JP3718435B2 - 細胞機能測定用容器及び細胞機能測定方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、免疫反応や炎症反応などに関与する細胞機能を測定するための細胞機能測定用容器及び細胞機能測定方法に関し、より詳細には、例えば、顆粒球、単球、マクロファージ、リンパ球などの血液細胞が産生するサイトカインなどの生理活性物質を測定することにより細胞機能を測定するための細胞機能測定用容器及び細胞機能測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
顆粒球、単球、マクロファージ、リンパ球等の白血球は、血液中あるいは各臓器もしくは器官における炎症反応や免疫反応などの種々の生体防御反応において様々な役割を担っている。これらの細胞は、感染症;肝炎や腎炎などの炎症性疾患;慢性関節リウマチや喘息などの免疫・アレルギー性疾患;癌などの様々の病態において重要な働きをしており、病態の変動と共にこれらの細胞の機能が抑制されたり、増強されたりすることが知られている。
【0003】
また、これらの疾患の治療に、抗炎症剤、免疫抑制剤、免疫増強剤、抗癌剤等の様々の薬剤が用いられており、その際にもこれらの細胞の機能が抑制されたり、または増強されたりすることも知られている。そのため、各種疾患の病態や薬剤の効果あるいは副作用を把握することにより、治療指針を決定したり、薬剤の投与量やタイミングを決定したりするために、これらの細胞の機能を調べることが重要である。
【0004】
従来、病院の検査室や検査センターでは、上記のような理由から、このような細胞機能を測定するために、顆粒球貧食機能試験、顆粒球殺菌能(活性酸素産生能)試験、リンパ球幼若化試験等が行われてきた。また、最近では、フローサイトメトリー装置と各種免疫担当細胞表面抗原に対する蛍光標識モノクローナル抗体とを用いた表面抗原試験等が行われるようになってきた。しかしながら、従来の試験法には、細胞分離、細胞培養及び顕微鏡測定等の特殊な技術が要求され、測定に時間がかかり、RI施設やフローサイトメーターなどの高価な装置が必要であった。
【0005】
また、血液中の単球やこの単球が組織に出て分化、成熟したマクロファージは、食作用を介した異物排除や、抗原提示を介した免疫の成立に関与し、また、サイトカイン、プロスタグランジンなどの種々の生理活性物質を分泌することによって、炎症反応や免疫反応を調節するなど、非常に多彩な機能を持っている。そのため、単球やマクロファージは、顆粒球やリンパ球と同様に、種々の病態においても重要な働きをしており、これらの細胞の機能を調べることは非常に重要である。特に、感染症などでは、単球やマクロファージは顆粒球やリンパ球と異なり、細胞数はあまり変動せず、その機能の増幅が主体であり、細胞機能変化を測定することはより重要である(「マクロファージ」徳永 徹著、講談社サイエンティフィック1986年初版発行)。
【0006】
腫瘍壊死因子α(以下、TNFαという)、インターロイキン−1β(以下、IL−1βという)、インターロイキン−6(以下、IL−6という)は、モノカインと呼ばれ、血液細胞では主に、単球やマクロファージを含む白血球によって産生され、種々の炎症反応や免疫反応に関与するサイトカインである。
【0007】
これまで、血液や血液から分離した白血球からの上記サイトカイン産生機能を調べる種々の方法が報告されている。例えば、特開平2−196961号公報、特開平3−285692号公報には、血液にリポ多糖(LPS)やレクチンを反応させ、産生誘導されたTNFαやIL−1βなどのサイトカインを測定する方法が開示されている。また、特開平6−209992号公報、特開平7−67955号公報には、特定の表面粗さを有する高分子材料や特定の化学構造を有する高分子材料と血液とを接触させ、TNFαの産生を誘導する方法が開示されている。また、特開平7−299732号公報、特開平7−151752号公報には、特定の表面粗さを有する高分子材料と血液とを接触させ、TNFαやIL−1βの産生量を測定する生体反応検査方法が開示されている。また、特表平7−500905号公報には、ヒト末梢血白血球からのTNFαやIL−1βなどのサイトカインの産生誘導量を測定することによって、試験物質の免疫活性能力を測定する方法が開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来、病院の検査室や検査センターで行われてきた細胞機能測定方法や上記の公開特許公報に開示の方法には、以下のような問題点があった。すなわち、これらの試験は、いずれも被験者から注射器で血液を採血後、ピペッティングなどの用手法の手段で血液を種々の反応容器に移し変える操作、白血球などを分離するための細胞分離、並びに機能測定のための細胞培養等の特殊な操作が必要であった。そのため、検査従事者が血液に触れ、肝炎、エイズなどの様々の感染症に感染する危険性があった。また、これらの操作中に、血液試料中に様々の雑菌や埃などが混入する恐れがあり、これらの汚染物あるいは操作による物理的刺激によって、血液中の細胞が不必要に刺激され、測定結果に悪影響を及ぼす恐れがあった。
【0009】
また、血液を採取し、特定の反応容器内において、白血球からのサイトカイン、特にTNFαやIL−1βの産生量を測定する従来法では、例えば注射器のような血液採取器や反応容器中に元々、グラム陰性菌由来のLPSなどのエンドトキシンが混入していることがあった。エンドトキシンは、極微量で白血球からTNFα及びIL−1βの産生を誘導するため、例えば、製造工程での微量の埃の混入や使用する洗浄水からの汚染により、少量のエンドトキシンが上記血液採取器や反応容器に混入した場合、信頼できる測定結果を得ることは不可能であった。
【0010】
上述した問題のため、従来よりも、操作が簡単で危険性がなく、精度の良い細胞機能測定方法が望まれている。 他方、従来、血中の種々の生理活性物質の測定、血液細胞の機能測定、血液細胞の表面抗原測定等において、血液抗凝固剤が用いられている。
【0011】
しかしながら、抗凝固剤のエンドトキシン含量には一般的な基準はなく、注射剤として用いられる抗凝固剤について、第十三改正日本薬局方解説書「エンドトキシン試験法」に、ウサギの最小発熱投与量として5EU/Kgを規格値の設定基準とした指針があるのみである。
【0012】
エンドトキシンはグラム陰性菌の細胞壁外膜成分のリポ多糖であり、極微量で白血球等の血液細胞を刺激して、TNFα、IL−1β、IL−6、または顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子等の種々のサイトカインなどの生理活性物質を産生し、発熱活性やエンドトキシンショックなどの様々の生理作用を有している(日本医学舘「炎症とサイトカイン’87炎症セミナー」p.103−108)。
【0013】
また、血液細胞から産生された上記サイトカイン等の生理活性物質は、オートクリン、パラクリンに作用し合い、ヒスタミンもしくはアラキドン酸代謝産物または種々のサイトカインなどのさらなる産生を引き起こし、血液細胞の様々の機能を修飾したり、血液細胞表面抗原の量的、質的変化を引き起こす。
【0014】
従って、血液抗凝固剤がエンドトキシンに汚染され、しかもそのエンドトキシン含量が生理活性物質の産生を引き起こすレベルにあるならば、血中の様々の生理活性物質の測定、血液細胞の機能測定及び血液細胞の表面抗原測定を正確に行うことは不可能である。
【0015】
本発明の目的は、従来の細胞機能測定方法の欠点を解消し、従来よりも操作が簡単であり、危険性がなく、高精度に細胞機能を測定し得る細胞機能測定用容器及び細胞機能測定方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本願の第1の発明の広い局面によれば、上記課題を達成するために、血液細胞が産生する生理活性物質を測定する際に用いられる細胞機能測定用容器であって、開口部を有する容器と、前記開口部に取付けられており、かつ試料採取時に取り外されることなく密栓されている栓体とを備え、生理活性物質の産生を誘導する材料が前記容器内に収納されており、かつ上記生理活性物質の測定値に影響を与えないように、使用前の容器自体のエンドトキシン含量が測定しようとする液量に等しい量の水を採取し、抽出した際の抽出液中の濃度として0.5EU/ml以下とされていることを特徴とする細胞機能測定用容器が提供される。言い換えれば、血液細胞が産生する生理活性物質を測定する際に用いられる細胞機能測定用容器であって、開口部を有する容器と、前記容器の開口部に取付けられており、かつ試料採取時に取り外されることなく密栓されている栓体とを備え、上記容器として、生理活性物質の測定値に影響を与えないように、容器自体のエンドトキシン含量が、測定しようとする液量に等しい量の水を採取し抽出した際の抽出液中の濃度として0.5EU/ml以下に制限されたものが用いられ、上記エンドトキシン含量が制限された容器内に、生理活性物質の産生を誘導する材料が収納されていることを特徴とする細胞機能測定用容器が提供される。
【0017】
この細胞機能測定用容器では、上記のように、測定しようとする液量に等しい量の水を採取し、抽出した際の生理活性物質の産生を誘導する材料の量が血液細胞から生理活性物質を産生しない量に制限されているため、すなわち細胞機能測定用容器自体の生理活性物質の産生を誘導する材料の含量が上記のように制限されているため、採取から測定を行うまで採血した血液に不必要な刺激を与えず、長時間保存することができる。そのため、採血した血液中の生理活性物質を精度よく測定でき、各種病気の患者の病態を精度よく把握するために用いることができる。
【0018】
本願の第1の発明に係る細胞機能測定用容器では、好ましくは、上記生理活性物質の産生を誘導する材料はエンドトキシンであり、かつ使用前の細胞機能測定用容器中のエンドトキシン含量が、測定しようとする液量に等しい水を採取して抽出を行ったときの抽出液中の濃度として、0.5EU/ml以下とされる。
【0019】
本発明に係る細胞機能測定用容器においては、血液中の生理活性物質の産生を誘導する材料が、血液と接触可能な状態に収納されているが、使用前の容器自体の生理活性物質の産生を誘導する材料の含量は、上記のように生理活性物質の測定値に影響を与えないように制限されているので、血液を導入し、生理活性物質の産生を誘導する材料と接触させて生理活性物質を産生した場合、産生された生理活性物質量を高精度に測定することができる。
【0020】
本発明に係る細胞機能測定用容器では、好ましくは、上記生理活性物質の産生を誘導する材料はエンドトキシンであり、該エンドトキシンが血液と接触された際の全液中のエンドトキシン濃度が0.6〜100000EU/mlとなるように制限されている。
【0021】
また、本発明に係る細胞機能測定用容器においては、血液の凝固を防止するために、血液抗凝固剤がさらに収納されていてもよい。
また、上記血液抗凝固剤中の生理活性物質の産生を誘導する材料の含量は、血液と混合されたときに血液細胞から生理活性物質を産生しない量とすることが好ましい。
【0022】
本発明の特定的な局面においては、上記生理活性物質の産生を誘導する材料はエンドトキシンであり、生理活性物質はサイトカインである。
上記サイトカインとしては、腫瘍壊死因子α(TNFα)、インターロイキン−1β(IL−1β)及びインターロイキン6(IL−6)から選択した少なくとも1種が挙げられる。
【0023】
また、好ましくは、本発明に係る細胞機能測定用容器は、容器内が減圧にされる。
また、本発明に係る細胞機能測定用容器と、誘導された生理活性物質の量を定量可能な試薬とを組み合わせて、細胞機能測定用キットを構成することができる。この場合、誘導された生理活性物質の量を定量可能な試薬としては、例えば酵素免疫測定試薬を用いることができる。
【0024】
本発明の細胞機能測定用容器の応用例としては、生理活性物質の産生を誘導する材料が含まれておらず、かつ測定しようとする液量に等しい量の水を採取し、抽出した際の上記生理活性物質の産生を誘導する材料の含量が、血液細胞から生理活性物質を産生しない量とされており、必要に応じて血液抗凝固剤を含む第1の細胞機能測定用容器と、血液と接触することにより該血液中に生理活性物質の産生を誘導する材料及び血液抗凝固剤が、血液と接触可能な状態に収納されており、かつ上記生理活性物質の測定値に影響を与えないように、使用前の容器中の上記生理活性物質の産生を誘導する材料の量が制限されている第2の細胞機能測定用容器と、生理活性物質を定量するための定量試薬とを有する、細胞機能測定用キットが挙げられる。すなわち、この細胞機能測定用キットでは、本発明の広い局面で提供される細胞機能測定用容器と、本発明の特定の局面で提供される、請求項2に記載の細胞機能測定用容器と、上記定量試薬とを組み合わせた構成を有する。
【0025】
上記細胞機能測定用キットにおいては、好ましくは、前記定量試薬が、第1の細胞機能測定用容器に血液を採取し、血液中の生理活性物質量を測定するのに用いられる第1の酵素免疫測定試薬と、第2の細胞機能測定用容器に血液を採取し、生理活性物質の産生を誘導する材料と血液との反応により産生される生理活性物質量を測定するのに用いられ、生理活性物質に対しての測定感度が第1の酵素免疫測定試薬と異なる第2の酵素免疫測定試薬とを含む。
【0026】
本願の第2の発明は、本発明に係る細胞機能測定用容器に血液を導入し、生理活性物質の産生を誘導する材料と血液とを接触させて生理活性物質の産生を誘導する工程を含むことを特徴とする細胞機能測定方法である。本発明に係る細胞機能測定方法では、好ましくは、前記生理活性物質の産生を誘導する際の温度が26〜45℃である。
【0027】
また、生理活性物質の産生を誘導する際の時間については、好ましくは、1〜6時間とされる。さらに、本発明に係る細胞機能測定方法では、好ましくは、産生誘導された生理活性物質の量は、定量可能な試薬により定量される。
【0028】
以下、本発明の詳細を説明する。
(第1の発明に係る細胞機能測定用容器)
第1の発明に係る細胞機能測定用容器は、測定しようとする液量に等しい量の生理活性物質の産生を誘導する材料が含まれていない水を採取し、抽出を行ったときに、該生理活性物質の産生を誘導する材料の量が、血液細胞から生理活性物質を産生しない量に制限されていることが必要である。
【0029】
上記抽出の具体的な方法は、測定しようとする液量に等しく、生理活性物質の産生を誘導する材料が含まれていない水を上記細胞機能測定用容器に採取し、37℃で1時間の条件で攪拌下、抽出することにより行われる。
【0030】
上記生理活性物質は、好ましくは、サイトカインであり、生理活性物質の産生を誘導する材料は、好ましくはエンドトキシンである。もっとも、生理活性物質については、サイトカインに限定されず、例えば、プロスタグランジンなどのアラキドン酸代謝物、活性酸素種、可溶性接着因子、可溶性レセプター、顆粒内酵素などを挙げることができ、生理活性物質の産生を誘導する材料についても、生理活性物質の種類に応じて適宜選択することができる。
【0031】
生理活性物質の産生を誘導する材料がエンドトキシンの場合、好ましくは、上記の抽出を行った際の抽出液中のエンドトキシン含量が0.5EU(国際エンドトキシンユニット)/ml以下と限定される。上記エンドトキシン含量が0.5EU/mlを超えると、採血された血液がエンドトキシンによって生理活性物質の一つであるサイトカインの誘導を顕著に引き起こすことがあり、誘導されたサイトカインにより種々の免疫担当細胞が刺激され、免疫担当細胞の機能が変化し、正確な細胞機能の測定が不可能となることがある。
【0032】
上記測定しようとする液量とは、後述の種々の測定をする際に使用される全ての液の合計量を指すものであり、例えば、測定のための血液量と、必要に応じて添加される後述の血液抗凝固剤溶液の量、血液凝固促進剤溶液の量、刺激物質の溶解もしくは懸濁用の液の量の総和を指す。
【0033】
なお、上記抽出を行う際のエンドトキシンフリー水の量は、測定しようとする液量に全く等しい量である必要は必ずしもなく、抽出が十分になされ得る限り、測定しようとする液量未満であってもよい。もっとも、この場合であっても、抽出液中のエンドトキシン含量が0.5EU/ml以下であれば、本発明の作用効果を奏し得る。
【0034】
上記エンドトキシン含量の測定方法については種々の方法が存在するが、本明細書におけるエンドトキシン含量の測定方法は、第十三改正日本薬局方解説書「エンドトキシン試験法」における発色合成基質の加水分解による発色を指標とする比色法であり、例えば、市販品であるエンドスペシー(生化学工業社製)を用いて測定することができる。
【0035】
なお、エンドトキシンを除去もしくは失活させる方法としては、加熱処理、酸、アルカリ処理による不活化やメンブレンフィルタによる限外濾過法、アニオン性のキトサン系樹脂やエンドトキシンに対して特異的に結合するポリミキシンB、エンドトキシンに対する抗体を固定化した吸着剤による除去方法等、公知の種々の方法を用いることができる。また、上記エンドトキシン除去操作に用いる器具、容器は、ガラス製の場合には、250℃、1時間以上の乾熱処理をし、プラスチック製の場合には、0.2M水酸化ナトリウム水溶液に浸し、エンドトキシンフリー水で洗浄し、エンドトキシンを失活させたものを用いる必要がある。また、水は、エンドトキシンフリー水を用いる必要があり、操作環境はクリーンルームなどできる限り二次的なエンドトキシンの汚染を防止できる環境であることが好ましい。
【0036】
本願の第1の発明に係る細胞機能測定用容器は、容器内に、血液と接触することにより該血液中での生理活性物質の産生を誘導する材料が、血液と接触され得るように収納されている。この生理活性物質の産生を誘導する材料を、以下、生理活性物質誘導材料ということもある。
【0037】
上記生理活性物質としては、例えば、TNF−α;IL−1β、IL−4、IL−5、IL−6等のインターロイキン;INFα、INFβ、INFγ等のインターフェロン;コロニー刺激因子;IL−8、RANTES等の走化性因子などの種々のサイトカインや、PGE2、PGI2等のプロスタグランジン;LTB4、LTC4等のロイコトリエン;一酸化窒素;活性酸素;ヒスタミン;血小板活性化因子(PAF)などの種々のケミカルメディエーターが挙げられる。また、可溶性ICAM1などの接着因子、可溶性IL−2レセプターなどの可溶性サイトカインレセプター、マトリックスメタロプロテイナーゼ、マクロファージ特異的エラスターゼなどの細胞内顆粒酵素も挙げられる。
【0038】
上記の生理活性物質を測定する方法としては、例えば、測定しようとする上記生理活性物質に対するモノクローナル抗体もしくはポリクローナル抗体、ペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼなどの酵素及び各々の酵素の発色基質などを利用した酵素免疫測定方法が挙げられる。
【0039】
本発明で用いられる生理活性物質の産生を誘導する材料とは、エンドトキシン、BCG死菌やコリネバクテリウム属などの種々の微生物;合成リピドA;ピランコポリマー;レクチン(フィトヘマグルチニン、コンカナバリンA、ポークウィードマイトゲン等);OK432(ピシバニール);PSK(クレスチン);レンチナン;ザイモザン;LPS(リポポリサッカライド);カルシウムイオノフォア;ホルボルエステル;免疫グロブリン固定化担体;ホルミルメチオニルロイシルフェニルアラニン(FMLP)などのホルミルペプチド;種々のサイトカインなどが挙げられる。
【0040】
また、喘息、花粉症、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、消化管アレルギー、寄生虫アレルギーなどのアレルゲン検査に用いられる特定抗原(例えば、ハウスダスト;ダニ抗原;ブタクサ花粉抽出物、スギ花粉抽出物、イネ抽出物などの種々の花粉抗原;真菌抗原、アスカリス抽出物などの寄生虫抗原;卵白アルブミン、小麦、大豆、エビ、カニ、肉類などの食物抗原;ハチ毒など)も用いられる。
【0041】
また、上記に示した生理活性物質の産生を誘導する材料を種々の天然、合成高分子材料に公知の固定化方法(共有結合法、物理吸着法など)によって固定化した材料なども挙げられる。
【0042】
上記生理活性物質の産生を誘導する材料の形状としては、特に限定されず、例えば、液状、粒子状などが挙げられる。また、担体に固定化されていてもよい。上記液状の場合は、通常、上記生理活性物質の産生を誘導する材料を、希釈液として、例えば、リン酸緩衝液、ハンクス緩衝液などの緩衝液やMEM、RPMI−1640等の通常の培地、生理食塩液(例えば、大塚製薬社製)、注射用水(例えば、大塚製薬社製)などで希釈して用いる。
【0043】
上記生理活性物質の産生を誘導する材料の反応容器中の存在状態は、固体状であってもよく、また、液体状であってもよい。生理活性物質の産生を誘導する材料が水溶性材料の場合、容器の内壁面に塗布、または添加された後、粉末状にされてもよい。例えば、注射用水を用いて生理活性物質の産生を誘導する材料を希釈した場合は、生理活性物質の産生を誘導する材料を容器に入れた後、乾固した方が好ましい。生理活性物質の産生を誘導する材料が水不溶性の材料の場合には、上記生理活性物質の産生を誘導する材料の表面に気泡が残ると、転倒混和等により血液と接触させる際に過度の溶血を引き起こし、測定系に影響するおそれがあるため、水不溶性材料は、例えば、上記のような希釈液に浸しておくのが好ましい。
【0044】
担体に生理活性物質の産生を誘導する材料が固定化されて用いられる場合、固定化する担体が水溶性材料の場合は、容器の内壁に塗布、あるいは添加した後、粉末状にしてもよい。担体が水不溶性材料の場合は、材料の表面に気泡が残ると、過度の溶血を引き起こし、測定系に影響するおそれがあるため、例えば、上記のような希釈液に浸しておくのが好ましい。
【0045】
生理活性物質の産生を誘導する材料の反応容器中への添加量は、生理活性物質の産生を誘導する材料の種類によって適宜最適濃度を設定することが好ましい。
【0046】
また、生理活性物質誘導材料は、好ましくはエンドトキシンである。エンドトキシンは、血液中の単球、マクロファージと反応し、これらの細胞の活性化を促し、サイトカインの産生を誘導する。上記エンドトキシンとしては、例えば、微生物由来の細胞壁多糖(LPS)からなるエンドトキシンが挙げられる。また、エンドトキシンを種々の天然または合成高分子材料中の固定化方法によって固定化した材料なども用いられ得る。
【0047】
エンドトキシンの使用量は、血液と接触されたときに全液(血液と、血液抗凝固剤溶液と、エンドトキシンの溶解液等との総和)中のエンドトキシン濃度が0.6〜100000EU/mlとなるようにされていることが好ましく、0.8〜80000EU/mlとなるようにされていることがより好ましい。上記濃度が0.6EU/ml未満では、TNFα、IL−1β及びIL−6の誘導量が少なくなりすぎることがあり、100000EU/mlを超えるとTNFα、IL−1β及びIL−6の誘導量が少なくなりすぎることがあり、その費用も高くなってくる。
【0048】
本発明の細胞機能測定用容器においては、上記生理活性物質誘導材料が、容器内に、血液と接触可能な状態とされている。上記血液と接触可能な状態としては、例えば、上記生理活性物質誘導材料が上記容器内に収容されている場合が挙げられる。
【0049】
上記生理活性物質誘導材料の形状としては、通常、粉末状または、該誘導材料が水などの溶媒に溶解された液状である。該誘導材料の上記容器中の存在状態は、固体状であってもよく、また、ゲル状、液体状であってもよい。該誘導材料は、水溶性の場合、適当な溶媒に溶解されて容器の内壁面に塗布、あるいは添加された後粉末状にされてもよい。
【0050】
上記溶媒としては、例えば、リン酸緩衝液、ハンクス緩衝液などの緩衝液やMEM、RPMI−1640等の通常の培地など、生理的緩衝液であれば、いずれであっても利用できる。また、市販品の注射用水(LPSフリー水、大塚製薬社製)、生理食塩液(大塚製薬社製)を用いることもできる。エンドトキシン以外の生理活性物質誘導材料としては、第1の発明の説明において例示した各種材料を同様に用いることができる。
【0051】
また、さらに、上記生理活性物質誘導材料には、特開平6−209992号公報に開示されている中心線平均粗さRa値が0.2μm〜10μmであり、でこぼこ平均間隔Sm値が5μm〜200μmの表面粗さを有する高分子材料や、特開平7−67955号公報に開示されている分子中に水酸基、アミド骨格及びエステル骨格からなる群より選ばれる少なくとも1つの化学構造を有する高分子材料またはカチオン性官能基を有する高分子材料も用いられ得る。
【0052】
また、上記生理活性物質誘導材料のうち、サイトカイン誘導材料としては、フィトヘマグルチニンが好ましい。フィトヘマグルチニンは、4量体からなるレクチンであり、その構成サブユニットには、赤血球凝集能を有するEサブユニットと白血球凝集能を有するLサブユニットとがある。用いられるフィトヘマグルチニンとしては、上記EサブユニットとLサブユニットからなる4量体であるフィトヘマグルチニン−P(PHA−P)、及び、Lサブユニットの4量体であるフィトヘマグルチニン−L(PHA−L)が好ましい。PHA−P及びPHA−Lはそれぞれ単独で用いてもよいし、併用して用いてもよい。
【0053】
また、PHA−PとPHA−Lについて使用量を同一にしてサイトカインの産生誘導能力を比較すると、その誘導量はPHA−Pに比べてPHA−Lの方が約10倍高い。従って、サイトカイン誘導材料としては、PHA−Lが特に好ましい。また、PHA−Lの場合、血液と接触されたときの全液(血液と、血液抗凝固剤溶液と、PHA−Lの溶解液等との総和)中のフィトヘマグルチニン−Lの濃度が、0.1〜100μg/mlとなるようにされていることが好ましく、0.5〜50μg/mlとなるようにされていることが更に好ましい。上記濃度が0.1μg/ml未満では、TNFα及びIL−1βの誘導量が少なくなりすぎることがあり、50μg/mlを超えるとTNFα及びIL−1βの誘導量が少なくなりすぎることがあり、その費用も高くなっている。
【0054】
また、エンドトキシン以外の上記サイトカイン誘導材料は、エンドトキシンを含まないもの、いわゆるエンドトキシンフリーのものが好ましい。
第1の発明の細胞機能測定用容器は、内部が減圧されていることが好ましい。上記減圧の程度は、常圧の血液と上記細胞機能測定用容器が連通された時に、上記細胞機能測定用容器の中に常圧の血液が吸入され得る程度の圧力であればよく、その圧力は、吸入しようとする血液の量によって決められ得る。すなわち、吸入しようとする血液の量が多ければ多いほど、減圧の程度を大きくすればよい。
【0055】
第1の発明の細胞機能測定用容器の形状としては、特に限定されず、例えば、採血管、試験管等のようなチューブ状のもの、マイクロプレート等のようなプレート状のものが挙げられ、減圧操作を行い得るものが好ましい。
【0056】
第1の発明の細胞機能測定用容器の材質としては、例えば、プラスチックまたはガラスが挙げられる。上記プラスチックとしては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれもが用いられ得る。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ−アクリレート樹脂等が挙げられる。
【0057】
第1の発明の細胞機能測定用容器としてチューブ状のものを用いる場合には、その内部を減圧に維持するために、通常、栓体が使用される。栓体の材質としては、例えばブチルゴム、塩素化ブチルゴム、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0058】
第1の発明の細胞機能測定用容器としてチューブ状のものを用いる場合、採取する血液量は、細胞機能測定用容器の容積によって異なるが、通常4〜5mlの容積の容器を用いる場合であれば、0.5〜2ml程度とすればよい。
【0059】
また、第1の発明の細胞機能測定用容器としてマイクロプレート状のものを用いる場合の採取血液量は、0.05〜2ml程度でよい。
第1の発明の細胞機能測定用容器中には、必要に応じて血液が凝固しないように血液抗凝固剤が収容されていてもよい。上記血液抗凝固剤は、該容器の中に液体または固体のいずれの状態で存在されてもよい。上記血液抗凝固剤としては、ヘパリン化合物、クエン酸化合物、シュウ酸化合物などが挙げられ、ヘパリンナトリウムなどが細胞の生物学的反応を阻害しないので好ましい。上記ヘパリンナトリウムの該容器中の収容量としては、該容器に血液が収容された時に、その血液中の濃度が低くなると血液凝固のおそれがあり、高くなると細胞に不測の活性化や不活性化を起こすおそれがあるので、4〜50U/mlになるように収容されるのが好ましい。
【0060】
第1の発明の細胞機能測定用容器中に、血液抗凝固剤を添加する必要がある場合の一例としては、単球、マクロファージ、リンパ球、白血球等の細胞と、生理活性物質の産生を誘導する材料とを反応させ、産生(遊離または誘導)される生理活性物質を測定する場合がある。また、第1の発明の細胞機能測定用容器中に、血液抗凝固剤を添加する必要がない場合の一例としては、血小板をトロンビン刺激して、遊離されるRegulated on Activation,Normal T Expressed and Secreted(RANTES)等を測定する場合がある。
【0061】
第1の発明の細胞機能測定用容器中には、また、必要に応じて、血液凝固剤が収容されていてもよい。このような場合としては、血液を凝固させて生理活性物質を測定する場合であり、血液凝固剤の例としてはトロンビン等が挙げられる。
【0062】
本発明の細胞機能測定用容器の製造方法の一例を挙げると、内部を減圧にすることが可能である容器に、上記生理活性物質誘導材料及び血液抗凝固剤を加え、容器を所定の減圧状態にした後、上記容器に栓をする方法が挙げられる。
【0063】
上記容器としては、例えば、一端が開口し他端が閉塞してなる有底管体が好ましく、開口部は、栓体によって閉塞可能なものが好ましい。上記有底管体としては、例えば、サイトカインの誘導反応後、上記サイトカイン量を測定するための遠心分離操作に好適なものがより好ましく、そのサイズとしては、外径が、5〜30mm、高さ20〜150mm程度が好ましい。
【0064】
また、本発明の細胞機能測定用容器は、エンドトキシンや雑菌の混入を避けるため、できる限りクリーンな環境で製造するのが好ましく、また、可能であれば、製造後に公知の滅菌処理を施すのが好ましい。
【0065】
本発明の細胞機能測定用容器によって、細胞機能を測定する方法について説明する。
まず血管または採血容器と上記細胞機能測定用容器とを連通させ、上記細胞機能測定用容器中に検体血液を吸入させる、次いで、上記細胞機能測定用容器を適度に振とうしながら、血液細胞と上記生理活性物質誘導材料とを接触させ反応させて誘導する。反応後、静置もしくは遠心分離により、血球と血漿に分離して血漿中のサイトカイン量を各々の定量可能な試薬により定量する。
【0066】
血液と上記サイトカイン誘導材料との反応温度が低くなると、細胞の代謝活性が低くなってサイトカイン誘導量が少なくなりすぎることがあり、高くなると、細胞に障害が生じてサイトカイン誘導量が少なくなりすぎることがあるので、26〜45℃が好ましく、より好ましくは、30〜42℃である。
【0067】
血液と上記サイトカイン誘導材料との反応時間が短くなると、サイトカイン誘導量が少なくなりすぎることがあり、長くなりすぎると測定結果が出るのが遅くなり、また、サイトカイン誘導量も約4時間をピークとして少しづつ減少する傾向があるので、1〜6時間が好ましく、より好ましくは、2〜4時間である。
【0068】
本発明の細胞機能測定用容器を用いた測定方法では、上記細胞機能測定用容器に採血した後、30〜40℃で2〜6時間、全血を培養してサイトカインを誘導するのが最も良い誘導方法である。
【0069】
以下に、本発明の細胞機能測定用容器を用いて、細胞機能を測定する一実施態様を詳しく説明する。まず、血液と上記サイトカイン誘導材料とを上記細胞機能測定用容器の中で反応させ、サイトカインを誘導し、誘導後の細胞機能測定用容器を1200Gで遠心分離して、血球成分と血漿成分を分離させる。次いで、分離された血漿を、上記サイトカインに対するモノクローナル抗体を固定化したマイクロプレートのウェルに、ピペッティングにより添加し、37℃で2時間反応させる。次いで、反応後の血漿液を吸引除去等の手段で廃棄し、さらに未反応成分を除くため、Tween20等のノニオン系の界面活性剤を含有する、中性pHの洗浄用緩衝液で上記ウェルを洗浄する。次いで、西洋わさびペルオキシダーゼを固定化した上記サイトカインに対するポリクローナル抗体をピペッティングにより上記ウェルに添加し、37℃で1時間反応させる。次いで、未反応の西洋わさびペルオキシダーゼ固定化抗体を除くため、上記ウェルを上記洗浄用緩衝液で洗浄した後、過酸化水素、テトラメチルベンジジンを含む基質溶液を添加し、5〜10分間反応させる。次いで、1M硫酸溶液を添加して、反応を停止させて、酵素反応による基質の発色を450nmの吸光度から測定する。この測定値と既知濃度の上記サイトカインを用いて作成した検量線から、上記サイトカインの産生誘導量を測定する。
【0070】
(細胞機能測定用キット)
本発明に係る細胞機能測定用容器は、それぞれ、生理活性物質の量を定量可能な試薬、例えば、酵素免疫測定試薬と組み合わせることにより、細胞機能測定用キットとして用いることができる。すなわち、本発明に係る細胞機能測定用容器と、誘導された生理活性物質の量を定量可能な試薬とを備える細胞機能測定用キットを提供することができる。
【0071】
上記細胞機能測定用キットの使用方法の一例としては、前記の、本発明に係る細胞機能測定用容器を用いて細胞機能を測定する一実施態様を説明した方法と同様である。
【0072】
(好ましい血液抗凝固剤)
本発明では、上記血液抗凝固剤中の生理活性物質の産生を誘導する材料の含量が、血液と混合されたときに血液細胞から生理活性物質を産生しない量とすることが望ましい。すなわち、血液抗凝固剤自体の生理活性物質誘導材料の含量が上記のように低くされると、それによって検査を行うまでの間に採血した血液に不要な刺激を与えることが抑制される。その結果、採血した血液中の生理活性物質が血液抗凝固剤により産生され難く、種々の生理活性物質の測定や細胞機能の測定、血液細胞の表面抗原測定をより一層精度よく行うことができる。また、採血後、検査を行うまで、血液試料を長時間保存することができる。
【0073】
この場合においても、生理活性物質誘導材料としては前述したものが挙げられ、好ましくはエンドトキシンである。エンドトキシン含量が多くなると、TNFα、IL−1β、IL−6などの上述したサイトカインの産生が引き起こされ、正確な測定ができなくなる。従って、血液抗凝固剤中のエンドトキシン含量は、採取した血液中において生理活性物質としてのサイトカインを産生しない量に制限することが望ましい。
【0074】
後述の実施例から明らかなように、血液抗凝固剤中のエンドトキシン含量が、反応血液中において0.5EU/mlを超えると、TNFα、IL−1β、IL−6などのサイトカインの産生が生じることがある。従って、血液抗凝固剤中のエンドトキシン含量は、反応液中におけるエンドトキシン含量が0.5EU/ml以下となるように制限されることが望ましい。
【0075】
上記血液抗凝固剤の量は、採取血液量に応じて異なるが、通常、血液中に、エチレンジアミンテトラ酢酸ナトリウムであれば0.5〜5mg/ml、クエン酸ナトリウムであれば3〜5重量%、ヘパリンナトリウムであれば4〜50U/mlの量で用いられる。
【0076】
従って、本発明においては、血液抗凝固剤のエンドトキシン含量は、血液抗凝固剤の量と採取血液量によって適宜選択され、最終的に採取した血液中でのエンドトキシン含量が0.5EU/ml以下とされるのが好ましい。
【0077】
例えば、ヘパリンナトリウムを用いて1mlの血液を採取して試験する場合、ヘパリンナトリウムは4〜50U/ml添加されるので、そのエンドトキシン含量は00.125EU/ヘパリンユニット以下とされることが好ましく、より好ましくは0.01EU/ヘパリンユニット以下である。
【0078】
エンドトキシン含量の少ない血液抗凝固剤の製造方法としては、第1の発明の説明に記載したエンドトキシンを除去もしくは失活させる種々の方法を用いることができる。
【0079】
もっとも、加熱処理や酸もしくはアルカリ処理によるエンドトキシンの不活化は、血液抗凝固剤によってはそれ自身が失活する場合があるので、メンブレンフィルターによる眼外濾過、吸着剤による除去が好ましい。
【0080】
(細胞機能の測定)
本発明における「細胞機能測定」なる表現は、赤血球、血小板及び白血球に分類される血液細胞の機能を直接測定する方法だけでなく、上記生理活性物質の測定により細胞機能を評価する方法、並びに血液細胞の表面抗原測定をも含むものとする。
【0081】
上記赤血球、血小板、白血球に分類される血液細胞の機能測定としては、例えば、赤血球凝集反応、血小板凝集能、白血球遊走能、白血球遊走阻止試験、白血球ニトロブルーテトラゾリウム還元能、白血球貧食能、リンパ球幼若化反応、リンパ球細胞毒性試験、抗体依存性細胞媒介性細胞障害活性試験、各種サイトカイン産生能、ヒスタミン遊離試験等が挙げられる。
【0082】
また細胞表面抗原の測定とは、ロゼット形成試験やフローサイトメトリー法による細胞表面抗原の測定であり、例えば、Fcレセプター、各種CD抗原等の測定等が挙げられる。
【0083】
(本発明に係る細胞機能測定方法)
本願の第2の発明に係る細胞機能測定方法は、本発明に係る細胞機能測定用容器に血液を導入し、細胞機能を測定することを特徴とする。この場合、好ましくは、前述したように、血液抗凝固剤中のエンドトキシン含量は、血液と混合されたときに血液細胞から生理活性物質を産生しない量に制限されている血液抗凝固剤が予め細胞機能測定用容器内に収納される。
【0084】
本発明に係る細胞機能測定方法の一実施態様を以下に説明する。
採血用注射針付き注射器に、予め血液抗凝固剤として、例えば、ヘパリンナトリウムを採取血液量あたり、例えば、10U/mlになるように収容し、被験者から血液を採取する。あるいは真空採血管に血液抗凝固剤を上記と同様の量で収容し、採血を行ってもよい。
【0085】
容器内に生理活性物質誘導材料が血液と接触されるように配置されているので、本発明に係る細胞機能測定用容器の説明において前述したように、生理活性物質誘導材料が血液と反応し、生理活性物質が誘導される。誘導された生理活性物質の測定については、前述した方法により行い得る。
【0086】
好ましくは、生理活性物質を誘導する際の温度は26〜45℃の範囲とされ、生理活性物質を誘導する時間については、好ましくは、1〜6時間とされる。
【0087】
また、誘導された生理活性物質の量は、定量可能な試薬、例えば、酵素免疫測定試薬により定量することができる。
【0088】
【発明の実施の形態】
好ましい実施例の説明
次に、本発明の実施例及び比較例を挙げることにより、本発明をさらに詳細に述べる。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0089】
実施例1〜4、比較例1〜4
(1)細胞機能測定用容器の製造方法
ポリエチレンテレフタレート製の4mlの採血管(直径12.6×75mm)を、エンドトキシンフリー水(大塚製薬社製)4mlで10回よく洗浄し、濃度が200U/mlとなるようにヘパリンナトリウム(ノボ・ノルディスクA/S社製、商品名:ノボ・ヘパリン注1000)を含有させた注射用生理食塩水(大塚製薬社製)を0.05ml添加した。
【0090】
E.coli UKT−B由来エンドトキシン(日本薬局方標準品Lot.8920)を注射用生理食塩水(大塚製薬社製)に溶解、段階希釈して、上記ヘパリン含有採血管のそれぞれ2本ずつに、ヘパリンナトリウム溶解生理食塩水とエンドトキシン溶解生理食塩水との合計の溶液中に、該エンドトキシン濃度が0EU/ml(比較例1)、1EU/ml(比較例2)、2EU/ml(比較例3)、5EU/ml(比較例4)、10EU/ml(実施例1)、20EU/ml(実施例2)、50EU/ml(実施例3)、100EU/ml(実施例4)となるように0.05ml添加した。
【0091】
次いで、エンドトキシンフリー水(大塚製薬社製)でよく洗浄した、管径に合うブチルゴム製の栓体を上記採血管の開口部に、開口部を密栓しないように、軽く載せた後、減圧にできる容器内に置き、上記容器を減圧してゆき、上記容器を570mmHgに減圧したところで、該採血管の開口部を密栓した。このようにして製造された減圧採血管を実施例1〜4、比較例1〜4の細胞機能測定用容器とした。
【0092】
(2)採血管(容器)のエンドトキシン含量の測定
注射針のついた注射器に、エンドトキシンフリー水(大塚製薬社製)を採取し、その注射針を上記(1)で得られたヘパリンだけを含有した減圧採血管4本のブチルゴム製の栓体部分に突き刺し、採血管内にエンドトキシンフリー水(大塚製薬社製)を0.9ml採取し、1時間、37℃で攪拌し、エンドトキシンを抽出した。次に、この抽出液中のエンドトキシン含量を生化学工業社製のエンドトキシン測定用キットであるエンドスペシーES6(商品名)を用いて、合成発色基質法で測定した。その結果、試験した採血管4本共に、抽出液中のエンドトキシン含量は0.05EU/ml以下であった。
【0093】
(3)TNFα、IL−1β、IL−6の誘導能の測定方法
健常人ボランティアから、注射針のついた注射器にヘパリン採血し、その注射針を上記(1)で得られた、種々の濃度のエンドトキシンを添加した減圧採血管のブチルゴム製の栓体部分に突き刺し、採血管内に、検体血液0.9mlを採取した。次いで、予め37℃に保温しておいた恒温器中の転倒混和用ロッカープラットフォームに血液を採取した各々の採血管を取り付け、4時間、転倒混和した。混和後、各々の容器を1600G、10分間、4℃で遠心分離して、上澄みの血漿を採取した。採取した血漿中のTNFα、IL−1β、IL−6各サイトカイン量(pg/ml)を各々のモノクローナル抗体を用いた酵素免疫測定キットを用いて測定した。
【0094】
TNFαの産生量の測定は、PREDICTA Human TNF-α ELISA KIT(測定限界35pg/ml)、IL−1βの産生量の測定は、PREDICTA Human IL-1β ELISA KIT(測定限界15pg/ml)、IL−6の産生量の測定は、PREDICTA Human IL-6 ELISA KIT(測定限界35pg/ml)を用いた(いずれもGenzyme 社製)。測定は各々n=3とした。測定結果を図1〜3に示した。
【0095】
各図における横軸のLPS濃度の単位EU/mlは、血液と接触したときの全溶液中のエンドトキシン濃度を示し、縦軸の誘導量(pg/ml)は、血漿中の各サイトカインの濃度についての各2本の採血管で得られた値の平均値を示す。この結果から明らかなように、エンドトキシン濃度が0.6EU/ml以上では、TNFα、IL−1β、IL−6の産生誘導が起こることが明らかである。なお、エンドトキシン濃度が0EU/ml(比較例1)の場合の測定結果は、図1〜3に示していないが、この場合は各サイトカインともに産生量が各測定の検出限界濃度以下であった。
【0096】
実施例5〜10
(1)細胞機能測定用容器の製造方法
ポリエチレンテレフタレート製の4mlの採血管(直径12.6×75mm)を、エンドトキシンフリー水(大塚製薬社製)4mlで10回よく洗浄し、200U/mlとなるようにヘパリンナトリウム(ノボ・ノルディスクA/S社製、商品名:ノボ・ヘパリン注1000)を含有させた注射用生理食塩水(大塚製薬社製)を0.05ml添加した。
【0097】
E.coli 055:B5由来エンドトキシン(LBL社製)を注射用生理食塩水(大塚製薬社製)に溶解、段階希釈して、上記ヘパリン含有採血管のそれぞれ2本ずつに、ヘパリンナトリウム溶解生理食塩水とエンドトキシン溶解生理食塩水との合計の溶液中に、該エンドトキシン濃度が8EU/ml(実施例5)、80EU/ml(実施例6)、800EU/ml(実施例7)、8000EU/ml(実施例8)、80000EU/ml(実施例9)、800000EU/ml(実施例10)となるように0.05ml添加した。
【0098】
次いで、エンドトキシンフリー水(大塚製薬社製)でよく洗浄した、管径に合うブチルゴム製の栓体を上記採血管の開口部に、開口部を密栓しないように、軽く載せた後、減圧にできる容器内に置き、上記容器を減圧してゆき、上記容器を570mmHgに減圧したところで、該採血管の開口部を密栓した。このようにして製造された減圧採血管を実施例5〜10の細胞機能測定用容器とした。
【0099】
(2)採血管(容器)のエンドトキシン含量の測定
注射針のついた注射器に、エンドトキシンフリー水(大塚製薬社製)を採取し、その注射針を上記(1)で得られたヘパリンだけを含有した減圧採血管4本のブチルゴム製の栓体部分に突き刺し、採血管内にエンドトキシンフリー水(大塚製薬社製)を0.9ml採取し、1時間、37℃で攪拌し、エンドトキシンを抽出した。次に、この抽出液中のエンドトキシン含量を生化学工業社製のエンドトキシン測定用キットであるエンドスペシーES6(商品名)を用いて、合成発色基質法で測定した。その結果、試験した採血管4本共に、抽出液中のエンドトキシン含量は0.05EU/ml以下であった。
【0100】
(3)TNFα、IL−1βの誘導能の測定方法
健常人ボランティアから、注射針のついた注射器にヘパリン採血し、その注射針を上記(1)で得られた、種々の濃度のエンドトキシンを添加した減圧採血管のブチルゴム製の栓体部分に突き刺し、採血管内に、検体血液0.9mlを採取した。次いで、予め37℃に保温しておいた恒温器中の転倒混和用ロッカープラットフォームに血液を採取した各々の採血管を取り付け、4時間、転倒混和した。混和後、各々の容器を1600G、10分間、4℃で遠心分離して、上澄みの血漿を採取した。採取した血漿中のTNFα、IL−1β量(pg/ml)を実施例1と同様にして測定した。
【0101】
この測定結果を図4に示した。図4における横軸のLPS濃度の単位EU/mlは、血液と接触したときの血中(全液中)のエンドトキシン濃度を示し、縦軸の誘導量(pg/ml)は、血漿中のTNFα、IL−1βの濃度についての各2本の採血管で得られた値の平均値を示す。この結果から明らかなように、エンドトキシン濃度が0.8〜80000EU/mlでTNFα、IL−1βの誘導が認められた。また、エンドトキシン濃度が8〜800EU/mlでTNFα、IL−1βの誘導量は、それぞれ、ほぼ等しい値を示したが、エンドトキシン濃度が8000EU/mlでは、TNFα、IL−1βの誘導量は、共に、さらに増加し、エンドトキシン濃度が80000EU/mlでは、TNFα、IL−1βの誘導量は、共に、エンドトキシン濃度が8000EU/mlに比べて減少した。
【0102】
なお、サイトカイン誘導材料であるエンドトキシンは、すでに特開平1−503331号公報に、10〜200μg(エンドトキシン濃度に換算して約80000〜2000000EU/ml)を用いることが記載されているが、本発明ではエンドトキシンをより低濃度で使用できるので、高濃度で起こると考えられる複数の機構によるサイトカインの誘導を起こさず、患者の病態をより正確に反映したサイトカインを誘導できる。
【0103】
実施例11〜16
(1)細胞機能測定用容器の製造方法
ポリエチレンテレフタレート製の4mlの採血管(直径12.6×75mm)を、エンドトキシンフリー水(大塚製薬社製)4mlで10回よく洗浄し、200U/mlとなるようにヘパリンナトリウム(ノボ・ノルディスクA/S社製、商品名:ノボ・ヘパリン注1000)を含有させた注射用生理食塩水(大塚製薬社製)を0.05ml添加した。
【0104】
E.coli 055:B5由来エンドトキシン(LBL社製)の1600EU/ml注射用生理食塩水(大塚製薬社製)溶液を、上記ヘパリン含有採血管のそれぞれに、0.05ml添加した。
【0105】
次いで、エンドトキシンフリー水(大塚製薬社製)でよく洗浄した、管径に合うブチルゴム製の栓体を上記採血管の開口部に、開口部を密栓しないように、軽く載せた後、減圧にできる容器内に置き、上記容器を減圧してゆき、上記容器を570mmHgに減圧したところで、該採血管の開口部を密栓した。このようにして製造された減圧採血管を実施例11〜16の細胞機能測定用容器とした。
【0106】
(2)採血管(容器)のエンドトキシン含量の測定
注射針のついた注射器に、エンドトキシンフリー水(大塚製薬社製)を採取し、その注射針を上記(1)で得られたヘパリンだけを含有した減圧採血管4本のブチルゴム製の栓体部分に突き刺し、採血管内にエンドトキシンフリー水(大塚製薬社製)を0.9ml採取し、1時間、37℃で攪拌し、エンドトキシンを抽出した。次に、この抽出液中のエンドトキシン含量を生化学工業社製のエンドトキシン測定用キットであるエンドスペシーES6(商品名)を用いて、合成発色基質法で測定した。その結果、試験した採血管4本共に、抽出液中のエンドトキシン含量は0.05EU/ml以下であった。
【0107】
(3)TNFα、IL−1βの誘導能の測定方法
健常人ボランティアから、注射針のついた注射器にヘパリン採血し、その注射針を上記(1)で得られた、減圧採血管のブチルゴム製の栓体部分に突き刺し、採血管内に、検体血液0.9mlを採取した。次いで、予め保温しておいた恒温器25℃(実施例11)、30℃(実施例12)、33℃(実施例13)、37℃(実施例14)、40℃(実施例15)、45℃(実施例16)の中の転倒混和用ロッカープラットフォームに血液を採取した各々の採血管を各実施例2本ずつ取り付け、4時間、転倒混和した。混和後、各々の容器を1600G、10分間、4℃で遠心分離して、上澄みの血漿を採取した。採取した血漿中のTNFα、IL−1β量(pg/ml)を実施例1と同様にして測定した。
【0108】
この測定結果を図5に示した。図5における横軸の反応温度は、上記の恒温器の温度を示し、縦軸の誘導量(pg/ml)は、血漿中のTNFα、IL−1βの濃度についての各2本の採血管で得られた値の平均値を示す。
【0109】
実施例17〜21
(1)細胞機能測定用容器の製造方法
ポリエチレンテレフタレート製の4mlの採血管(直径12.6×75mm)を、エンドトキシンフリー水(大塚製薬社製)4mlで10回よく洗浄し、200U/mlとなるようにヘパリンナトリウム(ノボ・ノルディスクA/S社製、商品名:ノボ・ヘパリン注1000)を含有させた注射用生理食塩水(大塚製薬社製)を0.05ml添加した。
【0110】
E.coli 055:B5由来エンドトキシン(LBL社製)1600EU/ml注射用生理食塩水(大塚製薬社製)溶液を、上記ヘパリン含有採血管のそれぞれに、0.05ml添加した。
【0111】
次いで、エンドトキシンフリー水(大塚製薬社製)でよく洗浄した、管径に合うブチルゴム製の栓体を上記採血管の開口部に、開口部を密栓しないように、軽く載せた後、減圧にできる容器内に置き、上記容器を減圧してゆき、上記容器を570mmHgに減圧したところで、該採血管の開口部を密栓した。このようにして製造された減圧採血管を実施例17〜21の細胞機能測定用容器とした。
【0112】
(2)採血管(容器)のエンドトキシン含量の測定
注射針のついた注射器に、エンドトキシンフリー水(大塚製薬社製)を採取し、その注射針を上記(1)で得られたヘパリンだけを含有した減圧採血管4本のブチルゴム製の栓体部分に突き刺し、採血管内にエンドトキシンフリー水(大塚製薬社製)を0.9ml採取し、1時間、37℃で攪拌し、エンドトキシンを抽出した。次に、この抽出液中のエンドトキシン含量を生化学工業社製のエンドトキシン測定用キットであるエンドスペシーES6(商品名)を用いて、合成発色基質法で測定した。その結果、試験した採血管4本共に、抽出液中のエンドトキシン含量は0.05EU/ml以下であった。
【0113】
(3)TNFα、IL−1βの誘導能の測定方法
健常人ボランティアから、注射針のついた注射器にヘパリン採血し、その注射針を上記(1)で得られた、減圧採血管12本のブチルゴム製の栓体部分に突き刺し、採血管内に、検体血液0.9mlを採取した。次いで、予め37℃に保温しておいた恒温器中の転倒混和用ロッカープラットフォームに血液を採取した各々の採血管を取り付け、30分間(実施例17)、2時間(実施例18)、4時間(実施例19)、6時間(実施例20)、24時間(実施例21)転倒混和した。上記各実施例について各2本ずつ所定時間混和後、各々の容器を3000rpm、10分間、4℃で遠心分離して、上澄みの血漿を採取した。採取した血漿中のTNFα、IL−1β量(pg/ml)を実施例1と同様にして測定した。
【0114】
この測定結果を図6に示した。図6における横軸の反応時間は、上記の転倒混和の時間を示し、縦軸の誘導量(pg/ml)は、血漿中のTNFα、IL−1βの濃度についての各2本の採血管で得られた値の平均値を示す。
【0115】
実施例22
(1)細胞機能測定用容器の製造方法
ポリエチレンテレフタレート製の4mlの採血管(直径12.6×75mm)を、エンドトキシンフリー水(大塚製薬社製)4mlで10回よく洗浄し、200U/mlとなるようにヘパリンナトリウム(ノボ・ノルディスクA/S社製、商品名:ノボ・ヘパリン注1000)を含有させた注射用生理食塩水(大塚製薬社製)を0.05ml添加した。
【0116】
次に、エンドトキシンフリー、滅菌済のフィトヘマグルチニン−P(PHA−P)(Sigma社製)を注射用生理食塩水(大塚製薬社製)に溶解し、上記ヘパリン含有採血管に、ヘパリンナトリウム溶解生理食塩水とエンドトキシン溶解生理食塩水との合計の溶液中に、100μg/mlになるように0.05ml添加した。
【0117】
次いで、エンドトキシンフリー水(大塚製薬社製)でよく洗浄した、管径に合うブチルゴム製の栓体を上記採血管の開口部に、開口部を密栓しないように、軽く載せた後、減圧にできる容器内に置き、上記容器を減圧してゆき、上記容器を570mmHgに減圧したところで、該採血管の開口部を密栓した。このようにして製造された減圧採血管を細胞機能測定用容器とした。
【0118】
(2)採血管(容器)のエンドトキシン含量の測定
注射針のついた注射器に、エンドトキシンフリー水(大塚製薬社製)を採取し、その注射針を上記(1)で得られたヘパリン及びPHA−Pを収容した減圧採血管4本のブチルゴム製の栓体部分に突き刺し、採血管内にエンドトキシンフリー水(大塚製薬社製)を0.9ml採取し、1時間、37℃で攪拌し、エンドトキシンを抽出した。次に、この抽出液中のエンドトキシン含量を実施例1と同様にして測定した。その結果、試験した反応器4本共に、抽出液中のエンドトキシン含量は0.05EU/ml以下であった。
【0119】
(3)TNFα、IL−1β、IL−6の誘導能の測定方法
実施例1の(3)で用いた、種々の濃度のエンドトキシンを添加した減圧採血管の代わりに、上記(1)で得られたヘパリン及びPHA−Pを含有した減圧採血管を用いたことの他は、実施例1の(3)と同様にしてTNFα、IL−1β、IL−6の誘導能の測定を行い、結果を表1〜3に示した。
【0120】
比較例5
(1)細胞機能測定用容器の製造方法
実施例22で使用したポリエチレンテレフタレート製の4mlの採血管(直径12.6×75mm)の代わりに、実施例22で使用したものとは異なるポリエチレンテレフタレート製の4mlの採血管(直径12.6×75mm)を用いたことの他は、実施例22(1)と同様に操作して、ヘパリン及びPHA−Pを含有する減圧採血管を製造し細胞機能測定用容器とした。 (2)採血管(容器)のエンドトキシン含量の測定
上記(1)で得られたヘパリン及びPHA−Pのみを含有する減圧採血管4本を用いたことの他は、実施例22(2)と同様に操作して採血管のエンドトキシン含量の測定を行った。その結果、試験した採血管4本の、抽出液中のエンドトキシン含量は0.65EU/ml、0.74EU/ml、0.58EU/ml、0.62EU/mlであった。
【0121】
(3)TNFα、IL−1β、IL−6の誘導能の測定方法
実施例22の(3)で用いた、ヘパリン及びPHA−Pを含有した減圧採血管の代わりに、上記(1)で得られたヘパリン及びPHA−Pを含有した減圧採血管10本を用いたことの他は、実施例22の(3)と同様にしてTNFα、IL−1β、IL−6の誘導能の測定を行い、結果を表1〜3に示した。
【0122】
【表1】
【0123】
【表2】
【0124】
【表3】
【0125】
表1〜3より抽出液中のエンドトキシン含量が0.5EU/ml以下の細胞機能測定用容器を用いた場合の方が再現性が良かった。
実施例23〜30
(1)細胞機能測定用容器の製造方法
ポリエチレンテレフタレート製の4mlの採血管(直径12.6×75mm)を、エンドトキシンフリー水(大塚製薬社製)4mlで10回よく洗浄した。ヘパリンナトリウム(ノボ・ノルディスクA/S社製、商品名:ノボ・ヘパリン注1000)が40U/mlで、及びPHA−L(Sigma社製)が表4に示した濃度で溶解された生理食塩水(大塚製薬社製)1mlを、上記洗浄済の採血管に2本ずついれた。
【0126】
次いで、エンドトキシンフリー水(大塚製薬社製)でよく洗浄した、管径に合うブチルゴム製の栓体を上記採血管の開口部に、開口部を密栓しないように、軽く載せた後、減圧にできる容器内に置き、上記容器を減圧してゆき、上記容器を570mmHgに減圧したところで、該採血管の開口部を密栓した。このようにして製造された減圧採血管を実施例23〜30の細胞機能測定用容器とした。
【0127】
(2)採血管(容器)のエンドトキシン含量の測定
上記(1)で得られた細胞機能測定用容器のうちのPHA−Lの濃度が異なるものの各1本ずつ(合計8本になる)に、エンドトキシンフリー水(大塚製薬社製)1.0mlを採取し、1時間、37℃で攪拌し、エンドトキシンを抽出した。次に、この抽出液中のエンドトキシン含量を実施例1と同様にして測定した。その結果、実施例23〜30のいずれの細胞機能測定用容器も抽出液中のエンドトキシン含量は0.05EU/ml以下であった。
【0128】
(3)TNFα及びIL−1βの誘導能の測定方法
健常人ボランティアから、注射針のついた注射器にヘパリン採血し、その注射針を上記(1)で得られた実施例23〜30の細胞機能測定用容器のブチルゴム製の栓体部分に突き刺し、採血管内に、検体血液1.0mlを採取した。次いで、予め37℃に保温しておいた恒温器中の転倒混和用ロッカープラットフォームに血液を採取した各々の採血管を取り付け、2時間、転倒混和した。混和後、各々の容器を1600G、10分間、4℃で遠心分離して、上澄みの血漿を採取した。採取した血漿中のTNFα及びIL−1βを実施例1の(3)と同様にして測定し、結果を表4に示した。
【0129】
【表4】
【0130】
実施例31〜34
実施例23のPHA−Lの代わりに、PHA−P(Sigma社製)を表4に示した濃度で使用したことの他は、実施例23と同様に操作してTNFα及びIL−1βの産生量を測定し、結果を表4に示した。なお、実施例31〜34の細胞機能測定用容器を実施例23の(2)と同様にして抽出した抽出液中のエンドトキシン含量は、0.05EU/ml以下であった。
【0131】
実施例35及び比較例6
市販のヘパリン入り真空採血管であるLPS-free採血管(積水化学工業社製:LPSフリー規格有り)を第1の発明の細胞機能測定用容器とした(実施例35)。また、市販のヘパリン入り真空採血管である、A社製採血管(LPSフリー規格無し)を比較例の採血容器とした(比較例6)。
【0132】
それぞれ5本の採血管に、健常人(同一人)の血液を1mlずつ真空採血し、20℃で2時間保存した。その後、4℃で遠心分離(1600G、10分)し、血漿を採取して、血漿中のTNFα量を、Genzyme 社製、商品名「PREDICTA Human TNF-α ELISA KIT」を用いて測定し、それぞれの平均値を求めた。その結果、実施例35のものは、検出限界濃度の15pg/ml以下であった。比較例6のものは、51pg/mlであった。
【0133】
また、それぞれの採血管について、同一ロットの別の採血管のエンドトキシン量を、次のようにして求めた。採血管内に、エンドトキシンフリー水(大塚製薬社製)を1ml採取し、1時間、37℃で攪拌し、エンドトキシンを抽出した。次に、この抽出液中のエンドトキシン含量を実施例1と同様にして測定した。その結果、実施例35のものは0.03EU/ml、比較例6のものは958EU/mlであった。
【0134】
以上より、血液中のTNFα濃度測定を行う場合、採血は、測定しようとする液量に等しい量のエンドトキシンフリー水を採取して抽出を行ったときのエンドトキシン量が、血液細胞から生理活性物質を産生しない量である採血容器で行わなければ、血液は、採血容器内のLPSと反応し、TNFαなどの生理活性物質を産生(誘導)し、不必要に刺激されて、次第に性質が変化していき、本来の血液中のTNFαの濃度を測定できないことが明らかである。
【0135】
実施例36及び比較例7〜9
実施例35及び比較例6と同様の採血管、並びに市販のヘパリン入り真空採血管である、B社製採血管及びC社製採血管の、それぞれ5本ずつの採血管に、刺激物質としてLPSの120ng/ml溶液を50μlずつ分注して、血液とLPSを反応させたサイトカインを誘導するための反応容器を調製した。なお、実施例35と同様の採血管を用いたものを実施例36、比較例6と同様の採血管を用いたものを比較例7、B社製採血管を用いたものを比較例8、C社製採血管を用いたものを比較例9の反応容器とする。なお、比較例8及び9の採血管について、同一ロットの別の採血管のエンドトキシン含量を、実施例35と同様にして測定した結果、比較例8のものは10EU/ml、比較例9のものは389EU/mlであった。
【0136】
8〜10週齢のICR系雄性マウス5匹から注射器で心採血した血液合計6mlを実施例35と同様の採血容器に集めた。
なお、注射器は予め0.2M水酸化ナトリウム水溶液に一晩浸してエンドトキシンを失活させ、十分にエンドトキシンフリー水で洗浄し、さらに、血中での最終濃度が10U/mlとなるようにヘパリンを予め添加したものを用いた。
【0137】
次いで、上記採血容器の栓体にマルチプル注射針を突き刺し、もう片側に、上記実施例36及び比較例7〜9の反応容器の栓体を順に突き刺して、各々に300μlずつ分注した。
【0138】
次いで、それぞれの反応容器を攪拌しつつ37℃で4時間保持した。その後、4℃で遠心分離(1600G、10分)し、血漿を採取して、血漿中のTNF−α量を、Genzyme 社製、商品名「FACTOR TEST MOUSE TNF-α ELISA KIT」を用いて測定し、それぞれの平均値を求めると共に、変動係数(%)〔変動係数とは、(標準偏差/平均値)×100を指す〕も求め表5に示した。
【0139】
【表5】
【0140】
表5より、TNF−α産生(誘導)量のばらつき(変動係数)が最も小さかったのは、LPS-freeの採血容器に既知量のLPSを添加した実施例36の反応容器を用いた場合であった。
【0141】
以上の結果より、患者の病態等を精度良く、しかも、簡単に把握できる測定法を確立するためには、採血した血液を不必要に刺激せず、測定するまで保存することが不可欠である。このためには、LPS含量が生理活性物質を産生(遊離または誘導)しない量であり、内部が減圧にされている採血容器で採血することが重要であることが明らかになった。
【0142】
また、精度良く血液細胞機能を測定するには、測定値に影響を与えるような量のエンドトキシンで汚染されていない採血容器を用いることが必要であり、
刺激物質が一定量収容された反応容器に採血された血液を分注して、血液と刺激物質を反応させて、産生(遊離または誘導)された生理活性物質を測定する必要があることが明らかである。
【0143】
実施例37
ガラス製の器具及び容器は、250℃で2時間以上乾熱処理をし、プラスチック製の器具、容器は、0.2M水酸化ナトリウム水溶液に一晩浸してエンドトキシンを失活させ、十分にエンドトキシンフリー水で洗浄したものを用いた。また、操作はクリーンベンチ内で行った。
【0144】
ヘパリンナトリウム(和光純薬社製)10000Unitを注射用生理食塩水(大塚製薬社製)10mlに溶解した。この溶液を限外濾過器セントリプレップー100(分画分子量10万、アミコン社製)を用いて、500Gで1時間、4℃で遠心限外濾過した。限外濾過器は、予め0.2M水酸化ナトリウム水溶液に一晩浸してエンドトキシンを失活させ、十分にエンドトキシンフリー水で洗浄したものを用いた。
【0145】
上記の限外濾過処理したヘパリンナトリウムのエンドトキシン含量をエンドスペシーES6(生化学工業社製)を用いて測定した。その結果、このヘパリンナトリウムのエンドトキシン含量は0.01EU/ヘパリンUnitであった。
【0146】
次に、限外濾過処理したヘパリンナトリウム(1000U/ml)の0.1mlを10ml採血用注射器(テルモ社製)に入れて、健常人ボランティアから10ml採血した(最終血中ヘパリン濃度約10U/ml)。この採血直後の血液とこれを37℃の恒温槽に2時間及び4時間放置した後の血液を各々1600G、4℃で10分間遠心して上澄みの血漿を採取した。
【0147】
採取した血漿中のTNFα、IL−1β、IL−6の各サイトカイン量を各々のモノクローナル抗体を用いた酵素免疫測定キットを用いて測定した。すなわち、TNFαの産生量の測定は、実施例1〜4の(3)項に記載の方法により行った。測定は各々n=3とし、その平均値を表6に示す。
【0148】
比較例10
実施例37において、ヘパリンナトリウムを限外濾過処理せずに用いたこと以外は同様にして、採血を行い、血漿中のTNFα、IL−1β、IL−6の各サイトカイン量を各々のモノクローナル抗体を用いた酵素免疫試薬キットを用いて測定した。測定は各々n=3とし、その平均値を表6に示す。
【0149】
なお、本比較例10に用いた上記ヘパリンナトリウムのエンドトキシン含量を実施例37と同様にして測定したところ、1.2EU/ヘパリンUnitであった。
【0150】
【表6】
【0151】
表6から明らかなように、エンドトキシン含量を限外濾過により0.01EU/ヘパリンUnitにまで減少させたヘパリンナトリウムを用いた系(血中エンドトキシン濃度約0.1EU/ml)では、4時間までほとんどTNFα、IL−1β、IL−6は産生されなかったが、未処理のヘパリンナトリウムではエンドトキシン含量が1.2EU/ヘパリンUnitであった(血中エンドトキシン濃度約12EU/ml)ため、エンドトキシンにより血液中に経時的にTNFα、IL−1β、IL−6が産生された。
【0152】
実施例38〜40
ガラス製の器具、容器は、250℃で2時間以上乾熱処理をし、プラスチック製の器具、容器は、0.2M水酸化ナトリウム水溶液に一晩浸してエンドトキシンを失活させ、十分にエンドトキシンフリー水で洗浄したものを用いた。
また、操作はクリーンベンチ内で行った。
【0153】
実施例37で調製したエンドトキシン含量が0.01EU/ヘパリンUnitのヘパリンナトリウムを10Uずつ、エンドトキシンフリーのポリエチレンテレフタレート製の5ml採血管(直径12.6×75mm、積水化学工業社製)に0.01ml添加した。
【0154】
次に、E.coli UKT−B由来日本薬局方標準品エンドトキシン(16000EU/バイアル)を1.6mlの注射用生理食塩水に溶解し、段階希釈して、上記のヘパリンナトリウム入りの採血管に、採血管当たりの最終血中エンドトキシン濃度が各々0.1、0.2、0.4EU/mlとなるように添加した。
【0155】
次いで、管径に合うブチルゴム製の栓体を開口部を密栓しないように軽く載せた後、減圧にできる容器内に置き、1mlの血液を吸引できるように減圧したところで、採血管の開口部を密栓した。
【0156】
次に、健常ボランティアから、真空採血により上記採血管に1mlずつ採血した。これを予め37℃に保温しておいた恒温器の中のロッカープラットフォームに取り付け、4時間、転倒混和した。混和後、各々の採血管を1600G、4℃で10分間遠心して上澄みの血漿を採取した。
【0157】
採取した血漿中のTNFα、IL−1β、IL−6の各サイトカイン量を実施例37と同様にして測定した。測定は各々n=3とし、その平均値を表7に示す。
【0158】
比較例11,12
実施例38と同様にして調製したヘパリンナトリウム入り採血管に、実施例38で調製したエンドトキシンの生理食塩水溶液を、採血管当たりの最終血中エンドトキシン濃度が各々0.5、1.0EU/mlとなるようにしたこと以外は同様にして、採血を行い、血漿中のTNFα、IL−1β、IL−6の各サイトカイン量を実施例37と同様にして測定した。測定は各々n=3とし、その平均値を表7に示す。
【0159】
【表7】
【0160】
表7から明らかなように、血液中でのエンドトキシン含量が0.5EU/ml以上では、TNFα、IL−1β、IL−6が産生されることがわかる。
実施例41
<細胞機能測定キットの製造方法>
第1の細胞機能測定用容器は、実施例1において作製したエンドトキシン含量が0.05EU以下の採血管に、ヘパリンナトリウム(ノボ・ノルディスクA/S社製、商品名:ノボ・ヘパリン注1000)を200U/mlになるようにエンドトキシンフリー水(大塚製薬社製)で希釈したヘパリンナトリウム水溶液を、上記採血管に濃度が10Uになるように、0.05ml添加し、減圧乾燥し、次いで、栓体を採血管の開口部に、開口部を密栓しないように、軽く載せた後、減圧にできる容器内に採血管を置き、1mlの血液を吸引できるように、570mmHgに減圧したところで、採血管の開口部を密栓して製造した。
【0161】
第2の細胞機能測定用容器は、実施例1で作製したエンドトキシン含量が0.05EU以下の採血管に、ヘパリンナトリウム(ノボ・ノルディスクA/S社製、商品名:ノボ・ヘパリン注1000)を200U/mlになるようにエンドトキシンフリー水(大塚製薬社製)で希釈したヘパリンナトリウム水溶液を、上記採血管に10uになるように、0.05ml添加し、次いで、E.Coli.055:B5由来エンドトキシン(LBL社製)をエンドトキシンフリー水(大塚製薬社製)で希釈して、2,000EU/mlの溶液を0.05ml添加し、減圧乾燥し、次いで、栓体を採血管の開口部に、開口部を密栓しないように、軽く載せた後、減圧にできる容器内に採血管を置き、1mlの血液を吸引できるように、570mmHgに減圧したところで、採血管の開口部を密栓して製造した。
【0162】
第1,第2のTNFα測定試薬は、以下のようにして製造した。
抗ヒトTNFαモノクローナル抗体(Genzyme社製)を0.1M炭酸緩衝液(pH9.5)で100ng/ml(第1のTNFα測定試薬用、すなわち高感度測定用、固定化抗体液)及び1μg/ml(第2のTNFα測定試薬用、すなわち低感度測定用、固定化抗体液)になるように希釈して、各希釈液を100μlずつ96wellマイクロプレート(Nunc MaxiSorp microtiter plates)の各wellに添加し、2〜8℃で一昼夜インキュベートした。次いで、0.05重量%Tween20含有リン酸緩衝液(pH7.3)で各wellを3回吸引洗浄した。次いで、4重量%ウシ血清アルブミン(Sigma社製)含有リン酸緩衝液(pH7.3)を250μlずつ各wellに添加し、37℃で2時間インキュベートした。次いでマイクロプレートの液を除き、室温で乾燥させた。
【0163】
なお、検量線用のヒトTNFα(Genzyme社製)、ビオチン標識抗ヒトTNFαポリクローナル抗体(Genzyme社製)、過酸化水素、テトラメチルベンジジンを含む基質溶液(KPL社製)については市販の試薬を用いた。また、洗浄液としては、0.05重量%Tween20含有リン酸緩衝液(pH7.3)を用い、反応停止液は2M硫酸溶液を調製して用いた。
【0164】
<TNFα産生能の測定>
健常人ボランティアから、注射針の付いた注射器にヘパリンを採取し、その注射針を上記第1,第2の細胞機能測定用容器のブチルゴム製の栓体に突き刺し、反応容器内に、検体血液1mlを採取した。次いで、予め37℃に保温しておいた恒温器の中の転倒混和用ロッカープラットフォームに血液を採取した各々の容器を取り付け、4時間、転倒混和した。混和後、各々の容器を1,600G、10分間、4℃で遠心して、上澄みの血漿を採取した。第1の細胞機能測定用容器から採取した血漿中のTNFα量を上記の高感度測定試薬を用い、実施例1の(3)の方法で4well測定した。また、第2の細胞機能測定用容器から採取した血漿中のTNFα量を上記の低感度測定試薬を用い、実施例1の(3)の方法で4well測定した。
【0165】
比較例13
実施例41に記載したように、第1,第2の細胞機能測定用容器でのTNFα産生誘導を行い、血漿中のTNFα量の測定を測定感度が15〜1,000pg/mlの市販キット(PREDICTA Human TNF−α ELISA KIT)を用いて4well測定で行った。測定値が市販キットの測定限界を超えた場合には、1重量%ウシ血清アルブミン(Sigma社製)含有リン酸緩衝液(pH7.3)で約5倍に希釈して、再測定後、希釈倍数を乗じて測定値とした。
【0166】
実施例41及び比較例13の結果を下記の表8に示す。
【0167】
【表8】
【0168】
表8中のCVは変動係数を示す。
表8の結果から明らかなように、市販キットでは、希釈操作を行わないと、第2の細胞機能測定用容器で誘導されたTNFα量を測定できないことが明らかである。また、実施例では、変動係数が約7%程度と再現性に優れていたが、市販キットでは、希釈した後の再測定の結果、変動係数が約15〜20%で再現性が悪かった。
【0169】
【発明の効果】
本発明に係る細胞機能測定用容器において、使用前の細胞機能測定用容器中のエンドトキシン含量が、測定しようとする液量に等しい水を採取して抽出を行ったときの抽出液の濃度として0.5EU/ml以下とされているため、容器中のエンドトキシン含量に妨害を受けることなく、血液中の生理活性物質量を高精度に測定することができる。
【0170】
また、本発明では、血液と接触することより該血液中に生理活性物質の産生を誘導する材料が、血液と接触可能な状態に収納されているが、使用前の容器自体の生理活性物質の産生を誘導する材料の含量が、生理活性物質の測定値に影響を与えないように制限されているため、血液を導入し、生理活性物質の産生を誘導する材料と接触させて生理活性物質を産生した場合、産生された生理活性物質量を高精度に測定することが可能となる。
【0171】
また、本発明に係る細胞機能測定用容器においては、上記生理活性物質産生誘導材料がエンドトキシンの場合、好ましくは、エンドトキシンが血液と接触された際の全液中のエンドトキシン濃度は0.6〜100000EU/mlとなるように制限されているため、血液を導入し、生理活性物質の産生を誘導する材料と接触させて生理活性物質を産生した場合、産生された生理活性物質量を高精度に測定することができる。
【0172】
本発明に係る細胞機能測定用容器において、血液抗凝固剤をさらに収納した場合には、各細胞機能測定用容器における血液の凝固が確実に防止される。
また、上記血液抗凝固剤中の生理活性物質産生誘導材料の含量を、血液と混合されたときに生理活性物質を産生しない量とすることにより、血液抗凝固剤中の生理活性物質産生誘導材料による影響を受けることなく、産生された生理活性物質を高精度に測定することができる。
【0173】
また、本発明に係る細胞機能測定用容器において、容器内を減圧とした場合は、血液を細胞機能測定用容器に容易に導入することが可能となる。従って、被検者から血液を採血後、ピペッティングなどの手段で血液を種々の反応容器に移し変えたり、細胞分離、細胞培養等の操作を必要としないため、試験者は、肝炎、エイズなどの種々の感染症に感染する危険性がほとんどない。また、エンドトキシン含量が管理され、血液試料中に種々の雑菌や埃などの混入のおそれがないため、これらの汚染物や種々の操作による細胞の不要な活性化または活性低下が惹起される問題もない。また、全血を用いるため、細胞分離、細胞培養、顕微鏡測定等の特殊な技術も必要なく、測定時間も短縮でき、RI施設やフローサイトメーターなどの高価な装置も必要としない。そのため、従来よりも、操作が簡単で危険性がなく、精度良く細胞機能測定ができる。
【0174】
本願の第2の発明に係る細胞機能測定方法によれば、本発明に係る細胞機能測定用容器に血液を導入し、生理活性物質産生誘導材料と血液とを接触させて生理活性物質を誘導するため、すなわち、本発明に係る細胞機能測定用容器中において、エンドトキシン含量が上記のように制限されているため、血液中で産生された生理活性物質量を高精度に測定することが可能となる。
【0175】
この場合、生理活性物質の産生を誘導する温度を26〜45℃の範囲としたり、あるいは生理活性物質の産生を誘導する時間を1〜6時間としたりすることにより、血液中における生理活性物質の産生を確実に誘導することができる。
【0176】
本発明に係る細胞機能測定方法では、産生された生理活性物質の量を、定量可能な試薬により定量することにより、血液中に産生した生理活性物質量を確実にかつ容易に測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1〜4及び比較例2〜4の測定結果を示すグラフであり、横軸はLPS濃度、縦軸はTNFαの誘導量を示す図。
【図2】実施例1〜4及び比較例2〜4の測定結果を示すグラフであり、横軸はLPS濃度、縦軸はIL−1βの誘導量を示す図。
【図3】実施例1〜4及び比較例2〜4の測定結果を示すグラフであり、横軸はLPS濃度、縦軸はIL−6の誘導量を示す図。
【図4】実施例5〜10の測定結果を示すグラフであり、横軸はLPS濃度、縦軸はTNFαまたはIL−1βの誘導量を示す図。
【図5】実施例11〜16の測定結果を示すグラフであり、横軸は反応温度、縦軸はTNFαまたはIL−1βの誘導量を示す図。
【図6】実施例17〜21の測定結果を示すグラフであり、横軸は反応時間、縦軸はTNFαまたはIL−1βの誘導量を示す図。
Claims (8)
- 血液細胞が産生する生理活性物質を測定する際に用いられる細胞機能測定用容器であって、
開口部を有する容器と、
前記開口部に取付けられており、かつ試料採取時に取り外されることなく密栓されている栓体とを備え、
生理活性物質の産生を誘導する材料が前記容器内に収納されており、かつ上記生理活性物質の測定値に影響を与えないように、使用前の容器自体のエンドトキシン含量が測定しようとする液量に等しい量の水を採取し、抽出した際の抽出液中の濃度として0.5EU/ml以下とされていることを特徴とする細胞機能測定用容器。 - 前記生理活性物質の産生を誘導する材料がエンドトキシンであり、エンドトキシンの血液と接触された際の全液中の濃度が0.6〜100000EU/mlとなるようにエンドトキシンが収納されている、請求項1に記載の細胞機能測定用容器。
- 前記容器内が減圧にされている、請求項1または2に記載の細胞機能測定用容器。
- 血液抗凝固剤がさらに収納されている、請求項1〜3のいずかに記載の細胞機能測定用容器。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の細胞機能測定用容器に血液を導入し、生理活性物質の産生を誘導する材料と血液とを接触させ、生理活性物質を誘導することを特徴とする、細胞機能測定方法。
- 前記生理活性物質を誘導する際の温度が26〜45℃である、請求項5に記載の細胞機能測定方法。
- 前記生理活性物質を誘導する際の時間が、1〜6時間である、請求項5または6に記載の細胞機能測定方法。
- 請求項5〜7のいずれかに記載の方法により誘導された生理活性物質の量を、定量可能な試薬により定量する細胞機能測定方法。
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