JP3779087B2 - キシレノール異性体の分離精製方法 - Google Patents

キシレノール異性体の分離精製方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、医薬や農薬の中間体として有用な、少なくとも1種のキシレノール異性体の分離精製方法に関し、さらに詳しくはゲスト化合物である特定の少なくとも1種のキシレノール異性体に対し、選択的にホストゲスト錯体(以下単に錯体という)を形成するホスト化合物として1,1−ジ(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンを用いることによって、前記特定のキシレノール異性体と少なくとも1種の他の有機物とを含む混合物中から特定のキシレノール異性体を分離精製する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
特定のキシレノール異性体の1種を、それ以外のキシレノール異性体1種またはそれ以上および/または非キシレノール有機物1種またはそれ以上と共に含む混合物から、前記特定キシレノール異性体を分離精製するために、例えば、単純に再結晶により特定のキシレノール異性体を精製する方法、特開昭64−3136号公報や特開平01−22832号公報に示されるように、2,4−キシレノールと2,5−キシレノールとの混合物から2,5−キシレノールをアルデヒド類と選択的に反応させて、2,5−キシレノールを除く方法、特開平08−268942号公報に示されるように吸着分離により各キシレノール異性体を分離する方法、特開昭64−3137号公報に示されるように、2,4−キシレノールをジアミン化合物との錯体形成により2,4−キシレノールを選択的に回収する方法など、さまざまな方法が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の単純な再結晶による分離では、結晶性の高い2,5−キシレノールでは分離精製が可能であるが、結晶性の低い2,4−キシレノールの分離精製は困難である。また、再結晶により微細結晶が発生した場合、工業的には濾過が困難となる。さらには得られる製品の純度も充分ではないと言う問題がある。
また、前記アルデヒド類と特定のキシレノール異性体との選択的反応を利用する方法では、2,4−キシレノールの精製のみが可能であり、2,5−キシレノールはアルデヒドと反応して副生成物として失われてしまうと言う問題がある。
【0004】
前記吸着分離法の場合には、各異性体の回収は可能であるが、その工業的な方法であるクロマト分取、あるいはこれを連続化した擬似移動床による分離精製のためには、複雑で高価な専用設備が必要であり、多大な費用が発生すると言う問題がある。
また、ジアミン化合物との錯体形成を利用する方法では、ジアミン化合物と錯体を形成する2,4−キシレノールの分離精製は可能であるが、他のキシレノール異性体の分離精製は困難となる。また、毒性の高いジアミン化合物を使用せねばならないという問題がある。
従って本発明の目的は上記従来技術の問題点を解決し、簡単な手段で、特定キシレノール異性体を高純度で分離精製する方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、少なくとも1種の特定のキシレノール異性体と該特定のキシレノール異性体以外のキシレノール異性体を含む混合物を、ホスト化合物である1,1−ジ(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンと接触させて、ゲスト化合物である前記特定のキシレノール異性体と上記ホスト化合物との錯体を生成させ、該錯体から前記特定のキシレノール異性体を分離することを特徴とするキシレノール異性体の分離精製方法を提供する。
【0006】
本発明者らはフェノール系化合物の分離技術として知られている錯体を利用した分離精製方法に着目して鋭意研究を行った結果、1,1−ジ(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンが、キシレノール異性体を、その濃度に従って選択的に包接することを見出して本発明を完成させた。
【0007】
【発明の実施の形態】
次に好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
本発明を適用する少なくとも1種の特定のキシレノール異性体と該特定のキシレノール異性体以外のキシレノール異性体を含む混合物は、タール蒸留より得られる混合石炭酸、石炭ガス化時に生じる油状成分、石油精製過程で除去される酸性油成分、クレゾールのメチル化反応生成物、あるいはこれらの分留成分などとして入手することができる。
【0008】
また、本発明方法でホスト化合物として用いる1,1−ジ(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンは、シクロヘキサンとフェノールから工業的に製造されており、容易に入手することができる。その製造法の詳細は、例えば、特開昭62−263135号公報に記載されている。この化合物は常温で白色固体の結晶であり、融点は175℃以上である。
【0009】
本発明の対象となる原料混合物は、2種類以上のキシレノール異性体を含む混合物である。
【0010】
従って、本発明の方法を適用しうる原料混合物中には、少なくとも1種のキシレノール異性体のほかに、他の有機物として他のキシレノール異性体を含む。これらの他の有機物の濃度は、合計で通常50重量%以下、好ましくは25重量%以下、特に好ましくは10重量%以下である。
【0011】
6種類存在するキシレノールの異性体のうち、2,4−キシレノールと2,5−キシレノールとは、とりわけそれらの沸点が近く、蒸留によっては極めて分離しにくい異性体である。本発明の方法は、このような従来の方法では成分の分離が困難な混合物に対して特に有用であるので、以下2,4−キシレノールと2,5−キシレノールとの混合物の場合を代表例としてさらに詳しく説明する。
【0012】
原料混合物が、2,4−キシレノールと2,5−キシレノールとの両者を含む混合物の場合、2,4−キシレノールの分離精製を目的とする場合の混合物中の2,4−キシレノールの濃度は、通常キシレノール全量の75モル%超、好ましくは85モル%以上が適当である。2,5−キシレノールの分離精製を目的とする場合の混合物中の2,5−キシレノールの濃度は、通常キシレノール全量の25モル%以上、好ましくは50モル%以上、特に好ましくは80モル%以上が適当である。
【0013】
また、原料混合物の大部分が2,4−キシレノールおよび2,5−キシレノールであるときは、2,4−キシレノール濃度がキシレノール全量の約75モル%、且つ2,5−キシレノール濃度がキシレノール全量の約25モル%という組成を境に、より2,4−キシレノールの濃度が高い場合には、ホスト化合物によって2,4−キシレノールが選択的に包接分離され、約25モル%より2,5−キシレノール濃度が高い場合には、ホスト化合物によって2,5−キシレノールが選択的に包接分離される。この選択性の逆転は2,4−キシレノールと2,5−キシレノールとの量比に対して敏感に起こるため、本発明方法は2,4−キシレノールと2,5−キシレノールとの混合物からそれらのキシレノール異性体を分離精製するのに特に有効である。
さらに、2,5−キシレノールは原料混合物中のその濃度が比較的低い場合、例えば、25〜60重量%程度であっても、ホスト化合物によって選択性よく包接分離されるため、本発明方法は2,5−キシレノールの分離精製に特に有効である。
【0014】
本発明方法において、前記キシレノールと前記ホスト化合物から錯体を形成させるには、通常は原料となるキシレノール異性体混合物と、前記ホスト化合物とを混合し、加熱溶解して均一な溶液とした後、冷却して生成した錯体を析出させる。この錯体形成は、錯体の結晶形状や生成速度を調節したり、錯体の回収操作を容易にするために、溶媒の存在下に行うことが好ましいが、原料混合物が液体である場合や原料混合物を加熱融解した場合など、特に溶媒を必要としない場合は無溶媒で行うこともできる。
【0015】
錯体形成時に使用する溶媒としては、ホスト化合物によって包接分離されずに残った原料成分をよく溶解し、且つ熱時にはホスト化合物を溶解するが、冷時にはホスト化合物を溶解しないものが好ましい。例としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類、アセトン、ブタノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンなどの芳香族炭化水素類、あるいはこれらの混合物などが挙げられる。これらの溶媒の使用量は任意であるが、一般的には原料混合物100重量部当たり約1〜100重量部の範囲であることが望ましい。
【0016】
錯体形成時における原料混合物とホスト化合物との混合割合は、特に制限されないが、極端に原料混合物の割合が大きい場合には、処理した原料混合物に対する分離されたキシレノール異性体の割合が小さくなり、分離精製方法が非効率となる。また、原料混合物に対して極端にホスト化合物の割合が大きい場合には、使用するホスト化合物に対する分離されたキシレノール異性体の割り合いが小さく、分離精製方法が非効率であり、包接の選択性も低下する。従って、原料混合物とホスト化合物を極端に高いまたは低い比率で使用することは好ましくない。ホスト化合物の適当な混合割合は、分離すべきキシレノール異性体1モル当たり、ホスト化合物0.05〜10モル、好ましくは0.2〜2モルの範囲である。
【0017】
本発明において、錯体形成時に原料混合物とホスト化合物とを混合し、加熱溶解する温度は、混合物が均一な溶液となり、分離すべきキシレノール異性体やホスト化合物が著しく揮散しない範囲であれば特に支障がないが、通常40〜200℃、好ましくは80〜160℃の範囲が適当である。また、錯体形成時に錯体を析出させる温度は、使用する原料混合物、溶媒などの条件により異なるが、通常は室温でよい。必要に応じて、錯体の回収量を高めるために強制冷却や冷媒による冷却により室温以下の温度としてもよく、また、工程の簡略化のために、充分な錯体の回収量が得られる範囲内で室温以上の温度としてもよい。錯体形成時の操作圧力は通常大気圧でよい。使用する溶媒の沸点によっては加圧あるいは減圧条件とすることもできる。
【0018】
錯体形成時の雰囲気は、使用する原料混合物、ホスト化合物、溶媒、あるいは回収するキシレノール異性体の品質を損なわない程度に不活性である必要があるが、通常は空気雰囲気でよい。必要に応じて窒素、炭酸ガス、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気とすることもできる。錯体形成に要する時間は、実施するスケール、使用する装置、加熱、冷却条件などにより異なるが、おおむね10分間〜48時間程度である。
【0019】
錯体形成を行う方法の例としては、上記以外にも、原料混合物とホスト化合物とを溶媒に溶解した後、溶媒の一部を蒸留などにより除去して錯体を析出させる方法、原料混合物とホスト化合物とを溶媒に溶解した後、冷却して錯体を析出させる方法、原料混合物とホスト化合物を良溶媒に溶解した後、貧溶媒を加えて錯体を析出させる方法、原料混合物とホスト化合物とを良溶媒と貧溶媒との混合物に溶解した後、良溶媒を蒸留などにより除去して錯体を析出させる方法、原料混合物が液体である場合には、ホスト化合物を原料混合物に溶解させた後、冷却や貧溶媒の添加により錯体を析出させる方法などを挙げることができる。
【0020】
本発明方法で析出した錯体を固液分離するには、濾過またはデカンテーションによればよく、通常用いられる自然濾過、吸引濾過、加圧濾過、遠心濾過、フィルタープレス、スクリュープレス、遠心分離、遠心デカンテーションなどの手法を用いることができる。分離後に得られた錯体は、包接分離されずに残った原料成分を除去して、回収されるキシレノール異性体の品質を向上させるために、必要に応じて溶媒により洗浄を行うことが望ましい。洗浄用の溶媒は錯体形成時と同様のものが使用できる。固液分離の雰囲気は通常は空気雰囲気でよい。必要に応じて窒素、炭酸ガス、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気とすることもできる。
【0021】
本発明方法で特定のキシレノール異性体を含んだ錯体から、そのキシレノール異性体を回収するには当該錯体を加熱することにより分解し、含まれているキシレノール異性体を気化および回収する方法が簡便である。このキシレノール異性体の回収のための熱分解は、錯体が分解してキシレノール異性体を放出し、ホスト化合物自体の熱分解が生じない温度領域で行うことが望ましい。適当な温度範囲は通常100〜250℃、好ましくは150〜200℃である。
【0022】
このキシレノール異性体回収のための錯体の熱分解は、適当な条件下で行い、放出されるキシレノール異性体を、錯体の熱分解と同時に蒸留回収することができる。また、ホスト化合物である1,1−ジ(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンは、キシレノール異性体回収後の熱分解残渣として回収され、特に精製操作を行うことなく再使用することができる。
【0023】
さらに、錯体からキシレノール異性体を回収する方法として、キシレノール異性体よりもホスト化合物と錯体を作りやすい化合物を、キシレノール異性体の脱着剤として添加し、ゲストとして錯体中に包接されているキシレノール異性体を、添加した脱着剤により置換してキシレノール異性体を液相へ移し、その後、脱着剤とホスト化合物との錯体を固液分離することで、濾液中にあるキシレノール異性体を回収する方法を挙げることができる。
添加する脱着剤の例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノールなどのアルコール類、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリルなどが挙げられる。これらの脱着剤は、錯体形成時と同様の溶媒で希釈して用いることができる。
【0024】
この脱着剤による錯体中のキシレノール異性体の置換は、脱着剤またはその溶液により、キシレノール異性体をゲストとして含む錯体を洗浄および濾過することにより行うことができる。洗浄は、機械的攪拌を加えてもよいし、錯体を静置したまま、リンシングによって行なってもよい。また、錯体を脱着剤またはその溶液中で再結晶をすることによっても、錯体中のキシレノール異性体を脱着剤と置換してキシレノール異性体を放出させることができる。
【0025】
この脱着剤によるキシレノール異性体の回収を行った場合には、ホスト化合物は、脱着剤をゲストとして含む[脱着剤/ホスト化合物]錯体として回収される。この錯体は別途加熱により分解し、脱着剤を放出させることで、ホスト化合物を再生することができる。また、脱着剤として低沸点の化合物を用いた場合には、脱着剤とホスト化合物との錯体の形成時に充分に加熱することにより、脱着剤は錯体から分離して蒸留除去されるため、特に再生操作を行わずとも、ホスト化合物を再生することができる。
【0026】
【実施例】
次に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。尚、文中の「%」とあるのは特に断りのない限り重量基準である。
実施例1
1,1−ジ(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン1.0gと、2,4−キシレノール10.7%、2,5−キシレノール85.8%、その他3.5%からなる混合キシレノール1.0gと、溶媒としてメシチレン20gとを混合し、150℃に加熱して溶解させ、均一な溶液とした。この溶液を室温で6時間放置して錯体を析出させた。これを吸引濾過し、錯体をトルエンおよびヘキサンで充分に洗浄した後、風乾して錯体1.38gを得た。この錯体を200℃/20torrの条件下に加熱したところ、0.34gのキシレノールが回収された。この回収キシレノールの組成を、ガスクロマトグラフを用いて分析したところ、2,5−キシレノール99.5%以上であり、2,4−キシレノールは検出されなかった。
【0027】
実施例2
1,1−ジ(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン1.0gと実施例1と同じ混合キシレノール1.0gとを混合し、160℃に加熱して融解させて均一相とした。この混合物を室温で6時間放置して固化させた。得られた固体をトルエンで十分洗浄した後、吸引濾過し、さらにヘキサンで洗浄し、風乾して錯体1.38gを得た。この錯体を200℃/20torrの条件下に加熱したところ、0.33gのキシレノールが回収された。この回収キシレノールの組成をガスクロマトグラフを用いて分析したところ、2,5−キシレノール99.5%以上であり、2,4−キシレノールは検出されなかった。
【0028】
実施例3〜6
実施例1と同様の原料、溶媒および操作条件において、使用する混合キシレノールの量のみを変化させて試験を行った。試験条件と結果を表1に示す。表中、2,4−体は2,4−キシレノールを、2,5−体は2,5−キシレノールを表す。尚、実施例1の試験条件と結果も同時に示す。
【0029】
【表1】
表1:試験条件および結果(実施例1、実施例3〜6)
Figure 0003779087
【0030】
実施例7
1,1−ジ(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン1.0gと、2,4−キシレノール88.1%、2,5−キシレノール9.8%、その他2.1%からなる混合キシレノール1.0gと、溶媒としてデカン20gとを混合し150℃に加熱して溶解させ、均一な溶液とした。この溶液を室温で6時間放置して錯体を析出させた。これを吸引濾過し、錯体をヘキサンで充分洗浄した後、風乾して錯体を1.37gを得た。この錯体を200℃/20torrの条件下に加熱したところ、0.32gのキシレノールが回収された。この回収キシレノールの組成を、ガスクロマトグラフを用いて分析したところ、2,4−キシレノール99.1%、2,5−キシレノール0.7%であった。
【0031】
実施例8
原料として使用する混合キシレノールを、2,4−キシレノール78.5%、2,5−キシレノールを19.6%、その他1.9%の組成のものに変更した以外は実施例7と同様の条件および操作で試験を行ったところ、1.18gの錯体が得られた。この錯体を実施例7と同様に処理したところ、0.12gのキシレノールが回収され、2,4−キシレノールおよび2,5−キシレノール含有量は95.1%、4.7%であった。
【0032】
実施例9
1,1−ジ(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン1.0gと、2,4−キシレノール68.7%、2,5−キシレノール29.4%、その他1.9%からなる混合キシレノール1.0gと、溶媒としてメシチレン20gとを混合して、150℃に加熱して溶解させ、均一な溶液とした。この溶液を室温で6時間放置して錯体を析出させた。これを吸引濾過し、錯体をトルエンおよびヘキサンで充分に洗浄した後、風乾して錯体1.28gを得た。この錯体を実施例7と同様に処理したところ、0.23gのキシレノールが回収され、2,4−キシレノールおよび2,5−キシレノールの含有量は5.5%および94.3%であった。
【0033】
実施例10〜15
原料として使用する混合キシレノールを、各種組成のものに変更した以外は、実施例9と同様の条件および操作で試験を行った。試験条件と結果を表2に示す。表中の「Xy」はキシレノールを、2,4−体は2,4−キシレノールを、2,5−体は2,5−キシレノールを表す。また、実施例7〜15で使用した混合キシレノール中の2,5−キシレノールの含有量と、そこで得られた回収キシレノール組成との関係を図1に示す。
【0034】
【表2】
表2:試験条件および結果(実施例7〜15)
Figure 0003779087
【0035】
実施例16
1,1−ジ(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン1.0gと、2,3−キシレノール49.2%、2,4−キシレノール49.6%、その他1.2%からなる混合キシレノール1.0gと、溶媒としてデカン20gとを混合し150℃に加熱して溶解させ、均一な溶液とした。この溶液を室温で6時間放置して錯体を析出させた。これを吸引濾過し、錯体をヘキサンで充分洗浄した後、風乾して錯体を1.11g得た。この錯体を200℃/20torrの条件下に加熱したところ、0.11gのキシレノールが回収された。この回収キシレノールの組成を、ガスクロマトグラフを用いて分析したところ、2,3−キシレノール87%、2,4−キシレノール13%であった。
【0036】
実施例17〜23
原料として使用する混合キシレノールを実施例11のように約1:1のキシレノール異性体組成で混合して調製し、混合するキシレノール異性体の種類を変化させ、溶媒はメシチレンではなくデカンを使用して実施例16と同様の条件および操作で試験を行った。試験条件と結果を表3に示す。尚、実施例11および実施例16の結果も表3に示す。表中の「Xy」はキシレノールを、2,3−体は2,3−キシレノールを、2,4−体は2,4−キシレノールを、2,5−体は2,5−キシレノールを、2,6−体は2,6−キシレノールを、3,4−体は3,4−キシレノールを、3,5−体は3,5−キシレノールを表す。
【0037】
実施例24〜29
原料として使用する混合キシレノールを実施例11のように約1:1のキシレノール異性体組成で混合して調製し、混合するキシレノール異性体の種類を変えて実施例16と同様の条件および操作で試験を行った。試験条件と結果を表3に示す。表中の「Xy」はキシレノールを、2,3−体は2,3−キシレノールを、2,4−体は2,4−キシレノールを、2,5−体は2,5−キシレノールを、2,6−体は2,6−キシレノールを、3,4−体は3,4−キシレノールを、3,5−体は3,5−キシレノールを表す。
【0038】
【表3】
表3:試験条件および結果(実施例11、実施例16〜29)
Figure 0003779087
【0039】
実施例30
1,1−ジ(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン100.4gと、実施例1と同じ2,4−キシレノール10.7%、2,5−キシレノール85.8%、その他3.5%からなる混合キシレノール101.4gと、溶媒としてメシチレン400gとを混合し、実施例1と同様の操作で、錯体138.8gを得た。この錯体のうちの50.1gを採り、脱着剤であるn−ブタノール75gを加えて30分間攪拌して錯体中のキシレノールを脱着剤で置換した後、吸引濾過し、さらに[脱着剤/ホスト化合物]錯体をヘキサンで充分に洗浄した。この錯体を風乾して、[脱着剤/ホスト化合物]錯体40.6gを回収した。得られた濾液、洗浄液は全て回収し、減圧下に濃縮、さらに減圧蒸留してキシレノール11.5gを回収した。この回収キシレノールの組成をガスクロマトグラフで分析したところ2,5−キシレノールは99.5%以上であり、2,4−キシレノールは検出されなかった。
【0040】
実施例31
実施例30で回収した[脱着剤/ホスト化合物]錯体のうちの15.0gと、実施例1と同じ混合キシレノール15.0gと、溶媒としてメシチレン80gとを混合し、メシチレンが沸騰するまで加熱し、均一な溶液とした。20gの溶媒分を留出させた後、溶液を冷却し、室温で6時間放置して錯体を析出させた。この処理によって[脱着剤/ホスト化合物]錯体中の脱着剤がキシレノールによって置換された。ガスクロマトグラフ分析より、上記の留出させた溶媒分は21.5%のn−ブタノールを含んでいた。得られた錯体を実施例1と同様に操作して、錯体15.2gを得た。さらにこの錯体を、実施例1と同様に熱分解して、キシレノール4.3gを得た。この回収キシレノールの組成をガスクロマトグラフで分析したところ2,5−キシレノールは99.5%以上であり、2,4−キシレノールは検出されなかった。
【0041】
実施例32
実施例30で得られた錯体のうちの50.2gを500mlビーカーに取り、このなかに、脱着剤としてのi−プロパノールとヘキサンの1対1重量混合物75gを静かに加え、30分間静置して錯体中のキシレノールを脱着剤で置換した後、吸引濾過し、さらに[脱着剤/ホスト化合物]錯体をヘキサンで充分に洗浄した。得られた濾液、洗浄液は全て回収し、減圧下に濃縮、さらに減圧蒸留してキシレノール11.2gを回収した。この回収キシレノールの組成をガスクロマトグラフで分析したところ2,5−キシレノールは99.5%以上であり、2,4−キシレノールは検出されなかった。
【0043】
【発明の効果】
本発明方法によれば、特定のキシレノール異性体を少なくとも1種の他のキシレノール異性体と共に含む混合物から、高純度で特定キシレノール異性体を簡便に回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例7〜15で使用された混合キシレノール中の2,5−キシレノールの含有量と、それらの実施例で回収されたキシレノールの組成との関係を示すグラフ。

Claims (9)

  1. 少なくとも1種の特定のキシレノール異性体と該特定のキシレノール異性体以外のキシレノール異性体を含む混合物を、ホスト化合物である1,1−ジ(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンと接触させて、ゲスト化合物である前記特定のキシレノール異性体と上記ホスト化合物との錯体を生成させ、該錯体から前記特定のキシレノール異性体を分離することを特徴とするキシレノール異性体の分離精製方法。
  2. 前記少なくとも1種の特定のキシレノール異性体と、それ以外のキシレノール異性体が、2,4−キシレノールと2,5−キシレノールである請求項に記載の分離精製方法。
  3. 2,5−キシレノールの含有量が、キシレノール全量の25モル%以上であり、2,5−キシレノールを分離精製する請求項に記載の分離精製方法。
  4. 2,5−キシレノールの含有量が、キシレノール全量の25モル%未満であり、2,4−キシレノールを分離精製する請求項に記載の分離精製方法。
  5. キシレノール異性体の分離を溶媒中で行う請求項1に記載の分離精製方法。
  6. 溶媒が、熱時ホスト化合物を溶解し、冷時ホスト化合物を析出する溶媒である請求項に記載の分離精製方法。
  7. 分離を目的とするキシレノール異性体1モルあたり、ホスト化合物を0.05〜10モルの範囲で使用する請求項1に記載の分離精製方法。
  8. 分離を目的とするキシレノール異性体1モルあたり、ホスト化合物を0.2〜2モルの範囲で使用する請求項1に記載の分離精製方法。
  9. 前記混合物が、タール蒸留により得られる混合石炭酸またはその蒸留物である請求項1に記載の分離精製方法。
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