JP3721840B2 - スリット付チューブの製造方法及び製造装置 - Google Patents

スリット付チューブの製造方法及び製造装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
この発明に係るスリット付チューブの製造方法及び製造装置は、自動車用操舵装置を構成するスリット付チューブを製造する為の技術の改良に関し、安価でしかも品質の良いスリット付チューブを実現するものである。尚、このスリット付チューブは、自動車用操舵装置を構成するステアリングシャフト、或は中間シャフトを構成するアウターシャフトとして利用する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用操舵装置は従来から、例えば図15に示す様に構成している。ステアリングシャフト1は、下部ブラケット2及び上部ブラケット3により図示しない車体に支持するステアリングコラム4の内側に、回転自在に支持されている。上記ステアリングシャフト1の後端部でこのステアリングコラム4の後端開口部から突出した部分には、図示しないステアリングホイールを固定する。このステアリングホイールの動きは、上記ステアリングシャフト1から、自在継手5、中間シャフト6を介して、図示しないステアリングギアに伝達する。
【0003】
上述の様な自動車用操舵装置を構成する、上記ステアリングシャフト1、中間シャフト6及びステアリングコラム4は従来から、衝突時に運転者を保護する事を目的として、衝撃に基づいて全長を縮める、所謂コラプシブル構造としている。図16は、この様な目的で全長を収縮自在としたステアリングシャフト1aの構造の1例を示している。このステアリングシャフト1aは、前半部(図16の左半部)を構成するインナーシャフト7と後半部(図16の右半部)を構成するアウターシャフト8とを、全長を収縮自在に組み合わせている。尚、図15に示した操舵装置に組み込んだステアリングシャフト1も、衝撃に基づいて全長を縮める構造ではあるが、基本構造が本発明の対象となるものとは相違しているので、詳しい説明は省略する。又、図16に示した構造は、インナーシャフト7を前半部に、アウターシャフト8を後半部に、それぞれ配置しているが、この配置は前後逆でも良い。従って、以下に述べるインナー、アウター、前後の記載に就いては、あくまでも図示の例に限るものであって、本発明を限定するものではない。
【0004】
図16に示したステアリングシャフト1aは、中空円管状のインナーシャフト7の後端部と、図17に詳示する、やはり中空円管状のアウターシャフト8の前端部とを、回転力の伝達自在に、且つ軸方向に亙る相対変位自在に結合して成る。即ち、上記インナーシャフト7の後端部に絞り加工により設けた小径部9の外周面に雄セレーション10を形成している。又、上記アウターシャフト8の前端部にやはり絞り加工により設けた小径部11の内周面に、雌セレーション12を形成している。そして、これら雄セレーション10と雌セレーション12とを係合させる事により、上記両シャフト7、8同士の間での回転力の伝達を自在としている。
【0005】
又、上記アウターシャフト8の前端部に設けた小径部11の前半部には、図17に詳示する様に、それぞれがこの小径部11の前端縁に開口する複数本の(図示の例では4本)のスリット13、13を、円周方向に亙って互いに等間隔で形成している。そして、円周方向に隣り合うスリット13、13同士の間部分に、直径方向内方に向く弾力を付与している。従って、上記雄セレーション10と雌セレーション12とを係合させた状態では、これら雄セレーション10と雌セレーション12との係合部ががたつく事がなくなる。これに対して、衝突時には上記両シャフト7、8同士が軸方向に相対変位する事を許容し、上記ステアリングシャフト1aの全長が縮まる様にする。
【0006】
上述の様なステアリングシャフト1aを構成するアウターシャフト8は、例えば図18〜19に示す様な工程で、断面が円形の中空管である素材に絞り加工を施す事により造る。先ず、図18(a)に示す様な中空円管状の素材14を用意する。そして、第一工程でこの素材14の前半部(図18の左半部)に、プレス押し込み加工等の縮径加工を施す事により小径部11を形成し、図18(b)に示す様な第一中間素材16とする。この第一中間素材16の小径部11の内径r11は、上記小径部11の内周面に形成すべき雌セレーション12{図18(d)(e)}のピッチ円直径より僅かに小さく造る。尚、この雌セレーション12の加工方法に関しては、本発明の要旨とは関係しないし、特願平10−51880号に詳しく記載してあるので、詳しい説明は省略する。
【0007】
次いで、第二工程として、上記小径部11の先半部で円周方向等間隔位置に、それぞれがこの小径部11の先端面に開口するスリット13、13を形成して、図18(c)に示す様な第二中間素材17とする。この様に、スリット13、13を形成する方法が、本発明の対象となる。
次いで、第三工程として、上記第二中間素材17のうちの上記小径部11の内周面部分に、図19(a)〜(c)に示す様に、外周面に雄セレーション状の凹凸形状を有するパンチ18を押し込む事により、図18(d)(e)に示す様な、上記小径部11の内周面に雌セレーション12を有する、アウターシャフト8とする。上記パンチ18の押し込み作業の際、上記小径部11は拘束ダイス19に挿入して、外周面を抑え付けておく。
【0008】
尚、上記パンチ18により上記小径部11の内周面に雌セレーション12を形成する際に、この小径部11は直径方向外方に逃げようとするが、上記拘束ダイス19により拘束されている為逃げる事ができず、上記小径部11の内周面に精密な形状を有する上記雌セレーション12を形成できる。上記各スリット13、13をプレスによる打ち抜き加工で形成した場合には、加工時に生じる残留応力の影響で、上記小径部11の形状が多少なりとも歪んでいる。この歪みが小さい場合には、上記雌セレーション12を形成する際に於ける、上記パンチ18の外周面と拘束ダイス19の内周面との間での拘束による高い静水圧効果により、上記雌セレーション12の形成加工中に矯正される。
【0010】
又、上述の様に上記小径部11に上記パンチ18を押し込む事により、この小径部11の内周面に上記雌セレーション12を加工すると、加工完了時に於いてこの小径部11の形状は、図18(d)に示す様に先細のテーパ状になる。そこで、この小径部11の前端部を拡径する方向に押し広げて、この小径部11の前半部の形状及び寸法を矯正する。この様な矯正作業は、この小径部11の前半部のスプリングバック量を見込んで広げ量を設定する事により行なう。この様にして矯正作業を行なえば、上記小径部11の前半部の寸法並びに形状精度を良好にできる。
【0011】
上述の様にして得られた、図18(e)に示す様な形状を有するアウターシャフト8は、別途製作したインナーシャフト7とセレーション係合させて、自動車用操舵装置を構成するステアリングシャフト或は中間シャフトとする。尚、上記雌セレーション12とインナーシャフト7の雄セレーション10とは、隙間がない状態で組立て、且つ軸方向には相互に摺動できる程度に、上記アウターシャフト8側にばね力を付与する。この様なばね力は、上記各スリット13、13の間に存在する部分のばね効果を利用して得る。従って、車輪から伝わる振動を、上記雌セレーション12と雄セレーション10との嵌合部での微小な軸方向の動きにより吸収し、上記振動がステアリングホイールにまで伝わる事を防止できる。又、自動車の衝突時に収縮して、運転者を保護する。
【0012】
上述の様なスリット13、13を有するアウターシャフト8の様な、スリット付チューブを造るべく、素材となるチューブの端部にスリットを加工する作業は、フライス盤等を使用した切削加工、或はプレスによる打ち抜き加工により行なう。このうち、切削加工による場合は、加工に伴う変形を低く抑えて、高品質のスリット付チューブを得られるが、加工時間を要し、加工コストが嵩む事が避けられない。これに対して、打ち抜き加工の場合には、加工コストを低く抑えられる代わりに、加工に伴う変形が大きくなる。この変形が大きくなると、前述の図18(d)(e)、図19に示した様に、スリット付チューブであるアウターシャフト8の内周面に雌セレーション12を加工する作業時に、この内周面とパンチ18との係合状態が不正規になり、品質の良い雌セレーション12の加工を行なえなくなる。打ち抜き加工後に変形分を修正する、矯正作業を行なう事は可能であるが、工程が増えて加工コストが嵩むだけでなく、変形の程度が著しい場合には、必ずしも品質の良いスリット付チューブを得られない場合もある。
【0013】
そこで、図20(a)に示す様に、アウターシャフト8の先端寄り部分に、環状部20を残してスリット13a、13aを形成した後、同図(b)に示す様にこの環状部20を切断除去して、先端縁に開口するスリット13、13を得る事が行なわれている。この様な方法によれば、スリットの打ち抜き加工時に上記アウターシャフト8の先端部の形状が歪む事を防止して、高品質のアウターシャフト8を得られる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
図20に示す様な方法で、先端縁側に開口したスリット13、13を加工する場合には、加工工程の増大によりコストが嵩むだけでなく、環状部20を除去する分、材料の歩留が悪化する。この為、スリット付チューブのコストが嵩む事が避けられない。
本発明のスリット付チューブの製造方法及び製造装置は、この様な事情に鑑みて、高品質のスリットチューブを低コストで得るべく発明したものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明のスリット付チューブの製造方法及び製造装置は、中空円管状のチューブの軸方向端部に、それぞれの一端部をこのチューブの軸方向端面に開口させたスリットを形成する為に使用する。
このうち、請求項1に記載したスリット付チューブの製造方法は、加工すべきスリットに見合う幅寸法を有する先端部を備え、この先端部の先端面で上記チューブの外周面に対向する面をこのチューブの中心軸に対し、上記スリットの開口端に向かう程この中心軸から遠ざかる方向に傾斜させると共に、上記チューブの外周面に対向する面のうちでこの中心軸から最も離れた部分を、このチューブの軸方向端面よりも軸方向外方に外れた部分に位置させたパンチを、このチューブの直径方向に関して外径側から内径側に向け移動させる。そして、このパンチの先端部によりこのチューブの端部に上記スリットを、このパンチを上記チューブの内径側に移動させる動作のみで、上記軸方向端面の開口から遠い奥端側からこの開口に向け連続して形成する。
又、請求項3に記載したスリット付チューブの製造装置は、ダイスと、1対のパンチとを備える。このうちのダイスは、上記チューブの軸方向端部にほぼ隙間なく挿入自在で、上記スリットを打ち抜く事により生じた打ち抜き滓を受け入れ自在なダイス孔を直径方向に亙って形成した円柱状である。又、上記各パンチは、上記ダイスの直径方向に関して両側に、このダイスを挟む状態で配置され、このダイスに対する同期した遠近動を自在とされている。そして、上記各パンチの先端部は、加工すべきスリットに見合う幅寸法を有し、上記チューブの外周面に対向する先端面をこのチューブの中心軸に対し、上記スリットの開口端に向かう程この中心軸から遠ざかる方向に傾斜させると共に、上記チューブの外周面に対向する面のうちでこの中心軸から最も離れた部分を、このチューブの軸方向端面よりも軸方向外方に外れた部分に位置させたものである。
又、好ましくは、上記チューブの円周方向反対側の少なくとも2個所位置を同時に打ち抜いて、上記スリットを形成する。
【0016】
【作用】
上述の様に構成する本発明のスリット付チューブの製造方法及び製造装置によれば、チューブの端部へのスリットの加工を、このスリットの奥端側から開口端側に向け徐々に行なえる。従って、パンチから被加工物であるチューブに加わる荷重を低減して、加工に伴うこのチューブの歪みを低く抑える事ができる。
特に、円周方向反対側2個所位置を同時に打ち抜けば、上記チューブの歪みをより一層少なく抑える事ができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
図1〜9は、本発明の実施の形態の1例を示している。先ず、図1にその全体構成を示した、本発明のスリット付チューブの製造装置21に就いて説明する。この製造装置21は、互いに平行に配置された基板22と天板23とを備える。このうちの天板23は基板22の上方に、図示しないガイドロッドにより案内した状態で昇降自在に支持すると共に、やはり図示しないばねにより、上方に向く弾力を付与している。この様な製造装置21の使用時には、上記基板22を図示しないプレス装置のテーブル上に載置し、上記天板23の上面にこのプレス装置のラム(押圧部)を対向させる。
【0018】
上記基板22の中央部上面には、ダイス24を、この基板22の上面に対し平行に支持している。このダイス24は円柱状で、被加工物であり端部にスリット13、13(後述する図4〜8参照)を形成すべきチューブ25(前述のアウターシャフト8に相当する)に隙間なく挿入自在な外径を有する。又、上記ダイス24には、上記スリット13、13を打ち抜く事により生じた打ち抜き滓26、26(後述する図4、5、8、9参照)を受け入れ自在なダイス孔27を、直径方向に亙って形成している。このダイス孔27の幅W27は、上記各スリット13、13の幅W13よりも僅かに大きい(W 27 >W 13 。又、上記ダイス孔27は、上記基板22の上面に対し平行に配置している。
【0019】
又、この基板22の上面で上記ダイス24を直径方向反対側から挟む位置には、1対のガイドブロック28、28を設けている。そして、これら両ガイドブロック28、28にそれぞれパンチ29、29を、上記基板22の上面に対し平行移動自在に支持している。又、これら両パンチ29、29は、互いに同心に配置している。更に、これら両パンチ29、29の基端部は、それぞれ被駆動側カムブロック30、30に結合固定している。一方、上記天板23の下面でこれら両カムブロック30、30の上方位置には、駆動側カム31、31を固定している。そして、これら両駆動側カム31、31と、上記各被駆動側カムブロック30、30に形成したカム孔32、32とを係合させている。これら各駆動側カム31、31とカム孔32、32とは、上方に向かう程互いに近づく方向に傾斜している。従って、上記1対のカムブロック30、30は、上記天板23の下降に伴って互いに近づく方向に平行移動し、上記1対のパンチ29、29の先端同士を互いに近づける。
【0020】
これら各パンチ29、29は、上記各ガイドブロック28、28に摺動自在に係合した平板状の基部33と、この基部33の端部から連続する平板状の先端部34とから成る。この先端部34の先端面35の幅W35は、前記チューブ25に形成すべきスリット13、13の幅W13に見合うもので、前記ダイス孔27の幅W27よりも僅かに小さい(W35≒W13<W27)。又、上記先端面35は、上記チューブ25の中心軸(外周面)に対し、それぞれ角度αだけ傾斜している。この先端面35の傾斜方向は、上記各スリット13、13の開口端となる、上記チューブ25の先端縁に向かう程、上記チューブ25の中心軸から遠ざかる方向としている。更に、上記チューブ25の外周面に対向する、上記先端面35のうちで、このチューブ25の中心軸から最も離れた部分を、このチューブ25の軸方向端面よりも軸方向外方(図2、4、6、8の上方)に外れた部分に位置させている。
【0021】
尚、前記ダイス24の中間部で、前記ダイス孔27の基端部に対応する部分には、図2、4、6、8に示す様に、ストッパリング36を外嵌固定している。このストッパリング36の一部で上記ダイス孔27の端部に整合する位置には、上記各パンチ29、29の先端部34、34を挿通自在な切り欠き37、37を形成している。この様なストッパリング36は、上記チューブ25の軸方向に亙る位置決めを図ると共に、上記各パンチ29、29による上記スリット13、13の加工時に、上記チューブ25が軸方向にずれ動く事を防止する役目を果たす。
【0022】
上述の様な製造装置21を使用して、上記チューブ25の端部にスリット13、13を形成する作業は、次の様にして行なう。
先ず、第一工程として、図2〜3に示す様に、チューブ25の端部に形成した小径部11をダイス24に外嵌し、このチューブ25の先端縁を上記ストッパリング36に突き当てる。この状態では、前記天板23は図1に示す様に上昇位置にあり、上記1対のパンチ29、29同士の間隔は、同図に示す様に互いに十分に離れている。
【0023】
上述の様にダイス24にチューブ25を外嵌したならば、図示しないプレス加工機のラムを下降させて、このラムにより上記天板23を下方に押圧する。この結果、この天板23の下面に固定した前記1対の駆動側カム31、31と前記カム孔32、32との係合により、前記1対の被駆動側カムブロック30、30が、互いに近づく方向に平行移動する。そして、これら両カムブロック30、30にそれぞれの基端部を結合固定した、上記1対のパンチ29、29同士が互いに近づき合う。そして、図4〜5に示す様に、これら両パンチ29、29の先端部34、34が、上記チューブ25の先端部の直径方向反対側2個所位置を同時に打ち抜いて、これら各位置に、それぞれ上記チューブ25の先端縁に開口するスリット13、13を、上記両パンチ29、29の、このチューブ25の内径側に移動させる動作のみで形成する。
【0024】
この際、上記各パンチ29、29の先端部34、34の先端面35、35は上記チューブ25の外周面に、これら各先端面35、35の全長に亙り同時に突き当たるのではなく、上記チューブ25の先端縁から遠い側から順次突き当たる。そして、突き当たった部分から、順次上記スリット13、13の加工を行なう。従って、上記各パンチ29、29から被加工物であるチューブ25に加わる荷重を低減して、加工に伴うこのチューブ25の歪みを低く抑える事ができる。又、上記チューブ25の先端部は、スリット13、13の加工の最終段階まで、円周方向に連続している。この為、スリット13、13の加工進行に伴い、円周方向に隣り合うスリット13、13同士の間部分が変形するのを有効に防止できる。この加工時に、このチューブ25には、上記パンチ29、29から、先端側に向くスラスト荷重が加わるが、この荷重は前記ストッパリング36が支承して、上記チューブ25が軸方向にずれ動く事を防止する。又、図示の様に、直径方向反対側に位置する1対のスリット13、13を同時に加工する場合には、複数のスリット13、13を形成する為に要する加工時間の短縮を図れる。しかも、加工に伴って上記チューブ25及びダイス24に加わるラジアル荷重が相殺されるので、このダイス24の支持強度を特に高くする必要がなくなる。又、上記チューブ25の先端部の変形も、より僅少に抑える事ができる。
【0025】
尚、上記各先端面35、35の傾斜角度αは、大きい程上記スリット13、13の打ち抜き加工に要する荷重を低減して、加工に伴う上記チューブ25の変形を低く抑える事ができる。但し、上記傾斜角度αを大きくし過ぎると、打ち抜き加工に伴って前記ダイス孔27内に押し込まれた打ち抜き滓26、26同士が干渉し(ダイス孔27内でぶつかり合い)、これら各打ち抜き滓26、26を押圧している上記各パンチ29、29を損傷する。そこで、上記傾斜角度αは、この様な干渉が生じない範囲で設計的に定める。ちなみに、この傾斜角度αは、上記チューブ25の径が大きくなる程、上記各スリット13、13の長さが短くなる程、大きくできる。例えば、一般的なステアリングシャフト或は中間シャフトを造る場合には、上記傾斜角度αは4度程度が適当であるが、状況に応じて請求項2、4に記載した様に、2〜15度程度の値を採用できる。
【0026】
上述の様にして、上記チューブ25の先端部の直径方向反対側2個所位置にスリット13、13を形成したならば、上記各パンチ29、29の先端部34、34をこれら各スリット13、13から抜き出す。この作業は、単にプレス装置のラムを上昇させ、前記天板23を図示しないばねの弾力により上昇させる事により行なえる。そして、上記各パンチ29、29の先端部34、34を上記各スリット13、13から完全に抜き出した後、図6〜7に示す様に、上記チューブ25を90度回転させる。これと共に、上記ダイス24のダイス孔27内に残留する打ち抜き滓26を排出する。そして、上記各パンチ29、29の先端部を、このチューブ25の先端部で、未だスリット13、13を形成していない部分に対向させる。
【0027】
次いで、図8〜9に示す様に、再び1対のパンチ29、29同士を近づけて、先に形成した1対のスリット13、13同士の間に、新たに1対のスリット13、13を形成する。この結果、先端部に設けた小径部11の先半部の円周方向等間隔の4個所位置に、それぞれが先端縁に開口したスリット13、13を形成した、スリット付チューブ38を得られる。このスリット付チューブ38の、スリット13、13の加工に伴う歪みは僅少である為、このスリット付チューブ13に特に矯正を施す事なく、次の加工工程(例えば前述の図19に示した、雌セレーション12の加工工程)に移せる。
【0028】
【実施例】
本発明の効果を確認する為に行なった実験に就いて説明する。実験は、パンチの形状の違いがスリット13、13の形成作業に伴うスリット付チューブ38の歪みに及ぼす影響を知る為、本発明品と比較品とを含め、3種類のパンチ29、29a、29bを使用して行なった。使用したパンチ29、29a、29bは、次の▲1▼〜▲3▼の3種類である。
▲1▼ 本発明品
前述の図2〜3に示す様に、先端面35の傾斜角度αが4度であり、スリット13、13の開口端に向かう程チューブ25の中心軸から遠ざかる方向に傾斜したパンチ29。
▲2▼ 比較品1
図10〜11に示す様に、先端面35aの傾斜角度が0度、即ち先端面がチューブ25の中心軸と平行であるパンチ29a。
▲3▼ 比較品2
図12〜13に示す様に、先端面35bの傾斜角度αが4度であり、スリット13、13の開口端に向かう程チューブ25の中心軸に近づく方向に傾斜したパンチ29b。
【0029】
又、加工条件は次の通りである。
チューブ材質 STKM12B
絞り長さ(小径部11の全長) 70mm
絞り部の内径 18.0mm
絞り部の外径 23.7mm
絞り部の厚さ 3.1mm
スリット13の長さ 40mm
スリット13の幅 5mm
スリット13の数 4本
【0030】
上述の様な条件で、上記各パンチ29、29a、29bを使用してスリット13、13を形成したところ、▲1▼に示した本発明に属するパンチ29による場合には、加工後に於ける絞り部(小径部11)の先端開口部の外径は23.8mmとなった。即ち、スリット13、13の加工に伴って、最も変形し易い先端開口部の外径が0.1mm広がったのみで、続く加工に悪影響を及ぼす様な変形は生じなかった。
これに対して、▲2▼に示した様な、比較例1のパンチ29aによる場合には、加工後に於ける絞り部の先端開口部の外径は24.7〜25mmとなった。即ち、スリット13、13の加工に伴って、最も変形し易い先端開口部の外径が1〜1.3mmも広がり、そのままでは続く加工を行なえない状態となった。
更に、▲3▼に示した様な、比較例1のパンチ29aによる場合には、加工後に於ける絞り部の先端開口部の外径は24.61〜24.65mmとなった。即ち、スリット13、13の加工に伴って、最も変形し易い先端開口部の外径が0.91〜0.95mmも広がり、そのままでは続く加工を行なえない状態となった。
【0031】
上記比較例1の場合に変形量が大きくなる理由は、加工時に一度に大きな荷重が加わる為と考えられる。又、上記比較例2の場合に変形量が大きくなる理由は、スリット13、13がそれぞれの開口端から形成される為、先に形成された開口端部が、続いて行なわれる奥側の加工に伴って変形する為と考えられる。
何れにしても、本発明によれば、これら一連の実験の結果を示す図14から明らかな様に、品質の良いスリット付チューブを能率良く造れる。
【0032】
【発明の効果】
本発明のスリット付チューブの製造方法及び製造装置は、以上に述べた通り構成され作用するので、高品質のスリット付チューブを能率良く造れて、自動車用操舵装置等のコスト低減と性能向上とに寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の1例を示す、スリット付チューブの製造装置の全体構成を示す縦断面図。
【図2】加工の第一工程で加工前の状態を示す、図1のA−A断面図。
【図3】図2のB−B断面図。
【図4】加工の第一工程で加工後の状態を示す、図2と同様の図。
【図5】図4のC−C断面図。
【図6】加工の第二工程で加工前の状態を示す、図2と同様の図。
【図7】図6のD−D断面図。
【図8】加工の第二工程で加工後の状態を示す、図2と同様の図。
【図9】図8のE−E断面図。
【図10】本発明の効果を確認する為に行なった実験に比較例1として使用したパンチを示す、図2と同様の図。
【図11】図10のF−F断面図。
【図12】本発明の効果を確認する為に行なった実験に比較例2として使用したパンチを示す、図2と同様の図。
【図13】図12のG−G断面図。
【図14】本発明の効果を確認する為に行なった実験の結果を示すグラフ。
【図15】スリット付チューブを組み込む装置の1例として自動車用操舵装置を示す部分縦断側面図。
【図16】スリット付チューブであるアウターシャフトを組み込んだステアリングシャフトの部分切断側面図及び断面図。
【図17】このアウターシャフトの部分切断側面図及び端面図。
【図18】このアウターシャフトの加工工程を順番に示す部分切断側面図及び端面図。
【図19】このアウターシャフトの内周面に雌スプラインを形成する加工工程を順番に示す断面図。
【図20】このアウターシャフトの端部にスリットを形成する加工工程を順番に示す、断面図或は側面図と端面図。
【符号の説明】
1、1a ステアリングシャフト
2 下部ブラケット
3 上部ブラケット
4 ステアリングコラム
5 自在継手
6 中間シャフト
7 インナーシャフト
8 アウターシャフト
9 小径部
10 雄セレーション
11 小径部
12 雌セレーション
13、13a スリット
14 素材
16 第一中間素材
17 第二中間素材
18 パンチ
19 拘束ダイス
20 環状部
21 製造装置
22 基板
23 天板
24 ダイス
25 チューブ
26 打ち抜き滓
27 ダイス孔
28 ガイドブロック
29、29a、29b パンチ
30 被駆動側カムブロック
31 駆動側カム
32 カム孔
33 基部
34 先端部
35、35a、35b 先端面
36 ストッパリング
37 切り欠き
38 スリット付チューブ

Claims (4)

  1. 中空円管状のチューブの軸方向端部に、それぞれの一端部をこのチューブの軸方向端面に開口させたスリットを形成する、スリット付チューブの製造方法であって、加工すべきスリットに見合う幅寸法を有する先端部を備え、この先端部の先端面で上記チューブの外周面に対向する面をこのチューブの中心軸に対し、上記スリットの開口端に向かう程この中心軸から遠ざかる方向に傾斜させると共に、上記チューブの外周面に対向する面のうちでこの中心軸から最も離れた部分を、このチューブの軸方向端面よりも軸方向外方に外れた部分に位置させたパンチを、このチューブの直径方向に関して外径側から内径側に向け移動させ、このパンチの先端部によりこのチューブの端部に上記スリットを、このパンチをこのチューブの内径側に移動させる動作のみで、上記軸方向端面の開口から遠い奥端側からこの開口に向け連続して形成する事を特徴とするスリット付チューブの製造方法。
  2. パンチの先端部の先端面のチューブの中心軸に対する傾斜角度を2〜15度の範囲に規制し、チューブの円周方向反対側2個所位置を同時に打ち抜いてスリットを形成する、請求項1に記載したスリット付チューブの製造方法。
  3. 中空円管状のチューブの軸方向端部に、それぞれの一端部をこのチューブの軸方向端面に開口させたスリットを形成する為に使用する、スリット付チューブの製造装置であって、上記チューブの軸方向端部にほぼ隙間なく挿入自在で、上記スリットを打ち抜く事により生じた打ち抜き滓を受け入れ自在なダイス孔を直径方向に亙って形成した円柱状のダイスと、このダイスの直径方向に関して両側に、このダイスを挟む状態で配置され、このダイスに対する同期した遠近動を自在とされた1対のパンチとを備え、これら各パンチの先端部は、加工すべきスリットに見合う幅寸法を有し、上記チューブの外周面に対向する先端面をこのチューブの中心軸に対し、上記スリットの開口端に向かう程この中心軸から遠ざかる方向に傾斜させると共に、上記チューブの外周面に対向する面のうちでこの中心軸から最も離れた部分を、このチューブの軸方向端面よりも軸方向外方に外れた部分に位置させたものであるスリット付チューブの製造装置。
  4. パンチの先端部の先端面のチューブの中心軸に対する傾斜角度を2〜15度の範囲に規制した、請求項3に記載したスリット付チューブの製造装置。
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