JP3723106B2 - 電子線装置及び該装置を用いたデバイス製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、最小線幅0.1μm以下のパターンを有するウェーハの評価を高スループット且つ高信頼性で行う電子線装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、複数のビーム(一次電子線)をE×B分離器および対物レンズを通し、該ビームにより試料上を走査し、該試料から発生した二次電子を、対物レンズが作る電界で加速し、E×B分離器によって一次電子線の光路から偏向させ、二次電子検出器へと向かわせるようにした装置は公知である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の技術に存在するE×B分離器では、一次電子線は全く偏向されないようにするが、二次電子線を20°とか30°等に大きく偏向させたい場合には、一次電子線に偏向色収差が発生する問題があった。
【0004】
また、この問題を回避するため、E×B分離器を像面と共役の位置に設ける方法もあるが、その場合はE×B分離器と対物レンズの前段レンズとの距離が短くなり、二次光学系の光学部品と上記前段レンズとの干渉を避けるのが困難になるという問題があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明によれば、一次電子線を対物レンズで集束し、集束された該一次電子線によって試料上を走査し、該試料から放出する二次電子を、対物レンズが作る電界で加速し、該対物レンズを通過後の二次電子を、E×B分離器により一次電子線の光路からそらして二次電子検出器へと向かわせるようになされた電子線装置において、E×B分離器を構成する静電偏向器による偏向色収差と電磁偏向器による偏向色収差とをほぼ等しくさせるような強度でE×B分離器を動作可能となされていることを特徴とする電子線装置が提供される。
【0006】
また、本発明によれば、一次電子線を対物レンズで集束し、集束された該一次電子線によって試料上を走査し、該試料から放出する二次電子をE×B分離器により一次電子線の光路からそらして二次電子検出器へと向かわせるようになされた電子線装置において、カソード電位を変化させた時のE×B分離器による電子像の位置の変化が最小になるようにE×B分離器を構成する静電偏向器と電磁偏向器との偏向比を調整可能となされていることを特徴とする電子線装置も提供される。
【0007】
また、本発明によれば、一次電子線を対物レンズで集束し、集束された該一次電子線によって試料上を走査し、該試料から放出する二次電子をE×B分離器により二次電子検出器へと向かわせるようになされた電子線装置において、一次電子線がE×B分離器により偏向される量に関し、静電偏向器による量を電磁偏向器による量よりも大きくするよう調整可能となされていることを特徴とする電子線装置も提供される。
【0008】
また、本発明によれば、静電偏向器と電磁偏向器とを同じ光軸方向位置で組合わせたE×B分離器と対物レンズとで一次電子線を試料に入射させ、該試料から放出する二次電子をE×B分離器により一次光学系から分離させ、分離後少なくとも1段のレンズで該二次電子を二次電子検出器に結像させて検出するようになされた電子線装置において、対物レンズが作る二次電子像の像面をE×B分離器の偏向主面に一致させるように調整可能であることを特徴とする電子線装置も提供される。
【0009】
さらに本発明によれば、上述したいずれかの電子線装置を用いてデバイス製造の各ウェーハプロセス後のウェーハの評価を行うことを特徴とするデバイス製造方法も提供される。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一つの実施の形態である電子線装置の電子光学系を示す。単結晶LaB6カソード1から放出された一次電子線は、ウェーネルト2およびアノード3が作る電界によって、アノード3を通過した後に20μmφ程度のクロスオーバを形成する。このクロスオーバはコンデンサレンズ6で縮小され、走査偏向器7の近傍に縮小像を作り、さらに対物レンズ11で縮小され、試料12上に100nmφのクロスオーバ像を作る。なお、符号4,5は軸合わせ偏向器を示し、符号13は、コンデンサレンズ6におけるセラミック円柱、14はコンデンサレンズ上極、15はコンデンサレンズ中央電極、16はコンデンサレンズ下極をそれぞれ示す。また、符号17は対物レンズ11のセラミック円柱、18は対物レンズ上極、20は対物レンズ下極をそれぞれ示す。
【0011】
一次電子線は、走査偏向器7とE×B分離器を構成する静電偏向器10とにより2段偏向されて試料上を走査する。試料12の走査点から発生した二次電子は、対物レンズ11の作る電界によって加速され、細いビームとなり対物レンズ11を通過する。そして対物レンズ11を通過した二次電子は、E×B分離器により図1で見て左方へ偏向され、二次電子検出器8で検出され、増幅器21で増幅され、A/D変換器22でデジタル信号に変換され、ラインメモリ23、24を通ってCPU25に入力される。
【0012】
ラインメモリ23,24とA/D変換器22との間、および、ラインメモリ23,24とCPU25との間には、それぞれ切り換スイッチS1,S2が設けられており、これらのスイッチS1,S2は各ラインメモリ23,24に対して互いに交番的に接続する。例えば、図示状態では、A/D変換器22からスイッチS1を介して一方のメモリ24に信号を取り込んでいる間、既に他方のメモリ23に取り込まれている、ひとつ前の一走査分の信号がスイッチS2を介してCPU25に転送される。一走査が終了したらスイッチS1およびS2がそれぞれ切り換えられ、A/D変換器22からメモリ23に信号が取り込まれ、メモリ24の信号がCPU25に入力される。
【0013】
E×B分離器で一次電子が曲げられないようにすると、一次電子におけるエネルギ幅は0ではないので、偏向色収差が発生し、一次電子線が電界の向きにボケることになる。この偏向色収差を静電偏向器−対物レンズの組み合わせと電磁偏向器−対物レンズの組み合わせとに分けて計算した結果を図2に示す。ここで横軸は、E×B分離器を構成する電磁偏向器9又は静電偏向器10と対物レンズ11の中央電極19間の距離(mm)であり、縦軸は試料上で180μm偏向した場合のエネルギ幅5eVでの偏向色収差(nm)である。
【0014】
図2において、黒丸は電磁偏向と対物レンズとの組合わせの場合であり、白丸は静電偏向と対物レンズとの組合わせの場合である。通常、偏向色収差は静電偏向のほうが大きいが、この場合は対物レンズでも偏向色収差を発生するから、このように電磁偏向のほうが大きくなっている。
【0015】
E×B分離器の偏向中心と対物レンズとの間の距離が30mmの場合、静電偏向と電磁偏向との比を555:485とすれば、静電偏向と電磁偏向との偏向方向は逆であるから、収差も逆の方向に発生し、互いに打ち消す。静電偏向と電磁偏向とは、互いに打ち消し合って偏向色収差を0にすることができる。但しE×B分離器を通った主光線の軌道は(555−485)/(555+485)≒0.07程度偏向される。この7パーセントという値は、二次電子を20°曲げるとして、それが1.4°偏向されるのみであるということを意味するから、問題にはならない。
【0016】
実測によって上記比率を求めるには、カソード電位を標準の値とそれより100V程度小さい値との2値に周期的に変化する値にし(いわゆるウォブリング)、マーク像をCRTモニタに表示する。マーク像は、カソード電位にウォブリングを与えたことによる偏向色収差によって2つの像に分れる。またE×B分離器に励起を行った場合と、行わなかった場合との差も見ることができる。図3は、これらの様子をCRTに表示したものである。十字マークのSEM像をCRT31に表示するものとし、E×B分離器を励起しない場合の像の位置を32とする。E×B分離器を励起すると符号33で示す位置に像が移動し、さらにカソード電位にウォブラをかけると、十字マークの像は、符号33の位置と符号34の位置とに分離する。静電偏向と電磁偏向との比率を変化させると、33の位置と34の位置との間の距離Bを調整できる。Bが0になる比を求めれば、E×B分離器による偏向色収差を0にすることができる。
【0017】
Bを完全に0にしなくても、他の収差に比べてE×B分離器による偏向色収差を無視できる程度以下にすればよい。このためには、(静電偏向/電磁偏向)比を1〜555/485の間にすればよい。即ち、この範囲で静電偏向器10による偏向量を電磁偏向器9による偏向量より大きくすればよい。上記比を1とした場合、十字マークの像の位置32と33との間の距離Aは0となるが、Bは大きな値になる。上記比を1から徐々に増してゆくと、Bは小さくなり、上記比が555/485の近くになるとBは0になるが、上記比をさらに増すとBは増加する。
【0018】
図4は、本発明の第2の実施の形態による電子線装置における光学系を示す。電子銃41から放出された一次電子線は、レンズ42を通過し、さらに、互いに同じ光軸方向を有する静電偏向器37および電磁偏向器38を備えたE×B分離器43を通過し、対物レンズ44で縮小されて試料46上に結像する。試料46から放出した二次電子48は対物レンズ44で加速され、レンズ44を通過後、E×B分離器43で一次光学系から分離され、分離後に1段のレンズ45で二次電子検出器47に合焦され、検出される。一次電子線はE×B分離器43の主面に像面を一致させていないが、二次電子の像面はE×B分離器43の主面と一致している。従って、E×B分離器43で大きな偏向色収差があっても、レンズ45でその分が戻されるので、二次電子48が検出器47を外れることはない。
【0019】
次に図5及び図6を参照して、上記実施形態で示した電子線装置により半導体デバイスを製造する方法の実施態様を説明する。
図5は、本発明による半導体デバイスの製造方法の一実施例を示すフローチャートである。この実施例の製造工程は以下の主工程を含んでいる。
(1)ウェーハを製造するウェーハ製造工程(又はウェーハを準備するウェーハ準備工程)(ステップ100)
(2)露光に使用するマスクを製造するマスク製造工程(又はマスクを準備するマスク準備工程)(ステップ101)
(3)ウェーハに必要な加工処理を行うウェーハプロセッシング工程(ステップ102)
(4)ウェーハ上に形成されたチップを1個ずつ切り出し、動作可能にならしめるチップ組立工程(ステップ103)
(5)組み立てられたチップを検査するチップ検査工程(ステップ104)
なお、上記のそれぞれの主工程は更に幾つかのサブ工程からなっている。
【0020】
これらの主工程中の中で、半導体デバイスの性能に決定的な影響を及ぼすのが(3)のウェーハプロセッシング工程である。この工程では、設計された回路パターンをウェーハ上に順次積層し、メモリやMPUとして動作するチップを多数形成する。このウェーハプロセッシング工程は以下の各工程を含んでいる。
(A)絶縁層となる誘電体薄膜や配線部、或いは電極部を形成する金属薄膜等を形成する薄膜形成工程(CVDやスパッタリング等を用いる)
(B)この薄膜層やウェーハ基板を酸化する酸化工程
(C)薄膜層やウェーハ基板等を選択的に加工するためにマスク(レチクル)を用いてレジストパターンを形成するリソグラフィー工程
(D)レジストパターンに従って薄膜層や基板を加工するエッチング工程(例えばドライエッチング技術を用いる)
(E)イオン・不純物注入拡散工程
(F)レジスト剥離工程
(G)加工されたウェーハを検査する工程
なお、ウェーハプロセッシング工程は必要な層数だけ繰り返し行い、設計通り動作する半導体デバイスを製造する。
【0021】
図6は、上記ウェーハプロセッシング工程の中核をなすリソグラフィー工程を示すフローチャートである。このリソグラフィー工程は以下の各工程を含む。
(a)前段の工程で回路パターンが形成されたウェーハ上にレジストをコートするレジスト塗布工程(ステップ200)
(b)レジストを露光する工程(ステップ201)
(c)露光されたレジストを現像してレジストのパターンを得る現像工程(ステップ202)
(d)現像されたレジストパターンを安定化するためのアニール工程(ステップ203)
上記の半導体デバイス製造工程、ウェーハプロセッシング工程、リソグラフィー工程については、周知のものでありこれ以上の説明を要しないであろう。
【0022】
上記(G)の検査工程に本発明に係る欠陥検査方法、欠陥検査装置を用いると、微細なパターンを有する半導体デバイスでも、スループット良く検査できるので、全数検査が可能となり、製品の歩留まりの向上、欠陥製品の出荷防止が可能と成る。
【0023】
以上が、本願発明の各実施形態であるが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0024】
【発明の効果】
本発明の電子線装置によれば、一次電子線の像面とE×B分離器の主面とを一致させない状態で、E×B分離器による一次電子線の偏向色収差を補正できる。
【0025】
また、カソード電位にウォブリングを行うことにより色収差を発生させ、それによって偏向色収差を補正する方法が実現できる。
また、E×B分離器による一次電子線の偏向量と、一次電子線の偏向色収差との両方を問題ない程度に小さくすることができる。
【0026】
また、二次電子像の像面とE×B分離器の主面とを一致させることによって、E×B分離器で偏向しても偏向色収差を問題ない程度の値に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施の形態による電子線装置における電子光学系の概略模式図。
【図2】 E×B分離器と対物レンズとの組合わせによる偏向色収差特性を示すグラフ。
【図3】 偏向色収差補正方法を説明するための図。
【図4】 本発明の第2の実施の形態による電子線装置における電子光学系の概略模式図。
【図5】 半導体デバイスの製造方法の一実施例を示すフローチャート。
【図6】 図5の半導体デバイスの製造方法のうちリソグラフィー工程を示すフローチャート。
【主要部分の符号の説明】
1 カソード、2 ウェーネルト、3 アノード、4,5 軸合わせ偏向器、6コンデンサレンズ、7 走査偏向器、8 二次電子検出器、9 電磁偏向器、10 静電偏向器、11 対物レンズ、12 試料、19 中央電極、21 増幅器、22 A/D変換器、23,24 ラインメモリ、25 CPU、37 静電偏向器、38 電磁偏向器、41 電子銃、42 レンズ、43 E×B分離器、44 対物レンズ、45 レンズ、46 試料、47 二次電子検出器、48 二次電子軌道。
Claims (3)
- 一次電子線を対物レンズで集束し、集束された該一次電子線によって試料上を走査し、該試料から放出する二次電子をE×B分離器により一次電子線の光路からそらして二次電子検出器へと向かわせるようになされた電子線装置において、カソード電位を変化させた時のE×B分離器による電子像の位置の変化が最小になるように、E×B分離器を構成する静電偏向器と電磁偏向器との偏向比を調整可能となされていることを特徴とする電子線装置。
- 前記二次電子検出器で検出された二次電子は、増幅されたのち、A/D変換器でデジタル信号に変換され、ラインメモリを通ってCPUに入力されるようになされており、
前記ラインメモリは二つ設けられており、該二つのラインメモリは、前記A/D変換器との間、および、前記CPUとの間にそれぞれ設けられた交番的に接続可能なスイッチによって、前記A/D変換器からの信号を一方のラインメモリに取り込んでいる間に、既に他方のラインメモリに取り込まれている、ひとつ前の一走査分の信号を前記CPUに転送可能となされている、
請求項1に記載の電子線装置。 - 請求項1または請求項2に記載の電子線装置を用いてデバイス製造の各ウェーハプロセス後のウェーハの評価を行うことを特徴とするデバイス製造方法。
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