JP3717923B2 - ロボットアームカップリング装置用マスタプレート及びツールプレート、ロボットアームカップリング装置 - Google Patents

ロボットアームカップリング装置用マスタプレート及びツールプレート、ロボットアームカップリング装置 Download PDF

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Description

【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットアームカップリング装置用のマスタプレート及びツールプレート並びにそれらを組み合わせたロボットアームカップリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ロボットのアームに対してツール等の脱着を行うことができるようにしたカップリング装置として、ロボットアームに取り付けられたマスタプレート(インナアッセンブリ)と、ツール等が取り付けられるツールプレート(アウタアッセンブリ)と、これら両プレートを連結してロックするロック手段とを有するカップリング装置は知られている。
【0003】
このような装置として、従来、インナアッセンブリとアウタアッセンブリとの連結及び連結解除を素早く行うことができるようにしたものとして、例えば特許文献1に記載されるように、ロック手段が、インナアッセンブリによってロック位置とロック解除位置との間をスライド可能に支持されるピストン部材と、このピストン部材の周囲に配設され、インナアッセンブリに支持される複数のボール部材と、上記アウタアッセンブリに配設され、ボール部材とテーパ面で接触可能で、ピストン部材がロック位置に移動したとき、ボール部材と協働して両プレートを連結保持するボール受けとを有するものが知られている。この装置によれば、ピストン部材がロック位置に移動したとき、ボール部材がテーパ面を介してアウタアッセンブリを上方に押し上げ、インナアッセンブリとアウタアッセンブリとが連結されるようになっている。
【0004】
しかし、上記従来のカップリング装置においては、ピストン部材がロック位置にあるときに、ボール部材に接触するのは、ピストン部材の摺動方向に平行に延びる円筒状面であるため、インナアッセンブリやアウタアッセンブリ等について加工のばらつきがあると、ボール部材をロック位置に完全に移動させることができず、インナアッセンブリとアウタアッセンブリとの連結の際、連結面が一致しないという虞れがあり、連結位置の再現性に劣る。
【0005】
このような問題を解決するために、従来、特許文献2に示されるように、マスタプレートとツールプレートとを一体的に連結してロック固定するロック手段として、マスタプレートにロック位置及びロック解除位置の間をスライド可能に支持された円板形状のカム部材と、このカム部材の周囲に配設され、上記マスタプレートにカム部材のスライド方向と略直交する方向に移動可能に支持される複数のボール部材と、上記ツールプレートに配設され、上記カム部材がロック位置に移動したときに両プレートを連結保持するようにボール部材と係合するリング形状のボール受けとを設け、カム部材の外周にマスタ側テーパ面(カム面)を、またボール受けの内周にマスタ側テーパ面と逆方向に傾斜するツール側テーパ面(カム面)をそれぞれ形成し、カム部材がロック位置に位置付けられた状態でマスタ側テーパ面がボール部材をツール側テーパ面に当接させるように押圧することにより、マスタプレートとツールプレートとの連結時に両プレートの連結面に隙間が生じないようにして、連結位置の再現性を向上させたものが提案されている。
【特許文献1】
米国特許第4,696,524号明細書及び図面
【特許文献2】
特開平4―63688号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、この種のロボットアームカップリング装置においては、近年、以下に列記する理由から、そのマスタプレートとツールプレートとの結合状態での結合方向に沿った厚さ(大きさ)を薄くする薄型化の要求が生じている。
【0007】
(1) すなわち、まず、例えば自動車生産ラインのプレス工程において、プレス機から他のプレス機にワークをロボットでハンドリングする場合、プレス機に対するワークの取出し及び投入を行うために、そのプレス機の開いた金型の間にロボットによりカップリング装置がワーク及びその保持装置と共に挿入される。このとき、金型の開くストロークに制限があるので、ロボットアームカップリング装置の厚さは極力薄くしておく必要がある。
【0008】
(2) また、ロボットの手首フランジとワークを把持するハンドとの間にカップリング装置が装着される構造では、上記フランジからハンドの重心までの距離が長いと、その分、ロボットにかかる負荷(モーメント)が大きくなる。この負荷を軽減させるには、カップリング装置の厚さを薄くして上記フランジからハンド重心までの距離を可及的に短くすることが要求される。
【0009】
(3) さらに、同様に、ロボットの手首フランジとワークを把持するハンドとの間にカップリング装置が装着される構造では、そのカップリング装置の厚さの影響でロボットの作業が困難又は不可能になるエリアが生じることから、このエリアを小さくし又はなくすには、カップリング装置の厚さを薄くせねばならない。
【0010】
このような要求の下で上記提案例の構造を考察したとき、この提案例のものでは、カム部材の円弧状外周部のマスタ側テーパ面とボール部材との接触、及び該ボール部材とボール受けの円弧状内周部のツール側テーパ面との接触により両プレートを締結して外部からの負荷を支えているので、各接触点での面圧の増大を抑えるには大きな直径のボール部材を使用する必要がある。つまり、この大径のボール部材の分だけ、カップリング装置の厚さが厚くなるばかりでなく、ボール部材を半径方向外側に押し出すためにカム部材のカップリング装置厚さ方向の動作ストロークをも大きくせねばならず、その動作ストロークの増加分によってもカップリング装置の厚さが厚くなり、上記薄型化を十分に満たし得ない難がある。
【0011】
尚、上記接触点での面圧を低減させるために、ボール部材をローラ部材に置き換えてもよく、その場合、カム部材外周のマスタ側テーパ面とローラ部材との接触、及び該ローラ部材とボール受け(ローラ受け)内周のテーパ面との接触面積がボール部材に比べて大きくなって面圧は小さくなる。
【0012】
しかしながら、接触点の面圧を左右する4方向の曲率半径のうち、ローラ軸方向の1つが直線となるだけで効果は小さく、このことから、ローラ部材の直径自体を大きくすることが必然となり、カップリング装置の厚さを極力薄くできる有効な手段とはなり得ない。
【0013】
しかも、ローラ部材にあってはボール部材と異なり、それを押し出す際に傾かず(こじらず)に転動できる構造にする必要があり、そのためには、部品点数が増加するばかりのみならず、ローラ部材を収容する機械加工の難易度も高く、コストアップするのが避けられない問題もある。
【0014】
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたもので、その目的は、上述した如きロボットアームカップリング装置の構造に改良を加えることで、ボール部材を用いながら、そのロボットアームカップリング装置の薄型化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するために、この発明では、ボール部材をカム部材及びボール受けの双方において断面円弧状のボール収容溝内に配置し、その各ボール収容溝の内面をボール部材と接触させて、接触面積を増大させるようにした。
【0016】
具体的には、この発明では、ロボットアームに取り付けられたマスタプレートと、ツールが取り付けられるツールプレートと、これら両プレートを一体的に連結してロック固定するロック手段とを有し、このロック手段が、上記マスタプレートにロック位置及びロック解除位置の間をスライド可能に支持されたカム部材と、このカム部材の周囲に配設され、上記マスタプレートにカム部材のスライド方向と直交する方向に移動可能に支持される複数のボール部材と、上記ツールプレートに配設され、上記カム部材がロック位置に移動したときに両プレートを連結保持するようにボール部材に係合されるボール受けとを備えたロボットアームカップリング装置が前提である。
【0017】
そして、上記カム部材には、カム部材のスライド方向に沿って延びかつ上記ボール部材を収容可能な複数の断面円弧状のマスタ側ボール収容溝がカム部材の周方向において上記ボール部材の位置に対応して配設されている一方、上記ボール受けには、上記カム部材のスライド方向に沿って延びかつ上記ボール部材を収容可能な複数の断面円弧状のツール側ボール収容溝がボール受けの周方向において上記ボール部材の位置に対応して配設されている。
【0018】
また、上記マスタ側ボール収容溝の内面に、溝長さ方向の断面がカム部材のスライド方向に対し所定方向に傾斜する形状とされたマスタ側第1傾斜部が形成され、上記ツール側ボール収容溝の内面に、溝長さ方向の断面がカム部材のスライド方向に対し上記マスタ側傾斜部の傾斜方向と反対方向に傾斜する形状とされたツール側傾斜部が形成されており、上記カム部材がロック位置に位置付けられた状態で上記マスタ側第1傾斜部がボール部材を上記ツール側傾斜部に当接させるように押圧する構成されていることを特徴とする。
【0019】
この構成により、カム部材がロック位置に移動した状態で、カム部材はそのマスタ側ボール収容溝内におけるマスタ側第1傾斜部によってボール部材をボール受けのツール側ボール収容溝内におけるツール側傾斜部に当接するように押圧し、そのマスタ側第1傾斜部による楔効果によりボール部材が半径方向外側に押圧付勢される。それから、このボール部材はツール側傾斜部を介してボール受け及びツールプレートを押圧してマスタプレート側に付勢し、このことで両プレートが隙間なく連結される。
【0020】
そのとき、上記ボール部材がカム部材における断面円弧状のマスタ側ボール収容溝及びボール受けにおける同様のツール側ボール収容溝に収容されているので、ボール部材はマスタ側ボール収容溝及びツール側ボール収容溝の各内面(基本的に溝底面)に接触することとなり、両者の接触形態はボール部材の外周面とボール収容溝の内面とによる、同じ方向に湾曲した円弧面同士の接触となり、ボール部材がカム部材外周のマスタ側テーパ面及びボール受け内周のツール側テーパ面と接触する、逆方向に湾曲した円弧面同士の接触構造に比べ接触面積が増加する。換言すれば、小径のボール部材を用いながら、接触面積を増加させて接触面圧を低減させることができる。このことで、ボール部材の直径を小さくし、そのカム部材の動作ストロークを小さくして、ロボットアームカップリング装置の厚さを薄くすることができる。
【0021】
また、上記マスタ側ボール収容溝の内面には、マスタ側第1傾斜部よりもカム部材のロック位置側に、溝長さ方向の断面がカム部材のスライド方向と平行な形状とされたストレート部が連設されている構造としてもよい。
【0022】
こうすれば、カム部材のスライド位置が所定位置に保持されず、ボール部材が半径方向内側に変位してカム部材をロック解除位置側たる後退側に戻しても、マスタ側第1傾斜部のカム部材のロック位置側にストレート部が連設されているので、その部位でボール部材からカム部材に該カム部材を後退させる力が作用しなくなり、マスタプレートとツールプレートとの分離は規制される。
【0023】
上記マスタ側ボール収容溝の内面には、上記ストレート部よりもカム部材のロック位置側に、溝長さ方向の断面がマスタ側第1傾斜部と同方向に傾斜する形状とされたマスタ側第2傾斜部が形成され、上記ストレート部とマスタ側第2傾斜部とは、溝長さ方向の断面が円弧形状とされた円弧部を介して連続している構成としてもよい。
【0024】
またこの他、マスタ側ボール収容溝の内面には、ストレート部よりもカム部材のロック位置側に、溝長さ方向の断面がマスタ側第1傾斜部と同方向に傾斜する形状とされた円弧部が連設されている構成としてもよい。
【0025】
上記マスタ側ボール収容溝及びツール側ボール収容溝の少なくとも一方の半径は、ボール部材の半径の0.05mm以上でかつ2倍以下とするのが好ましい。さらに、マスタ側ボール収容溝及びツール側ボール収容溝の少なくとも一方の半径は、ボール部材の半径の0.05mm以上でかつ1.5倍以下としてもよい。
【0026】
上記カム部材がマスタプレートに対し、カム部材のスライド方向に沿った軸線回りに相対的に回転するのを阻止する回り止め機構を設けることが好ましい。このようにカム部材の回転を阻止することで、カム部材がロック位置にあるときは勿論、ロック解除位置にあるときでも、常にカム部材のマスタ側ボール収容溝とボール部材を対応させて、そのボール部材をマスタ側ボール収容溝に収容させることができ、安定した動作が得られる。
【0027】
上記マスタプレートは、ロボットアームに第1締結部材により取り付けられるマスタボディと、このマスタボディに上記第1締結部材とは異なる第2締結部材により固定され、ボール部材を収容するボール収容部を有するシリンダヘッドとを備えてなる構成としてもよい。
【0028】
こうすると、マスタボディのみをロボットアームに第1締結部材により取り付けることができ、マスタボディ及びシリンダヘッドを共に共通の締結部材によりロボットアームに取り付ける構造に比べ、ロボットアームカップリング装置の薄型化を図りつつ、その強度を大に保持することができる。
【0029】
また、ロボットアームに取り付けられ、ボール受けを備えたツールプレートに対し連結されるロボットアームカップリング装置用マスタプレートとして、以下のように構成してもよい。すなわち、上記ボール受けには複数の断面円弧状のツール側ボール収容溝が形成されて、このツール側ボール収容溝の内面には、溝長さ方向の断面が所定方向に傾斜する形状とされたツール側傾斜部が設けられている。
【0030】
そして、マスタプレートは、ロック位置及びロック解除位置の間をスライド可能なカム部材と、このカム部材の周囲にカム部材のスライド方向と直交する方向に移動可能に配設され、カム部材がロック位置に移動したときに上記ボール受けのツール側傾斜部に接触してツールプレートを連結保持する複数のボール部材とを備えている。さらに、上記カム部材には、カム部材のスライド方向に沿って延びかつ上記ボール部材を収容可能な複数の断面円弧状のマスタ側ボール収容溝がカム部材の周方向において上記ボール部材の位置に対応して配設され、上記マスタ側ボール収容溝の内面には、溝長さ方向の断面がカム部材のスライド方向に対し上記ツール側傾斜部の傾斜方向と反対方向に傾斜する形状とされかつ上記カム部材がロック位置に位置付けられた状態でボール部材を上記ツール側傾斜部に当接させるように押圧するマスタ側傾斜部が形成されているものとする。
【0031】
一方、内面に、溝長さ方向の断面が所定方向に傾斜する形状とされたマスタ側傾斜部が形成された複数の断面円弧状のマスタ側ボール収容溝を有し、かつロック位置及びロック解除位置の間をスライド可能なカム部材と、このカム部材周囲のマスタプレートにカム部材のスライド方向と直交する方向に移動可能に配設され、カム部材がロック位置に移動したときに上記マスタ側傾斜部に押圧されて移動する複数のボール部材とを備えてなるマスタプレートに連結されるロボットアームカップリング装置用ツールプレートとして、以下のように構成してもよい。すなわち、ツールプレートは、内面に、溝長さ方向の断面が上記マスタ側傾斜部と反対方向に傾斜する形状とされ、かつマスタプレートのボール部材と接触可能なツール側傾斜部が形成された複数の断面円弧状のツール側ボール収容溝を有するボール受けが設けられており、上記カム部材がロック位置に移動したときに、上記マスタ側傾斜部に押圧されて移動するボール部材を上記ボール受けのツール側傾斜部に接触させることにより、マスタプレートに連結保持されるように構成されているものとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0033】
図1は本発明の実施形態に係るロボットアームカップリング装置Aの主要部を示す。このロボットアームカップリング装置Aは、図示しないロボットアームにツール等を交換可能に装着するためのもので、図2に示すマスタプレート1と、図3に示すツールプレート2とを備え、マスタプレート1はロボットアームに取り付けられる一方、ツールプレート2にツール等が取り付けられ、これら両プレート1,2はロック機構27により互いに素早く連結及び連結解除がなされるように構成されている。
【0034】
尚、図示しないが、マスタプレート1にはマスタコネクタが、またツールプレート2にはツールコネクタがそれぞれ取り付けられており、両プレート1,2の連結時にマスタコネクタとツールコネクタとが電気的に接続されて、その接続によりツールを制御する電気制御系が構成される。また、以下の説明では、説明の便宜上、マスタプレート1を上側(ロボットアーム側)に、またツールプレート2を下側にそれぞれ配置されているものとして説明する。
【0035】
上記マスタプレート1は、ロボットアームに第1ボルト20(第1締結部材)により取り付けられるマスタボディ4と、このマスタボディ4の下側に上記第1ボルト20とは異なる第2ボルト21(第2締結部材)により一体的に固定され、複数のボール部材44,44,…を収容するボール収容孔15,15,…を有するシリンダヘッド10とを備えてなる。
【0036】
上記マスタボディ4は、上側の小径孔5と、この小径孔5に同心状で段差状に連続する下側の大径孔6とが中心部に貫通形成されたリング状のもので、その小径孔5及び大径孔6間の段差部に相当する部分には、複数(例えば8つ)の第1ボルト挿通孔7,7,…と複数(例えば8つ)の第2ボルト挿通孔8,8,…とが円周方向に交互に配置された状態で貫通形成され、後者の第2ボルト挿通孔8のマスタボディ4上面での開口には他の部分よりも大径のボルトヘッド収容部8aが形成されている。
【0037】
一方、シリンダヘッド10は、図16にも示すように、下側に開口する有底円筒状のもので、その底部の中心にはロッド部挿通孔11が貫通形成されている。シリンダヘッド10の上端外周部には、上記マスタボディ4の大径孔6に下面がマスタボディ4下面と面一となるように嵌装されるフランジ部10aが一体に形成され、このフランジ部10aには、上記マスタボディ4の第1ボルト挿通孔7に対応した位置に第1ボルト挿通孔7よりも大径のボルトヘッド収容孔12が、またマスタボディ4の第2ボルト挿通孔8,8,…のうち直径方向に対向する所定の1対の第2ボルト挿通孔8,8に対応した位置にボルト挿通孔13,13が、さらに残りの各第2ボルト挿通孔8に対応した位置にボルト螺合孔14がそれぞれ貫通形成され、上記各ボルト挿通孔13のシリンダヘッド10下面での開口には他の部分よりも大径のピン収容部13aが形成されている。
【0038】
そして、シリンダヘッド10のフランジ部10aをマスタボディ4の大径孔6に嵌装し、その状態で、フランジ部10aにおけるボルトヘッド収容孔12及びマスタボディ4の第1ボルト挿通孔7に第1ボルト20をシリンダヘッド10下側から挿通して、その先端部(上端部)をマスタボディ4上側に突出させ、その突出部をロボットアームに螺合締結させることで、マスタボディ4をロボットアームに一体的にかつ気密状に取付固定する。一方、マスタボディ4の各第2ボルト挿通孔8に第2ボルト21をマスタボディ4上側から挿通し、その中の1対の第2ボルト21,21にあっては、先端部(下端部)をフランジ部10aのボルト挿通孔13を通してフランジ部10a下側に突出させて、その突出部に位置決めピン22を螺合締結させる。また、残りの各第2ボルト21にあっては、先端部(下端部)をフランジ部10aのボルト螺合孔14に螺合締結する。このことで、シリンダヘッド10をマスタボディ4に第2ボルト21によって一体的にかつ気密状に取付固定するようにしている。尚、各第2ボルト21のヘッド部はマスタボディ4の第2ボルト挿通孔8におけるボルトヘッド収容部8a内にマスタボディ4上面から、また各第1ボルト20のヘッド部はシリンダヘッド10のボルトヘッド収容孔12内にフランジ部10a下面からそれぞれ突出しないように収容される。また、マスタボディ4のロボットアームへの取付けにより小径孔5の上側開口が気密状に閉塞され、この小径孔5、シリンダヘッド10上面及びロボットアームにより密閉状のシリンダ空間が形成される。
【0039】
上記1対の第2ボルト21,21(第2締結部材)の各下端部に螺合される位置決めピン22は、締結ナットを兼ねるもので、上端部がフランジ部10aのボルト挿通孔13のピン収容部13aに収容されかつ下端部がフランジ部10a下面から突出した状態で第2ボルト21に螺合される。この位置決めピン22は、下端部の角部が円弧面とされた比較的大径でかつ短い円筒状に形成されている。
【0040】
尚、上記大径孔5外側のマスタボディ4下面には、マスタシリンダの直径方向に対向する位置に、先端部(下端部)が先細りテーパ形状とされたロボットティーチング用の1対のガイドピン24,24がその下部をマスタボディ4下面から突出させた状態で取り付けられ、この各ガイドピン24はマスタボディ4にそれを上下に貫通する取付ボルト25により固定されている。
【0041】
シリンダヘッド10の下部には、円周方向に等間隔をあけた位置に上記複数(例えば8つ)のボール収容孔15,15,…が、また所定のボール収容孔15,15間の位置に1つのピン孔16がそれぞれシリンダヘッド10の内外を半径方向に貫通するように形成され、上記ピン孔16には回り止めピン17が一部(係合部)をシリンダヘッド10内側に突出させるように挿入されて固定されている。尚、図17に拡大して示すように、各ボール収容孔15のシリンダヘッド10外周面の開口端部は部分的に他の部分よりも小径となっていて、ボール収容孔15内のボール部材44がシリンダヘッド10外周側へ抜け止さないようになっている。
【0042】
上記ロック機構27は、マスタプレート1にロック位置及びロック解除位置の間をスライド可能に支持されたカム部材28と、このカム部材28の周囲に配設され、マスタプレート1にカム部材28のスライド方向(上下方向)と略直交する方向(半径方向)に移動可能に支持される上記複数のボール部材44,44,…と、上記ツールプレート2に配設され、上記カム部材28がロック位置に移動したときに両プレート1,2を連結保持するようにボール部材44と係合するボール受け58とを備えている。
【0043】
すなわち、上記各ボール部材44は、例えば直径12.7mm(半径r=6.35mm)の鋼球からなるもので、上記シリンダヘッド10のボール収容孔15にマスタプレート1の半径方向に移動可能に収容支持されている。
【0044】
また、上記マスタボディ4の小径孔5内(シリンダ空間内)にはピストン40がスライド可能に嵌挿されている。このピストン40は、小径孔5内をOリングからなるシール材41を介して摺動可能に摺動する円板状のもので、その下面の中心部には、上記シリンダヘッド10のロッド部挿通孔11を摺動可能に気密状に貫通するロッド部40aが一体に突設されている。ピストン40はマスタボディ4の小径孔5内(シリンダ空間内)を上下2室に区画しており、マスタボディ4に形成された空気通路(図示せず)を通じて両室の一方に選択して加圧エアを供給することで、ピストン40を小径孔5内で往復動させるようになっている。
【0045】
シリンダヘッド10内に上記カム部材28が下降端のロック位置及び上昇端のロック解除位置の間をスライド可能に配置されている。図7〜図9に示すように、このカム部材28は円板状のもので、その中心部にて上記ピストン40のロッド部40aの先端部(下端部)に連結ボルト42により移動一体に締結されており、このピストン40の往復動によりカム部材28が駆動されてシリンダヘッド10内をロック位置及びロック解除位置間をスライドする。
【0046】
上記カム部材28の外周面には、複数(例えば8つ)の断面円弧状のマスタ側ボール収容溝29,29,…がカム部材28の周方向において上記ボール部材44の位置(シリンダヘッド10のボール収容孔15の位置)に対応して配設されている。この各マスタ側ボール収容溝29は、図4〜図6に拡大詳示するように、カム部材28の外周下端隅角部を部分的に円弧溝状に切り欠いた形状のもので、基本的にカム部材28のスライド方向(上下方向)に沿って延び、その上端部はカム部材28の上面ではなくて外周面の上端近傍に位置しており、この各マスタ側ボール収容溝29内に各ボール部材44を収容可能となっている。尚、マスタ側ボール収容溝29はその上端部がカム部材28の上面まで達するように形成してもよい。
【0047】
各マスタ側ボール収容溝29の内面(基本的に溝底面)には、マスタ側第1傾斜部30と、このマスタ側第1傾斜部30よりもカム部材28のロック位置側(下側)に連続するストレート部31と、このストレート部31よりもカム部材28のロック位置側(下側)に連続するマスタ側第2傾斜部32とが形成され、マスタ側第1傾斜部30とストレート部31とは上側円弧部33を介して連続し、ストレート部31とマスタ側第2傾斜部32とは下側円弧部34を介して連続している。これら第1傾斜部30、ストレート部31、第2傾斜部32及び円弧部33,34は、いずれもマスタ側ボール収容溝29の内面(溝底面)に位置し、各々の位置での溝の半径r1は同じであるが、その円弧中心を変えることによって形成される。このような段差状の溝底面を有する円弧半径r1のマスタ側ボール収容溝29を形成する場合、図4に仮想線にて示すように、先端半径r1を持つエンドミルMを用い、その中心Oを所定の軌跡Lで移動させながらカム部材28を切削することで、容易に形成することができる。
【0048】
上記マスタ側第1傾斜部30及びマスタ側第2傾斜部32はいずれも、溝長さ方向の断面がカム部材28のスライド方向に対し下側に向かってカム部材28中心側(図4右側)に向かうように後述のツール側傾斜部64の傾斜方向と反対方向に傾斜する形状とされ、その第1傾斜部30の上下方向(鉛直軸線)に対する傾斜角度θ1は第2傾斜部32の同傾斜角度θ2と同じ(θ1=θ2)であってもよいが、第2傾斜部32による楔効果を高め、ロボットアームの急激な動きに対しても確実に連結状態を維持できるようにするために、本実施形態では第1傾斜部30の傾斜角度θ1の方が第2傾斜部32の傾斜角度θ2よりも小さく(θ1<θ2)なるように設定されている。例えば第1傾斜部30の傾斜角度θ1がθ1=15°であるのに対し、第2傾斜部32の傾斜角度θ2はθ2=45°としている。
【0049】
また、ストレート部31は、溝長さ方向の断面がカム部材28のスライド方向と平行な形状とされており、その上下方向(鉛直軸線)に対する傾斜角度は0となっている。さらに、上記上側円弧部33及び下側円弧部34は、いずれも溝長さ方向の断面が面取り状の円弧形状とされている。上側円弧部33はカム部材28の中心側に、また下側円弧部34はカム部材28の外周側にそれぞれ膨出していて、これら円弧部33,34の膨出方向は互いに逆向きとなっており、上側円弧部33によってマスタ側第1傾斜部30とストレート部31とが、また下側円弧部34によってストレート部31とマスタ側第2傾斜部32とがそれぞれ滑らかに連続している。
【0050】
上記カム部材28の外周面において、上記シリンダヘッド10のピン孔16に対応する位置には、カム部材28のスライド方向に沿って延びる例えば断面矩形状の係合溝36がカム部材28の上下面間に亘り形成され、この係合溝36には上記ピン孔16に挿入された回り止めピン17の係合部が摺動可能に係合されており、この回り止めピン17及び係合溝36により、カム部材28がマスタプレート1に対し、カム部材28のスライド方向に沿った鉛直軸線回りに相対的に回転するのを阻止する回り止め機構37が構成されている。
【0051】
これに対し、上記ツールプレート2は、ツール等に取り付けられるツールボディ50と、このツールボディ50の上側に固定され、上記ロック機構27の一部をなすボール受け58とを備えている。上記ツールボディ50は、上側の大径孔51と、この大径孔51に同心状で段差状に連続する下側の小径孔52とが中心部に貫通形成されたリング状のもので、その大径孔51及び小径孔52間の段差部に相当する部分には、複数(例えば16)のボルト挿通孔53,53,…が円周方向に所定間隔をあけた状態で貫通形成され、この各ボルト挿通孔53のツールボディ50下面での開口には他の部分よりも大径のボルトヘッド収容部53aが形成されている。
【0052】
また、大径孔51外側のツールボディ50上面には、ツールボディ50の直径方向に対向する位置に1対の段状のピン挿通孔54,54が上記マスタボディ4の各ガイドピン24の位置に対応して貫通形成され、この各ピン挿通孔54の上端部内にはガイドピン24よりも大きい内径を有するブッシュ55が嵌合固定されており、ロボットにティーチングする際に、ガイドピン24が対応するピン挿通孔54のブッシュ55内に嵌挿されるようになっている。
【0053】
一方、図10〜図12にも示すように、上記ボール受け58は、ツールボディ50の小径孔52よりも小さい内径を有するリング状のもので、ツールボディ50の大径孔51に上面がツールボディ50下面と面一となるように嵌装される。このボール受け58には、上記ツールボディ50のボルト挿通孔53に対応した位置にボルト螺合孔59が貫通形成されており、ボール受け58をツールボディ50の大径孔51に嵌装して、ツールボディ50のボルト挿通孔53に締結ボルト60をツールボディ50下側から挿通し、その先端部(上端部)をボール受け58のボルト螺合孔59に螺合締結することで、ボール受け58をツールボディ50に一体的に取付固定している。
【0054】
また、ボール受け58の上面には直径方向に対向する位置に、上記マスタプレート1側の位置決めピン22が嵌合可能な浅い有底穴からなる1対の位置決め嵌合穴61が形成されており、ツールプレート2をマスタプレート1に連結するときに、この位置決め嵌合穴61に位置決めピン22を嵌合させると、マスタプレート1におけるシリンダヘッド10の各ボール収容孔15内にあるボール部材44(カム部材28のマスタ側ボール収容溝29)がボール受け58の後述するツール側ボール収容溝63に円周方向に対応して位置決めされるようにしている。
【0055】
そして、上記ボール受け58の内周面下部には、複数(例えば8つ)の断面円弧状のツール側ボール収容溝63,63,…がボール受け58の周方向において上記マスタプレート1側の各ボール部材44の位置(カム部材28のマスタ側ボール収容溝29の位置)に対応して配設されている。この各ツール側ボール収容溝63は、図13〜図15に拡大詳示するように、ボール受け58の内周下端隅角部を部分的に円弧溝状に切り欠いた形状のもので、基本的に上記カム部材28のスライド方向(上下方向)に沿って延び、その上端部はボール受け58の上面ではなくてその外周面の上端近傍に位置しており、この各ツール側ボール収容溝63内に各ボール部材44を収容可能となっている。このツール側ボール収容溝63の円弧半径r1は、マスタ側ボール収容溝29の円弧半径r1と同じである(尚、これら両ボール収容溝63,29の円弧半径を互いに異ならせてもよい)。尚、ツール側ボール収容溝63をその上端部がボール受け58の上面まで達するように形成してもよい。
【0056】
上記各ツール側ボール収容溝63の内面(基本的に溝底面)にはツール側傾斜部64が形成され、このツール側傾斜部64は、溝長さ方向の断面がカム部材28のスライド方向に対し上記マスタ側ボール収容溝29におけるマスタ側第1傾斜部30の傾斜方向と反対方向に、つまり上側に向かってボール受け58の中心側に向かうように傾斜する形状とされている。このツール側ボール収容溝63においても、上記マスタ側ボール収容溝29と同様に、その各位置での溝の半径r1は同じで、その円弧中心を変えることによって形成される。また、このような溝底面を有する円弧半径r1のツール側ボール収容溝63は、マスタ側ボール収容溝29の場合と同様に、エンドミルを用いてボール受け58を切削することで容易に形成できる。
【0057】
上記マスタ側ボール収容溝29及びツール側ボール収容溝63の半径r1はボール部材44の半径rの0.05mm(直径の0.1mm)以上でかつ2倍以下であることがよい(0.05mm+r≦r1≦2r)。その理由は、r1<0.05mm+rであると、ボール収容溝29,63でのボール部材44のスムーズで滑らかな転動が確保できなくなる一方、r1>2rであると、ボール収容溝29,63の溝内面とボール部材44の外面との間の面圧低減効果が良好に得られなくなるからである。そして、より好ましくは、ボール収容溝29,63の半径r1の上限はボール部材44の半径rの1.5倍以下であることがよい(0.05mm+r≦r1≦1.5r)。
【0058】
そして、上記マスタプレート1のシリンダヘッド10をツールプレート2におけるボール受け58の内部ないしツールボディ50の小径孔52内に嵌挿するとともに、位置決めピン22の位置決め嵌合穴61への嵌合によりマスタプレート1の各ボール部材44がボール受け58の各ツール側ボール収容溝63に対応した状態で、ピストン40の駆動によりカム部材28がロック位置に位置付けられたときに、マスタ側ボール収容溝29上端のマスタ側第1傾斜部30がボール部材44を上記ツール側ボール収容溝63のツール側傾斜部64に当接させるように押圧し、このことでツールプレート2をマスタプレート1に一体的に連結してロック固定するようになっている。
【0059】
次に、上記実施形態の作用について説明する。まず、ツールプレート2をマスタプレート1に締結する場合、ロボットアームの操作によりマスタプレート1のシリンダヘッド10がツールプレート2におけるボール受け58の内部ないしツールボディ50の小径孔52内に嵌挿される。また、マスタプレート1の1対の位置決めピン22,22がツールプレート2の1対の位置決め嵌合穴61,61へそれぞれ嵌合される。この状態では、シリンダヘッド10の各ボール収容孔15内に支持されているボール部材44がボール受け58の各ツール側ボール収容溝63に円周方向において対応する。また、この各ボール部材44は、回り止め機構37によりカム部材28におけるカム部材28の各マスタ側ボール収容溝29に円周方向において対応している。
【0060】
この状態で、ピストン40上側の室に加圧エアが供給されて、ピストン40がそれまでの上昇位置から下降し、このピストン40の駆動によりカム部材28が上昇端のロック解除位置から下降移動する。このカム部材28の下降により、上記マスタ側ボール収容溝29内にボール部材44が入り込み、そのボール収容溝29内面下端のマスタ側第2傾斜部32がボール部材44を半径方向外側に押してシリンダヘッド10の外周面から突出させる。このことでボール部材44の突出部が上記ツール側ボール収容溝63内に入る。さらにカム部材28が下降すると、上記マスタ側第2傾斜部32上側のストレート部31がボール部材44を押圧するようになる。その後、カム部材28が下降端のロック位置に位置付けられると、上記ストレート部31上側でマスタ側ボール収容溝29上端にあるマスタ側第1傾斜部30がボール部材44を押圧するようになり、ボール部材44は上記ツール側ボール収容溝63のツール側傾斜部64に当接する。この状態では、各ボール部材44は、マスタ側ボール収容溝29のマスタ側第1傾斜部30と、ツール側ボール収容溝63のツール側傾斜部64と、ボール収容孔15の内面下部とに当接してこれらにより移動不能に押圧保持され、このことでツールプレート2がマスタプレート1に一体的に連結されてロック固定される。
【0061】
すなわち、このとき、ピストン40上面にエア圧が作用して、ピストン40と一体のカム部材28も下方に押され、マスタ側ボール収容溝29内上端のマスタ側第1傾斜部30によってボール部材44の外周面が押されるので、このマスタ側第1傾斜部30によるいわゆる楔効果により、ボール部材44が所定位置となるまで半径方向外側に移動される。しかも、上記マスタ側第1傾斜部30の傾斜角度θ1が小さいので、上記楔効果がさらに高められる。そのため、ボール受け58のツール側ボール収容溝63におけるツール側傾斜部64にボール部材44より作用する押圧力によってツールプレート2が上方に付勢され、ツールプレート2の上面がマスタプレート1の下面に接触するまで移動することとなる。このことで、両プレート1,2の間に加工のばらつきにより隙間が生じるとしても、そのばらつきは、上記マスタ側ボール収容溝29内のマスタ側第1傾斜部30によりボール部材44を半径方向外側に積極的に押圧付勢してツールプレート2を上方に変位させることで吸収され、両プレート1,2が常に隙間を生じない状態で連結されることとなり、連結位置の再現性が良くなる。
【0062】
また、ピストン40上面に対しては常時エア圧が作用しているが、何等かの原因でピストン40上面にエア圧が作用しなくなると、ツールを含めたツールプレート2の重量によりボール部材44が半径方向内側に押されて変位し、ピストン40が持ち上げられるようになる。こうなったとしても、上記マスタ側第1傾斜部30下側にストレート部31が連設されているので、その部位までボール部材44が移動するのに伴い、その移動後はボール部材44からピストン40に該ピストン40を上昇させる方向の力は作用しなくなり、よって両プレート1,2の不用意な分離を規制することができる。
【0063】
尚、上記ツールプレート2とマスタプレート1との連結を解除する場合には、ピストン40下側の室に加圧エアを供給してピストン40を上昇させることで、上記連結時とは逆の動作が行われ、ボール部材44が半径方向内側に移動して両プレート1,2の連結が解除される。
【0064】
したがって、この実施形態においては、各ボール部材44がカム部材28における断面円弧状のマスタ側ボール収容溝29及びボール受け58における同様のツール側ボール収容溝63に収容された状態で移動するので、図6及び図14に示すように、ボール部材44はマスタ側ボール収容溝29及びツール側ボール収容溝63の各内面(基本的に溝底面)に接触することとなり、両者の接触形態はボール部材44の外周面とボール収容溝29,63の内面とによる、同じ方向に湾曲した円弧面同士の接触となる。この円弧面同士の接触では、ボール部材44が従来のカム部材外周のマスタ側テーパ面及びボール受け内周のツール側テーパ面と接触する、逆方向に湾曲した円弧面同士の接触構造に比べ接触面積が増加するので、小径のボール部材44を用いながら、接触面積を増加させて接触面圧を低減させることができる。よって、ボール部材44の直径を小さくし、そのカム部材28の動作ストロークを小さくして、ロボットアームカップリング装置Aの厚さ(上下高さ)を薄くすることができる。
【0065】
また、上記マスタボディ4をロボットアームに取り付ける第1ボルト20と、このマスタボディ4にシリンダヘッド10を取り付ける第2ボルト21とは互いに異なっているものを用いているので、マスタボディ4のみをロボットアームに第1ボルト20により取り付けることができ、マスタボディ4及びシリンダヘッド10を共に兼用した共通のボルトによりロボットアームに取り付ける構造に比べ、ロボットアームカップリング装置Aの薄型化を図りつつ、その強度を大に保持することができる。
【0066】
さらに、上記カム部材28の回転が回り止め機構37により規制されているので、カム部材28がロック位置にあるときは勿論、ロック解除位置にあるときでも、常にカム部材28の各マスタ側ボール収容溝29を各ボール部材44(シリンダヘッド10の各ボール収容孔15)に対応させて、そのボール部材44をマスタ側ボール収容溝29に収容させることができ、安定した動作が維持できる。
【0067】
また、上記マスタプレート1の各位置決めピン22として、短くて大径の円筒状のものを用いているので、この位置決めピン22に捩りモーメントが作用しても、大きく変位することはなく、位置決めを安定して行うことができる。また、ツールプレート2側の位置決め嵌合穴61は浅い有底穴であるので、位置決め機構として大きな強度を確保することができる。
【0068】
また、上記のように位置決めピン22が短いと、ロボットのティーチングが難しくなるが、この位置決めピン22とは別個に、マスタボディ4にティーチング用のガイドピン24が設けられているので、このガイドピン24によりロボットのティーチングは容易である。
【0069】
(他の実施形態)
尚、上記実施形態では、各マスタ側ボール収容溝29内において、ストレート部31とマスタ側第2傾斜部32とを面取り状の円弧部34を介して滑らかに連続させているが、図18に示すように、このマスタ側第2傾斜部32をなくし、ストレート部31よりもカム部材28のロック位置側に、マスタ側第1傾斜部30と略同方向に傾斜する面取り状の円弧部34を滑らかに連設してもよく、上記実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0070】
また、上記実施形態では、各マスタ側ボール収容溝29内に第1傾斜部30、ストレート部31、第2傾斜部32及び円弧部33,34を形成しているが、第1傾斜部30のみを設けて、その他は省略することもできる。
【0071】
(実施例)
下記表1は、マスタ側ボール収容溝29及びツール側ボール収容溝63の各半径r1をボール部材44の半径rに対し所定の関係で変化させたときに、そのボール部材44外周面とボール収容溝29,63の溝面との間の面圧の減少変化を測定したものであり、比較例1を100%としたときの面圧減少率を表している。本発明例1はr1=r+0.05mm、本発明例2はr1=1.25r、本発明例3はr1=1.50r、本発明例4はr1=1.75r、本発明例5はr1=2.00rである。また、比較例1は、ボール部材がカム部材外周のマスタ側テーパ面及びボール受け内周のツール側テーパ面と接触する、逆方向に湾曲した円弧面同士の接触構造のものであり、比較例2は、ボール部材が円弧面ではなくて平面(但し、傾斜状のカム面をなしている)に接触する接触構造のものである。
【0072】
【表1】
Figure 0003717923
【0073】
この表1の結果を考察すると、本発明例1〜5はいずれも、比較例1に比べ、ボール部材のボール収容溝の内面との間の面圧が減少しており、ボール収容溝の半径r1は小さいほど面圧が大きく減少し、本発明例1のようにr1=r+0.05mmが最小となっている。また、本発明例5のようにr1=2.00rとすれば面圧は84%まで減少しており、特に、本発明例3のようにr1=1.50rとするのが実用的に好適となっている。
【0074】
また、表2は、上記表1の面圧から逆算して比較例1と同じ面圧になるときのボール部材に対する押圧負荷の増加率を調べたものである。
【0075】
【表2】
Figure 0003717923
【0076】
この表2によると、ボール収容溝29,63の各半径r1をボール部材44の半径rの1.5倍(r1=1.5r)としたときには、比較例1に比べ約250%の力でボール部材44を押圧する(負荷をかける)ことが可能となることが判る。
【0077】
さらに、ボール収容溝29,63に接触するボール部材44の面圧が比較例1と同じ面圧となるときの該ボール部材44の半径rの減少率を調べたところ、表3に示す結果が得られた。
【0078】
【表3】
Figure 0003717923
【0079】
この表3によると、ボール収容溝29,63の各半径r1をボール部材44の半径rの1.5倍(r1=1.5r)とした場合、比較例1のものと同じ面圧で約65%の小さいボール部材44を使用できることが判る。
【0080】
以上の結果、本発明の技術によれば、ロボットロボットアームカップリング装置の薄型化を有効に達成できることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、ボール部材を用いながら、ロボットアームカップリング装置の薄型化を促進できる点で産業上の利用可能性は高い。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】図1は、本発明の実施形態におけるロボットアームカップリング装置を両プレートの連結状態で示す縱断面図である。
【図2】図2は、マスタプレートの縱断面図である。
【図3】図3は、ツールプレートの縦断面図である。
【図4】図4は、図5のIV−IV線断面図である。
【図5】図5は、マスタ側ボール収容溝をカム部材の側方から見た拡大正面図である。
【図6】図6は、マスタ側ボール収容溝をカム部材の下側から見た拡大平面図である。
【図7】図7は、図9のVII−VII線断面図である。
【図8】図8は、カム部材の斜視図である。
【図9】図9は、カム部材を下側から見た平面図である。
【図10】図10は、ボール受けを下側から見た平面図である。
【図11】図11は、ボール受けの斜視図である。
【図12】図12は、図10のXII−XII線断面図である。
【図13】図13は、ツール側ボール収容溝をボール受けの内側から見た拡大正面図である。
【図14】図14は、ツール側ボール収容溝をボール受けの下側から見た拡大平面図である。
【図15】図15は、図13のXV−XV線断面図である。
【図16】図16は、マスタシリンダを下側から見た平面図である。
【図17】図17は、ボール収容孔の拡大断面図である。
【図18】図18は、他の実施形態を示す図4相当図である。

Claims (10)

  1. ロボットアームに取り付けられたマスタプレートと、ツールが取り付けられるツールプレートと、上記両プレートを一体的に連結してロック固定するロック手段とを有し、
    上記ロック手段が、上記マスタプレートにロック位置及びロック解除位置の間をスライド可能に支持されたカム部材と、該カム部材の周囲に配設され、上記マスタプレートにカム部材のスライド方向と直交する方向に移動可能に支持される複数のボール部材と、上記ツールプレートに配設され、上記カム部材がロック位置に移動したときに両プレートを連結保持するようにボール部材に係合されるボール受けとを備えたロボットアームカップリング装置において、
    上記カム部材には、カム部材のスライド方向に沿って延びかつ上記ボール部材を収容可能な複数の断面円弧状のマスタ側ボール収容溝がカム部材の周方向において上記ボール部材の位置に対応して配設されている一方、
    上記ボール受けには、上記カム部材のスライド方向に沿って延びかつ上記ボール部材を収容可能な複数の断面円弧状のツール側ボール収容溝がボール受けの周方向において上記ボール部材の位置に対応して配設されており、
    上記マスタ側ボール収容溝の内面に、溝長さ方向の断面がカム部材のスライド方向に対し所定方向に傾斜する形状とされたマスタ側第1傾斜部が形成され、
    上記ツール側ボール収容溝の内面に、溝長さ方向の断面がカム部材のスライド方向に対し上記マスタ側傾斜部の傾斜方向と反対方向に傾斜する形状とされたツール側傾斜部が形成され、
    上記カム部材がロック位置に位置付けられた状態で上記マスタ側第1傾斜部がボール部材を上記ツール側傾斜部に当接させるように押圧する構成とされていることを特徴とするロボットアームカップリング装置。
  2. 請求項1記載のロボットアームカップリング装置において、
    マスタ側ボール収容溝の内面には、マスタ側第1傾斜部よりもカム部材のロック位置側に、溝長さ方向の断面がカム部材のスライド方向と平行な形状とされたストレート部が連設されているロボットアームカップリング装置。
  3. 請求項2記載のロボットアームカップリング装置において、
    マスタ側ボール収容溝の内面には、ストレート部よりもカム部材のロック位置側に、溝長さ方向の断面がマスタ側第1傾斜部と同方向に傾斜する形状とされたマスタ側第2傾斜部が形成され、
    上記ストレート部とマスタ側第2傾斜部とは、溝長さ方向の断面が円弧形状とされた円弧部を介して連続しているロボットアームカップリング装置。
  4. 請求項2記載のロボットアームカップリング装置において、
    マスタ側ボール収容溝の内面には、ストレート部よりもカム部材のロック位置側に、溝長さ方向の断面がマスタ側第1傾斜部と同方向に傾斜する形状とされた円弧部が連設されているロボットアームカップリング装置。
  5. 請求項1〜4のいずれか1つ記載のロボットアームカップリング装置において、
    マスタ側ボール収容溝及びツール側ボール収容溝の少なくとも一方の半径は、ボール部材の半径の0.05mm以上でかつ2倍以下であるロボットアームカップリング装置。
  6. 請求項1〜4のいずれか1つ記載のロボットアームカップリング装置において、
    マスタ側ボール収容溝及びツール側ボール収容溝の少なくとも一方の半径は、ボール部材の半径の0.05mm以上でかつ1.5倍以下であるロボットアームカップリング装置。
  7. 請求項1〜6のいずれか1つ記載のロボットアームカップリング装置において、
    カム部材がマスタプレートに対し、カム部材のスライド方向に沿った軸線回りに相対的に回転するのを阻止する回り止め機構が設けられているロボットアームカップリング装置。
  8. 請求項1〜7のいずれか1つ記載のロボットアームカップリング装置において、
    マスタプレートは、ロボットアームに第1締結部材により取り付けられるマスタボディと、該マスタボディに上記第1締結部材とは異なる第2締結部材により固定され、ボール部材を収容するボール収容部を有するシリンダヘッドとを備えてなるロボットアームカップリング装置。
  9. ロボットアームに取り付けられ、ボール受けを備えたツールプレートに対し連結されるロボットアームカップリング装置用マスタプレートであって、
    上記ボール受けには複数の断面円弧状のツール側ボール収容溝が形成されて、該ツール側ボール収容溝の内面には、溝長さ方向の断面が所定方向に傾斜する形状とされたツール側傾斜部が設けられており、
    ロック位置及びロック解除位置の間をスライド可能なカム部材と、
    上記カム部材の周囲にカム部材のスライド方向と直交する方向に移動可能に配設され、カム部材がロック位置に移動したときに上記ボール受けのツール側傾斜部に接触してツールプレートを連結保持する複数のボール部材とを備え、
    上記カム部材には、カム部材のスライド方向に沿って延びかつ上記ボール部材を収容可能な複数の断面円弧状のマスタ側ボール収容溝がカム部材の周方向において上記ボール部材の位置に対応して配設され、
    上記マスタ側ボール収容溝の内面には、溝長さ方向の断面がカム部材のスライド方向に対し上記ツール側傾斜部の傾斜方向と反対方向に傾斜する形状とされかつ上記カム部材がロック位置に位置付けられた状態でボール部材を上記ツール側傾斜部に当接させるように押圧するマスタ側傾斜部が形成されていることを特徴とするロボットアームカップリング装置用マスタプレート。
  10. 内面に、溝長さ方向の断面が所定方向に傾斜する形状とされたマスタ側傾斜部が形成された複数の断面円弧状のマスタ側ボール収容溝を有し、かつロック位置及びロック解除位置の間をスライド可能なカム部材と、該カム部材周囲のマスタプレートにカム部材のスライド方向と直交する方向に移動可能に配設され、カム部材がロック位置に移動したときに上記マスタ側傾斜部に押圧されて移動する複数のボール部材とを備えてなるマスタプレートに連結されるロボットアームカップリング装置用ツールプレートであって、
    内面に、溝長さ方向の断面が上記マスタ側傾斜部と反対方向に傾斜する形状とされ、かつマスタプレートのボール部材と接触可能なツール側傾斜部が形成された複数の断面円弧状のツール側ボール収容溝を有するボール受けが設けられており、
    上記カム部材がロック位置に移動したときに、上記マスタ側傾斜部に押圧されて移動するボール部材を上記ボール受けのツール側傾斜部に接触させることにより、マスタプレートに連結保持されるように構成されていることを特徴とするロボットアームカップリング装置用ツールプレート。
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