JP3724240B2 - スピンドル装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、チャックを圧縮空気を利用して動作させる工作機械等に使用するスピンドル装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のスピンドル装置としては、例えば図3に示すものが提案されている。
このスピンドル装置は、円筒状のハウジング1を有し、このハウジング1の内周面における両端側にシール付きの転がり軸受2a,2bが配設され、これら転がり軸受2a,2bによってスピンドル3が内周面内に回転自在に保持され、このスピンドル3の一端側に圧縮空気を利用して動作するチャック4を装着するアダプタ5が形成され、他端が図示しないが少なくとも電動モータ及び減速機を備えた回転駆動源に連結されている。
【0003】
そして、スピンドル3には中心軸位置に軸方向中央部からアダプタ5の端面に開口する圧縮空気通路6が形成され、この圧縮空気通路6の内方側端部に半径方向に外方に延長しかつスピンドル3の外周面に形成した円周溝7に連通する連通路8が形成されている。
一方、ハウジング1には、スピンドル3の円周溝7に対向する内周面に円周溝7より幅広の円周溝9が形成され、この円周溝9がハウジング1を半径方向に貫通する圧縮空気通路10を介して外周面側に形成された圧縮空気供給口11に連通されている。
【0004】
また、転がり軸受2aはその外輪がハウジング1の端面にボルト締めされたリング状の前蓋12によってハウジング1に固定されていると共に、転がり軸受2bはその内輪がスピンドル3に螺合されたリング状のナット13によってスピンドル3に固定され、外輪が予圧バネ14によって外方に定圧予圧されている。
そして、ハウジング1の転がり軸受2a及び2bの内方側にそれぞれ円周溝7及び9から漏れる圧縮空気を貯留するリング状の空気溜15a及び15bが形成され、これら空気溜15a及び15bがハウジング1の外周面に形成された排気口16a及び16bに連通されている。
【0005】
このような構成を有するスピンドル装置では、圧縮空気供給口11を図示しない圧縮空気供給源に接続し、排気口16a及び16bを同様に図示しない排気部に接続することにより、ハウジング1の内周面とスピンドル3の外周面との間から漏れる圧縮空気が転がり軸受2a及び2bを通じて外部に漏れることを防止するようにしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のスピンドル装置にあっては、ハウジング1にスピンドル3が回転自在に支持されていることから両者間に僅かな間隙を有するため、圧縮空気供給口11に供給される圧縮空気が円周溝7及び9位置で、ハウジング1及びスピンドル3間の間隙を通じて漏れることを回避することはできないので、転がり軸受2a及び2bをシール付きとすると共に、これら転がり軸受2a及び2bの外側にそれぞれラビリンス部17a及び17bを形成することにより、転がり軸受2a及び2bの内側に形成した空気溜15a及び15bに漏れた圧縮空気を貯留して、これらを排気口16a及び16bを通じて排気することができるが、圧縮空気の圧力が高い場合には円周溝7及び9位置から漏れた圧縮空気が空気溜15a、転がり軸受2a及びラビリンス部17aを通じて外部に漏れてしまい、発塵をきらうクリーンルーム等で使用することができないという未解決の課題がある。
【0007】
この未解決の課題を解決するために、例えば特開昭63−9780号公報に示すように、転がり軸受の近傍に磁性流体シール機構を設けることが考えられるが、外部に漏れる圧縮空気の圧力が比較的高く、磁性流体シール機構の耐圧が比較的低いことから磁性流体シール機構がバースト状態となって本来のシール機能を発揮することができないという問題点がある。
【0008】
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、磁性流体シール機構を有効に利用して発塵を極力抑制することができるスピンドル装置を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に係るスピンドル装置は、ハウジング内に回転自在に支持されたスピンドルを備え、前記ハウジング内に形成した通路及び前記スピンドル内に形成された通路を通じて当該スピンドルに取付けられたチャックに圧縮空気を供給するようにしたスピンドル装置において、前記チャック近傍における前記ハウジング及び前記スピンドル間に発塵防止用の磁性流体シール部を形成すると共に、前記磁性流体シール部と前記チャックとは反対側に形成された前記ハウジング内の通路から前記スピンドル内の通路に圧縮空気を受け渡す圧縮空気受け渡し部との間に当該圧縮空気受け渡し部から漏れる圧縮空気の圧力を低下させる複数のラビリンス部を形成し、当該複数のラビリンス部は、前記圧縮空気受け渡し部から前記磁性流体シールに向かう下流に行くに従って長さが短くなるように構成され、前記各ラビリンス部で圧力低下された圧縮空気を個別の排気通路を介して前記ハウジングの外周面に形成された個別の排気口から排気装置に排気することを特徴としている。
【0010】
この請求項1に係る発明においては、この請求項1に係る発明においては、ハウジング及びスピンドル間の圧縮空気受け渡し部と磁性流体シール部との間に圧縮空気受け渡し部から漏洩する圧縮空気の圧力を低下させる複数のラビリンス部が形成され、各ラビリンス部が個別の排気通路を介して前記ハウジングの外周面に形成された個別の排気口に連通しているので、圧縮空気受け渡し部から漏れる圧縮空気が各ラビリンス部で圧力低下されると共に、個別の排気口から順次排気装置に排気されるので、その漏れ量及び圧力が順次低下されて、磁性流体シール部に達するときにはその耐圧以下となって、バーストを伴うことなく確実なシール機能を発揮する。しかも、各ラビリンス部の長さが下流に行くに従って短くなるように構成されているので、ラビリンス部全体の長を短くすることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態を示す断面図であり、図中、1は比較的長尺に形成された円筒状のハウジングであって、その内周面に中央部の後述するスピンドル3より大径の小径部1aと、この小径部1aの左端側に連接する後述するスピンドル3より僅かに大きい径の最小径部1bと、この最小径部1bの左端側に連接する小径部1aより大きい径の中径部1cと、この中径部1cの左端側に連接する大径部1dと、小径部1aの右端側に連接する前記大径部1dと同径の大径部1eとが形成され、外周面の中央部に取付フランジ1fが形成されている。
【0012】
ここで、大径部1d及び1eにシール付きの転がり軸受2a及び2bが配設され、転がり軸受2aの外輪はハウジング1の左端面にボルト締めされた前蓋12のフランジ部12aによってハウジング1に固定され、転がり軸受2bの内輪は後述するスピンドル3に螺合されたナット13によってスピンドル3に固定され、外輪は大径部1eの転がり軸受2bの左端側に配設された予圧バネ14によって定圧予圧されている。
【0013】
そして、転がり軸受2a及び2bにスピンドル3が回転自在に支持されている。このスピンドル3は中央部の中径部3aと、その左端側に連接する中径部3aより大きい径で前蓋12の内径より僅かに小さい径の大径部3bと、中径部3aの右端側に連接する中径部3aより小径の小径部3cと、この小径部3cの右端側に連接する図示しないが少なくとも電動モータ及び減速機を備えた回転駆動源に連結する連結部3dとで構成されている。
【0014】
このスピンドル3の中心位置には、左端面側からハウジング1の小径部1aの右端側に達する圧縮空気通路31が穿設され、この圧縮空気通路31の右端部に半径方向に延長する連結通路32が連通され、これら連結通路32の外方端が中径部3aの外周面に形成された円周溝33に連通されている。
また、大径部3bには、その左端側に圧縮空気を利用して開閉動作する加圧型作動チャック4を装着するアダプタ5が取付けられている。
【0015】
一方、ハウジング1の小径部1aには、円筒状のジョイントスリーブ21が内嵌されている。このジョイントスリーブ21はその内径がスピンドル3の外径より僅かに大きく設定され、その内周面にスピンドル3の円周溝33と対向する位置に円周溝と同一形状の円周溝G0が穿設され、この円周溝G0が円周上の一点で半径方向に延長してジョイントスリーブ21を貫通する連結通路23を介してジョイントスリーブ21の外周面に開口し、この連結通路23がハウジング1に形成された圧縮空気通路24を介してハウジング1の外周面に形成された圧縮空気供給口25に連通されている。
【0016】
また、ジョイントスリーブ21の内周面に円周溝G0より左方側に所定距離S1だけ離間した位置に排気部を構成する円周溝G1が形成され、この円周溝G1より左方側に所定距離S1より2割程度短い所定距離S2だけ離間した位置に同様に排気部を構成する円周溝G2が形成され、さらに円周溝G2より左方側に所定距離S2より3割程度短い所定距離S3だけ離間した位置に同様に排気部を構成する円周溝G3が形成され、これら円周溝G1〜G3がそれぞれ図2に示すように正面から見て異なる角度で半径方向にジョイントスリーブ21を貫通して延長する連結孔HC1〜HC3を介し、さらにハウジング1内に形成した排気孔HE1〜HE3を介してハウジング1の外周面に形成した異なる排気口PE1〜PE3に連通されている。
【0017】
さらに、円周溝G0及びG1間、G1及びG2間、G2及びG3間及びG3の左方側がスピンドル3の外周面との間で僅かな間隙となるラビリンス部L1、L2、L3及びL4とされ、円周溝G0の右方側もラビリンス部L5とされている。
さらにまた、ハウジング1に形成した大径部1d及び1eにおける転がり軸受2aの右側及び転がり軸受2bの左側に形成された空気溜Aa及びAbが同様にハウジング1に形成した排気孔HE4及びHE5を通じて異なる排気口PE4及びPE5に連通されている。
【0018】
なおさらに、前蓋12の内周面とスピンドル3の大径部3bとの間に磁性流体シール部41が形成され、且つ前蓋12の右端面とハウジング1の左端面との間にオーリング42が配設され、同様に、スピンドル3の大径部3bの左端面とアダプタ5の右端面との間にも2つのオーリング43,44が同心状に配設され、さらにスピンドル3のナット13とハウジング1の大径部1eに螺合されたリング部材45との間にラビリンス部46が形成されている。
【0019】
そして、ハウジング1がその取付フランジ1fを発塵を許容する空間部50Aと発塵を嫌う空間部50Bとを仕切る仕切り壁51にチャック4側を空間部50B側として取付けられている。
次に、上記実施形態の動作を説明する。
先ず、ハウジング1に形成された圧縮空気供給口25に図示しない配管を通じて圧縮空気供給源を接続すると共に、各排気口PE1〜PE5に同様に配管を通じて排気装置に接続する。
【0020】
この状態で、チャック4で被チャック部材を把持する場合には、例えば圧縮空気供給源からの圧縮空気を圧縮空気供給口25、圧縮空気通路24を通じ、ジョイントスリーブ21の連結孔23、円周溝G0を通じ、スピンドル3の円周溝33、連通孔32、圧縮空気通路31を通じ、さらにアダプタ5の供給孔5aを通じてチャック4に供給することにより、チャック4が閉動作して被チャック部材を挟着保持する。
【0021】
このとき、ハウジング1とジョイントスリーブ21との間及びジョイントスリーブ21とスピンドル3との間で圧縮空気の受け渡しが行われるが、ジョイントスリーブ21はハウジングの小径部1aに嵌合されているので、両者間に隙間は殆どなく、これら間で空気漏れを生じることはないが、ジョイントスリーブ21とスピンドル3との間では、スピンドル3が回転するための隙間が生じているので、空気漏れを生じる。
【0022】
しかしながら、ジョイントスリーブ21の円周溝G0と円周溝G1との間には、スピンドル3との間の隙間を小さくしたラビリンス部L1が形成されており、しかも、このラビリンス部L1の長さが比較的長く設定されており、この間の流体抵抗が大きいので、円周溝G0位置から漏れる圧縮空気量は僅かなものに抑制される。
【0023】
そして、円周溝G0位置から漏れた圧縮空気は、排気口PE1に連通された円周溝G1に達するが、この円周溝G1の左側にはラビリンス部L2が形成され、且つ円周溝G1は連結孔HC1及び排気通路HE1を通じて排気口PE1に連通されているので、円周溝G1に達した圧縮空気の大半は排気口PE1から配管を通じて外部の排気装置に排気される。
【0024】
しかしながら、残りの圧縮空気はさらにラビリンス部L2を通じて円周溝G2に入り、この円周溝G2でも連結孔HC2、排気通路HE2及び排気口PE2を通じて外部の排気装置に排気され、さらに、円周溝G2で排気されない圧縮空気はさらにラビリンス部L3を通じて円周溝G3に入ることになり、この円周溝G3の左側にもラビリンス部L4が形成されていることにより、円周溝G3内の圧縮空気は連結孔HC3、排気通路HE3及び排気口PE3を通じて外部の排気装置に排気される。
【0025】
したがって、ラビリンス部L4を通過して空気溜Aaに達する空気は殆ど圧力がないと共に、空気量も非常に少なくなり、これらがまた排気通路HE4、排気口PE4を通じて外部の排気装置に排気される。
この結果、転がり軸受2aには、圧縮空気の影響が全く生じない状態となり、転がり軸受2aより左端側に配設された磁性流体シール部41がバースト状態となることを確実に防止して確実なシール機能を発揮することが可能となり、転がり軸受2aで発生する磨耗粉等の塵埃が発塵を嫌う空間部50Bに排出されることを確実に阻止することができる。
【0026】
一方、ジョイントスリーブ21の円周溝G0より右側に漏れる圧縮空気は空気溜Abに達し、この空気溜Abから排気通路HE5及び排気口PE5を通じて外部の排気装置に排気されるが、この場合は、空気溜Abに1つのラビリンス部L5を通じて圧縮空気が漏れることにより、比較的圧力が高く、この漏れた圧縮空気が転がり軸受2bを介してラビリンス46を介して空間部50Aに排出されることになるが、この空間部50Aでは発塵を許容するので、何ら問題はない。
【0027】
また、上記実施形態では、ラビリンス部L1〜L4と排気部となる円周溝G1〜G3とを交互に複数組配設したので、漏れた圧縮空気を確実に回収することができ、しかも、ラビリンス部L1〜L4の長さは下流に行くに従って順次短く設定しているので、ジョイントスリーブ21の全長を短くすることができる。
さらに、ラビリンス部L1〜L4と円周溝G1〜G3とを長さの短いジョイントスリーブ21に形成したので、これらをハウジング1の内周面に形成する場合に比較してラビリンス部L1〜L4の加工精度を向上させることができ、スピンドル3の外周面との干渉を確実に防止することができる。
【0028】
なお、上記実施形態においては、チャック4側にのみラビリンス部L1〜L4、円周溝G1〜G3及び磁性流体シール部41を設けた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、空間部50Aでも発塵を嫌う場合には、チャック側と同様に複数組のラビリンス部及び円周溝を配設すればよい。
また、上記実施形態においては、ハウジング1の内周面にジョイントスリーブ21を嵌合させた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、スピンドル3側にジョイントスリーブ21を嵌合させるようにしてもよく、さらにはジョイントスリーブ21を省略して、ラビリンス部L1〜L4及び円周溝G1〜G3を直接ハウジング1の内周面又はスピンドル3の外周面に形成するようにしてもよい。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に係る発明によれば、ハウジング及びスピンドル間の圧縮空気受け渡し部と磁性流体シール部との間に圧縮空気受け渡し部から漏洩する圧縮空気の圧力を低下させる複数のラビリンス部が形成され、各ラビリンス部が個別の排気通路を介して前記ハウジングの外周面に形成された個別の排気口に連通しているので、圧縮空気受け渡し部から漏れる圧縮空気が各ラビリンス部で圧力低下されると共に、個別の排気口から順次排気装置に排気されるので、その漏れ量及び圧力が順次低下されて、磁性流体シール部に達するときにはその耐圧以下となって、バーストを伴うことなく確実なシール機能を発揮することができ、転がり軸受等から発生される塵埃が発塵を嫌う空間部に排出されることを確実に阻止することができるという効果が得られる。しかも、各ラビリンス部の長さが下流に行くに従って短くなるように構成されているので、ラビリンス部全体の長を短くすることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す断面図である。
【図2】図1の右側面図である。
【図3】従来例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 ハウジング
2a,2b 転がり軸受
3 スピンドル
4 チャック
5 アダプタ
21 ジョイントスリーブ
L1〜L5 ラビリンス部
G0〜G3 円周溝
23 連結孔
24 圧縮空気通路
25 圧縮空気供給口
31 圧縮空気通路
32 連結孔
33 円周溝
HE1〜HE5 排気通路
PE1〜PE5 排気口
41 磁性流体シール部

Claims (1)

  1. ハウジング内に回転自在に支持されたスピンドルを備え、前記ハウジング内に形成した通路及び前記スピンドル内に形成された通路を通じて当該スピンドルに取付けられたチャックに圧縮空気を供給するようにしたスピンドル装置において、前記チャック近傍における前記ハウジング及び前記スピンドル間に発塵防止用の磁性流体シール部を形成すると共に、前記磁性流体シール部と前記チャックとは反対側に形成された前記ハウジング内の通路から前記スピンドル内の通路に圧縮空気を受け渡す圧縮空気受け渡し部との間に当該圧縮空気受け渡し部から漏れる圧縮空気の圧力を低下させる複数のラビリンス部を形成し、当該複数のラビリンス部は、前記圧縮空気受け渡し部から前記磁性流体シールに向かう下流に行くに従って長さが短くなるように構成され、前記各ラビリンス部で圧力低下された圧縮空気を個別の排気通路を介して前記ハウジングの外周面に形成された個別の排気口から排気装置に排気することを特徴とするスピンドル装置。
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