JP3722166B2 - 永久磁石形電動機の界磁 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転形やリニアタイプのDCブラシレスモータ、同期モータやステッピングモータ等、界磁に永久磁石を用いる電動機に関し、特に界磁の磁束量を変化させることにより電動機の出力特性を制御し、高効率で定出力範囲を広く取ることのできる永久磁石形電動機に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、高効率且つ小形で高トルク・高推力を得るために、回転形やリニアタイプの電動機として、永久磁石を界磁に使用したDCブラシレスモータや同期モータをインバータドライブするものが広く用いられている。
この種のモータに用いる界磁として、移動磁界を生じるための巻線を備えた電機子と空隙を介し対向させた、円筒状の回転子コアに隣り合うもの同士が異極になるように所定の極ピッチで配置した複数の永久磁石を備えた永久磁石形電動機の界磁がある(例えば、特開平1−157253号公報)。
界磁に永久磁石を用いた永久磁石電動機では、界磁磁束が一定のため回転数に比例して誘起電圧が増加し、これとインバータ駆動回路の出力電圧との関係で、定トルク領域の最高回転数(基底回転数)が決定される。これを基底回転数以上で定出力駆動する場合、インバータ駆動回路の出力電圧制限により回転機に供給される電流が減少するためトルクが低下し、真の最高回転数も低く抑えられてしまう。従って、定出力比(基底回転数:最高回転数)は1:1.5程度に留まっている。
一方、電気自動車や電気鉄道等の電気推進に適用する回転機システムでは、1:2以上の定出力比(基底回転数:最高回転数)を持つ広範囲の可変速駆動が求められる。この要求に応えるため、従来は、定出力範囲ではd軸電機子電流により界磁に逆向きの磁界を印加し界磁の磁束量を低減するという等価弱め界磁制御が用いられ、1:3程度の定出力比を得るようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の方法では、弱め界磁制御を行うために相当量のd軸電流を界磁に同期して流す必要があるため、効率が低下したり制御が複雑になる。また、大きな減磁界が印加されるため、永久磁石が不可逆減磁してしまうといった問題があった。さらに、定出力範囲では弱め界磁制御を行うため、基底速度において界磁電流の制御方式を切り換える必要があり、制御回路が複雑になっていた。
ここで、一般的に界磁に用いられている永久磁石は代表的な磁気特性である残留磁束密度が温度特性を有している。特に、フェライト磁石や希土類磁石は負の温度係数を有しており、磁石の温度上昇と共に残留磁束密度が減少する性質を持っている。界磁の磁束量は、使用する永久磁石の残留磁束密度に比例するため、この残留磁束密度の温度特性が直接トルク特性や推力特性に影響を与える。
電動機は電機子巻線のジュール損やコアの鉄損、風損等の発熱が発生し、熱伝導により永久磁石の温度も上昇する。或いは、電動機の使用条件によっては外部からの熱侵入により、同様の温度上昇が生じる。しかし従来の電動機では、この界磁磁束量の温度特性の補償を行っていないので、温度上昇に伴い界磁の磁束量が減少し、その結果回転電機ではトルク定数が、リニアモータでは推力定数が減少するという問題があった。
また、基底速度以上の高速領域では、定出力特性を得るために、弱め界磁制御をする必要がある。
そこで本発明は、界磁永久磁石の不可逆減磁の恐れが少ない、永久磁石の温度変化や回転数変化に対応して電動機の出力特性を制御し、特別な制御を必要とせずに、広い定出力範囲を得るに適した高効率の永久磁石形電動機を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、移動磁界を生じるための巻線を備えた電機子と空隙を介し対向させた、磁性体コアを積層したコアに所定の極ピッチで配置した複数の永久磁石を備えた永久磁石形電動機の界磁において、前記永久磁石間もしくは前記永久磁石近傍に、透磁率が変化する機能性部材を設け、永久磁石形電動機の界磁にする。
【0005】
【発明の実施の形態】
移動磁界を生じるための巻線を備えた電機子と、空隙を介し対向させた、磁性体板を積層したコアに隣り合うもの同士が異極になるように所定の極ピッチで配置した複数の永久磁石を備えた永久磁石形電動機の界磁において、
前記永久磁石間、前記永久磁石の電機子対向側、もしくは前記永久磁石と前記積層コア間に、感温磁性材料、磁歪材料もしくは磁性半導体材料よりなる機能性部材を設け永久磁石形電動機の界磁を形成する。
前記コアが円板を軸方向に積層した回転子コアであり、前記回転子コア表面に前記永久磁石を所定の角ピッチで固定し、
前記永久磁石間に負の温度係数を有する感温磁性材料よりなる前記機能性部材を間挿し、前記永久磁石と前記機能性部材の外表面を薄肉円管状の正の応力係数を有する磁歪材料よりなる前記機能性部材で包絡したり、
前記永久磁石間に磁性半導体材料を間挿したりする。
また、前記コアが、外径側に等極ピッチ角で放射状の極中心線に直交差させて設けた永久磁石挿入穴と、前記永久磁石挿入穴間に設けた漏れ磁束防止用穴を備えた回転子コアであり、前記永久磁石挿入穴内に前記永久磁石を収納し、
前記漏れ磁束防止用穴内に負の温度係数を有する感温磁性材料や磁性半導体材料を収納したり、
前記永久磁石の厚さを前記永久磁石挿入穴の高さより薄くし、前記永久磁石挿入穴の外径側に前記永久磁石を配置し、前記永久磁石挿入穴と前記永久磁石の間に生じる内径側の間隙に磁歪材料や磁性半導体材料よりなる前記機能性部材を挿入したり、
前記永久磁石挿入穴を周方向に連通させて、前記回転子コアを内外に分割し、前記漏れ磁束防止用穴に相当する部分で、正の応力係数を有する磁歪材料よりなる鼓形をした前記機能性部材により前記内外コアと前記永久磁石を固定したり、
前記永久磁石を2分割し、この永久磁石間に、正の応力係数を有する磁歪材料よりなる鼓形をした前記機能性部材を間挿したり、
前記回転子コア全体を、負の応力係数を有する磁歪材料よりなる前記機能性部材としたりする。
さらに、前記コアを平板状のコアとし、前記永久磁石と前記機能性部材を矩形とし、前記平板状のコア上に前記永久磁石と前記機能性部材を所定ピッチで直線上に配置しリニア形にする。
【0006】
以下、この発明の実施例を説明する。
図1は、本発明の第1の実施例を示す断面図で、回転子の表面に永久磁石を設けた回転形電動機の界磁に適用したものである。
界磁部1は、円板状に打ち抜いたケイ素鋼板を界磁部1の軸方向に積層した円筒状の回転子コア11の外周面に、界磁部1の半径方向に着磁し隣り合うもの同士が異極となるように所定の極ピッチで軸中心から放射状に設けた極中心線Pに左右対称に固着された6個のフェライト磁石や希土類磁石の永久磁石13と、おのおのの永久磁石13間に、界磁部1の外径が永久磁石13の外径と同一になるように配置された、透磁率が負の温度係数を有する感温磁性材料よりなる6個の機能性部材12と、回転子コア11の中心を軸方向に貫くシャフト14から構成されている。
界磁部1は、固定子コアに巻線を巻回した電機子(図示せず)と空隙を介し対向し、電機子で作られる回転磁界に同期して回転する。
なお、感温磁性材料は、磁気変態点(キューリ点)が常温より少し高い温度にある感温磁性材料を用いる。また、機能性部材12の断面積は、永久磁石13の残留磁束密度特性やその温度特性、或いは機能性部材12の配置個所に応じて変える。さらに、機能性部材12は回転子コア11と同様に、薄板状のものを軸方向に積層してもよい。
図2(a)は、機能性部材12に用いる代表的な感温磁性材料の温度−磁束密度の関係を示すグラフである。この例は、サ−マロイと名付けられたNi−Cu−Feの感温磁性材料に、ある所定の磁界を印加した時の温度−磁束密度特性グラフである。このグラフに示される通り、この材料は、ある磁界を印加されている状態において、温度上昇に伴い磁束密度が減少する負の温度係数を有する。
図2(b)はサーモライト(商品名)と名付けられた、フェライト感温磁性材料の温度−飽和磁束密度特性のグラフで、磁気変態点付近での透磁率変化が特に顕著な材料である。この材料もサーマロイと同様に負の温度係数を有する。
なお、リニアモータに適用する場合は、永久磁石13と機能性部材12を矩形にし、所定ピッチで直線上に配置すればよい。
【0007】
以下に、作用を説明する。
界磁部1が室温の場合は、機能性部材12が個々の永久磁石13間、即ち永久磁石13における漏れ磁路に配置されているため、機能性部材12が室温において有する高い透磁率に応じて永久磁石13の磁束(図示せず)の一部がこの機能性部材12を通り、磁束の漏れを生じる。従って、機能性部材12が無い場合に比べて永久磁石13の外周側磁極面から出る界磁として働く主磁束はある程度低く抑えられる。
一方、電機子巻線のジュール損、コアの鉄損、風損等の発熱や電動機の使用雰囲気により永久磁石13の温度が上昇した場合は、永久磁石13の残留磁束密度は負の温度係数を持っているので、この係数と上昇温度の積に比例して永久磁石13表面から出る磁束が減少する。ところが、永久磁石13の漏れ磁路に位置する機能性部材12も永久磁石13と同様に温度が上昇する。すると機能性部材12の透磁率が低下するので永久磁石13の漏れ磁束は減少し、その分主磁束が増加する。従って、温度上昇に伴う主磁束の減少と、漏れ磁束の減少による主磁束の増加が等しくなるように感温磁性材料の温度特性と大きさを決定しておけば、界磁部1の界磁主磁束は一定に保たれる。
【0008】
図3は、本発明の第2の実施例を示す断面図で、第1の実施例と同じタイプの回転子に応用したものである。ただし、この例は、回転形のみに適用できる。
界磁部1の永久磁石13と機能性部材12の外表面を、透磁率が正の応力係数を持つアモルファス磁歪材料よりなる薄肉円管状の機能性部材15でタイトに包絡してある。
界磁部1の回転で発生した遠心力により、機能性部材15に円周方向の張力が作用する構造としてある。
なお、機能性部材15は電機子(図示せず)で発生する高調波磁束の影響で機能性部材15の表面に発生する渦電流損が問題となる場合は、外側に絶縁被覆を施したフィラメントを巻き付けた構造としても良い。
本発明で用いるアモルファス磁歪材料は、外部磁界に応じて伸縮するという性質(磁歪)を有しており一般にアクチュエータとして用いられるが、逆に外部から力を加えることで材料自体の磁気特性が変化するという性質も持つ。
図4は機能性部材15に用いる代表的な磁歪材料である、比較的大きな磁歪特性を有する材料であるアモルファスリボンの応力−透磁率の関係を示すグラフである。
図4(a)は正の応力係数を持つ材料(アライド社製METGLAS2605S−2、幅25mm×厚さ約20μm)のデータ、図4(b)は負の応力係数を持つ材料(同社製METGLAS2714A、同寸法)のデータである。
両図から、張力の印加により、正の応力係数を持つ材料では張力方向の透磁率が増大し、負の応力係数を持つ材料では減少することがわかる。ここでは具体的データを示さないが、磁歪材料に圧縮力が加えられた場合は、張力の場合と逆の特性変化を示す。このような応力に対する磁歪材料の透磁率の変化は、アモルファスリボン以外の磁歪材料だけでなく高透磁率材料として扱われるが比較的大きな磁歪特性を有する材料でも同様に現れる。透磁率の変化は、印加される応力が引っ張りか圧縮か、材料の応力係数が正か負かで増加するか減少するかが決まっている。
【0009】
以下に作用を説明する。
図5は、本発明の第2の実施例の動作原理を示す断面図で、図3の1磁極ピッチ分を抜き出し、永久磁石13で作られた磁束の流れを模式的に表している。
界磁部1が停止或いは低速で回転している時は、遠心力が小さく、アモルファス磁歪材料よりなる機能性部材15に加えられる引っ張り応力も小さいため、機能性部材15の半径方向の透磁率は低いままである。従って、永久磁石13a→回転子コア11→永久磁石13bと巡る磁束φが機能性部材15で短絡される量は少なく、磁束φの大部分は、図5(a)に示すように、界磁部1の表面から半径方向に出ていく。
一方、界磁部1が高速で回転している時は、図5(b)に示すように、機能性部材15に作用する引っ張り応力も大きくなるため、機能性部材15の透磁率が高くなり、永久磁石13a→回転子コア11→永久磁石13b→機能性部材15のように巡回する磁束φの量が増え、界磁部1表面から出る磁束φの量が減少する。このように、回転数が高くなることにより界磁部1から出る磁束の量が減少し、界磁が弱まったことと等価となる。
【0010】
図6は、本発明の第3の実施例を示す断面図で、コア内に永久磁石を埋め込む形の回転電機の界磁への適用例である。
界磁部1は、円板状のケイ素鋼板の外径側に等角ピッチで軸心から放射方向に設けた極中心線Pに直交させた左右対称の矩形の永久磁石挿入穴21と、永久磁石挿入穴21間に、機械的に充分な強度と永久磁石13の少ない漏れ磁束を与える幅の側つなぎ部11dと外つなぎ部11cを切り残した略三角形の漏れ磁束防止穴22と、中心にシャフト14を嵌合する穴を打ち抜いた回転子コア11を軸方向に積層し、永久磁石挿入穴21内に挿入された半径方向に着磁され、隣り合うもの同士が異極となるよう配置された6つの永久磁石13と、漏れ磁束防止穴22の中に挿入した透磁率が負の温度係数を有する感温磁性材料よりなる機能性部材12とで構成してある。
機能性部材12の働きは第1およ第2の実施例と同様であるが、永久磁石13が内装されているため、遠心力に対し剛性が高く高速回転に適する。
なお、回転子コア11全体を負の磁歪定数を有するアモルファス磁歪材料にしてもよい。この場合、界磁部1の高速回転により回転子コア11全体に張力が作用し、回転子コア11全体の透磁率が下がることにより界磁を弱める。
さらに、永久磁石挿入穴21と永久磁石13は矩形に限らず、例えば、扇形でもよい。
【0011】
図7は、本発明の第4の実施例を示す断面図で、第1の実施例の永久磁石13と回転子コア11間に絶縁層3を介し、磁性半導体材料よりなる機能性部材19を間挿してある。この機能性部材19の電極にリード線を介し、電圧を印加し、常磁性状態から強磁性状態に転移することにより、永久磁石13の作る磁束を制御する。
ここで、磁性半導体材料は、例えば、特開平7−95754号公報に開示されているように、電極に電圧を印加することにより、マグネティックポーラロンの存在および非存在により常磁性状態から強磁性状態に転移するものである。
【0012】
図8は、本発明の第5の実施例を示す断面図で、第3の実施例の永久磁石13の厚さを永久磁石挿入穴21の高さより薄くし、永久磁石挿入穴21と永久磁石13の半径方向外側に間隙が生じるようにしてある。この間隙に、磁性半導体材料よりなる機能性部材19を間挿してある。なお、漏れ磁束防止用穴22内に感温磁性材料よりなる機能性部材12を挿入してもよい。
【0013】
図9は、本発明の第6の実施例を示す断面図で、第3の実施例の漏れ磁束防止穴22の中に挿入した透磁率が負の温度係数を有する感温磁性材料よりなる機能性部材12に換えて、漏れ磁束防止穴22の中に、相似形の磁性半導体材料よりなる機能性部材19を挿入してある。
第4から6の実施例においては、磁性半導体材料の電極に外部から電界を印加することにより透磁率を制御できるので、負荷状況に応じ任意の回転数で弱め界磁をできる。
【0014】
図10は、本発明の第7の実施例を示す側面図で、第1ないし第6の実施例をリニアモータに適用したものである。
強磁性体よりなる平板状のコア11Aの上面に、矩形の永久磁石13と機能性部材12または19を交互に所定のピッチで直列に配置してある。
【0015】
図11は、本発明の第8の実施例を示す側面図で、第3の実施例の永久磁石13の厚さを永久磁石挿入穴21の高さより薄くし、永久磁石挿入穴21と永久磁石13の半径方向外側に間隙が生じるようにしてある。この間隙に、正の応力係数を有するアモルファス磁歪材料よりなる薄板状の機能性部材18を間挿してある。界磁部1の回転で発生した遠心力により、機能性部材18に半径方向の圧縮力が作用する構造となっている。この実施例の場合、界磁部1の高速回転により機能性部材18の透磁率が減少し、永久磁石13のパーミアンスが低下するために、主界磁が弱まる。
なお、漏れ磁束防止穴22に第3の実施例と同様に、感温磁性材料よりなる機能性部材12を挿入してもよい。
【0016】
図12は、本発明の第9の実施例を示す断面図で、第3の実施例とほぼ同じタイプの回転子への応用例である。
第3の実施例の永久磁石挿入穴21を周方向に連通させて、回転子コア11を外側の回転子コア11aと内側の回転子コア11bに分離し、外側の回転子コア11aと内側の回転子コア11bの角部にアリ溝を設ける。
外側の回転子コア11aの内側に内側の回転子コア11bを配置し、これらの間に生じた空間に、6個の永久磁石13を挿入し、おのおのの永久磁石13、外側の回転子コア11aと内側の回転子コア11bをアリ溝を介し、正の応力係数を持つアモルファス磁歪材料よりなる断面が鼓形の機能性部材16で連結して固定し、界磁部1を構成してある。
外側の回転子コア11aの機能性部材16の半径方向外側に位置する外つなぎ部11dの高さは、機械的に充分な強度を有し、且つ隣り合う永久磁石13同士の漏れ磁束が少なくなるようにしてある。
界磁部1の回転で発生した遠心力により、機能性部材16に半径方向の張力が作用する構造となっている。機能性部材16が正の応力係数を有するため、張力が作用すると透磁率が増大する。
以下に、図13をもとに動作を説明する。
図13は、本発明の第9の実施例の動作原理を示す断面図で、図12の1磁極ピッチ分を抜き出し、永久磁石で作られた磁束の流れを模式的に表している。
界磁部1が停止或いは低速で回転している時は、遠心力が小さく、機能性部材16に加えられる張力も小さいため、機能性部材16の張力方向の透磁率は低いままである。従って、磁束φは機能性部材16を避けるように流れ、図13(a)に示すように、その大部分は界磁部1の表面から半径方向に出ていく。
一方、界磁部1が高速で回転している時は、機能性部材16にかかる引っ張り応力も大きくなるため、機能性部材16の透磁率が高くなり、永久磁石13の端部で漏れる磁束の量、及び隣り合う永久磁石14同士の漏れ磁束が増え、図13(b)に示すように、界磁部1表面から出る磁束φの量が減少する。
このように、回転数が高くなることにより界磁部1から出る磁束の量が減少し、界磁が弱まったことと等価となる。界磁部1の回転速度が落ちると、張力の減少に伴って機能性部材16の透磁率が低下し、界磁部1から出る磁束φの量が再び多くなる。
【0017】
図14は、本発明の第10の実施例を示す断面図で、第3の実施例と同様なタイプの回転子への応用例である。
第3の実施例と異なるところは、永久磁石挿入穴21の中央部の上下にアリ溝を設け、永久磁石13を2つの永久磁石13a、13bに分割し、永久磁石13a、13b間に、上下端にアリ部を有する正の応力係数を有する鼓形のアモルファス磁歪材料よりなる機能性部材17を挿入している点である。
作用は、第9の実施例と同様に、界磁部1の回転で発生した遠心力により、機能性部材17に半径方向の張力が作用する構造となっている。
この実施例の場合、肉の厚い外側コア11aの中央部にアリ溝を設けるので、第9の実施例よりも遠心力に対する界磁部1の機械強度が向上する。
なお、第9および第10の実施例の鼓形の機能性部材16と17は、棒状のものを回転子コア11及び永久磁石13の隙間に挿入しても良いが、回転子コア11と同様に薄板形状のものを積層した構造としても良い。第8ないし第10の実施例は回転形のみに適用できる。
【0018】
【発明の効果】
上記の構成により、下記の効果がある。
(1)界磁部の温度や応力等の環境変化を利用してトルク定数や推力定数を制御し、環境変化に伴う出力特性の変化を制御するので、特別な制御や電力供給を必要とせずに弱め界磁を行うことができ、広い定出力範囲を得るに適した高効
率の永久磁石形電動機を実現することができる。
(2)界磁永久磁石に外部磁界を印加する必要がないので、永久磁石の不可逆減磁の恐れが少ない。
(3)第4から6の実施例においては、負荷状況に応じた任意の回転数で弱め界
磁ができるので、制御の自由度が増す。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例を示す断面図
【図2】(a)感温磁性材料の温度−磁束密度の関係を示すグラフ
(b)感温磁性材料の温度−飽和磁束密度の関係を示すグラフ
【図3】本発明の第2の実施例を示す断面図
【図4】(a)正の応力係数を有する磁歪材料の引っ張り応力−透磁率の関係を示すグラフ
(b)負の応力係数を有する磁歪材料の引っ張り応力−透磁率の関係を示すグラフ
【図5】(a)、(b)本発明の第2の実施例の動作原理を示す部分断面図
【図6】本発明の第3の実施例を示す断面図
【図7】本発明の第4の実施例を示す断面図
【図8】本発明の第5の実施例を示す断面図
【図9】本発明の第6の実施例を示す断面図
【図10】本発明の第7の実施例を示す断面図
【図11】本発明の第8の実施例を示す側面図
【図12】本発明の第9の実施例を示す断面図
【図13】(a)、(b)本発明の第9の実施例の動作原理を示す部分断面図
【図14】本発明の第10の実施例を示す断面図
【符号の説明】
1 回転子
11 回転子コア
11a 外側の回転子コア
11b 内側の回転子コア
11c 側つなぎ部
11d 外つなぎ部
11A コア
12、15、16、17、18、19 機能性部材
13、13a、13b 永久磁石
14 シャフト
21 永久磁石挿入穴
22 漏れ磁束防止穴
3 絶縁層

Claims (13)

  1. 移動磁界を生じるための巻線を備えた電機子と、空隙を介し対向させた、磁性体板を積層したコアに隣り合うもの同士が異極になるように所定の極ピッチで配置した複数の永久磁石を備えた永久磁石形電動機の界磁において、
    前記コアを、円板を積層した回転子コアとし、この回転子コアの表面に前記永久磁石を所定の角ピッチで固定し、おのおのの前記永久磁石間に透磁率が変化する機能性部材を備え、
    かつ、前記機能性部材が負の温度係数を有する感温磁性材料であり、前記永久磁石と前記機能性部材の外表面を薄肉円管状の正の応力係数を有する磁歪材料よりなる前記機能性部材で包絡したことを特徴とする永久磁石形電動機の界磁。
  2. 移動磁界を生じるための巻線を備えた電機子と、空隙を介し対向させた、磁性体板を積層したコアに隣り合うもの同士が異極になるように所定の極ピッチで配置した複数の永久磁石を備えた永久磁石形電動機の界磁において、
    前記コアを、円板を積層した回転子コアとし、この回転子コアの表面に前記永久磁石を所定の角ピッチで固定し、おのおのの前記永久磁石間に透磁率が変化する機能性部材を備え、
    かつ、前記機能性部材が磁性半導体材料であり、前記機能性部材を前記永久磁石と前記回転子コア間に間挿したことを特徴とする永久磁石形電動機の界磁。
  3. 前記コアを、外径側に等極ピッチ角で放射状の極中心線に直交差させて設けた永久磁石挿入穴と、前記永久磁石挿入穴間に設けた漏れ磁束防止用穴を備えた円板を積層した回転子コアとし、前記永久磁石挿入穴内に前記永久磁石を収納し、かつ前記漏れ磁束防止用穴内に、前記機能性部材を収納した請求項1または2に記載の永久磁石形電動機の界磁。
  4. 前記機能性部材が負の温度係数を有する感温磁性材料である請求項3に記載の永久磁石形電動機の界磁。
  5. 前記機能性部材が磁性半導体材料である請求項3に記載の永久磁石形電動機の界磁。
  6. 前記永久磁石の厚さを前記永久磁石挿入穴の高さより薄くし、前記永久磁石挿入穴の外径側に前記永久磁石を配置し、前記永久磁石挿入穴と前記永久磁石の間に生じる間隙に前記機能性部材を挿入した請求項3に記載の永久磁石形電動機の界磁。
  7. 前記機能性部材が、磁性半導体材料である請求項6に記載の永久磁石形電動機の界磁。
  8. 前記機能性部材が、負の応力係数を有する磁歪材料である請求項6に記載の永久磁石形電動機の界磁。
  9. 前記永久磁石挿入穴を連通させて、前記回転子コアを内外に分割し、前記漏れ磁束防止用穴に相当する部分で、正の応力係数を有する磁歪材料よりなる鼓形をした前記機能性部材により前記内外コアと前記永久磁石を固定した請求項3に記載の永久磁石形電動機の界磁。
  10. 前記永久磁石を2分割し、この永久磁石間に、正の応力係数を有する磁歪材料よりなる鼓形をした前記機能性部材を間挿した請求項3に記載の永久磁石形電動機の界磁。
  11. 前記回転子コア全体を、負の応力係数を有する磁歪材料よりなる前記機能性部材とした請求項3に記載の永久磁石形電動機の界磁。
  12. 移動磁界を生じるための巻線を備えた電機子と、空隙を介し対向させた、磁性体板を積層したコアに隣り合うもの同士が異極になるように所定の極ピッチで配置した複数の永久磁石を備えた永久磁石形電動機の界磁において、
    前記コアを平板状のコアとし、前記永久磁石と透磁率が変化する機能性部材を矩形とし、前記平板状のコア上に前記永久磁石と前記機能性部材を所定ピッチで直線上に配置してリニア形にし、かつ、前記機能性部材が、負の温度係数を有する感温磁性材料であることを特徴とする永久磁石形電動機の界磁。
  13. 移動磁界を生じるための巻線を備えた電機子と、空隙を介し対向させた、磁性体板を積層したコアに隣り合うもの同士が異極になるように所定の極ピッチで配置した複数の永久磁石を備えた永久磁石形電動機の界磁において、
    前記コアを平板状のコアとし、前記永久磁石と透磁率が変化する機能性部材を矩形とし、前記平板状のコア上に前記永久磁石と前記機能性部材を所定ピッチで直線上に配置してリニア形にし、かつ、前記機能性部材が、磁性半導体材料であることを特徴とする永久磁石形電動機の界磁。
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