JP3721601B2 - 凹凸柄を有するアクリル繊維マイヤー毛布の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、凹凸柄を有するアクリル繊維マイヤー毛布の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、保温性、感触と嵩高性、プリント発色性と染色堅牢度および耐久性に優れるアクリル繊維マイヤー毛布は、毛布として最も適性があり、又、最も多く用いられている。該毛布の付加価値向上のために、プリントでの色・柄の向上の他、様々な工夫が試みられているが、高級感付与の観点からは未だ充分満足するには至っていない。
【0003】
すなわち、アクリル繊維を用いて製造されるマット、カーペット等の立毛品に凹凸の表面効果を得るため、従来よりアクリル繊維溶剤のエチレンカーボネイト又はプロピレンカーボネイトを利用した凹凸加工方法が実施されている。
【0004】
しかしながら、欠点として溶剤を付与した凹部が硬化し感触を損なうことが挙げられる。この原因は、繊維素系繊維の強酸処理およびポリエステル繊維の強アルカリ処理等での脆化または溶出とは異なり、アクリル繊維の凹凸加工の場合には膨潤−繊維の収縮−樹脂化固定という化学変性が生じるためである。
【0005】
このため上記凹凸加工方法は、感触をそれほど重要視しないマット、カーペットの分野では利用されているが、感触が重要な要素である毛布の分野では現在利用されておらず、アクリル繊維マイヤー毛布の凹凸加工は、カッターを使用する「デザインカット」と呼ばれる装置により行なわれているのが現状である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、毛布としての適性を損なうことなく、容易かつ自由に凹凸柄を形成し得るアクリル繊維マイヤー毛布の凹凸加工方法の開発が望まれていた
【0007】
発明の目的は、毛布に要求される品質を満足しつつ、高級感のある凹凸表面柄を有するアクリル繊維マイヤー毛布を、容易かつ自由に、さらには従来からアクリル繊維立毛品の製造工程の中で利用されて来た安全性の高い溶剤であるエレチンカーボネートおよびプロピレンカーボネートの少なくとも1種のアクリル繊維溶剤を用いて、溶剤が付与された凹部の硬化の少ない凹凸表面柄を有するアクリル繊維マイヤー毛布の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明による凹凸柄を有するアクリル繊維毛布の製造方法は、アクリル繊維100%またはアクリル繊維を60重量%以上含有する混紡糸からなるパイル糸であって、パイル糸を構成する単繊維の平均繊度が1.5デニール以下であり、前記単繊維本数が200本以上である双糸を用いて、ダブルラッセル編機(独国、カールマイヤー社製)で編成した後、パイル糸中央部を切断して片面パイル布帛原布(一般にはマイヤー布帛原布と呼ばれる)を得て、前記片面パイル布帛原布のパイル面を、エチレンカーボネイトおよびプロピレンカーボネイトの少なくとも1種のアクリル繊維溶剤を含む印捺糊組成物(A)による第1印捺工程と前記アクリル繊維溶剤を含まない印捺糊組成物(B)による第2印捺工程によりプリント印捺し、このさいの捺糊組成物(A)および(B)中の印捺糊総量は、パイル糸に対して150〜200重量%とし、プリント印捺後プリント揚り布帛のパイル糸に仕上げ処理を施すことを特徴とするものである。
【0009】
プリント印捺の後、通常の蒸熱処理、湯洗処理、柔軟加工、脱水処理および乾燥処理を施す。プリント揚り布帛のパイル糸の仕上げ処理は、例えば、毛割り、ポリッシャー、シャーリングを組合せたものである。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載の凹凸柄を有するアクリル繊維マイヤー毛布の製造方法において、第1印捺工程に用いられるアクリル繊維溶剤を含む印捺糊組成物(A)は、アクリル繊維溶剤20〜35重量%、柔軟剤または柔軟平滑剤5〜8重量%、pH調整剤0.5〜2重量%、浸透剤0.5〜2重量%、糊剤2〜5重量%および水20〜60重量%を含み、粘度800〜1000cpsであり、第2印捺工程に用いられるアクリル繊維溶剤を含まない印捺糊組成物(B)は、pH調整剤0.5〜2重量%、浸透剤0.5〜2重量%、糊剤4〜10重量%および水70〜90重量%を含み、粘度800〜1000cpsであることを特徴とするものである。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の凹凸柄を有するアクリル繊維マイヤー毛布の製造方法において、パイル糸は、さらに98℃熱水下での糸収縮率が15〜20%であり、紡績撚が撚係数で、単糸撚係数(κ) 60≦κ≦80双糸撚係数(K) 40≦K≦50であることを特徴とするものである。
【0012】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0013】
本発明においては、パイル糸として、アクリル繊維100%からなるもののほか、アクリル繊維を60重量%以上含有する混紡糸からなるものを用いることもできる。このような混紡糸として、アクリル繊維に綿、繊維素系繊維たとえばレーヨン、ポリノジック、キュプラおよびウールを混紡した混紡糸が挙げられる。本発明においては、プリント凹凸加工後、毛割り、ポリッシャーの仕上げ処理が施されるため仕上げ加工で混紡繊維の混率が高いと凹部の混紡繊維が毛羽立ち、凹凸が低減してしまうので、アクリル繊維を60重量%以上含有する必要がある。好ましくは70重量%以上である。
【0014】
また本発明において用いられる双糸は、パイル糸を構成する単繊維の平均繊度が1.5デニール以下であり、前記単繊維本数が200本以上であるものである。
【0015】
アクリル繊維を用いて製造されるアクリル100%マイヤー毛布のパイル糸は近年、ソフトな感触が好まれるため平均単繊維繊度は細くなって来ており、繊度3デニールを中心に構成される。また嵩高性を得るため糸状で湿熱収縮率が25%前後得られる収縮原綿を混綿し、梳毛紡紡績法でメートル番手2/28 〜2/36の太さに紡出したものが最も多く用いられている。ところが、これら最も多く用いられているパイル糸を使用したマイヤー布帛に、アクリル繊維溶剤のエチレンカーボネイト、プロピレンカーボネイトを用いて、従来敷物等で行なわれているプリント凹凸加工を施した場合、溶剤を付与した凹部が硬化し、毛布に要求されるソフト感触が得られない。そこで本発明で用いるパイル糸は、単繊維の平均繊度が1.5デニール以下、好ましくは1.0デニール以下のものである。平均繊度が1.5デニール以下にすることにより、毛布で許容されるソフトな感触を得ることができる。また、パイル糸を構成する単繊維本数は200本以上であり、好ましくは250本以上である。単繊維本数200本以上とすることにより、単繊維平均繊度1.5デニール以下において、充分な糸強力を得ることができる。
【0016】
また、毛布の品質として保温性は必須であり、保温性は布帛の嵩高要因により支配される。この嵩高性を高める目的でパイル糸の紡績時、熱収縮原綿と非収縮原綿を通常20:80〜50:50(例えば、40:60)の比率に混綿し、編布帛作製後、染色工程での湿熱処理により嵩高性を得る。溶剤でプリント凹凸加工を施す場合、パイル糸の湿熱収縮は嵩高性を高める反面、単繊維間の拘束が融着により増大し、パイル凹部の硬化を助長し、更には仕上げ工程での毛割り性に影響し毛割りが充分行なえない。そこで本発明においてパイル糸は、98℃熱水での糸収縮率が15〜20%であるものが好ましい。糸収縮率を15〜20%とすることにより、嵩高性と毛割り仕上げ性を保持しつつ、凹部硬化への影響を少なくすることができる。糸収縮率が15%未満では充分な嵩高性が得にくく、20%を超えると凹部硬化が起こりやすく品質上問題となり、毛割り性も低下しやすい。
【0017】
適性パイル糸設計要素としてはまた単糸、双糸での撚数と糸番手がある。糸番手は細い程、単−双糸の撚数は低い程、凹部硬度が低くなることは容易に推測できる。番手は設備されている編機ゲージとの関係で採用されるので、ここでは特に規定しない。撚については、紡績性と編成性で要求される糸強力を確保する必要上、充分に配慮する必要がある。現在アクリル繊維マイヤー毛布で用いられているパイル糸番手はメートル番手2/28〜2/52の範囲にあり、本発明の構成単繊維平均繊度1.5デニール以下では、単繊維構成本数は200本以上となり糸強力を得る繊維本数としては充分である。
【0018】
梳毛紡績での紡績性からの単糸適性撚係数(κ)は、κ=60〜70、双糸撚係数(K)はK=50〜60であり、スフ紡績の場合は単糸適性撚係数(κ)は、κ=75〜85、双糸撚係数(K)はK=45〜60である。綿紡績の場合は、単糸適性撚係数(κ)はκ=80〜100、双糸撚係数(K)はK=45〜60である。本発明においては、低撚数化はプリント凹部加工が、膨潤→繊維の収縮→樹脂化固定の化学変性に基づいていることから、この過程で生じる繊維間拘束の増加を減少し、凹部硬化を低減できることから、パイル糸の撚係数としては紡績性を考慮して、単糸撚係数(κ)は60≦κ≦80、 双糸撚係数(K)は45≦K≦50であることが好ましい。
【0019】
ここで撚係数とは下記式で示されるものである。
【数1】
Figure 0003721601
【0020】
次に、印捺糊組成物および印捺工程について説明する。
本発明において、アクリル繊維溶剤として使用するエチレンカーボネイトおよびプロピレンカーボネイトは安全性の高い薬品である。また加工時の水分と熱により加水分解して揮発し、加工後の繊維内部に残留しないので加工剤として適している
【0021】
記アクリル繊維溶剤を含む印捺糊により印捺後、100℃の飽和蒸気で一般に15〜30分“濡れ蒸し”といわれる蒸熱処理を施し、アクリル繊維に膨潤と収縮を生じさせ、冷却により固定化する。しかしながら、膨潤と収縮の過程で一部繊維が溶融して表面被膜が生成し、単繊維自身の硬化と単繊維の融着によりパイル糸が硬化する。この現象完全に防ぐことは困難である。
【0022】
またマイヤー毛布製品で満足できる凹凸柄効果、すなわち必要な凹部と凸部のパイル長段差を検討した結果、凸部パイル長に対する凹部相対パイル長は80%以下にしないと満足出来る凹凸柄とはならない。凹部相対パイル長が50%以下では凹凸柄効果は優れるが凹部硬化が許容範囲をえる。凹部相対パイル長は60〜75%が製品として良好であった
【0023】
本技術上繊維の硬化現象が避けられないのであれば、毛布として許容される品質を効率良く発現させるために、効率良く、極力低濃度の溶剤で膨潤→収縮を発現させ、目標の凸部パイル長に対する凹部相対パイル長60〜75%を悪影響を避けて得ることである。これを達成せしめる具体的方法としては、(1)溶剤の能力を100%発揮させる、(2)パイル糸全体を収縮させる、(3)構成する単繊維総てを収縮させる、(4)パイル糸の根元部分の収縮を大きく、毛先程収縮を抑え製品への影響を小さくする、等が考えられる。これらの検討について以下に述べる。
【0024】
毛先を中心にパイル糸上半部にプリント凹部加工が片寄ると効率的な膨潤→収縮が行なわれず、パイル表面中心に硬化する。パイル糸の根元から毛先までのパイル糸全体と構成する単繊維総てとを膨潤→収縮させることによって、始めて効率的に感触の良いプリント凹部加工ができる。
【0025】
また、用いる印捺糊の量については、印捺糊総量が、パイル糸に対して150〜200重量%であることが必要である。印捺糊総量が150重量%未満では充分なパイル糸全体への印捺糊供給を行うことができず、200重量%を超えると印捺糊が過剰となり印捺部以外に流れ出すこととなる。
【0026】
現在経済的に成立っている毛布のプリント通常捺染法では、スクリーンメッシュ、スケージ圧、スケージ回数、印捺スピードを調整しても1回の印捺では150重量%以上の印捺糊供給は困難である。したがって印捺工程を2工程の重複印捺とすることが必要である。更に150重量%以上の印捺糊をパイル糸自身が保持するには、パイルに保持能力が要求されるが、本発明ではパイル糸の構成単繊維本数が200本以上あり、繊維の表面積が大きいことにより印捺糊は保持される。繊維の表面積が少ない、すなわち構成単繊維本数が少ないと糊の保持能力がなく、印捺部以外に印捺糊が流れ出し柄ぎわが悪くなるとともに安定した膨潤→収縮も得られない。
【0027】
重複印捺については、(1)第1工程でアクリル繊維溶剤を含む印捺糊組成物(A)により印捺し、第2工程でアクリル繊維溶剤を含まない印捺糊組成物(B)により印捺、(2)第1工程でアクリル繊維溶剤を含まない印捺糊組成物(B)により印捺し、第2工程でアクリル繊維溶剤を含む印捺糊組成物(A)により印捺、(3)第1、第2工程ともにアクリル繊維溶剤を含む印捺糊組成物(A)により印捺、という3種類を同一溶剤濃度の印捺糊で印捺した後、蒸熱し、得られたパイルについて凹凸部間の硬度差を比較した。その結果、(1)>(2)>(3)の順でプリント凹凸部間の硬度差が少なかった。また、(3)の重複印捺で溶剤濃度を1/2に減じて得られたたものも(1)の重複印捺よりは差が大きかった。(1)の重複印捺のものは凹部相対パイル長も充分低下し、柔らかさ、凹凸効果とも良好であった。このように、(1)の重複印捺が良好な結果を示したのは、印捺工程における布帛上でパイル糸根元と毛先で溶剤濃度勾配が生じ毛先程濃度が低くなるため、表面硬度が減少したためである。従って、本発明においては、第1工程で、アクリル繊維溶剤を含む印捺糊組成物(A)を用い、第2工程で、前記アクリル繊維溶剤を含まない印捺糊組成物(B)を用いることが必要である
【0028】
印捺糊組成物(A)のアクリル繊維溶剤濃度については、印捺糊に対してアクリル繊維溶剤20〜35重量%が好ましい。溶剤濃度はアクリル繊維のタイプ、糸設計により微妙に差異が生じるが、20〜35重量%とすることにより、(1)の重複印捺で凹部相対パイル長60〜75%が得られる。より好ましい溶剤濃度は25〜30重量%である。
【0029】
また一般に前記溶剤量に対し、約2倍量の水分が必要であり、アクリル繊維溶剤を含まない印捺糊組成物(B)の水分が加わるためアクリル繊維溶剤を含む印捺糊組成物(A)中には溶剤量と当量かそれ以上の水分が必要である。水分は溶剤の繊維膨潤→収縮を補足するとともに、溶剤を加水分解、揮発して繊維への残留を防止する効果がある。
【0030】
また、アクリル繊維溶剤を含む印捺糊組成物(A)は、凹部硬化を柔らげるのに効果がある柔軟剤または柔軟平滑剤を純分で5〜8重量%含むことが好ましい。柔軟剤または柔軟平滑剤としては、非イオン系、カチオン系の公知のものが使用できるが、カチオン系のものは、通常使用する濃度より高い。8重量%を超えると、100℃の蒸熱処理を受けるため熱黄変を生じる場合がある。これを避けるにはpH調整剤たとえばリンゴ酸を使用して、pH=4〜5に調整すると良い。必要なpH調整剤の量は、0.5〜2重量%である。また、アクリル繊維溶剤を含まない印捺糊組成物(B)にもカチオン染料を安定化させるためpH調整剤を0.5〜2重量%含有させる。
【0031】
両印捺糊組成物(A)(B)ともに浸透剤を含有させる。浸透剤は浸透性不良のパイル糸に対し印捺糊の浸透を補助するもので、例えば非イオンアルキルエーテルエチレンオキサイド付加物が好ましい。パイル糸がJIS−L−1096B法、バイレック法での10分後吸上げ長が50mm以下の場合、吸上げ長50mmをえる目安で添加する。好ましい浸透剤の量は、両印捺糊組成物(A)(B)ともに0.5〜2重量%である。
【0032】
さらに、アクリル繊維溶剤を含まない印捺糊組成物(B)には、公知のカチオン染料および染料溶解剤(例えば、グリエシンA)をそれぞれ、通常5重量%までの量で含有することができる。
【0033】
両印捺糊組成物(A)(B)の糊粘度は、20℃ローター式粘度計測定で800〜1000cps(センチポイズ)に調整される。使用する糊材は、高粘度タイプの天然ガム系、セルロース系、加工でんぷん系およびそれらのエーテル化、エステル化物等の薬品混和性と安定性の高いもので中性、弱酸性のものが良い。一般には捺染性全体を考慮した2〜3種のものを組合せた混合糊を用いる。
以上より、本発明において重複印捺は、エチレンカーボネイトおよびプロピレンカーボネイトの少なくとも1種のアクリル繊維溶剤20〜35重量%、柔軟剤または柔軟平滑剤5〜8重量%、pH調整剤0.5〜2重量%、浸透剤0.5〜2重量%、糊剤2〜5重量%および水20〜60重量%を含み、粘度800〜1000cpsである印捺糊組成物(A)による第1印捺工程と前記アクリル繊維溶剤を含まず、pH調整剤0.5〜2重量%、浸透剤0.5〜2重量%、糊剤4〜10重量%および水70〜90重量%を含み、粘度800〜1000cpsである印捺糊組成物(B)による第2印捺工程により行なうことが好ましい。
【0034】
【実施例】
次に、実施例により本発明を説明する。
【0035】
[実施例1]
1) パイル糸として、アクリル繊維「エクスラン(登録商標)」<東洋紡績(株)製>の非収縮タイプ0.8デニール、繊維長51mmと、同収縮タイプ98℃、熱水中での収縮率20%で1.2デニール、繊維長51mmとを重量比60/40で混合し、構成された単繊維の平均繊度0.96デニールを通常のスフ紡紡績法にて2/52メートル番手、撚係数κ=70、K=45の撚数t=505(T/M)、T=227(T/M)を持つ双糸を用いた。該パイル糸の構成繊維本数は360本であり、98℃熱水中での収縮率は20%である。
【0036】
また、基布部鎖糸およびふり糸として、ポリエステルマルチフィラメント75デニール、単糸繊度2.5デニール<東洋紡績(株)製>を用いた。
【0037】
2) パイル糸1520コーンを編成用フリールスタンドにセットし、鎖糸およびふり糸用のポリエステルマルチフィラメントを各々1520本つ4ビームにけ、必要数として2組を整経機にて整経後、編機の所定の場所にセットした。
【0038】
3) 22ゲージ75インチ幅マイヤー編機の総編針条件下で、釜間距離14mm、コース数(コース数/インチ)20.0に調整を行ない、編機回転数500rpmで編成を行なった。編成後パイル糸の中央部で切断し、片面パイル布帛とした。布帛は幅157cm、目付590g/m、パイル長は7mmであった。
【0039】
4) 作成した布帛にスクリーンプリント法にて唐草模様線柄凹凸プリント加工を下記の工程にて行なった。使用スクリーンはメッシュ500の線柄スクリーン1枚と地染用スクリーン1枚の計2枚を使用した。
<工程>
地張り→印捺→蒸熱→ソーピング→湯洗・水洗→柔軟処理→脱水→乾燥
印捺糊組成物および印捺は次の条件で行なった。
【表1】
Figure 0003721601
【表2】
Figure 0003721601
地張りした片面カットパイル布帛に唐草線柄スクリーン、表1のアクリル繊維溶剤を含む印捺糊組成物(A)での1往復の印捺を行ない、引続いて地染用スクリーン、表2のアクリル繊維溶剤を含まない印捺糊組成物(B)にて同様の印捺を行なった。印捺糊量は凹部重複印捺部がパイル重量比200%、凸部印捺部が100%であった。
【0040】
印捺後、飽和蒸気での100℃×20分の蒸熱、湯洗・水洗等を施しプリントを完了した。
【0041】
5) プリント布帛を両面マイヤー毛布にするため、仕上げ前処理として表面パイル糸を毛割り機にて毛割りを行ない、裏面を英式3連起毛機に3回通し、表面パイルを裏面へ迂回させた。その時の表面パイルと裏面パイルの繊維重量比率は60/40%になるよう調整した。続いて表裏パイルに、毛割り→ポリッシング→シャーリングの順に仕上げ加工を施した。仕上り後の布帛は幅140cmであり、長さ200cmに裁断した。得られた目付は1450g/2.8mであった。さらに、四方を市販レーヨン製バイヤス布にて縫製し、両面パイル毛布とした。
【0042】
このようにして得られた両面パイル毛布の唐草模様凹凸線柄効果と凹凸部間硬度差を、視覚、触感で評価した。両面パイル毛布は、高級感のある充分な凹凸柄を有すると共に、凹部硬度も凸部に対し、硬度差を僅か感じるだけで毛布として許容される柔軟さを有していた(評価は、パネラー5人により行なった)。また、凹凸部各パイル糸を引き抜き、凸部パイル長に対する凹部相対パイル長を測定した結果70%であった。
【0043】
[実施例2]
パイル糸として、アクリル繊維「エクスラン(登録商標)」<東洋紡績(株)製>の非収縮タイプ0.5デニール、繊維長38mmと、同収縮タイプ98℃、熱水中での収縮率20%で0.5デニール、繊維長38mmとを重量比60/40で混合し、構成された単繊維の平均繊度0.5デニールを通常の綿紡紡績法にて2/36メートル番手、撚係数κ=80、K=45の撚数t=480(T/M)、T=216(T/M)を持つ双糸を用いた。該パイル糸の構成繊維本数は1000本であり、98℃熱水中での収縮率は20%である。
【0044】
該パイル糸を18ゲージ75インチ幅マイヤー編機の1/2編針下で、釜間距離12mm、コース数(コース数/インチ)28.5に調整を行ない、編機回転数500rpmで編成を行なった。編成後パイル糸の中央部で切断し、片面パイル布帛とした。布帛は幅157cm、目付600g/m、パイル長は6mmであった。
【0045】
これ以外は、実施例1と同様にして、両面パイル毛布を得た。
【0046】
[実施例3]
パイル糸として、アクリル繊維「エクスラン(登録商標)」<東洋紡績(株)製>の非収縮タイプ1.0デニール、繊維長51mmと、同収縮タイプ98℃、熱水中での収縮率15%で1.0デニール、繊維長51mmとを重量比60/40で混合し、構成された単繊維の平均繊度1.0デニールを通常のスフ紡紡績法にて2/36メートル番手、撚係数κ=70、K=45の撚数t=420(T/M)、T=189(T/M)を持つ双糸を用いた。該パイル糸の構成繊維本数は500本であり、98℃熱水中での収縮率は15%である。該パイル糸を実施例2と同様にして編成し、片面パイル布帛を得た。
【0047】
これ以外は、実施例1と同様にして、両面パイル毛布を得た。
【0048】
[実施例4]
パイル糸として、アクリル繊維「エクスラン(登録商標)」<東洋紡績(株)製>の非収縮タイプ1.0デニール、繊維長51mmと、同収縮タイプ98℃、熱水中での収縮率20%で1.0デニール、繊維長51mmとを重量比60/40で混合し、構成された単繊維の平均繊度1.0デニールを通常のスフ紡紡績法にて2/36メートル番手、撚係数κ=70、K=45の撚数t=420(T/M)、T=189(T/M)を持つ双糸を用いた。該パイル糸の構成繊維本数は500本であり、98℃、熱水中での収縮率は20%である。該パイル糸を実施例2と同様にして編成し、片面パイル布帛を得た。
【0049】
これ以外は、実施例1と同様にして、両面パイル毛布を得た。
【0050】
[実施例5]
パイル糸として、アクリル繊維「エクスラン(登録商標)」<東洋紡績(株)製>の非収縮タイプ1.0デニール、繊維長51mmと、同収縮タイプ98℃、熱水中での収縮率25%で1.0デニール、繊維長51mmとを重量比60/40で混合し、構成された単繊維の平均繊度1.0デニールを通常のスフ紡紡績法にて2/36メートル番手、撚係数κ=70、K=45の撚数t=420(T/M)、T=189(T/M)を持つ双糸を用いた。該パイル糸の構成繊維本数は500本であり、98℃熱水中での収縮率は25%である。該パイル糸を実施例2と同様にして編成し、片面パイル布帛を得た。
【0051】
これ以外は、実施例1と同様にして、両面パイル毛布を得た。
【0052】
[実施例6]
パイル糸として、アクリル繊維「エクスラン(登録商標)」<東洋紡績(株)製>の非収縮タイプ1.5デニール、繊維長51mmと、同収縮タイプ98℃、熱水中での収縮率25%で1.5デニール、繊維長51mmとを重量比60/40で混合し、構成された単繊維の平均繊度1.5デニールを通常のスフ紡紡績法にて2/36メートル番手、撚係数κ=70、K=45の撚数t=420(T/M)、T=189(T/M)を持つ双糸を用いた。該パイル糸の構成繊維本数は333本であり、98℃熱水中での収縮率は25%である。該パイル糸を実施例2と同様にして編成し、片面パイル布帛を得た。
【0053】
これ以外は、実施例1と同様にして、両面パイル毛布を得た。
【0054】
[比較例1]
パイル糸として、アクリル繊維「エクスラン(登録商標)」<東洋紡績(株)製>の非収縮タイプ2.0デニール、繊維長110〜127mmと、同収縮タイプ98℃熱水中での収縮率25%で2デニール、繊維長110〜127mmとを重量比60/40で混合し、構成された単繊維の平均繊度2.0デニールを通常の梳毛紡紡績法にて2/36メートル番手、撚係数κ=65、K=45の撚数t=390(T/M)、T=176(T/M)を持つ双糸を用いた。該パイル糸の構成繊維本数は250本であり、98℃熱水中での収縮率は25%である。該パイル糸を実施例2と同様にして編成し、片面パイル布帛を得た。
【0055】
これ以外は、実施例1と同様にして、両面パイル毛布を得た。
【0056】
[比較例2]
パイル糸として、アクリル繊維「エクスラン(登録商標)」<東洋紡績(株)製>の非収縮タイプ2.5デニール、繊維長110〜127mmと、同収縮タイプ98℃、熱水中での収縮率25%で2.5デニール、繊維長110〜127mmとを重量比60/40で混合し、構成された単繊維の平均繊度2.5デニールを通常の梳毛紡紡績法にて2/36メートル番手、撚係数κ=65、K=45の撚数t=390(T/M)、T=176(T/M)を持つ双糸を用いた。該パイル糸の構成繊維本数は200本であり、98熱水中での収縮率は25%である。該パイル糸を実施例2と同様にして編成し、片面パイル布帛を得た。
【0057】
これ以外は、実施例1と同様にして、両面パイル毛布を得た。
【0058】
[比較例3]
パイル糸として、アクリル繊維「エクスラン(登録商標)」<東洋紡績(株)製>の非収縮タイプ3.0デニール、繊維長110〜127mmと、同収縮タイプ98℃、熱水中での収縮率25%で3デニール、繊維長110〜127mmとを重量比60/40で混合し、構成された単繊維の平均繊度3.0デニールを通常の梳毛紡紡績法にて2/36メートル番手、撚係数κ=65、K=45の撚数t=390(T/M)、T=176(T/M)を持つ双糸を用いた。該パイル糸の構成繊維本数は167本であり、98℃熱水中での収縮率は25%である。
該パイル糸を実施例2と同様にして編成し、片面パイル布帛を得た。
【0059】
これ以外は、実施例1と同様にして、両面パイル毛布を得た。
【0060】
表3に、実施例2〜6および比較例1〜3の各条件と、得られた両面パイル毛布の凹凸部間硬度差を触感で評価した結果(評価はパネラー5人の平均値で示す)を示す。
【0061】
【表3】
Figure 0003721601
【0062】
表3より、単繊維の平均繊度が1.5デニール以下である実施例2〜6の毛布は、凹部硬度は凸部に対し、硬度差を僅か感じる程度であり、毛布として十分な柔軟さを有していた。特に、パイル糸の98℃、熱水中での収縮率が15〜20%である実施例2〜4のものは、硬度差を感じない程度であり非常に優れていた。一方、平均単繊維繊度が2.0〜3.0デニールである比較例1〜3の毛布は、硬度差が大きいものであった。
【0063】
【発明の効果】
本発明のアクリル繊維毛布製造方法によれば、上述のように、従来の欠点であったアクリル繊維溶剤を付与した凹部の硬化を抑えることができ、優れた感触を有する凹凸柄アクリル繊維マイヤー毛布を製造することができる。

Claims (3)

  1. アクリル繊維100%またはアクリル繊維を60重量%以上含有する混紡糸からなるパイル糸であって、パイル糸を構成する単繊維の平均繊度が1.5デニール以下であり、前記単繊維本数が200本以上である双糸を用いて、ダブルラッセル編機で編成した後、パイル糸中央部を切断して片面パイル布帛原布を得て、前記片面パイル布帛原布のパイル面を、エチレンカーボネイトおよびプロピレンカーボネイトの少なくとも1種のアクリル繊維溶剤を含む印捺糊組成物(A)による第1印捺工程と前記アクリル繊維溶剤を含まない印捺糊組成物(B)による第2印捺工程によりプリント印捺し、このさいの捺糊組成物(A)および(B)中の印捺糊総量は、パイル糸に対して150〜200重量%とし、プリント印捺後プリント揚り布帛のパイル糸に仕上げ処理を施すことを特徴とする、凹凸柄を有するアクリル繊維マイヤー毛布の製造方法。
  2. 第1印捺工程に用いられるアクリル繊維溶剤を含む印捺糊組成物(A)は、アクリル繊維溶剤20〜35重量%、柔軟剤または柔軟平滑剤5〜8重量%、pH調整剤0.5〜2重量%、浸透剤0.5〜2重量%、糊剤2〜5重量%および水20〜60重量%を含み、粘度800〜1000cpsであり第2印捺工程に用いられるアクリル繊維溶剤を含まない印捺糊組成物(B)は、pH調整剤0.5〜2重量%、浸透剤0.5〜2重量%、糊剤4〜10重量%および水70〜90重量%を含み、粘度800〜1000cpsであることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
  3. パイル糸は、さらに98℃熱水の糸収縮率が15〜20%であり、紡績撚が撚係数で、 単糸撚係数(κ) 60≦κ≦80、 双糸撚係数(K) 40≦K≦50であることを特徴とする、請求項1または2に記載の凹凸柄を有するアクリル繊維マイヤー毛布の製造方法
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