JP3720539B2 - 固体電解質型燃料電池の燃料電極材料およびそれを用いた燃料電極成膜方法 - Google Patents

固体電解質型燃料電池の燃料電極材料およびそれを用いた燃料電極成膜方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体電解質型燃料電池の燃料電極材料及びそれを用いた燃料電極成膜方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
固体電解質型燃料電池は図8に模式的に示すように、薄膜状の固体電解質膜1を挟んだ両側に多孔質膜である燃料電極2と空気電極3とを形成したものであり、燃料電極2側に供給される燃料ガスと空気電極3側に供給される酸素を含む気体、例えば空気中の酸素O2 とが固体電解質膜1を介して高温度条件下で電気化学的に反応することによって各電極2,3を介して起電力を得る。
【0003】
すなわち、燃料電極2と固体電解質膜1の部分で高温度条件下、通常、650℃〜1050℃の条件下で化1式の改質反応を起こさせる。
【0004】
【化1】
Figure 0003720539
この改質反応で発生する水素H2 に対して、固体電解質膜1を介して対極する燃料電極2と空気電極3との部分で次の化2式の発電反応を起こし、遊離した電子2e- を集電することによって発電力を得る。
【0005】
【化2】
Figure 0003720539
つまり、燃料電極2においては化2(a)式に示すように、改質反応で生成された水素H2 が、固体電解質膜1から供給される酸化物イオンO2-と反応して水蒸気H2 Oと電子2e- とを生成する。そして燃料電極2で生成された電子2e- が外部回路に回って空気電極3に到達すると、この空気電極3において、化2(b)式に示すように空気中の酸素と反応して酸化物イオンO2-を生成し、これが固体電解質膜1に放出され、燃料電極2側に到達して化2(a)式の反応に供されるのである。
【0006】
このような発電機構の固体電解質型燃料電池では、上記の反応が固体電解質膜1の活性度が優れる1000℃程度で行われるので、固体電解質膜1としては酸化物イオンの透過性に優れているだけでなく、高温安定性に優れ、かつ不導電性である特性が要求され、従来から、イットリア安定化ジルコニアYSZが主に使用されている。
【0007】
また空気電極3には電子導電性が高く、分極を生じにくく、固体電解質膜1との熱膨張率の差が小さいことなどの要求に加えて、強い酸化性雰囲気中に置かれるので耐酸化性に優れていることが要求され、ペロブスカイト型ランタン系複合酸化物、例えば、ランタンストロンチウムマンガナイトが主に使用されている。
【0008】
一方、燃料電極2は、起電力を外部に取り出すための電極であるため電子導電性が高く、かつ分極が生じにくい特性を有し、さらに高温の還元雰囲気中に置かれるので高温での安定性が要求され、従来から、ニッケルNiまたは酸化ニッケルNiO、あるいはニッケルジルコニアサーメットが採用されてきている。
【0009】
ところで、上記の構造の固体電解質型燃料電池によって発電を行う場合、上述したように固体電解質膜1と燃料電極2とは長時間、高温度の雰囲気中にさらされて高温度状態になるが、固体電解質膜1の組成と燃料電極2の組成とが大きく異なっている場合には高温度状態での熱膨張率の差に起因して固体電解質膜1または燃料電極2にクラックが発生したり、両者の接合部分に剥離現象が発生する。
【0010】
そこで本願発明者らは、発電効率を低下させることなく熱膨張率の差に起因する燃料電池セルの損傷を防止することができる燃料電極成膜方法として特開平8−273676号公報で公開されている燃料電極成膜方法を開発した。
【0011】
この従来の燃料電極成膜方法は、ニッケルまたは酸化ニッケル(以下、ニッケルNiと総称する)とYSZとの混合粉末を燃料電極材料とし、固体電解質膜1に接触する側では固体電解質膜の組成であるYSZの配合比を大きくした混合粉末材料を用い、厚さ方向に固体電解質膜から遠ざかるにしたがって上記した改質反応に優れるニッケルの配合比が増加する混合粉末材料を用い、溶射法によって厚さ方向で連続的に、または段階的に配合比が変化する傾斜組成の燃料電極を成膜する方法である。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
上述の従来の燃料電極成膜方法を採用することによって固体電解質膜1と燃料電極2との熱膨張率の差に起因する問題点を解決することができたが、なお、次ような点で改善を必要としていた。それは、従来の燃料電極成膜方法では、使用する燃料電極材料として所定粒径のニッケルの材料粉末とYSZの材料粉末とを単純に配合比を調製しながら混合し、溶射法で固体電解質膜上に成膜するので、YSZ粒子2aに対してニッケル2bの融点が低いため、図9に示すように燃料電極2のミクロな状態においてニッケル2bがラメラ構造となり、すなわち、ニッケル粒子2bが互いにくっつき合って粒子径が大きくなり、燃料ガスの透過特性を阻害して改質反応が十分に促進できない点である。
【0013】
このような問題点は、溶射成膜時のニッケル粒子の表面活性化を抑制すれば改善することができ、そのために表面改質処理を施したニッケル粒子を用いることが考えられる。この表面改質処理の方法には、たとえば、高速気流中衝撃法やメカニカルアロイ法があり、これらの方法で図10に示すように、ニッケル粒子を母粒子11とし、その表面にYSZ微粒子を子粒子12として付着させた材料を得ることができる。
【0014】
ところが、このような表面改質処理したニッケルジルコニア複合粒子の粉末を用いて燃料電極を成膜する場合、次のような解決すべき課題があった。それは、ニッケル粒子を母粒子とし、これにYSZ微粒子を子粒子として付着させた複合粒子材料では、表面積の関係から物理的な方法で得たものについては、NiとYSZとの配合比がNi:YSZ=8:2(重量比)程度となり、YSZの存在比率をこれ以上大きくしても、実際に燃料電極を成膜した場合にYSZが余ってしまい、微粉末であるゆえに高温条件下で凝集してYSZの塊ができてしまってNi−YSZの高分散化が望めず、このため、上述した特開平8−273676号公報に開示された方法を利用した場合、固体電解質膜の表面に燃料電極としてYSZ成分が支配的な層からNi成分が支配的な層までNi粒子とYSZ粒子とが所望の傾斜配合比で、かつ高分散化された燃料電極を成膜することができない問題点があった。
【0015】
これを解決するために特開平7−242902号、243057号、243058号公報に記載されている燃料電極材料を用いることが考えられる。しかしながら、特に燃料電極材料を大量生産する場合を考えると、母粒子の表面に異種の子粒子をそれらの存在比率が異なった複数種の複合材料を製造しようとすると、単に異種材料の粉末を所望の配合比で混合する場合に比べて多大の時間がかかる問題点があった。
【0016】
本発明はこのような従来の問題点に鑑みてなされたもので、Ni粒子とYSZ粒子とを所望の傾斜配合比で高分散化させた燃料電極を成膜することができ、かつガス透過性にも優れた燃料電極を成膜することができる固体電解質型燃料電池の燃料電極材料およびそれを用いた燃料電極成膜方法を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明の固体電解質型燃料電池の燃料電極材料は、ニッケルまたは酸化ニッケル母粒子にイットリア安定化ジルコニア微粒子を子粒子として付着させたニッケルジルコニア複合粒子の粉末と、ポリマー母粒子にイットリア安定化ジルコニア微粒子を子粒子として付着させたポリマージルコニア複合粒子の粉末とを所定の配合比で混合したものである。
【0018】
請求項2の発明の固体電解質型燃料電池の燃料電極材料は、ニッケルまたは酸化ニッケル母粒子にイットリア安定化ジルコニア微粒子を子粒子として付着させたニッケルジルコニア複合粒子の粉末と、ポリマー母粒子にイットリア安定化ジルコニア微粒子を子粒子として付着させたポリマージルコニア複合粒子の粉末とを所定の配合比で混合し、溶射に適切な粒径に造粒したものである。
【0019】
請求項3の発明は、請求項1または2の固体電解質型燃料電池の燃料電極材料において、平均粒径3〜10ミクロンの前記ニッケルまたは酸化ニッケル母粒子に平均粒径0.1ミクロンの前記イットリア安定化ジルコニア微粒子を子粒子として付着させたニッケルジルコニア複合粒子の粉末と、平均粒径3〜10ミクロンの前記ポリマー母粒子に平均粒径0.1ミクロンの前記イットリア安定化ジルコニア微粒子を子粒子として付着させたポリマージルコニア複合粒子の粉末とを用いたものである。
【0020】
請求項4の発明は、請求項2または3の固体電解質型燃料電池の燃料電極材料において、粒径40〜50ミクロンに造粒したものである。
【0021】
この請求項1〜4の発明の固体電解質型燃料電池の燃料電極材料では、ニッケル母粒子の表面にイットリア安定化ジルコニア微粒子が付着しているので固体電解質の表面に燃料電極を溶射によって成膜する場合にニッケルまたは酸化ニッケル粒子がラメラ構造になることがなく、ニッケルまたは酸化ニッケル粒子とイットリア安定化ジルコニア粒子とを高分散化でき、ガス透過率が良く、かつ寿命性能及び分極特性に優れた燃料電極を成膜することができる。
【0022】
またニッケルジルコニア複合粒子とポリマージルコニア複合粒子との配合比を調製することによって主にイットリア安定化ジルコニアが支配的な配合比の材料から主にニッケルが支配的な配合比の材料まで任意に、かつ容易に得ることができ、したがってこの燃料電極材料を使用して固体電解質膜に対して溶射することにより、イットリア安定化ジルコニア成分が支配的な層からニッケル成分が支配的な層まで膜厚方向に傾斜した組成を示す燃料電極を成膜することができる。
【0023】
さらにポリマージルコニア複合粒子のポリマー母粒子は溶射成膜中に分解、消散するので固体電解質膜表面に成膜された燃料電極の組織構造を多孔質にすることができ、上記のニッケルまたは酸化ニッケル粒子とYSZ粒子との高分散化とあいまってガス透過性に優れ、改質反応を促進することができる燃料電極を成膜することができる。
【0024】
請求項5の発明の固体電解質型燃料電池の燃料電極材料は、ポリマー母粒子にニッケルまたは酸化ニッケル微粒子を中間粒子として付着させ、前記中間粒子の表面にイットリア安定化ジルコニア微粒子を子粒子として付着させたポリマーニッケルジルコニア複合粒子の粉末である。
【0025】
請求項6の発明の固体電解質型燃料電池の燃料電極材料は、ポリマー母粒子にニッケルまたは酸化ニッケル微粒子を中間粒子として付着させ、前記中間粒子の表面にイットリア安定化ジルコニア微粒子を子粒子として付着させたポリマーニッケルジルコニア複合粒子の粉末を溶射に適切な粒径に造粒したものである。
【0026】
請求項7の発明は、請求項5または6の固体電解質型燃料電池の燃料電極材料において、平均粒径3〜10ミクロンの前記ポリマー母粒子に平均粒径0.5ミクロンの前記ニッケルまたは酸化ニッケル微粒子を中間粒子として付着させ、この中間粒子の表面に平均粒径0.1ミクロンの前記イットリア安定化ジルコニア微粒子を子粒子として付着させたポリマーニッケルジルコニア複合粒子の粉末を用いたものである。
【0027】
請求項8の発明は、請求項6または7の固体電解質型燃料電池の燃料電極材料において、粒径40〜50ミクロンに造粒したものである。
【0028】
この請求項5〜8の発明の固体電解質型燃料電池の燃料電極材料では、ポリマーニッケルジルコニア複合粒子においてニッケル中間粒子の表面にさらにイットリア安定化ジルコニア微粒子が付着しているので固体電解質の表面に燃料電極を溶射によって成膜する場合にニッケルまたは酸化ニッケル粒子がラメラ構造になることがなく、ニッケルまたは酸化ニッケル粒子とイットリア安定化ジルコニア粒子とを高分散化でき、ガス透過率が良く、寿命性能及び分極特性に優れた燃料電極を成膜することができる。
【0029】
またポリマーニッケルジルコニア複合粒子におけるニッケルまたは酸化ニッケル中間粒子とイットリア安定化ジルコニア子粒子との存在比を調製することによって主にイットリア安定化ジルコニア成分が支配的な配合比の材料から主にニッケル成分が支配的な配合比の材料まで任意に、かつ容易に得ることができ、したがってこの燃料電極材料を使用して固体電解質膜に対して溶射することにより、イットリア安定化ジルコニア成分が支配的な層からニッケル成分が支配的な層まで膜厚方向に傾斜した組成を示す燃料電極を成膜することができる。
【0030】
さらにポリマーニッケルジルコニア複合粒子において、ポリマー母粒子が溶射成膜中に分解、消散するので固体電解質膜表面に成膜された燃料電極の組織構造を多孔質にすることができ、上記のニッケルまたは酸化ニッケル粒子とイットリア安定化ジルコニア粒子との高分散化とあいまってガス透過性に優れ、改質反応を促進することができる燃料電極を成膜することができる。
【0031】
請求項9の発明の固体電解質型燃料電池の燃料電極成膜方法は、ニッケルまたは酸化ニッケル母粒子にイットリア安定化ジルコニア微粒子を子粒子として付着させたニッケルジルコニア複合粒子の粉末と、ポリマー母粒子にイットリア安定化ジルコニア微粒子を子粒子として付着させたポリマージルコニア複合粒子の粉末とを所定の配合比で混合した燃料電極材料を、基体となる固体電解質膜の表面に溶射法によって所定の膜厚に成膜するものである。
【0032】
請求項10の発明の固体電解質型燃料電池の燃料電極成膜方法は、ニッケルまたは酸化ニッケル母粒子にイットリア安定化ジルコニア微粒子を子粒子として付着させたニッケルジルコニア複合粒子の粉末と、ポリマー母粒子にイットリア安定化ジルコニア微粒子を子粒子として付着させたポリマージルコニア複合粒子の粉末とを所定の配合比で混合し、溶射に適切な粒径に造粒した燃料電極材料を、基体となる固体電解質膜の表面に溶射法によって所定の膜厚に成膜するものである。
【0033】
この請求項9及び10の発明の固体電解質型燃料電池の燃料電極成膜方法では、ニッケルジルコニア複合粒子とポリマージルコニア複合粒子との配合比を任意に調製することによって、ニッケルまたは酸化ニッケル粒子とイットリア安定化ジルコニアとが所望の配合比で高分散化し、ガス透過性が良く、寿命性能と分極特性に優れた固体電解質型燃料電池の燃料電極を成膜することができる。
【0034】
請求項11の発明は、請求項9または10の固体電解質型燃料電池の燃料電極成膜方法において、前記固体電解質膜の表面に前記燃料電極材料を溶射法によって成膜するに際して、前記ニッケルジルコニア複合粒子の粉末とポリマージルコニア複合粒子の粉末との配合比を段階的に変化させ、前記所定の膜厚になるまで複数層積層し、膜中のニッケル成分とイットリア安定化ジルコニア成分との組成を膜厚方向で傾斜させるものである。
【0035】
請求項12の発明は、請求項9または10に記載の固体電解質型燃料電池の燃料電極成膜方法において、前記固体電解質膜の表面に前記燃料電極材料を溶射法によって成膜するに際して、前記ニッケルジルコニア複合粒子の粉末とポリマージルコニア複合粒子の粉末との配合比を連続的に変化させつつ前記所定の膜厚になるまで成膜し、膜中のニッケル成分とイットリア安定化ジルコニア成分との組成を膜厚方向で傾斜させるものである。
【0036】
この請求項11及び12の発明の固体電解質型燃料電池の燃料電極成膜方法では、固体電解質膜に近い配合比のイットリア安定化ジルコニア成分が支配的な層から改質反応と電子導電性に優れた配合比のニッケル成分が支配的な層まで膜厚方向に傾斜する組成の燃料電極を形成することにより、固体電解質膜と燃料電極との接合部分の高温状態での熱膨張率の差を小さくし、熱膨張率の差に起因する剥離やクラックの発生を防止し、性能の良い燃料電極を成膜することができる。
【0037】
請求項13の発明の固体電解質型燃料電池の燃料電極成膜方法は、ポリマー母粒子にニッケルまたは酸化ニッケル微粒子を中間粒子として付着させ、前記中間粒子の表面にイットリア安定化ジルコニア微粒子を子粒子として付着させたポリマーニッケルジルコニア複合粒子の粉末の燃料電極材料を、基体となる固体電解質膜の表面に溶射法によって所定の膜厚に成膜するものである。
【0038】
請求項14の発明の固体電解質型燃料電池の燃料電極成膜方法は、ポリマー母粒子にニッケルまたは酸化ニッケル微粒子を中間粒子として付着させ、前記中間粒子の表面にイットリア安定化ジルコニア微粒子を子粒子として付着させたポリマーニッケルジルコニア複合粒子の粉末を溶射に適切な粒径に造粒した燃料電極材料を、基体となる固体電解質膜の表面に溶射法によって所定の膜厚に成膜するものである。
【0039】
この請求項13及び14の発明の固体電解質型燃料電池の燃料電極成膜方法では、ニッケルジルコニア複合粒子におけるニッケル中間粒子とイットリア安定化ジルコニア子粒子との存在比を任意に調製することによって、ニッケルまたは酸化ニッケル粒子とイットリア安定化ジルコニアとが所望の配合比で高分散化し、かつガス透過性が良く、寿命性能及び分極特性に優れた固体電解質型燃料電池の燃料電極を成膜することができる。
【0040】
請求項15の発明は、請求項13または14の固体電解質型燃料電池の燃料電極成膜方法において、前記固体電解質膜の表面に前記燃料電極材料を溶射法によって成膜するに際して、前記燃料電極材料を構成する前記ポリマーニッケルジルコニア複合粒子の粉末として、前記ニッケルまたは酸化ニッケル中間粒子と前記イットリア安定化ジルコニア子粒子との存在比を変化させた複数種のものを用意し、前記固体電解質膜から厚さ方向に遠ざかるに従ってニッケルまたは酸化ニッケルの存在比が大きい種類のポリマーニッケルジルコニア複合粒子の粉末で構成される燃料電極材料を用い、前記所定の膜厚になるまで複数層積層し、膜中のニッケル成分とイットリア安定化ジルコニア成分との組成を膜厚方向で傾斜させるものである。
【0041】
請求項16の発明は、請求項13または14の固体電解質型燃料電池の燃料電極成膜方法において、前記固体電解質膜の表面に前記燃料電極材料を溶射法によって成膜するに際して、前記燃料電極材料を構成する前記ポリマーニッケルジルコニア複合粒子の粉末として、前記ニッケルまたは酸化ニッケル中間粒子と前記イットリア安定化ジルコニア子粒子との存在比を変化させた複数種のものを用意し、前記固体電解質膜から厚さ方向に遠ざかるに従ってニッケルまたは酸化ニッケルの存在比が大きい種類のポリマーニッケルジルコニア複合粒子の粉末で構成される燃料電極材料を用いる割合を大きくしつつ前記所定の膜厚になるまで成膜し、膜中のニッケル成分とイットリア安定化ジルコニア成分との組成を膜厚方向で傾斜させるものである。
【0042】
この請求項15及び16の発明の固体電解質型燃料電池の燃料電極成膜方法では、固体電解質膜に近い配合比のイットリア安定化ジルコニア成分が支配的な層から改質反応と電子導電性に優れた配合比のニッケル成分が支配的な層まで膜厚方向に傾斜した組成の燃料電極を形成することにより、固体電解質膜と燃料電極との接合部分の高温状態での熱膨張率の差を小さくし、熱膨張率の差に起因する剥離やクラックの発生を防止し、性能の良い燃料電極を成膜することができる。
【0043】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて詳説する。図1は本発明の第1の実施の形態の固体電解質型燃料電池の燃料電極材料の原料となるニッケルジルコニア複合粒子21とポリマージルコニア複合粒子22とを示している。
【0044】
ニッケルジルコニア複合粒子21はミクロ的に見ると、ニッケルまたは酸化ニッケル粒子(以下、ニッケル粒子と総称する)21aを母粒子とし、表面改質処理によってその表面にイットリア安定化ジルコニアYSZ微粒子21bを子粒子として付着させた構造である。ニッケル粒子21aは平均粒径が3〜10ミクロンであり、その表面に付着させるYSZ子粒子21bは平均粒径がニッケル母粒子21aより1オーダー小さくする。
【0045】
このニッケルジルコニア複合粒子21の製造には、ニッケル母粒子21aに対して高速気流中衝撃法やメカニカルアロイ法によって物理的にYSZ微粒子21bを付着させる方法や、湿式金属コーティング法のように化学的に付着させる方法が採用される。そしてこのニッケルジルコニア複合粒子21におけるニッケル母粒子21aとYSZ子粒子21bとの存在比は、重量比にしてNi:YSZ=8:2である。ここで表面改質処理法の種類によってYSZの存在比をより大きくすることもできるが、実際に燃料電極成膜をすると、YSZ微粒子の凝集によって燃料電極中にYSZの巨大粒子が出現し、かえってNiとYSZとの高分散化を阻害し、ガス透過性を損ね、改質反応を阻害する問題を引き起こすことになる。
【0046】
燃料電極材料としてニッケルジルコニア複合粒子21と混合するポリマージルコニア複合粒子22は、アクリル系樹脂、高密度ポリエチレン系樹脂、または低密度ポリエチレン系樹脂のポリマー粒子(平均粒径3〜15ミクロン)を母粒子22aとし、上記と同様の表面改質処理によってYSZ微粒子(平均粒径0.1〜0.5ミクロン)を子粒子22bとして付着させた構造であり、ポリマー母粒子22aとイットリア安定化ジルコニア子粒子22bとの存在比は、重量比にして100:15〜30である。
【0047】
上記組成、サイズのニッケルジルコニア複合粒子21とポリマージルコニア複合粒子22とは所定の配合比で湿式混合し、スプレードライ法によって40〜50ミクロンの材料粒子23に造粒することによって図2に示すような燃料電極材料を得る。ここで配合比はニッケルジルコニア複合粒子:ポリマージルコニア複合粒子=1〜9:9〜1(重量比)で任意に調製することができる。そして燃料電極成膜に用いるためには、複数種の傾斜配合比の燃料電極材料を用意し、順次、溶射法によって固体電解質膜上に成膜する。
【0048】
溶射法に採用する溶射装置は図3に示す構成であり、プラズマを発生させる溶射ガン4に対してパウダフィーダ5から燃料電極材料粉末を供給し、溶射ガン4で溶融状態にして固体電解質膜1の表面に吹き付けて燃料電極2を成膜する。そして複数種の傾斜配合比の燃料電極材料を成膜するには、ポリマージルコニア複合粒子の存在比がいちばん高い燃料電極材料粉末からをパウダフィーダ5に所定量だけ供給し、固体電解質膜1にプラズマ溶射によって第1層2−1を成膜し、次に1段階だけポリマージルコニア複合粒子の存在比が低い材料粉末をパウダフィーダ5に供給し、溶射によって第2層2−2を成膜し、以降、ポリマージルコニア複合粒子の存在比を1段階ずつ小さくした燃料電極材料粉末を順次、パウダフィーダ5に供給し、溶射によって第i層2−iを成膜する方法を繰り返す。こうして成膜した燃料電極2は図4に示すような組成が段階的に変化する層構造となる。
【0049】
そして燃料電極2の熱機械的特性は、固体電解質膜1に接合するYSZ成分が支配的な層では固体電解質膜1との熱膨張率の差が小さく、燃料電池の高温運転時の熱膨張率の差に起因する接合部分での剥離や固体電解質膜1または燃料電極2でのクラックの発生を効果的に防止できるものとなる。また燃料電極材料粒子23中のポリマージルコニア複合粒子22は溶射成膜中に分解、消散してしまい、図5に示すように成膜された燃料電極2はNiとYSZとの粒子が高分散化され、かつ多孔質でガス透過性に優れ、改質反応を促進できる組織構造となる。
【0050】
なお、燃料電極2の成膜に上記のように複数種の傾斜配合比の燃料電極材料を用いて配合比の異なる層を積層する代わりに、より簡易な成膜法として熱膨張率の差を考慮して許容できる範囲でニッケルジルコニア複合粒子21とポリマージルコニア複合粒子22との配合比が単一の燃料電極材料粉末を用い、溶射法で成膜することも可能であり、これによっても燃料電極内でのニッケル粒子とYSZ粒子との高分散化が図れ、また燃料電極の多孔質化が図れて発電性能が向上する。
【0051】
また溶射法としては公知の大気圧プラズマ溶射法が最適であるが、その他の方法、例えば、フレーム(酸素−アセチレン)溶射法、高周波プラズマ溶射法、レーザ溶射法を採用することもできる。
【0052】
また溶射法により傾斜組成の燃料電極を成膜するに際し、上記のように複数種の重量配合比の材料粉末を順次に供給して溶射する代わりに、2フィーダ方式を採用し、ニッケルジルコニア複合粒子21の粉末材料とポリマージルコニア複合粒子22の粉末材料とを個別にフィーダから供給し、それぞれの供給量を固体電解質膜1側ではポリマージルコニア複合粒子22の供給量を大きくし、ニッケルジルコニア複合粒子21の供給量を小さくし、膜厚方向に進むにつれ、ポリマージルコニア複合粒子22の供給量を徐々に小さくし、反対にニッケルジルコニア複合粒子21の供給量を徐々に大きくする供給量調整を行う方法を採用することができる。
【0053】
この2フィーダ方式を採用すれば、成膜した燃料電極2はニッケル成分とYSZ成分との配合比が連続的に変化する傾斜組成とすることができる。そして燃料電極2の熱機械的特性は、第1の実施の形態と同様に、固体電解質膜1に接合するYSZ成分が支配的な層では固体電解質膜1との熱膨張率の差が小さく、燃料電池の高温運転時の熱膨張率の差に起因する接合部分での剥離や固体電解質膜1または燃料電極2でのクラックの発生を効果的に防止できるものとなる。
【0054】
また上記の第1の実施の形態では、溶射粉末材料をいったん造粒し、造粒した粉末材料を用いて溶射するようにしたが、溶射装置の性能により、造粒せずに微粉末材料を直接使用することも可能である。
【0055】
次に、本発明の第2の実施の形態を図6に基づいて説明する。第2の実施の形態の固体電解質型燃料電池の燃料電極材料は、ポリマーニッケルジルコニア複合粒子31の粉末を40〜50ミクロン径の材料粒子32に造粒することによって得たものである。
【0056】
ポリマーニッケルジルコニア複合粒子31はミクロ的に見ると、アクリル系樹脂、高密度ポリエチレン系樹脂、または低密度ポリエチレン系樹脂のポリマー粒子(平均粒径3〜15ミクロン)を母粒子31aとし、表面改質処理によってその表面に平均粒径0.5ミクロンのニッケルまたは酸化ニッケル中間粒子31bを付着させ、さらに平均粒径0.1ミクロンのイットリア安定化ジルコニア微粒子31cを子粒子として付着させた構造である。
【0057】
このポリマーニッケルジルコニア複合粒子31の製造には、ポリマー母粒子31aに対して高速気流中衝撃法やメカニカルアロイ法によって物理的にニッケル中間粒子31bおよびイットリア安定化ジルコニア子粒子31cを付着させる方法や、金属コーティング法のように化学的に付着させる方法が採用される。そしてこのポリマーニッケルジルコニア複合粒子31におけるポリマー母粒子31aと、ニッケル中間粒子31bおよびYSZ子粒子31cとの存在比は、重量比にして8:2である。ここで表面改質処理法の種類によってNiおよびYSZの存在比をより大きくすることもできるが、実際に燃料電極成膜をすると、余剰のNi微粒子やYSZ微粒子が凝集して燃料電極中に巨大粒子が出現し、かえってNiとYSZとの高分散化を阻害し、ガス透過性を損ね、改質反応を阻害する問題を引き起こすことになる。
【0058】
ポリマーニッケルジルコニア複合粒子31中のNi中間粒子31bとYSZ子粒子31cとの存在比は、重量比にしてNi:YSZ=1:9〜9:1の範囲で調製することができ、NiとYSZとが所望の存在比となるポリマーニッケルジルコニア複合粒子31を作製するためには、上記の表面改質処理時にニッケルまたは酸化ニッケル粉末とYSZ粉末とを所定の重量比になるように用意し、それぞれをポリマー母粒子表面に付着させる方法をとる。
【0059】
なお、図6では説明の便宜上ポリマーニッケルジルコニア複合粒子31が明確な3層構造に別れているように示してあるが、特に高速気流中衝撃法を用いて表面改質処理を行った場合、実際の組織構造はNi粒子31bとYSZ粒子31cとがポリマー粒子31aの表面に混ざり合いながら食い込んだ状態になる。
【0060】
上記組成、サイズのポリマーニッケルジルコニア複合粒子31は湿式混合し、スプレードライ法によって40〜50ミクロンの材料粒子32に造粒することによって燃料電極材料を得る。そして燃料電極成膜に用いるためには、Ni:YSZの存在比が異なる複数種の燃料電極材料を用意し、YSZ粒子の存在比が大部分を占めている燃料電極材料から順次、溶射法によって固体電解質膜上に成膜する。
【0061】
溶射法に採用する溶射装置は第1の実施の形態と同様に図3に示す構成であり、層構造に成膜する方法も第1の実施の形態と同様である。ただし、ポリマー複合材料を用いるために溶射出力を下げることができる。
【0062】
こうして固体電解質膜1の表面に成膜された燃料電極の熱機械的特性は、固体電解質膜に接合するYSZ成分が支配的な層では固体電解質膜との熱膨張率の差が小さく、燃料電池の高温運転時の熱膨張率の差に起因する接合部分では剥離や固体電解質膜または燃料電極でのクラックの発生を効果的に防止できるものとなる。また燃料電極材料粒子32におけるポリマーニッケルジルコニア複合粒子31中のポリマー母粒子31aは溶射成膜中に分解、消散してしまい、成膜された燃料電極はNiとYSZとの粒子が高分散化され、かつ多孔質でガス透過性に優れ、改質反応を促進できる組織構造となる。
【0063】
なお、この第2の実施の形態においても、燃料電極の成膜に上記のように複数種の傾斜配合比の燃料電極材料を用いて配合比の異なる層を積層する代わりに、より簡易な成膜法として熱膨張率の差を考慮して許容できる範囲でポリマーニッケルジルコニア複合粒子31中のニッケル粒子とイットリア安定化ジルコニア粒子との存在比が単一の燃料電極材料粉末を用い、溶射法で成膜することも可能であり、これによっても燃料電極内でのニッケル粒子とYSZ粒子との高分散化が図れ、また燃料電極の多孔質化が図れて発電性能が向上する。
【0064】
また溶射法としては公知の大気圧プラズマ溶射法が最適であるが、その他の方法、例えば、フレーム(酸素−アセチレン)溶射法、高周波プラズマ溶射法、レーザ溶射法を採用することもできる。
【0065】
また溶射法により傾斜組成の燃料電極を成膜するに際し、上記のように複数種の重量配合比の材料粉末を順次に供給して溶射する代わりに、第1の実施の形態と同様に2フィーダ方式を採用し、比較的ニッケル成分が多いポリマーニッケルジルコニア複合粒子と、比較的YSZ成分が多いポリマーニッケルジルコニア複合粒子との2種類の複合粒子材料を使用して燃料電極を成膜することができる。
【0066】
さらに第2の実施の形態でも溶射粉末材料をいったん造粒し、造粒した粉末材料を用いて溶射するようにしたが、溶射装置の性能により、造粒せずに微粉末材料を直接使用することも可能である。
【0067】
【実施例】
次に、本発明の実施例を説明する。
【0068】
< 実施例1>
平均粒径5ミクロンの酸化ニッケル母粒子21aの粉末に対して平均粒径0.1ミクロンのYSZ微粒子を子粒子21bの粉末として重量比6:4に混合し、高速気流中衝撃法によってニッケルジルコニア複合粒子21の粉末を作製した。また平均粒径5ミクロンの低密度ポリエチレン樹脂のポリマー母粒子22aの粉末に対して平均粒径0.1ミクロンのYSZ微粒子を子粒子22bの粉末として重量比5:1に混合し、高速気流中衝撃法によってポリマージルコニア複合粒子22の粉末を作製した。
【0069】
そしてニッケルジルコニア複合粒子21の粉末に対してポリマージルコニア複合粒子22の粉末をNi:YSZの重量比で1:9,5:5,9:1となる配合比の3種類の燃料電極材料混合粉末を作製し、これらを湿式混合した後、スプレードライ法によって40〜50ミクロン粒径に造粒し、3種類の燃料電極材料23を作製した。
【0070】
次に大気圧プラズマ溶射装置により、
【表1】
Figure 0003720539
表1に示す条件ですでに反対側表面にランタンマンガナイト系の空気電極が成膜されている固体電解質膜1の表面にそれぞれ層厚30ミクロンの3層の燃料電極層を形成した。
【0071】
また発電性能比較のために、平均粒径5ミクロンの酸化ニッケル粒子の粉末と、平均粒径5ミクロンのYSZ粒子の粉末を重量比でNi:YSZ=1:9,5:5,9:1となる配合比の3種類の燃料電極材料混合粉末を作製し、これらも湿式混合した後、スプレードライ法によって40〜50ミクロン粒径に造粒し、3種類の燃料電極材料を作製し、表1の条件で大気圧プラズマ溶射によって固体電解質膜1の表面にそれぞれ層厚30ミクロンの3層の燃料電極層を形成した。
【0072】
このようにして得た本発明の燃料電極と比較例の燃料電極について、まずミクロ構造を観察した。その結果、比較例の場合にはニッケル粒子が図9に示したようなラメラ構造となっていたが、本発明による燃料電極2では図5に示すようにニッケル粒子とYSZ粒子とが高分散化していた。
【0073】
また上記の燃料電極の成膜により完成した燃料電池セルに対して、温度:1000℃、酸化剤:空気、燃料ガス:水素の条件で発電試験を実施したが、得られた結果、比較例では電圧劣化率が2.0%/1000hであったが、本発明による燃料電極を有する燃料電池セルの場合、電圧劣化率が0.9〜1.0%/1000hであり、燃料ガスの透過率が向上し、発電寿命性能及び分極性能が向上した。
【0074】
<実施例2>
実施例1と同じ方法で作製したニッケルジルコニア複合粒子21の粉末と、ポリマージルコニア複合粒子22の粉末とを材料とし、それぞれを湿式混合した後、スプレードライ法によって40〜50ミクロン粒径に造粒して2種類の溶射材料を作製した。
【0075】
次に大気圧プラズマ溶射装置により、2台のフィーダにて各々の溶射材料の供給量をコントロールし、プラズマ溶射ガンの先端部へ供給し、図7に示す重量比の溶射膜90ミクロンを形成した。溶射条件は、実施例1と同様、表1に示すものであった。
【0076】
また発電性能比較のために、平均粒径5ミクロンの酸化ニッケル粒子の粉末と、平均粒径5ミクロンのYSZ粒子の粉末とを2種類の溶射材料とし、実施例1と同じ条件で溶射膜90ミクロンを形成した。
【0077】
上記の溶射により燃料電極が成膜された実施例2の燃料電池セルと比較例2の燃料電池セルに対して、温度:1000℃、酸化剤:空気、燃料ガス:水素の条件で発電試験を実施したが、得られた結果、比較例では電圧劣化率が2.0%/1000hであったが、本発明による燃料電極を有する燃料電池セルの場合、電圧劣化率が1.2%/1000hであり、燃料ガスの透過率が向上し、発電寿命性能及び分極性能が向上した。
【0078】
<実施例3> 実施例1と同じニッケルジルコニア複合粒子21の粉末とポリマージルコニア複合粒子22の粉末とをNi:YSZ=40:60となる重量配合比で混合して燃料電極材料混合粉末を作成し、これを実施例1と同じ方法で湿式混合し、スプレードライ法によって40〜50ミクロン粒径に造粒して燃料電極材料23を作製した。
【0079】
次に大気圧プラズマ溶射装置により、実施例1と同じ条件で固体電解質膜1の表面に膜厚90ミクロンの燃料電極を成膜した。
【0080】
また発電性能比較のために、平均粒径5ミクロンの酸化ニッケル単一粒子の粉末と平均粒径5ミクロンのYSZ単一粒子の粉末とを重量比でNi:YSZ=40:60となる配合比で混合して燃料電極材料混合粉末を作製し、これも湿式混合した後、スプレードライ法によって40〜50ミクロン粒径に造粒し、燃料電極材料を作製し、実施例1における比較例と同様の条件で大気圧プラズマ溶射によって固体電解質膜1の表面に膜厚90ミクロンの燃料電極を成膜した。
【0081】
このようにして得た実施例3の燃料電極と比較例3の燃料電極について、まずミクロな組織構造を観察した。その結果、比較例の場合にはニッケル粒子が図9に示したようなラメラ構造となっていたが、本発明による燃料電極2では図5に示した構造と同じく、ニッケル粒子とYSZ粒子とが高分散化していた。
【0082】
また、上記の燃料電極の成膜により完成した燃料電池セルに対して、温度:1000℃、酸化剤:空気、燃料ガス:水素の条件で発電試験を実施したが、得られた結果、比較例では電圧劣化率が10%/1000hであったが、本発明による燃料電極を有する燃料電池セルの場合、電圧劣化率が0.9〜1.0%/10000hであり、燃料ガスの透過率が向上し、発電寿命性能と分極特性が向上した。
【0083】
<実施例4>
平均粒径5ミクロンの低密度ポリエチレン樹脂のポリマー母粒子の粉末200グラムに対して、平均粒径0.5ミクロンの酸化ニッケル中間粒子の粉末12グラムを投入し、高速気流中衝撃法によってポリマーニッケルジルコニア複合粒子を作製し、さらに平均粒径0.1ミクロンのYSZ子粒子の粉末88グラムを追加投入して、Ni:YSZ=約1:9(重量比)の第1種のポリマーニッケルジルコニア複合粒子の粉末を作製した。
【0084】
また同じ方法で、ポリマー母粒子の粉末200グラムに対して、酸化ニッケル中間粒子の粉末56グラム、YSZ子粒子の粉末44グラムを用いて、Ni:YSZ=約5:5(重量比)の第2種のポリマーニッケルジルコニア複合粒子の粉末を作製し、さらにポリマー母粒子の粉末200グラムに対して、酸化ニッケル中間粒子の粉末92グラム、YSZ子粒子の粉末8グラムを用いて、Ni:YSZ=約9:1(重量比)の第3種のポリマーニッケルジルコニア複合粒子を作製した。
【0085】
そしてこれらの3種類のポリマーニッケルジルコニア複合粒子の粉末それぞれを湿式混合した後、スプレードライ法によって40〜50ミクロン粒径に造粒し、3種類の燃料電極材料32を作製した。
【0086】
次に大気圧プラズマ溶射装置により、実施例1と同じ条件ですでに反対側表面にランタンマンガナイト系の空気電極が成膜されている固体電解質膜1の表面にそれぞれ層厚30ミクロンの3層の燃料電極層を形成した。
【0087】
このようにして得た本発明の燃料電極のミクロな組織構造を観察したが、実施例1の燃料電極と同様にニッケル粒子とYSZ粒子とが高分散化していた。
【0088】
また上記の燃料電極の成膜により完成した燃料電池セルに対して、温度:1000℃、酸化剤:空気、燃料ガス:水素の条件で発電試験を実施したが電圧劣化率が0.6〜0.7%/1000hであり、実施例1の場合よりもさらに燃料ガスの透過率が向上し、発電寿命性能と分極特性が向上した。
【0089】
<実施例5>
実施例4で作製した第1種のNi:YSZ=約1:9(重量比)のポリマーニッケルジルコニア複合粒子の粉末と、第3種のNi:YSZ=約9:1(重量比)のポリマーニッケルジルコニア複合粒子とを溶射原料粉末として用い、これらの2種類のポリマーニッケルジルコニア複合粒子それぞれを湿式混合した後、スプレードライ法によって40〜50ミクロン粒径に造粒し、2種類の燃料電極材料32を作製した。
【0090】
次に実施例2と同様に、大気圧プラズマ溶射装置により、2台のフィーダにて各々の溶射材料の供給量をコントロールし、プラズマ溶射ガンの先端部へ供給し、図7に示す重量比の溶射膜約90ミクロンを形成した。溶射条件は、実施例1と同様、表1に示すものであった。
【0091】
上記の溶射により燃料電極が成膜された実施例5の燃料電池セルの燃料電池セルに対して、温度:1000℃、酸化剤:空気、燃料ガス:水素の条件で発電試験を実施したが、得られた結果、本発明による燃料電極を有する燃料電池セルの場合、電圧劣化率が0.5%/1000hであり、燃料ガスの透過率が向上し、発電寿命性能及び分極性能が向上した。
【0092】
<実施例6>
ニッケル中間粒子とYSZ子粒子との存在比、Ni:YSZ=40:60としたポリマーニッケルジルコニア複合粒子31の粉末を実施例3と同じ方法で作製し、さらに実施例1と同じ方法で湿式混合し、スプレードライ法によって40〜50ミクロン粒径に造粒して燃料電極材料32を作製した。
【0093】
次に、大気圧プラズマ溶射装置により、実施例1と同じ条件で固体電解質膜1の表面に膜厚30ミクロンの燃料電極を成膜した。
【0094】
このようにして得た実施例6の燃料電極のミクロな組織構造を観察したが、図5に示した構造と同じく、ニッケル粒子とYSZ粒子とが高分散化していた。また上記の燃料電極の成膜により完成した燃料電池セルに対して、温度:1000℃、酸化剤:空気、燃料ガス:水素の条件で発電試験を実施したが、本発明による燃料電極を有する燃料電池セルの場合、電圧劣化率0.7〜0.8%/1000hであり、燃料ガスの透過率が向上し、発電寿命性能と分極特性が向上した。
【0095】
【発明の効果】
請求項1〜4の発明の固体電解質型燃料電池の燃料電極材料では、ニッケルジルコニア複合粒子側がニッケル母粒子の表面にイットリア安定化ジルコニア微粒子が付着した構造なので、固体電解質の表面に燃料電極を溶射によって成膜する場合にニッケルまたは酸化ニッケル粒子がラメラ構造になることがなく、ニッケルまたは酸化ニッケル粒子とイットリア安定化ジルコニア粒子とを高分散化でき、ガス透過率の良く、かつ発電寿命性能と分極特性に優れた燃料電極を成膜することができる。
【0096】
またニッケルジルコニア複合粒子とポリマージルコニア複合粒子との配合比を調製することによって主にイットリア安定化ジルコニアが支配的な配合比の材料から主にニッケルが支配的な配合比の材料まで任意に、かつ容易に得ることができ、したがってこの燃料電極材料を使用して固体電解質膜に対して溶射することにより、イットリア安定化ジルコニア成分が支配的な層からニッケル成分が支配的な層まで膜厚方向に連続的に、若しくは段階的な傾斜した組成を示す燃料電極を成膜することができ、このような傾斜組成の燃料電極により高温度状態での使用時に固体電解質膜と燃料電極との間の熱膨張率の差に起因する熱応力の発生を緩和することができ、長寿命化が図れる。
【0097】
さらにポリマージルコニア複合粒子のポリマー母粒子は溶射成膜中に分解、消散するので固体電解質膜表面に成膜された燃料電極の組織構造を多孔質にすることができ、上記のニッケルまたは酸化ニッケル粒子とイットリア安定化ジルコニア粒子との高分散化とあいまってガス透過性に優れ、改質反応を促進することができる燃料電極を成膜することができる。
【0098】
請求項5〜8の発明の固体電解質型燃料電池の燃料電極材料では、ポリマーニッケルジルコニア複合粒子の構造として、ポリマー簿粒子の表面にニッケル中間粒子が付着し、さらにその表面にイットリア安定化ジルコニア微粒子が付着しているので、固体電解質膜の表面に燃料電極を溶射によって成膜する場合にニッケルまたは酸化ニッケル粒子がラメラ構造になることがなく、ニッケルまたは酸化ニッケル粒子とイットリア安定化ジルコニア粒子とを高分散化でき、ガス透過率の良く、かつ発電寿命性能と分極特性に優れた燃料電極を成膜することができる。
【0099】
またポリマーニッケルジルコニア複合粒子におけるニッケルまたは酸化ニッケル中間粒子とイットリア安定化ジルコニア子粒子との存在比を調製することによって主にイットリア安定化ジルコニア成分が支配的な配合比の材料から主にニッケル成分が支配的な配合比の材料まで任意に、かつ容易に得ることができ、したがってこの燃料電極材料を使用して固体電解質膜に対して溶射することにより、イットリア安定化ジルコニア成分が支配的な層からニッケル成分が支配的な層まで膜厚方向に連続的に、若しくは段階的に傾斜した組成を示す燃料電極を成膜することができ、このような傾斜組成の燃料電極により高温度状態での使用時に固体電解質膜と燃料電極との間の熱膨張率の差に起因する熱応力の発生を緩和することができ、長寿命化が図れる。
【0100】
さらにポリマーニッケルジルコニア複合粒子において、ポリマー母粒子が溶射成膜中に分解、消散するので固体電解質膜表面に成膜された燃料電極の組織構造を多孔質にすることができ、上記のニッケルまたは酸化ニッケル粒子とイットリア安定化ジルコニア粒子との高分散化とあいまってガス透過性に優れ、改質反応を促進することができる燃料電極を成膜することができる。
【0101】
請求項9及び10の発明の固体電解質型燃料電池の燃料電極成膜方法では、ニッケルジルコニア複合粒子とポリマージルコニア複合粒子との配合比を任意に調製することによって、ニッケルまたは酸化ニッケル粒子とイットリア安定化ジルコニアとが所望の配合比で高分散化し、かつガス透過性が良く、寿命性能及び分極特性に優れた固体電解質型燃料電池の燃料電極を成膜することができる。
【0102】
請求項11及び12の発明の固体電解質型燃料電池の燃料電極成膜方法では、固体電解質膜に近い配合比のイットリア安定化ジルコニア成分が支配的な層から改質反応と電子導電性に優れた配合比のニッケル成分が支配的な層まで膜厚方向に傾斜する組成の燃料電極を形成することにより、固体電解質膜と燃料電極との接合部分の高温状態での熱膨張率の差を小さくし、熱膨張率の差に起因する剥離やクラックの発生を防止し、性能の良い燃料電極を成膜することができる。
【0103】
請求項13及び14の発明の固体電解質型燃料電池の燃料電極成膜方法では、ニッケルジルコニア複合粒子におけるニッケル中間粒子とイットリア安定化ジルコニア子粒子との存在比を任意に調製することによって、ニッケルまたは酸化ニッケル粒子とイットリア安定化ジルコニアとが所望の配合比で高分散化し、かつガス透過性が良く、かつ発電寿命性能と分極特性に優れた固体電解質型燃料電池の燃料電極を成膜することができる。
【0104】
請求項15及び16の発明の固体電解質型燃料電池の燃料電極成膜方法では、固体電解質膜に近い配合比のイットリア安定化ジルコニア成分が支配的な層から改質反応と電子導電性に優れた配合比のニッケル成分が支配的な層まで膜厚方向に傾斜した組成の燃料電極を形成することにより、固体電解質膜と燃料電極との接合部分の高温状態での熱膨張率の差を小さくし、熱膨張率の差に起因する剥離やクラックの発生を防止し、性能の良い燃料電極を成膜することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の燃料電極材料の製造過程を示す説明図。
【図2】上記の実施の形態の燃料電極材料の組成を示す説明図。
【図3】本発明の第2の実施の形態の燃料電極成膜方法に用いるプラズマ溶射装置の説明図。
【図4】上記の実施の形態の燃料電極成膜方法で成膜した燃料電極の構造を示す断面図。
【図5】上記の実施の形態の燃料電極成膜方法で成膜した燃料電極の組織構造の拡大図。
【図6】本発明の第3の実施の形態の燃料電極材料の製造過程を示す説明図。
【図7】傾斜組成の燃料電極のニッケル成分とYSZ成分との存在比を示すグラフ。
【図8】一般的な固体電解質型燃料電池の説明図。
【図9】従来例の燃料電極成膜方法で成膜した燃料電極の組織構造の拡大図。
【図10】ニッケルジルコニア複合粒子の断面図。
【符号の説明】
1 固体電解質膜
2 燃料電極
2−1,2−2,…,2−i,…,2−n 層
3 空気電極
4 溶射ガン
5 パウダフィーダ
21 ニッケルジルコニア複合粒子
21a ニッケル母粒子
21b イットリア安定化ジルコニア子粒子
22 ポリマージルコニア複合粒子
22a ポリマー母粒子
22b イットリア安定化ジルコニア子粒子
23 燃料電極材料粒子
31 ポリマーニッケルジルコニア複合粒子
31a ポリマー母粒子
31b ニッケル中間粒子
31c イットリア安定化ジルコニア子粒子
32 燃料電極材料粒子

Claims (16)

  1. ニッケルまたは酸化ニッケル母粒子にイットリア安定化ジルコニア微粒子を子粒子として付着させたニッケルジルコニア複合粒子の粉末と、ポリマー母粒子にイットリア安定化ジルコニア微粒子を子粒子として付着させたポリマージルコニア複合粒子の粉末とを所定の配合比で混合して成る固体電解質型燃料電池の燃料電極材料。
  2. ニッケルまたは酸化ニッケル母粒子にイットリア安定化ジルコニア微粒子を子粒子として付着させたニッケルジルコニア複合粒子の粉末と、ポリマー母粒子にイットリア安定化ジルコニア微粒子を子粒子として付着させたポリマージルコニア複合粒子の粉末とを所定の配合比で混合し、溶射に適切な粒径に造粒して成る固体電解質型燃料電池の燃料電極材料。
  3. 平均粒径3〜10ミクロンの前記ニッケルまたは酸化ニッケル母粒子に平均粒径0.1ミクロンの前記イットリア安定化ジルコニア微粒子を子粒子として付着させたニッケルジルコニア複合粒子の粉末と、平均粒径3〜10ミクロンの前記ポリマー母粒子に平均粒径0.1ミクロンの前記イットリア安定化ジルコニア微粒子を子粒子として付着させたポリマージルコニア複合粒子の粉末とを用いたことを特徴とする請求項1または2に記載の固体電解質型燃料電池の燃料電極材料。
  4. 粒径40〜50ミクロンに造粒したことを特徴とする請求項2または3に記載の固体電解質型燃料電池の燃料電極材料。
  5. ポリマー母粒子にニッケルまたは酸化ニッケル微粒子を中間粒子として付着させ、前記中間粒子の表面にイットリア安定化ジルコニア微粒子を子粒子として付着させたポリマーニッケルジルコニア複合粒子の粉末で成る固体電解質型燃料電池の燃料電極材料。
  6. ポリマー母粒子にニッケルまたは酸化ニッケル微粒子を中間粒子として付着させ、前記中間粒子の表面にイットリア安定化ジルコニア微粒子を子粒子として付着させたポリマーニッケルジルコニア複合粒子の粉末を、溶射に適切な粒径に造粒して成る固体電解質型燃料電池の燃料電極材料。
  7. 平均粒径3〜10ミクロンの前記ポリマー母粒子に平均粒径0.5ミクロンの前記ニッケルまたは酸化ニッケル微粒子を中間粒子として付着させ、この中間粒子の表面に平均粒径0.1ミクロンの前記イットリア安定化ジルコニア微粒子を子粒子として付着させたポリマーニッケルジルコニア複合粒子の粉末を用いたことを特徴とする請求項5または6に記載の固体電解質型燃料電池の燃料電極材料。
  8. 粒径40〜50ミクロンに造粒したことを特徴とする請求項6または7に記載の固体電解質型燃料電池の燃料電極材料。
  9. ニッケルまたは酸化ニッケル母粒子にイットリア安定化ジルコニア微粒子を子粒子として付着させたニッケルジルコニア複合粒子の粉末と、ポリマー母粒子にイットリア安定化ジルコニア微粒子を子粒子として付着させたポリマージルコニア複合粒子の粉末とを所定の配合比で混合した燃料電極材料を、基体となる固体電解質膜の表面に溶射法によって所定の膜厚に成膜することを特徴とする固体電解質型燃料電池の燃料電極成膜方法。
  10. ニッケルまたは酸化ニッケル母粒子にイットリア安定化ジルコニア微粒子を子粒子として付着させたニッケルジルコニア複合粒子の粉末と、ポリマー母粒子にイットリア安定化ジルコニア微粒子を子粒子として付着させたポリマージルコニア複合粒子の粉末とを所定の配合比で混合し、溶射に適切な粒径に造粒した燃料電極材料を、基体となる固体電解質膜の表面に溶射法によって所定の膜厚に成膜することを特徴とする固体電解質型燃料電池の燃料電極成膜方法。
  11. 前記固体電解質膜の表面に前記燃料電極材料を溶射法によって成膜するに際して、前記ニッケルジルコニア複合粒子の粉末とポリマージルコニア複合粒子の粉末との配合比を層ごとに段階的に変化させ、前記所定の膜厚になるまで複数層積層し、膜中のニッケル成分とイットリア安定化ジルコニア成分との組成を膜厚方向で傾斜させることを特徴とする請求項9または10に記載の固体電解質型燃料電池の燃料電極成膜方法。
  12. 前記固体電解質膜の表面に前記燃料電極材料を溶射法によって成膜するに際して、前記ニッケルジルコニア複合粒子の粉末とポリマージルコニア複合粒子の粉末との配合比を連続的に変化させつつ前記所定の膜厚になるまで成膜し、膜中のニッケル成分とイットリア安定化ジルコニア成分との組成を膜厚方向で傾斜させることを特徴とする請求項9または10に記載の固体電解質型燃料電池の燃料電極成膜方法。
  13. ポリマー母粒子にニッケルまたは酸化ニッケル微粒子を中間粒子として付着させ、前記中間粒子の表面にイットリア安定化ジルコニア微粒子を子粒子として付着させたポリマーニッケルジルコニア複合粒子の粉末で成る燃料電極材料を、基体となる固体電解質膜の表面に溶射法によって所定の膜厚に成膜することを特徴とする固体電解質型燃料電池の燃料電極成膜方法。
  14. ポリマー母粒子にニッケルまたは酸化ニッケル微粒子を中間粒子として付着させ、前記中間粒子の表面にイットリア安定化ジルコニア微粒子を子粒子として付着させたポリマーニッケルジルコニア複合粒子の粉末を溶射に適切な粒径に造粒した燃料電極材料を、基体となる固体電解質膜の表面に溶射法によって所定の膜厚に成膜することを特徴とする固体電解質型燃料電池の燃料電極成膜方法。
  15. 前記固体電解質膜の表面に前記燃料電極材料を溶射法によって成膜するに際して、前記燃料電極材料を構成する前記ポリマーニッケルジルコニア複合粒子の粉末として、前記ニッケルまたは酸化ニッケル中間粒子と前記イットリア安定化ジルコニア子粒子との存在比を変化させた複数種のものを用意し、前記固体電解質膜から厚さ方向に遠ざかるに従ってニッケルまたは酸化ニッケルの存在比が大きい種類のポリマーニッケルジルコニア複合粒子の粉末を用い、前記所定の膜厚になるまで複数層積層し、膜中のニッケル成分とイットリア安定化ジルコニア成分との組成を膜厚方向で傾斜させることを特徴とする請求項13または14に記載の固体電解質型燃料電池の燃料電極成膜方法。
  16. 前記固体電解質膜の表面に前記燃料電極材料を溶射法によって成膜するに際して、前記燃料電極材料を構成する前記ポリマーニッケルジルコニア複合粒子の粉末として、前記ニッケルまたは酸化ニッケル中間粒子と前記イットリア安定化ジルコニア子粒子との存在比を変化させた複数種のものを用意し、前記固体電解質膜から厚さ方向に遠ざかるに従ってニッケルまたは酸化ニッケルの存在比が大きい種類のポリマーニッケルジルコニア複合粒子の粉末を用いる割合を大きくしつつ前記所定の膜厚になるまで成膜し、膜中のニッケル成分とイットリア安定化ジルコニア成分との組成を膜厚方向で傾斜させることを特徴とする請求項13または14に記載の固体電解質型燃料電池の燃料電極成膜方法。
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