JP3722775B2 - 予混合ガス燃焼装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、多管式貫流ボイラ等に使用される予混合ガス燃焼装置であって、特に、ガス状燃料と燃焼空気とを混合させてなる予混合ガスをガス透過性の助燃体を使用して燃焼させるようにした予混合ガス燃焼装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の予混合ガス燃焼装置としては、前後方向長さが左右方向幅に比して長大なガス透過性の助燃体の直下に、助燃体と略同一の横断面形状を有する予混合ガス供給室を形成して、この予混合ガス供給室にガス状燃料と燃焼空気とを混合させてなる予混合ガスを供給することによって、助燃体の上面において当該予混合ガスの表面燃焼が行なわれるように構成したものが提案されている。
【0003】
かかる予混合ガス燃焼装置は、火炎が予混合ガスの燃焼による多数の微小火炎となるため、他の予混合ガス燃焼装置(例えば、燃焼室内でガス状燃料と燃焼空気とを混合させつつ燃焼させるブラスト予混合ガス燃焼装置)に比して、燃焼温度が低く、サーマルNOxの生成を大幅に低減することができる等の利点を有するものであり、多管式ボイラ等において好適に使用することができるものである。なお、助燃体としては、一般に、セラミック粒子を適宜の結合剤により結合させてなるものや耐熱合金繊維を積層,圧縮した上で焼結させたもの(メタルファイバー)等が使用される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、かかる予混合ガス燃焼装置にあっては、助燃体が燃焼により赤熱されて熱損し易く、耐久性に問題がある。しかも、助燃体の高温化により逆火現象が生じ易い。このため、助燃体を冷却水等により冷却するように工夫されたものも提案されているが、かかる冷却手段を設けることは装置構造が徒に複雑化,大型化する問題がある。また、助燃体下における予混合ガスの流入量分布が均一でないため、安定した燃焼が期待できない。このような問題を防止するために、助燃体下にガス分散板を配置して、予混合ガスを分散させた均一状態で助燃体に供給する工夫もなされているが、ガス分散板の熱損が甚だしい。また、ガス分散板が赤熱するため、逆火現象が生じる虞れが強い。さらに、上記した予混合ガス燃焼装置は、専ら、表面燃焼による低負荷燃焼を行うものであり、高負荷燃焼を行い得ず、その用途が大幅に制限されるものであった。
【0005】
本発明は、助燃体の構造を工夫することにより、上記した問題を生じることなく、低負荷燃焼及び高負荷燃焼を良好に行いうる予混合ガス燃焼装置を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ガス透過性の助燃体の上方空間たる燃焼室において、当該助燃体を通過した燃焼空気及びガス状燃料からなる予混合ガスの着火による燃焼が行われるように構成された予混合ガス燃焼装置において、上記の目的を達成すべく、特に、助燃体を、多数の第1耐熱性球体を上下方向に相対運動可動な密接状態で水平方向に並列させると共に上下方向に縦列させてなる可動層とその下位において多数の第2耐熱性球体を相対運動不能な密接状態で水平方向に並列させると共に上下方向に縦列させてなる固定層とからなるものとして、高負荷燃焼時においては固定層を通過した予混合ガスが更に可動層の一部又は全部を構成する第1耐熱性球体を浮遊させつつ当該可動層を通過するように構成しておくことを提案するものである。かかる予混合ガス燃焼装置にあって、低負荷燃焼時においては、予混合ガスの通過により第1耐熱性球体が相対運動を生じず、可動層の上面での表面燃焼が行われる。好ましい実施の形態にあっては、助燃体の直下に、当該助燃体と同一又は略同一の横断面形状をなす予混合ガス供給室が設けられている。また、予混合ガス供給室に、その周壁に形成された供給口から予混合ガスが供給されるように構成されると共に、当該供給口からの予混合ガスの供給方向における下流側に対応する固定層部分を構成する第2耐熱性球体を当該供給方向における上流側に対応する固定層部分を構成する第2耐熱性球体より小径のものとして、予混合ガス供給室から可動層と固定層との間に導入される予混合ガス量が均一となるように構成される。また、助燃体の横断面形状は方形をなしている。また、第1及び第2耐熱性球体としては、3mm〜15mm径(より好ましくは5mm〜10mm径)のセラミックボールを使用することが好ましく、可動層が同一径の第1耐熱性球体を積層してなるものであり、固定層が第1耐熱性球体より小径の第2耐熱性球体を積層してなるものであることが好ましい。また、可動層の層高さは、20mm〜100mm(より好ましくは30mm〜50mm)としておくことが好ましい。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図12に基づいて具体的に説明する。なお、以下の説明において、前後とは図1及び図2における左右を、左右とは図3における左右を、夫々、意味するものとする。
【0008】
この実施の形態における本発明に係る予混合ガス燃焼装置1は、図1〜図3に示す如く、装置本体2と、装置本体2内に形成された燃焼室3及び熱交換室4と、装置本体2の上下部に設けられた上下ヘッダ5,6と、装置本体2に設けられて、その上下端部を上下ヘッダ5,6に連通接続された第1及び第2水管群7,8と、燃焼室3の下部に配置されたガス透過性の助燃体9と、助燃体9の直下に燃焼空気10aと天然ガス,LPガス等のガス状燃料10bとを混合してなる予混合ガス10を供給する予混合ガス供給手段11と、を具備する3位置制御の多管式貫流ボイラに構成されている。
【0009】
装置本体2は、図1〜図3に示す如く、煙道12が接続される後端開口部を除いて、外周部を上下壁13,14、左右側壁15,15及び前壁16で閉塞された、前後方向に長尺な矩形箱状をなすものである。上下壁13,14及び前壁16は、夫々、耐火壁(キャスタブル)で構成されている。各側壁15は、前後方向に縦列する複数の鉛直水管(竪形水管)7a…相互を上下方向に延びるヒレ状の帯板7b…で連結してなる第1水管群7で構成されている。
【0010】
燃焼室3は、図1〜図3に示す如く、装置本体2の内部空間の略前半部分で構成されている。燃焼室3の前面を閉塞する前壁16には、点火器たるパイロットバーナ17及び覗き窓(図示せず)が設けられている。パイロットバーナ17は、図1に示す如く、そのパイロット炎が後述する助燃体9の上面に向く後下り傾斜姿勢をなして、助燃体9の上方近傍位に設置されている。
【0011】
熱交換室4は、図1〜図3に示す如く、装置本体2の内部空間の略後半部分で構成されており、前後端部は開口されている。熱交換室4の前端開口部は燃焼室3に連通されており、その後端開口部には煙道12が接続されている。熱交換室4内には、複数の鉛直水管(竪形水管)8a…で構成される第2水管群8が配置されている。すなわち、熱交換室4の左右壁を構成する第1水管群7,7間には、相互に連結されることなく個々に独立した多数の鉛直水管8a…からなる第2水管群8が配置されていて、燃焼ガス10cが燃焼室3から第1水管群7と第2水管群8との間及び第2水管群8内を通過して煙道12に排出されるようになっている。なお、第2水管群8を構成する鉛直水管8a…は相互に近接する状態で千鳥状に配置されている。また、熱交換室4の後部側に配置された鉛直水管8aとしては、フィン8b付のものが使用されている。また、熱交換室4の中心部に配置された複数(図示の例では3本)の鉛直水管8a…には、燃焼ガス(排ガス)10cが燃焼室3から熱交換室4内を後方へとショートパスすることがないように、対向する鉛直水管8aに近接する帯状のヒレ8c…を突設してある。
【0012】
上下ヘッダ5,6は、図1及び図3に示す如く、装置本体2の上下壁13,14に取付けられた矩形箱状のものであり、左右方向の中央部は前後方向に延びる補強壁5a,6aにより補強されている。補強壁5a,6aには、図示していないが、当該壁5a,6aで区画された左右のヘッダ内空間を連通する連通孔が設けられている。前記各鉛直水管7a,8aの上下端部は、装置本体2の上下壁13,14を貫通して、上下ヘッダ5,6に連通接続されている。上ヘッダ5には、補強壁5aの左右両側に形成される両ヘッダ内空間に夫々連通する一対の蒸気管18,18が連結されている。両蒸気管18,18は、図示していないが、下流側において合流されている。下ヘッダ6には、各鉛直水管7a,8aに冷却水19を供給するための給水管20が接続されている。なお、水管群7,8は左右対称となるように配置されており、左側の水管群7,8は補強壁5a,6aの左側において、また右側の水管群7,8は補強壁5a,6aの右側において、夫々、ヘッダ5,6に連通接続されている。また、水管相互のピッチPは、水管外径Dに対してP<1.5Dとなるように設定されている。
【0013】
助燃体9は、図1〜図10に示す如く、横断面が燃焼室3の横断面形状に略一致する矩形状つまり前後方向長さが左右方向幅に比して長大な細長矩形状をなす水平板形態に、多数の第1及び第2耐熱性球体21a…,22a…,22b…を上下2段に積層してなるガス透過構造体である。すなわち、助燃体9は可動層21とその下位に配設した固定層22とからなる。固定層22は、少なくとも上下壁23a,23bを耐熱性多孔板(パンチングメタル等)で構成した矩形箱23内に、多数の第2耐熱性球体22a…,22b…を水平方向に並列させると共に上下方向に縦列させた密接状態で充填させてなり、第2耐熱性球体22a…,22b…は水平方向及び上下方向において相互に点接触した相対運動不能状態に保持されている。固定層22においては、上下方向及び水平方向に点接触する第2耐熱性球体22a…,22b…間の空隙によって、上下方向に連通する多数の第2ガス通路22c…,22d…が形成されている。可動層21は、第2耐熱性球体22a,22bより大径の第1耐熱性球体21a…を、固定層22の上面つまり矩形箱23の上壁23a上に、水平方向に並列させると共に上下方向に縦列させた密接状態で載置させてなる。つまり、可動層21は、第1耐熱性球体21a…を水平方向及び上下方向に点接触させた状態で矩形箱23の上壁23a上に積層,載置させてなるものであり、第1耐熱性球体21a…の上下方向における相対運動が許容されるように構成されている。可動層21においても、固定層22と同様に、上下方向及び水平方向に点接触する第1耐熱性球体21a…間の空隙によって、上下方向に連通する多数の第1ガス通路21b…が形成されている。なお、可動層21における第1耐熱性球体21a…の水平方向における移動は、装置本体2の前壁16及び両室3,4の境界位置において装置本体2の下壁14に立設した耐火材製の突起壁24等によって規制されている。突起壁24は、炎(特に、後述する高負荷燃焼時における長大炎10D)が燃焼室3から熱交換室4への排ガス流動に伴って熱交換室4へと侵入するのを防止できる高さ(高負荷燃焼時において第1耐熱性球体21a…が浮遊した場合にその浮遊球体21aの熱交換室4への飛散を防止できる高さ以上である)に設定されている。
【0014】
第1及び第2耐熱性球体21a,22a,22bは、耐熱性を有する金属,セラミックス等で構成されるが、一般には、熱伝導性の高いアルミナ,炭化珪素等のセラミックスで構成しておくことが好ましい。第1及び第2耐熱性球体21a,22a,22bの径は、燃焼条件に応じて、3mm〜15mm(より好ましくは5mm〜10mm)の範囲において適宜に設定される。また、可動層21の高さは、燃焼条件に応じて、20mm〜100mm(より好ましくは30mm〜50mm)の範囲において適宜に設定される。但し、固定層22の高さ及び第2耐熱性球体22a,22bの径は、一般に、可動層21の高さ及び第1耐熱性球体21aの径より小さく設定される。
【0015】
予混合ガス供給手段11は、図1、図2及び図4〜図6に示す如く、助燃体9の直下において当該助燃体9と下壁14との間に形成された予混合ガス供給室26と、予混合ガス供給室26の周壁に形成せる供給口26aに接続された供給ダクト27と、供給ダクト27内の適所に配設された混合器28とを具備する。
【0016】
予混合ガス供給室26は、助燃体9と同一又は略同一の横断面形状をなすもので、前端部を全面的に開放する供給口26aに形成してある。供給ダクト27は、左右方向幅を助燃体8と同一又は略同一とした横断面矩形状の角筒体であり、その上流端部には燃焼空気10aを供給するための送風機(図示せず)が接続されており、その下流端部は前記供給口26aに接続されており、その中間部27aは装置本体2の前壁16に接着されている。混合器28は、図1に示す如く、ガス状燃料10bの供給管29が接続された六角柱状の中空箱体であり、供給ダクト27の中間部27a内に配置されている。すなわち、混合器28は、図5及び図6に示す如く、当該中間部27aの前後壁にこれとの間に所定間隔を隔てて平行する矩形板状の前後壁28a,28bと、倒立V字状の上壁28cと、V字状の下壁28dと、当該中間部27aの左右側壁に取付けられた六角形状の左右側壁28e,28eとからなり、前壁28aに接続した供給管29から供給されたガス状燃料10bを、前後壁28a,28bに形成されて左右方向に並列する複数の噴出口28f…から噴出させるように構成されている。而して、供給ダクト27内を流動する燃焼空気10aは、上窄まり状をなす混合器28の上壁28cによって前後に分流されて、供給ダクト27と混合器28との間に形成された狭窄通路27b,27bを通過し、更に下窄まり状をなす混合器28の下壁28dに誘導されて、混合器28下で合流することになるが、この間において燃焼空気10aと噴出口28f…から噴出されたガス状燃料10bとが混合されて予混合ガス10が得られる。このとき、各狭窄通路27bにおいては燃焼空気10aの流速が高められること、各狭窄通路27bの上流領域(上部領域)において高速流動する燃焼空気10aに向けてその流動方向と直交する方向にガス状燃料10bが噴出されること、及び燃焼空気10aとガス状燃料10bとの混合ガス(予混合ガス10)は狭窄通路27b,27bを高速で通過した後に、混合器28の下壁28dに誘導されて円滑に合流,混合されることから、両ガス10a,10bの混合が効果的に行われて、両ガス10a,10bが均一に混合された予混合ガス10が得られる。かくして得られた予混合ガス10は、供給ダクト27から予混合ガス供給室26に供給される。
【0017】
ところで、予混合ガス供給手段11により予混合ガス供給室26に供給された予混合ガス10は、助燃体9を上方に通過してパイロットバーナ17により点火され、助燃体9の上面領域(燃焼室3)において高負荷燃焼(定格燃焼)又は低負荷燃焼されるが、良好な燃焼が行われるためには助燃体9から燃焼室3に流出する予混合ガス量(以下「予混合ガス流出量」という)が、助燃体9の全面(助燃体9の上面における全領域)に亘って均一であることが必要である。しかし、(1)助燃体9及び予混合ガス供給室26の横断面形状(水平断面形状)が、前後方向に長く且つ左右方向に短い矩形状をなしていること、(2)予混合ガス10が予混合ガス供給室26にその前端開口部である供給口26aから後方に向けて供給されること、(3)予混合ガス供給室26に供給された予混合ガス10は後方へ流動しつつ助燃体9を通過するが、その一部は予混合ガス供給室26の前壁26bに衝突して滞留すること、から、予混合ガス供給室26から助燃体9に流入する予混合ガス量(以下「予混合ガス流入量」という)は、前後方向において不均一となる。すなわち、供給口26aからの予混合ガス10の供給方向(後方向)における下流側に対応する固定層部分(固定層22の後方側部分であり、以下「下流側固定層部分」という)22Aでの予混合ガス流入量10Aは、当該供給方向における上流側に対応する固定層部分(固定層22の前方側部分であり、以下「上流側固定層部分」という)22Bでの予混合ガス流入量10Bより多くなり(図8参照)、その結果、予混合ガス流出量が助燃体9の前後方向において不均一となり、良好な燃焼を行い得ない。
【0018】
そこで、この例では、図8〜図10に示す如く、可動層21を同一径のセラミックス製(アルミナ製)の第1耐熱性球体(以下「第1セラミックボール」という)21a…で構成すると共に、固定層22を径の異なる2種類のセラミックス製(アルミナ製)の第2耐熱性球体(以下「第2セラミックボール」という)22a…,22b…で構成することによって、上記した問題が生じないように図っている。
【0019】
すなわち、可動層21は、図8及び図9に示す如く、同一径(例えば10mm径)の第1セラミックボール21a…を積層してなる。したがって、第1セラミックボール21a…間に形成される第1ガス通路21b…の横断面積(水平断面積)は同一となっている。一方、固定層22はガス通過抵抗の異なる下流側固定層部分22Aと上流側固定層部分22Bとで構成されており、図8及び図10に示す如く、上流側固定層部分22Bは第1セラミックボール21aより小径(例えば8mm径)の第2セラミックボール22b…を積層してなり、下流側固定層部分22Aは、上記第2セラミックボール22bより小径(例えば6mm径)の第2セラミックボール22a…を積層してなり、下流側固定層部分22Aにおける各第2ガス通路22cの横断面積(水平断面積)が上流側固定層部分22Bの各第2ガス通路22dの横断面積より小さくなるように構成されている。したがって、下流側固定層部分22Aのガス通過抵抗が上流側固定層部分22Bより高くなることから、上記した如く、下流側固定層部分22Aへの予混合ガス量10Aが上流側固定層部分22Bへの予混合ガス流入量10Bより多い場合にも、固定層22を通過して可動層21へと供給される予混合ガス量は均一となる。その結果、同一大きさの第1ガス通路21b…を有する可動層22からは、その全領域に亘って均一量の予混合ガス10が流出することになる。つまり、予混合ガス流入量10A,10Bが不均一である場合にも予混合ガス流出量は均一となり、燃焼室3での安定且つ良好な燃焼が行われる。なお、第1ガス通路21b…と第2ガス通路22c…,22d…とは、上下方向に直線状に連通しないように、水平方向において齟齬するように配置されるが、この例においては、セラミックボール21a,22a,22bが異径であること(及び可動層21が矩形箱23の上壁23aである多孔板上に支持されていること)から、かかる配置形態を格別に工夫しておく必要はない。
【0020】
以上のように構成された予混合ガス燃焼装置1にあっては、予混合ガス供給室26に供給された予混合ガス10が、固定層22の第2ガス通路22c…,22d…及び可動層21の第1ガス通路21b…を通過して、パイロットバーナ17により着火されることにより、燃焼室3における燃焼が開始され、爾後、予混合ガス10の継続供給により当該燃焼が継続される。そして、燃焼室3で発生する燃焼ガス10cは、燃焼室3から熱交換室4を経て煙道12に排出されるが、この間において、水管群7,8内の冷却水との熱交換が行われて蒸気が発生し、その蒸気は上ヘッダ5から蒸気管18,18へと取り出される。
【0021】
而して、予混合ガス10の供給量が少ない低負荷燃焼時(定格出力の1/2〜1/3程度の低出力時)においては、図12(A)に示す如く、可動層21を構成する第1セラミックボール21a…は相対運動をせずに点接触した状態に保持されて、可動層21の上面に微小火炎10Cが形成される表面燃焼が行われる。
【0022】
一方、予混合ガス10の供給量が多い高負荷燃焼時においては、図12(B)に示す如く、可動層21を通過する予混合ガス10による第1セラミックボール21a…の押し上げ力(浮力)が第1セラミックボール21aの自重による当該セラミックボール21a…相互間の接着力より大きくなり、予混合ガス10が可動層21の一部又は全部を構成する第1セラミックボール21a…を浮遊させつつ当該可動層21を通過して、可動層21上に長大炎10Dが形成される高負荷燃焼が行われる。かかる場合、予混合ガス10の供給量を増加させるに従って(予混合ガス10の圧力が高くなるに従って)、可動層21の全部又は一部において第1セラミックボール21a…が浮遊して相互に非接触の状態となり、その浮遊状態(非接触状態)は予混合ガス10の供給量(圧力)が設定値に達した後においては安定する。すなわち、定格運転時においては、可動層21の高さが低負荷燃焼時における層高さより若干高くなるものの、層高さは大きく変動することがなく安定する。また、第1セラミックボール21a…の浮遊により予混合ガス通路が予混合ガス10の供給量に応じて拡大,増加されることから、可動層21における圧力損失が低減し且つ安定する。しかも、単に第1ガス通路21bの横断面積を拡大した場合と異なって、予混合ガス10が可動層21の表面全体に亘って円滑に流出することになるから、リフト現象等の不都合は生じない。なお、低負荷燃焼に移行すると、第1セラミックボール21a…の浮遊状態が解消され、可動層21を構成する第1セラミックボール21a…の全てが点接触状態に復帰される。
【0023】
また、助燃体9が真球体であるセラミックボール21a,22a,22bを積層してなるものであるから、助燃体9を通過する予混合ガス10は、図11に示す如く、セラミックボール21a,22a,22bの表面全体に接触することになる(同図(A)は低負荷燃焼時における可動層21を、同図(B)は高負荷燃焼時における可動層21を、また同図(C)は固定層22を夫々示したものである)。すなわち、予混合ガス10と助燃体9との接触面積が極めて大きい。したがって、セラミックボール21a…,22a…,22b…の相互接触が点接触であることとも相俟って、セラミックボール21a,22a,22cが予混合ガス10によって効果的に冷却され、低負荷燃焼時においては勿論、火炎温度の高い高負荷燃焼時においても、助燃体9(セラミックボール21a,22a,22b)が過度に加熱(赤熱)されたり熱損したりすることがない。なお、固定層22においては、第2セラミックボール22a…,22b…を矩形箱23に収納しているが、これらセラミックボール22a,22bと矩形箱23とが点接触しているにすぎないこととも相俟って、矩形箱23も過度に加熱されたり熱損したりすることがない。また、助燃体9がクラックや目詰まり等を生ずる虞れがない。
【0024】
したがって、予混合ガス10の供給量に拘わらず、助燃体9の高温化に伴う逆火現象が可及的に防止される。しかも、矩形箱23を含めた助燃体9の耐久性、延いては予混合ガス燃焼装置1の耐久性が大幅に向上することになり、長期に亘って良好な燃焼(低負荷燃焼及び高負荷燃焼)を行うことができる。しかも、助燃体9の上面(表面)はセラミックボール21a…により凹凸面形状をなしていることから、その比表面積が増大することになり、広い空燃比及び燃焼量の範囲で安定した低負荷燃焼(表面燃焼)及び高負荷燃焼を継続することが可能となる。また、セラミックボール21aの径,層高さ等を適当に設定することにより、高負荷燃焼を含めた広範な使用範囲を確保することができ、高出力密度の予混合ガス燃焼装置1の製作が可能となり、装置そのものの大幅な小型化が可能となる。
【0025】
また、前述した如く、固定層22を径の異なる2種類のセラミックボール22a…,22b…で構成して、固定層21への予混合ガス10の供給を均一に行うようにしておくことにより、温度ムラが発生せず、低負荷燃焼(表面燃焼)及び高負荷燃焼が更に安定且つ良好に行われる。
【0026】
また、上記した構成の予混合ガス燃焼装置1たる多管式貫流ボイラは、缶体が左右方向幅の小さな矩形体となっているから、設置スペースを必要以上に大きくすることなく、複数台を左右方向に並列配置しておくことができ、広範な用途に使用することができる。
【0027】
なお、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の基本原理を逸脱しない範囲において、適宜に改良,変更することができる。例えば、助燃体9の構成は任意であり、可動層21の層高さ及び球体21aの径は、高負荷燃焼時において球体21a…が適度に浮遊する(飛散ないし流動することを意味しない)ことを条件として、前述した範囲で燃焼条件に応じて適宜に設定することができ、球体21aの構成材もアルミナ等のセラミックスに限定されない。また、固定層22は球体22a,22bを上記した矩形箱23のような多孔板製の容器に収納して構成する他、球体相互を点接触状態に接着剤等により直接連結して構成することも可能である。使用される接着剤等は、前述した如く球体22a,22bが予混合ガス10により効果的に冷却されて過度に高温化しないため、ある程度以上の耐熱性を有するものを使用することができる。さらに、上記した例では、固定層22を2種類の異径球体で構成される層部分22A,22Bを前後方向に並列配置してなるものとして、可動層21への予混合ガス供給量の均一化を図ったが、予混合ガス供給室26の形態及び当該室26への予混合ガス供給形態によっては、3種類以上の異径球体で構成される固定層部分を前後方向又は左右方向に並列配置してなるものとすることも可能であり、或いは固定層22を同一径の球体で構成するようにすることも可能である。また、可動層21は、固定層22上に直接又は多孔板を介して支持されるが、後者のようにする場合、両層21,22間に所定の空間を確保しておくことも可能である。
【0028】
また、助燃体9は、球体21a,22a,22bを積層して構成されるものであるから、その平面形状(水平面形状)を任意に設定することができる。したがって、本発明の予混合ガス燃焼装置1は、缶体(装置本体2)ないし燃焼室3の横断面形状(水平断面形状)が上記した如き方形をなす多管式貫流ボイラの他、あらゆる形状ないし形式のボイラ等に適用することができる。
【0029】
また、小径球体の積層構造をなす助燃体9において、表層部分とその他の部分とでは要求される耐熱性等の条件が異なることがあるが、かかる場合、これらの層部分を構成する球体の材質,径を、当該層部分に要求される条件に応じて異なるものとしておくことができる。例えば、可動層21において、燃焼が行なわれる表層部分とその他の層部分とでは輻射熱の影響等により要求される耐熱性の程度が異なる場合、表層部分を構成する球体21aを高耐熱性材で構成し、その他の層部分を構成する球体21aを低耐熱性材で構成しておくことができる。
【0030】
また、上記の実施の形態にあっては、第1セラミックボール21aの熱交換室4への飛散及び炎10C,10Dの熱交換室4への侵入を防止するために、両室3,4の境界位置に突起壁24を立設するようにしたが、図13に示す如く、熱交換室4下の下壁部分14aを突起壁24と同一高さとなるように構成しておくことにより、突起壁24を廃止しておくことも可能である。
【0031】
【発明の効果】
以上の説明から容易に理解されるように、本発明の予混合ガス燃焼装置によれば、助燃体の過熱による逆火,熱損等、冒頭で述べた如き問題を生じることなく、低負荷燃焼及び高負荷燃焼を長期に亘って良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る予混合ガス燃焼装置の実施の形態を示す縦断面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う横断面図である。
【図3】図1のIII−IIIに沿う縦断面図である。
【図4】図1の要部を拡大して示す詳細図である。
【図5】図1の他の要部を拡大して示す詳細図である。
【図6】図5のVI−VI線に沿う横断面図である。
【図7】図3の要部を拡大して示す詳細図である。
【図8】予混合ガスの供給状態を示す図4対応の縦断面図である。
【図9】図8のIX−IX線に沿う横断面図である。
【図10】図8のX−X線に沿う横断面図である。
【図11】助燃体における予混合ガスの通過状態を示すものであり、(A)(B)は図9のXI−XI線に沿う縦断面図であり、(C)は図10のXI−XI線に沿う縦断面図である。
【図12】予混合ガスの燃焼状態を示す図4対応の縦断面図であり、(A)は低負荷燃焼状態を示し、(B)は高負荷燃焼状態を示す。
【図13】予混合ガス燃焼装置の変形例を示す図1相当の縦断面図である。
【符号の説明】
1…予混合ガス燃焼装置、2…装置本体、3…燃焼室、4…熱交換室、7a,8a…水管、9…助燃体、10…予混合ガス、10a…燃焼空気、10b…ガス状燃料、10c…燃焼ガス(排ガス)、11…予混合ガス供給手段、12…煙道、21…可動層、21a…第1セラミックボール(第1耐熱性球体)、21b…第1ガス通路、22…固定層、22A…下流側固定層部分(予混合ガスの供給方向における下流側に対応する固定層部分)、22B…下流側固定層部分(予混合ガスの供給方向における上流側に対応する固定層部分)、22a,22b…第2セラミックボール(第2耐熱性球体)、22c,22d…第2ガス通路、23…矩形箱、24…突起壁、26…予混合ガス供給室、26a…供給口、27…供給ダクト、28…混合器。
Claims (7)
- ガス透過性の助燃体の上方空間たる燃焼室において、当該助燃体を通過した燃焼空気及びガス状燃料からなる予混合ガスの着火による燃焼が行われるように構成された予混合ガス燃焼装置であって、助燃体が、多数の第1耐熱性球体を上下方向に相対運動可動な密接状態で水平方向に並列させると共に上下方向に縦列させてなる可動層とその下位において多数の第2耐熱性球体を相対運動不能な密接状態で水平方向に並列させると共に上下方向に縦列させてなる固定層とからなるものであり、高負荷燃焼時においては固定層を通過した予混合ガスが更に可動層の一部又は全部を構成する第1耐熱性球体を浮遊させつつ当該可動層を通過するように構成されていることを特徴とする予混合ガス燃焼装置。
- 低負荷燃焼時においては、予混合ガスの通過により第1耐熱性球体が相対運動を生じず、可動層の上面での表面燃焼が行われるように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載する予混合ガス燃焼装置。
- 助燃体の直下に、当該助燃体と同一又は略同一の横断面形状をなす予混合ガス供給室が設けられていることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載する予混合ガス燃焼装置。
- 予混合ガス供給室に、その周壁に形成された供給口から予混合ガスが供給されるように構成されると共に、当該供給口からの予混合ガスの供給方向における下流側に対応する固定層部分を構成する第2耐熱性球体を当該供給方向における上流側に対応する固定層部分を構成する第2耐熱性球体より小径のものとして、予混合ガス供給室から可動層と固定層との間に導入される予混合ガス量が均一となるように構成したことを特徴とする、請求項3に記載する予混合ガス燃焼装置。
- 助燃体の横断面形状が方形をなしていることを特徴とする、請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4に記載する予混合ガス燃焼装置。
- 第1及び第2耐熱性球体が3mm〜15mm径のセラミックボールであることを特徴とする、請求項1、請求項2、請求項3、請求項4又は請求項5に記載する予混合ガス燃焼装置。
- 可動層が同一径の第1耐熱性球体を積層してなるものであり、固定層が第1耐熱性球体より小径の第2耐熱性球体を積層してなるものであることを特徴とする、請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5又は請求項6に記載する予混合ガス燃焼装置。
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