれた少なくとも一種とを含有する請求項1又は2記載の植物活力剤。
- モンモリロナイト、バーミュキュライト、ゼオライト、ケイソウ土、活性炭、木炭から選ばれた少なくとも一種100 重量部に対して、キチンオリゴ糖0.01〜1重量部、キトサン、キトサンオリゴ糖及びそれらの塩から選ばれた少なくとも一種0.1 〜10重量部含有する請求項3記載の植物活力剤。
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