JP3722161B2 - 調理器具用トッププレート - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、調理器具用トッププレートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、スムーストップと呼ばれる調理面が平らな加熱調理器具が知られている。この調理器具は、調理面を有するトッププレートの下方にハロゲンヒーターやニクロムヒーター等の発熱体が設けられ、これから放射される赤外線によって調理面上の被加熱物を加熱する電熱式調理器と、トッププレートの下方にコイルが設けられ、これが発する磁力線によって調理面上に載置された調理容器を加熱する電磁誘導加熱式調理器(IH)とに大別される。
【0003】
これらの調理器具のトッププレートとして、結晶化ガラスが広く使用されている。例えば、発熱体を有するタイプの調理器具では、発熱体等の内容物が見えないように可視光を透過せず、しかも赤外線の透過率の高い低膨張結晶化ガラスが使用される。また電磁調理器では、内容物が見えないように可視光を透過しない低膨張結晶化ガラスが使用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで上記加熱調理器具は、調理中の煮こぼれ等により、調理面に焦げ付き等の汚れが付着し易いが、このような汚れは落ち難く、例えば砂糖の焦げ付き等はスクレイパー等を用いても完全に除去できない場合がある。特に電熱式調理器では、トッププレートが非常に高温になるため、一旦焦げ付きが生じるとその除去は非常に困難であった。
【0005】
本発明の目的は、焦げ付き等の汚れが付着しても容易に除去が可能であり、しかもその効果が長期間に亙って維持される加熱調理器具用トッププレートを提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の調理器具用トッププレートは、基体が結晶化ガラスからなり、被加熱物が載置される調理面を有する調理器具用トッププレートであって、前記調理面は、フッ素が存在する表面構造を有するとともに、JIS−B0601−94に規定される表面粗さRyが0.5〜25μmであることを特徴とする。
【0007】
【作用】
本発明の調理器具用トッププレートにおいて、基体に使用される結晶化ガラスには機械的強度や耐熱性が高いことが要求される。さらに電熱式調理器具用のトッププレートには、上記以外にも発熱体等の内容物が見えないように可視光を透過せず、しかも赤外線の透過率が高いことが必要とされる。上記要求を満たすものとして、β−石英固溶体を主結晶として析出し、30〜750℃における熱膨張係数が−10〜10×10-7/℃の範囲にあり、3mmの厚さでの360〜600nmでの光線平均透過率が10%以下、600〜2500nmでの光線平均透過率が30%以上(好ましくは50%以上)である結晶化ガラスが使用できる。なお熱膨張係数がこの範囲外であると、繰り返し使用によって熱的破損を起こし易くなる。また360〜600nmでの光線平均透過率が10%を超えると、発熱体等の内容物が見え易くなって美観が損なわれる。また600〜2500nmでの光線平均透過率が30%未満であると発熱体の熱が効率良く伝わらず、調理効率が低下する。
【0008】
上記特性を有する結晶化ガラスとしては、例えば重量%でSiO2 60〜75%(好ましくは62〜70%)、Al2 O3 15〜25%(好ましくは16〜22%)、Li2 O 2.5〜5%(好ましくは3〜4.5%)、MgO 0〜3%(好ましくは0〜2%)、ZnO 0〜3%(好ましくは0〜2%)、BaO 0〜3%(好ましくは0〜2%)、TiO2 1〜7%(好ましくは1.5〜6%)、ZrO2 0〜3%(好ましくは0〜2%)、Na2 O 0〜2%(好ましくは0〜1%)、K2 O 0〜1%(好ましくは0〜0.5%)、V2 O5 0〜0.5%(好ましくは0〜0.3%)、Fe2 O3 0〜0.5%(好ましくは0〜0.3%)、NiO 0〜0.5%(好ましくは0〜0.3%)、CoO 0〜0.2%(好ましくは0〜0.1%)、V2 O5 +Fe2 O3 +NiO+CoO 0.01〜1.5%(好ましくは0.02〜0.7%)の組成を有するものが好適である。なお前記特性を損なわない限り、As2 O3 、Sb2 O3 等のガラスの溶融を容易にする成分を2%以下の割合で添加することができる。
【0009】
また電磁誘導加熱式調理器用のトッププレートとしては、機械的強度や耐熱性が高いことの他に、内容物が見えないように可視光を透過しないことが必要とされる。このような要求を満たすものとして、β−スポジュメン固溶体を主結晶として析出し、30〜750℃における熱膨張係数が−10〜30×10-7/℃の範囲にあり、3mmの厚さでの360〜600nmでの光線平均透過率が10%以下である結晶化ガラスが使用できる。なお電磁誘導加熱式調理器の場合、トッププレートは鍋等の調理容器からの熱伝導で加熱されるだけであるため、電熱式調理器のトッププレートほど高い耐熱性は要求されないが、熱膨張係数がこの範囲外になると熱的破損を起こし易くなり好ましくない。また360〜600nmでの光線平均透過率が10%を超えると、コイル等の内容物が見え易くなって美観が損なわれる。
【0010】
上記特性を有する結晶化ガラスとしては、例えば重量%でSiO2 55〜75%(好ましくは60〜70%)、Al2 O3 15〜30%(好ましくは18〜25%)、Li2 O 2.5〜6%(好ましくは3.5〜5%)、MgO 0〜1%(好ましくは0〜0.6%)、TiO2 0.5〜4.5%(好ましくは1〜3%)、ZrO2 0.5〜4.5%(好ましくは1.5〜3%)、P2 O5 0.5〜3%(好ましくは1〜2%)、Na2 O 0〜2%(好ましくは0〜1%)、K2 O 0〜1%(好ましくは0〜0.5%)の組成を有するものが好適である。なお前記特性を損なわない限り、As2 O3 、Sb2 O3 等のガラスの溶融を容易にする成分を2%以下の割合で添加することができる。
【0011】
なお基体となる結晶化ガラスは、0.1〜25μm、好ましくは0.5〜15μmの表面粗さRy(JIS−B0601−94)を有していることが望ましい。
【0012】
また本発明の調理器具用トッププレートにおいて、基体上に耐熱性の無機印刷層が形成されていてもよい。印刷層を形成することにより、所望の装飾を付与したり、被加熱物の載置場所を表示することができる。また無機印刷層を形成しておくことによって表面粗さを大きくすることができ、調理面の防汚機能を高めることが可能になる。印刷層の厚さは平均で0.1〜10μm程度であることが好ましく、0.1μmより薄いと上記した効果がなく、10μmより厚くなるとクラックが生じ易くなる等印刷層自身の安定性が悪くなる。なお無機印刷層は、ホウケイ酸ガラスと無機顔料を主成分とすることが好ましい。このような印刷層は、ホウケイ酸ガラス粉末と無機顔料粉末を含むペーストを作製し、基体の表面にスクリーン印刷等の方法で塗布した後、800〜900℃程度で焼成することにより形成できる。
【0013】
本発明において、調理器具用トッププレートの調理面はフッ素が存在する表面構造を有する。フッ素は電気陰性度が非常に高いので、フッ素で覆われた表面は表面エネルギーが低く、他の物質と付着し難い性質を示す。このためフッ素が存在する表面構造を有することにより、汚れが付着し難いか、或いは付着しても容易に除去することが可能となる。
【0014】
フッ素が存在する表面構造とは、具体的には以下のものを指す。
【0015】
▲1▼ F−Me(Meは基体又は無機印刷層表面の金属元素又は半金属元素)の表面構造を有するもの。このような表面構造は、例えば基体(及び印刷層)にフッ酸等のフッ素を含有する酸を接触させることにより得ることができる。
【0016】
▲2▼ 末端にフッ化アルキル基を有する珪素化合物がSi−O−Me結合(Meは基体又は無機印刷層表面の金属元素又は半金属元素)を介して基体又は無機印刷層と結合した表面構造を有するもの。このような表面構造は、例えばCF3 (CF2 )n CH2 CH2 Si(CH3 )(OCH3 )2 、CF3 (CF2 )n CH2 CH2 Si(OCH3 )3 、CF3 ( CF2 ) n CH2 CH2 SiNn (OCH3 )3-n 等の珪素化合物をフッ素系溶媒等に溶解させた溶液を、基体(及び印刷層)の表面に塗布することにより得ることができる。
【0017】
▲3▼ 末端にフッ化アルキル基を有する界面活性剤が吸着によって基体又は無機印刷層に固定された表面構造を有するもの。このような表面構造は、例えばCF3 (CF2 )n COONa等の界面活性剤の水溶液を、基体(及び印刷層)の表面に塗布することにより作製できる。
【0018】
また本発明において、トッププレートの調理面には基体や印刷層に起因する微細な凹凸が存在し、その表面粗さRy(JIS−B0601−94)は0.5〜25μm、好ましくは0.5〜20μmとなるように制御されている。調理面に凹凸を存在させる理由は次の通りである。即ち、凹凸のない平坦な調理面では、使用するに従って表面が一様に摩耗するため、フッ素が存在する表面構造が破壊され易く、短期間で防汚機能が劣化してしまう。ところが調理面に微細な凹凸が形成されていると、凹部の内表面は摩耗し難いために初期の表面構造が保たれ、防汚機能を長期間維持することが可能になる。なお表面粗さを上記の様に限定した理由は、0.5μm未満では上記効果を得ることができず、また25μmを超えると汚れ物質が凹部に入り込んで除去し難くなるためである。
【0019】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明の調理器具用トッププレートを説明する。
【0020】
表1及び表2は、本発明の実施例(試料No.1〜5)及び比較例(試料No.6、7)を示している。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】
試料No.1は次のようにして作製した。まず重量%でSiO2 68.0%、Al2 O3 19.0%、Li2 O 4.5%、MgO 1.0%、ZnO 1.0%、TiO2 4.1%、Na2 O 0.6%、K2 O 0.5%、V2 O5 0.1%、As2 O3 1.2%の組成を有し、主結晶としてβ−石英固溶体を析出してなり、表面粗さRyが3μmの暗褐色結晶化ガラス板を用意した。なおこの結晶化ガラス板は、30〜750℃における熱膨張係数が−3×10-7/℃、3mmの厚さでの360〜600nmでの光線平均透過率が0%、600〜2500nmでの光線平均透過率が75%であった。次いでこの結晶化ガラス板を10%のフッ酸溶液に1分間浸漬することによって、調理面がF−Me(Meは結晶化ガラス表面の金属元素又は半金属元素)の表面構造を有し、その表面粗さRyが3μmの試料を得た。
【0024】
試料No.2は次のようにして作製した。まず試料No.1の作製に用いたのと同じ結晶化ガラス板を用意した。また重量%でSiO2 60.0%、B2 O3 22.0%、BaO 4.0%、Na2 O 5.0%、K2 O 1.0%、Li2 O 1.0%、F2 1.0%の組成を有するガラス粉末と無機顔料粉末とを重量比で80:20の割合で混合した混合粉末にビークルを添加してペーストを作製した。次いでこのペーストを、結晶化ガラス板表面にスクリーン印刷した後、850℃で1時間焼成し、無機印刷層を平均6μmの厚さで形成した。その後、試料No.1で行ったのと同様にしてフッ酸溶液で処理することによって、調理面がF−Meの表面構造を有し、その表面粗さRyが5μmの試料を得た。
【0025】
試料No.3は次のようにして作製した。まず重量%でSiO2 64.0%、Al2 O3 21.3%、Li2 O 3.6%、MgO 0.5%、ZnO 1.7%、BaO 2.0%、TiO2 2.4%、ZrO2 1.7%、Na2 O 0.5%、K2 O 0.5%、V2 O5 0.3%、Sb2 O3 1.5%の組成を有し、主結晶としてβ−石英固溶体を析出してなり、表面粗さRyが3μmの暗褐色結晶化ガラス板を用意した。なおこの結晶化ガラス板は、30〜750℃における熱膨張係数が0.2×10-7/℃、3mmの厚さでの360〜600nmでの光線平均透過率が0%、600〜2500nmでの光線平均透過率が80%であった。次いで、結晶化ガラス板の表面に、CF3 (CF2 )6 CH2 CH2 Si(OCH3 )3 をフッ素系溶媒に溶解させた溶液を塗布し、乾燥させることによって、調理面が
【0026】
【化1】
【0027】
の表面構造を有するともに、表面粗さRyが3μmの試料を得た。
【0028】
試料No.4は次のようにして作製した。まず試料No.3で用いたのと同じ結晶化ガラス板を使用し、その表面に試料No.2と同様の方法で平均3μmの厚さの無機印刷層を形成した。その後、試料No.3で行ったのと同様にして、調理面が
【0029】
【化2】
【0030】
の表面構造を有するとともに、表面粗さRyが4μmの試料を得た。
【0031】
試料No.5は次のようにして作製した。まず、重量%でSiO2 65.5%、Al2 O3 22.0%、Li2 O 4.5%、MgO 0.5%、TiO2 2.0%、ZrO2 2.5%、P2 O5 1.0%、Na2 O 0.5%、K2 O 0.3%、As2 O3 1.2%の組成を有し、主結晶としてβ−スポジュメン固溶体を析出してなり、表面粗さRyが5μmの白色結晶化ガラス板を用意した。なおこの結晶化ガラス板は、30〜750℃における熱膨張係数が12×10-7/℃、3mmの厚さでの360〜600nmでの光線平均透過率が0%、600〜2500nmでの光線平均透過率が10%であった。次いで、結晶化ガラス板の表面に試料No.2と同様の無機印刷層を形成した。その後、CF3 (CF2 )5 COONaの水溶液を塗布し、乾燥させることによって、調理面がCF3 (CF2 )5 COONa…OH−Me(…は吸着を表す)の表面構造を有し、その表面粗さRyが5μmの試料を得た。
【0032】
試料No.6は、結晶化ガラス板の表面粗さRyを0μmとし、他の条件は試料No.3と同様にして作製した。このようにして得られた試料の調理面は
【0033】
【化3】
【0034】
の表面構造を有するが、その表面粗さRyは0μmであった。
【0035】
試料No.7は、表面処理を行わず、他の条件は試料No.4と同様にして作製した。なお試料の表面粗さRyは4μmであった。
【0036】
このようにして作製した各試料について、初期及びスクレイパーで500回擦った後の洗浄性(付着した汚れの除去し易さ)を次の方法で評価した。まず各試料を表面温度が約400℃になるまで加熱し、次いでその調理面上に砂糖を約1g/cm2 の割合で散布し、表面温度を約400℃に維持したまま30分間保持して砂糖を焦げ付かせた後、自然放冷した。その後、市販のクリーム状食器洗浄剤を焦げ付いた部分に塗布し、金属製スクレイパーで汚れの除去を試みた。また、金属製スクレイパーで試料の調理面を500回擦って表面を摩耗させた後、再び上記と同様の方法で砂糖を焦げ付かせ、洗浄性の評価を行った。結果を各表に示す。なお、本発明者の予備試験の結果では、この種のトッププレートでは砂糖の焦げ付きが最も洗浄し難い汚れであった。
【0037】
表から明らかな様に、本発明の実施例であるNo.1〜5の各試料は、初期及びスクレイパーで500回擦った後の洗浄性は、何れも良好であった。一方、調理面に微細な凹凸が掲載されていない試料No.6は、初期の洗浄性は良好であったものの、スクレイパーで500回擦った後は表面が摩耗して洗浄性が著しく低下した。またフッ素が存在する表面構造を有しない試料No.7の洗浄性は、初期も摩擦後も悪かった。
【0038】
これらの事実は、本発明の調理器具用トッププレートが、焦げ付き等の汚れが付着しても容易に除去が可能であり、しかもその効果が長期間に亙って維持されることを示している。
【0039】
なお、洗浄性の評価は、スクレイパーで10回軽く擦った後、表面を目視にて観察し、汚れが除去されたものを良、除去しきれなかったものを不良とした。
【0040】
【発明の効果】
本発明のトッププレートは、焦げ付き等の汚れが付着し難く、また付着しても容易に除去することができる。それゆえ電熱式調理器や電磁誘導加熱式調理器のトッププレートとして好適である。
Claims (7)
- 基体が結晶化ガラスからなり、被加熱物が載置される調理面を有する調理器具用トッププレートであって、前記調理面は、フッ素が存在する表面構造を有するとともに、JIS−B0601−94に規定される表面粗さRyが0.5〜25μmであることを特徴とする調理器具用トッププレート。
- 基体上に耐熱性の無機印刷層が形成されてなることを特徴とする請求項1の調理器具用トッププレート。
- 基体が、β−石英固溶体を主結晶として析出し、30〜750℃における熱膨張係数が−10〜10×10-7/℃の範囲にあり、3mmの厚さでの360〜600nmでの光線平均透過率が10%以下、600〜2500nmでの光線平均透過率が30%以上の結晶化ガラスからなることを特徴とする請求項1の調理器具用トッププレート。
- 基体が、β−スポジュメン固溶体を主結晶として析出し、30〜750℃における熱膨張係数が−10〜30×10-7/℃の範囲にあり、3mmの厚さでの360〜600nmでの光線平均透過率が10%以下の結晶化ガラスからなることを特徴とする請求項1の調理器具用トッププレート。
- 調理面が、F−Me(Meは基体又は無機印刷層表面の金属元素又は半金属元素)の表面構造を有することを特徴とする請求項1の調理器具用トッププレート。
- 調理面が、末端にフッ化アルキル基を有する珪素化合物がSi−O−Me結合(Meは基体又は無機印刷層表面の金属元素又は半金属元素)を介して結合された表面構造を有することを特徴とする請求項1の調理器具用トッププレート。
- 調理面が、末端にフッ化アルキル基を有する界面活性剤が吸着によって固定された表面構造を有することを特徴とする請求項1の調理器具用トッププレート。
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