JP3722083B2 - パワートレインの制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンの冷間始動時等におけるアイドル時に、点火時期をリタードさせることにより排気ガス浄化触媒の暖機ないし昇温を促進する一方、エンジンに対してトルクアシストを行ってエンジンの安定性を確保するようにしたパワートレインの制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、自動車用のエンジンから排出された排気ガスには、NOx(窒素酸化物)、CO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)等の大気汚染物質が含まれているので、これらを浄化するために、排気通路には排気ガス浄化触媒を用いた触媒コンバータが介設される。しかしながら、排気ガス浄化触媒は、その温度が活性化温度に達しないと排気ガス浄化力を十分には発揮することができない。このため、エンジンの冷間始動時等には、大気汚染物質の排出量を低減するために、排気ガス浄化触媒を迅速に高める(暖機する)必要がある。
【0003】
そこで、冷間始動時等には点火時期を通常値よりも大幅にリタードさせることにより排気ガス温度を高め、排気ガス浄化触媒の昇温を促進するようにしたエンジンの制御装置が提案されている(例えば、特開平11−107838号公報参照)。すなわち、点火時期をリタードさせれば、燃料の燃焼によって生じた熱の力学的エネルギへの変換率が低下し、その分、排気ガス中に残留する熱が増えて排気ガス温度が高くなるからである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、普通のエンジンでは、点火時期をリタードさせると燃焼安定性が低下して燃焼変動が大きくなり、エンジンの安定性が悪くなる(振動が大きくなりショック大となる)。また、エンジンの冷間始動時におけるアイドル時には、燃料が気化・霧化しにくいので、燃焼安定性が悪くなる。このため、エンジンの冷間始動時等において排気ガス浄化触媒の昇温を促進するために点火時期を通常時よりも大幅にリタードさせると、エンジンの安定性が非常に悪くなるといった問題がある。
【0005】
本発明は、上記従来の問題を解決するためになされたものであって、エンジンの冷間始動時等において、エンジンの安定性を良好に保持しつつ、排気ガス浄化触媒の暖機ないしは昇温を有効に促進することができ、エンジンのエミッション性能を有効に高めることができる手段を提供することを解決すべき課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するためになされた本発明にかかるパワートレインの制御装置は、(i)エンジンの排気ガスを浄化する排気ガス浄化触媒(例えば、三元触媒)と、エンジンにトルクを付与してトルクアシストを行うエンジン駆動手段(例えば、ISG:Integrated Starter Generator)とを備えたパワートレインの制御装置において、(ii)エンジン始動後の所定期間内におけるアイドル運転時(以下、「冷間アイドル時」という。)に、エンジン駆動手段にエンジンのトルクアシストを実行させるトルクアシスト制御手段と、(iii)冷間アイドル時に点火時期をリタードさせる点火時期制御手段とを備えていて、(iv)エンジンが非アイドル運転状態となったときに、点火時期制御手段が、点火時期を所定量以上アドバンス側にジャンプ(急変)させるようになっていることを、基本的特徴とするものである。
【0007】
このパワートレインの制御装置によれば、まず上記基本的特徴により、冷間アイドル時には、点火時期制御手段によって点火時期がリタードされるので、排気ガス温度が高められ、ひいては排気ガス浄化触媒の暖機が促進される。その際、エンジン駆動手段によって、エンジンに対してトルクアシストが行われるので、エンジンの安定性が良好に保持される。したがって、エンジンの安定性を良好に保持しつつ、排気ガス浄化触媒の暖機を有効に促進することができ、エンジンのエミッション性能を有効に高めることができる。
【0008】
ところで、本願発明者の知見によれば、エンジン駆動手段を備えたエンジンにおいては、点火時期を通常値(例えば、MBT)よりもある程度リタード側の領域に設定すると燃焼変動が大きくなる(以下、この領域を「燃焼変動大領域」という。)。しかしながら、同じ充填効率ceの下ではこの燃焼変動大領域よりリタード側の領域では、再び、燃焼変動の絶対値が小さくなり、エンジンの安定性が良好となる(以下、この領域を「燃焼変動小領域」という。)。したがって、冷間アイドル時には、点火時期を、この燃焼変動小領域までリタードさせるのが好ましい。そして、エンジンがこのような状態から非アイドル運転状態に移行したときには、点火時期が燃焼変動大領域をジャンプしてアドバンスさせられるので、点火時期が、燃焼変動の絶対値が大きく、エンジンの安定性が低い領域にとどまるのを回避することができる。
【0009】
そこで、上記パワートレインの制御装置においては、上記基本的特徴に加えて、トルクアシスト制御手段が、点火時期のアドバンス側への上記ジャンプによるエンジンの出力トルクの変化を抑制するようにトルクアシスト量を制御(低減)するようになっている。このため、エンジンがアイドル運転状態から非アイドル運転状態に移行したときに、点火時期のアドバンスによるトルクの増加が、トルクアシストの低減によって抑制される(打ち消される)ので、トルクショックが発生しない。
【0010】
さらに、上記パワートレインの制御装置においては、排気ガス浄化触媒の温度又はこれに対応する温度(以下、単に「触媒温度」という。)を検出する温度検出手段が設けられ、触媒温度が所定温度(以下、「基準温度」という。)以下のときにおける上記点火時期リタード量が、触媒温度が基準温度より高いときの上記点火時期リタード量よりも大きい値に設定され、トルクアシスト制御手段が、触媒温度が基準温度以下のときに限り、エンジンの出力トルクの変化を抑制する上記トルクアシスト量の制御を実行するようになっている。このため、不必要なトルクアシストを回避することができる。
【0011】
上記パワートレインの制御装置においては、点火時期制御手段が、触媒温度が基準温度より高くなったときに、目標点火時期を所定値以上アドバンス側にジャンプさせ、該目標点火時期が実現されるように点火時期を制御するようになっているのが好ましい。このようにすれば、点火時期が燃焼変動大領域をジャンプしてアドバンスするので、点火時期が、燃焼変動が大きくエンジンの安定性が低い領域にとどまるのを回避することができる。
【0012】
上記パワートレインの制御装置においては、点火時期制御手段が、目標点火時期をアドバンス側にジャンプさせる際に、エンジンの最大トルクを達成することができるMBTよりもリタード側のところにジャンプさせ、この後目標点火時期をMBTに徐々に接近させるようになっているのが好ましい。このようにすれば、点火時期が急変しないので、トルクショックが発生しない。
【0013】
上記パワートレインの制御装置においては、点火時期制御手段が、点火時期のジャンプ先を、充填効率ceが高いときほどMBTとの差が小さくなるように設定するようになっているのが好ましい。一般に、MTBは、充填効率ceが高くなるほどリタード側に移行する。したがって、例えばジャンプ先を、充填効率ceにかかわらず一定の点火時期(リタード量)に設定しておけば、該ジャンプ先は、自然に、充填効率ceが高いときほどMBTとの差が小さくなることになる。このようにすれば、エンジンの燃焼変動大領域を避けながら、点火時期の変化量を最小限に抑えることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明する。
図1に示すように、パワートレインを構成するエンジン1は、吸気弁2が開かれたときに、吸気ポート3から燃焼室4内に混合気を吸入するようになっている。そして、この燃焼室4内の混合気は、ピストン5によって圧縮され、所定のタイミングで、点火コイル6によって起動される点火プラグ(図示せず)により点火されて燃焼する。燃焼ガスすなわち排気ガスは、排気弁7が開かれたときに排気ポート8に排出される。なお、点火コイル6は、点火時期を、所定の範囲内で自在にアドバンス(進角)又はリタード(遅角)させることができる。
【0015】
このような過程が繰り返され、ピストン5は往復運動をする。このピストン5の往復運動は、コネクチングロッド(図示せず)によりクランク軸9の回転運動に変換され、このクランク軸9の回転力がエンジン1の出力トルクとなる。なお、吸気弁2の開閉タイミングは、吸気側VVT機構10(可変バルブタイミング機構)により変化させられる。また、排気弁7の開閉タイミングは、排気側VVT機構11(可変バルブタイミング機構)により変化させられる。なお、吸気側又は排気側のVVT機構は、普通のカム動弁機構であってもよい。
【0016】
吸気ポート3には、吸気通路12を介して燃料燃焼用のエアが供給される。そして、吸気通路12には、エアの流れ方向にみて上流側から順に、エア中のダストを除去するエアクリーナ13と、吸入空気量を検出するエアフローセンサ14と、アクセルペダル(図示せず)と連動して開閉されるスロットル弁15と、エアの流れを安定化させるサージタンク16と、吸気通路12内ないしは吸気ポート3内のエア中に燃料(例えば、ガソリン)を噴射して混合気を生成するインジェクタ17とが設けられている。また、吸気通路12には、スロットル弁15を迂回するISC通路18(バイパスエア通路)が設けられ、このISC通路18にはISCバルブ19が介設されている。アイドル時には、このISC通路18を介してエアが供給される。また、ISCバルブ19の開度を増減することにより、アイドル回転数を制御することができる。なお、エンジン1は、筒内噴射方式であってもよい。
【0017】
他方、排気ポート8内の排気ガスは、排気通路20を介して外部(大気中)に排出される。この排気通路20には、排気ガスを浄化する排気ガス浄化触媒を用いた触媒コンバータ21が介設されている。ここで、排気ガス浄化触媒としては、例えば、NOx、HC、CO等を浄化する三元触媒等が用いられる。この排気ガス浄化触媒は、その温度が活性化温度(例えば、360〜400℃)以上になると十分な浄化力を発揮するが、その温度が活性化温度より低いと、十分な浄化力は得られない。
【0018】
このパワートレインには、コンピュータからなるコントロールユニットCが設けられている。コントロールユニットCは、エンジン1、あるいは後で説明するISG25等の総合的な制御装置であって、各種制御情報に基づいて種々制御を行うようになっている。具体的には、コントロールユニットCには、エアフローセンサ14によって検出される吸入空気量、スロットルセンサ22によって検出されるスロットル開度、クランクセンサ23によって検出されるクランク角、水温センサ24によって検出されるエンジン水温等の各種制御情報が入力される。そして、コントロールユニットCは、これらの制御情報に基づいて、インジェクタ17の燃料噴射量及び噴射タイミングの制御、点火コイル6(点火プラグ)の制御すなわち点火時期制御、ISGバルブ19の開閉制御すなわちバイパス空気量の制御、ISG25の制御すなわちトルクアシスト量の制御、VVT機構10、11の制御すなわちバルブタイミング制御等を行う。
【0019】
図2(a)に示すように、このパワートレインには、エンジン1にトルクを付与してトルクアシストを行うISG25が設けられている。このISG25は、スタータとオルタネータとが一体化されてなるモータないし発電機であり、ベルト26を介してクランク軸9と一体回転するようになっている。このISG25に対しては、36Vバッテリ27と、12Vバッテリ28と、インバータ29と、DC/DCコンバータ30とが設けられている。なお、このエンジン1では、普通のスタータ31もギヤ機構32を介してクランク軸9に連結されている。クランク軸のトルクは、トルクコンバータ33(又はクラッチ)を介して、油圧式の自動変速機(図示せず)に伝達される。この自動変速機にはオイルポンプ34が付設されている。
なお、図2(b)に示すように、ISG25を、ベルト26を介してクランク軸9に連結するのではなく、直接クランク軸9と連結してもよい。
【0020】
前記のとおり、コントロールユニットCはこのパワートレインの各種制御を行うようになっている。しかし、コントロールユニットCによるパワートレインの通常の制御は一般に知られており、またかかる通常の制御は本願発明の要旨とするところでもないのでその説明を省略し、以下では本願発明の要旨にかかる、冷間始動時等におけるアイドル時、すなわち冷間アイドル時に、エンジン1の燃焼安定を保持しつつ排気ガス浄化触媒21の暖機ないし昇温を促進するための、点火時期及びアシストトルクの制御(以下、「冷間始動アイドル制御」という。)を説明する。なお、ここで「冷間始動」とは、エンジン1が未暖機状態から始動される場合を意味し、寒冷状態からの始動に限定されるものではない。
【0021】
まず、この冷間始動アイドル制御の概要を説明する。
図9に、エミッション性能、排気ガス熱量、エンジントルク及び燃焼変動の点火時期に対する変化特性の一例を示す。図9から明らかなとおり、エミッション性能は、点火時期がリタードするほど良くなり、また充填効率ceが低くなるほど良くなる。排気ガス熱量ないし排気ガス温度は、点火時期がリタードするほど良くなり、また充填効率ceが高くなるほど良くなる(高くなる)。エンジンの出力トルク(エンジントルク)は、点火時期がアドバンスするほど大きくなり、また充填効率ceが高くなるほど大きくなる。燃焼変動(絶対値)は、ある点火時期のときに最大(最悪)となり、これよりリタード側でもアドバンス側でも低くなる。なお、燃焼変動が最大となる点火時期は充填効率ceが高いときほどリタード側に移行する。
【0022】
つまり、エンジントルクが負(マイナス)となる領域まで点火時期をリタードさせると、排気ガス熱量が多くなり、エミッション性能が良好となる。また、燃焼変動が小さくなる。
なお、点火時の混合気温度は、ピストン位置の影響を受けるため、点火時期がリタードするほど混合気温度が低下する。このため、混合気が着火しにくくなり、失火が生じやすくなる。つまり、リタード量が非常に大きいところには失火領域が形成される。この失火限界は、充填効率ceが高いときほどリタード側に移行する。
【0023】
図3は、このような関係をまとめて示した図であり、ISG25によってトルクアシストが行われている場合における、燃焼変動等の、点火時期と充填効率とに対する変化特性を示している。
図3に示すように、ISG25によってトルクアシストが行われているエンジン1においては、最大トルクを得ることができるMBT(ラインG1)よりもリタード側に、燃焼変動が大きくなりエンジンの安定性が悪くなる燃焼変動大領域R3が存在する。そして、この燃焼変動大領域R3よりリタード側には、燃焼変動が小さくなりエンジンの安定性が良好となる燃焼変動小領域R2が存在する。この燃焼変動小領域R2よりリタード側には、失火が生じやすい失火領域R1が存在する。なお、図3中において、ラインG2はエンジンの発生トルクが0の状態を示している。
【0024】
そこで、この冷間始動アイドル制御においては、冷間アイドル時には、エンジン1に対してISG25によりトルクアシストを行いつつ、点火時期を、エンジンの燃焼変動が大きい燃焼変動大領域R3を避けて、燃焼変動が小さい燃焼変動小領域R2内の所定の時期(冷間アイドル用点火時期)に設定するようにしている。ここで、冷間アイドル用点火時期は、燃焼変動小領域R2内においてアドバンス側に設定される。点火時期を不必要にリタードさせると、このパワートレインを搭載した車両の発進時における点火時期の変化量(アドバンス量)が大きくなり、トルクショックの増加を招くからである。また、点火時期を過剰にリタードさせると、点火時期が失火領域R1に入ってしまうおそれもある。
【0025】
図3から明らかなとおり、燃焼変動大領域R3と燃焼変動小領域R2との境界は、充填効率ceが高いときほどリタード側に移行する。したがって、冷間アイドル用点火時期は、充填効率ceが高いときほどリタード側に設定する必要がある。
【0026】
コントロールユニットによってこのような冷間始動アイドル制御が行われるので、冷間アイドル時には、エンジン1の安定性を良好に保持しつつ、点火時期のリタードにより排気ガス温度を高めることができる。これにより、排気ガス浄化触媒の暖機を促進することができる。よって、エンジン1の安定性を良好に保持しつつ、排気ガス浄化触媒の暖機を有効に促進することができ、エンジン1のエミッション性能を有効に高めることができる。
【0027】
以下、図4に示すフローチャートを参照しつつ、コントロールユニットCによる冷間始動アイドル制御の具体的な制御方法を説明する。
図4に示すように、この冷間始動アイドル制御では、まずステップS1〜S3で、それぞれ、エンジン始動後所定時間内であるか否かと、アイドル運転時であるか否かと、触媒温度が基準温度(所定値)以下であるか否かとが判定される。なお、ステップS1における所定時間は、例えば30〜90秒の範囲内の適当な値に設定される。また、ステップS3における基準温度(所定値)は、排気ガス浄化触媒の性状に応じて、例えば360〜400℃の範囲内の適当な値に設定される。
【0028】
そして、エンジン始動後所定時間内であり、アイドル運転時であり、かつ触媒温度が所定値以下であれば(ステップS1〜S3がすべてYES)、ステップS4〜S8で、点火時期が燃焼変動小領域R2内の冷間アイドル用点火時期までリタードされ(以下、「冷間リタード」という。)、かつエンジン1に対してトルクアシストが行われる。
【0029】
図5(a)〜(c)に、エンジン始動後所定時間内において、アイドル状態ないしは触媒温度が変化した場合の、制御状態の変化の具体例を示す、図5(a)に示す具体例では、触媒温度が基準温度T0に達した時点で冷間リタードが停止されている(実行スイッチがオフされる)。図5(b)に示す具体例では、非アイドル状態となったとき(アイドルスイッチがオフされる)に、冷間リタードが停止されている。なお、この後、再びアイドル状態になったときには、触媒温度がすでに基準温度T0を超えているので、冷間リタードは実施されない。図5(c)に示す具体例では、一旦非アイドル状態となった後、再びアイドル状態となったときには、触媒温度はまだ基準温度T0に達していないので、冷間リタードが再度実施されている。そして、触媒温度が基準温度T0に達した時点で冷間リタードが停止されている。
【0030】
具体的には、まずステップS4で充填効率ceが演算される。続いて、ステップS5で、充填効率ceに応じて目標点火時期(リタード量)が、予め設定されたマップから索引(検索)される。このマップにおいては、充填効率ceが高いときほど点火時期がリタード側に設定される(リタード量が大きくなる)。かくして、この目標点火時期が実現されるように、点火コイル6が制御される。なお、ステップS5において、充填効率ceが高いときほど点火時期がリタード側に設定されるが、これは、エンジン1がISG25によってトルクアシストされるので、充填効率ceと点火時期(点火リタード量)とを広い範囲で自在に選択することができるからである。
【0031】
次に、ステップS6で、アイドル回転数を維持するのに必要なエンジンの要求トルクが演算される。続いて、ステップS7で、エンジン1の出力トルクが演算される。そして、ステップS8で、ISG25によるトルクアシスト量が演算される。ここで、エンジン1の要求トルクと出力トルクの差がトルクアシスト量である。かくして、このトルクアシスト量が実現されるよう、ISG25の出力が、その電流を増減するなどして制御される。この後、ステップS1に復帰する。
【0032】
ステップS1〜S3で、エンジン始動後所定時間内でないと判定され、アイドル運転時でないと判定され、又は触媒温度が基準温度(所定値)以下でないと判定された場合は(ステップS1〜S3のいずれかがNO)、ステップS9で、この制御ルーチンの前回処理時に、ステップS1〜S3の条件がすべて成立していたか否か、すなわちステップS1〜S3がすべてYESであったか否かが判定される。
【0033】
ステップS1〜S3の条件がすべて成立している場合は、ステップS1〜S8を繰り返し実行している状態から初めて離脱して、このステップS9が実行されたことになる。この場合、ステップS10〜S14が1回だけ実行され、点火時期がMBTよりはリタード側の所定値までジャンプさせられる。なお、この所定値は、燃焼変動大領域R3よりアドバンス側のエンジンの安定性が良好な領域に設定される。
【0034】
具体的には、ステップS10で、充填効率ceが演算される。続いて、ステップS11で、点火時期がMBTよりリタード側の所定値までジャンプさせられる。これにより、点火時期は、燃焼変動大領域R3を飛び越してアドバンスする。したがって、点火時期が燃焼変動大領域R3にとどまるのが回避される。
【0035】
ここで、点火時期のジャンプ先は、充填効率ceにかかわらず一定の点火時期(リタード量)に設定される。このため、ジャンプ先は、充填効率ceが高いときほど、MBTとの差が小さくなる。これにより、エンジン1の燃焼変動大領域を避けながら、点火時期の変化量を最小限に抑えることができる。
【0036】
次に、ステップS12で、アイドル回転数を維持するのに必要なエンジンの要求トルクが演算される。続いて、ステップS13で、エンジン1の出力トルクが演算される。そして、ステップS14で、ISG25によるトルクアシスト量が演算される。かくして、このトルクアシスト量が実現されるよう、ISG25の出力が制御される。この後、ステップS1に復帰する。
【0037】
ステップS9で、この制御ルーチンの前回処理時に、ステップS1〜S3の条件がすべて成立していたのではないと判定された場合、すなわちステップS10〜S14がすでに1回実行された後は、ステップS15、S16で、点火時期が徐々にMBTに近づけられる。具体的には、ステップS15で点火時期がMBTに向けて徐々にアドバンス(進角)される。続いて、ステップS16で、ISG25によるトルクアシストが0に向けて徐々に減算される。
【0038】
このように、点火時期をアドバンス側にジャンプさせる際に、まずMBTよりリタード側のところにジャンプさせ、この後点火時期をMBTに徐々に接近させるようにしているので、点火時期が急変せず、トルクショックが発生しない。また、点火時期のアドバンスと並行してISG25によるトルクアシストの度合いを低下させるようにしているので、点火時期のアドバンスによるトルクの増加が、トルクアシストの低下によるトルクの減少によって打ち消され、トルクショックの発生がより有効に防止される。この後、ステップS1に復帰する。
【0039】
図6〜図8に、冷間リタードから通常運転状態への復帰時におけるスロットル開度TVO、トルク予測値、バイパス空気量(ISCエア量)、点火時期、エンジントルク及びISG25によるトルクアシスト量の経時変化の具体例を示す。図6は、アイドル状態から非アイドル状態に変化した場合において、バイパス空気量が安定するまで待機してから冷間リタードが停止され、点火時期がジャンプした場合の例である。これに対して、図7は、アイドル状態から非アイドル状態に変化した時点で直ちに冷間リタードが停止され、点火時期がジャンプした場合の例である。図8は、触媒温度が基準温度(所定温度)に達して冷間リタードが停止され、点火時期がジャンプした場合の具体例である。
【0040】
以上、この冷間始動アイドル制御を行うことにより、冷間アイドル時には、エンジン1の安定性を良好に保持しつつ、点火時期のリタードにより排気ガス温度を高めることができ、ひいては排気ガス浄化触媒の暖機を促進することができる。よって、エンジン1の安定性を良好に保持しつつ、排気ガス浄化触媒の暖機を有効に促進することができ、エンジン1のエミッション性能を有効に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明にかかるパワートレインを構成するエンジンのシステム構成図である。
【図2】 (a)、(b)は、それぞれ、図1に示すエンジンに対してトルクアシストを行うISG等の構成を示す図である。
【図3】 ISGによってトルクアシストが行われている場合における、燃焼変動等の、点火時期と充填効率とに対する変化特性を示す図である。
【図4】 冷間アイドル制御の制御方法を示すフローチャートである。
【図5】 (a)〜(c)は、それぞれ、冷間リタードが停止される際の制御状態を示すグラフである。
【図6】 アイドル状態から非アイドル状態に移行して、冷間リタードから通常運転状態に復帰する際の、各種状態の経時変化を示す図である。
【図7】 アイドル状態から非アイドル状態に移行して、冷間リタードから通常運転状態に復帰する際の、もう1つの各種状態の経時変化を示す図である。
【図8】 触媒温度が基準温度に達して、冷間リタードから通常運転状態に復帰する際の、各種状態の経時変化を示す図である。
【図9】 エミッション性能、排気ガス熱量、エンジントルク及び燃焼変動の点火時期に対する変化特性を示すグラフである。
【符号の説明】
C…コントロールユニット、1…エンジン、2…吸気弁、3…吸気ポート、4…燃焼室、5…ピストン、6…点火コイル、7…排気弁、8…排気ポート、9…クランク軸、10…吸気側VVT機構、11…排気側VVT機構、12…吸気通路、13…エアクリーナ、14…エアフローセンサ、15…スロットル弁、16…サージタンク、17…インジェクタ、18…ISC通路、19…ISCバルブ、20…排気通路、21…触媒コンバータ(排気ガス浄化触媒)、22…スロットルセンサ、23…クランクセンサ、24…水温センサ、25…ISG、26…ベルト、27…36Vバッテリ、28…12Vバッテリ、29…インバータ、30…DC/DCコンバータ。
Claims (4)
- エンジンの排気ガスを浄化する排気ガス浄化触媒と、エンジンにトルクを付与してトルクアシストを行うエンジン駆動手段とを備えたパワートレインの制御装置において、
エンジン始動後の所定期間内におけるアイドル運転時に、エンジン駆動手段にエンジンのトルクアシストを実行させるトルクアシスト制御手段と、
エンジン始動後の所定期間内におけるアイドル運転時に、点火時期をリタードさせる点火時期制御手段とを備えていて、
エンジンが非アイドル運転状態となったときに、点火時期制御手段が、点火時期を所定量以上アドバンス側にジャンプさせるようになっているとともに、
トルクアシスト制御手段が、点火時期のアドバンス側への上記ジャンプによるエンジンの出力トルクの変化を抑制するようにトルクアシスト量を制御するようになっていて、
さらに、排気ガス浄化触媒の温度又はこれに対応する温度を検出する温度検出手段が設けられ、
上記温度が所定温度以下のときにおける上記点火時期リタード量が、上記温度が上記所定温度より高いときの上記点火時期リタード量よりも大きい値に設定され、
トルクアシスト制御手段が、上記温度が上記所定温度以下のときに限り、エンジンの出力トルクの変化を抑制する上記トルクアシスト量の制御を実行するようになっていることを特徴とするパワートレインの制御装置。 - 点火時期制御手段が、上記温度が上記所定温度より高くなったときに、目標点火時期を所定値以上アドバンス側にジャンプさせ、該目標点火時期が実現されるように点火時期を制御するようになっていることを特徴とする請求項1に記載のパワートレインの制御装置。
- 点火時期制御手段が、目標点火時期をアドバンス側にジャンプさせる際に、エンジンの最大トルクを達成することができるMBTよりもリタード側のところにジャンプさせ、この後目標点火時期をMBTに徐々に接近させるようになっていることを特徴とする請求項2に記載のパワートレインの制御装置。
- 点火時期制御手段が、点火時期のジャンプ先を、充填効率が高いときほどMBTとの差が小さくなるように設定するようになっていることを特徴とする請求項3に記載のパワートレインの制御装置。
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