JP3722425B2 - フラーレン類の混合物からフラーレン60又は70を高純度で分離する方法 - Google Patents
フラーレン類の混合物からフラーレン60又は70を高純度で分離する方法 Download PDFInfo
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はフラーレン類の精製方法に関し、詳しくは、フラーレン60とフラーレン70とを主成分とする混合フラーレン類からフラーレン60又は70を高純度にて分離する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
フラーレン類は、フラーレン60に代表されるように、炭素原子のみからなるサッカーボール状の閉殻状の分子であって、ナノテクノロジー(超微細技術)における代表的な材料であるといわれており、電子材料、医薬用途、機械用途等の広い分野への応用が期待されている。
【0003】
フラーレン類は、代表的には、黒鉛を原料として用いるアーク放電法やベンゼンを燃焼させる燃焼法等によって煤(スート)と共に生成する。例えば、アーク放電法によれば、フラーレン類を含む煤をベンゼンやトルエンを用いて抽出して、主として、フラーレン60やフラーレン70を煤から分離する。
【0004】
しかし、煤から分離したフラーレン類は、このように、フラーレン60とフラーレン70のほか、フラーレン76、フラーレン78、フラーレン82、フラーレン84等を含む高次フラーレン類の混合物である。例えば、アーク放電法によるフラーレン類の製造によれば、得られるフラーレン類の混合物中の各フラーレンの割合は、通常、フラーレン60が約80%、フラーレン70が約15〜20%、その他の高次フラーレン類が数%である。
【0005】
そこで、従来、これらのフラーレン類を相互に分離し、精製するには、殆どの場合、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が用いられており、一部では、昇華法も用いられている。しかし、高速液体クロマトグラフィーによれば、高純度の製品を得ることができるが、処理能力が低いので、大量処理には適しない。昇華法も、フラーレン類の昇華温度が近接しているので、高純度品を得ることは容易ではなく、また、高速液体クロマトグラフィーによる場合と同様に、大量処理には適しない。
【0006】
このように、従来のフラーレン類の分離精製方法は、大量処理が困難であるところ、フラーレン類の用途展開を工業的な規模で図るには、それぞれを大量に効率よく分離精製することが必要であるが、従来、そのような方法は知られていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、フラーレン類の分離精製方法における上述した問題を解決するためになされたものであって、フラーレン60とフラーレン70とを主成分とする大量の混合フラーレン類からフラーレン60又は70を効率よく容易に高純度にて分離する方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、フラーレン60とフラーレン70とを主成分とするフラーレン類の混合物からフラーレン60又はフラーレン70を高純度で分離する方法において、用いる溶媒を定め、その還流温度においてその溶媒にフラーレン類の混合物中のより少ない割合を占めるフラーレンが単独で溶解して飽和溶液を形成する溶媒量(体積)の0.8〜1.2倍量の溶媒に上記フラーレン類の混合物を加え、還流させた後、冷却し、上記溶媒への不溶分を濾過して、上記フラーレン類の混合物中のより多い割合を占めるフラーレンを上記フラーレン類の混合物から高純度にて分離することを特徴とする方法が提供される。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明によれば、フラーレン60とフラーレン70とを主成分とするフラーレン類の混合物からフラーレン60又はフラーレン70を高純度で分離することができる。即ち、フラーレン類の混合物中のより少ない割合を占めるフラーレンの含有量を低減すると共に、フラーレン類の混合物中のより多い割合を占めるフラーレンの含有量を高めて、後者の純度を高めたフラーレン類を得るものである。ここに、フラーレン60とフラーレン70とを主成分とするフラーレン類の混合物は、好ましくは、フラーレン60とフラーレン70とを合計にて60重量%以上、好ましくは、70重量%以上、最も好ましくは、80重量%以上の含有量にて含む。
【0010】
本発明によれば、先ず、フラーレン60又は70の分離精製に用いる溶媒を定め、その還流温度においてその溶媒にフラーレン類の混合物中のより少ない割合を占めるフラーレンの単位量(1g)が単独で溶解して、飽和溶液を形成する溶媒量(体積)(以下、これを還流温度飽和溶液形成溶媒量という。)の0.8〜1.2倍量に上記フラーレン類の混合物を加え、通常、数時間、還流させた後、室温まで放冷し、次いで、その溶媒中の不溶分を濾過、分離し、乾燥すれば、上記フラーレン類の混合物中のより多い割合を占めるフラーレンの精製品を得ることができる。
【0011】
より詳細には、用いる溶媒を定め、その還流温度において、その溶媒の単位量(1L)にフラーレン類の混合物中のより少ない割合を占めるフラーレンが単独で溶解して、飽和溶液を形成するそのフラーレンの飽和溶解量(重量)をS(g/L)とすれば、還流温度においてその溶媒にフラーレン類の混合物中のより少ない割合を占めるフラーレンの単位量(1g)が単独で溶解して、飽和溶液を形成する還流温度飽和溶液形成溶媒量T(L/g)は、そのフラーレンの上記飽和溶解量の逆数であるから、T=1/S(g/L)である。
【0012】
そこで、精製処理を行うフラーレン類の混合物M(g)中のより少ない割合を占めるフラーレンがm(g)であるとすれば、この量のこのフラーレンに対する還流温度飽和溶液形成溶媒量はmTであるので、本発明によれば、0.8mTから1.2mTの量の溶媒中に上記フラーレン類の混合物M(g)を加えて、上述したようにして、処理するのである。
【0013】
本発明において用いる溶媒について、その還流温度において、フラーレン60又は70の飽和溶解量(重量)は、既に、知られているのであれば、その飽和溶解量を採用すればよく、また、予め、実験的に求めてもよい。
【0014】
本発明によれば、フラーレン類の混合物中において、より多い割合を占めるとは、通常、60重量%以上、好ましくは、65重量%以上、特に好ましくは、70重量%以上をいい、従って、フラーレン類の混合物中において、より少ない割合を占めるとは、通常、40重量%以下、好ましくは、35重量%以上、特に好ましくは、30重量%以上をいう。
【0015】
即ち、特に、フラーレン類の混合物中、より多い割合を占めるフラーレンの割合が65〜95重量%、好ましくは、70〜90重量%、最も好ましくは、70〜85重量%のものを本発明に従って処理することによって、より多い割合を占めるフラーレンの割合を効率よく高めることができる。
【0016】
本発明によれば、フラーレン60又は70の分離精製に用いる溶媒として、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、ピリジン、キノリン等の含窒素複素芳香族化合物、二硫化炭素等が用いられるが、なかでも、トルエンが好ましく用いられる。
【0017】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。尚、フラーレン60のトルエンの還流温度における飽和溶解量は3.0g/Lであるから、フラーレン60に対するトルエンの還流温度飽和溶液形成溶媒量は0.33L/gである。また、フラーレン70のトルエンの還流温度における飽和溶解量は1.6g/Lであるから、フラーレン60に対するトルエンの還流温度飽和溶液形成溶媒量は、0.63L/gである。
【0018】
実施例1
アーク放電法によって得られた煤(スート)をトルエンで抽出して、フラーレン類の混合物を得た。この混合物の組成は、フラーレン60が82.3重量%、フラーレン70が15.5重量%、高次フラーレン類が2.3重量%であった。この混合物10gをトルエン1000mL(上記フラーレン70に対する還流温度飽和溶液形成溶媒量の1.03倍量)に加え、120℃で2時間、還流させた後、室温まで放冷し、濾過して、不溶の残留物を回収した。これをヘキサンで洗浄した後、真空雰囲気下に乾燥させて、フラーレン60の精製品6.6gを得た(回収率66%)。
【0019】
このフラーレン60の精製品をHPLCにて組成を分析したところ、フラーレン60が95.8重量%、フラーレン70が3.0重量%であって、フラーレン類の混合物中のフラーレン60に対する収率は76.8%であった。
【0020】
実施例2
フラーレン60が96.0重量%、フラーレン70が4.0重量%に調整したフラーレン類の混合物36.0gをトルエン1000mL(上記フラーレン70に対する還流温度飽和溶液形成溶媒量の1.11倍量)に加え、120℃で2時間、還流させた後、室温まで放冷し、濾過して、不溶の残留物を回収した。これをヘキサンで洗浄した後、真空雰囲気下に乾燥させて、フラーレン60の精製品32.6gを得た。
【0021】
このフラーレン60の精製品をHPLCにて組成を分析したところ、フラーレン60が96.7重量%、フラーレン70が3.3重量%であって、フラーレン類の混合物中のフラーレン60に対する収率は91.2%であった。
【0022】
実施例3
フラーレン60が62.7重量%、フラーレン70が20.8重量%、高次フラーレン類が14.4重量%に調整したフラーレン類の混合物7.7gをトルエン1000mL(上記フラーレン70に対する還流温度飽和溶液形成溶媒量の1.0倍量)に加え、120℃で2時間、還流させた後、室温まで放冷し、濾過して、不溶の残留物を回収した。これをヘキサンで洗浄した後、真空雰囲気下に乾燥させて、フラーレン60の精製品3.8gを得た。
【0023】
このフラーレン60の精製品をHPLCにて組成を分析したところ、フラーレン60が67.9重量%、フラーレン70が17.2重量%であって、フラーレン類の混合物中のフラーレン60に対する収率は54.3%であった。
【0024】
フラーレンの混合物中の処理前のフラーレン60(C60)の含量と処理後のフラーレン60の含量との関係を図1に示す。処理前のフラーレン60の含量が65〜95重量%のとき、特に、70〜85重量%のとき、効率よくその純度を高めることができることが示される。
【0025】
実施例4
フラーレン60が15.9重量%、フラーレン70が81.5重量%、高次フラーレン類が2.6重量%に調整したフラーレン類の混合物17.0gをトルエン900mL(上記フラーレン60に対する還流温度飽和溶液形成溶媒量の1.0倍量)に加え、120℃で2時間、還流させた後、室温まで放冷し、濾過して、不溶の残留物を回収した。これをヘキサンで洗浄した後、真空雰囲気下に乾燥させて、フラーレン70の精製品14.3gを得た。
【0026】
このフラーレン70の精製品をHPLCにて組成を分析したところ、フラーレン60が7.4重量%、フラーレン70が88.6重量%であって、フラーレン類の混合物中のフラーレン60に対する収率は91.4%であった。
【0027】
比較例1
実施例1で用いたものと同じフラーレン類の混合物10gをトルエン1000mLに加え、室温下、超音波振動子(出力100W)で2時間、溶解させた後、過して、不溶の残留物を回収した。これをヘキサンで洗浄した後、真空雰囲気下に乾燥させて、フラーレン60の精製品5.3gを得た。
【0028】
このフラーレン60の精製品をHPLCにて組成を分析したところ、フラーレン60が90.6重量%、フラーレン70が8.7重量%、高次のフラーレン類が0.7重量%であって、フラーレン類の混合物中のフラーレン60に対する収率は58.3%であった。
【0029】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、フラーレン60と70を主成分とするフラーレンの混合物から簡単な装置を用いて容易に効率よくフラーレン60又は70の純度を高めた精製品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、本発明による精製処理前のフラーレンの混合物中のフラーレン60(C60)の含量と本発明に従って精製処理したときのフラーレン60の含量との関係を示すグラフである。
【発明の属する技術分野】
本発明はフラーレン類の精製方法に関し、詳しくは、フラーレン60とフラーレン70とを主成分とする混合フラーレン類からフラーレン60又は70を高純度にて分離する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
フラーレン類は、フラーレン60に代表されるように、炭素原子のみからなるサッカーボール状の閉殻状の分子であって、ナノテクノロジー(超微細技術)における代表的な材料であるといわれており、電子材料、医薬用途、機械用途等の広い分野への応用が期待されている。
【0003】
フラーレン類は、代表的には、黒鉛を原料として用いるアーク放電法やベンゼンを燃焼させる燃焼法等によって煤(スート)と共に生成する。例えば、アーク放電法によれば、フラーレン類を含む煤をベンゼンやトルエンを用いて抽出して、主として、フラーレン60やフラーレン70を煤から分離する。
【0004】
しかし、煤から分離したフラーレン類は、このように、フラーレン60とフラーレン70のほか、フラーレン76、フラーレン78、フラーレン82、フラーレン84等を含む高次フラーレン類の混合物である。例えば、アーク放電法によるフラーレン類の製造によれば、得られるフラーレン類の混合物中の各フラーレンの割合は、通常、フラーレン60が約80%、フラーレン70が約15〜20%、その他の高次フラーレン類が数%である。
【0005】
そこで、従来、これらのフラーレン類を相互に分離し、精製するには、殆どの場合、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が用いられており、一部では、昇華法も用いられている。しかし、高速液体クロマトグラフィーによれば、高純度の製品を得ることができるが、処理能力が低いので、大量処理には適しない。昇華法も、フラーレン類の昇華温度が近接しているので、高純度品を得ることは容易ではなく、また、高速液体クロマトグラフィーによる場合と同様に、大量処理には適しない。
【0006】
このように、従来のフラーレン類の分離精製方法は、大量処理が困難であるところ、フラーレン類の用途展開を工業的な規模で図るには、それぞれを大量に効率よく分離精製することが必要であるが、従来、そのような方法は知られていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、フラーレン類の分離精製方法における上述した問題を解決するためになされたものであって、フラーレン60とフラーレン70とを主成分とする大量の混合フラーレン類からフラーレン60又は70を効率よく容易に高純度にて分離する方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、フラーレン60とフラーレン70とを主成分とするフラーレン類の混合物からフラーレン60又はフラーレン70を高純度で分離する方法において、用いる溶媒を定め、その還流温度においてその溶媒にフラーレン類の混合物中のより少ない割合を占めるフラーレンが単独で溶解して飽和溶液を形成する溶媒量(体積)の0.8〜1.2倍量の溶媒に上記フラーレン類の混合物を加え、還流させた後、冷却し、上記溶媒への不溶分を濾過して、上記フラーレン類の混合物中のより多い割合を占めるフラーレンを上記フラーレン類の混合物から高純度にて分離することを特徴とする方法が提供される。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明によれば、フラーレン60とフラーレン70とを主成分とするフラーレン類の混合物からフラーレン60又はフラーレン70を高純度で分離することができる。即ち、フラーレン類の混合物中のより少ない割合を占めるフラーレンの含有量を低減すると共に、フラーレン類の混合物中のより多い割合を占めるフラーレンの含有量を高めて、後者の純度を高めたフラーレン類を得るものである。ここに、フラーレン60とフラーレン70とを主成分とするフラーレン類の混合物は、好ましくは、フラーレン60とフラーレン70とを合計にて60重量%以上、好ましくは、70重量%以上、最も好ましくは、80重量%以上の含有量にて含む。
【0010】
本発明によれば、先ず、フラーレン60又は70の分離精製に用いる溶媒を定め、その還流温度においてその溶媒にフラーレン類の混合物中のより少ない割合を占めるフラーレンの単位量(1g)が単独で溶解して、飽和溶液を形成する溶媒量(体積)(以下、これを還流温度飽和溶液形成溶媒量という。)の0.8〜1.2倍量に上記フラーレン類の混合物を加え、通常、数時間、還流させた後、室温まで放冷し、次いで、その溶媒中の不溶分を濾過、分離し、乾燥すれば、上記フラーレン類の混合物中のより多い割合を占めるフラーレンの精製品を得ることができる。
【0011】
より詳細には、用いる溶媒を定め、その還流温度において、その溶媒の単位量(1L)にフラーレン類の混合物中のより少ない割合を占めるフラーレンが単独で溶解して、飽和溶液を形成するそのフラーレンの飽和溶解量(重量)をS(g/L)とすれば、還流温度においてその溶媒にフラーレン類の混合物中のより少ない割合を占めるフラーレンの単位量(1g)が単独で溶解して、飽和溶液を形成する還流温度飽和溶液形成溶媒量T(L/g)は、そのフラーレンの上記飽和溶解量の逆数であるから、T=1/S(g/L)である。
【0012】
そこで、精製処理を行うフラーレン類の混合物M(g)中のより少ない割合を占めるフラーレンがm(g)であるとすれば、この量のこのフラーレンに対する還流温度飽和溶液形成溶媒量はmTであるので、本発明によれば、0.8mTから1.2mTの量の溶媒中に上記フラーレン類の混合物M(g)を加えて、上述したようにして、処理するのである。
【0013】
本発明において用いる溶媒について、その還流温度において、フラーレン60又は70の飽和溶解量(重量)は、既に、知られているのであれば、その飽和溶解量を採用すればよく、また、予め、実験的に求めてもよい。
【0014】
本発明によれば、フラーレン類の混合物中において、より多い割合を占めるとは、通常、60重量%以上、好ましくは、65重量%以上、特に好ましくは、70重量%以上をいい、従って、フラーレン類の混合物中において、より少ない割合を占めるとは、通常、40重量%以下、好ましくは、35重量%以上、特に好ましくは、30重量%以上をいう。
【0015】
即ち、特に、フラーレン類の混合物中、より多い割合を占めるフラーレンの割合が65〜95重量%、好ましくは、70〜90重量%、最も好ましくは、70〜85重量%のものを本発明に従って処理することによって、より多い割合を占めるフラーレンの割合を効率よく高めることができる。
【0016】
本発明によれば、フラーレン60又は70の分離精製に用いる溶媒として、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、ピリジン、キノリン等の含窒素複素芳香族化合物、二硫化炭素等が用いられるが、なかでも、トルエンが好ましく用いられる。
【0017】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。尚、フラーレン60のトルエンの還流温度における飽和溶解量は3.0g/Lであるから、フラーレン60に対するトルエンの還流温度飽和溶液形成溶媒量は0.33L/gである。また、フラーレン70のトルエンの還流温度における飽和溶解量は1.6g/Lであるから、フラーレン60に対するトルエンの還流温度飽和溶液形成溶媒量は、0.63L/gである。
【0018】
実施例1
アーク放電法によって得られた煤(スート)をトルエンで抽出して、フラーレン類の混合物を得た。この混合物の組成は、フラーレン60が82.3重量%、フラーレン70が15.5重量%、高次フラーレン類が2.3重量%であった。この混合物10gをトルエン1000mL(上記フラーレン70に対する還流温度飽和溶液形成溶媒量の1.03倍量)に加え、120℃で2時間、還流させた後、室温まで放冷し、濾過して、不溶の残留物を回収した。これをヘキサンで洗浄した後、真空雰囲気下に乾燥させて、フラーレン60の精製品6.6gを得た(回収率66%)。
【0019】
このフラーレン60の精製品をHPLCにて組成を分析したところ、フラーレン60が95.8重量%、フラーレン70が3.0重量%であって、フラーレン類の混合物中のフラーレン60に対する収率は76.8%であった。
【0020】
実施例2
フラーレン60が96.0重量%、フラーレン70が4.0重量%に調整したフラーレン類の混合物36.0gをトルエン1000mL(上記フラーレン70に対する還流温度飽和溶液形成溶媒量の1.11倍量)に加え、120℃で2時間、還流させた後、室温まで放冷し、濾過して、不溶の残留物を回収した。これをヘキサンで洗浄した後、真空雰囲気下に乾燥させて、フラーレン60の精製品32.6gを得た。
【0021】
このフラーレン60の精製品をHPLCにて組成を分析したところ、フラーレン60が96.7重量%、フラーレン70が3.3重量%であって、フラーレン類の混合物中のフラーレン60に対する収率は91.2%であった。
【0022】
実施例3
フラーレン60が62.7重量%、フラーレン70が20.8重量%、高次フラーレン類が14.4重量%に調整したフラーレン類の混合物7.7gをトルエン1000mL(上記フラーレン70に対する還流温度飽和溶液形成溶媒量の1.0倍量)に加え、120℃で2時間、還流させた後、室温まで放冷し、濾過して、不溶の残留物を回収した。これをヘキサンで洗浄した後、真空雰囲気下に乾燥させて、フラーレン60の精製品3.8gを得た。
【0023】
このフラーレン60の精製品をHPLCにて組成を分析したところ、フラーレン60が67.9重量%、フラーレン70が17.2重量%であって、フラーレン類の混合物中のフラーレン60に対する収率は54.3%であった。
【0024】
フラーレンの混合物中の処理前のフラーレン60(C60)の含量と処理後のフラーレン60の含量との関係を図1に示す。処理前のフラーレン60の含量が65〜95重量%のとき、特に、70〜85重量%のとき、効率よくその純度を高めることができることが示される。
【0025】
実施例4
フラーレン60が15.9重量%、フラーレン70が81.5重量%、高次フラーレン類が2.6重量%に調整したフラーレン類の混合物17.0gをトルエン900mL(上記フラーレン60に対する還流温度飽和溶液形成溶媒量の1.0倍量)に加え、120℃で2時間、還流させた後、室温まで放冷し、濾過して、不溶の残留物を回収した。これをヘキサンで洗浄した後、真空雰囲気下に乾燥させて、フラーレン70の精製品14.3gを得た。
【0026】
このフラーレン70の精製品をHPLCにて組成を分析したところ、フラーレン60が7.4重量%、フラーレン70が88.6重量%であって、フラーレン類の混合物中のフラーレン60に対する収率は91.4%であった。
【0027】
比較例1
実施例1で用いたものと同じフラーレン類の混合物10gをトルエン1000mLに加え、室温下、超音波振動子(出力100W)で2時間、溶解させた後、過して、不溶の残留物を回収した。これをヘキサンで洗浄した後、真空雰囲気下に乾燥させて、フラーレン60の精製品5.3gを得た。
【0028】
このフラーレン60の精製品をHPLCにて組成を分析したところ、フラーレン60が90.6重量%、フラーレン70が8.7重量%、高次のフラーレン類が0.7重量%であって、フラーレン類の混合物中のフラーレン60に対する収率は58.3%であった。
【0029】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、フラーレン60と70を主成分とするフラーレンの混合物から簡単な装置を用いて容易に効率よくフラーレン60又は70の純度を高めた精製品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、本発明による精製処理前のフラーレンの混合物中のフラーレン60(C60)の含量と本発明に従って精製処理したときのフラーレン60の含量との関係を示すグラフである。
Claims (5)
- フラーレン60とフラーレン70とを主成分とするフラーレン類の混合物からフラーレン60又はフラーレン70を高純度で分離する方法において、用いる溶媒を定め、その還流温度においてその溶媒にフラーレン類の混合物中のより少ない割合を占めるフラーレンが単独で溶解して飽和溶液を形成する溶媒量(体積)の0.8〜1.2倍量の溶媒に上記フラーレン類の混合物を加え、還流させた後、冷却し、上記溶媒への不溶分を濾過して、上記フラーレン類の混合物中のより多い割合を占めるフラーレンを上記フラーレン類の混合物から高純度にて分離することを特徴とする方法。
- フラーレン類の混合物中のより少ない割合を占めるフラーレンが単独で溶解して飽和溶液を形成する溶媒量(体積)の0.9〜1.1倍量の溶媒を用いる請求項1に記載の方法。
- フラーレン類の混合物中において、より多い割合を占めるフラーレンが60重量%以上の範囲である請求項1に記載の方法。
- フラーレン類の混合物中において、より多い割合を占めるフラーレンが65〜95重量%の範囲である請求項1に記載の方法。
- 溶媒がトルエンである請求項1又は2に記載の方法。
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