JP3718980B2 - ハロゲン化銀写真乳剤及びそれを用いたハロゲン化銀写真感光材料 - Google Patents

ハロゲン化銀写真乳剤及びそれを用いたハロゲン化銀写真感光材料 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハロゲン化銀写真乳剤及びそれを用いたハロゲン化銀カラー及び反転写真感光材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ハロゲン化銀写真乳剤に対する要求は益々激しく、例えば高感度で優れた粒状性を有し、かつ耐圧性に優れている等、極めて高水準の性能が求められている。
【0003】
ハロゲン化銀写真乳剤の感度を高める方法、特にその量子感度を高める方法として、平板状のハロゲン化銀粒子を用いることが米国特許第4,434,226号、同4,439,520号、同4,414,310号、同4,433,048号、同4,414,306号、同4,459,353号、特開昭58−111935号、同58−111936号、同58−111937号、同58−113927号、同59−99433号等に記載されている。
【0004】
更に、高感度を達成する手段として特開昭63−220238号にはハロゲン化銀粒子内部に転位線を導入する技術が記載されている。
【0005】
一方、ハロゲン化銀写真感光材料の高画質化の動きは著しく、高粒状度を達成するために、小サイズのハロゲン化銀粒子の高感度化の要請はますます強められてきている。小サイズのハロゲン化銀粒子の高感度化を達成する上で、上記の平板状粒子技術、転位線技術は有用なものであるが、平板状粒子の特性を活用するべく高アスペクト比のハロゲン化銀粒子に転位線を用いた場合、小サイズのハロゲン化銀粒子においては必ずしも十分な高感度化を発揮できない。更に、他の写真性能、例えば階調、現像処理安定性をむしろ劣化させる等の弊害をもたらす場合もあることが明らかになってきた。
【0006】
例えば、カラー反転写真感光材料の分野においては、露光の不足を補うために処理による感度調節、いわゆる「増感現像処理」が行われているが、この処理においては、現像時間に対する階調安定性に優れた高感度、硬調なハロゲン化銀粒子の開発が望まれていた。
【0007】
高感度かつ硬調な転位線を有する小粒子サイズのハロゲン化銀粒子については、特開平8−62754号に円相当直径0.6μm以下で転位線導入開始位置を規定したハロゲン化銀粒子の事例が開示されている。しなしながら、該公開特許では、実用上重要である球相当直径0.4μmから0.6μmで、かつ平板状粒子の高感度化の効果を十分に利用できるアスペクト比5以上、即ち円相当直径0.6μm以上の小粒子サイズのハロゲン化銀粒子の性能改良については記載されていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高感度、硬調でかつ現像処理適性が改良されたハロゲン化銀写真乳剤及びそれを用いたハロゲン化銀カラー及び反転写真感光材料を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究の結果、本発明の目的は、下記構成のいずれかを採ることにより達成されることを見い出した。
【0010】
(1) 全投影面積の50%以上が、円相当直径が0.6μmより大きく、球相当直径0.7μm未満の転位線を有する平板状ハロゲン化銀粒子からなり、該粒子の転位線導入開始位置が、転位線を導入するまでに消費した銀量の割合で30%以上50%以下の位置にあり、かつ転位線導入開始前までに形成されたハロゲン化銀粒子の平均沃化銀含有率I1と転位線導入開始以降に形成された範囲における平均沃化銀含有率I2の関係が、10≧I1/I2>0であることを特徴とするハロゲン化銀写真乳剤。
【0011】
(2) 上記I2が0モル%より大きく6モル%以下であることを特徴とする(1)記載のハロゲン化銀写真乳剤。
【0012】
(3) ハロゲン化銀粒子の平均沃化銀含有率が5モル%未満であることを特徴とする(1)又は(2)記載のハロゲン化銀写真乳剤。
【0013】
(4) 支持体上に少なくとも1層の感光性ハロゲン化銀写真乳剤層を有し、該乳剤層が(1)、(2)または(3)のいずれか1項記載のハロゲン化銀写真乳剤を含有することを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【0014】
(5) 支持体上に少なくとも1層の感光性ハロゲン化銀写真乳剤層を有し、該乳剤層が(1)、(2)または(3)のいずれか1項記載のハロゲン化銀写真乳剤を含有することを特徴とするハロゲン化銀反転写真感光材料。
【0015】
本発明者らは、鋭意研究の結果、球相当直径0.7μm未満、円相当直径0.6μm以上の比較的アスペクト比の高い小サイズのハロゲン化銀粒子においては、まず転位線導入開始位置を転位線を導入するまでに消費した銀量の割合で30%以上50%以下の位置に制御することが重要であることを見出した。しかし、それのみでは十分な効果を発揮できず、特に現像処理安定性やカラー反転写真感光材料に求められる増感現像処理適性については十分なものではなかった。更に加えて転位線を導入する前後の平均沃化銀含有率がある関係を満足することが、高感度かつ硬調、現像処理適性に優れた小サイズ、高アスペクト比の転位線を有する平板状粒子に必要であることを見出し本発明に至った。
【0016】
特開平9−222684号には、球相当直径0.55μm、円相当直径0.6μm以上、アスペクト比4.1、ハロゲン化銀粒子の全銀量の約44%で転位線の導入を開始するハロゲン化銀粒子の事例が記載されているが、転位線導入前後での平均沃化銀含有率の効果については一切記載されておらず、本発明の効果について予見できるものではなく、本発明の沃化銀含有率の関係についての要件を満たすものではない。
【0017】
以下、本発明につき更に詳細に説明する。
【0018】
本発明における平板状ハロゲン化銀粒子(以下、単に平板状粒子ということもある)というのは、2つの平行な主平面を有し該主平面の円相当直径(該主平面と同じ投影面積を有する円の直径)と主平面間の距離(即ち粒子の厚み)の比、即ちアスペクト比2以上の粒子を言う。本発明に於ける粒子直径、粒子厚みの測定は米国特許第4,434,226号に記載の方法で求めることができる。
【0019】
本発明においては、平板状粒子の全粒子の投影面積の総和の50%以上がアスペクト比5以上の平板状粒子で占められていることが好ましい。
【0020】
本発明の平板状粒子の球相当直径(該平板状粒子と同体積を有する球の直径)は、0.7μm未満である。
【0021】
本発明の平板状粒子のサイズ分布は、主平面の円相当直径の変動係数が20%以下であることが好ましく、15%以下であることが更に好ましい。また、粒子厚みの変動係数は30%以下であることが好ましく、20%以下であることが更に好ましい。
【0022】
本発明における平板状粒子は、主平面に平行な双晶面を2枚以上有する。双晶面は透過型電子顕微鏡により観察することができる。具体的な方法は次の通りである。まず、含有される平板状粒子が支持体上にほぼ主平面が平行に配向するようにハロゲン化銀写真乳剤を塗布し試料を作製する。これをダイアモンドカッターを用いて切削し、厚さ0.1μm程度の薄切片を作る。この切片を透過型電子顕微鏡で観察することにより双晶面の存在を確認することができる。
【0023】
本発明の平板粒子における2枚の双晶面間距離は、上記の透過型電子顕微鏡を用いた切片の観察において、主平面に対しほぼ垂直に切断された断面を示す平板粒子を任意に1000個以上選び、主平面に平行な偶数枚の双晶面の内、最も距離の短い2枚の双晶面間距離をそれぞれの粒子について求め、加算平均することによって得られる。
【0024】
本発明において、双晶面間距離の平均は0.01〜0.05μmが好ましく、更に好ましくは0.013〜0.025μmである。該双晶面間距離の変動係数は30%以下が好ましく、25%以下が更に好ましい。
【0025】
本発明において、双晶面間距離は、核形成時の過飽和状態に影響を及ぼす因子、例えばゼラチン濃度、ゼラチン種、温度、沃素イオン濃度、臭素イオン濃度、水素イオン濃度、イオン供給速度、攪拌回転数等の諸因子の組合せにおいて適切に選択することにより制御することができる。一般に核形成を高過飽和状態で行うほど、双晶面間距離を狭くすることができる。過飽和因子に関しての詳細は、例えば特開昭63−92924号、特開平1−213637号等の記述を参考にすることができる。
【0026】
本発明の平板状粒子のハロゲン組成としては、沃臭化銀または塩沃臭化銀であることが好ましく、粒子全体の沃化銀含有率は5モル%未満であることが好ましく、1モル%より高く4モル%以下であることが更に好ましい。
【0027】
本発明の平板状粒子の沃化銀含有率の粒子間分布は、沃化銀含有率の変動係数(沃化銀含有率粒子間分布の標準偏差を平均沃化銀含有率で割ったもの)が20%以下であることが好ましく、10%以下であることが更に好ましい。
【0028】
本発明の平板状粒子は、粒子内部にハロゲン組成の異なる相を複数有していてよい。粒子内のハロゲン組成に関する構造は、X線回折法、EPMAによる組成分析法等により調べることができる。
【0029】
本発明の平板状粒子の表面の沃化銀含有率は、0〜15モル%が好ましく、更に好ましくは、0.1〜10モル%である。本発明でいうところの粒子表面の沃化銀含有率とは、特開平8−171157号記載のXPS法により測定される数値である。
【0030】
平板状粒子の製法としては、当業界で知られた方法を適宣組み合わせることができる。例えば、特開昭61−6643号、同61−146305号、同62−157024号、同62−18556号、同63−92942号、同63−151618号、同63−163451号、同63−220238号、同63−311244号等による公知の方法を参考にすることができる。例えば、同時混合法、ダブルジェット法、同時混合法の一つの形式であるハロゲン化銀の生成される液相中のpAgを一定に保ついわゆるコントロールダブルジェット法、異なる組成の可溶性ハロゲン化銀をそれぞれ独立に添加するトリプルジェット法も用いることができる。順混合法を用いることもでき、また粒子を銀イオン過剰の下において形成するいわゆる逆混合法を用いることもできる。ハロゲン化銀粒子の生成される液相中のpAg(銀イオン濃度の逆数の対数値)をハロゲン化銀粒子の成長速度に合わせてコントロールすることが、高度な単分散粒子を得るためには好ましい。pAg値としては、好ましくは7.5〜11.0、更に好ましくは8.0〜10.5である。添加速度の決定にあたっては、特開昭54−48521号、同58−49938号に記載の技術を参考にできる。
【0031】
また、必要に応じてハロゲン化銀溶剤を用いることもできる。しばしば用いられるハロゲン化銀溶剤としては、アンモニア、チオエーテル、チオ尿素類を挙げることができる。チオエーテルに関しては、米国特許第3,271,157号、同第3,790,387号、同第3,574,628号等を参考にすることができる。また、混合法としては特に限定はなく、アンモニアを使わない中性法、アンモニア法、酸性法などを用いることができるが、ハロゲン化銀粒子のカブリを少なくするという点で、pH(水素イオン濃度の逆数の対数値)5.5以下が好ましく、更に好ましくは4.5以下である。
【0032】
本発明のハロゲン化銀粒子は沃素イオンを含有するが、この場合粒子成長において、沃素イオンの添加方法に特に限定はなく、沃化カリウムのようなイオン溶液として添加されてもよく、また、例えば沃化銀微粒子として添加してもよい。
【0033】
本発明のハロゲン化銀乳剤は、特開平1−183417号、同1−183644号、同1−183645号等に開示された粒子と同様にハロゲン化銀微粒子を用いて粒子成長を行なうことも好ましい。特に特願平3−218608号の特許請求の範囲のように粒子成長に用いるハロゲン化銀微粒子は、2種以上であり、そのうちの少なくとも1種が1種類のハロゲン元素のみからなることが好ましい。
【0034】
また、特開平2−167537号特許請求の範囲と同様に粒子成長過程の少なくとも一期間、成長中のハロゲン化銀粒子よりも溶解度の小さいハロゲン化銀粒子の存在下に成長せしめられたハロゲン化銀粒子を含有する乳剤であることが望ましく、溶解度積の小さいハロゲン化銀粒子としては沃化銀を用いることが特に望ましい。
【0035】
本発明の平板状粒子は転位線を有する。
【0036】
平板状粒子の転位は、例えばJ.F.Hamilton著、Photo.Sci.Eng.11(1967)、57頁やT.Shiozawa著、J.Soc.Phot.Sci.Japan 35(1972)、213頁に記載の方法、即ち低温での透過型電子顕微鏡を用いた方法により観察することができる。即ち、乳剤から粒子に転位が発生するほどの圧力をかけないように注意して取り出したハロゲン化銀粒子を、電子顕微鏡用のメッシュにのせ、電子線による損傷(プリントアウト等)を防ぐように試料を冷却した状態で透過法により観察を行う。このとき、粒子の厚みが厚いほど電子線が透過しにくくなるので、高圧型(0.25μmの厚さに対して200kV)の電子顕微鏡を用いた方がより鮮明に観察することができる。このような方法によって得られた粒子写真より、主平面に対し垂直な方向から見た場合の各粒子についての転位の位置及び数を求めることができる。
【0037】
本発明の平板状粒子の転位線導入の開始位置は、転位線を導入するまでに粒子成長に消費した銀量の割合で30%以上50%以下の位置にある。開始位置が50%以上であると、高感度かつ硬調という性能を取り崩す。また、30%以内では感度の低下を引き起こす。この原因については、粒子表面へ向けての転位線長が長くなる、あるいは粒子表面まで転位線が到達しないため、光電子が粒子内部に捕獲される確率が増大し、内部での不必要な潜像形成及び/または再結合の増大のためとも推定される。また、転位線導入時に沃度によるホスト粒子のコンバージョンにより粒子サイズ分布や粒子間沃化銀含有率分布の多分散化をもたらす等の弊害も生じやすい。
【0038】
本発明の平板状粒子の1粒子あたりの転位線の本数は、10本以上が好ましく、30本以上が更に好ましい。
【0039】
本発明の転位線の導入方法については特に限定はないが、転位線導入開始位置において、ホスト粒子に対し高沃化銀含有層を形成し、更にその外側に該層に対し相対的に沃化銀含有率の低いハロゲン化銀層を形成していく、いわゆる急峻なハロゲン組成差に起因するハロゲン化銀格子定数のギャップを利用して転位を導入する方法が好ましい。転位線導入開始位置での高沃化銀層を形成する方法としては、沃化カリウム水溶液等の沃素イオン水溶液と水溶性銀塩溶液をダブルジェットで添加する方法、沃化銀微粒子を添加する方法、沃素イオン水溶液のみを添加する方法、特開平6−11781号、同8−62754号に記載されるような沃化物イオン放出剤を用いる方法等があるが、沃素イオン水溶液と水溶性銀塩溶液をダブルジェットで添加する方法、沃化銀微粒子を添加する方法、沃化物イオン放出剤を用いる方法が好ましい。
【0040】
転位線導入開始時のホスト粒子の最外層の沃化銀含有率は、1モル〜5モル%の範囲にあるのが好ましい。これより高いと格子定数ギャップが小さくなり転位線が入りにくくなり、また1モル%未満では増感処理適性が劣化してくる。
【0041】
本発明の平板状粒子においては、転位線導入開始前までに形成されたハロゲン化銀粒子(ホスト粒子)の平均沃化銀含有率I1と転位線導入開始以降に形成された範囲における平均沃化銀含有率I2の関係が10≧I1/I2>0であり、好ましくは5≧I1/I2>0.2であり、2.5≧I1/I2>0.5が更に好ましい。I1/I2>10では、転位線導入開始時に供給する沃素イオン量が少なくなり、転位線数が減少し高感度を維持するのが困難になり好ましくない。一方、I1=0(I1/I2=0)の場合には、現像処理適性が著しく劣化する。
【0042】
またI2は、6モル%以下であることが硬調な階調と現像処理適性の両立という点で好ましく、4モル%以下が更に好ましい。
【0043】
即ち、本発明の平板状粒子は、転位線の導入開始位置と転位線導入前後での沃化銀含有率を制御することにより、転位線の有する高感度化の機能とハロゲン化銀粒子内部における沃化銀分布に依存する現像特性の機能の両立が可能となり、高感度、硬調かつ現像処理適性、特に増感現像適性に優れた性能を有することができたのである。
【0044】
本発明の平板状粒子は、分散媒の存在下に製造される。ここで、分散媒存在下とは、ゼラチンその他の親水性コロイドを構成し得る物質により保護コロイドが粒子成長を行う混合液中に形成されているものをいい、好ましくはコロイド状の保護ゼラチンの存在下で行う。
【0045】
本発明を実施する際、上記保護コロイドとしてゼラチンを用いる場合は、ゼラチンは石灰処理されたものでも、酸を使用して処理されたものでもどちらでもよい。ゼラチンの製法の詳細はアーサー・グアイス著、ザ・マクロモレキュラー・ケミストリー・オブ・ゼラチン(アカデミック・プレス、1964年発行)に記載がある。
【0046】
保護コロイドとして用いることができるゼラチン以外の親水性コロイドとしては、例えばゼラチン誘導体、ゼラチンと他の高分子とのグラフトポリマー、アルブミン、カゼイン等の蛋白質、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロース硫酸エステル類等の如きセルロース誘導体、アルギン酸ソーダ、澱粉誘導体などの糖誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール部分アセタール、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピラゾール等の単一あるいは共重合体の如き多種の合成親水性高分子物質がある。ゼラチンの場合は、パギー法においてゼリー強度200以上のものを用いることが好ましい。
【0047】
本発明の平板状粒子は、粒子形成時、脱塩工程、化学増感時、塗布前に金属イオンの塩を存在させることも好ましい。例えば、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Sc、Y、La、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Pt、Au、Cd、Hg、Tl、In、Sn、Pb、Bi等を用いることができる。これらの金属は、アンモニウム塩、酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、燐酸塩、水酸塩あるいは6配位錯塩、4配位錯塩などの形で添加できる。例えば、Pb(NO32、K2Fe(CN)6、K3IrCl6、K3RhCl6、K4Ru(CN)6が用いられる。
【0048】
また、米国特許第3,772,031号に記載されているようなカルコゲン化合物を乳剤調製中に加えることもできる。
【0049】
本発明の平板状粒子は、粒子成長後に、不要な可溶性塩類を除去したものであってもよいし、あるいは含有させたままのものでもよい。また、特開昭60−138538号記載の方法のように、ハロゲン化銀成長の任意の点で脱塩を行うことも可能である。該塩類を除去する場合には、リサーチ・ディスクロージャー(Research Disclosure、以下RDと略す)17643号II項に記載の方法に基づいて行うことができる。詳しくは、沈殿形成後、あるいは物理熟成後の乳剤から可溶性塩を除去するためには、ゼラチンをゲル化させて行うヌーデル水洗法を用いてもよく、また無機塩類、アニオン性界面活性剤、アニオン性ポリマー(例えばポリスチレンスルフォン酸)、あるいはゼラチン誘導体(例えばアシル化ゼラチン、カルバモイル化ゼラチン)を利用した沈殿法を用いてもよい。また、特開平8−228468号に記載されているような限外濾過膜を用いた塩除去を行うこともできる。
【0050】
本発明のハロゲン化銀乳剤は還元増感を施してもよい。還元増感は、ハロゲン化銀乳剤又は粒子成長のための混合溶液に還元剤を添加することによって行われる。或いは、ハロゲン化銀乳剤又は粒子成長のための混合溶液をpAg7以下の低pAg下で、又はpH7以上の高pH条件下で熟成又は粒子成長させることによって行われる。これらの方法を組み合わせて行ってもよい。
【0051】
また、特開平7−219093号、特開平7−225438号に示されているように化学増感工程と前後して還元増感を施してもよい。
【0052】
また、下記に示す酸化剤の存在下に還元増感を施してもよい。特に下記化合物〔III〕〜〔V〕の存在下に還元増感を施すことが好ましい。
【0053】
還元剤として好ましいものとして二酸化チオ尿素、アスコルビン酸及びその誘導体、第1錫塩が挙げられる。他の適当な還元剤としては、ボラン化合物、ヒドラジン誘導体、ホルムアミジンスルフィン酸、シラン化合物、アミン及びポリアミン類及び亜硫酸塩等が挙げられる。添加量は、ハロゲン化銀1モル当たり10-2〜10-8モルが好ましい。
【0054】
低pAg熟成を行うためには、銀塩を添加することができるが、水溶性銀塩が好ましい。水溶性銀塩としては硝酸銀が好ましい。熟成時のpAgは7以下が適当であり、好ましくは6以下、更に好ましくは1〜3である(ここで、pAg=−log〔Ag+〕である)。
【0055】
高pH熟成は、例えばハロゲン化銀乳剤或いは粒子成長の混合溶液にアルカリ性化合物を添加することによって行われる。アルカリ性化合物としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、アンモニア等を用いることができる。ハロゲン化銀形成にアンモニア性硝酸銀を添加する方法においては、アンモニアの効果が低下するため、アンモニアを除くアルカリ性化合物が好ましく用いられる。
【0056】
還元増感のための銀塩、アルカリ性化合物の添加方法としては、ラッシュ添加でもよいし、或いは一定時間をかけて添加してもよい。この場合には、一定流量で添加してもよいし、関数様に流量を変化させて添加してもよい。また、何回かに分割して必要量を添加してもよい。可溶性銀塩及び/又は可溶性ハロゲン化物の反応容器中への添加に先立ち、反応容器中に存在せしめてもよいし、或いは可溶性ハロゲン化物溶液中に混入し、ハロゲン化物とともに添加してもよい。更には、可溶性銀塩、可溶性ハロゲン化物とは別個に添加を行ってもよい。
【0057】
本発明のハロゲン化銀乳剤は、その製造工程中に、銀に対する酸化剤を添加してもよい。銀に対する酸化剤とは、金属銀に作用して銀イオンに変換せしめる作用を有する化合物を言う。特にハロゲン化銀粒子の形成過程において副生する銀原子を、銀イオンに変換せしめる化合物が有効である。ここで、生成する銀イオンは、ハロゲン化銀、硫化銀、セレン化銀等の水に離溶な銀塩を生成してもよく、また、硝酸銀等の水に易溶な銀塩を形成してもよい。
【0058】
銀に対する酸化剤は無機物であっても有機物であってもよい。無機の酸化剤としては、オゾン、過酸化水素及びその付加物(例えば、NaBO2・H22・3H20、2NaCO3・3H22、Na427・2H22、2Na2SO4・H22・H2O)、ペルオキシ酸塩(例えば、K228、K226、K428)、ペルオキシ錯体化合物(例えば、K2[Ti(O2)C24]・3H2O、4K2SO4・Ti(O2)OH・SO4・2H2O、Na3[VO(O2)(C242・6H2O])、過マンガン酸塩(例えばKMnO4)、クロム酸塩(例えばK2Cr27)等の酸素酸塩、沃度や臭素等のハロゲン元素、過ハロゲン酸塩(例えば、過沃素酸カリウム)、高原子価の金属の塩(例えば、ヘキサシアノ第二鉄酸カリウム)及びチオスルホン酸塩等がある。又、有機の酸化剤としては、p−キノン等のキノン類、過酢酸や過安息香酸等の有機過酸化物、活性ハロゲンを放出する化合物(例えば、N−ブロムサクシンイミド、クロラミンT、クロラミンB)が挙げられる。
【0059】
好ましい酸化剤は、オゾン、過酸化水素及びその付加物、ハロゲン元素、チオスルフォン酸塩、キノン類であり、特に好ましくは下記式〔III〕〜〔V〕で示されるチオスルフォン酸塩化合物であり、最も好ましいのは式〔III〕で示される化合物である。
【0060】
〔III〕 R′−SO2S−M
〔IV〕 R′−SO2S−R10
〔V〕 R′SO2S−Lm−SSO2−R11
式中、R′、R10及びR11は同じでも異なってもよく、脂肪族基、芳香族基又はヘテロ環基を表し、Mは陽イオンを、Lは2価の連結基を表し、mは0又は1である。
【0061】
酸化剤の添加量は銀1モル当たり10-7〜10-1モル程度、好ましくは10-6〜10-2モル、更には10-5〜10-3モルである。酸化剤の添加時期としては粒子形成中、更にはハロゲン組成の違いによる構造を形成する前又は形成中が好ましい。添加方法としては、写真乳剤に添加剤を加える場合の通常の方法、例えば、水溶性の化合物は適当な濃度の水溶液とし、水に不溶又は難溶な化合物は水と混和し得る適当な有機溶媒(アルコール類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類等)のうちで、写真特性に悪い影響を与えないものに溶解し、溶液として添加する方法等を採用できる。
【0062】
本発明の平板状粒子は、常法により化学増感を施すことができる。即ち、S、Se、Teなどカルコゲンを有する化合物を用いたカルコゲン増感法、金その他の貴金属化合物を用いる貴金属増感法などを単独、または組み合わせて用いることができる。本発明の平板状粒子はセレン増感を施されていることが好ましい。好ましいセレン増感剤としては、特開平9−265145号等に記載されているものを用いることができる。
【0063】
セレン化合物の添加量は、使用する化合物、ハロゲン化銀写真乳剤の種類、化学熟成の条件等によって一様ではないが、通常はハロゲン化銀1モル当たり10-8〜10-3モルの範囲にあり、ハロゲン化銀1モル当たり5×10-8〜1×10-4モルの範囲にあることが好ましい。添加方法は使用するセレン化合物の性質に応じて、水又はメタノール、エタノール、酢酸エチル等の有機溶媒の単独又は混合溶媒に溶解する方法、或いはゼラチン溶液と予め混合して添加する方法、特開平4−140739号に開示されている様に有機溶媒可溶性の重合体との混合溶液の乳化分散物の形態で化学増感時に添加される。
【0064】
セレン増感時のpAg(銀イオン濃度の逆数の対数)の値として好ましくは6.0〜10.0であり、より好ましくは6.5〜9.5である。pHは好ましくは4〜9であり、より好ましくは4.0〜6.5である。温度は好ましくは40〜90℃であり、より好ましくは45〜85℃である。
【0065】
セレン増感には、硫黄増感剤、金増感剤又はその両者を併用することもできる。
【0066】
硫黄増感剤としては、米国特許第1,574,944号、同2,410,689号、同2,278,947号、同2,728,668号、同3,501,313号、同3,656,955号、西独出願公開(OLS)第1,422,869号、特開昭55−45016号、同56−24937号、特開平5−165135号等に記載されている硫黄増感剤を用いることができ、1,3−ジフェニルチオ尿素、トリエチルチオ尿素、1−エチル−3−(2−チアゾリル)チオ尿素などのチオ尿素誘導体、ローダニン誘導体、ジチアカルバミン酸類、ポリスルフィド有機化合物、硫黄単体などが好ましい例として挙げられる。硫黄増感剤の添加量は、ハロゲン化銀乳剤の種類、使用する化合物の種類、熟成条件などにより一様ではないが、ハロゲン化銀1モル当たり1×10-4〜1×10-9モルであることが好ましい。更に好ましくは1×10-5〜1×10-8モルである。
【0067】
金増感剤としては、塩化金酸、チオ硫酸金、チオシアン酸金等の他に、チオ尿素類、ローダニン類、その他各種化合物の金錯体等が挙げられる。金増感剤の添加量は、ハロゲン化銀乳剤の種類、使用する化合物の種類、熟成条件などにより一様ではないが、ハロゲン化銀1モル当たり1×10-4〜1×10-9モルであることが好ましい。更に好ましくは1×10-5〜1×10-8モルである。
【0068】
この他併用できる化学増感剤としては、例えば、米国特許第2,448,060号、同2,566,245号、同2,566,263号等に記載されている白金、パラジウム、ロジウムの様な貴金属の塩等を挙げることができる。
【0069】
これらの増感はハロゲン化銀溶剤であるチオシアン酸塩(チオシアン酸アンモニウム、チオシアン酸カリウム等)や4置換チオ尿素(テトラメチルチオ尿素等)の存在下に行なうこともできる。
【0070】
本発明の平板状粒子は、表面潜像型であってもよいし、内部潜像型であってもよい。特開平9−222684号に記載されているような浅内部潜像型粒子であってもよい。
【0071】
本発明においてハロゲン化銀乳剤は、リサーチ・ディスクロージャー308119(以下RD308119と略す)に記載されているものを用いることができる。下記に記載箇所を示す。
【0072】
〔項目〕 〔RD308119のページ〕
ヨード組織 993 I−A項
製造方法 〃 〃 及び994 E項
晶癖(正常晶) 〃 〃
晶癖(双晶) 〃 〃
エピタキシャル 〃 〃
ハロゲン組成(一様) 993 I−B項
ハロゲン組成(一様でない) 〃 〃
ハロゲンコンバージョン 994 I−C項
ハロゲン置換 〃 〃
金属含有 994 I−D項
単分散 995 I−F項
溶媒添加 〃 〃
潜像形成位置(表面) 995 I−G項
潜像形成位置(内部) 〃 〃
適用感材(ネガ) 995 I−H項
適用感材(ポジ) 〃 〃
乳剤を混合して用いる 〃 I−J項
脱塩 〃 II−A項
本発明のハロゲン化銀乳剤は、物理熟成、化学熟成及び分光増感を行ったものを使用することができる。このような工程で使用される添加剤は、リサーチ・ディスクロージャーNo.17643、No.18716及びNo.308119(それぞれ、以下RD17643、RD18716及びRD308119と略す)に記載されている。
【0073】
下記に記載箇所を示す。
【0074】
Figure 0003718980
本発明に使用できる公知の写真用添加剤も上記リサーチ・ディスクロージャーに記載されている。下記に関連のある記載箇所を示す。
【0075】
Figure 0003718980
本発明には種々のカプラーを使用することができ、その具体例は、上記リサーチ・ディスクロージャーに記載されている。下記に関連ある記載箇所を示す。
【0076】
〔項目〕 〔RD308119の頁〕 〔RD17643〕
イエロ−カプラー 1001 VII−D項 VIIC〜G項
マゼンタカプラー 1001 VII−D項 VIIC〜G項
シアンカプラー 1001 VII−D項 VIIC〜G項
カラードカプラー 1002 VII−G項 VIIG項
DIRカプラー 1001 VII−F項 VIIF項
BARカプラー 1002 VII−F項
その他の有用残基
放出カプラー 1001 VII−F項
アルカリ可溶カプラー 1001 VII−E項
本発明に使用する添加剤は、RD308119XIVに記載されている分散法などにより、添加することができる。
【0077】
本発明においては、前述RD17643 28頁、RD18716 647〜8頁及びRD308119のXIXに記載されている支持体を使用することができる。
【0078】
本発明の感光材料には、前述RD308119 VII−K項に記載されているフィルタ層や中間層等の補助層を設けることができる。
【0079】
本発明の感光材料は、前述RD308119 VII−K項に記載されている順層、逆層、ユニット構成等の様々な層構成をとることができる。
【0080】
本発明は、一般用もしくは映画用のカラーネガフィルム、スライド用もしくはテレビ用のカラー反転フィルム、カラーペーパー、カラーポジフィルム、カラー反転ペーパーに代表される種々のカラー感光材料に適用することができる。
【0081】
本発明の感光材料は前述RD17643 28〜29頁、RD18716 647頁及びRD308119のXIXに記載された通常の方法によって、現像処理することができる。
【0082】
本発明の乳剤には特開平8−171157号に記載されている一般式〔I〕、〔II〕または〔III〕の化合物を含有することが好ましい。
【0083】
本発明の感光材料には、例えば、写真感光材料の種類・製造番号、メーカー名、乳剤No.等の写真感光材料に関する各種の情報、例えば、撮影日・時、絞り、露出時間、照明の条件、使用フィルター、天候、撮影枠の大きさ、撮影機の機種、アナモルフィックレンズの使用等のカメラ撮影時の各種の情報、例えば、プリント枚数、フィルターの選択、顧客の色の好み、トリミング枠の大きさ等のプリント時に必要な各種の情報、プリント時に得られた同様の各種の情報、その他顧客情報等を入力するために、磁気記録層を設けてもよい。
【0084】
本発明においては、磁気記録層は支持体に対して写真構成層とは反対側に塗設されることが好ましく、支持体側から順に、下引き層、帯電防止層(導電層)、磁気記録層、滑り層が構成されることが好ましい。
【0085】
磁気記録層に用いられる磁性体微粉末としては、金属磁性体粉末、酸化鉄磁性体粉末、Coドープ酸化鉄磁性体粉末、二酸化クロム磁性体粉末、バリウムフェライト磁性体粉末などが使用できる。これらの磁性体粉末の製法は既知であり、公知の方法に従って製造することができる。
【0086】
磁気記録層の光学濃度は、写真画像への影響を考えると小さいことが好ましく、1.5以下、より好ましくは0.2以下、特に好ましくは0.1以下である。光学濃度の測定法は、コニカ(製)サクラ濃度計PDA−65を用い、ブルー光を透過するフィルターを用いて、436nmの波長の光を塗膜に垂直に入射させ、該塗膜による光の吸収を算出する方法による。
【0087】
磁気記録層の感光材料1m2当たりの磁化量は3×10-2emu以上であることが好ましい。該磁化量は、東英工業製試料振動型磁束計(VSM−3)を用いて、一定体積の塗膜の塗布方向に外部磁界1000Oeで一度飽和させた後外部磁界を減少させて0にした時の磁束密度(残留磁束密度)を計測して、これを写真感光材料1m2当たりに含まれる透明磁性層の体積に換算して求めることができる。透明磁性層の単位面積当たりの磁化量が3×10-2emuより小さいと磁気記録の入出力に支障をきたす。
【0088】
磁気記録層の厚みは、0.01〜20μmが好ましく、より好ましくは0.05〜15μm、更に好ましくは0.1〜10μmである。
【0089】
磁気記録層を構成するバインダーとしては、ビニル系樹脂、セルロースエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂等が好ましく用いられる。又、水系エマルジョン樹脂を用いて、有機溶剤を用いることなく水系塗布によってバインダーを形成することも好ましい。更にこれらのバインダーは、硬化剤による硬化、熱硬化、電子線硬化等によって物理的特性を調整することが必要である。特に、ポリイソシアネート型硬化剤の添加による硬化が好ましい。
【0090】
磁気記録層中には、磁気ヘッドの目づまりを防止するために研磨剤が添加されることが必要であり、非磁性金属酸化物粒子、特にアルミナ微粒子の添加が好ましい。
【0091】
感光材料の支持体としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステルフィルム、セルローストリアセテートフィルム、セルロースジアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリオレフィンフィルム等を挙げることができる。特に、特開平1−244446号、同1−291248号、同1−298350号、同2−89045号、同2−93641号、同2−181749号、同2−214852号、同2−291135号等に示されるような含水率の高いポリエステルを用いると支持体を薄膜化しても現像処理後の巻癖回復性に優れる。
【0092】
本発明において、好ましく用いられる支持体はPET及びPENである。これらを用いる場合、厚みは50〜100μm、特に60〜90μmであることが好ましい。
【0093】
本発明の感光材料は、ZnO、V25、TiO2、SnO2、Al23、In23、SiO2、MgO、BaO、MoO3等の金属酸化物粒子を含有する導電層を有するのが好ましく、該金属酸化物粒子は、酸素欠陥を含むもの及び用いられる金属酸化物に対してドナーを形成する異種原子を少量含むもの等が一般的に言って導電性が高いので好ましく、特に後者はハロゲン化銀乳剤にカブリを与えないので好ましい。
【0094】
前記導電層や下引き層のバインダーとしては、磁気記録層と同様のものが利用できる。
【0095】
また磁気記録層の上に滑り層として、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、ポリオルガノシロキサン、流動パラフィン、ワックス類等を塗設することが好ましい。
【0096】
本発明の感光材料を、ロール状撮影用カラー感光材料とする場合、カメラやパトローネの小型化が達成されるだけでなく、資源の節約が可能となり、現像済みのネガフィルムの保存スペースが僅かで済むことから、フィルム巾は20〜35mm程度、好ましくは20〜30mmである。撮影画面面積も300〜700mm2程度、好ましくは400〜600mm2の範囲にあれば、最終的な写真プリントの画質を損なうことなくスモールフォーマット化が可能であり、従来以上にパトローネの小型化、カメラの小型化が達成できる。又、撮影画面の縦横比(アスペクト比)は限定されず、従来の126サイズの1:1、ハーフサイズの1:1.4、135(標準)サイズの1:1.5、ハイビジョンタイプの1:1.8、パノラマタイプの1:3など各種のものに利用できる。
【0097】
本発明の感光材料をロール状の形態で使用する場合には、カートリッジに収納した形態を採るのが好ましい。カートリッジとして最も一般的なものは現在の135フォーマットのパトローネである。その他、実開昭58−67329号、同58−195236号、特開昭58−181035号、同58−182634号、米国特許4,221,479号、特開平1−231045号、同2−170156号、同2−199451号、同2−124564号、同2−201441号、同2−205843号、同2−210346号、同2−211443号、同2−214853号、同2−264248号、同3−37645号、同3−37646号、米国特許第4,846,418号、同4,848,693号、同4,832,275号等で提案されたカートリッジも使用できる。又、特開平5−210201号の「小型の写真用ロールフィルムパトローネとフィルムカメラ」に適用することができる。
【0098】
本発明のハロゲン化銀写真乳剤はリバーサル(反転)フィルム用の現像処理及びカラーフィルム用の現像処理において特に効果が大きい。
【0099】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。
【0100】
実施例1
《乳剤1−Aの調製》
核形成工程
反応容器内の下記反応母液(Gr−1)を30℃に保ち、特開昭62−160128号公報記載の混合攪拌装置を用いて攪拌回転数400回転/分で攪拌しながら、1Nの硫酸を用いてpHを1.96に調整した。その後ダブルジェット法を用いて(S−1)液と(H−1)液を一定の流量で1分間で添加し核形成を行った。
【0101】
(Gr−1)
アルカリ処理不活性ゼラチン(平均分子量10万) 40.50g
臭化カリウム 12.40g
蒸留水で16.2Lに仕上げる。
【0102】
(S−1)
硝酸銀 862.5g
蒸留水で4.06Lに仕上げる。
【0103】
(H−1)
臭化カリウム 604.5g
蒸留水で4.06Lに仕上げる。
【0104】
熟成工程
上記核形成工程終了後に(G−1)液を加え、30分間を要して60℃に昇温した。この間、反応容器内の乳剤の銀電位(飽和銀−塩化銀電極を比較電極として銀イオン選択電極で測定)を2Nの臭化カリウム溶液を用いて6mVに制御した。続いて、アンモニア水溶液を加えてpHを9.3に調整し、更に7分間保持した後、酢酸水溶液を用いてpHを6.1に調整した。この間の銀電位を2Nの臭化カリウム溶液を用いて6mVに制御した。
【0105】
(G−1)
アルカリ処理不活性ゼラチン(平均分子量10万) 173.9g
HO(CH2CH2O)m(C(CH3)HCH2O)19.8(CH2CH2O)n
(m+n=9.77)の10重量%メタノール溶液 5.80ml
蒸留水で4.22Lに仕上げる。
【0106】
粒子成長工程
熟成工程終了後、続いてダブルジェット法を用いて前記(S−1)液と(H−1)液を流量を加速しながら(終了時と開始時の添加流量の比が約12倍)37分間で添加した。ここまでで粒子全体の銀量の38%を消費した。添加終了後に(G−2)液を加え、攪拌回転数を550回転/分に調整した後、引き続いて銀電位6mVで3.5N硝酸銀水溶液(S−2)1.02Lと3.5N臭化カリウム水溶液(H−2)を流量を加速しながら(終了時と開始時の添加流量の比が約1.6倍)35分間で添加した(この添加で粒子全体の銀量の27%を消費した)。上記添加終了後に、反応容器内の乳剤温度を15分間を要して40℃に降温した。その後、3Nの臭化カリウム溶液を用いて反応容器内の銀電位を−39mVに調整し、続いて(F−1)液を588.8g加えた後、3.5N硝酸銀水溶液(S−3)1.23Lと3.5N臭化カリウム水溶液(H−3)を流量を加速しながら(終了時と開始時の添加流量の比が約1.2倍)25分間で添加した(この添加で粒子全体の銀量の32.5%を消費した)。
【0107】
(G−2)
オセインゼラチン 284.9g
HO(CH2CH2O)m(C(CH3)HCH2O)19.8(CH2CH2O)n
(m+n=9.77)の10重量%メタノール溶液 7.75ml
蒸留水で1.93Lに仕上げる。
【0108】
(F−1)
3重量%のゼラチンと沃化銀粒子(平均粒径0.05μm)からなる微粒子乳剤(*)を調製した。
【0109】
*調製法は以下の通り:
0.06モルの沃化カリウムを含む6.0重量%のゼラチン溶液5000mlに、7.06モルの硝酸銀と7.06モルの沃化カリウムを含む水溶液、それぞれ2000mlを10分間かけて添加した。微粒子形成中のpHは硝酸を用いて2.0に、温度は40℃に制御した。微粒子形成後に、炭酸ナトリウム水溶液を用いてpHを6.0に調整した。仕上がり重量は12.53kgであった。
【0110】
上記粒子成長後に、特開平5−72658号に記載の方法に従い、脱塩処理を施し、その後ゼラチンを加えて分散し、40℃にてpHを5.80、pAgを8.06に調整した。かくして得られた乳剤を1−Aとする。
【0111】
得られたハロゲン化銀粒子の電子顕微鏡写真から、球相当直径0.8μm、平均円相当直径1.35μm、全投影面積の50%以上の粒子がアスペクト比7.2以上(以下、平均アスペクト比とする)、円相当直径の変動係数15%の平板状粒子であることが確認された。また、本明細書中に記載する方法により転位線の有無を観察したところ、全投影面積の50%以上の粒子が転位線を10本以上有する粒子であった。
【0112】
《乳剤1−Bの調製》
硝酸銀水溶液S−2とS−3の添加量を粒子全体の銀量の7%、52.5%とし、その添加量に応じて添加時間を調整した以外は乳剤1−Aと同様にして乳剤1−Bを調製した。全投影面積の50%以上の粒子が転位線を10本以上有する粒子であった。
【0113】
《乳剤1−Cの調製》
溶液H−2を臭化カリウム3.36Nと沃化カリウム0.14Nの混合溶液に変更した以外は乳剤1−Bと同様にして乳剤1−Cを調製した。全投影面積の50%以上の粒子が転位線を10本以上有する粒子であった。
【0114】
乳剤1−A、B、Cのハロゲン化銀粒子の特性を表1に示す。
【0115】
乳剤1−A、B、Cに対し、下記増感色素S−1、S−2、チオシアン酸カリウム、塩化金酸、チオ硫酸ナトリウム、トリフェニルフォスフィンセレナイドを添加し、常法に従い、カブリ−感度関係が最適になるように化学増感を施した。
【0116】
続いて、各々の乳剤に下記の安定剤ST−1、及びカブリ防止剤AF−1、AF−2を各々ハロゲン化銀1モル当たり1g、3mg、20mg加えた。
【0117】
得られた乳剤各々に下記カプラーC−1の分散物を加え、更に延展剤及び硬膜剤等の一般的な写真添加剤を加えて塗布液を作製し、各々を下引きされた三酢酸セルロース支持体上に常法により塗布、乾燥して試料101〜103を作製した。
【0118】
これらの試料を常法に従い5400Kの光源を用い、東芝ガラスフィルターO−56を通して1/100秒の露光時間でウェッジ露光を行い、下記の処理工程に従って現像処理を行い、感度、階調、増感処理特性を評価した。
【0119】
感度は、発色濃度が1.0になる濃度を与える露光量の逆数から求め、試料101の感度を100とした相対値である。
【0120】
階調Gは、発色濃度が0.5を与える露光量の1/10の所での発色濃度から0.5を引いた値であり、試料101のG1を1とした相対値である。即ちG1が大きいほど硬調な乳剤である。増感処理特性は、下記現像処理工程において、第1現像時間T1=7分とした場合と4分の場合のG1の変動比ΔG1=G1(T1=6分)/G1(T1=4分)であり、ΔG1が1に近いほど現像時間による階調変動が小さく好ましいことを示す。
【0121】
《現像処理工程》
処理工程 処理時間 処理温度
第1現像 T1 38℃
水 洗 2分 38℃
反 転 2分 38℃
発色現像 6分 38℃
調 整 2分 38℃
漂 白 6分 38℃
定 着 4分 38℃
水 洗 4分 38℃
安 定 1分 常 温
乾 燥
上記処理工程に用いた処理液組成は以下の通りである。
【0122】
第1現像液
テトラポリ燐酸ナトリウム 2g
亜硫酸ナトリウム 20g
ハイドロキノン・モノスルホネート 30g
炭酸ナトリウム(一水塩) 30g
1−フェニル−4−メチル−4−ヒドロキシメチル−3−ピラゾリドン2g
臭化カリウム 2.5g
チオシアン酸カリウム 1.2g
沃化カリウム(0.1%溶液) 2cc.
水を加えて1000ccに仕上げた。(pH 9.60)
反転液
ニトリロトリメチレンホスホン酸・六ナトリウム塩 3g
塩化第一錫(二水塩) 1g
p−アミノフノェール 0.1g
水酸化ナトリウム 8g
氷酢酸 15cc.
水を加えて1000ccに仕上げた。(pH 5.75)
発色現像液
テトラポリ燐酸ナトリウム 3g
亜硫酸ナトリウム 7g
第三燐酸ナトリウム(二水塩) 36g
臭化カリウム 1g
沃化カリウム(0.1%溶液) 90cc.
水酸化ナトリウム 3g
シトラジン酸 1.5g
N−エチル−N−(β−メタンスルホンアミドエチル)−3−メチル
−4−アミノアニリン・硫酸塩 11g
2,2−エチレンジチオジエタノール 1g
水を加えて1000ccに仕上げた。(pH 11.70)
コンディショナー
亜硫酸ナトリウム 12g
エチレンジアミン四酢酸ナトリウム(二水塩) 8g
チオグリセリン 0.4cc.
氷酢酸 3cc.
水を加えて1000ccに仕上げた。(pH 6.15)
漂白液
エチレンジアミン四酢酸ナトリウム(二水塩) 2g
エチレンジアミン四酢酸鉄(III)アンモニウム(二水塩) 120g
臭化アンモニウム 100g
水を加えて1000ccに仕上げた。(pH 5.56)
定着液
チオ硫酸アンモニウム 80g
亜硫酸ナトリウム 5g
重亜硫酸ナトリウム 5g
水を加えて1000ccに仕上げた。(pH 6.60)
安定液
ホルマリン(37重量%) 5cc.
コニダックス(コニカ株式会社製) 5cc.
水を加えて1000ccに仕上げた。(pH 7.00)
尚、各要件の変化のさせ方がわかりやすいように、以下の実施例2〜5で用いるハロゲン化銀粒子の特性も併せて表1に示す。
【0123】
【表1】
Figure 0003718980
【0124】
【表2】
Figure 0003718980
【0125】
表2に示すように、球相当直径が0.8μmと大きく本発明外のハロゲン化銀粒子1−A、1−B、1−Cを用いた試料101〜103においては、球相当直径以外は本発明の要件を満たしている試料103においても試料101、102と総合性能はほぼ同等であり、その効果は見られない。
【0126】
実施例2
《乳剤2−Aの調製》
核形成工程
反応容器内の実施例1記載の反応母液(Gr−1)を30℃に保ち、特開昭62−160128号公報記載の混合攪拌装置を用いて攪拌回転数400回転/分で攪拌しながら、1Nの硫酸を用いてpHを1.96に調整した。その後ダブルジェット法を用いて(S−4)液と(H−4)液を1分間で添加し核形成を行った(この添加で粒子全体の銀量の15.7%を消費した)。
【0127】
(S−4)
硝酸銀 63g
蒸留水で0.30Lに仕上げる。
【0128】
(H−4)
臭化カリウム 44.2g
蒸留水で0.30Lに仕上げる。
【0129】
熟成工程
上記核形成工程終了後に実施例1記載の(G−1)液を加え、30分間を要して60℃に昇温した。この間、反応容器内の乳剤の銀電位(飽和銀−塩化銀電極を比較電極として銀イオン選択電極で測定)を2Nの臭化カリウム溶液を用いて6mVに制御した。続いて、アンモニア水溶液を加えてpHを9.3に調整し、更に7分間保持した後、酢酸水溶液を用いてpHを6.1に調整した。この間の銀電位を2Nの臭化カリウム溶液を用いて6mVに制御した。
【0130】
粒子成長工程
熟成工程終了後、実施例1記載の(G−2)液を加え、攪拌回転数を550回転/分に調整した後、硝酸銀水溶液を加え、銀電位を40mVに調整した。引き続いて銀電位40mVで3.5N硝酸銀水溶液(S−2)0.30Lと臭化カリウム3.5Nを含む水溶液(H−2)を流量を加速しながら(終了時と開始時の添加流量の比が約1.3倍)95分間で添加した(この添加で粒子全体の銀量の44.3%を消費した)。上記添加終了後に、反応容器内の乳剤温度を15分間を要して40℃に降温した。その後、3Nの臭化カリウム溶液を用いて反応容器内の銀電位を−39mVに調整し、続いて実施例1記載の(F−1)液を125.8g加えた後、3.5N硝酸銀水溶液(S−3)0.25Lと3.5N臭化カリウム水溶液(H−3)を一定流量で10分間で添加した(この添加で粒子全体の銀量の37%を消費した)。
【0131】
上記粒子成長後に、特開平5−72658号に記載の方法に従い、脱塩処理を施し、その後ゼラチンを加えて分散し、40℃にてpHを5.80、pAgを8.06に調整した。かくして得られた乳剤を2−Aとする。
【0132】
得られたハロゲン化銀粒子の電子顕微鏡写真から、球相当直径0.45μm、平均円相当直径0.5μm、全投影面積の50%以上の粒子が平均アスペクト比2、円相当直径の変動係数18%の低アスペクト比の平板状粒子であることが確認された。また、本明細書中に記載する方法により転位線の有無を観察したところ、全投影面積の50%以上の粒子が転位線を10本以上有する粒子であった。
【0133】
《乳剤2−Bの調製》
硝酸銀水溶液S−2とS−3の添加量を粒子全体の銀量の29.3%、52%とし、その添加量に応じて添加時間を調整した以外は、乳剤2−Aと同様にして乳剤2−Bを調製した。全投影面積の50%以上の粒子が転位線を10本以上有する粒子であった。
【0134】
乳剤2−A、Bのハロゲン化銀粒子の特性は表1に示す。
【0135】
実施例1と同様にして、乳剤2−A、2−Bに化学増感を施し、塗布、乾燥を行った試料201、202を作製した。
【0136】
これらの試料を実施例1と同様にして露光、現像を行った後、感度、階調、増感処理特性を評価した。
【0137】
結果を表3に示す。
【0138】
感度、階調は試料201を各々100、1とした相対値を示す。表3中の諸性能値の定義は実施例1と同様である。
【0139】
【表3】
Figure 0003718980
【0140】
表3に示すように、円相当直径が0.6μm以下であり本発明外のハロゲン化銀粒子2−A、2−Bを用いた試料201、202においては、円相当直径以外は本発明の要件を満たしている試料202においても、試料201に対しむしろ感度、階調に劣り効果を発現していない。
【0141】
実施例3
《乳剤3−Aの調製》
核形成工程
反応容器内の実施例1記載の反応母液(Gr−1)を30℃に保ち、特開昭62−160128号公報記載の混合攪拌装置を用いて攪拌回転数400回転/分で攪拌しながら、1Nの硫酸を用いてpHを1.96に調整した。その後ダブルジェット法を用いて(S−4)液と(H−4)液を1分間で添加し核形成を行った(この添加で粒子全体の銀量の11.4%を消費した)。
【0142】
(S−4)
硝酸銀 63g
蒸留水で0.30Lに仕上げる。
【0143】
(H−4)
臭化カリウム 44.2g
蒸留水で0.30Lに仕上げる。
【0144】
熟成工程
上記核形成工程終了後に実施例1記載の(G−1)液を加え、30分間を要して60℃に昇温した。この間、反応容器内の乳剤の銀電位(飽和銀−塩化銀電極を比較電極として銀イオン選択電極で測定)を2Nの臭化カリウム溶液を用いて6mVに制御した。続いて、アンモニア水溶液を加えてpHを9.3に調整し、更に7分間保持した後、酢酸水溶液を用いてpHを6.1に調整した。この間の銀電位を2Nの臭化カリウム溶液を用いて6mVに制御した。
【0145】
粒子成長工程
熟成工程終了後、実施例1記載の(G−2)液を加え、攪拌回転数を550回転/分に調整した後、引き続いて銀電位6mVで3.5N硝酸銀水溶液(S−2)0.82Lと臭化カリウム3.378Nと沃化カリウム0.122Nを含む水溶液(H−2)を流量を加速しながら(終了時と開始時の添加流量の比が約1.5倍)40分間で添加した。
【0146】
上記粒子成長後に、特開平5−72658号に記載の方法に従い、脱塩処理を施し、その後ゼラチンを加えて分散し、40℃にてpHを5.80、pAgを8.06に調整した。かくして得られた乳剤を3−Aとする。
【0147】
得られたハロゲン化銀粒子の電子顕微鏡写真から、球相当直径0.5μm、平均円相当直径0.80μm、全投影面積の50%以上の粒子が平均アスペクト比6.1、円相当直径の変動係数16%の転位線を含有しない平板状粒子であることが確認された。
【0148】
《乳剤3−Bの調製》
核形成工程
乳剤3−Aと同様に行った。
【0149】
熟成工程
上記核形成工程終了後に実施例1記載の(G−1)液を加え、30分間を要して60℃に昇温した。この間、反応容器内の乳剤の銀電位(飽和銀−塩化銀電極を比較電極として銀イオン選択電極で測定)を2Nの臭化カリウム溶液を用いて6mVに制御した。続いて、アンモニア水溶液を加えてpHを9.3に調整し、更に7分間保持した後、酢酸水溶液を用いてpHを6.1に調整した。この間の銀電位を2Nの臭化カリウム溶液を用いて6mVに制御した。
【0150】
粒子成長工程
熟成工程終了後、実施例1記載の(G−2)液を加え、攪拌回転数を550回転/分に調整した後、引き続いて銀電位6mVで3.5N硝酸銀水溶液(S−2)0.45Lと臭化カリウム3.43Nと沃化カリウム0.07Nを含む水溶液(H−2)を流量を加速しながら(終了時と開始時の添加流量の比が約1.4倍)32分間で添加した(この添加で粒子全体の銀量の48.6%を消費した)。上記添加終了後に、反応容器内の乳剤温度を15分間を要して40℃に降温した。その後、3Nの臭化カリウム溶液を用いて反応容器内の銀電位を−39mVに調整し、続いて実施例1記載の(F−1)液を172.4g加えた後、3.5N硝酸銀水溶液(S−3)0.34Lと3.5N臭化カリウム水溶液(H−3)を一定流量で10分間で添加した(この添加で粒子全体の銀量の37%を消費した)。
【0151】
上記粒子成長後に、特開平5−72658号に記載の方法に従い、脱塩処理を施し、その後ゼラチンを加えて分散し、40℃にてpHを5.80、pAgを8.06に調整した。かくして得られた乳剤を3−Bとする。
【0152】
得られたハロゲン化銀粒子の電子顕微鏡写真から、球相当直径0.5μm、平均円相当直径0.82μm、全投影面積の50%以上の粒子が平均アスペクト比6.5、円相当直径の変動係数17%の平板状粒子であることが確認された。また、本明細書中に記載する方法により転位線の有無を観察したところ、全投影面積の50%以上の粒子が転位線を10本以上有する粒子であった。
【0153】
《乳剤3−Cの調製》
(H−2)溶液の組成を臭化カリウム3.395Nと沃化カリウム0.105Nとし、(F−1)溶液の添加量を86.2g、硝酸銀水溶液S−3の添加量を粒子全体の銀量の38.5%とした以外は乳剤3−Bと同様にして乳剤3−Cを調製した。全投影面積の50%以上の粒子が転位線を10本以上有する粒子であった。
【0154】
《乳剤3−Dの調製》
(H−2)溶液の組成を臭化カリウム3.465Nと沃化カリウム0.035Nとし、硝酸銀水溶液S−2及びS−3の添加量をそれぞれ粒子全体の銀量の33.6%、52%とした以外は乳剤3−Bと同様にして乳剤3−Dを調製した。全投影面積の50%以上の粒子が転位線を10本以上有する粒子であった。
【0155】
《乳剤3−Eの調製》
硝酸銀水溶液S−2及びS−3の添加量をそれぞれ粒子全体の銀量の33.6%、52%とした以外は乳剤3−Bと同様にして乳剤3−Eを調製した。全投影面積の50%以上の粒子が転位線を10本以上有する粒子であった。
【0156】
《乳剤3−Fの調製》
(H−2)溶液の組成を臭化カリウム3.36Nと沃化カリウム0.14Nとした以外は乳剤3−Eと同様にして乳剤3−Fを調製した。全投影面積の50%以上の粒子が転位線を10本以上有する粒子であった。
【0157】
《乳剤3−Gの調製》
(H−2)溶液の組成を臭化カリウム3.395Nと沃化カリウム0.105N、(F−1)溶液の添加量を114.9g、硝酸銀水溶液S−3の添加量を粒子全体の銀量の53%とした以外は乳剤3−Eと同様にして乳剤3−Gを調製した。全投影面積の50%以上の粒子が転位線を10本以上有する粒子であった。
【0158】
《乳剤3−Hの調製》
硝酸銀水溶液S−2及びS−3の添加量をそれぞれ粒子全体の銀量の23.6%、62%とした以外は乳剤3−Fと同様にして乳剤3−Hを調製した。全投影面積の50%以上の粒子が転位線を10本以上有する粒子であった。
【0159】
《乳剤3−Iの調製》
硝酸銀水溶液S−2及びS−3の添加量をそれぞれ粒子全体の銀量の13.6%、72%とした以外は、乳剤3−Fと同等にして乳剤3−Iを調製した。全投影面積の50%以上の粒子が転位線を10本以上有する粒子であった。
【0160】
《乳剤3−Jの調製》
溶液(G−2)を加えた後に、二酸化チオ尿素を粒子全体の銀量に対し1×10-5モル/モルAg、エタンチオスルフォン酸ナトリウム塩を2×10-4モル/モルAg添加した以外は、3−Gと同様にして乳剤3−Jを調製した。全投影面積の50%以上の粒子が転位線を10本以上有する粒子であった。
【0161】
《乳剤3−Kの調製》
溶液(H−2)の組成を臭化カリウム3.5Nとした以外は、乳剤3−Eと同様にして乳剤3−Kを調製した。全投影面積の50%以上の粒子が転位線を10本以上有する粒子であった。
【0162】
《乳剤3−Lの調製》
溶液(F−1)の添加量を乳剤3−Fの1/30にし、硝酸銀水溶液S−3の添加量を粒子全体の銀量の54.9%にした以外は、乳剤3−Fと同様にして乳剤3−Lを調製した。全投影面積の50%以上の粒子が転位線を10本以上有する粒子であった。
【0163】
なお、以上の乳剤調製において、硝酸銀溶液S−2、S−3の添加量を変更した場合は、その添加量に応じて添加時間を調整した。
【0164】
乳剤3−A〜3−Lのハロゲン化銀粒子の特性を前記した如く表1に示す。
【0165】
乳剤3−A(該乳剤は転位線導入操作を行っていない)及び3−I、3−Lを除いて転位線は、乳剤3−Bとほぼ同様であった。3−Iは平板状粒子周辺部での転位線本数が他の乳剤(3−A、3−Lを除く)に比べてやや少く、乳剤3−Lは他の乳剤(3−A、3−Iを除く)に比べ転位線が10本以上存在するハロゲン化銀粒子の全投影面積に占める比率が著しく低かった。
【0166】
実施例1と同様にして、上記乳剤3−A〜3−Bに化学増感を施し、塗布、乾燥を行った試料301〜312を作製した。
【0167】
これらの試料を実施例1と同様にして露光、現像を行った後、感度、階調、増感処理特性を評価した。
【0168】
結果を表4に示す。
【0169】
表4中の諸性能値の定義は実施例1と同様であり、感度、階調については試料301を各々100、1とした相対値で示す。
【0170】
【表4】
Figure 0003718980
【0171】
表4に示される効果について説明する。
【0172】
試料301と本発明外の転位線を含有する平板状粒子を用いた試料302の比較より転位線をハロゲン化銀粒子内に導入すると著しい高感度化が達成されるが、軟調化、増感処理特性の劣化を伴い、実用上大きな困難を抱えることになる。また、試料302と303の比較より、I1/I2比を高めることでは、増感処理特性は改良されるものの、更に軟調化するという問題点を有している。また、更に試料302と311との比較より転位線導入開始位置を50%内にしても、増感処理特性は実質的に改良されていない。
【0173】
試料311と本発明のハロゲン化銀粒子を用いた試料304〜306の比較より、本発明のハロゲン化銀粒子を用いることにより、感度、階調を損ねることなく、増感処理特性が改良されることが解る。増感処理特性に対するI1/I2比の効果が示されている。
【0174】
更に試料307においては、I2値を好ましい値にすることにより増感処理適性を改良できるのみでなく、驚くべきことに更なる高感度化が達成されることが示されている。
【0175】
試料309、312には、転位線の導入開始位置を早くしすぎたり、I1/I2比を高くしすぎると大きな感度低下が生じることが示されている。即ち、転位線の導入開始位置やI1/I2比について、本発明の範囲が好ましいことがわかる。
【0176】
また、試料307と310の比較より、本発明のハロゲン化銀粒子は還元増感により、他性能を取り崩すことなく更に高感度が得られることがわかる。
【0177】
実施例4
《乳剤4−Aの調製》
硝酸銀水溶液(S−2)添加時の銀電位を20mVに調整したことを除いて、実施例3の乳剤3−Kと同様にして乳剤4−Aを調製した。
【0178】
《乳剤4−Bの調製》
硝酸銀水溶液(S−2)添加時の銀電位を20mVに調整したことを除いて、実施例3の乳剤3−Gと同様にして乳剤4−Bを調製した。
【0179】
乳剤4−A、4−Bのハロゲン化銀粒子の特性を表1に示す。転位線については、乳剤3−Gと同様であった。
【0180】
実施例1と同様にして、上記乳剤4−A〜4−Bに化学増感を施し、塗布、乾燥を行った試料401〜402を作製した。
【0181】
これらの試料を実施例1と同様にして露光、現像を行った後、感度、階調、増感処理特性を評価した。結果を表5に示す。表5中の諸性能値の定義は実施例1と同様であり、感度、階調については実施例3の試料301を各々100、1とした相対値で示す。
【0182】
【表5】
Figure 0003718980
【0183】
表4、表5の比較より、実施例3のハロゲン化銀粒子と比較して、低アスペクト比の平板状粒子でも本発明の効果は得られるが(乳剤4−Aと4−Bの比較)、その効果は高アスペクト比のハロゲン化銀粒子の方が大きい(実施例3の乳剤3−Gと3−Kの比較)。
【0184】
実施例5
下引加工した三酢酸セルロース支持体上に、下記組成の各層を支持体側より順次塗布して、多層カラー写真感光材料501を作製した。
【0185】
各成分の塗布量はg/m2で示す。ただし、ハロゲン化銀については、銀に換算した塗布量で示す。
【0186】
第1層(ハレーション防止層)
黒色コロイド銀 0.24
紫外線吸収剤 U−1 0.14
紫外線吸収剤 U−2 0.072
高沸点溶媒 O−1 0.31
高沸点溶媒 O−2 0.098
ポリ−N−ビニルピロリドン 0.15
ゼラチン 2.20
第2層(中間層−1)
ゼラチン 0.55
第3層(中間層−2)
表面をカブラせた微粒子沃臭化銀乳剤
(沃化銀1.0モル%,0.06μm) 0.05
ゼラチン 0.50
第4層(低感度赤感性ハロゲン化銀乳剤層)
赤色増感色素(S−1,S−2)により分光増感された
AgBrI(AgI 4.0モル%,平均粒径 0.25μm)0.55
カプラー C−1 0.3
高沸点溶媒 O−2 0.6
ゼラチン 1.4
第5層(高感度赤感性ハロゲン化銀乳剤層)
赤色増感色素(S−1,S−2)により分光増感された
AgBrI(AgI 2.5モル%,平均粒径 0.6μm)0.75
カプラー C−1 1.0
高沸点溶媒 O−2 1.2
ゼラチン 1.95
第6層(中間層−3)
2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン 0.1
高沸点溶媒 O−1 0.2
ゼラチン 1.0
第7層(中間層−4)
表面をカブラせた微粒子沃臭化銀乳剤
(沃化銀1.0モル%,0.06μm) 0.05
2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン 0.1
高沸点溶媒 O−3 0.25
マット化剤 0.0091
ゼラチン 1.0
第8層(低感度緑感性ハロゲン化銀乳剤層)
緑色増感色素(S−3,S−4)により分光増感された
AgBrI(AgI 3.5モル%,平均粒径 0.25μm)0.55
カプラー M−1 0.15
カプラー M−2 0.04
高沸点溶媒 O−3 0.25
ゼラチン 1.5
第9層(高感度緑感性ハロゲン化銀乳剤層)
緑色増感色素(S−3,S−4)により分光増感された
AgBrI(AgI 2.5モル%,平均粒径 0.6μm)0.8
カプラー M−1 0.56
カプラー M−2 0.12
高沸点溶媒 O−3 1.0
ゼラチン 1.6
第10層(中間層)
第6層と同じ
第11層(イエローフィルタ層)
黄色コロイド銀 0.15
ゼラチン 1.0
2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン 0.1
高沸点溶媒 O−1 0.2
第12層(低感度青感性ハロゲン化銀乳剤層)
青色増感色素(S−5)により分光増感された
AgBrI(AgI 2.5モル%,平均粒径 0.35μm)0.6
カプラー Y−1 1.4
高沸点溶媒 O−3 0.6
ゼラチン 1.4
第13層(高感度青感性ハロゲン化銀乳剤層)
青色増感色素(S−5)により分光増感された
AgBrI(AgI 2.5モル%,平均粒径 0.9μm)0.75
カプラー Y−1 3.5
高沸点溶媒 O−3 1.4
ゼラチン 2.25
第14層:第1保護層
紫外線吸収剤 U−1 0.3
紫外線吸収剤 U−2 0.4
2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン 0.1
高沸点溶媒 O−3 0.6
ゼラチン 1.3
第15層:第2保護層
平均粒径 0.08μm、沃化銀1モル%を含む沃臭化銀
からなる非感光性微粒子ハロゲン化銀乳剤 0.3
ポリメチルメタクリレート粒子(直径 3.0μm) 0.03
界面活性剤 SA−1 0.004
ゼラチン 0.75
尚、各層には上記組成物の他にゼラチン硬化剤H−1,H−2や界面活性剤、防腐剤DI−1を添加した。
【0187】
各感光層に用いたハロゲン化銀乳剤は、特開昭59−178447号の実施例1の方法を参考にして調製した。いずれも分布の広さ20%以下の単分散乳剤であった。
【0188】
各乳剤は脱塩、水洗した後、チオ硫酸ナトリウム、塩化金酸及びチオシアン酸アンモニウムの存在下にて最適な化学熟成を施し、増感色素、4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾールを加えた。
【0189】
乾燥総膜厚は27.0μmであった。
【0190】
上記試料に用いた組成物の構造式は次の通りである。
【0191】
【化1】
Figure 0003718980
【0192】
【化2】
Figure 0003718980
【0193】
【化3】
Figure 0003718980
【0194】
【化4】
Figure 0003718980
【0195】
【化5】
Figure 0003718980
【0196】
次に第5層に用いたハロゲン化銀乳剤を表6に示すように変更した以外は試料501と同様にして、試料502、503を作製した。
【0197】
以上の重層試料を5400Kの光源を用い、1/100秒の露光時間で白色光のウェッジ露光を行い、第1現像の現像時間を6分とした以外は実施例1記載の工程と同様の現像処理を行い、高感度赤感色性層の感度、増感処理特性を評価した。感度は、赤発色濃度が最大濃度−1.0となる濃度を与える露光量の逆数から求め、試料501の感度を100とした相対値である。
【0198】
増感処理特性は、実施例1の現像処理工程において、第1現像時間T1=9分とした場合と6分の場合の階調G2の変動比ΔG2=G2(T1=9分)/G2(T1=6分)であり、ΔG2が1に近いほど現像時間による階調変動が小さく好ましいことを示す。階調G2の値としては、赤発色濃度が最大濃度−1.0の所でのセンシトメトリーカーブの接線の傾き(露光量Eに対し、ΔLogE=1での濃度変動幅ΔDをG2とした)を用いた。結果を表6に示す。
【0199】
【表6】
Figure 0003718980
【0200】
表6より、本発明の乳剤は、重層試料においても、高感度かつ増感現像処理時の階調変動が小さく、好ましい性能を有していることがわかる。
【0201】
【発明の効果】
本発明により、ハロゲン化銀写真乳剤及びそれを用いたハロゲン化銀カラー写真感光材料は、高感度、硬調で、現像処理特性であり、例えばカラー及び反転写真感光材料における増感現像処理特性に優れたものが得られる。

Claims (5)

  1. 全投影面積の50%以上が、円相当直径が0.6μmより大きく、球相当直径0.7μm未満の転位線を有する平板状ハロゲン化銀粒子からなり、該粒子の転位線導入開始位置が、転位線を導入するまでに消費した銀量の割合で30%以上50%以下の位置にあり、かつ転位線導入開始前までに形成されたハロゲン化銀粒子の平均沃化銀含有率I1と転位線導入開始以降に形成された範囲における平均沃化銀含有率I2の関係が、10≧I1/I2>0であることを特徴とするハロゲン化銀写真乳剤。
  2. 上記I2が0モル%より大きく6モル%以下であることを特徴とする請求項1記載のハロゲン化銀写真乳剤。
  3. ハロゲン化銀粒子の平均沃化銀含有率が5モル%未満であることを特徴とする請求項1又は2記載のハロゲン化銀写真乳剤。
  4. 支持体上に少なくとも1層の感光性ハロゲン化銀写真乳剤層を有し、該乳剤層が請求項1、2または3のいずれか1項記載のハロゲン化銀写真乳剤を含有することを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
  5. 支持体上に少なくとも1層の感光性ハロゲン化銀写真乳剤層を有し、該乳剤層が請求項1、2または3のいずれか1項記載のハロゲン化銀写真乳剤を含有することを特徴とするハロゲン化銀反転写真感光材料。
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