JP3724920B2 - 多層プリント配線板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば半導体パッケージなどに用いられるプリント配線板に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、一般的なプリント配線板としては、銅箔などの導体層を絶縁性フィルムに接着し、その導体層をエッチングなどにより処理して所定パターンの導体回路を形成したものが使用されており、特に近年では実装密度を高めるために多層プリント配線板が用いられている。
【0003】
また、近年は半導体パッケージの縮小化、実装形態の変化に伴い、回路の細線化、回路隙間の縮小化、回路の多層化即ち高密度化など(これらを総称してファイン化という)が要求されている。
このようなファイン化の要求に応える多層プリント配線板は、通常、図10に示すように、ベース絶縁層102の両面にベース導体回路103b、103bが形成され、その両面がスルーホール104内に設けられたスルーホールメッキ103aを介して電気的に接続され、更にベース絶縁層102の両面にビルドアップ絶縁層106及び複数のビルドアップ導体回路107が積層された構造を有している。これらのビルドアップ導体回路107は、導体ラインであったり、他の導体回路との接続のためのバイアホールを備えているものであったりする。多層プリント配線板のスルーホール104の上下位置には、このようなビルドアップ導体回路107が存在する場合もあるし(図10参照)、ビルドアップ導体回路107が存在せずビルドアップ絶縁層106のみが存在する場合もある。また、スルーホール104内には充填樹脂層105が設けられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、図10に示した多層プリント配線板は、ハンダのリフロー等、高温にさらされることがある一方、半導体素子が実装されたあと実際に使用される環境によって周囲の温度が氷点下に達することもある。したがって、このような多層プリント配線板は、温度の高低にかかわらず、電気的な接続が保たれている必要がある。また、多層プリント配線板は回路が細線化・多層化されているため、配線板内にはさまざまな残留応力が加わった状態にある。このため、1層のプリント配線板に比べて、環境温度の変化によって電気的な接続の信頼性がどのように変わるのか、予測しづらい面がある。
【0005】
このことから、多層プリント配線板の信頼性を評価するために、冷熱試験を繰り返し行うことがある。例えば、MPU(マイクロプロセッサユニット)用の多層プリント配線板の冷熱試験としては、MIL−STD(ミルスタンダード)のコンディションBの熱衝撃試験に準じたもの、具体的には−55℃の液槽と125℃の液槽に所定時間ずつ交互に浸漬する操作を1サイクルとする試験、を採用することがある。そして、この冷熱試験を所定サイクル行った後に、多層プリント配線板の内部にクラックが発生したか否かによって、信頼性を評価する。具体的には、クラックが発生した場合、そのクラックが周りの雰囲気から水分を吸収して回路をショートさせることがあるため、電気的接続の信頼性が損なわれるおそれがあると評価する。
【0006】
ここで、冷熱試験における多層プリント配線板のスルーホール近傍に発生する応力を考えると、ベース絶縁層102とスルーホール104内の充填樹脂層105との上下方向の熱膨張率が異なる場合、例えば充填樹脂層105の熱膨張率よりも、ベース絶縁層102の熱膨張率が大きい場合、冷熱試験の低温側では、図11(a)に示すようにベース絶縁層102が充填樹脂層105よりも大きく収縮するため、充填樹脂層105の外周に沿ってせん断応力が発生して充填樹脂層105がドーム型に変形する。このため、複数のビルドアップ絶縁層106のうちスルーホール104の上下位置に相当する箇所では、このようなドーム型に変形しようとする応力が加わる。また、高温時では、図11(b)に示すように、低温時の逆方向に応力が加わる。
【0007】
このような応力が繰り返し加わると、図12に示すように、スルーホール104の近傍(例えばエッジ部分)のビルドアップ絶縁層106にクラックCが発生したり、あるいはこのような応力が加わる領域内にビルドアップ導体回路107(導体ラインやバイアホール、バイアホールランドなど)が存在すればそのビルドアップ導体回路107の近傍にあるビルドアップ絶縁層106にクラックCが発生したりする。なお、クラックCの発生要因は熱膨張率の差によるものだけではなく、他の要因も考えられる。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、冷熱試験を繰り返し行ったとしても内部にクラックが発生しないプリント配線板を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
上記課題を解決するため、請求項1記載の多層プリント配線板は、
厚さ方向に貫通する貫通孔を有するベース絶縁層と、
該貫通孔内に充填された充填樹脂層と、
上記ベース絶縁層及び上記充填樹脂層の少なくとも片面側に少なくとも1層以上積層されたビルドアップ絶縁層と、
上記ビルドアップ絶縁層の上面又は上記ビルドアップ絶縁層同士の間において上記貫通孔の開口を覆うように形成され、上記充填樹脂層をなす樹脂及び上記ビルドアップ絶縁層をなす樹脂よりも高剛性の材質からなるカバー部と
を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項1記載の多層プリント配線板では、低温に所定時間晒した後高温に所定時間晒すという冷熱試験を繰り返し行ったとしても、充填樹脂層とベース樹脂層との間で熱膨張率の違いその他によって生ずる変形をカバー部が抑えるので、その変形による応力に起因してビルドアップ絶縁層にクラックが発生するのを抑制することができる。
【0011】
また、カバー部とベース絶縁層との間にはビルドアップ層が介在するため、カバー部とベース絶縁層との間に何も介在しない場合(つまりベース絶縁層上に直にカバー部が設けられた場合)に比べて、変形による応力がカバー部に及びにくくなるので、カバー部の内部にクラックが発生することもない。
【0012】
このように、請求項1記載の多層プリント配線板によれば、冷熱試験を繰り返し行った場合に内部にクラックが発生するのを防止できるという効果が得られる。
請求項2記載の多層プリント配線板は、
厚さ方向に貫通する貫通孔を有するベース絶縁層と、
該貫通孔内に充填された充填樹脂層と、
上記ベース絶縁層及び上記充填樹脂層の少なくとも片面側に複数積層されたビルドアップ絶縁層と、
上記ビルドアップ絶縁層の上面又は上記ビルドアップ絶縁層同士の間において上記貫通孔の開口の上方領域内にその一部が存在するように形成された配線層と、
上記ビルドアップ絶縁層の上面又は上記ビルドアップ絶縁層同士の間において上記貫通孔の開口を覆うように形成され、上記充填樹脂層をなす樹脂及び上記ビルドアップ絶縁層をなす樹脂よりも高剛性の材質からなるカバー部と
を備えたことを特徴とする。
【0013】
かかる多層プリント配線板によれば、請求項1と同様の効果のほか、従来よりクラックの発生しやすかった配線層の上方配線部(貫通孔の開口の上方領域内に存在する部分)とビルドアップ絶縁層との境界部分近傍において、クラックが発生するのを抑制できるという効果が得られる。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の多層プリント配線板であって、前記カバー部は前記配線層の一部として形成されていることを特徴とする。
かかる多層プリント配線板によれば、請求項2と同様の効果のほか、多層プリント配線板内に高密度に配線が形成されている場合であっても、配線層の一部としてカバー部を形成されているため、配線の密度を低下させずにカバーを形成することができるという効果が得られる。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項2記載の多層プリント配線板であって、前記カバー部は、電気的に独立したダミーとして形成されていることを特徴とする。
かかる多層プリント配線板によれば、請求項2と同様の効果のほか、カバー部は電気的に独立したダミーとして形成されているため、カバー部が配線層等の電気特性に影響を与えることはほとんどないという効果が得られる。即ち、仮にカバー部が配線層の一部として形成された場合には、そのカバー部の箇所だけ配線の幅が他の部分と異なることとなり、配線の持つインピーダンス等の電気特性が部分的に変動するおそれがあるが、請求項4の多層プリント配線板ではそのようなおそれが少ない。
【0016】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の多層プリント配線板であって、前記ベース絶縁層の厚さ方向の熱膨張率と前記充填樹脂層をなす樹脂材の熱膨張率とが異なることを特徴とする。
上述のクラックが発生する要因は複数存在すると考えられるが、その一つとして、絶縁層をなす絶縁材とホールに充填された樹脂材との熱膨張率が異なる点が挙げられる。この場合、絶縁材と樹脂材との間で熱膨張率の差による変形が起こり、その変形による応力が働くため、クラックが発生しやすく、クラックの発生を防止する必要性が高いものである。
【0017】
従って、請求項5記載の多層プリント配線板によれば、請求項1〜4の効果のほか、カバー部を備えたことによる効果即ち内部にクラックが発生するのを防止するという効果が顕著に得られる
請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の多層プリント配線板であって、前記カバー部は金属製であることを特徴とする。
【0018】
かかる多層プリント配線板によれば、カバー部は金属製であるため、充填樹脂層をなす樹脂及び上記ビルドアップ絶縁層をなす樹脂よりも高剛性であり、充填樹脂とベース樹脂層との間で生ずる変形を確実に抑制することができる。特に配線層等と同様な金属で形成するのが形成工程が容易になる点で都合が良く、具体的にはCuメッキによって形成するのが好ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の好適な実施例を図面に基づいて説明する。
[実施例1]
図1は本実施例の多層プリント配線板の製造工程図である。図2は本実施例の多層プリント配線板の説明図であり、(a)は縦断面図、(b)は上からみた透視図である。
【0020】
本実施例の多層プリント配線板の作製手順について、図1に基づいて説明する。まずBT(ビスマレイミド トリアジン)系のガラスクロス入り積層板2(熱膨張率α=60×10-6/℃(厚み方向)、α=15×10-6/℃(幅方向)、板厚0.8mm)にドリルマシーンを用いてφ350μmのスルーホール4の穴あけを行った。そして、この積層板2の上下両面及びスルーホール4の内壁にいわゆるパネルメッキ(無電解銅メッキ+電解銅メッキ)を施すことにより、メッキ層3を形成した(図1(a)参照)。なお、上記積層板2が本発明のベース絶縁層に相当する。
【0021】
次に、メッキ層3のうちのスルーホール4の内壁部分(以下、スルーホールメッキ3aという)に周知の黒化処理を施した後、スルーホール4内に穴埋め用の充填樹脂(熱膨張率α=28×10-6/℃)を周知の印刷方法にて穴埋めし、180℃×120分乾燥することにより充填樹脂層5を形成した(図1(b)参照)。なお、上記の黒化処理は、スルーホールメッキ3aと穴埋め用の充填樹脂との密着強度を上げるための周知の処理である。
【0022】
次に、積層板2の上下両面のメッキ層3、3にフォトレジストを塗布し、その後そのフォトレジストを所定パターンに形成し、エッチングしてメッキ部分が所定パターンとなるように処理することにより、ベース導体回路3b、3bを形成した。上下両面に形成されたベース導体回路3b、3bは、スルーホールメッキ3aによって電気的に接続されている。
【0023】
次に、積層板2のベース導体回路3bに絶縁材料(熱膨張率α=50×10-6/℃)を所定の厚みに印刷し、第1ビルドアップ絶縁層6を形成した。そして、周知のCO2 ガスレーザーによるダイレクトイメージ法にて第1ビルドアップ絶縁層6にバイアホール6a(開口径0.1mm)を形成した(図1(c)参照)。
【0024】
続いて、バイアホール6aの下部つまりベース導体回路3bの表面に残った樹脂を過マンガン酸カリウムにて除去した後、公知のセミアディティブ法を用いて第1ビルドアップ導体回路7を形成した(図1(d)参照)。この第1ビルドアップ導体回路7は、バイアホール6aを中心とする略円形のランド部7a(ランド径φ200μm、図2(b)参照)と、スルーホール4の中心上部に位置する略円形の受けランド部7b(ランド径φ200μm、図2(b)参照)とを有するように形成した。この受けランド部7bは、後述の第2ビルドアップ導体回路9のバイアホール8aを被覆した部分と接続させるために設けたものである。
【0025】
続いて、第2ビルドアップ絶縁層8を第1ビルドアップ絶縁層6と同様にして形成し、この第2ビルドアップ絶縁層8にバイアホール8a(開口径100μm)をバイアホール6aと同様にして形成した。更に、第2ビルドアップ導体回路9を第1ビルドアップ導体回路7と同様にして形成し、第3ビルドアップ絶縁層10を第1ビルドアップ絶縁層6と同様にして形成した(図1(e)参照)。なお、第2ビルドアップ導体回路9は、バイアホール8aを中心とする略円形のランド部9a(ランド径φ200μm、図2(b)参照)を有するように形成した。
【0026】
次に、スルーホール4の上方位置にスルーホール径φ350μmより大きいφ500μmのダミー11(厚み10μm)を周知のセミアディティブ法にて形成した後、ソルダーレジストを所定の厚みに印刷して第4ビルドアップ絶縁層12とした(図2(a)参照)。ダミー11は、金属製であり、ベース導体回路3b、第1及び第2ビルドアップ導体回路7、9のいずれにも接続されていない。
【0027】
このようにして実施例1の多層プリント配線板1を作製した。この多層プリント配線板1では、カバー部としてのダミー11は、第3ビルドアップ絶縁層10と第4ビルドアップ絶縁層12との間にてスルーホール4の開口を覆うように形成されている。
【0028】
なお、説明の便宜上、図1及び図2では、積層板2の上面に設けたベース導体回路3bの上に、第1、第2ビルドアップ導体回路7、9及び第1〜第4ビルドアップ絶縁層6、8、10、12を積層する手順を示したが、積層板2の下面のベース導体回路3bについてもこれと同様にして積層した。また、上記の手順のうち、セミアディティブ法に替えてフルアディティブ法を用いてもよい。
【0029】
[実施例2]
図3は本実施例の多層プリント配線板の説明図であり、(a)は縦断面図、(b)は上からみた透視図である。
本実施例の多層プリント配線板20は、実施例1の第1ビルドアップ導体回路7に代えて、上記ランド部7aと同様のランド部27aとφ500μmの受けランド部27bを備えた第1ビルドアップ導体回路27を形成したこと、ダミー11を設けなかったこと以外は、実施例1と同様である。なお、実施例1と同様の構成要素については同じ符号を付した。
【0030】
この多層プリント配線板20では、図3(b)に示すように、第2ビルドアップ導体回路9はその一部がスルーホール4の開口の上方領域内に存在するように形成され、また、第1ビルドアップ導体回路27の受けランド部27bがスルーホール4の開口を覆っている。この受けランド部27bが本発明のカバー部に相当する。
【0031】
[実施例3]
図4は本実施例の多層プリント配線板の説明図であり、(a)は縦断面図、(b)は上からみた透視図である。
本実施例の多層プリント配線板40は、実施例1の第2ビルドアップ導体回路9に代えて、バイアホール8aを中心とする略円形のランド部49aを有する第2ビルドアップ導体回路49を形成したこと、ダミー11を設けなかったこと以外は、実施例1と同様である。なお、実施例1と同様の構成要素については同じ符号を付した。
【0032】
この多層プリント配線板40では、図4(b)に示すように、第1ビルドアップ導体回路7の一部即ち受けランド部7bがスルーホール4の開口の上方領域内に存在するように形成されている。また、第2ビルドアップ導体回路49のランド部49aがスルーホール4の開口を覆っている。このランド部49aが本発明のカバー部に相当する。
【0033】
[実施例4]
図5は本実施例の多層プリント配線板の説明図であり、(a)は縦断面図、(b)は上からみた透視図である。
本実施例の多層プリント配線板50は、実施例1の第1ビルドアップ導体回路7に代えて、ランド部7aと同様のランド部57aとバイアホール6aを中心とする略円形の受けランド部57b(φ400μm)とを有する第1ビルドアップ導体回路57を形成したこと、および、ダミー11に代えて、ダミー51(φ400μm)を形成したこと以外は、実施例1と同様である。なお、実施例1と同様の構成要素については同じ符号を付した。
【0034】
この多層プリント配線板50では、図5(b)に示すように、第2ビルドアップ導体回路9の一部即ちランド部9aがスルーホール4の開口の上方領域内に存在するように形成されている。また、第1ビルドアップ導体回路57の受けランド部57bとダミー51とがスルーホール4の開口を覆っている。このランド部57b及びダミー51が本発明のカバー部に相当する。
【0035】
[実施例5]
図6は本実施例の多層プリント配線板の説明図であり、(a)は縦断面図、(b)は上からみた透視図である。
本実施例の多層プリント配線板60では、積層板2のスルーホール4内に充填樹脂層5を形成し、ベース導体回路3b、3bを第1ビルドアップ絶縁層6で覆った後、この第1ビルドアップ絶縁層6にバイアホールを設けることなく、受けランド部67bと導体ライン67cとを備えた第1ビルドアップ導体回路67を形成した。次いで、第2ビルドアップ絶縁層8を形成し、バイアホール8aを設けた後、スルーホール4の上部からずれた位置にランド部69aを有する第2ビルドアップ導体回路69を形成した。続いて、第3ビルドアップ絶縁層10を形成し、その上にφ400μmのダミー61を形成し、その後第4ビルドアップ絶縁層12を形成した。なお、実施例1と同様の構成要素については同じ符号を付した。
【0036】
この多層プリント配線板60では、図6(b)に示すように、第1ビルドアップ導体回路67の導体ライン67cの一部がスルーホール4の開口の上方領域に存在し、また、ダミー61がスルーホール4の開口を覆っている。このダミー61が本発明のカバー部に相当する。
【0037】
[実施例6]
図7は本実施例の多層プリント配線板の説明図であり、(a)は縦断面図、(b)は上からみた透視図である。
本実施例の多層プリント配線板70は、実施例1の第1及び第2ビルドアップ導体回路7、9に代えて、受けランド部77bの中心がスルーホール4の中心からずれた第1ビルドアップ導体回路77、ランド部79aの中心がスルーホール4の中心からずれた第2ビルドアップ導体回路79を形成した以外は、実施例1と同様である。第1ビルドアップ導体回路77は、受けランド部77bのほかにランド部77aを有している。なお、実施例1と同様の構成要素については同じ符号を付した。
【0038】
この多層プリント配線板70では、図7(b)に示すように、第1及び第2ビルドアップ導体回路77、79の一部がスルーホール4の開口の上方領域に存在し、また、ダミー11がスルーホール4の開口を覆っている。このダミー11が本発明のカバー部に相当する。
【0039】
[実施例7]
図8は本実施例の多層プリント配線板の説明図であり、(a)は縦断面図、(b)は上からみた透視図である。
本実施例の多層プリント配線板80は、実施例1の第1ビルドアップ導体回路7に代えて、図8(a)にて紙面に略垂直方向に延びる導体ライン87cと、これとは別にバイアホール6aを中心とする略円形のランド部87aとを有する第1ビルドアップ導体回路87が形成され、第2ビルドアップ導体回路9に代えて、上記導体ライン87cと略直交する導体ライン89cと、これと一体にバイアホール8aを中心とする略円形のランド部89aとを有する第2ビルドアップ導体回路89が形成されている以外は、実施例1と同様である。なお、実施例1と同様の構成要素については同じ符号を付した。
【0040】
この多層プリント配線板80では、図8(b)に示すように、第1及び第2ビルドアップ導体回路87、89の各導体ライン87c、89cの一部がスルーホール4の開口の上方領域に存在し、また、ダミー11がスルーホール4の開口を覆っている。このダミー11が本発明のカバー部に相当する。
【0041】
[比較例1]
比較例1として、実施例1の多層プリント配線板1の構成のうちダミー11のない多層プリント配線板を作製した。
[比較例2]
比較例2として、実施例8の多層プリント配線板80の構成のうちダミー11のない多層プリント配線板を作製した。
【0042】
[比較例3]
図9は比較例3の多層プリント配線板の説明図であり、(a)は縦断面図、(b)は上からみた透視図である。
比較例3の多層プリント配線板30は、スルーホール4の穴あけを行った後、導電性樹脂(膨張係数90×10-6/℃)で穴埋めし、導電性樹脂層35を形成した。次いで、積層板2の両面にパネルメッキを施し、フォトレジストパターンを形成したのちエッチングしてベース導体回路33、33を形成した。このベース導体回路33は、φ500μmのカバー部33aと、略円形の受けランド部33bとを備えている。両ベース導体回路33、33は、スルーホール4に充填された導電性樹脂層35によって電気的に接続されている。その後、第1、第2ビルドアップ導体回路7、9及び第1〜第4ビルドアップ絶縁層6、8、10、12を積層する手順は、実施例1と同じであるが、ダミー11は形成しなかった。なお、実施例1と同様の構成要素については同じ符号を付した。
【0043】
この多層プリント配線板30では、図9(b)に示すように、第1及び第2ビルドアップ導体回路7、9の一部がスルーホール4の開口の上方領域内に存在するように形成されている。また、ベース導体回路33のカバー部33aがスルーホール4の開口を覆っている。
【0044】
[冷熱試験]
上記実施例1〜7の多層プリント配線板及び上記比較例1〜3の多層プリント配線板につき、冷熱試験を行った。なお、上記各実施例、各比較例では、各導体回路の厚みは10μm程度(5〜15μm)であった。
【0045】
冷熱試験の条件は、MIL−STD(ミルスタンダード)のコンディションBの熱衝撃試験に準じて設定した。具体的には−55℃の浴槽と125℃の浴槽を準備し、各浴槽に5分ずつ浸漬し、各浴槽間の移動は5秒で行うことを1サイクルとし、これを1000サイクル行った。
【0046】
1000サイクル後、各多層プリント配線板のスルーホール部分を基板表面に垂直に切断し、倍率25倍、100倍の顕微鏡観察を行い、クラックが発生しているか否かを判断した。その結果を表1に示す。
ここで、表1中にクラックの種類として表記したクラックCA、CB、CCについて説明する。クラックCAは、図12に示すように、スルーホールの開口の上方領域に存在するビルドアップ導体回路からビルドアップ絶縁層に延びるクラックである。クラックCBは、図12に示すように、ベース導体回路における開口縁からビルドアップ絶縁層に延びるクラックであり、実施例1〜7及び比較例1、2において発生する可能性のあるクラックである。クラックCCは、図示しないがカバー部の内部に発生するクラックである。
【0047】
【表1】
【0048】
上記の結果から、実施例1〜7のように、スルーホール4の上下位置にこのスルーホール4の開口を覆うようなダミー11などのカバー部が存在すれば、上記のような過酷な冷熱試験を1000サイクル行った後でもクラックCA、CB、CCのいずれも発生しなかった。即ち、ダミー11などのカバー部を設けることにより、非常に信頼性の高い多層プリント配線板が得られることがわかった。
【0049】
一方、比較例1、2のようにカバー部を備えていないものについては、クラックCA、CBが発生した。また、比較例3のようにカバー部を備えているものの、そのカバー部がベース導体回路33の一部として形成されているのもについてはクラックCAは発生しなかったが、クラックCCが発生した。
【0050】
このような結果が得られた理由については以下のように考えられる。即ち、スルーホール4内の充填樹脂層5とベース絶縁層である積層板2との熱膨張率が異なるため、冷熱試験を行うと変形による応力が両者の間に発生する。上記比較例1、2のようにダミーなどのカバー部が存在しなければ、このような応力によってクラックCA、CBが発生する。しかし、上記実施例1〜7のようにカバー部が存在すれば、充填樹脂層5と積層板2との間で熱膨張率の違いその他によって生ずる変形をダミー11などのカバー部が抑えるため、クラックCA、CBの発生を抑えることができたと考えられる。
【0051】
一方、比較例3では、ベース絶縁層2と充填樹脂層5との間の変形によって生ずる応力が、ベース絶縁層2の直上に設けられたベース導体回路33のカバー部33aに直接的に加わり、このカバー部33aのうち特に応力の集中しやすいスルーホール4の開口縁付近からクラックCC(図9(c)参照)が発生した。これに対して実施例1〜7では、ベース絶縁層2とカバー部との間に少なくとも1つのビルドアップ層が介在しているため、このように介在するビルドアップ層によって応力が緩和され、クラックCCの発生が抑制されたと考えられる。
【0052】
なお、クラックの発生原因は上記応力のみに依存しているとは限らないが、それ以外の発生原因についてもカバー部によって解決されている。例えば、比較例1、2において、スルーホールに充填する樹脂の熱膨張率をBT系の積層板の熱膨張率と略一致させた場合でも、冷熱試験1000サイクル後にはクラックが発生した。このBT系の積層板は、ガラスクロスを挟んで積層されているため、縦方向(つまり厚み方向)の膨張率と横方向(つまり幅方向)の熱膨張率とは一致しない。このため、充填樹脂の熱膨張率は積層板の厚み方向か幅方向のいずれかの熱膨張率に一致させたが、いずれの場合にもクラックが発生した。しかし、このような場合でも、実施例1〜7のようにカバー部を設ければ、冷熱試験1000サイクル後にクラックが発生することはなかった。
【0053】
また、冷熱試験1000サイクル後、更にこの冷熱試験の回数を重ねて何サイクル目にクラックが発生するかを調べたところ、カバー部を複数有する実施例4(カバー部として受けランド部57bとダミー51を有する)が、カバー部を1つだけ設けた他の実施例に比べて、より確実にクラックの発生が防止できるという結果が得られた。また、カバー部がスルーホール4の開口に近い位置にある実施例2の方が、カバー部がスルーホール4の開口から離れた位置にある実施例1に比べて、より確実にクラックの発生を防止できるという結果が得られた。
【0054】
なお、本発明は、上記実施例になんら限定されることなく、本発明の技術的範囲に属する限り、種々の態様で実施できることはいうまでもない。
例えば、上記各実施例では、カバー部としてのダミー11などをスルーホール4と同軸となるように設けたが、スルーホール4の開口を覆いさえすれば、特に同軸となるように設ける必要はない。
【0055】
また、カバー部としてのダミー11などを金属で形成したが、スルーホール4に充填される樹脂及び各ビルドアップ絶縁層よりも高剛性であれば、金属以外のもの(例えば樹脂、セラミックなど)でもよい。
更に、上記実施例では、ベース絶縁層としてBT系樹脂板を用いたが、これ以外に例えばガラスエポキシ系基材や紙フェノール基材を用いてもよい。また、ビルドアップ絶縁層は、プリプレグを真空熱プレスなどによって積層して形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1の多層プリント配線板の製造工程図である。
【図2】 実施例1の多層プリント配線板の説明図であり、(a)は縦断面図、(b)は上からみた透視図である。
【図3】 実施例2の多層プリント配線板の説明図であり、(a)は縦断面図、(b)は上からみた透視図である。
【図4】 実施例3の多層プリント配線板の説明図であり、(a)は縦断面図、(b)は上からみた透視図である。
【図5】 実施例4の多層プリント配線板の説明図であり、(a)は縦断面図、(b)は上からみた透視図である。
【図6】 実施例5の多層プリント配線板の説明図であり、(a)は縦断面図、(b)は上からみた透視図である。
【図7】 実施例6の多層プリント配線板の説明図であり、(a)は縦断面図、(b)は上からみた透視図である。
【図8】 実施例7の多層プリント配線板の説明図であり、(a)は縦断面図、(b)は上からみた透視図である。
【図9】 比較例3の多層プリント配線板の説明図であり、(a)は縦断面図、(b)は上からみた透視図、(c)はクラックが発生したときの説明図である。
【図10】 従来の多層プリント配線板の縦断面図である。
【図11】 従来の多層プリント配線板の温度変化による変形を表す説明図である。
【図12】 従来の多層プリント配線板にクラックが発生したときの説明図である。
【符号の説明】
1・・・多層プリント配線板、2・・・積層板、3・・・メッキ層、3a・・・スルーホールメッキ、3b・・・ベース導体回路、4・・・スルーホール、5・・・充填樹脂層、6、8、10、12・・・第1〜第4ビルドアップ絶縁層、6a、8a・・・バイアホール、7、9・・・第1、第2ビルドアップ導体回路、7a・・・ランド部、7b・・・受けランド部、11・・・ダミー。
Claims (6)
- 厚さ方向に貫通する貫通孔を有するベース絶縁層と、
該貫通孔内に充填された充填樹脂層と、
上記ベース絶縁層及び上記充填樹脂層の少なくとも片面側に少なくとも1層以上積層されたビルドアップ絶縁層と、
上記ビルドアップ絶縁層の上面又は上記ビルドアップ絶縁層同士の間において上記貫通孔の開口を覆うように形成され、上記充填樹脂層をなす樹脂及び上記ビルドアップ絶縁層をなす樹脂よりも高剛性の材質からなるカバー部と
を備えたことを特徴とする多層プリント配線板。 - 厚さ方向に貫通する貫通孔を有するベース絶縁層と、
該貫通孔内に充填された充填樹脂層と、
上記ベース絶縁層及び上記充填樹脂層の少なくとも片面側に複数積層されたビルドアップ絶縁層と、
上記ビルドアップ絶縁層の上面又は上記ビルドアップ絶縁層同士の間において上記貫通孔の開口の上方領域内にその一部が存在するように形成された配線層と、
上記ビルドアップ絶縁層の上面又は上記ビルドアップ絶縁層同士の間において上記貫通孔の開口を覆うように形成され、上記充填樹脂層をなす樹脂及び上記ビルドアップ絶縁層をなす樹脂よりも高剛性の材質からなるカバー部と
を備えたことを特徴とする多層プリント配線板。 - 前記カバー部は、前記配線層の一部として形成されていることを特徴とする請求項2記載の多層プリント配線板。
- 前記カバー部は、電気的に独立したダミーとして形成されていることを特徴とする請求項2記載の多層プリント配線板。
- 前記ベース絶縁層の厚さ方向の熱膨張率と前記充填樹脂層をなす樹脂材の熱膨張率とが異なることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の多層プリント配線板。
- 前記カバー部は、金属製であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の多層プリント配線板。
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