JP3718275B2 - 印刷機 - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、印刷機に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
輪転印刷機、特に凹版印刷機において版胴と圧胴との間を通過する紙への印刷中には、両胴の芯間距離の設定によって大きな印圧が印刷力として作用し、圧胴表面に貼られたパッキンが薄くなったり、弾力性を失ったりして印刷障害が発生することがある。又、印圧の反力として胴軸に過大な曲げ応力が生じて折損事故や軸受の損傷が発生する虞がある。
【０００３】
そこで、本出願人は先に、実公平６−５１６７号公報で、印圧が加わる胴の端軸を軸支してフレームに嵌着された軸受に近接するフレーム面に、圧縮歪を検出するストレンゲージを貼着し、歪量を表示することにより印圧の大きさを知ることができるようにした輪転印刷機の印圧表示装置を提案した。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上述した従来の印圧表示装置にあっては、印刷中に発生する熱によりフレーム温度が上昇する（室温〜５０℃）ため、フレームに歪が発生し、印圧による圧縮歪を正確に計測することが困難であることが判明した。又、印圧をダイレクトに表示することができないことから、印圧の管理が困難であり、印圧が胴の熱膨張により強くなり過ぎて軸折損，軸受損傷を起こす虞があり、又逆に印圧が胴表面の摩耗により弱くなり過ぎて印刷不良を起こす虞があった。
【０００５】
そこで、本発明の目的は、印圧の正確な表示が可能であると共に印圧の管理が容易な印刷機を提供することにある。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明の構成は、切欠部と有効面とを有する一方のシリンダと、切欠部と有効面とを有する他方のシリンダと、該他方のシリンダを支持する偏心軸受と、一端側が偏心軸受に固定されたレバーと、該レバーの他端側に作用して前記偏心軸受を回動させる流体圧シリンダと、一方のシリンダと他方のシリンダとの接触圧を調整する調整手段と、他方のシリンダを一方のシリンダに対して圧接させている際の流体圧シリンダに作用する流体圧を検出する流体圧検出手段と、前記両シリンダの切欠部が互いに対向している際の流体圧検出手段からの検出信号と両シリンダの有効面が互いに対向している際の流体圧検出手段からの検出信号とにより算出された両シリンダ間の印圧を表示する表示手段とを設けたことを特徴とする。
上記構成によれば、印圧入り時の流体圧シリンダのヘッド圧力と印圧抜け時の流体圧シリンダのヘッド圧力との差圧により印圧が算出され、この印圧が表示されると共に適正な値に調整される。
【０００７】
又、前記印圧を次式から求めると好適である。
【数３】
Ｆ（印圧）＝２Ｌ・Ａ・（Ｐ2 −Ｐ1 ）／ｅ
但し、Ｌ ：レバーの長さ
Ａ ：流体圧シリンダのボア断面積
Ｐ2 ：両シリンダの有効面が互いに対向している際の流体圧シリンダのヘ ッド圧力
Ｐ1 ：両シリンダの切欠部が互いに対向している際の流体圧シリンダのヘ ッド圧力
ｅ ：偏心量
上記構成によれば、印圧入り時の流体圧シリンダのヘッド圧力と印圧抜け時の流体圧シリンダのヘッド圧力との差圧を用いて印圧が容易に算出される。
【０００８】
又、切欠部と有効面とを有する一方のシリンダと、切欠部と有効面とを有する他方のシリンダと、該他方のシリンダを支持する偏心軸受と、一端側が偏心軸受に固定されたレバーと、該レバーの他端側に作用して偏心軸受を回動させる駆動装置と、一方のシリンダと他方のシリンダとの接触圧を調整する調整手段と、駆動装置又はレバーの歪を検出する歪検出手段と、前記両シリンダの切欠部が互いに対向している際の歪検出手段からの検出信号と両シリンダの有効面が互いに対向している際の歪検出手段からの検出信号とにより算出された両シリンダ間の印圧を表示する表示手段とを設けたことを特徴とする。
上記構成によれば、印圧入り時の駆動装置又はレバーの圧縮歪と印圧抜け時の駆動装置又はレバーの圧縮歪との歪量差により印圧が算出され、この印圧が表示されると共に適正な値に調整される。
【０００９】
又、前記印圧を次式から求めると好適である。
【数４】
Ｆ（印圧）＝２Ｓ・Ｌ・Ｅ・ε／ｅ
但し、Ｌ ：レバーの長さ
Ｓ ：駆動装置又はレバーの断面積
Ｅ ：駆動装置又はレバー材質のヤング率
ε ：両シリンダの有効面が互いに対向している際の歪検出手段からの検 出信号による歪量と両シリンダの切欠部が互いに対向している際の 歪検出手段からの検出信号による歪量の差
ｅ ：偏心量
上記構成によれば、印圧入り時の駆動装置又はレバーの圧縮歪と印圧抜け時の駆動装置又はレバーの圧縮歪との歪量差を用いて印圧が容易に算出される。
【００１０】
前記流体圧シリンダ又は駆動装置の流体圧回路に流体圧が所定値を越えると開弁して圧力を逃がす安全弁を設けたことを特徴とする。
上記構成によれば、過負荷が未然に回避される。
【００１１】
【発明の実施の形態】
〔第１実施例〕
図１は圧胴の軸受部の要部正面図、図２は同じく要部側面図、図３は油圧回路図、図４は印圧の作用説明図である。
【００１２】
図１に示すように、凹版印刷機の圧胴１の軸端はダブルテーパーローラのトリプルレースベアリングからなる軸受２によりフレーム３に対し回転自在に支持されている。尚、図中１ａはベアラである。
【００１３】
前記軸受２の中央輪２ａは胴着脱及び印圧調整のため偏心リングで形成されている。即ち、該中央輪２ａにはレバー４がボルト５で結合されると共に、このレバー４には油圧シリンダ６のピストンロッド先端がピン７で連結されている。そして、油圧シリンダ６のシリンダ部基端に付設したネジ軸８がフレーム３に対し回転可能なピン９に進退自在に貫通すると共に、この貫通部において上下二つのナット９ａが螺合している。上側のナット９ａはピン９によりネジ軸８の軸方向に移動を規制されており、下側のナット９ａは固定用ナットとして機能する。
【００１４】
従って、油圧シリンダ６の伸縮作動で中央輪２ａを大きく偏心回転させることで胴着脱が行われると共に、上側のナット９ａの回転によりネジ作用でネジ軸８を進退させることで中央輪２ａを小さく偏心回転させられ、これによって印圧の微調整が可能となる。
【００１５】
前記油圧シリンダ６の油圧回路は図３に示すように構成される。
即ち、モータ駆動のポンプ１０から吐出された圧油は逆止弁１１を経由して電磁切換弁１２の切換により左，右両油圧シリンダ６のヘッド側に供給され、これによりピストンロッドが伸び出し、そのストロークエンドで圧力スイッチ１３ａの上限設定値までヘッド側の圧力が上昇するとポンプ１０が稼働を停止し、圧油がヘッド側に封じ込まれた状態となる。これで、圧胴１が凹版胴３０（図２参照）へ圧接されるのである。逆に、圧油が左，右両油圧シリンダ６のロッド側に供給されると、ピストンロッドが縮んで圧胴１が凹版胴３０から離脱するようになっている。図中１３ｂは圧力の下限値を規制する圧力スイッチである。
【００１６】
また、本実施例では、ヘッド側の回路にヘッド圧力検出用の圧力変換器１４が介装され、その検出信号が制御装置１５に入力されている。制御装置１５では、この検出信号に基づいて印圧を算出し、この印圧を表示装置１６でデジタル表示すると共に、所定の印圧を越えるとヘッド側の回路に介装した安全弁１７を開いてヘッド圧力を下げるようになっている。
【００１７】
次に、本実施例の作用を図３及び図４を参照して説明する。
図３の油圧シリンダ６の状態（▲１▼のピストン位置）は、圧胴１と凹版胴３０が脱状態（ベアラ１ａも脱）を示しており、この状態からポンプ１０を稼働してヘッド側に圧油を供給し、▲２▼のピストン位置で圧胴１と凹版胴３０とがべアラ１ａのみの着状態となって印圧抜け状態〔圧胴１と凹版胴３０の切欠部が対向する図４の（ａ）参照〕となると、この時のヘッド圧力Ｐ1 を圧力スイッチ１３ａが検出してポンプ１０の稼働が停止される。
【００１８】
この状態から、機械が回転して圧胴１と凹版胴３０とがべアラ１ａと共に着状態となって印圧入り状態〔圧胴１と凹版胴３０の有効面が対向する図４の（ｂ）参照〕となると、ピストン位置が▲２▼から▲３▼へ移動してヘッド圧力がＰ1 からＰ2 へと上昇する。以後、印刷中は上記印圧入り状態と印圧抜け状態を周期的に繰り返す〔図４の（ｃ）参照〕。
【００１９】
そして、この時のヘッド圧力Ｐ1 及びＰ2 が圧力変換器１４で検出され、これらの検出値を基に、制御装置１５では下記の式を用いて印圧が算出される。
即ち、上記印圧入り時には、図２に示すように、印圧Ｆにより中央輪２ａは時計方向の回転モーメント（Ｆ・ｅ）を受け、油圧シリンダ６のピストンロッドに下向きに荷重Ｐが生じ、Ｆ×ｅ＝Ｐ×Ｌ×２（左右対称構造であるため２を掛けてある）の関係式が成り立つ。その時のヘッド圧力がＰ2 と計測され、これが印圧抜け時にはＰ1 と計測されるのである。従って、その差圧Ｐ2 −Ｐ1 より印圧は算出可能となる。
【００２０】
【数５】
Ｆ（印圧）＝２Ｌ・Ａ・（Ｐ2 −Ｐ1 ）／ｅ
但し、Ｌ ：レバー（４）の長さ（レバー比）
Ａ ：流体圧シリンダ（６）のボア断面積
Ｐ2 ：両シリンダの有効面が互いに対向している際の流体圧シリンダのヘ ッド圧力
Ｐ1 ：両シリンダの切欠部が互いに対向している際の流体圧シリンダのヘ ッド圧力
ｅ ：中央輪（２ａ）の偏心量
ここで、例えば、Ａ＝２０ｃｍ2 ，ｅ＝２ｃｍ，Ｌ＝４０ｃｍで、Ｐ1 ＝５０ｋｇｆ／ｃｍ2 ，Ｐ2 ＝１７５ｋｇｆ／ｃｍ2 と計測されたとすると、
Ｆ＝２Ｌ・Ａ・（Ｐ2 −Ｐ1 ）／ｅ
＝〔２×４０×２０×（１７５−５０）〕÷２
＝１００×１０3 ｋｇｆ
＝１００ｔｏｎ
となる。
【００２１】
そして、この算出された印圧Ｆは表示装置１６でデジタル表示される。
従って、圧胴１等の熱膨張により印圧Ｆが増大した場合は、デジタル表示の値を元の値（印圧）となるように印圧調整用のナット９ａを回転させれば、元の印圧Ｆに戻すことができる。また、過度に印圧Ｆが上昇しようとする時は、制御装置１５からの信号で安全弁１７が開いて強制的にヘッド側の圧油が外に放出されるので、凹版胴３０等を損傷させることがない。
【００２２】
〔第２実施例〕
図５は油圧回路図である。
図示のように、本実施例は、印刷中に発生する熱による悪影響を殆ど受けない油圧シリンダ６のピストンロッド（又はレバー４）にストレンゲージ１９を貼り付けて、動ひずみ測定器２０で計測した，印圧入り時と印圧抜け時のピストンロッドの圧縮歪に基づいて制御装置１５が下記の式を用いて印圧を算出するようにした例であり、第１実施例と同様の作用・効果が得られる。
【００２３】
即ち、ピストンロッドの圧縮力Ｐを図３に当てはめると、Ｆ×ｅ＝Ｐ×Ｌ×２（左右対称構造であるため２を掛けてある）の関係式が成り立ち、ピストンロッドの圧縮力ＰはＰ＝Ｓ×δ（断面平均応力）＝Ｓ×Ｅεで求まるので、印圧が算出可能となる。
【００２４】
【数６】
Ｆ（印圧）＝２Ｓ・Ｌ・Ｅ・ε／ｅ
但し、Ｌ ：レバー（４）の長さ（レバー比）
Ｓ ：駆動装置又はレバー（油圧シリンダ６のピストンロッドの断面積
Ｅ ：駆動装置又はレバー（油圧シリンダ６のピストンロッド）材質のヤ ング率
ε ：両シリンダの有効面が互いに対向している際の歪検出手段からの検 出信号による歪量と両シリンダの切欠部が互いに対向している際の 歪検出手段からの検出信号による歪量の差
ｅ ：偏心量
ここで、例えば、Ｅ＝２．１×１０4 ｋｇｆ／ｍｍ2 ，Ｌ＝４００ｍｍ，ｅ＝２０ｍｍ，Ｓ＝９００ｍｍ2 ，ε＝１．０×１０-4とすると、
Ｆ＝２Ｓ・Ｌ・Ｅ・ε／ｅ
＝（２×９００×４００×２．１×１０4 ×１．０×１０-4）÷２０
＝７５６００ｋｇｆ
＝７５．６ｔｏｎ
となる。
【００２５】
尚、上記各実施例では、印圧調整時に印圧調整用のナット等を手動にて操作し、印刷開始時の印刷に戻す例を示したが、このナット等をギアとしモータで連結構成させて印刷開始時の印圧を制御装置に入力してこの値を目標値とし、印刷中に印圧が変化した場合にはこの目標値と同じ印圧になるように制御装置からの指令でモータを駆動させるようにしても良い。このようにすれば、印圧調整の自動化が図れ、計算式上のデータで印刷を行わせることができる。
また、印圧をデジタル表示するようにしたが、指針式のゲージ式で表示させるようにしてもよい。
また、本発明は、凹版印刷機に限定されず、ゴム胴−版胴間の印圧，ゴム胴−圧胴及びゴム胴−ゴム胴間の印圧調整にも適用できる。
【００２６】
【発明の効果】
請求項１の発明によれば、切欠部と有効面とを有する一方のシリンダと、切欠部と有効面とを有する他方のシリンダと、該他方のシリンダを支持する偏心軸受と、一端側が偏心軸受に固定されたレバーと、該レバーの他端側に作用して前記偏心軸受を回動させる流体圧シリンダと、一方のシリンダと他方のシリンダとの接触圧を調整する調整手段と、他方のシリンダを一方のシリンダに対して圧接させている際の流体圧シリンダに作用する流体圧を検出する流体圧検出手段と、前記両シリンダの切欠部が互いに対向している際の流体圧検出手段からの検出信号と両シリンダの有効面が互いに対向している際の流体圧検出手段からの検出信号とにより算出された両シリンダ間の印圧を表示する表示手段とを設けたので、印圧入り時の流体圧シリンダのヘッド圧力と印圧抜け時の流体圧シリンダのヘッド圧力との差圧により印圧が正確に算出され、この印圧が表示されると共に適正な値に調整される。この結果、印圧の管理が容易となり、印刷品質の向上が図れる。
【００２７】
請求項２の発明によれば、前記印圧が次式から求められるので、印圧入り時の流体圧シリンダのヘッド圧力と印圧抜け時の流体圧シリンダのヘッド圧力との差圧を用いて印圧が容易にかつ正確に算出される。
【数７】
Ｆ（印圧）＝２Ｌ・Ａ・（Ｐ2 −Ｐ1 ）／ｅ
但し、Ｌ ：レバーの長さ
Ａ ：流体圧シリンダのボア断面積
Ｐ2 ：両シリンダの有効面が互いに対向している際の流体圧シリンダのヘ ッド圧力
Ｐ1 ：両シリンダの切欠部が互いに対向している際の流体圧シリンダのヘ ッド圧力
ｅ ：偏心量
【００２８】
請求項３の発明によれば、切欠部と有効面とを有する一方のシリンダと、切欠部と有効面とを有する他方のシリンダと、該他方のシリンダを支持する偏心軸受と、一端側が偏心軸受に固定されたレバーと、該レバーの他端側に作用して偏心軸受を回動させる駆動装置と、一方のシリンダと他方のシリンダとの接触圧を調整する調整手段と、駆動装置又はレバーの歪を検出する歪検出手段と、前記両シリンダの切欠部が互いに対向している際の歪検出手段からの検出信号と両シリンダの有効面が互いに対向している際の歪検出手段からの検出信号とにより算出された両シリンダ間の印圧を表示する表示手段とを設けたので、印圧入り時の駆動装置又はレバーの圧縮歪と印圧抜け時の駆動装置又はレバーの圧縮歪との歪量差により印圧が正確に算出され、この印圧が表示されると共に適正な値に調整される。
【００２９】
請求項４の発明によれば、前記印圧が次式から求められるので、印圧入り時の駆動装置又はレバーの圧縮歪と印圧抜け時の駆動装置又はレバーの圧縮歪との歪量差を用いて印圧が容易にかつ正確に算出される。
【数８】
Ｆ（印圧）＝２Ｓ・Ｌ・Ｅ・ε／ｅ
但し、Ｌ ：レバーの長さ
Ｓ ：駆動装置又はレバーの断面積
Ｅ ：駆動装置又はレバー材質のヤング率
ε ：両シリンダの有効面が互いに対向している際の歪検出手段からの検 出信号による歪量と両シリンダの切欠部が互いに対向している際の 歪検出手段からの検出信号による歪量の差
ｅ ：偏心量
【００３０】
請求項５の発明によれば、前記流体圧シリンダ又は駆動装置の流体圧回路に流体圧が所定値を越えると開弁して圧力を逃がす安全弁を設けたので、過負荷が未然に回避され、軸破損や軸受損傷を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明に係る印刷機の第１実施例の圧胴の軸受部の要部正面図である。
【図２】同じく要部側面図である。
【図３】同じく油圧回路図である。
【図４】同じく印圧の作用説明図である。
【図５】第２実施例の油圧回路図である。
【符号の説明】
１ 圧胴
２ 軸受
２ａ 中央輪
３ フレーム
４ レバー
６ 油圧シリンダ
９ ピン
１４ 圧力変換器
１５ 制御装置
１６ 表示装置
１７ 安全弁
【発明の属する技術分野】
本発明は、印刷機に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
輪転印刷機、特に凹版印刷機において版胴と圧胴との間を通過する紙への印刷中には、両胴の芯間距離の設定によって大きな印圧が印刷力として作用し、圧胴表面に貼られたパッキンが薄くなったり、弾力性を失ったりして印刷障害が発生することがある。又、印圧の反力として胴軸に過大な曲げ応力が生じて折損事故や軸受の損傷が発生する虞がある。
【０００３】
そこで、本出願人は先に、実公平６−５１６７号公報で、印圧が加わる胴の端軸を軸支してフレームに嵌着された軸受に近接するフレーム面に、圧縮歪を検出するストレンゲージを貼着し、歪量を表示することにより印圧の大きさを知ることができるようにした輪転印刷機の印圧表示装置を提案した。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上述した従来の印圧表示装置にあっては、印刷中に発生する熱によりフレーム温度が上昇する（室温〜５０℃）ため、フレームに歪が発生し、印圧による圧縮歪を正確に計測することが困難であることが判明した。又、印圧をダイレクトに表示することができないことから、印圧の管理が困難であり、印圧が胴の熱膨張により強くなり過ぎて軸折損，軸受損傷を起こす虞があり、又逆に印圧が胴表面の摩耗により弱くなり過ぎて印刷不良を起こす虞があった。
【０００５】
そこで、本発明の目的は、印圧の正確な表示が可能であると共に印圧の管理が容易な印刷機を提供することにある。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明の構成は、切欠部と有効面とを有する一方のシリンダと、切欠部と有効面とを有する他方のシリンダと、該他方のシリンダを支持する偏心軸受と、一端側が偏心軸受に固定されたレバーと、該レバーの他端側に作用して前記偏心軸受を回動させる流体圧シリンダと、一方のシリンダと他方のシリンダとの接触圧を調整する調整手段と、他方のシリンダを一方のシリンダに対して圧接させている際の流体圧シリンダに作用する流体圧を検出する流体圧検出手段と、前記両シリンダの切欠部が互いに対向している際の流体圧検出手段からの検出信号と両シリンダの有効面が互いに対向している際の流体圧検出手段からの検出信号とにより算出された両シリンダ間の印圧を表示する表示手段とを設けたことを特徴とする。
上記構成によれば、印圧入り時の流体圧シリンダのヘッド圧力と印圧抜け時の流体圧シリンダのヘッド圧力との差圧により印圧が算出され、この印圧が表示されると共に適正な値に調整される。
【０００７】
又、前記印圧を次式から求めると好適である。
【数３】
Ｆ（印圧）＝２Ｌ・Ａ・（Ｐ2 −Ｐ1 ）／ｅ
但し、Ｌ ：レバーの長さ
Ａ ：流体圧シリンダのボア断面積
Ｐ2 ：両シリンダの有効面が互いに対向している際の流体圧シリンダのヘ ッド圧力
Ｐ1 ：両シリンダの切欠部が互いに対向している際の流体圧シリンダのヘ ッド圧力
ｅ ：偏心量
上記構成によれば、印圧入り時の流体圧シリンダのヘッド圧力と印圧抜け時の流体圧シリンダのヘッド圧力との差圧を用いて印圧が容易に算出される。
【０００８】
又、切欠部と有効面とを有する一方のシリンダと、切欠部と有効面とを有する他方のシリンダと、該他方のシリンダを支持する偏心軸受と、一端側が偏心軸受に固定されたレバーと、該レバーの他端側に作用して偏心軸受を回動させる駆動装置と、一方のシリンダと他方のシリンダとの接触圧を調整する調整手段と、駆動装置又はレバーの歪を検出する歪検出手段と、前記両シリンダの切欠部が互いに対向している際の歪検出手段からの検出信号と両シリンダの有効面が互いに対向している際の歪検出手段からの検出信号とにより算出された両シリンダ間の印圧を表示する表示手段とを設けたことを特徴とする。
上記構成によれば、印圧入り時の駆動装置又はレバーの圧縮歪と印圧抜け時の駆動装置又はレバーの圧縮歪との歪量差により印圧が算出され、この印圧が表示されると共に適正な値に調整される。
【０００９】
又、前記印圧を次式から求めると好適である。
【数４】
Ｆ（印圧）＝２Ｓ・Ｌ・Ｅ・ε／ｅ
但し、Ｌ ：レバーの長さ
Ｓ ：駆動装置又はレバーの断面積
Ｅ ：駆動装置又はレバー材質のヤング率
ε ：両シリンダの有効面が互いに対向している際の歪検出手段からの検 出信号による歪量と両シリンダの切欠部が互いに対向している際の 歪検出手段からの検出信号による歪量の差
ｅ ：偏心量
上記構成によれば、印圧入り時の駆動装置又はレバーの圧縮歪と印圧抜け時の駆動装置又はレバーの圧縮歪との歪量差を用いて印圧が容易に算出される。
【００１０】
前記流体圧シリンダ又は駆動装置の流体圧回路に流体圧が所定値を越えると開弁して圧力を逃がす安全弁を設けたことを特徴とする。
上記構成によれば、過負荷が未然に回避される。
【００１１】
【発明の実施の形態】
〔第１実施例〕
図１は圧胴の軸受部の要部正面図、図２は同じく要部側面図、図３は油圧回路図、図４は印圧の作用説明図である。
【００１２】
図１に示すように、凹版印刷機の圧胴１の軸端はダブルテーパーローラのトリプルレースベアリングからなる軸受２によりフレーム３に対し回転自在に支持されている。尚、図中１ａはベアラである。
【００１３】
前記軸受２の中央輪２ａは胴着脱及び印圧調整のため偏心リングで形成されている。即ち、該中央輪２ａにはレバー４がボルト５で結合されると共に、このレバー４には油圧シリンダ６のピストンロッド先端がピン７で連結されている。そして、油圧シリンダ６のシリンダ部基端に付設したネジ軸８がフレーム３に対し回転可能なピン９に進退自在に貫通すると共に、この貫通部において上下二つのナット９ａが螺合している。上側のナット９ａはピン９によりネジ軸８の軸方向に移動を規制されており、下側のナット９ａは固定用ナットとして機能する。
【００１４】
従って、油圧シリンダ６の伸縮作動で中央輪２ａを大きく偏心回転させることで胴着脱が行われると共に、上側のナット９ａの回転によりネジ作用でネジ軸８を進退させることで中央輪２ａを小さく偏心回転させられ、これによって印圧の微調整が可能となる。
【００１５】
前記油圧シリンダ６の油圧回路は図３に示すように構成される。
即ち、モータ駆動のポンプ１０から吐出された圧油は逆止弁１１を経由して電磁切換弁１２の切換により左，右両油圧シリンダ６のヘッド側に供給され、これによりピストンロッドが伸び出し、そのストロークエンドで圧力スイッチ１３ａの上限設定値までヘッド側の圧力が上昇するとポンプ１０が稼働を停止し、圧油がヘッド側に封じ込まれた状態となる。これで、圧胴１が凹版胴３０（図２参照）へ圧接されるのである。逆に、圧油が左，右両油圧シリンダ６のロッド側に供給されると、ピストンロッドが縮んで圧胴１が凹版胴３０から離脱するようになっている。図中１３ｂは圧力の下限値を規制する圧力スイッチである。
【００１６】
また、本実施例では、ヘッド側の回路にヘッド圧力検出用の圧力変換器１４が介装され、その検出信号が制御装置１５に入力されている。制御装置１５では、この検出信号に基づいて印圧を算出し、この印圧を表示装置１６でデジタル表示すると共に、所定の印圧を越えるとヘッド側の回路に介装した安全弁１７を開いてヘッド圧力を下げるようになっている。
【００１７】
次に、本実施例の作用を図３及び図４を参照して説明する。
図３の油圧シリンダ６の状態（▲１▼のピストン位置）は、圧胴１と凹版胴３０が脱状態（ベアラ１ａも脱）を示しており、この状態からポンプ１０を稼働してヘッド側に圧油を供給し、▲２▼のピストン位置で圧胴１と凹版胴３０とがべアラ１ａのみの着状態となって印圧抜け状態〔圧胴１と凹版胴３０の切欠部が対向する図４の（ａ）参照〕となると、この時のヘッド圧力Ｐ1 を圧力スイッチ１３ａが検出してポンプ１０の稼働が停止される。
【００１８】
この状態から、機械が回転して圧胴１と凹版胴３０とがべアラ１ａと共に着状態となって印圧入り状態〔圧胴１と凹版胴３０の有効面が対向する図４の（ｂ）参照〕となると、ピストン位置が▲２▼から▲３▼へ移動してヘッド圧力がＰ1 からＰ2 へと上昇する。以後、印刷中は上記印圧入り状態と印圧抜け状態を周期的に繰り返す〔図４の（ｃ）参照〕。
【００１９】
そして、この時のヘッド圧力Ｐ1 及びＰ2 が圧力変換器１４で検出され、これらの検出値を基に、制御装置１５では下記の式を用いて印圧が算出される。
即ち、上記印圧入り時には、図２に示すように、印圧Ｆにより中央輪２ａは時計方向の回転モーメント（Ｆ・ｅ）を受け、油圧シリンダ６のピストンロッドに下向きに荷重Ｐが生じ、Ｆ×ｅ＝Ｐ×Ｌ×２（左右対称構造であるため２を掛けてある）の関係式が成り立つ。その時のヘッド圧力がＰ2 と計測され、これが印圧抜け時にはＰ1 と計測されるのである。従って、その差圧Ｐ2 −Ｐ1 より印圧は算出可能となる。
【００２０】
【数５】
Ｆ（印圧）＝２Ｌ・Ａ・（Ｐ2 −Ｐ1 ）／ｅ
但し、Ｌ ：レバー（４）の長さ（レバー比）
Ａ ：流体圧シリンダ（６）のボア断面積
Ｐ2 ：両シリンダの有効面が互いに対向している際の流体圧シリンダのヘ ッド圧力
Ｐ1 ：両シリンダの切欠部が互いに対向している際の流体圧シリンダのヘ ッド圧力
ｅ ：中央輪（２ａ）の偏心量
ここで、例えば、Ａ＝２０ｃｍ2 ，ｅ＝２ｃｍ，Ｌ＝４０ｃｍで、Ｐ1 ＝５０ｋｇｆ／ｃｍ2 ，Ｐ2 ＝１７５ｋｇｆ／ｃｍ2 と計測されたとすると、
Ｆ＝２Ｌ・Ａ・（Ｐ2 −Ｐ1 ）／ｅ
＝〔２×４０×２０×（１７５−５０）〕÷２
＝１００×１０3 ｋｇｆ
＝１００ｔｏｎ
となる。
【００２１】
そして、この算出された印圧Ｆは表示装置１６でデジタル表示される。
従って、圧胴１等の熱膨張により印圧Ｆが増大した場合は、デジタル表示の値を元の値（印圧）となるように印圧調整用のナット９ａを回転させれば、元の印圧Ｆに戻すことができる。また、過度に印圧Ｆが上昇しようとする時は、制御装置１５からの信号で安全弁１７が開いて強制的にヘッド側の圧油が外に放出されるので、凹版胴３０等を損傷させることがない。
【００２２】
〔第２実施例〕
図５は油圧回路図である。
図示のように、本実施例は、印刷中に発生する熱による悪影響を殆ど受けない油圧シリンダ６のピストンロッド（又はレバー４）にストレンゲージ１９を貼り付けて、動ひずみ測定器２０で計測した，印圧入り時と印圧抜け時のピストンロッドの圧縮歪に基づいて制御装置１５が下記の式を用いて印圧を算出するようにした例であり、第１実施例と同様の作用・効果が得られる。
【００２３】
即ち、ピストンロッドの圧縮力Ｐを図３に当てはめると、Ｆ×ｅ＝Ｐ×Ｌ×２（左右対称構造であるため２を掛けてある）の関係式が成り立ち、ピストンロッドの圧縮力ＰはＰ＝Ｓ×δ（断面平均応力）＝Ｓ×Ｅεで求まるので、印圧が算出可能となる。
【００２４】
【数６】
Ｆ（印圧）＝２Ｓ・Ｌ・Ｅ・ε／ｅ
但し、Ｌ ：レバー（４）の長さ（レバー比）
Ｓ ：駆動装置又はレバー（油圧シリンダ６のピストンロッドの断面積
Ｅ ：駆動装置又はレバー（油圧シリンダ６のピストンロッド）材質のヤ ング率
ε ：両シリンダの有効面が互いに対向している際の歪検出手段からの検 出信号による歪量と両シリンダの切欠部が互いに対向している際の 歪検出手段からの検出信号による歪量の差
ｅ ：偏心量
ここで、例えば、Ｅ＝２．１×１０4 ｋｇｆ／ｍｍ2 ，Ｌ＝４００ｍｍ，ｅ＝２０ｍｍ，Ｓ＝９００ｍｍ2 ，ε＝１．０×１０-4とすると、
Ｆ＝２Ｓ・Ｌ・Ｅ・ε／ｅ
＝（２×９００×４００×２．１×１０4 ×１．０×１０-4）÷２０
＝７５６００ｋｇｆ
＝７５．６ｔｏｎ
となる。
【００２５】
尚、上記各実施例では、印圧調整時に印圧調整用のナット等を手動にて操作し、印刷開始時の印刷に戻す例を示したが、このナット等をギアとしモータで連結構成させて印刷開始時の印圧を制御装置に入力してこの値を目標値とし、印刷中に印圧が変化した場合にはこの目標値と同じ印圧になるように制御装置からの指令でモータを駆動させるようにしても良い。このようにすれば、印圧調整の自動化が図れ、計算式上のデータで印刷を行わせることができる。
また、印圧をデジタル表示するようにしたが、指針式のゲージ式で表示させるようにしてもよい。
また、本発明は、凹版印刷機に限定されず、ゴム胴−版胴間の印圧，ゴム胴−圧胴及びゴム胴−ゴム胴間の印圧調整にも適用できる。
【００２６】
【発明の効果】
請求項１の発明によれば、切欠部と有効面とを有する一方のシリンダと、切欠部と有効面とを有する他方のシリンダと、該他方のシリンダを支持する偏心軸受と、一端側が偏心軸受に固定されたレバーと、該レバーの他端側に作用して前記偏心軸受を回動させる流体圧シリンダと、一方のシリンダと他方のシリンダとの接触圧を調整する調整手段と、他方のシリンダを一方のシリンダに対して圧接させている際の流体圧シリンダに作用する流体圧を検出する流体圧検出手段と、前記両シリンダの切欠部が互いに対向している際の流体圧検出手段からの検出信号と両シリンダの有効面が互いに対向している際の流体圧検出手段からの検出信号とにより算出された両シリンダ間の印圧を表示する表示手段とを設けたので、印圧入り時の流体圧シリンダのヘッド圧力と印圧抜け時の流体圧シリンダのヘッド圧力との差圧により印圧が正確に算出され、この印圧が表示されると共に適正な値に調整される。この結果、印圧の管理が容易となり、印刷品質の向上が図れる。
【００２７】
請求項２の発明によれば、前記印圧が次式から求められるので、印圧入り時の流体圧シリンダのヘッド圧力と印圧抜け時の流体圧シリンダのヘッド圧力との差圧を用いて印圧が容易にかつ正確に算出される。
【数７】
Ｆ（印圧）＝２Ｌ・Ａ・（Ｐ2 −Ｐ1 ）／ｅ
但し、Ｌ ：レバーの長さ
Ａ ：流体圧シリンダのボア断面積
Ｐ2 ：両シリンダの有効面が互いに対向している際の流体圧シリンダのヘ ッド圧力
Ｐ1 ：両シリンダの切欠部が互いに対向している際の流体圧シリンダのヘ ッド圧力
ｅ ：偏心量
【００２８】
請求項３の発明によれば、切欠部と有効面とを有する一方のシリンダと、切欠部と有効面とを有する他方のシリンダと、該他方のシリンダを支持する偏心軸受と、一端側が偏心軸受に固定されたレバーと、該レバーの他端側に作用して偏心軸受を回動させる駆動装置と、一方のシリンダと他方のシリンダとの接触圧を調整する調整手段と、駆動装置又はレバーの歪を検出する歪検出手段と、前記両シリンダの切欠部が互いに対向している際の歪検出手段からの検出信号と両シリンダの有効面が互いに対向している際の歪検出手段からの検出信号とにより算出された両シリンダ間の印圧を表示する表示手段とを設けたので、印圧入り時の駆動装置又はレバーの圧縮歪と印圧抜け時の駆動装置又はレバーの圧縮歪との歪量差により印圧が正確に算出され、この印圧が表示されると共に適正な値に調整される。
【００２９】
請求項４の発明によれば、前記印圧が次式から求められるので、印圧入り時の駆動装置又はレバーの圧縮歪と印圧抜け時の駆動装置又はレバーの圧縮歪との歪量差を用いて印圧が容易にかつ正確に算出される。
【数８】
Ｆ（印圧）＝２Ｓ・Ｌ・Ｅ・ε／ｅ
但し、Ｌ ：レバーの長さ
Ｓ ：駆動装置又はレバーの断面積
Ｅ ：駆動装置又はレバー材質のヤング率
ε ：両シリンダの有効面が互いに対向している際の歪検出手段からの検 出信号による歪量と両シリンダの切欠部が互いに対向している際の 歪検出手段からの検出信号による歪量の差
ｅ ：偏心量
【００３０】
請求項５の発明によれば、前記流体圧シリンダ又は駆動装置の流体圧回路に流体圧が所定値を越えると開弁して圧力を逃がす安全弁を設けたので、過負荷が未然に回避され、軸破損や軸受損傷を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明に係る印刷機の第１実施例の圧胴の軸受部の要部正面図である。
【図２】同じく要部側面図である。
【図３】同じく油圧回路図である。
【図４】同じく印圧の作用説明図である。
【図５】第２実施例の油圧回路図である。
【符号の説明】
１ 圧胴
２ 軸受
２ａ 中央輪
３ フレーム
４ レバー
６ 油圧シリンダ
９ ピン
１４ 圧力変換器
１５ 制御装置
１６ 表示装置
１７ 安全弁
Claims (5)
- 切欠部と有効面とを有する一方のシリンダと、切欠部と有効面とを有する他方のシリンダと、該他方のシリンダを支持する偏心軸受と、一端側が偏心軸受に固定されたレバーと、該レバーの他端側に作用して前記偏心軸受を回動させる流体圧シリンダと、一方のシリンダと他方のシリンダとの接触圧を調整する調整手段と、他方のシリンダを一方のシリンダに対して圧接させている際の流体圧シリンダに作用する流体圧を検出する流体圧検出手段と、前記両シリンダの切欠部が互いに対向している際の流体圧検出手段からの検出信号と両シリンダの有効面が互いに対向している際の流体圧検出手段からの検出信号とにより算出された両シリンダ間の印圧を表示する表示手段とを設けたことを特徴とする印刷機。
- 前記印圧を次式から求める請求項１記載の印刷機。
Ａ ：流体圧シリンダのボア断面積
Ｐ2 ：両シリンダの有効面が互いに対向している際の流体圧シリンダのヘ ッド圧力
Ｐ1 ：両シリンダの切欠部が互いに対向している際の流体圧シリンダのヘ ッド圧力
ｅ ：偏心量 - 切欠部と有効面とを有する一方のシリンダと、切欠部と有効面とを有する他方のシリンダと、該他方のシリンダを支持する偏心軸受と、一端側が偏心軸受に固定されたレバーと、該レバーの他端側に作用して偏心軸受を回動させる駆動装置と、一方のシリンダと他方のシリンダとの接触圧を調整する調整手段と、前記駆動装置又はレバーの歪を検出する歪検出手段と、前記両シリンダの切欠部が互いに対向している際の歪検出手段からの検出信号と両シリンダの有効面が互いに対向している際の歪検出手段からの検出信号とにより算出された両シリンダ間の印圧を表示する表示手段とを設けたことを特徴とする印刷機。
- 前記印圧を次式から求める請求項３記載の印刷機。
Ｓ ：駆動装置又はレバーの断面積
Ｅ ：駆動装置又はレバー材質のヤング率
ε ：両シリンダの有効面が互いに対向している際の歪検出手段からの検 出信号による歪量と両シリンダの切欠部が互いに対向している際の 歪検出手段からの検出信号による歪量の差
ｅ ：偏心量 - 前記流体圧シリンダ又は駆動装置の流体圧回路に流体圧が所定値を越えると開弁して圧力を逃がす安全弁を設けた請求項１又は３記載の印刷機。
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