JP3718913B2 - 発泡体のクラッシング装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリウレタンフォーム等の発泡体のクラッシング装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
軟質ポリウレタンフォームに代表される連通気泡の発泡体は、例えば自動車用シートのクッションパッド等、各種の用途に広く使用されている。その中で高弾性ウレタンフォーム(一般にはHRフォームと呼ばれる)の発泡成形の場合には、内部の気泡に独立気泡の割合が多く、また製造時に発生したガスが含まれているため、通常、発泡体の製造工程において、成形した発泡体の脱型後にクラッシング処理を行い、発泡体内部の非破泡の気泡を破って連通化させ、気泡に含まれているガスを空気によって置換することとしている。
【0003】
この発泡体のクラッシングの方法として、従来より、例えば、上下に間隔をおいて配置した上下ロールの間を通過させて発泡体を機械的に圧縮することにより、発泡体内部の未破泡の気泡を破り残留ガスを除去する方法、あるいは剛性のあるボックス内に発泡体を収納して、ボックス内の空気を吸引し真空化させて発泡体を膨脹させることで、クラッシングする方法が知られていた。
【0004】
ところで、自動車用シートのクッションパッド等の発泡体においては、品質向上やカバーリングの自動化等のために、内部に立体形状の剛体ワイヤ等のフレーム部材をインサートして一体に発泡成形した、比較的大型で複雑な形状の発泡体が多くなっている。
【0005】
かかる発泡体を前記のロール圧縮方式でクラッシングすると、インサートされているフレーム部材に変形が生じたり、フレーム等が障害となってクラッシングできない部分が発生し不良品となる。また前記の膨脹方式の場合、未破泡の気泡が残り易く、これを回避するには処理時間を長くする必要があり、非能率的なものであった。
【0006】
そのため、近年、空気を吸引除去できる気密空間を形成する上部体と下部体のうち、上部体には発泡体形状に対する追従性のある弾性シートを、下部体にはアルミニウム等の剛性素材により発泡体形状に対応する受型を配し、前記受型に発泡体をセットして上下部体を閉合した後、気密空間内部の空気を吸引排出して真空化することにより、上部体の弾性シートの伸縮性を利用して発泡体を圧縮してクラッシングする方法、装置が提案されている(実開昭62−174500号公報)。
【0007】
この真空圧縮方式のクラッシング装置の場合、前記の一体発泡成形による発泡体のクラッシング処理を良好に行なえるが、その一方、下覆体として発泡体の形状に対応する受型を有することで専用機となり、そのままではサイズや形状の異なる他の発泡体の処理には使用できず、汎用性に劣る。そうかといって、発泡体形状に対応した受型に取り換るのは、運転を停止しての取換え作業に手数がかかり、効率低下をきたす上、品種毎の多数の受型を準備しておく必要もある。また、品種別のクラッシング装置を設置しておくのは、発泡体製造ラインでの設置台数が増し、設置スペースが拡大し、製品の流れが悪くなる。このため少量多品種の発泡体のクラッシング処理には適さないものである。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなしたもので、立体形状のフレーム部材がインサートされて一体発泡成形された発泡体は勿論、そうでないものにも対応できるとともに、形状の異なる多品種の発泡体に対応でき、汎用性に優れる発泡体のクラッシング装置を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記の課題を解決する発泡体のクラッシング装置であり、請求項1の発明は、開閉自在な上下覆体により発泡体を収容できる気密空間を形成するとともに、該気密空間内部の気体を吸引排出することができる発泡体のクラッシング装置であって、上下覆体の双方を、それぞれ発泡体形状に応じて変形可能な非通気性の弾性シートにより形成し、下覆体の弾性シートの外側に、装置長手方向の所要間隔毎に該弾性シートの下方への過度の膨出変形を抑止するための保持ベルトを配してなることを特徴とする。
【0010】
このクラッシング装置によれば、気密空間内に処理対象の発泡体を収容した状態で該内部の空気を吸引排出して真空化すると、上下覆体の双方の弾性シートが、その伸縮性によりそれぞれ発泡体形状に追従して収縮変形して該発泡体を上下から圧縮することになる。それゆえ、立体形状のフレーム部材がインサートされ一体に発泡成形された複雑な形状をなす発泡体であっても、また発泡体の形状が異なったものになっても、該発泡体をその形状に対応した状態で上下の弾性シートにより圧縮することで確実にクラッシングできる。
【0011】
また請求項2の発明は、前記のクラッシング装置において、上下覆体のうち少なくとも下覆体の弾性シートの内側に、弾力性がありかつ圧縮変形時にも通気性を保有する通気性シートを配したことを特徴とする。
【0012】
この場合、前記弾性シート内側の弾力性のある通気性シートにより収容される発泡体を位置決めできる上、気密空間内部の真空化により上下の弾性シートが収縮変形するのに伴い、内側の通気性シートも発泡体とともに圧縮され、発泡体の凹凸形状に応じた形に容易に変形し、これにより該通気性シートを介して発泡体の全体を略均等に弾性シートで押圧できることになり、該通気性シートが圧縮成しても通気性を保有していることもあって、クラッシング作用がさらに良好に行なわれる。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に本発明のクラッシング装置を図面に示す実施例により説明する。
【0014】
図1は本発明に係るクラッシング装置の上下覆体を閉じた状態の断面図、図2は同上の作動状態を説明する断面説明図、図3は図1のA−A線の断面図を示している。
【0015】
図において、(F)はクラッシング処理対象の自動車用シートのクッションパッド等に使用する発泡体で、主としてポリウレンタンフォームよりなり、内部に剛体ワイヤ等のフレーム部材(f1)がインサートされて一体に発泡成形されている。
【0016】
(1)は中空角材等により形成された機台フレーム、(2)(3)は両者間に気密空間(4)を形成し得る開閉自在な上下覆体である。上覆体(2)は枠部材(2a)に発泡体形状に応じて変形可能なゴム材等よりなる非通気性の弾性シート(2b)を取着したものよりなる。また下覆体(3)についても、機台フレーム(1)の上縁部に設けられた枠部材(3a)に前記同様の変形可能なゴム材よりなる非通気性の弾性シート(3b)が取着されてなる。
【0017】
前記上覆体(2)は、前記下覆体(3)に対し枠部材(3a)の一側部、例えば長辺側の一側部外周においてピン連結部(5)を支点として回動可能に連結されるとともに、図1のように、上覆体(2)の枠部材(2a)に突設されたブラケット(2c)にシリンダ機構(6)の出力ロッド(6a)の端部が連結されて、該シリンダ機構(6)の作動により開閉するようになっている。上覆体(2)を下覆体(3)に対し開閉可能に設ける手段は図示する実施例のものに限らず、例えば上覆体(2)を昇降可能に設ける等、他の種々の構成手段により実施できる。
【0018】
前記上下の枠部材(2a)(3a)同士の対接部の少なくとも一方には、上下覆体(2)(3)の閉合時に両弾性シート(2b)(3b)間の気密空間(4)を気密に保持するためのシール材(8)が付設されている。
【0019】
前記の上下覆体(2)(3)の任意の個所、例えば図のように下覆体(3)の弾性シート(3b)には、1もしくは複数の吸引口(9)が設けられ、該吸引口(9)に蛇腹状あるいはゴム管等の伸縮可能な耐圧性を有するホース(10)が下方から接続され、さらに該ホース(10)に真空切換弁(11)を介して真空ポンプ(12)が接続されており、これにより前記気密空間(4)内部の気体を強制的に吸引排出できるようになっている。
【0020】
前記吸引口(9)には、メッシュ状のフィルター部材(13)が設けられており、吸引時の発泡体(F)が吸引口(9)に入り込むのを防止しかつゴミ等の侵入を防止できるようになっている。(14)は下覆体(3)の下方部を覆う保護ボックスであり、パンチングメタル等の多孔板により形成されている。
【0021】
前記の上下覆体(2)(3)の弾性シート(2b)(3b)の厚みは、素材ゴムの材質や弾性や強度等の特性によっても異なるが、通常、2〜5mmとするのが好ましい。すなわち、弾性シート(2b)(3b)の厚みが、前記より小さくなると繰返し使用による寿命が低下し、また前記より大きくなると、発泡体に対する形状追従性が低下するので好ましくない。このことから、より好ましい厚みの範囲は2.5〜3.5mmである。
【0022】
前記の下覆体(3)の弾性シート(3b)の内側には、該弾性シート(3b)よりも弾力性があって容易に変形でき、かつ弾性シート(3b)の数倍以上の厚みを有する通気性シート(15)が配置されており、この通気性シート(15)は圧縮時にも通気性を確保できるもの、例えば連通気泡のポリウレンタフォーム等の弾力性のある発泡体等よりなる。
【0023】
この通気性シート(15)の厚みは、特に限定されるものではないが、20〜80mmのもの、特に好ましくは40〜60mmの厚みのものが用いられる。すなわち、通気性シート(15)の厚みが前記厚み範囲より小さくなると、真空時に完全につぶれて通気性がなくなり、真空完了時間に影響するとともに押圧の効果が小さくなる。また通気性シート(15)の厚みが前記の厚み範囲より大きくなると、材料コストが高くなる。
【0024】
さらに、図示する実施例の場合、下覆体(3)の弾性シート(3b)の外側(下方側)には、装置長手方向の所要間隔毎に該弾性シート(3b)の下方への過度の膨出変形を抑止するための保持ベルト(16)が配されており、弾性シート(3b)上に収容される発泡体(F)の荷重を無理なく受支できるようになっている。
【0025】
上記したクラッシング装置において、自動車用シートのクッションパッド等の発泡体(F)のクラッシングを行なう場合について説明すると、上覆体(2)を図1の鎖線のように開いた状態で、処理対象の発泡体(F)を下覆体(3)の弾性シート(3b)上に載置した後、シリンダ機構(6)の作動により上覆体(2)を回動させ、枠部材(2a)と下覆体(3)の枠部材(3a)とをシール材(8)を介して対接させ密着させる〔図2の(a)〕。これにより、上下の弾性シート(2b)(3b)の間、すなわち気密空間(4)内に発泡体(F)が収容されることになる。
【0026】
この状態で、真空ポンプ(12)を作動させることにより、前記気密空間(4)内部の気体を強制的に吸引排出させて、気密空間(4)を減圧真空化するもので、この真空化に伴って、外部の大気圧が上下覆体(2)(3)の弾性シート(2b)(3b)に作用し、両弾性シート(2b)(3b)がその伸縮性によりそれぞれ発泡体(F)の形状に追従して収縮変形する〔図2の(b)〕。これにより、従来装置のような受型がなくても、フレーム部材の変形を生じさせることなく発泡体(F)が上下から略均等に圧縮され、発泡体(F)内の残留ガスが強制的に除去され、未破泡の気泡が破れて連通化する。
【0027】
特に、図示するように、下覆体(3)の弾性シート(3b)の内側に、弾力性がありかつ圧縮変形時にも通気性を保有する通気性シート(15)が配されていると、この通気性シート(15)により、気密空間(4)内に収容された発泡体(F)の動きを規制できる上、気密空間(4)内の真空化により上下の弾性シート(2b)(3b)が収縮変形するのに伴い、内側の通気性シート(15)も発泡体(F)と共にその弾力性に抗して圧縮され、発泡体(F)の凹凸形状に応じた形に容易に変形し、これにより受型がなくても該通気性シート(15)を介して発泡体(F)の凹部を含む全体を略均等に確実に押圧でき、クラッシング作用がさらに良好に行なわれ、未破泡部を残すことなく処理できる。
【0028】
そして、前記のクラッシング完了後に、真空ポンプ(12)を停止し、切換弁(11)の切換えにより、気密空間(4)の内部に大気を導入することにより、発泡体(F)が弾性復元力によって空気を吸収して原形に戻る。その後、上覆体(2)を開いて発泡体(F)を取り出す。
【0029】
このような作用の繰返しにより、発泡体(F)のクラッシング処理を順次行なうことができる。この際、特に上下覆体の双方を変形可能な弾性シート(2b)(3b)により形成してあるので、発泡体の形状が異なるものであっても対応でき、上記同様の作用によりクラッシング処理できる。
【0030】
【発明の効果】
上記したように本発明のクラッシング装置は、上下覆体の双方に弾性シートを用いて構成したことで、特別の受型を必要とせず、フレーム部材がインサートされて一体発泡成形された発泡体は勿論、そうでないものにも対応できるとともに、形状の異なる多品種の発泡体に対応でき、汎用性に優れる。したがって、少量多品種の発泡体の製造に好適に利用でき、発泡体製造ラインでのクラッシング装置の設置台数、設置スペースを減少でき、クラッシング加工の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るクラッシング装置の上下覆体を開いた状態の断面図である。
【図2】同上装置の作動状態を示す真空化前(a)と真空化後(b)の断面説明図である。
【図3】図1のA−A線の断面図である。
【符号の説明】
(1) 機台フレーム
(2)(3) 上下覆体
(2a)(3a) 上下の枠部材
(2b)(3b) 上下の弾性シート
(4) 気密空間
(6) シリンダ機構
(9) 吸引口
(10) ホース
(12) 真空ポンプ
(15) 通気性シート
(F) 発泡体
(f1) フレーム部材
Claims (2)
- 開閉自在な上下覆体により発泡体を収容できる気密空間を形成するとともに、該気密空間内部の気体を吸引排出することができるようにした発泡体のクラッシング装置であって、
上下覆体の双方を、それぞれ発泡体形状に応じて変形可能な非通気性の弾性シートにより形成し、下覆体の弾性シートの外側に、装置長手方向の所要間隔毎に該弾性シートの下方への過度の膨出変形を抑止するための保持ベルトを配してなることを特徴とする発泡体のクラッシング装置。 - 下覆体の弾性シートの内側に、弾力性がありかつ圧縮変形時にも通気性を保有する通気性シートが配されてなる請求項1に記載の発泡体のクラッシング装置。
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- 1996-08-05 JP JP20583096A patent/JP3718913B2/ja not_active Expired - Fee Related
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