JP3722636B2 - 押釦スイッチ用部材およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、携帯電話機、自動車電話機等の移動体通信機器、家庭用電話機、電子手帳、計測機器類、車載用スイッチ、リモコン、計算機あるいはパーソナルコンピュータのデータ入力装置やスイッチ装置等に部品として用いられる押釦スイッチ用部材およびその製造方法に係り、詳しくは、文字などの記号あるいは図柄等の表示部のデザイン性と視認性と耐久性に優れた押釦スイッチ用部材およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、携帯電話機等の移動体通信機器、電子手帳、計測器、リモコンなどの押釦スイッチにおいては、キートップのある押釦スイッチ用部材(カバー部材)が機器ケース内に収納された回路基板に組み付けられて、回路を開閉するスイッチ機能を果たす押釦スイッチとして構成されるものであるが、この押釦スイッチ用部材は、プラスチック製のキートップが多く使われ、必要に応じて文字、数字、符号等の記号或いは図柄が印刷されているものが多い。近年においては、キートップの部分を透明樹脂で形成し、そのキートップの裏面に文字、数字、符号などの記号の印刷を施して印刷層をキートップで保護し、さらにLEDなどを用いたバックライト式押釦スイッチとしたものも多い。
【0003】
このような、押釦スイッチ用のキートップは、ポリエステル、ポリカーボネート、アクリル、スチレン系等の透明熱可塑性樹脂またはシリコーン、ウレタン、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、アクリル系等の硬化性樹脂を用いて射出成形、圧縮成形、注型成形、トランスファー成形等により形成される。そして、このキートップの裏面に記号をスクリーン印刷またはパッド印刷等により形成する。また、必要に応じてこのように形成された複数のキートップをゴムカバー基材、ポリエステル製皿バネなどに接着配列し、携帯電話機他のキーボード部分に組み込まれて使用される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来のキートップにあっては、キートップの裏面に直接印刷するために、スクリーン印刷法またはパッド印刷法が行なわれていた。しかしながら、このスクリーン印刷法、パッド印刷法では、印刷意匠を印刷色に応じて版下と呼ばれるデザイン画を作り、さらにこれをスクリーン版或いは凹版などを製作する必要があり、しかも文字、数字、符号などの記号(以下記号という)に応じた形状の印刷版を1色毎に用いるため、多色印刷の場合は使用する色数と同じ回数印刷しなければならないし、手間がかかる割りには意匠性にも乏しく、高解像度の鮮明な写真、イラスト、絵などの印刷は事実上不可能である。また小ロット多品種印刷の場合は、製版費用がコスト高となるし、手数もかかり納期も長くなるし、デザイン変更に手間がかかるという問題があった。
さらには透明キートップの裏面に印刷があるために、透明キートップの厚みが厚いと携帯電話機他のキーボード部分に組み込まれた時に印刷の位置が奥になってしまい、外光が届きにくく、反射光で見たときには暗いくすんだ色に見えてしまって視認性の悪いものになってしまう欠点があった。また、例えば1mm以下の厚みの薄いキートップであれば視認性は損なわれないものの、薄いキートップ自体の成形が難しく、工業的には生産性の悪いコスト高のものとなってしまうという欠点があった。
【0005】
本発明は、これら従来の問題点を排除しようとするもので、押釦スイッチ用部材の表示部のデザインにコンピューターを用いたデザインデータが使用でき、デザイン変更、修正も簡単で、しかも無版印刷なので、製版にかかるコストもなく簡易に多種情報に適応でき、従来のスクリーン印刷等では不可能であった意匠性の高い押釦スイッチ用部材とし、さらには該印刷層の下面に光反射率50%以上の光反射性遮光層をもうけ、外光による視認性の向上と鮮やかな色の発色とを得られる高品位の押釦スイッチ部材およびその製造方法を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するためこの発明は、透光性キートップと透光性ゴムカバー基材との間に透明または半透明の接着剤を介して表示部のある印刷シートを介在配備した押釦スイッチ用部材であって、前記印刷シートは透光性樹脂シートの一面にインク受容層を形成し、該インク受容層に複数色の微小ドット単位によりカラー印刷した光透過性表示部によるグラフィック印刷層を設け、該印刷層の下面に該表示部に対応した抜き形状を有する光反射率50%以上の光反射性遮光層を設けたことを特徴とする押釦スイッチ用部材である(請求項1)。また、前記抜き形状が、前記グラフィック印刷層に印刷した記号、図柄に対応した形状または一回り大きめの形状であることを特徴とする請求項1に記載の押釦スイッチ用部材であり(請求項2)。また、前記光反射性遮光層がアルミ蒸着膜であって、該アルミ蒸着膜の厚みが100Å以上であり、該光反射性遮光層の下面に半透明白色層を設けたことを特徴とする請求項1または2記載の押釦スイッチ用部材であり(請求項3)。なお、グラフィック印刷層とは、複数色、例えば、シアン、マゼンダ、イエローの3色の微小ドットを用いて光透過性の色彩による光透過性表示部である。
【0007】
そして、この発明にかかる押釦スイッチ用部材の製造方法は、透光性キートップと透光性ゴムカバー基材との間に接着剤を介して表示部のある印刷シートを介在配備した押釦スイッチ用部材とするのに、透光性樹脂シートの片面にインク受容層を形成し、該インク受容層に複数色の微小ドット単位によりカラー印刷するプリンタによって、光透過性表示部を有するグラフィック印刷層を形成し、さらに前記印刷層の下面に前記表示部に対応した抜き形状を設けた光反射率50%以上の光反射性遮光層を形成して印刷シートを製作し、該印刷シートの上面に透明または半透明樹脂で成形された透光性キートップを接着すると共に、印刷シートの下面に透明または半透明の接着剤を介して透光性ゴムカバー基材を接着して押釦スイッチ用部材とすることを特徴とする押釦スイッチ用部材の製造方法である(請求項4)。また、前記光反射性遮光層が、金属薄膜を熱転写、ホットスタンプ、蒸着、イオンプレーティングまたはスッパッタリングの手法或いは光反射性遮光インキによるメタリック印刷手法によって所定の抜き形状を形成したのち、該光反射性遮光層の下面に半透明白色層を形成して印刷シートとしたことを特徴とする請求項4記載の押釦スイッチ用部材の製造方法である(請求項5)。また、100Å以上の厚みのアルミ蒸着を形成して前記光反射性遮光層を形成したのち、該光反射性遮光層の下面に半透明白色層を形成して印刷シートとしたことを特徴とする請求項4または請求項5記載の押釦スイッチ用部材の製造方法である(請求項6)。
【0008】
前記キートップとしては、アクリルポリマー、ポリカーボネートポリマー、スチレンポリマーおよびその変性ポリマーなどの熱可塑性樹脂を用いて、射出成形、トランスファー成形などの成形装置で成形するか、或いは、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、スチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂およびその混合物、変性樹脂などの熱硬化性樹脂を用いて射出成形、注型成形装置で成形される透明または半透明のキートップとしたものであって、前記印刷シートと透明接着剤、例えばアクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ウレタン系接着剤など、或いは熱硬化型接着剤、UV硬化型接着剤、溶剤型接着剤など透明な接着剤を用いて固着一体化されている。
さらに、印刷シートにおいては印刷層を形成する樹脂シートとして、ポリカーボネート系、ポリエステル系、アクリルポリマー系などの透光性樹脂シートが用いられ、これにインク受容層を形成して昇華型熱転写方式或いはトナー電子方式、静電画像方式、レーザー露光熱現像転写方式、インクジェット方式、熱転写方式、加熱発色方式のいずれか少なくとも1種類のプリンタを用いて、例えばシアン、マゼンダ、イエローの3種類等の複数色の微小ドットで光透過性の色彩、図柄、記号からなる表示部を有するグラフィック印刷層が形成されるものである。即ち、前記透光性樹脂シートは、熱可塑性樹脂シートを用いるが、非晶性の熱可塑性樹脂、結晶性の熱可塑性樹脂またはこれらの共重合体若しくは混合物からなるものでもよい。具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリアクリル酸エステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等が例示され、無色透明或いは有色透明もしくは半透明の樹脂シートを用いる。
なお、この樹脂シートは、印刷適性等の観点からポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリアクリル系の10μm〜500μmの厚みのものを選択するのがよい。さらにこの樹脂シートには、印刷層が形成されるのであるが、印刷方法の適性に応じて、印刷インクの受容層、たとえば昇華型熱転写印刷ならば、塩化ビニル酢酸ビニル系またはポリエステル系のコーティング層を形成しておけばよく、インクジェット印刷ならば水溶性のインクを固着させるための吸水層を形成しておけばよい。更に、密着性を改善するためにコロナ放電、プラズマ処理、UV(紫外線照射)処理、プライマー処理等を施すことは任意である。
【0009】
この表示部は、昇華型、インクジェット型、転写型、電子写真型などのプリンタで印刷するので、多彩な色、パターン、記号、図柄などが例えばシアン、マゼンダ、イエローの3色の微小ドットを用いてカラー印刷として一度に行われる。即ち、従来のスクリーン印刷などの手法にみられるようないわゆる多色刷りの際の重ねた層構成という概念ではなく、例えば昇華型であれば、透明樹脂シートの裏に施されたインク受容層のごく薄いインク吸収層に直径0.01mmから0.2mm程度の微小ドット単位で全色が一度に印刷される。インクジェット型そのほかの方式においても同様である。印刷インクは強い隠蔽性を持つ濃度の濃いインクではなく、さらにドット単位の印刷であるので、この印刷層に印刷された記号、図柄などは(たとえ黒色であっても)厳密にいうと、すべて透光性であると言える。しかも、例えば3原色ドット単位でプリンタで印刷するので、一般的には微妙な中間調の色表現、グラデーション、写真、グラフィックデザインなどの印刷が可能である。この3原色はシアン、マゼンダ、イエロー(以下CMY系という)が用いられ、さらには黒を強調するためにブラックが追加されること(以下CMYK系という)もある。たとえば3原色それぞれが256階調の濃度を表現すれば、CMY系の3つの微小ドットで256階調の3乗である16777216色の実質的なフルカラー表現が可能となり、また、3原色としてはRGB系(レッド、グリーン、ブルー)という定義方法で印刷することもできる。
【0010】
またさらに、印刷層の形成工程では、コンピューターデザイン方法を用いたカラーデザインデータを昇華型熱転写方式などのプリンタに供給し、これをCMY系、またはCMYK系インクによって3色または数色の微少ドットを用いて、透明または半透明の熱可塑性樹脂シートに、実質的なフルカラー印刷を行い、次にこの印刷された樹脂シートの下面に所定の抜き記号、図柄形状のある或いはその他の光反射率50%以上の光反射性遮光層を印刷、コーティング、ラミネート、ホットスタンプ、蒸着、スッパッタリング、メッキなどの方法を用いて印刷シートを構成するか、さらに該光反射性遮光層の下面に半透明白色層を印刷、コーティング、ラミネートなどの方法で形成したのち、該印刷シートの所定の位置に前記キートップ及び透光性ゴムカバー基材を透明接着剤を介して固着一体化させるものである。
【0011】
なお、前記透光性樹脂シートにある印刷層は、インク受容層として存在するが、実際のインクはインク受容層の中に微小ドット単位で着色されているので文字、記号だけでなく、複雑なグラフィックパターンや写真などを表現することも可能である。そして、該印刷層は光を通す微小ドット印刷なので、外光は印刷層の下の光反射性遮光層で反射され、鮮やかな、視認性の高い印刷品位とすることができる。このとき光反射性遮光層が蒸着、スパッタリングなどによって金属被膜とされていれば、メタリック感を持つ鮮やかな印刷品位となる。
さらには、光反射性遮光層を所定の形状の抜き文字、抜き記号、抜き模様などに形成しておけば、下からの透過光によっても抜き文字が視認できる、いわゆる文字照光を形成することが可能である。このときに光反射性遮光層より抜かれた文字、記号、模様などは外光を反射する層がなくなるので、外光にでの視認性は若干劣ることになるが、これを補うために光反射性遮光層の下面に半透明白色層を形成すれば視認性をさらに高めることができるものである。
前記印刷シートは、その構成が、透明熱可塑性樹脂シートと、印刷層と、遮光性抜き文字層などの光反射性遮光層とを有する少なくとも3層構造の印刷シートとなっている。
また、この印刷シートのサイズは、キートップの底面と同様の大きさとすればよいが、図にも示したようにキートップの底面よりも少し大きくしておいて鍔状に構成してもよく、このようにすることによって、押釦スイッチ用部材が外装ケースに組み込まれたときに、この印刷シートによりキートップ抜け防止、および後述の文字照光の場合において確実な光漏れ防止も可能となる。
【0012】
さらに、光反射性遮光層を全面に形成すれば透過光を通さない、外光の反射光によって鮮やかな視認性の高いキーになるし、光反射性遮光層に所定の文字、記号、模様などの抜き形状部分を形成すれば、外光反射光の良好な視認性とともに抜き形状部分は下に配置された発光源からの透過光を通すことにできる、いわゆる文字照光として機能する。さらには光反射性遮光層の裏面に半透明白色層を配置すれば、この文字照光は半透明白色層によって外光の反射光での視認性も良好に維持しつつ、文字照光としても十分に機能するものとなる。
【0013】
また、意匠に着目すれば、光反射性遮光層を銀箔や銀色のインクで構成すれば、全体が銀色に輝くメタリック調の意匠となるし、その銀箔に対応した位置の着色層が赤色であればレッドメタリックに、グレーであればダークメタリックに、黄色であれば金色に、7色のグラデーションであれば輝く虹のようにすることが可能であり、加飾の応用範囲が幅広くデザインできる。この光反射性遮光層は銀色に限ったことではなく、高輝度の白色、蛍光色、パール色など多彩なものを選択することが可能である。
【0014】
なお、前記印刷層に付設される光反射性遮光層としては、金属薄膜(アルミ、クロム、金、銀、銅など)を熱転写、ホットスタンプ、メッキ、蒸着、スッパッタリングなどの手法によって所定の抜き文字、記号、図柄など所定抜き形状に形成する。または、光反射性遮光インク(金属系顔料、白顔料、蛍光染料、パール顔料、雲母粉などが高充填されている実質的に光を反射し、光を通さないインク)をスクリーン印刷、転写印刷などの手法により、所望の図柄形状等に形成してもよい。
特に金属薄膜またはメタリック印刷を用いるとメタリック調の特殊な反射光意匠表現が可能になる。
また、文字照光機能を使わずに光反射性遮光層を利用して外光による反射光の高輝度な視認性やメタリック意匠表現だけがほしいのであれば、抜き文字、抜き図柄などにせず全面に金属薄膜や光反射性遮光シートをラミネートする方法とすることも可能である。
好適例としては、アルミ蒸着膜または光反射性遮光インクを前記印刷層の印刷と同様に熱転写式のプリンタで行うのがよく、この場合、印刷パターンはコンピュータ上で任意のパターンを簡単に作ることができるし、印刷コストも低減化できる。
【0015】
このようなソフトウエアを用いてコンピュータ上で作られたデザインは、斬新なデザインとすることができる。たとえば、高画質の風景写真、人物写真を取り入れることも可能であるし、精密な幾何学模様を描くこともできる。また色数も実質的に制限がないので記号、幾何学模様毎に単一色ではなく、徐々に色が変化するグラデーションなどの手法も可能となる。このことによって、キートップのデザイン自由度が増し、多様化するデザインニーズ、電子機器の外観上の付加価値向上に柔軟に対応できる。
【0016】
なお、前記印刷シートにおいて遮光層を光反射率50%以上の光反射性遮光層とするのは以下の理由による。すなわち印刷機によって形成された複数色の微小ドットを用いた光透過性の色彩、図柄、記号からなる表示部を有するグラフィック印刷層は、光を透過しやすい着色であり、外光に対しての反射率が低いため、特に押釦スイッチのキートップの裏面に配置され、電子機器の外装ケースなどに覆われた状態では、外光が少なく、暗く、明度の低い視認性の悪いものとなってしまう。特に光反射率が45%以下であると鮮やかさがなく、読み取りずらいか読み取れなくなるので、そこで本発明では、該印刷層の下側に光反射率50%以上の光反射性遮光層を設けることによってこの問題を解決している。つまり外から入った光は透明キートップと印刷層を通過して、印刷層の下側の光反射率50%以上の光反射性遮光層で反射され、この光が使用者の目に見えて、結果として印刷層が高輝度の明度の高い明るい、視認性の良いものとなって見えるわけである。この結果、電子機器の外装ケースなどに組み込まれた押釦スイッチであっても、少量の外光ではっきりと印刷が見える視認性豊かな、実用性の高いものとすることができる。
【0017】
つぎに印刷シートの光反射性遮光層下側に半透明白色層をもうけるのは以下の理由による。つまり光反射性遮光層を部分的に形成し、いわゆる抜き文字形状などとした場合、抜き文字に当たる部分は、下に配置された光源からの光で透過光を通して見るとき、すなわち文字照光として見る場合は優れたものであるが、下の光源を消灯したときには上記の理由で、外光反射が少ないため視認性の劣るものとなってしまうので、この下に配置された光源を消灯したときの視認性を補うものとして、半透明白色層が有効に機能するのである。
言い換えると半透明白色層は半透明であることによって文字照光の時の下からの光を通し、かつ白色であることによって抜き文字部分の明度を補い外光による視認性も高める効果がある。半透明白色層の材質としてはポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル、ポリカーボネートなどの半透明白色に着色された樹脂シートや、半透明白色に着色された印刷インクなどが用いられ、これらの厚みは半透明であることを考慮し、0.01mmから1mm程度とするのが良い。形成方法としては樹脂シートであればラミネートして一体化するのが簡便であるし、インク状態であれば印刷、コーティング、塗装などの方法が採用される。
【0018】
以上のような理由から、本発明のキートップに用いられる印刷シートは、透光性樹脂シートと、印刷層と、光反射性遮光層とを有する3層構造か、或いは透光性樹脂シートと、印刷層と、光反射性遮光層と、半透明白色層とを有する4層構造のシートとするのであるが、その構成順序は、キートップが形成される側から見て、印刷層の下側に光反射性遮光層が必要である。
この場合、印刷シートとしてみると、上から透光性樹脂シート、印刷層、光反射性遮光層、半透明白色層という順序とするか或いは、印刷層、透光性樹脂シート、光反射性遮光層、半透明白色層という順序の場合などが考えられるが、この順序に関しては製造工程の都合などから任意に選択できる。
【0019】
ここで、半透明白色層は、インク印刷、コーティング、塗装、ラミネート、ホットスタンプなどの方法で形成されるが、樹脂シートの片面全体に施されるので工業的には簡単で安価に連続的に形成することが可能である。例えば、コーティングならば白色インクをバーコータやダイコータで高速塗布することが可能であるし、またホットスタンプならば白色を必要な部分にだけ、1秒程度の時間で任意にスタンプして形成することができる。
【0020】
さらに印刷シートの構成と意匠について詳しく説明すると、例えば、前記印刷層のキー全体に青色で着色が施されており、その一部に茶色の文字が形成されているとする。この印刷層の裏面に光反射性遮光層として、茶色い文字の部分だけ抜き文字形状となっている反射率85%のアルミ蒸着膜が配置されており、さらにこの光反射性遮光層の裏面に半透明白色の樹脂シートがラミネートされているとすると、キー全体の青色の部分はアルミ蒸着膜の光反射によって少量の外光でも容易に視認できる明度の高いブルーメタリック系の色として認識できるし、その中の茶色い文字も半透明白色層の光散乱効果によって見やすい明るい茶色の文字になっている。さらには、下側からの光に対しては半透明白色の樹脂シートを通して茶色い文字だけが照光され、文字照光となり視認性の高いものとなる。
【0021】
この例では、光反射性遮光層を単なるアルミ蒸着膜としたが、このアルミ蒸着膜にホログラム装飾を施しておけば、立体的に浮き上がるデザインとすることも可能であるし、ヘアラインなどの細かな金属加工模様を付加することも可能であるし、着色層を青色でなく黄色とすればアルミ蒸着箔の固有色である銀色と相まって、金色と視認される。もちろんこのようにして得られた反射率の高い印刷シートは透明キートップに接着されて、携帯電話やオーディオ機器などの電子機器に組み込まれても多くの反射光を発するため、薄暗い部屋、夕方や日陰の屋外などの少々暗い場所であっても鮮やかで、視認性の高い印刷となっており、誤操作などによる不具合も防止できる実用上有用なキーボードとすることができる。
【0022】
さらには、本発明で用いられる光反射性遮光層は、印刷層の印刷記号(例えば文字)と同じ輪郭形状で形成する必要はなく、例えば印刷の記号と別パターンの抜き文字遮光層を形成しておけば、この抜き文字パターンは反射光で見たときはほとんど視認されず、透過光が入ったときだけ浮かび上がる、一種の透かし文字としてデザインすることも可能である。
このようにして準備された印刷シートの印刷表示部に対応した位置にキートップを接着剤、例えば透明なウレタン系、エポキシ系、アクリル系、ポリエステル系、シリコーン系などの透明または半透明接着剤を用いて接着固定化し、さらに印刷層の表示部に対応した所定の位置にゴムカバー基材に固着して押釦スイッチ用部材とするのである。
【0023】
【作用】
この発明にかかる押釦スイッチ用部材は、記号などの表示部が形成された印刷層を有する印刷シートと、該表示部に対応した位置に設けた透明熱可塑性樹脂或いは透明硬化性樹脂からなるキートップと、透光性ゴムカバー基材とを備えたものであって、前記印刷シートの構成が、透光性樹脂シートの一面にインク受容層を形成して、該インク受容層に少なくともシアン、マゼンダ、イエローの複数色の微小ドットを用いて光透過性の色彩、図柄、記号からなる表示部を有するグラフィック印刷層を設け、該印刷層の下面に所定の抜き記号、図柄形状のある光反射率50%以上の光反射性遮光層を設けたことを特徴とし、樹脂シートに印刷表示部をプリンタにより形成したので、多種意匠形成情報に適応でき、高精細、高精度なフルカラーの小ロット多品種に適した優れたキートップを含む押釦スイッチ用部材とすることができ、しかも印刷層の裏面に光反射性遮光層が形成されることによって、明度、彩度ともに良好な視認性に優れた表示部が形成され、またメタリック、ホログラム、実写写真、コンピュータグラフィックス(CG)などを多用した特殊装飾にも簡単に対応でき、ユーザーアピール力の高い商品デザインとすることができる。
なお、印刷部分は透明キートップで被覆されるため、使用に際して印刷表示部が磨耗することがなく、表示部に優れた耐久性、すなわち、長期にわたって優れた視認性が保持される。
【0024】
また、この発明にかかる押釦スイッチ用部材の製造方法は、コンピュータ上でデザインした意匠が、製版などの工程を経ずに印刷表示部に反映でき、高画質印刷が得られ、しかも印刷は透光性樹脂シートに形成するので、成形品などに印刷する場合に比べ簡単で安価に制作することができ、白色または銀色の着色層も工業的に容易に形成できる。すなわち多量品、小ロット品に関わらずその製造コストを大幅に削減できる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
図1はこの発明の一つの実施形態を示し、押釦スイッチ用部材10は透光性キートップ1と、透光性ゴムカバー基材2との間に透明または半透明接着剤3,9を介して樹脂シート4に表示部のある印刷層5と所定の抜き記号のある光反射性遮光層7とを有する印刷シート45を配備した構成としてある。そして、図2および図3に示すように透明または半透明の熱可塑性或いは熱硬化性樹脂で前記キートップ1を成形金型30で成形するキートップ成形工程11を有し、また、透明樹脂シート4の片面にインク受容層を形成し、該インク受容層に記号、図柄、色彩からなる表示部を複数色の微小ドットを用いてオリジナルデザイン入力機器21を含むプリンタ20により印刷して印刷層5とする印刷層形成工程12と、前記印刷層5に印刷された記号、図柄形状に対応して抜き形状6のある光反射性遮光層7を印刷層5の下面に形成する光反射性遮光層形成工程13とを経て、該光反射性遮光層7の下面に半透明白色層8を形成して印刷シート45とする工程とを有し、該印刷シート45の上面に前記キートップ成形工程11で製作したキートップ1を接着するのに、精密ディスペンサで接着剤3を塗布し、紫外線照射手段40で固着一体化するキートップ接着工程14と、印刷シート45の下面に透明または半透明の接着剤9によって透光性ゴムカバー基材2を接着するゴムカバー基材接着工程16とから押釦スイッチ用部材10が製造される。
【0026】
この場合、前記印刷層5を含む印刷シート45の構成が、上から透明樹脂シート4、印刷層5、抜き形状6を有する光反射性遮光層7、半透明白色層8の順序になっているが、本発明の他の形態のように、印刷シート45の構成が上から、印刷層5、樹脂シート4、抜き形状6を有する光反射性遮光層7、半透明白色層8の順にしてもよい。
いずれの場合も、印刷層5は、デザインデータに応じて、記号、写真、幾何学模様などがフルカラーで印刷されており、その視認性を高めるために印刷層5の下側に光反射性遮光層7が形成される。また文字のみをバックライトで照光する場合は、抜き文字形状の光反射性遮光層とすればよい。
【0027】
前記光反射性遮光層形成工程13としては、光反射率50%以上の金属薄膜をラミネート、熱転写、ホットスタンプ、蒸着、イオンプレーティングまたはスッパッタリングの手法或いは光反射率50%以上の光反射性インクによるメタリック印刷手法、塗装、コーティングなどによって所定の抜き記号、図柄などの形状を有する光反射性遮光層7を形成するものであって、さらに該光反射性遮光層7に半透明白色層8を重合形成することもできる。
【0028】
また、前記ゴムカバー基材接着工程16には、前記印刷層5上に接着した各キートップ毎に炭酸ガスレーザー50により切断するキートップ切断工程15と、該キートップ切断工程15により個々に切断されたキートップ1を透明または半透明の粘着両面テープの接着剤9により透光性シリンコンゴムで成形されたゴムカバー基材2に接着する工程をも含む。もちろんキートップ切断工程15は炭酸ガスレーザーに限定されるものではなく、打ち抜き刃による抜き加工とすることも可能であるし、キートップ1を張り付ける前に印刷シート45を予めここに切断しておいても良い。
また、図2(a)に示したキートップ成形工程11は熱硬化製樹脂を用いた注型成形であるが、熱可塑性樹脂の場合は一般的には射出成形法が用いられる。
【0029】
なお、前記押釦スイッチ用部材10の透明キートップ1に対応したゴムカバー基材2の裏側に必要に応じ補強フィルムを固着することもできる。
また、図示を省略するが、押釦スイッチ用部材10は、クリック板等を介して回路基板と組み付けられて携帯電話機等のケーシング内に収容され、透明キートップ1の先端部分がケーシング外へ押圧操作可能に突出し、また、押圧操作でクリック板のドーム部を押圧してドーム部の可動接点を回路基板の固定接点に接触させ、回路を開閉するようにして用いることもできる。
【0030】
前記印刷層5のデザイン例では、キーの機能に応じた記号等が配置され印刷されているものであるが、実際には写真、CG、高精度幾何学模様など自由に配置できる。また、文字照光とする場合でも、印刷層の裏側に光反射性遮光層7が形成されるので、従来のように文字の外周を暗色系の黒色などにする必要はなく自由な着色のデザインが可能である。たとえば文字の外周をごく薄い色に着色し、抜き文字にする文字をこれよりも濃い色としても、外周部分の裏側には遮光層が形成されるので下からの光に対しては文字の部分だけが透過する文字照光とすることができる。また光反射性遮光層7の抜き形状6は必ずしも印刷層5の文字形状と同じにしなくてもよく、たとえば抜き形状6を一回り大きめの形状としたり、細かな網目状にすることも可能であり様々なデザインに対応できる。
【0031】
次に、この発明の製造方法では、熱可塑性樹脂製の樹脂シート4に必要であれば、印刷用の下地処理を行う。例示すると密着性向上のためのプラズマ処理、コロナ放電、プライマー処理等を行い、次にプリンタ20のインクを付着させるためのインク受容層、インク吸収層またはインク接着層などをコーターでコーティングする。次にこの樹脂シート4にプリンタ20でキーボードに用いる所定の記号などの印刷層5を印刷すると共に、抜き形状6のある光反射性遮光層7を設けたもの、或いはさらにこれに半透明白色層8を形成して印刷シート45とし、該印刷シート45の上に透明の接着剤3を介して透明キートップ1を固着一体化し、また印刷シート45の下にゴムカバー基材2を接着剤9で一体固着化して押釦スイッチ用部材10とする。(図1)
前記半透明白色層8は、印刷、ホットスタンプ、コーティングなどの方法で形成しても良いし、白色のシートを用意してこれをラミネートしても良い。
【0032】
そして、前記キートップ1は、樹脂材料を用いインジェクション成形、注型成形などで成形するが、前述の印刷シート45を接着する都合上、キートップ1の裏側、すなわち、印刷シート45を接着する面はできるだけ平らな面であることが望ましい。
このように準備された透明キートップ1を前述の印刷シート45の所定の位置に透明接着剤3を介して固定し、さらにゴムカバー基材2上に固着して押釦スイッチ用部材10を得る。
この押釦スイッチ用部材10は、回路基板に組み付けられてスイッチを構成、すなわち、携帯電話機等のケーシング内に回路基板と組み付けられて収容され、電話番号入力等に用いる押釦スイッチを構成する。
【0033】
上述したように、この実施の形態は、多彩なデザイン印刷が簡単に実現でき、光反射性遮光層によって、夕方や曇天の屋外、薄暗い部屋、ケースの奥まった位置に配置されたキーボードなどでも視認性が大幅に向上し、明度、彩度も高く、しかも、構造が簡単に押釦スイッチ用部材が成形できる。このため、意匠性に富んだキートップを含む押釦スイッチ用部材の製造コストを低減でき、また、照光式または反射式の押釦スイッチ用部材も安価に製造でき、小ロット多品種製造であってもコストを増大させることなく柔軟に対処できる。そして、製造された押釦スイッチ用部材は、印刷表示部がキートップ裏面に一体化され、表示部の視認性にも優れ、表示部磨耗も生じることがなく、高い耐久性が得られる。
【0034】
文字照光の場合は下側に配置された光源からの光が光反射性遮光層7の抜き形状6を通して視認できるので、その部分の印刷層5は明度、彩度ともにあかるく良好な視認性となるが、光源の光が常時点灯でない場合、光源の光を消灯した場合は逆に光反射性遮光層7がないので若干視認性の劣ったものになる。これを解決するために半透明白色層8が形成される。半透明白色層8は半透明なので下側に配置された光源が点灯しているときは、その光が通過し文字照光としての機能を損なうことがないし、白色に着色してあるので印刷層5に形成された色の明度を上げて、光源が消灯しているときの視認性も高めることができる。
その構成方法は、半透明白色の樹脂シートをラミネートするか、或いは半透明白インクを用いて印刷するなどであるが、前者なら半透明白のポリエステルシート、ポリカーボネートシート、アクリルシートなどの5〜500μm厚みのものが選択される。後者であれば白インクを用いてスクリーン印刷などの方法で形成される。
【0035】
透明または半透明接着剤9としては、透光性ゴムカバー基材2と接着させるためのもので、本来、接着剤であればどのようなものでも使用可能であり、さらに照光キータイプとしないものであれば不透明な有色の接着剤であっても良いが、実施例でばアクリル系粘着剤を使用した両面テープを用い、接着剤のはみ出し、たれ、むらがなく、最近の薄型化された機器の中では障害とならないように配慮してあって、高品位な接着とすることができる。
【0036】
前記ゴムカバー基材2としては、キートップ1を複数個配置してゴムカバー基材2の所定の位置に接着する。このゴムカバー基材2は、シリコーンゴム製カバー基材、EPDM製カバー基材、熱可塑性エラストマー製カバー基材などが用いられるが、特にシリコーンゴム製カバー基材を選ぶ場合は、接着信頼性をあげるためにシリコーンゴムの表面処理を行うことが望ましい。表面処理としてはコロナ放電、UV洗浄、EB照射、火炎処理、カップリング剤またはプライマー塗布などが用いられる。本発明の形態ではシリコーンゴムの表面をUV洗浄処理した後にシランカップリング剤を塗布して接着力を増している。
【0037】
図4の実施形態では、キートップ1とゴムカバー基材2との間に配備される印刷シート45が樹脂シート4、印刷層5および抜き形状6のある光反射性遮光層7からなり、接着剤3および両面接着シートの接着剤9で固着一体化されたものである。
【0038】
図5の実施形態では、図1の例の変形例で、印刷シート45の光反射性遮光層7が部分的に配置したもので、銀箔などを用いれば反射光で見ると部分メタリックとして視認され、透過光で見れば逆に光反射性遮光層7の部分だけ光を通さず外周照光キーとして使用できるものである。
【0039】
【実施例】
次に、この発明の実施例を説明する。
実施例1
縦横略6mm×8mmで高さ2mmの透明キートップを三菱化成(株)製の熱可塑性ポリカーボネート樹脂(商品名:NOVAREX 7020 IR)を用いて通常のインジェクション成形法で100個成形した。
また、印刷シートとして、セイコーエプソン(株)製のカラーレーザープリンターLP−8000Cを用いて125μmの透明PETシートに所定の印刷パターンを印刷層として形成した。この印刷は3原色カラートナーを用いたドット単位のグラフィックで記号、色彩、図柄などが印刷されている。
次に、この印刷シートの印刷面にアルミ金属を使って真空蒸着手法を用いて光反射性遮光層を形成した。このときアルミ蒸着層の厚みを30Åから300Åまで変化させ、結果として表1に示すように光反射性遮光層の光反射率を30%から90%まで変化させたものを5種類準備した。
つぎに、大日本インキ化学工業(株)製のUV接着剤(商品名:ユニディックV−4221)に硬化剤としてチバガイキー製イルガキュアー#184を2.4部配合した接着剤で、前記キートップの裏側と印刷シートのPETシート側(印刷されていない側)とを接着した。(接着条件:高圧水銀塔80W/cm、距離10cmで10秒照射)このようにして、印刷シート付きキートップを製作した。
また、一方、ゴムカバー基材として、信越化学工業(株)製のシリコーンゴムKE−151uに同社の加硫剤C−8Aを0.8部加えた材料を用いて加熱圧縮成形により15個分のキートップを配置できる透光性ゴムカバー基材を成形した。次にこのゴムカバー基材の接着表面を波長185nmと254nm、出力40WのUV照射装置を使って約1分間の照射を行い、接着表面を清浄にしたのち、この接着面にリンテック(株)製の粘着テープ(商品名:ダックライナーTL−250)を接着面とほぼ同様の形状に切り抜いたものを貼着して、前記印刷シート付きキートップを接着一体化し押釦スイッチ用部材の成形品を得た。
このようにして得られた押し釦スイッチ用部材を携帯電話のケースに組み込んで室内の明るさ(600ルクス)において測定器:(株)トプコン製BM−7でキー部分の照度測定をして視認性を評価したところ表1のようになった。
このようにして得られた番号3,4,5の成形品は、透明キートップを通して印刷シートの印刷が鮮やかに視認でき、さらにはこの印刷がドット単位の細やかなグラフィカルな絵柄印刷であるため、スクリーン印刷とは違う精緻で実質的に無限色の写真に近い品質のものであり、高品位なものとなっている。また携帯電話などのケースに組み込んでも少量の外光で反射して見やすい品位の高いものであった。これに比較して番号1,2の成形品は十分な外からの光をあてれば見えるものの、携帯電話にケースに組み込んだときに外光が足りず、とくに読みとりづらい鮮明度に欠ける印刷視認性となった。
【0040】
【表1】
【0041】
実施例2
縦横略6mm×8mmで高さ2mmの透明キートップを三井化学(株)製の熱硬化性不飽和ポリエステル系樹脂(商品名:エスターC755−1)を用いて、硬化剤として日本油脂(株)製のパーヘキサ3Mを1%配合し、注型加熱成形(170℃5分)によって15個成形した。
また、印刷シートとして、日本ビクター(株)製の昇華型熱転写カラープリンターTurePrint3500を用いて125μmの透明PETシートに所定の印刷パターンを印刷した。この印刷はCMYKカラー昇華インクを用いたドット単位のグラフィックで記号、図柄などが印刷されている。
次に、印刷シートの印刷面に光反射性遮光層として所定の抜き部分を持つ印刷を日本ビクター(株)製の昇華型熱転写カラープリンターTruePrint3500で、アルミ蒸着箔(日本ビクター(株)製商品名:プラチナシルバーインクJP−T320I)を所定のパターンに熱転写印刷を施した。このときの光反射性遮光層の反射率は60%であった。
そしてこの抜き文字部分を持つ光反射性遮光層を印刷した側に半透明白色層として東レ(株)製の白色PETシート、商品名ルミラーX−20(50μm)を全面にアクリル系接着剤を介して圧着ラミネートした。
さらに、ノガワケミカル(株)製のUV接着剤(商品名:ダイアボンドUV−147)で前記キートップの裏側と、印刷シートのPETシート側(印刷されていない側)とを接着した。(接着条件:高圧水銀灯80W/cm、距離15cmで30秒照射)このようにして、全部で15個の印刷シート付きキートップを製作した。
また一方、ゴムカバー基材として、信越化学工業(株)製のシリコーンゴムKE−151uに同社の加硫剤C−8Aを0.8部配合した材料を用いて加熱圧縮成形により15個分のキートップを配置できる透光性ゴムカバー基材を成形した。次にこのゴムカバー基材の接着表面を波長185nmと254nm、出力40WのUV照射装置を使って約1分間の照射を行い、接着表面を清浄にしたのち、この接着面に信越化学工業(株)製のプライマーKE−1800Cを少量塗布して風乾させた。
次で、日立化成ポリマー(株)製の粘着テープ(商品名:ハイボン11−583)を接着面とほぼ同様の形状に切り抜いたものを用いて、印刷シート付きキートップとゴムカバー基材とを接着し、さらに接着性を高めるため乾燥機で100℃30分の加熱を行い押釦スイッチ用部材の成形品を得た。
このようにして得られた成形品は、透明キートップを通して印刷シートの印刷が鮮やかに視認でき、さらにはこの印刷がドット単位の細やかなグラフィカルな絵柄印刷であるため、スクリーン印刷とは違う精緻で実質的に無限色の写真に近い品質のものであり、高品位なものとなっている。そしてその裏面に配置してあるアルミ蒸着箔の光反射性遮光層によって、これらの印刷は輝くメタリックとなっているし、抜き文字形状が形成されているので裏面からの照明を受けたときにも、光が部分的、選択的に透過し、透過光による抜き文字、抜き記号などのパターンが明快に視認できる視認性良好な成形品になっている。
実施例3
縦横略6mm×8mmで高さ2mmの透明キートップを三菱化成(株)製の熱可塑性ポリカーボネート樹脂(商品名:NOVAREX 7020 IR)を用いて通常のインジェクション成形法で15個成形した。
また、印刷シートとして、日本ビクター(株)製の昇華型熱転写カラープリンターTruePrint3500を用いて200μmの透明PETシートに所定の印刷パターンを印刷層として成形した。この印刷はCMY系カラー昇華インクで記号、図柄などが印刷されている。
次に、印刷シートの印刷面に光反射性遮光層として反射率55%のリンテック(株)製のルミクール1015フィルムをアクリル系粘着剤を用いてラミネートし一体に形成した。
さらに、大日本インキ化学工業(株)製のUV接着剤(商品名:ユニディックV−4221)に硬化剤としてチバガイキー製のイルガキュアー#184を3.0部配合した接着剤で、前記キートップの裏側と印刷シートのPETシート側(印刷されていない側)とを接着した。(接着条件:高圧水銀塔80W/cm、距離10cmで10秒照射)このようにして、全部で15個印刷シート付きキートップを製作した。
また、一方、ゴムカバー基材として、信越化学工業(株)製のシリコーンゴムKE−151uに同社の加硫剤C−8Aを1.0部配合した材料を用いて、加熱圧縮成形で15個分のキートップを配置できる透光性ゴムカバー基材を成形した。次にこのゴムカバー基材の接着表面を波長185nmと254nm、出力40WのUV照射装置を使って約1.5分間の照射を行い、接着表面を清浄にしたのち、この接着面にリンテック(株)製の粘着テープ(商品名:ダックライナーTL−250)を接着面とほぼ同様の形状に切り抜いたものを貼着して前記印刷シート付きキートップを接着一体化し押釦スイッチ用部材の成形品を得た。
このようにして得られた成形品は、透明キートップを通して印刷シートの印刷が視認でき、さらにはこの印刷がスクリーン印刷とは違う精緻で写真に近い品質のものであり、高品位なものとなっている。そしてその裏面に配置してある光反射性遮光層によって、裏面からの照明を受けたときにも、光が遮光層の周囲の透過光によるパターンで明快に視認できる視認性良好な成形品になっている。
【0042】
【発明の効果】
本発明では、キートップの表示部のデザインにコンピュータを用いたデザインデータが使用でき、デザイン変更、修正が簡単で、しかも無版印刷なので、製版にかかるコストもなく印刷速度、制度が著しく良好で、簡易に多種意匠形成情報に適応でき、従来のスクリーン印刷やパッド印刷では不可能であった意匠性の高い押釦スイッチ用部材とすることができると共に、印刷層の色そのものは淡い中間色も可能で微小ドット色を用いてドット単位の印刷方法とすれば、実質的にフルカラーの表現が可能あり、光反射性遮光層はこれとは別に形成するので、例えばアルミ蒸着箔の遮光層や白顔料を高充填した濃い白の反射率の高い遮光層を形成でき、これによってフルカラー印刷層の表現を損なうことのないデザイン性豊かな印刷が保てるし、さらに光反射性遮光層が50%以上の光反射率を持つことによって視認性が大幅に向上し、明度、彩度も高く、しかも、鮮明な写真、イラスト、絵などの高画質の再現が可能で色数にも制限がないため、意匠性に富んだ押釦スイッチ用部材にでき、その製造コストをも低減できるほか、デザインの自由度が増し、従来方式ではえられない斬新なデザインとすることができ、小ロット多品種製造であってもコストを増大させることなく柔軟に対処できる。そして、製造された押釦スイッチ用部材は、印刷表示部が透明キー樹脂部裏面に一体化され、表示部の視認性にも優れ、表示部磨耗も生じることがなく、高い耐久性が得られるものである。
さらに、押釦スイッチの表示部の光反射性遮光層の抜き形状の輪郭と、印刷層の文字パターンなどの印刷の輪郭を合わせておけば、文字照光タイプが得られるし、印刷層のパターンと違う抜き文字パターンを作っておけば、反射光でキーを見たときと、透過光でキーを見たときにはそれぞれ違った表示部が視認できる構成とすることも可能で、デザイン性に富んだ多彩な押釦スイッチ用部材とすることができ、また印刷は透光性樹脂シートに形成するので、成形品などに印刷する場合に比べ簡単に大量に安価に制作することができ生産性の大幅な向上を図れるほか、多量品、小ロット品に関わらずその製造コストを大幅に削減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態にかかる押釦スイッチ用部材の拡大縦断面図である。
【図2】本発明の製造工程の一部の概要を示し、(a)はキートップ成形工程、(b)は印刷層形成工程を示す。
【図3】この発明の製造工程の概要をアルファベット順に示す模式図である。
【図4】この発明の他の実施形態の拡大縦断面図である。
【図5】この発明のさらに他の実施形態の拡大縦断面図である。
【符号の説明】
1 キートップ
2 ゴムカバー基材
3 接着剤
4 樹脂シート
5 印刷層
6 抜き形状
7 光反射性遮光層
8 半透明白色層
9 接着剤
10 押釦スイッチ用部材
11 キートップ成形工程
12 印刷層形成工程
13 光反射性遮光層形成工程
14 キートップ接着工程
15 キートップ切断工程
16 ゴムカバー基材接着工程
45 印刷シート
Claims (6)
- 透光性キートップと透光性ゴムカバー基材との間に透明または半透明の接着剤を介して表示部のある印刷シートを介在配備した押釦スイッチ用部材であって、
前記印刷シートは透光性樹脂シートの一面にインク受容層を形成し、該インク受容層に複数色の微小ドット単位によりカラー印刷した光透過性表示部によるグラフィック印刷層を設け、該印刷層の下面に該表示部に対応した抜き形状を有する光反射率50%以上の光反射性遮光層を設けたことを特徴とする押釦スイッチ用部材。 - 前記抜き形状が、前記グラフィック印刷層に印刷した記号、図柄に対応した形状または一回り大きめの形状であることを特徴とする請求項1に記載の押釦スイッチ用部材。
- 前記光反射性遮光層がアルミ蒸着膜であって、該アルミ蒸着膜の厚みが100Å以上であり、該光反射性遮光層の下面に半透明白色層を設けたことを特徴とする請求項1または2記載の押釦スイッチ用部材。
- 押釦スイッチ用部材の製造方法において、
透光性樹脂シートの片面にインク受容層を形成し、該インク受容層に複数色の微小ドット単位によりカラー印刷するプリンタによって、光透過性表示部を有するグラフィック印刷層を形成し、
さらに前記印刷層の下面に前記表示部に対応した抜き形状を設けた光反射率50%以上の光反射性遮光層を形成して印刷シートを製作し、
該印刷シートの上面に透明または半透明樹脂で成形された透光性キートップを接着すると共に、印刷シートの下面に透明または半透明の接着剤を介して透光性ゴムカバー基材を接着して押釦スイッチ用部材とすることを特徴とする押釦スイッチ用部材の製造方法。 - 前記光反射性遮光層が、金属薄膜を熱転写、ホットスタンプ、蒸着、イオンプレーティングまたはスッパッタリングの手法或いは光反射性遮光インキによるメタリック印刷手法によって所定の抜き形状を形成したのち、該光反射性遮光層の下面に半透明白色層を形成して印刷シートとしたことを特徴とする請求項4記載の押釦スイッチ用部材の製造方法。
- 100Å以上の厚みのアルミ蒸着を形成して前記光反射性遮光層を形成したのち、該光反射性遮光層の下面に半透明白色層を形成して印刷シートとしたことを特徴とする請求項4または請求項5記載の押釦スイッチ用部材の製造方法。
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