JP4354133B2 - シリンダの加工方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動二輪車等の車体と車軸間に介装されて、路面からの振動を減衰する、緩衝器とフォークとを兼ねたダンパ内蔵型フロントフォークに使用するダンパシリンダの加工に適するシリンダの加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のフロントフォークとして、例えば、特開平5−65930号公報に開示されたものが知られている。
【0003】
即ち、フロントフォークは車体側チューブであるアウターチューブ内に、車輪側チューブであるインナーチューブを摺動自在に挿入させ、インナーチューブの下部中央からダンパを起立させている。
【0004】
このダンパを構成するダンパシリンダにおいて、その両端部はシリンダヘッドとバルブボディとを螺合結合するために厚肉とし、他の中央部は、余肉を切削加工により除去して、軽量化を図っている。
【0005】
即ち、このダンパシリンダの両端部は、シリンダヘッドとバルブボディに取り付けのためねじ加工が施されておりその両端は十分な肉厚が必要であるが、中央部は強度上から薄肉でも良い。
【0006】
そこで、軽量化のために中央部の余肉を切削加工によって除去するものである。
【0007】
例えば、図8(A)に示すように一定の肉厚を有する素管10を成形し、その後図8(B)に示すように切削加工で中間部11の外周を切削して薄肉にしている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のダンパシリンダにおいては、強度確保のために高強度材料を使用しているから、素材単価が高額となり、かつ素材の一部を切削しているから材料の歩留まりが悪いのみならず、加工工数が増加するために、価格及び労力の面から不利であるという課題がある。
【0009】
そこで、本発明は、材料の無駄が無く、歩留まりが良くて加工性も良好なダンパシリンダなどのシリンダの加工方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本発明の方法は、両端部の肉厚を厚くし、中間部の肉厚を薄くして成形するシリンダの加工方法において、素管の一端を絞り込んで一端の内径を小径にする工程と、素管内に芯金を挿入して当該芯金の端部を上記素管の小径端部で支持する工程と、素管と芯金とを回転させると共に素管の外周に圧接する一つ又は複数のローラを従動回転させながら軸方向に移動させて芯金とローラとで挟圧しながらスピニング加工を行う工程とからなり、上記ローラの移動軌跡を素管の中間部に対応する範囲で芯金側に接近させて両端部を厚肉に成形し中間部を薄肉に成形するとともに、両端部と中間部の接続部分に対応する芯金の部位に大径なランドを設けて、このランドで上記接続部分の内面が加工後半径方向に盛り上がるのを防止させることを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
本発明の成形方法は、両端部の肉厚を厚くし、中間部の肉厚を薄くして成形するシリンダの加工方法である。そして、図1(A)(B)に示すように、素管1の一端を絞り込んで一端の内径を小径にする工程と、図2に示すように、素管1内に芯金2を挿入して当該芯金2の端部を上記素管1の小径端部で支持する工程と、素管1と芯金2とを回転させると共に素管1の外周に圧接する一つ又は複数のローラ3を従動回転させながら軸方向に移動させて芯金2とローラ3とで挟圧しながらスピニング加工を行う工程とからなっている。
【0013】
このスピニング加工において本発明では、上記ローラ3の移動軌跡Pを素管1の中間部に対応する範囲で芯金2側に接近させるようにしている。
【0014】
更に詳しく述べると、図1において、素管1は、比較的厚肉に形成されており、予め前加工工程において、右先端部が小径部1aに形成されている。
【0015】
そして、図2に示すスピニング加工において、素管1の内部にその内径よりも小径の芯金2が挿入され、芯金2の先端部2aが素管1の小径部1aに突き当たって支持され、その後、ローラ3が左方向に移動する。
【0016】
この場合に、ローラ3は一つ又は複数からなり、素管1と芯金2の回転に伴って従動回転しながら軸方向に移動して素管1を芯金2に圧接し、シリンダを必要な肉厚に調整する。
【0017】
つまり、ローラ3が右端から左端まで従動回転して、右端と左端とを厚肉に調整するが、途中で中間部1cを薄肉に調整する。
【0018】
即ち、中間部1cではローラ3の軌跡が芯金2側にさらに接近することによって、この部分の薄肉化を調整実現する。
【0019】
このスピニング加工において、ローラ3が二つのとき図3に示すように、二つのローラ3a、3aによって、素管1が芯金2に圧接されて楕円状に変形しつつも、所定の肉厚に調整される。
【0020】
加工が終了してローラ3が退避すると、図4に示すように変形状態から復帰して、真円状のシリンダ4が完成する。
【0021】
ところで、このスピニング加工では、肉厚部と薄肉部との間に形成するテーパ状の境界部分では加工度の違いから内径側に膨らんでしまう。
【0022】
具体的には、図5に示すように中間部1cの薄肉部と、両端1a、1bの肉厚部との接続部の内径に加工度の違いから凸部1dが生じる。
【0023】
このような凸部1dは、シリンダ4内をピストンが摺動すると障害となり、好ましいことではない。
【0025】
そこで、本発明では、図6に示すように、芯金2の対応部分に、凸部1dの変形量に対応する寸法の大径なランド2bを予め形成しておき、上述したスピニング加工において、凸部1dが生じないようにランド部2bで抑え込むようにしてあり、これによって、シリンダ4の内周が平滑となり、ピストン作動に障害が発生しない。
【0026】
つぎに、内径を適宜変化させるようにした参考例におけるシリンダ4の加工方法について説明する。
【0027】
図7において、芯金2には上記の場合と同様に、大径なランド2bが形成されており、さらに中間部にも直径d2なる大径なランド2cが形成されている。
【0028】
従って、この芯金2を用いて、スピニング加工が行われると、シリンダ4の中央の薄肉部がさらに部分的に薄肉となり、内径の一部分を大きくすることができる。
【0029】
従って、シリンダ4内をピストンが伸縮作動するとき、シリンダ4の内径が大きい部分ではピストン外周との環状隙間が大きくなって、ここからの作動油通過量が多く、減衰力を小さく設定することができる。
【0030】
又、その他のシリンダ4の両端部では、環状隙間が小さくなって減衰力を大きくすることができる。
【0031】
即ち、通常の走行では減衰力を小さくしてソフトな乗り心地とし、路面起伏が大きくピストンが大きく作動するときは減衰力を大きくして衝撃吸収を効果的に行うことが出できる。
【0032】
尚、上記の場合においても、図3,4に示すように、素管1の一端を予め小径部1aにした後、内部に芯金2を挿入するとともに、一対のローラ3a,3aを前記小径側から素管1に圧接し、シリンダ4の中間部1cの加工時に、ローラ3a,3aが芯金2に接近するように作動させる。
【0033】
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく本発明の技術的思想の範囲内で、適宜変更して適用することができるものである。
【0034】
【発明の効果】
本発明にあっては、両端部の肉厚を厚くし、中間部の肉厚を薄くして成形するシリンダの加工方法において、素管の一端を絞り込んで一端の内径を小径にする工程と、素管内に芯金を挿入して当該芯金の端部を上記素管の小径端部で支持する工程と、素管と芯金とを回転させると共に素管の外周に圧接する一つ又は複数のローラを従動回転させながら軸方向に移動させて芯金とローラとで挟圧しながらスピニング加工を行う工程とからなり、上記ローラの移動軌跡を素管の中間部に対応する範囲で芯金側に接近させて両端部を厚肉に成形し中間部を薄肉に成形するとともに、両端部と中間部の接続部分に対応する芯金の部位に大径なランドを設けて、このランドで上記接続部分の内面が加工後半径方向に盛り上がるのを防止させることを特徴とする。
【0037】
これにより、この発明によれば、スピニング加工によって、シリンダの外形を任意の形状に形成可能であるため、強度を必要としない部分の肉厚を適宜薄肉とし、シリンダの軽量化と共に切削加工を廃止して、加工の単純化を実現することができる。また、切削加工を廃止することによって、材料の無駄がなく、歩留まりや加工性が良く、切り粉の処理など生産効率の向上を図ることが出きる。
【0038】
また、厚肉に成形される両端部と薄肉に成形される中間部の接続部分に対応する芯金の部位に大径なランドを設け、このランドで上記接続部分の内面が加工後半径方向に盛り上がるのを防止させているから、ダンパシリンダの内周面に、変形に伴う膨らみを生じることがなく、ピストンの円滑な作動を確保することができる。また,変形を除去するための追加工を不要とすることが出きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に使用する素管の断面図で、(A)は加工前、(B)は加工後を示す。
【図2】本発明の一実施例を示す、スピニング加工状態の説明図である。
【図3】本発明の一実施例を示す、スピニング加工状態の側断面の説明図である。
【図4】本発明の一実施例を示す、スピニング加工後の説明図である。
【図5】本発明の一実施例を示す、スピニング加工後の変形形状の部分説明図である。
【図6】本発明の一実施例を示す、スピニング加工状態の部分説明図である。
【図7】参考例におけるスピニング加工状態の説明図である。
【図8】従来例を示す断面図で、(A)は素管、(B)は切削加工後を示す。
【符号の説明】
1 素管
2 芯金
3 ローラ
4 ダンパシリンダ

Claims (1)

  1. 両端部の肉厚を厚くし、中間部の肉厚を薄くして成形するシリンダの加工方法において、素管の一端を絞り込んで一端の内径を小径にする工程と、素管内に芯金を挿入して当該芯金の端部を上記素管の小径端部で支持する工程と、素管と芯金とを回転させると共に素管の外周に圧接する一つ又は複数のローラを従動回転させながら軸方向に移動させて芯金とローラとで挟圧しながらスピニング加工を行う工程とからなり、上記ローラの移動軌跡を素管の中間部に対応する範囲で芯金側に接近させて両端部を厚肉に成形し中間部を薄肉に成形するとともに、両端部と中間部の接続部分に対応する芯金の部位に大径なランドを設けて、このランドで上記接続部分の内面が加工後半径方向に盛り上がるのを防止させることを特徴とするシリンダの加工方法。
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