JP3724895B2 - 止血用具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば血管の側面にバイパス用血管を縫合する際に、縫合箇所付近で血管内の血流を遮断するために使われる止血用具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば冠動脈狭窄による外科的治療法として、CABG(coronary artery bypass graft:冠動脈バイパス術)が行われている。このCABGは、例えば図5(a)に示す様に、血管Aに狭窄部Bが存在する場合に、図5(e)に示す様に、その狭窄部Bよりも末梢側の箇所にバイパス用血管Cを縫合して、バイパス用血管Cを介して別の箇所から血液を供給できるようにする方法である。
【0003】
ところで、このCABGでは、図5(b)に示す様に、まず、狭窄部Bよりも末梢側の箇所で血管Aに穴Dを開けてから、その穴Dに連通させる形でバイパス用血管Cが縫合されるが、穴Dから多量の血液が流出する状態では、患者にかかる負担が大きくなるのはもちろんのこと、血管Aとバイパス用血管Cとの吻合部を確認できず、両者を縫合することが困難になるため、バイパス用血管Cの縫合に先だって、穴Dの位置を含む所定区間の血流を遮断すると共に、穴Dの近傍の血液を除去しておく必要がある。
【0004】
そこで、従来は、穴Dの位置を含む所定区間の血流を遮断するために、例えば図5(c)に示す様な、止血用具100が使われていた。この止血用具100は、柔軟に湾曲する棒状の基部102の両端に、基部102よりも外周寸法の大きい止血部104、106を設けた構造で、上記穴Dから血管A内に挿入されて、両端の止血部104、106が穴Dの両側に配置されると、その状態で止血部104、106の外周が全周にわたって血管Aの内壁に密接し、穴Dの両側E、Fから穴D側へと流入する血液を遮断することができた。
【0005】
そして、この止血用具100で血管A内の血流を遮断した状態で、穴Dの近傍の所定区間を無血状態とし、その状態で穴Dに連通するようにバイパス用血管Cを縫合し、図5(d)に示す様に、バイパス用血管Cを完全に縫合し終える直前に、紐108を引っ張って止血用具100を血管A内から取り出し、その後、完全にバイパス用血管Cを縫合していた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来の止血用具100は、血流の遮断はできるものの、吻合部に付着している血液を除去する機能は備えていない。そのため、実際の手術の際には、血流を遮断した後で、別途、透明度の高い晶水液(例えば、生理食塩水など)を注入して血液を洗い流していた。また、血液を洗い流した後にも、血液が滲み出すことがあり、その場合も、あらためて晶水液を注入して血液を洗い流していた。
【0007】
しかしながら、この様にたびたび晶水液を注入するといった作業は非常に煩わしく、手術の進行を妨げることにもなるため、より簡単に血液を除去できる手段が望まれていた。
また、上記のような止血用具100は、CABGで使用する以外にも、血流を一時的に遮断する手段として利用できると考えられるが、いずれにしても血流遮断箇所に付着した血液が邪魔になるケースは多々あり、より簡便な血液の除去手段が要望されていた。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、血流を遮断した後で、きわめて簡単に血流遮断箇所に付着した血液を洗い流すことのできる止血用具を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段、および発明の効果】
上述の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、
柔軟に湾曲可能な棒状の基部の両端に、該基部よりも外周寸法の大きい止血部を設けた構造で、血管の側面に形成される穴から血管内に挿入されて、前記両端の止血部が前記穴の両側に配置され、その状態で前記止血部の外周が全周にわたって血管の内壁に密接し、前記穴の両側から穴側へと流入する血液を遮断する止血用具において、
前記両端の止血部の間に設けられ、外部へ液体を流出させる液体流出口と、
該液体流出口と液体の供給源とを連通し、該供給源から前記液体流出口へ液体を誘導する液体流路とを備え、
前記液体流出口から前記穴の近傍に液体を放出可能とした
ことを特徴とする。
【0010】
このように構成された本発明の止血用具によれば、従来品と同様に、血管内に挿入され、両端の止血部が穴の両側に配置される。この状態では、止血部の外周が全周にわたって血管の内壁に密接し、穴の両側から穴側へと流入する血液は遮断される。また、従来品とは異なり、液体の供給源から液体流路を介して供給される液体を液体流出口から流出させることができるため、例えば止血部間の部分に晶水液を放出することにより、付着した血液を洗い流すことができる。
【0011】
したがって、この止血用具であれば、血管とバイパス用血管との吻合部付近を無血状態にでき、しかも、吻合部付近に付着した血液を簡単に洗い流すことができ、再び血液が滲み出してきたような場合にも、直ちに洗い流すなどの対応を簡単にとることができる。また、必要に応じて薬液を放出するような用途に利用することもできるので、吻合部近傍に簡単に薬剤を投与できるという利点もある。
【0012】
また、上記構成において、液体流出口は、両端の止血部の間に設けられていれば、具体的な形態等は特に限定されないが、例えば請求項2記載の止血用具の様に、
前記基部の側面から液体を注入可能な液体注入口が設けられ、
前記液体流出口が、前記基部の側面に設けられ、
前記液体流路が、前記液体注入口と前記液体流出口とを連通する形で形成されていると、
基部側面の任意の位置に液体流出口を設けることができるので、血液を洗い流すのに最適な位置に液体流出口を設けることができ、また、必要に応じて多数の液体流出口を設けることもできる。
【0013】
また、請求項2記載の構成以外には、例えば、基部の外部に別途チューブなどを並列に接着して、そのチューブに液体流出口を形成するといった構造も考え得る。但し、この場合、チューブの配置されている側にしか液体を放出できないので、例えば全方向に液体を放出したいような場合には、基部の外周を取り巻くような形でチューブを配設するといった工夫が必要となり、構造的にかさ高いものとなりやすい。その点、請求項2記載の如く構成すれば、基部の内部に液体を導入しているので、基部の外周であればきわめて簡単に任意の方向に液体を放出できるという利点がある。
【0014】
ところで、この種の止血用具を使用する場合、例えば図5(c)に示した様に、血管Aの内部に配置された状態では、一時的とはいえ、血管Aの末梢側へ血液が全く供給されず、心筋に酸素が供給されない状態となるため、患者には相応の負担がかかり、例えば患者の容態を悪化させたり、あるいは患者の手術後の回復に時間がかかったりする要因の一つとなっている。
【0015】
この様な問題を解決するには、請求項3記載の止血用具の様に、
一方の止血部の先端側に設けられ、外部へ血液を流出させる血液流出口と、
該血液流出口と血液の供給源とを連通し、該供給源から前記血液流出口へ血液を誘導する血液流路とを備え、
前記血液流出口から流出させた血液を、前記一方の止血部によって閉塞された箇所よりも末梢側へ供給可能としてあるとよい。
【0016】
この様に構成された止血用具によれば、血液流出口のある側の止血部が血管の末梢側となるような向きで血管内に挿入し、血液の供給源から血液流路を介して供給される血液を血液流出口から流出させると、この血液が血管の末梢側へ供給される。したがって、この止血用具であれば、血管の内部に配置した状態であっても、血管の末梢側へ血液が供給され、心筋に酸素が供給される状態を維持できる。その結果、患者の負担は格段に軽減され、より安全に手術を行うことができるようになり、また患者の手術後の回復も早くなる。
【0017】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する止血用具は、本発明の実施形態の一例に過ぎず、本発明の構成手段は下記の具体例に限定されない。
【0018】
図1(a)に示す様に、止血用具1は、柔軟に湾曲可能な棒状の基部12の両端に、基部12よりも外周寸法の大きい止血部14、16を設けた構造で、基部12の側面にはチューブ18が固定され、チューブ18の端部にはコネクタ20が取り付けられている。
【0019】
また、止血部14、16間で基部12の側面には、図1(b)に示す様に、4ヶ所に液体流出口22が設けられ、コネクタ20には、液体注入口24が設けられている。そして、4ヶ所の液体流出口22と液体注入口24は、チューブ18および基部12の内部に形成された液体流路26を介して連通している。
【0020】
基部12、止血部14、16は、いずれも医療器具用として使われている樹脂材料等で作製されていれば、材料について特に限定されるものではないが、例えば、ポリウレタン、ラテックス、シリコンゴム、天然ゴム、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、フッ素樹脂等といった材料で形成されていればよく、その表面をシリコンゴム等によってコーティングするなど、血管内へ挿入される医療器具として周知の構造を適宜採用することができる。また、基部12、止血部14、16は、一体成形されていても、いくつかの分割された部品を接着したものであってもよい。加えて、必要があれば、基部12を中心に細い金属線を巻回するなどして、樹脂材料だけでは足りない靱性や剛性の補強を図ってもよい。
【0021】
以上のように構成された止血用具1は、例えばCABGにおいて、従来品と全く同様の方法で使用される。即ち、図2に示す様に、バイパス用血管を縫合するために血管Aの側面に開けられた穴Dから血管A内に挿入されて、止血部14、16が穴Dの両側に配置される。その状態で止血部14、16の外周が全周にわたって血管Aの内壁に密接するため、穴Dの両側E、Fから穴D側へと流入する血液を遮断することができる。
【0022】
また、この止血用具1であれば、例えばシリンジ(図示略)等を使って液体注入口24に晶水液(生理食塩水)を注入することにより、その晶水液が液体流路26を通って液体流出口22から流出するため、止血用具1によって血流が遮断されている区間に付着している血液を洗い流すことができる。したがって、止血用具1を挿入した直後あるいは手術中に、穴D近傍の血液を洗い流して簡単に除去することができ、血管Aとバイパス用血管の吻合部を容易に確認できる状態にすることができる。
【0023】
更に、この止血用具1の液体注入口24を使えば、穴D近傍に薬剤を投与することもできるので、きわめて便利である。なお、チューブ18は、基部12に対して接着剤を用いて接着されており、従来品(図5参照)において説明した紐108と同様、血管内から引き抜く際の操作部としても機能するが、もちろん、チューブ18とは別に紐を設けてもよい。
【0024】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の構成手段については上記実施形態以外にも種々考えられる。以下、有用な変形例について説明する。
例えば、上記実施形態では、液体流出口22が、基部12の側面の4ヶ所に設けられていたが、吻合部となる穴Dの近傍の血液を洗い流すことができれば、液体流出口を設ける位置や数は適宜変更することができる。
【0025】
具体例を挙げれば、例えば、図3(a)に示す止血用具2の様に、基部32の側面に1ヶ所だけ液体流出口34を設け、液体注入口36から注入される晶水液を放出できるものであってもよい。
また別の具体例を挙げれば、上述の止血用具1、2の様に、基部に液体流路を形成するには、基部をいくつかの部品に分割して穴開け加工を施し、その後で接着するといった加工、あるいは、基部を分割することなく穴開け加工を施し、余計な穴を樹脂材料で埋めるといった加工が必要となるが、図3(b)に示す止血用具3の様に、チューブ42の固定端側に液体流出口44を設け、液体注入口46から注入される晶水液を放出できる構造とすれば、基部に対する穴開け加工は不要となる。但し、この場合、晶水液を放出できる位置や向きが限られるため、基部から晶水液を放出できる構造とする方が、晶水液の放出位置や放出方向の自由度が高くなる。
【0026】
更に、上述の止血用具1〜3を使用する場合は、一時的とはいえ、血管の末梢側へ血液が全く供給されくなるため、患者の負担を軽減するには、使用時間を可能な限り短縮することが望まれるが、図4に示す止血用具4の様な構造にすれば、血流を遮断した状態においても、血管の末梢側へ血液が供給される。
【0027】
より詳しく説明すると、止血用具4は、図4に示す通り、柔軟に湾曲可能な棒状の基部52の両端に、基部52よりも外周寸法の大きい止血部54、56を設けた構造で、基部52の側面には、2本のチューブ58、60が固定されている。そして、一方の止血部54の先端側には、血液流出口62が設けられ、チューブ58の端部に取り付けられたコネクタ64には、血液注入口66が設けられ、血液流出口62と血液注入口66は、チューブ58、基部52および止血部54の内部に形成された血液流路68を介して連通している。また、基部52の側面には、液体流出口70が設けられ、チューブ60の端部に取り付けられたコネクタ72には、液体注入口74が設けられ、液体流出口70と液体注入口74は、チューブ60および基部52の内部に形成された液体流路76を介して連通している。
【0028】
このように構成された止血用具4であれば、例えばシリンジ(図示略)等を使って液体注入口74に晶水液(生理食塩水)を注入することにより、その晶水液が液体流路76を通って液体流出口70から流出するため、止血用具4によって血流が遮断されている区間に付着している血液を洗い流すことができる。また特に、ポンプ(図示略)等を使って血液注入口66に血液を注入することにより、その血液が血液流路68を通って血液流出口62から流出するため、止血用具4によって閉塞された箇所よりも末梢側の血管へ、血液を供給することができる。したがって、止血用具4を使用している間の患者の負担は格段に軽減され、より安全に手術を行うことができるようになり、また患者の手術後の回復も早くなる。
【0029】
なお、上記止血用具4では、末梢側の血管へ供給する血液を体外から注入する構造としているが、基部52および止血部54、56を軸方向に貫通する貫通穴を形成すれば、止血部54、56の両外側が貫通穴によって連通するので、この様な貫通穴を血液流路として形成しても、止血部54よりも末梢側へ血液を供給することができる。
【0030】
加えて、上記実施形態の説明では特に言及しなかったが、上記止血部材の寸法については、使用される血管の内径寸法に応じて適宜止血部の外径を変えれば良く、また、基部の軸方向長さも適宜調整すればよい。
また、本発明の止血用具は、CABGの際に使用する他にも、血管の所定区間の血流を遮断する手段として適宜使用することができ、その場合も、血液遮断箇所の近傍の血液を簡単に除去でき、薬液の放出なども容易に実施できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施形態として例示した止血用具であり、(a)はその側面図、(b)はその従断面図である。
【図2】 実施形態として例示した止血用具の使用状態を示す概略断面図である。
【図3】 (a)、(b)共に、それぞれ変形例として示した止血用具の使用状態を示す概略断面図である。
【図4】 更に別の変形例として例示した止血用具の従断面図である。
【図5】 従来の止血用具の使用手順を示すための概略断面図である。
【符号の説明】
1,2,3,4・・・止血用具、12,32,52・・・基部、14,54・・・止血部、18,42,58,60・・・チューブ、20,64,72・・・コネクタ、22,34,44,70・・・液体流出口、24,36,46,74・・・液体注入口、26,76・・・液体流路、62・・・血液流出口、66・・・血液注入口、68・・・血液流路。
Claims (3)
- 柔軟に湾曲可能な棒状の基部の両端に、該基部よりも外周寸法の大きい止血部を設けた構造で、血管の側面に形成される穴から血管内に挿入されて、前記両端の止血部が前記穴の両側に配置され、その状態で前記止血部の外周が全周にわたって血管の内壁に密接し、前記穴の両側から穴側へと流入する血液を遮断する止血用具において、
前記両端の止血部の間に設けられ、外部へ液体を流出させる液体流出口と、
該液体流出口と液体の供給源とを連通し、該供給源から前記液体流出口へ液体を誘導する液体流路とを備え、
前記液体流出口から前記穴の近傍に液体を放出可能とした
ことを特徴とする止血用具。 - 請求項1記載の止血用具において、
前記基部の側面から液体を注入可能な液体注入口が設けられ、
前記液体流出口が、前記基部の側面に設けられ、
前記液体流路が、前記液体注入口と前記液体流出口とを連通する形で形成されている
ことを特徴とする止血用具。 - 請求項1又は請求項2記載の止血用具において、
一方の止血部の先端側に設けられ、外部へ血液を流出させる血液流出口と、
該血液流出口と血液の供給源とを連通し、該供給源から前記血液流出口へ血液を誘導する血液流路とを備え、
前記血液流出口から流出させた血液を、前記一方の止血部によって閉塞された箇所よりも末梢側へ供給可能とした
ことを特徴とする止血用具。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP28390496A JP3724895B2 (ja) | 1996-10-25 | 1996-10-25 | 止血用具 |
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JP28390496A JP3724895B2 (ja) | 1996-10-25 | 1996-10-25 | 止血用具 |
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JPH10118081A JPH10118081A (ja) | 1998-05-12 |
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Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP28390496A Expired - Lifetime JP3724895B2 (ja) | 1996-10-25 | 1996-10-25 | 止血用具 |
Country Status (1)
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JP (1) | JP3724895B2 (ja) |
-
1996
- 1996-10-25 JP JP28390496A patent/JP3724895B2/ja not_active Expired - Lifetime
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JPH10118081A (ja) | 1998-05-12 |
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