JP3717511B2 - サポニン−抗原複合物とその用途 - Google Patents
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Description
この出願は1991年9月18日出願の、共に係属中のアメリカ出願番号07/762754の部分継続出願であり;該件は1990年8月27日出願のアメリカ出願番号07/573268(1991年10月15日付発行)の部分継続出願であり;該件は1988年5月31日出願のアメリカ出願番号07/200754(放棄済)の包袋継続出願であり;該件は1987年5月29日出願のアメリカ出願番号07/055229(放棄済)の部分継続出願であり;そしてこれらの開示はここ参照により充分に包含される。
発明の背景
(発明の分野)
本発明は医薬の化学の領域におけるものである。特に本発明はサポニンから成るワクチン、それを生産する方法及び動物を免疫するためのその用途に関するものである。
(背景技術の簡単な説明)
キラヤサポニンはキラヤサポナリアQnillaja sapomariaの樹皮から抽出したトリテルペングルコシドの混合物である。粗サポニンは、足や口の病気に対するワクチンにおけるアジュバントとして、及び例えばTrypanosoma cruziプラスモジウムのような原生動物寄生虫や、またヒツジ赤血球細胞(SRBC)への体液性反応に対する実験的ワクチンによって与えられる保護的免疫性を増幅におけるアジュバントとして広く用いられてきた。(Bomford:Int. Arch. Allerg. Apple. Immun. 67:127(1982))。
サポニンとして、数々の一般性質で特徴づけられてきた天然物である。水溶液中で泡を生ずる能力が、そのグループにそのような名称を与えた。それ以外の特性は溶血活性、魚に対する毒性、コレステロールとの結合及びある場合には抗生物質である。Kofler:Die Saponine(Springer Verlag)、Berlin, 1927;Tschescheほか:Chemie und Biologie der Saponine, Fortscher. Chem. Org. Naturst. XXX:461(1972)。
サポニンの一般性質は、一般の化学反応中に反映されていない。すべてのサポニンはグルコシドであるけれども、そのアグリコンはステロイド,トリテルペノイド又はステロイドアルカロイドに属することがある。糖及びグルコシド結合につく糖鎖の数は大いに変り得る。サポニンは商業的に生産されており多くの用途をもっている。商業的に入手できるキラヤサポニンは粗混合物であって、それは変化しやすいので獣医学方面又はヒトのための医薬組成物における用途には適当でない。その変りやすさや不均一性の故に、各バッチはアジュバント活性や毒性を決定するために動物実験でテストせねばならない。商業的に入手できる製品中の不純物は副反応を起し得る。加えて、与えられたバッチのサポニン中の活性物質の量は変化し得、そのためにバッチからバッチへの再生産性を減少させる。
キラヤサポニンを精製する初期の試みはDalsgaard:Archivfuer die gesamte Virusforschung,44:243(1974)によって行われた。DalsgaardはQuillaja saponaria Molinaからのサポニン−アジュバント材料の水性抽出物を部分的に精製した。“Quil−A”の名称でスーパーフォスから商業的に入手できるDalsgaardの製剤は南米の樹木であるQuillaja saponaria Molinaの樹皮から単離され、そしてトリテルペノイド・キラヤ酸(quillaic acid)へのグルコシド結合の炭水化物部分として化学的に特徴づけられる。然しながら、DalsgaardのサポニンQuil−Aは、それ迄に入手できた商業的なサポニンよりも決定的な改良があるものの、それはまた可成りの不均一性がある。
ヒグチほか(Phytochemistry,26:229(1987年1月))は、粗キラヤサポニン混合物を、50%メタノール中の6%NH4HCO3中でのアルカリ性加水分解で処理して、DS−1及びDS−2と命名される2つの主なデスアシルサポニンを生成させた。DS−1はグルクロン酸,ガラクトーズ,キシローズ,フコーズ,ラムノーズ,アピオーズ及びキラヤ酸を含み、一方DS−2はそれらの成分に加え更にグルコースを含むとされている。この脱アシル化の副生成物は、3,5−ジヒドロキシ−6−メチルオクタン酸、3,5−ジヒドロキシ−6−メチルオクタン酸−5−O−α−L−アラビノフラノシド及び−5−O−α−L−ラムノピラノシル−(1→2)−α−L−アラビノフラノシドを含むいくつかの成分を生成した(Higuchiほか:phytochemistry, 26:2357(1987年8月))。
【図面の簡単な説明】
図1は、逆相HPLC上での、透析されメタノールに溶かしたキラヤ樹皮抽出物の屈折率プロフィルである。
図2は、上記サンプルの屈折率ピークが炭水化物ピークに対応することを示すものである。
図3は、スーパーフォスQuil−Aと、HPLCによる透析されたメタノール可溶樹皮抽出物の比較を示す。
図4は、粗サポニン混合物のQuil−Aからシリカクロマトグラフィー(4A)及び引き続いての逆相クロマトグラフィー(4B,4C,4D)によるQA−7,QA−17,QA−18,QA−19及びQA−21の精製を示す。
図5は、単一ピーク(5A)としてQA−21の逆相HPLC、及び親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)(5B)でのQA−21−V1及びQA−21−V2の2つのピークへの分解を示す。
図6は、逆相(6A)及び通常相(6B)薄層クロマトグラフィーによるQA−7,QA−17,QA−18及びQA−21の精製をあらわす。
図7AはQA−7のUVスペクトルを;図7BはQA−17のUVスペクトルを;図7CはQA−18のUVスペクトルを;そして図7DはQA−21のUVスペクトルを表わす。
図8AはQA−7の1H核磁気共鳴(NMR)を;図8BはQA−18の1H NMRを;そして図8CはQA−21の1H NMRをあらわす。
図9は、QA−7(9A),QA−17(9B),QA−18(9C),QA−21(9D),QA−21−V1(9E)及びQA−21−V2(9F)の質量分光高速原子衝撃(MS−FAB)をあらわす。
図10はQA−17,QA−18,QA−21−V1及びQA−21−V2の提案構造をあらわす。
図11は、同一サポニンの臨界的ミセラ濃度で平衡化されたPBS中のBio−Gel P−200上でのゲル濾過による純粋なQA−18ミセルと純粋なQA−21ミセルの溶離プロフィル、及び標準蛋白の溶離位置との比較をあらわす。
図12は、ヒツジ赤血球細胞のQA−7,QA−8,QA−17,QA−18,QA−21及びスーパーフォスのQuil−Aによる溶血をあらわす。
図13は、樹皮抽出物のHPLC−精製分画の存在下でのBAS抗原による免疫のための典型的な終末点力価(タイター)を示す。抗原特異的な抗体結合に起因する吸収な血清稀釈の対数の関数としてプロットされている。
図14は、抗体BSAによる免疫でのフロインドの完全アジュバントでの、及び種々の抗原濃度におけるQA−7,QA−17,QA−18及びQA−21のアジュバント効果の比較をあらわす。
図15は、IgGタイターのサブクラスIgG1(15A),IgG2b(15B)及びIgG2a(15C)ならびに全IgG(15D)へのブーストにおけるQA−21(混合物)、QA−21−V1及びQA−21−V2のアジュバント効果を示す。図15Eは、全IgGタイターをブーストしたときのQA−21,QA−21−V1及びQA−21−V2の用量反応曲線である。
図16は、抗原gp70R−デルタでの免疫化において他のアジュバントAl(OH)3と共に用いられるHPLC精製したアジュバントのアジュバント効果を示す。
図17は、抗原アルキル化gp70R−デルタで免疫化したときのHPLC精製キラヤサポニンと他のアジュバント、それの相互の結合及びそれ単独の効果の要約である。
図18は、抗原BSAで免疫したときのQA−18,QA−18H,QA−21及びQA−21Hのアジュバント効果の比較である。
図19は、リゾチームとQA−21の反応のSDS−ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動である。
図20は、リゾチーム単独(10μg)で免疫しアジュバントなしの;リゾチーム(10μg)とフリーの(共有結合のない)QA−21(16μg;モル比1:1)で免疫した;及びQA−21−リゾチーム複合体(11.6μg;モル比1:1)で免疫したマウスの総IgGタイターである。
図21は、リゾチーム単独(10μg);リゾチーム(10μg)及び遊離のQA−21(10μg);ならびにQA−21−リゾチーム複合体(11.6μg)及び遊離のQA−21(10μg)で免疫したマウスの総IgGタイターである。
図22は各々のマウスのグループで生成されたIgGのアイソタイプである。
図23は、グルクロネート・カルボキシル(23A);還元的アミノ化によるトリテルペンアルデヒド(23B);及びアルコールへの還元によるトリテルペンアルデヒド(23C)における変性サポニンQA−21のアジュバント活性を示す。
図24は、グルクロネート・カルボキシルに結合したエチレンジアミンによってビオチンに結合したQA−21のアジュバント活性を示す。
発明の要旨
アジュバント・サポニンは、南米の樹木Quillaja Saponaria Molinaの樹皮の水性エキスから見出され精製された。少くとも22のサポニン活性のピークが分離されている。最も多い精製キラヤサポニンはQA−7,QA−17,QA−18及びQA−21(またはそれぞれQS−7,QS−17,QS−18及びQS−21)として同定されている。これらのサポニンは高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)及び低圧液体クロマトグラフィーによって精製されている。これら4つのサポニン−はマウスでアジュバント効果をもつ。予期せぬことに、QA−21は、親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)で更に精製してQA−21−V1及びQA−21−V2の2つのピークに分解され、これらの別個の化合物であるとされている。本発明の実質的に純粋のサポニンは免疫アジュバントとして有用であり、そして粗サポニン製剤に伴う毒性のないところの以前に得られた不均一なサポニン製造に比べて、一層低い濃度で個々に免疫反応を高める。
本発明は抗原に結合したサポニンから成るサポニン/抗原結合体に関するもので、ここで該結合は動物の免疫反応を上昇させるサポニンの能力を実質的に妨害しない。
本発明はまた結合分子で変性したサポニンから成るところの変性サポニンに関するもので、ここで該変性は動物の免疫反応を上昇させるサポニンの能力を実質的に妨害しない。
本発明はまた、抗原に結合したサポニン加水分解生成物から成るサポニン加水分解物/抗原複合体に関するもので、ここで該結合は動物の免疫反応を上昇させるサポニン加水分解生成物の能力を実質的に妨害しない。
本発明はまた本発明のサポニン/抗原結合体、医薬的に許容される担体及び必要に応じ1つ又はそれ以上のアジュバントから成るワクチンに関するものである。好ましくは該アジュバントは本発明のサポニンである。
本発明はまた本発明のサポニン/抗原結合体を医薬的に許容される担体から成るワクチンに関するものである。
好ましい実施態様の説明
本発明のサポニンは、樹木Quillaja Saponaria Molinaから得ることができる。
ここで用いる「サポニン」という用語は、水溶液中で泡を形成し、多くの場合に溶血作用をもち、そして免疫アジュバント活性をもつところのグリコシド トリテルペノイド化合物を包含する。本発明はサポニンそれ自体のほかに、天然のそして医薬的に許容される塩や医薬的に許容される該導体を含む。「サポニン」という用語はまた、その生物学的に活性なフラグメントをも含む。
本発明はまた、一つ又はそれ以上の実質的に純粋なサポニン分画又はその加水分解物から成る組成物たとえば免疫組成物に関するものであり、またそれらの組成物のワクチンや免疫アジュバントとしての使用方法にも関する。
ここで使用する「免疫アジュバント」という用語は、個体に投与され又はインビボでテストした時に、抗原が投与された個体又はテスト系中に該抗原に対する免疫反応を増大させるような化合物を指す。いくつかの抗原に、単独投与では弱い免疫性であり、又は個体に免疫反応を発生させる濃度では該個体に対し毒性をもつ。免疫アジュバントは、抗原をもっと強力に免疫的にすることにより該抗原に対する個体の免疫反応を高めうる。このアジュバント効果はまた、該個体中の免疫反応をうるに必要な該抗原の用量を低下させうる。
サポニンは、もし抗原に結合すれば、たとえ抗原が非免疫的であつてもその抗原に対する免疫反応を顕著に高めうることが見出された。また、本発明のサポニン複合体は抗体の多くのサブタイプの生産を高める。予期せぬことには、本発明のサポニン/抗原複合物をサポニンアジュバント(抗原と結合していないもの)と一緒に投与すると、免疫反応が極めて大きく高められる。すなわち本発明は、これ迄不可能であったところの、ある抗原に対する活性免疫の発生をおこさせるという偉大な技術上の進歩をなしたものである。
本発明のサポニン複合物及びサポニンアジュバントの免疫活性は、当業者に公知の多くの方法の何れかによって決定され得る。本発明のワクチン及び/又はアジュバントの投与による特定の抗原に対する抗体のタイターの上昇は、免疫活性の判断に用いうる(Dalsgaard,K. (1978):Acta Veterinia Scandinavica,69:1−40,Scottほか:Int. Archs. Allergy Appl Immun. 77:409−412(1985))。簡単に云えば、ひとつのそのようなテストは、いろんな量の潜在的アジュバントと混合しうるサポニン/抗原複合物のDC−1マウスへの皮内注射を含む。セラを2週間後にマウスから採集し、ELISAによって抗免疫原抗体をテストする。
透析したメタノール可溶の樹皮エキスとQuil−Aのアジュバント効果を比べると、抗原BSAをサポニン製剤の存在下に投与したときの抗体タイターはBSAをPBS単独で投与した時よりも2倍大きいことがわかった。樹皮エキスは、12μgの炭水化物(アンスロンで試験)又はそれ以上のアジュバント用量で投与すると、良好なアジュバント活性を示した。Quil−Aに対するアジュバント反応は樹皮に対してよりも弱いが、9〜23μgの用量の炭水化物では明瞭である。炭水化物の量(グルコースを標準物質とし、アンスロンにより定量)はこれらの粗アジュバントエキスの乾燥量の大凡30%である。
「実質的に純粋」という用語、天然状態のサポニンと通常共存する化合物を実質的に含んでおらず、そして一定かつ再現可能のクロマトグラフ反応、溶離プロフィル及び生物活性をもつことを意味する。「実質的に純粋」という用語は、天然又は合成されたところのサポニンと他の化合物との混合物を除外することを意味しない。
好ましくは、実質的に純粋なサポニンは次の標準の一つ又はそれ以上にまで精製する。1)クロロホルム/メタノール/水(60/45/10,v/v/v)中の40mM酢酸の溶媒系でのシリカゲルTLC(EM ScienceHPTLC Si60)上で、唯ひとつの主要炭水化物着色バンドとして出現する。2)メタノール/水(70/30,v/v)の溶媒系での逆相TLC(EM ScienceシリカゲルRP−8)上で、唯ひとつの主要炭水化物着色バンドとして出現する。3)メタノール/水(58/42,v/v)中の40mM酢酸のVydac C4(粒子径5μm,330Å細孔,4.6mmID×25cmL)上の逆相HPLCで唯ひとつの主要ピークとして出現する。
QA−21とは、メタノール/水(58/42,v/v)中の40mM酢酸中のVydac C4(5μm粒子径,330Å細孔,4.6mmID×25cmL)上の逆相HPLCで単一のピークとして現われるQA−21−V1及びQA−21−V2成分の混合物をあらわす。これら成分の分画は、さらに精製した成分について行われる実験や結果を述べる時には、特にQA−21−V1及びQA−21−V2と呼ばれる。
好ましい実施態様において、本発明のサポニンはQuillaja Saponaria Molina樹皮から精製する。Quillaja Saponaria Molinaの樹皮の水性エキスを水に対して透析する。透析したエキスは凍結乾燥し、メタノールで抽出し、メタノール可能エキスはさらにシリカゲルクロマト及び逆相高圧液体クロマト(RP−HPLC)で分画する。個々のサポニンを、実施例1に述べるように逆相HPLCで分離する。少くとも22のピーク(QA−1〜QA−22と命名)が分離される。各ピークは図2に示す炭水化物ピークに対応しており、逆相薄層クロマト上では唯一の単一バンドを与える。個々の成分はVydac C4HPLCカラム上で次のような保持時間を示す。
免疫アジュバント活性は、外来投与抗原に対しマウス中での免疫反応を高める精製サポニンの能力を測定してテストする。本発明の精製サポニンは、粗エキスよりも低い用量でアジュバント効果を示す。特に、樹皮中に多くあるサポニン(QA−7,QA−17,QA−18及びQA−21)は、4.5μg又はそれ以下の用量の炭水化物(アンスロンでのアッセイ)でアジュバント活性を示す。精製したサポニンは、炭水化物含量、逆相及び通常相TLC,UV,赤外,NMRスペクトル及びFAB−MSによりさらに特徴づけられる。
更に好ましい精製サポニンの幾つかの205nmにおけるメタノール中の1%(w/v)溶液における大凡の吸光係数は次のとおりである。
炭水化物含量はいくつかの例でサポニンの定量に用いる。炭水化物アッセイは、実施例1のようにグルコースを標準物質として用いるScott及びMelvinのアンスロン法(Anal. Chem. 25:1656(1953))で行なった。このアッセイは、特定製造の乾燥重量をアンスロン法で求められるように、精製サポニン1mg(乾燥重量)あたりのアンスロン反応(グルコース当量であらわす)の比を測定するのに用いられた。いろんなサポニンについてのアンスロンとの反応の差は、このアッセイでは異ったモノサッカライドは異なる反応をするために量よりはむしろ炭化水素の組成によるものであろう、という事に注意すること。
実質的に純粋なQA−7サポニンは次の点により特徴づけられる。免疫アジュバント活性をもつこと;乾燥重量あたり約35%の炭水化物(アンスロンでアッセイ)を含むこと;メタノール/水(58/42;v/v)中の40mM酢酸溶媒中の5μmの粒子径,33Å細孔,4.6mmID×25mLのVydac C4カラム上のRP−HPLCで、1ml/分の流速で約9〜10分の保持時間の、205−210nmのuv吸収極大をもつこと、但し50〜80%メタノールの勾配溶離で40mM酢酸溶媒中、5μm粒子径,330Å細孔,10mmID×25mLをもつVydac C4カラムから52−53%メタノールで溶離;水中で約0.06%,そしてリン酸緩衝食塩水で0.07%の臨界ミセル濃度をもつこと;200μg/ml又はそれ以下の濃度ではヒツジ赤血球細胞に対して検出できる溶血をおこさぬこと;そして末端ラムノース,末端キシロース,末端グルコース,末端ガラクトース,3−キシロース,3,4−ラムノース,2,3−フコース及び2,3−グルクロン酸及びアピオース(結合は決定せず)の単糖類残渣を含んでいること。
実質的に純粋のQA−17サポニンは次の点で特徴づけられる。アジュバント活性をもっていること;乾燥重量あたり約29%の炭水化物(アンスロンでアッセイ)を含むこと;205−210nmの紫外吸収極大をもつこと、但し50−80%メタノールからの勾配溶離で、5μm粒子径,330Å細孔,10mmID×25mLのVydac C4カラム(40mM酢酸中)63−64%メタノールで溶離し、1ml/分の流速でメタノール/水(58/42,v/v)中の40mM酢酸中の5μm粒子径,330Å細孔,4.6mmID×25mLのVydac C4カラム上のRP−HPLC上で約35分の保持時間をもつこと;水中で0.06%(w/v)そして燐酸塩緩衝食塩水中で0.03%(w/v)の臨界ミセル濃度をもつこと;25μg/ml又はそれ以上でヒツジ赤血球細胞に溶血をおこさぬこと;そして、単糖類残渣として末端ラムノース,末端キシロース,2−フコース,3−キシロース,3,4−ラムノース,2,3−グルクロン酸,末端グルコース,2−アラビノース,末端ガラクトース及びアピオース(結合は未決定)を含んでいること。
実質的に純粋なQA−18サポニンは次のように特徴づけられる。免疫アジュバント活性をもっていること;乾燥重量あたり約25−26%の炭水化物(アンスロンでアッセイ)を含んでいること;205−210nmのUV吸収極大をもっていること;但し5μm粒子径,330Å細孔,10mmID×25mLで40mMの酢酸溶媒中のVydac C4カラムを50−80%メタノールから勾配溶離で、64−65%メタノールで溶離し、1ml/分の流速で、メタノール/水(58/42,v/v)中の40mM酢酸溶媒中の5μm粒子径,330Å細孔,4.6mmID×25mLのVydac C4カラム上のRP−HPLCで約38分の保持時間があること;水中で0.04%(w/v)そして燐酸塩緩衝食塩水中で0.02%(w/v)の臨界ミセル濃度をもつこと;25μg/ml又はそれ以上でヒツジ赤血球細胞に溶血をおこさぬこと;そして次の単糖類末端アラビノース,末端アピオース,末端キシロール,末端グルコース,末端ガラクトース,2−フコース,3−キシロース,3,4−ラムノース及び2,3−グルクロン酸を含むこと。
実質的に純粋なQA−21は次によって特徴づけられる。免疫アジュバント活性をもつこと;乾燥重量あたり約22%炭水化物(アンスロンでアッセイ)を含むこと;205−210nmのUV吸収極大をもつこと、但し50−80%勾配溶離で40mM酢酸中の5μm粒子径,330Å細孔,10mmID×25mLのVydac C4カラムから69−70%メタノールで溶離し、但し1ml/分の流速でメタノール/水(58:42;v/v)中の40mM酢酸中の5μm粒子径,330Å細孔,4.6mmID×25mLのVydac C4カラム上のRP−HPLCで約51分の保持時間;水中で約0.03%(w/v)そして燐酸塩緩衝食塩水内で0.02%(w/v)の臨界ミセル濃度をもつこと;そして25μg/ml及びそれ以上の濃度でヒツジ赤血球細胞に溶血をおこさぬこと。成分分画すなわち実質的に純粋なQA−21−V1とQA−21−V2はFAB−MSで同一のスペクトルと分子量を示す。それらは、QA−21−V1は末端アピオースをもち、それはQA−21−V2ではキシロースである(従ってそれは2つのキシロースがあり、アピオースはない)という点のみで異っている。これら2成分はさらに単糖類末端アラビノース,末端アピオース,末端キシロース,4−ラムノース,末端ガラクトース,2−フコース,3−キシロース及び2,3−グルクロン酸をもつ、サポニンの構造は以下の実施例で更にくわしく示す。
本発明の複合物は、個体中の抗原に活性免疫を発生させるワクチンとして有用である。好ましくはそれら個体はヒトであるがそれには限定されない。発明のワクチンの有益な効果を示すどんな動物もまた、クレームされた本発明によって処理できる動物の範囲に入る精製したサポニンは、投与すべき抗原に対して広範囲の比率で、広範囲の用量で投与したときにアジュバント効果を示す。一つの態様ではサポニンを、アジュバント対免疫原(w/w)比3.0又はそれ以下(好ましくは1.0またはそれ以下)の比で投与する。
精製したサポニン及びサポニン−抗原複合体は個々に、又は他の実質的に純粋なアジュバントと共に投与し、抗原に免疫反応をおこさせる。さらに本発明のサポニン/抗原複合体は単一サポニン又は抗原に結合したサポニン混合物より成り得る。抗原に結合したサポニンの混合物は特製サポニン又はサポニンの粗混合物であって良い。粗サポニン混合物は毒性がありふつうは動物に投与しないけれども、サポニン−抗原複合物の生成は組成物の毒性減少に役立ち、即ち複合物は好ましくない効果をおこすことなく動物に投与できる。
本発明で有効なサポニン混合物のなかには分画QA−7とQA−17;QA−7とQA−18;QA−17とQA−18;又はQA−7,QA−17とQA−18の同時投与がある。精製サポニンとその複合物はまた非サポニンアジュバントと共に投与できる。本発明で有用なそのような非サポニンアジュバントは次のようである。即ちオイルアジュバント(たとえば、フロイントの完全及び不完全),リポソーム,ミネラル塩(たとえばAlK(SO4)2,AlNa(SO4)2,AlNH4(SO4),シリカ,明ばん,Al(OH)3,Ca3(PO4)2,カオリン及び炭素),ポリヌクレオチド(たとえばポリIC及びポリAU酸)及び特定の天然物(たとえばMycobacterium tuberculosisからのロウDや、Corynebacterium parvum, Bordetella pertussis及び多くのBrucella属に見出される物質),ウシ血清アルブミン,ジフテリアトキソイド,テタヌストキソイド,エデスチン,かぎ穴リンペットヘモシアニン,シュードモナルトキシンA,コレラゲノイド,コレラトキシン,百日せきトキシン,ウイルス蛋白,及び真核生物蛋白たとえばインターフェロン,インターロイキン及び腫瘍壊死因子。そのような蛋白は当業者に公知の方法で天然又は組換原料から入手できる。組換原料から入手したときは、非サポニンアジュバントは、分子の少くとも免疫原部分から成る蛋白部分から成っている。本発明に用いる他の公知の免疫原高分子には次のようなものであるが、これに限定されるものではない。すなわち多糖類,tRNA,非代謝性合成高分子たとえばポリビニルアミン,ポリメタクリル酸,ポリビニルピロリドン,4',4'−ジアミノジフェニル−メタン−3,3'−ジカルボン酸と4−ニトロ−2−アミノ安息香酸の混合共重合物(比較的高い分子量の)(Sela. M:Science,166:1365−1374(1969))又は糖脂質,脂質又は炭水化物。
本発明のサポニンは抗原と直接に結合しても、または結合基を介して結合してもよい。「結合基」という用語は、サポニン又はサポニン混合物を抗原に共有的に結合する用いられ、そして生体内で抗原特異的な抗体の生成を妨げぬような1つ又はそれ以上の二機能性分子をあらわす。結合基は、その結合点が生体内の抗原特異的な抗体の生成を妨げず、そして活性免疫の発生を妨げぬ限り、サポニンのいかなる位置にも結合できる。
サポニンを抗原に結合するのに用いる結合基の例は次のようである。
典型的には、サポニンはサポニンの成分のグルクロン酸の活性エステルの生成により抗原に結合され、次いで抗原の求核機能基と活性エステル反応する。本発明に用いられる活性エステルの例はN−ヒドロキシサクシニシド,スルホ−N−ヒドロキシサクシニシド,ヒドロキシベンゾトリアゾールやp−ニトロフェノールのグルクロン酸塩である。これら活性エステルは、たとえばジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC),1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド(EDC)や1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド・メケオダイド(EDCI)のような脱水剤の存在下に、サポニンのカルボキシル基をアルコールと反応させて作る。複合物を作るためのEDCの使用は、アメリカ特許第4,526,714号(Feijenほか)及びPCT出願公告WO91/01750及びArnon,R. ほか:Proc. Natl. Acad. Sci. (USA)77:6769−6722(1980)に開示され、それら開示は全て本明細書に包含される。ついで抗原を水溶液中で活性エステルと混合して複合物とする。
サポニンと抗原の間の結合基を所望のときは、サポニン・グルクロネートの活性エステルを上述のようにして作り、そして結合基たとえば2−アミノエタノール,アルキレンジアミン,アミノ酸たとえばグリシン又はカルボキシが保護されたアミノ酸たとえばグリシンのtert−ブチルエステルと反応させる。もしも結合基が、保護されたカルボキシ基をもっているときは、その保護基を除き、結合基の活性エステルとする(上述のようにして)。この活性エステルを次いで抗原と反応して複合物とする。又は抗原を無水コハク酸と反応させ抗原−コハク酸塩複合物とし、これを結合基上に遊離のアミノ又はヒドロキシ基をもつサポニン−結合基誘導体と、EDC又はEDCIの存在下に縮合させる。WO91/01750参照。
ひとたびグルクロネート・カルボキシが結合基と反応すれば、サポニンはアジュバント活性を保持する。トリテルペンアルデヒドにおいて還元的アルキル化によって作られたサポニン誘導体は、40μgより低い用量ではアジュバント活性がよい。しかしナトリウム・ボロヒドリドによってアルコールにまで還元されたサポニントリテルペンアルデヒドの誘導体は若干の活性をもっている。
結合基と遊離アミノ基(アルキルレンジアミンから誘導されたもの)と、そして遊離アミノ基と異節二機能架橋(たとえばスルホサクシニミジル 4−(N−マレイミドシクロヘキサン)−1−カルボキシレート(それは蛋白抗原の遊離スルフヒドリル基と反応する)をもつサポニン複合物をつくることもできる。
サポニンはまた、キラヤ酸残基のアルデヒド基とアミノ結合基と反応させて中間体のイミン複合物をつくり、次いでナトリウム・ボロヒドリド又はナトリウム・シアノボロヒドリドで還元して結合基に結合させることができる。そのような結合基の例はアミノアルコール、たとえば2−アミノエタノール及びジアミノ化合物たとえばエチレンジアミン,1,2−プロピレンジアミン,1,5−ペンタンジアミン,1,6−ヘキサンジアミン等である。次いで抗原を、まず無水コハク酸とでコハク酸化した誘導体とし、それからDCC,EDC又はEDCIと共にサポニン−結合基複合物と縮合して結合基とカップリングさせる。
さらに、サポニンは過ヨード酸塩で酸化し、得たジアルデヒドは上記のアミノアルコール又はジアミノ化合物と縮合させてもよい。次いで結合基の遊離水酸基やアミノ基は、DCC,EDC又はEDCIの存在下に抗原のサクシネート誘導体と縮合してもよい。
サポニン分子と抗原分子の比は、抗原の分子量や、サポニンに結合できる抗原上の結合部位の数や、特定のサポニンの抗原特性によって大幅に変りうる。一般にサポニン分子と抗原分子の比は約0.1:1から約10:1であり、好ましくはその比は約1:1から約3:1の範囲である。
本発明のサポニンは、いかなる抗原にも免疫反応を高めるために用いうる。本発明の免疫反応生起組成物に適当な典型的な抗原は次のものから誘導された抗原を含む。すなわちウイルス、たとえばインフルエンザ、ネコ白血病ウイルス,ネコ免疫不全ウイルス,HIV−1,HIV−2,狂犬病,ハシカ,B型肝炎,又は足や口の病気;バクテリア,たとえば脾脱疽,ジフテリア,ライム(Lyme)病,又は結核;又は原生動物たとえばBabeosis bovis又はPlasmodium。抗原は蛋白,ペプチド又は多糖類であってよい。蛋白やペプチドは天然材料から精製してもよく固相合成手段で合成してもよく又は遺伝子組換え手段で得てもよい。
本発明の精製サポニンの用途の特定の一例は、免疫反応をgp70組換え蛋白にまで高めることである。ひとつのgp70組換え蛋白は、FeLVgp70のエンベロープ蛋白のポリペプチド部分を含む抗原である。この組換え抗原はgp70R,rec−gp70又はRgp70と呼ばれる。FeLVgp70のポリペプチド部分を40のアミノ−末端アミノ酸(Rgp70−デルタと呼ぶ)又はFeLVサブグループAのp15eエンベロープ蛋白の全アミノ酸配列(Rgp90と呼ぶ)を共に含む他の抗原蛋白は、組換えDNA技術で作られる。これらの組換えgp70−含有ポリペプチド,gp70R,gp70R−デルタ及びgp90Rは、以下において一括してgp70−含有蛋白と呼ぶ。gp70−含有蛋白という用語は、天然産のgp70−含有蛋白及びその同族体と同じアミノ酸配列をもつポリペプチドを含む。「同族体」という用語は、1つ又はそれ以上のアミノ酸の付加、削除又は置換によって該ポリペプチドがgp70蛋白の生物活性を実質的にもつ点においてgp70,gp70−デルタ又はgp90と異る蛋白やポリペプチドを含む。
本発明の方法で有用な化合物の投与は、非経口,静脈内,筋肉内,皮下,鼻内その他の適当な手段で行いうる。用量は年令,体重,もし同時に治療をしておればそのタイプ及び投与抗原の性質などに依存しうる。ふつうはサポニン/抗原複合物は個体の体重について約0.01〜約1.0mg/kgの用量で投与する。初期用量にくらべ、免疫反応を示す約4週間あとの用量は増大してもよい。それ以上の大用量を投与してもよい。
本発明方法で有用な有効化合物はカプセル,溶液,経口用の懸濁液又はエリキシル,又は無菌の液状たとえば溶液の懸濁液の形で用いうる。本発明の方法に用いる化合物が本発明の用途のための適当な溶解度をもつような不活性担体、たとえば食塩水,リン酸塩緩衝食塩水その他が好ましく用いられる。
本発明のサポニン/抗原複合物はまたアメリカ特許第4,235,877号(Fullerton)のリポソーム中に包接した形で用いうる。
本発明はまた、第1のコンテナーは本発明のサポニン/抗原複合物を含むような1つ又はそれ以上のコンテナーをもつ仕切られた担体から成る個体用の免疫用キットをも提供する。このキットはまた、上述のサポニンアジュバント又は他のアジュバントを含む少なくとも1コの他のコンテナー手段をも含みうる。
さて本発明を一般的に説明してきたので、次に実施例によってさらにくわしく説明する。これらは特に述べぬ限り本発明を限定するものでない。
実施例1.Quillaja saponaria Molina樹皮エキスの予備製剤。
キラヤ・サポナリア樹皮を過剰の水(10%w/v)かくはんしてサポニンを抽出する。水性エキスを濾過し0.1NaN3中に貯える。このエキス150mlを20,000xgで30分遠心分離し、残りの樹皮分を除く、淡褐色の上澄を凍結乾燥し、16mlの水にとかし、1N酢酸160μlを加えてpHを4より低くする。この溶液を12,000MW除去用の透析管に入れ、水1リットルに透析する。8時間透析のあと水を替え、透析を一夜つづける。第1と第2の透析サイクルのあと透析物のサンプルを除去する。透析したエキスを凍結乾燥し、60℃で15分間メタノール40mlで抽出し、1000xgで10分間遠心し不溶物を沈下させる。これをメタノールで更に2回抽出する。メタノール抽出液を貯え、回転エバポレーターで蒸発乾固し、メタノール5.5mlに再びとかし0.2μナイロン66メッシュで濾過して残った不溶物を除く。分画を70%メタノール/30%水の溶媒系中のC8プレート(EM. ScienceRP−TLC,C8)上の逆相薄層クロマト(RP−TLC)又はn−ブタノール,エタノール,水及びアンモニア(30/60/29/21,v/v/v/v)の溶媒系中のシリカゲル60TLCプレート上の順相TLCにより分析する。炭化水素のバンドをBial試薬で可視化する。これは硫酸炭化法で上昇した感度をもつ硫酸炭化で検出可能のすべての主要バンドを検出するものである。Bial試薬での炭水化物の着色はTLCプレート上の検出試薬としてふつうに用いられる。すべての主要バンドはグリコシル化されていた。
透析によって、主な炭水化物含有バンド(RF=0.82,EMScience RPTLC,C8,メタノール/水(70/30,v/v)中)及び若干の微小成分は除かれた。また透析により、280及び310nmに強い吸収極大をもつ成分も除かれた。炭水化物の約80%(アンスロンでのアッセイ)が透析で除かれたが、溶血活性の約95%は透析中も残っていた。
殆どのサポニンアジュバントは洗剤活性、たとえば赤血球細胞の溶血作用をもっているので溶血活性の保持はアジュバントサポニンの保持の大まかな表示となる。いくつかのバンドは透析により残され、洗剤性質を示す。メタノールは、ひとつのTLCバンド(RF=0,逆相及び順相ならびにシリカTLCプレート上で)を除き、透析エキス中のすべてのTLCバンドを溶かした。メタノール不溶物は赤褐色であった。メタノール可溶物は凍結乾燥後、白色となった。
炭水化物濃度はScott及びMelvin(Anal. Chem. 25:1656(1953))の方法で定量した。かんたんに云うと、検査すべき水性サンプル又は標準炭水化物液(450μl)としてのグルコースを、硫酸中0.2%(w/v)アセトン900μlと混ぜ、90−100℃で16分培養する。吸収は625nmでみた。グルコースを標準物質として使った。
サンプルの溶血活性は次のようにして測定した。サンプルを、連続した列(10μl/ウエル)のリン酸緩衝食塩水中の1:2稀釈で、丸底マイクロタイタープレート中で稀釈した。Alsevers液(Hazelton)中の通常のウサギの血液10μlを各ウエルに加え混合した。プレートを室温で1時間培養し、Sorvall RT6000中でプレートを遠心して、未溶血細胞を沈降させた。溶血のないことを、ウエルの底の未溶血細胞のペレットの存在によって決定した。
実施例2. 透析したメタノール可溶の樹皮エキスと、スーパーフォス(Superfos)のQuil−Aの、TLCとHPLCによる比較
スーパーフォスのQuil−Aと、実施例1の透析したメタノール可溶の樹皮成分を、実施例1の逆相TLCで比較した。透析及びメタノールで溶解後の樹皮エキス中のすべてのバンドはQuil−A中に存在していた。さらにQuil−Aは逆相TLCプレート上でrf=0のバンドをもっていた。この成分は上述のようにメタノール溶解で除去した。透析したメタノール可溶の樹皮エキスとQuil−Aの組成の類似性はHPLCで確認した。樹皮の個々の成分は、メタノール/水(58/42,v/v)中の40mM酢酸中の5μm粒子径,330Å細孔,4.6mmID×25cmLのVydac C4上の逆相HPLCで分離できた。個々の分画の屈折率を求めた。図1はRP−HPLCからのピークの屈折率プロフィル(保持時間の増加の順にQA−1からQA−22へラベル)をあらわす。樹皮中の各ピークとスーパーフォスのQuil−Aの相対比率を下の表1に示す。
個々のピークは逆相TLCプレート上の単一のTLCバンドと対応する。図2の他の代表的な実験は、屈折率はまた炭水化物のピークに対応することを示し、これにすべての主要な樹皮エキス成分は配糖体であることを表わす(アンスロンアッセイによる炭水化物のためにアッセイしたHPLC分画)。
透析したメタノール可溶の樹皮エキスとQuil−AはこのHPLC系で直接比較した。個々の成分は保持時間で同定した。透析したメタノール可溶の樹皮エキス中のすべてのピークはまたQuil−A中にも同じ比率で存在した。但しQuil−AのQA−8成分とQA−17成分の比率は樹皮中のそれらよりも夫々高くそして低かった。図3は半調製Vydac C4(10mmID×25cmL,細孔サイズ330Å,粒子径5μm)を用いての透析したメタノール可溶の樹皮エキスとスーパーフォス Quil−Aの比較をあらわす。サンプルは40mM酢酸中の50%メタノールにロードさせ、そして40mM酢酸中のメタノール勾配(図3に示す)を用いてサンプルを溶離した。吸収は214nmでしらべた。
キラヤ樹皮のいろんなサンプルを抽出しHPLCで分析した。ピークの相対比には若干の変動があったが、同じピークがいつも出現した。比率の変動が抽出工程の効率の違いによるのか又は樹皮原料の相違によるのかは今のところ不明である。
Quil−Aは容易に入手でき樹皮エキスと組成が類似しているので、Quil−Aをmg量の材料を生成するのに使った。BSAを抗原として用いてのマウスでのアジュバント活性は、炭水化物の3.0μgの用量(アンスロンアッセイで定量)で4,7,11,12,15,16,17,18,19及び20のピーク(表2)と共に見出された。セラ稀釈1:10における抗原特異的抗体結合(2週間の前免疫,ELISAで定量)による吸収はアジュバント活性の半定量結果を与えた(アジュバントなしで免疫したマウスの0.07から、QA−20存在下で免疫したマウスの1.24までの範囲)。
樹皮エキスQA−7,QA−17,QA−18及びQA−21の主なピークにより、これら4成分は下の実施例3及び4に示すように大スケールで精製した。
実施例3. シリカクロマトグラフィーによる精製
Quil−A 1gをメタノール75mlにけんだくし、60℃に15分熱し、濾過した。不溶物を再びメタノール50mlを60℃で抽出し濾過した。濾液を回転エバポレーターで蒸発乾固した。LichropepシリカSi60カラム(E.M Science,25mmID×310mmL,粒子径40−63μm)をクロロホルム/メタノール/水(62/32/6,v/v/v)中30mM酢酸中で前平衡化した。
サポニンの粗混合物である乾燥したQuil−Aをカラム溶媒5mlにとかし、1ml/分の流速でこの溶媒系中でシリカ中を無勾配で溶離した。QA−7,QA−17,QA−18及びQA−21分画のモニターのために炭水化物分析、TLC及びHPLCを用いた。19〜30の分画がQA−21に富んでおり、QA−21をさらに精製するためにプールした。31〜60の分画はQA−8とQA−18に富んでおり、これら成分の精製のためにプールした。85−104の分画はQA−7とQA−17に富んでおり、これら成分の精製のためにプールした。これらプールしたものを精製に先立ちフラッシュ蒸発させた。
実施例4 逆相HPLCによる精製
シリカ分画が図4のVydacC4(10mmID×25cmL)上の半調製逆相HPLCにより更に精製した。シリカ分画(10−20mg)を適当な溶媒にとかし、VydacC4に負荷した。分画を溶離するためにメタノール勾配を用いた。流速は毎分3mlとした。分画に214nmの吸収でモニターした。図4Bは、58%メタノール/42%水中での40mM酢酸中の非勾配分離を用いてのシリカ分画19−30からQA−21の精製を示す。65〜72分の保持時間で溶離した分画は、逆相TLCによりQA−21と同定され、ひきつづく特性化のためにプールした。図4Cは、40mM酢酸(50−56%メタノール/0〜10分;56−69%メタノール/10〜79分)中のメタノール勾配を用いてのシリカ分画31〜60からのQA−18の精製を示す。46〜48分の間の保持時間で溶離した分画に、逆相TLCによりQA−18として同定され、ひきつづく特性化のためにプールした。図4Dは、図4Cと同じ勾配を用いてのシリカ分画85〜104からのQA−7及びQA−17の精製を示す。21〜23分の間の保持時間で溶離した分画は、逆相TLCによってQA−7と同定され、ひきつづく特性化のためにプールした。44−46分の間の保持時間で溶離した分画は、逆相TLCによりQA−17と同定され、ひきつづく特性化のためにプールした。
実施例5 QA−21のHILICによる精製
HPLCで純粋となったQA−21(図5A)を、水/アセトニトリル(15/85%,v/v)中の10mMトリエチルアミンホスフェート(TEAP)(pH6.0)中に3mg/mlでとかした。50μlのアリコートを、同じ溶媒(15%H2O/85%アセトニトリル中10mM TEAP)中で平衡化したポリLC PHEAカラム(粒子径5μm,4.6mmID×20mmL)上に負荷した。このサンプルを、1ml/分の流速で無勾配で溶離し、214nmの吸収でモニターした。2つのピークが得られ、そのひとつは6.4分(QA−21−V1)そして第二のものは6.9分(QA−21−V2)。第1ピークと第2ピークの比は典型的に3:2(図5B)であった。半調製スケールのPHEAカラムを用い、分析用のサンプルを作った。
実施例6 シリカ及び逆相クロマトグラフィーで精製したアジュバントの精製と特性化
(純度)図6は逆相TLC(E. M. Science RP−TLC,C8[溶媒は70%メタノール,可視化用スプレーはBial試薬])をあらわす。QA−7,QA−17,QA−18及びQA−21の各5μg(実施例3及び4のようにして精製したもの)をクロマト化する。各アジュバントはこのTLC系で単一バンドとして現れる。
図6Bは、EM Si60HPTLCプレート(溶媒:クロロホルム/メタノール/水(60/45/10,v/v/v)中の40mM酢酸;可視化スプレー:Bialの試薬)上のQA−7,QA−17,QA−18,QA−21及びQuil−Aを示す。実施例3及び4で精製したQA−7,QA−17,QA−18及びQA−21の各2μg及び粗サポニンであるQuil−Aの20μgをクロマト処理する。HPLCで精製した材料はまず単一バンドとして現れるが、実施例5で述べたように、QA−21は次いで二成分に分離する。
(分光法)メタノール中のQA−7,QA−17,QA−18及びQA−21のUVスペクトルはそれぞれ図7A〜Dに示すとおりである。Dalsgaard(Acta Veterinaria Scandinavica Supp. 69:1〜40(1978))のアジュバント分画は280nmに吸収ピークがある。しかし本発明のHPLC精製したフラクションは280nmにピークがなく、260nmに中心のショルダーをもつ200−220nmの範囲に主なピークがある。
フーリエ変換赤外共鳴(FT−IR)スペクトルはアジュバント間のわずかの差を示し、これはそれらのすべてが同一の機能基をもつことを示唆する。構造の同定はIRからは出来ないけれども、スペクトル値はDalsgaard(既出)が示唆したようなカルボキシル基の存在と一致する。
CD3OD中の精製サポニンの250MHzにおける1H−NMRは、精製サポニンQA−7(図8A)、QA−18(図8B)及びQA−21(図8C)の複雑な性質を表わしている。4.1〜5.4ppmの間のシグナルは、単糖類のアノマープロトンからの複数のシグナルの存在を明らかに示し、これは単糖類の多様性の存在を示している。しかしサポニンのNMRスペクトルは余りにも複雑で、構造決定ができない。
精製サポニンQA−7,QA−17及びQA−21(それぞれ図9A,9B及び9C)のMS−FABは夫々1870,2310及び1988の大凡の擬分子イオン質量を示す。QA−7,QA−17及びQA−21の反復してのMS−FAB(データは示してない)は夫々1855,2321及び2021のイオン質量を示すが、これが真のイオン質量であろう。MS−FABはまた、更に精製したサポニンQA−21−V1及びQA−21−V2(それぞれ図9E及び9F)についても行われ、それぞれについて2012の大凡の擬分子イオン質量を示した。これは予期した通りである。何故ならばこの2つの構造に末端ペントース(それぞれアピオースとキシロース)でのみ相異しているからである。精製サポニンQA−18(図9C)のMS−FABは2174のイオン質量を示す。これらの分子量は8〜10コの単糖類残基に結合したトリテルペンに予想されたものと一致しており、そしてメタノール中の精製サポニンのサイズ排除HPLCで定められたモノマー分子量と同じ範囲である(Zorbax PSM 60Siカラム,25cm×6.2mm,流速1ml/分,分子量標準物質=18β−グリシルレチン酸及びジネノサイドRb1)。このことはQA−7,QA−17,QA−18及びQA−21の大凡の分子量がそれぞれ2600,2400,1800及び2400であることを示す。FAB−MSとサイズ排除HPLCの差は、サポニンと分子量標準物質間の形状の差に起因するものであろう。
(炭水化物組成)後記の表3は精製サポニンQA−7,QA−17,QA−18,QA−21及びQA−19の炭水化物組成と、結合分析を示す。後記の表4はさらに精製したサポニンQA−21−V1及びQA−21−V2の炭水化物組成と結合分析を示す。サポニン中の炭水化物を、0.1mg/mlのイノシトールを含む2Nのトリフルオロ酢酸0.3ml中で0.2mgのサポニンを120℃で2時間加熱してアルジトール・アセテートに変換した。酢を空気の流れの中で除き、残った酢をイソプロパノール(2×0.25ml)の添加で除き、次いで空気を吹き込んで乾燥する。得られた乾燥残渣を、10mg/mlのナトリウム・ボロジウテライドを含む1M水酸化アンモニウム(0.25ml)中にとかし、室温で1時間保つ。氷酢酸0.1mlを加え、この液に空気を吹きこんで乾燥させる。残ったボレートを、メタノール中の10%酢酸(3×0.25ml)及び最終的にメタノール(2×0.25ml)で共蒸留して除去する。無水酢酸0.1ml及びピリジン0.1ml中の乾燥残渣を120℃で20分加熱する。トルエン9.02mlを冷液に加え、溶媒を空気流下に除く。このトルエン添加及びピリジンと無水酢酸除去の操作を2度くりかえす。得た残渣をジクロロメタン0.5mlにとり、水0.5mlで抽出する。有機相をきれいなチューブに移し乾燥する。GLC(ガス液体クロマト)による分析の前に、残渣をアセトン0.1mlにとかす。アルジトール・アセテートを、SP2330毛管GLCカラム(30m×0.25mm)上で、235℃の炎イオン化検出法で分析する。サポニン中の炭水化物を、50μg/mlイノシトールを含むメタノール性HCl0.3ml中でサンプル0.1mgを80℃で16時間熱してトリメチルシリル化されたメチルグルコシドに変える。サンプルに空気を吹きこんで乾燥させ、残った酸を3級ブチルアルコール(2×0.25ml)の添加により除去し次いで空気流で乾燥する。乾燥残渣を、ピリジン/ヘキサメチルジシラザン/トリメチルクロロシラン(5/1/0.5,v/v,「トリシル」)を含む溶液0.2mlにとかし80℃で2時間加熱する。シリル化試薬を室温でとばし、残渣をヘキサン1mlにとかす。不溶残渣をグラスウールプラグを用いての濾過で除去し、濾液を清潔なチューブに移し蒸発させる。残渣をGLC分析に先立ってヘキサン0.2mlにとかす。トリメチルシリル化したメチルグルコシドを、溶融シリカDB1(25m×0.25mm)のGLCカラム上で160℃で3分間、次いで2℃/分の割合で200℃とし、そして10℃/分の割合で260℃とし水素炎イオン検出器で分析する。
グリコシド結合の分析は次のようにして行う。乾燥ジメチルスルホキシド0.2mlにとかしたサンプル約1mgにカリウムジメチルスルフィニル陰イオン2Mの0.2mlを加え、混合物をアルゴン下に12時間かくはんする。反応混合物を氷冷し、ヨードメチル0.2mlを滴下する。得た混合物を音波処理し室温で1時間かくはんする。メチル化された材料を、エタノール20ml,アセトニトリル8ml及び水10mlでコンディション化したSep−Pak C18カートリッジを用いて単離する。水1mlをメチル化反応混合物を加え、過剰のヨードメチルを、溶液に窒素を通じて除去する。清澄な液を、水8ml及び20%アセトニトリル5mlで洗ったカートリッジに入れる。メチル化物をカートリッジから100%アセトニトリル4ml及びエタノール4mlで溶離する。溶媒を空気流で除く。乾燥したメチル化物を室温で1時間、「スーパー・ジュテライド」液0.31mlで処理してウロン酸残基を対応するヘキソーズに還元する。過剰の試薬を氷酢酸1mlで分解したあと、反応混合物を100%酢酸/メタノールを用い空気で乾燥させ、もう2回空気を吹き込み乾燥させる。得られたメタノール中の還元メチル化物をダウエックス50W(H+)のカラムを通し、得た流出液を乾燥する。還元したメチル化物を上のセクション1で述べたようにしてメチル化アルジトールとしGLCで分析する。すなわちSP2330熔融シリカカラム(30m×0.25mm)、170℃で3分、次いで4℃/分で240℃とする。次いでGLC−MSにかける。すなわちSP2330熔融シリカカラム(30m×0.25mm),80℃で2分、次いで30℃/分で170℃まで、次いで4℃/分で240℃まで、次いで240℃に10分保持。ヒューレットパッカードMSDによる質量分析。
炭水化物組成の類似にもかかわらず、微妙な相異が個々のサポニンを区別した。即ちたとえばQA−7は他のサポニンに比べてアラビノーズがない。
図10は、提案構造とこれらの化合物のうち3個の間の関係を示す。基本的構造、そこで報告されたQA−17の分子量と炭水化物組成にマッチするところの、キラヤ・サポナリアからの化合物(QSIIIと命名されている)の構造決定をしたヒグチ(Phytochemistry,27:1165−1168(1988))の報告からとった。QA−18及びQA−21に対するこの構造からの変化は、炭水化物組成と結合分析、FAB−MSで測定した分子量そしてふつうの加水分解副生物の比較分析によって決定した。配糖体組成における大きな変化は末端の単糖類におけるものまであった。QA−18とQA−21はt−アラビノースを、そしてQA−17は2−アラビノースを含んでいる。QA−17はt−ラムノース(QA−18とQA−21にはない)を含み、これはt−ラムノースはQA−17では2−アラビノースに結合しており、一方アラビノースはQA−18とQA−21では末端残基であることを示唆する。またQA−17とQA−18は3,4−ラムノースとt−グルコースを含み、一方QA−21は4−ラムノースを含みグルコースを含まない。これはQA−17とQA−18の3,4−ラムノースの3−位にグルコースが置換していることを示す。FAB−MSで決定した分子量はこれらの構造と合致する。これは更に加水分解副生物の分析で支持される。ヒグチは、QSIIIのおだやかなアルカリ性加水分解は、脂肪酸残基をフコースに結合しているエステル結合の分解を生じることを証明している。この部位でのQA−17,18及び21の分解は、QA−17及び18とは同一でありまたQA−21とはもっと疎水性である(グルコースがないので)ところのトリテルペングリコシドフラグメント(A)を理論的に生じる;これにこれら化合物からのフラグメントの逆相HPLC保持時間の分析により実験的にたしかめられた。これらの化合物はもっと強い条件下で加水分解されて、フコースを結合するエステル結合をキラヤ酸骨格に分解しうる;この分解から生じる限定されたトリテルペングリコシドフラグメント(B)は理論的にはすべての3つの化合物について同じである(HPLC分析で確認)。
すべての3化合物は、類似の用量反応曲線でマウスにおいて、体液免疫反応を増大させる。したがって末端ラムノース及びグルコース残基はこれら化合物のアジュバント機能のこの面においては臨界的でないようである。
(洗剤としてのサポニンの特性)
アジュバントQA−7,17,18及び21の臨界ミセル濃度はDeVendittisほかの方法(Anal. Biochem. 115:278−286(1981))により次のように測定した。水中の1−アニリノナフタレン−8−スルホン酸(ANS)の発光スペクトルは、下記の範囲と上記の臨界ミセル濃度をカバーする0.01〜0.10%(w/v)範囲のアジュバント乾重量濃度で測定した。臨床ミセル濃度をこえると、蛍光染料のミセルへの分解のために極大発光波長は減少しANS収率は上昇する水中のQA−7,17,18及び21について類似の臨界ミセル濃度(それぞれ0.06%,0.06%,0.04%及び0.03%)が認められ、一方リン酸緩衝食塩水中のそれは、それぞれ0.07%,0.03%,0.02%及び0.02%と少し低かった。
図11は、モノマー/ミセル平衡を見掛けのミセル半径減少から防ぐためのリン酸緩衝食塩水中のそのサポニンの臨界ミセル濃度に対応する純粋サポニンの濃度に予備平衡化したBio−Gel P−200(6.6mmID×90cmH)上の純粋のQA−18及び21により形成されるミセルのゲル濾過クロマトグラフである。QA−18及び21ミセル溶離物のサイズは蛋白ウシ血清アルブミンのそれに似ている。
アジュバントの溶血活性は次の方法できめた。アジュバントQA−7,8,17,18,21及びスーパーフォス Quil−Aの希釈を丸底マイクロタイタープレート(ウェル毎に75μl)上で行った。PBSで3度洗ったヒツジ赤血球細胞(SRBC)を、PBSで4%にうすめた。SRBC25μlを各ウェルに加えアジュバントと混ぜた。室温で30分培養してからプレートをSorvall RT6000,H−1000ローター中で1,000rpmに5分間回転させ非溶血細胞を沈降させた。各ウェルの上澄50μlを同じウェルの平底マイクロタイタープレートに移し、水で200μlに薄めた。吸収を、Dynatech マイクロタイタープレートリーダー(図11)を用い570nmで測定した。溶血は、分解された細胞からのヘモグロビンの離脱のために570nmの吸収を増大させた。溶血における著しい差がアジュバント間でみられた。QA−17,18,21及びスーパーフォス Quil−Aは、25μg/mlという低濃度で部分的溶血をおこし、一方QA−8は150μg/mlで部分的溶血をみた。テスト濃度(200μg/ml及びそれ以下)ではQA−7は溶血をおこさなかった。
実施例7 毒性成分QA−19の単離
毒性成分QA−19はシリカ上ではQA−18と共にクロマト分離され、シリカ分画31〜60に豊富に存する。これら分画をプールし、次の精製前にフラッシュ蒸発させた。図4Cは、メタノール勾配を用いたVydac C4(10mmID×25cmL)上の逆相HPLCによるQA−18からのQA−19の分離を示す。50−52分の間の保持時間で溶離する分画は、逆相TLC及び分析HPLCによってQA−19と同定され次の特性化のためにプールした。QA−19は狭いメタノール勾配中の再精製により2コのピークに分離でき、短い保持時間のピークをQA−19a、長いほうをQA−19bと称した。QA−19bよりも、マウスで毒性の高いQA−19aのピークの炭水化物分析は、他のサポニンのそれと類似の炭水化物組成を示す(表3)。
実施例8 アルカリ加水分解生成物の単離
かんたんなアルカリ加水分解によるQA−18処理は、一つの大きな炭水化物含有アルカリ水解物(QA−18Hとよぶ;図10のフラグメントA)を与えた。精製QA−18HはQA−18から作られ次のようにして単離された。
QA−18(5mg/ml)1mlを、室温で15分間、1N NaOH25μlで培養し、反応を1N酢酸100μlの添加で止め、この加水分解条件を用いてQA−18を完全にその主水解物QA−18Hに変換した。このものは非水解のQA−18の保持時間が66.8分であるのに対して8.0分というピーク中に溶離され、0.1%トリフルオロ酢酸(55/45メタノール/水(v/v)中)のVydac C4(4.6mmIC×25cmL)のクロマトでQA−18Hの上昇した親水性を示し、そして流速1ml/分で64/36メタノール/水(v/v)の180分の勾配で溶離される。純粋のQA−18H(保持時間8分)を含むピークを次の特性化のためにプールした。QA−21の水解物(QA−21Hと命名)も同様に生成させ精製した。QA−21Hの保持時間は9.3分、一方未水解のQA−21は80.4分であった。これら水解物は逆相HPLC及びHPLC上の保持時間によって、NH4HCO3中の温和なアルカリ加水分解を用いるヒグチほかの方法(Phytochemistry,26:229(1987))で作った主水解物と同定された(表5)。またこれら生成物(QA−18Hと21H)は、QA−7,17,18,21及びその他から成る粗サポニン混合物の加水分解からの主生成物であった。このことは水解物QA−21HとQA−18Hは、構造決定のためにヒグチほか(上述)によって単離された水解物と同一であることをあらわす。QA−18HとQA−21Hはアジュバント活性の特性化のために保存した。
実施例9 抗原としてBSAを使用したときのアジュバント効果のテスト
簡単にいうとアジュバント効果は、免疫処方中の有効アジュバント添加による抗原特異性抗体タイターの上昇で評価される。上昇したタイターは、上昇した抗体濃度又は/及び上昇した抗原抗体親和性から生ずる。サポニンのアジュバント効果は、モルモットの足及び口の病気のワクチンの抗体を中和するタイターの上昇(Dalsgaard,K:Archiv fur die gesamte Virusforschung,44:243−259(1974));BSA/サポニン混合物でワクチン化したモルモット中のBSA(放射免疫拡散法で測定)の沈降抗体のタイターの上昇(Dalsgaard,K.:Acta Veteriaria Scandinavica,69:1−40(1978));及びKLH/サポニンで免疫したマウス中の抗かぎ穴リンペットヘモシアニン(KLH)抗体(ELISAで測定)のタイターの上昇(Scoffほか:Int. Arth. Allergy Appl. Immun. 77:409−412(1985))によってこれ迄測定されてきた。
本研究におけるアジュバント効果の評価は、サポニン不存在下のBSAでの免疫と比較したBSA/サポニンでの免疫を伴う、抗BSA抗体中の上昇によって行った。精製分画中のアジュバント活性は次のようにして測定した。CD−1マウス(8−16週令)を次の処方で皮内免疫した。BSA10μg(シグマ7030,脂肪酸なし)及びキラヤアジュバント(アンスロンで測定して1.5〜4.5μgの炭水化物範囲の用量)、但しPBS200μl中。Seraを2週間予備免疫し採取。抗BSA抗原はELISAで測定。イムロンIIプレートを、A,C,E及びG列で、脂肪酸のないBSA(PBS中10μg/ml)100μlで4℃で一夜被覆した。プレートをPBSで2回洗浄、非特異的結合は、すべてのウェルにおいて1ウェルあたり100μlの希釈液(PBS中2%のカゼイン酸の水解物[Oxoid,w/v])により37℃で1.5時間培養して保護した。プレートは蒸留水中0.05%ツイーン20で4回洗浄、10,102,103及び104希釈のセラを室温で1時間、A+B、C+D、E+F及びG+Hの列でそれぞれ(100μl/ウェル)培養。プレートを上述のようにして洗浄。ベーリンガーマンハイムの西洋ワサビのパーオキシダーゼ複合物のヤギ抗マウス抗体(希釈剤中5%BSA中1/5000)を室温で30分培養(すべてのウェルで;1ウェル当り100μl)、プレートを上述のように洗浄。パーオキシダーゼ反応の程度を2,2'−アジノ−ビス(3−エチルベンズチアゾリン)−6−スルホネート(室温で30分反応、410nmの吸収で測定)又は3,3',5,5'−テトラメチルベンジジン(室温で10分反応、450nmの吸収で測定)との反応で測定。総抗体結合に対する非特異性抗体結合の貢献は、各セラ希釈に対する抗原陽性ウェルの吸収から、抗原陰性ウェルの吸収を差引きで除去された。抗原特異結合による吸収は、セラ希釈(図13)の対数の関数としてプロットされた。終末タイターの典型は、アジュバントなしの免疫に対しては10又はそれ以下の血清希釈であり、サポニンアジュバント存在下では103と高かった。12μg炭水化物又はそれ以上のアジュバント用量での透析されたメタノール可溶樹皮エキス(炭水化物はアンスロンでアッセイ)はPBS中でBSAに比べ2オーダーだけタイターが上昇した。炭水化物9〜23μgのQuil−A用量において、良好なアジュバント効果がみられた。
実施例10 HPLCで精製したエキス成分のアジュバントテスト
実施例9で述べた標準によりQA−7,11,12,15,16,17,18,19及び20のピークは本特定実験における炭水化物3.0μg用量で特に効果的なQA−15,17,18,19及び20でのアジュバント効果において相異を示す。免疫(2)に使用したマウス数が少なく、また個々のマウス間の免疫反応の自然差のために、この実験はこれらのピークの相対的アジュバント効果を定量的に評価するために使用できない。しかしそれはアジュバント活性の存在の定性的評価になりうる。またQA−2,3,10,13及び14との見掛け上の効果の不存在は、異なるアジュバント用量又はアジュバント/蛋白比におけるアジュバント効果を規正するものでないことに注意すべきである。
さらにQA−7,17及び18を用い、異なる蛋白/アジュバント比でのアジュバント試験を行った。一般に良好なアジュバント効果はQA−7,17及び18において蛋白/アジュバント比(蛋白重量/炭水化物重量)が約3:1〜9:1(図14)で用いた時に得られた。QA−21(本例では蛋白/炭水化物重量比6:1の場合のみ)もまたアジュバント効果を示した。然し、最適免疫反応の適当なアジュバント対蛋白の比は、使用された特定のサポニンアジュバント及び特定抗原の双方の関数であることに注意すべきである。抗原と共同のアジュバントは、サポニンアジュバント効果の作用機作において重要な役割を果たす。蛋白へのサポニン結合の場合、疎水性の内部反応は大きな因子である。したがってHPLCで精製したアジュバントの疎水性の差は、疎水性蛋白の結合定数に影響する。また蛋白における疎水性結合部位の数も、サポニンアジュバントと共同する能力に影響する。よって個々のアジュバントや抗原に対する最適アジュバント用量をきめる必要がある。そのような最適値決定は公知の範囲に属する。
HPLCで精製したアジュバントはまたフロイントの完全アジュバントと比較されそして類似の免疫反応を示すことがわかった(図14,パネルb)
実施例11 QA−21−V1とQA−21−V2のアジュバント・テスト
C57bl/6マウス(8週令,一群5匹)を、個々の成分(10〜20μg用量)又はQA−21(10μg)と共に、又はそれなしに食塩水中のチキン卵アルブミン(オボアルブミン)25μgで皮下的に免疫した。ブースター免疫を2週間あとに行ないそして血清をブースター免疫後1週間で分析した。分析はオボアルブミン特異性のIgGサブクラスの酵素イムノアッセイで行った。QA−21−V1及びQA−21−V2は共にアジュバント活性において、IgGサブクラスのIgG1(図15A)、IgG2(図15B)及びIgG2a(図15C)ならびに総IgGタイター(図15D)のブーストにおいてもとのQA−21ピーク(QA−21−V1:QA−21−V2=3:2の混合物を含む)へのアジュバント効果において比較しうるものであった。すなわちQA−21−V1及びV2は共に、その混合物QA−21におけるように、抗原オボアルブミンに対する抗体反応を上昇させるためのアジュバントである。
この実験は、2週間大2のブースターでくりかえされ、用量曲線を与えるいろんな量のサポニン(図15E)を用いて血清を3週間分析した。全IgGタイターのみが曲線に含まれていた。
実施例12 FELV組換えGP70R−デルタの製造
(封入体の製造) 組換えE. coliクローンR16−38は、0.4−0.6の光学濃度(560nm)に至るまで32℃で、グルコース1%及びカサミノ酸0.1%を加えたLB培地中で生育した。培養物を42℃とし更に2時間培養した。それが終了してから、細胞を遠心(4,000gで30分)で集め、50mMトリスHCl(pH7.5)で洗い、そしてイソプロパノール中0.1Mフェニルメチルスルホニルフルオライド0.1M(最終濃度0.5)1ml及び5mg/mlのアプロチニン(最終濃度10.0μg/ml)0.4mlを加えた50mMトリスHCl200ml中に再けんだくした。細胞を、0.2%トリトンX−100存在下にリゾチーム(最終濃度:0.5mg/ml)による酵素的消化で分解した。30分かくはん後、MgCl2(0.5M)2ml、DNase(1mg/ml)5ml及び0.1Mフェニルメチルスルホニルフルロオライド1を加えた。さらに30分間かくはん後、EDTA(0.25M,pH7.5)40ml及びトリトンX−100(10%w/v)4mlを加えた。得たものを4℃で10,000×gで30分遠心し、ペレットを50mMトリスHCl(pH7.5)50mMに再けんだくした。ペレットを低速で15分間ホモジナイズした。リゾチームを0.5mg/mlで加え、10%トリトンX−100 0.6mlを加えた。15分かくはん後、MgCl2(0.5M)10mlとDNaseI(1mg/ml)1mlを加え、さらに15分かくはんした。50mMトリスHCl(pH9.0)で容量を300mlとした後、10%トリトンX−100 40ml及びEDTA(0.25M,pH7.5)51.2mlを加え、最終容量を50mMトリス(pH9.0)で400mlとして。30分かくはん後、けんだく液を4℃で30分間10,000×gで遠心し、ペレットを4M尿素、50mM EDTA及び1%トリトンX−100含有の50mMトリスHCl(pH7.5)400mlに再けんだくした。15分間かくはん後、けんだく液を10,000×gで30分、4℃で遠心し、ペレットを10mM NaCl含有の50mMトリスHCl(pH7.5)400mlに再けんだくした。15分間かくはん後、けんだく液を10,000×gで30分、4℃で遠心し、ペレットを6M尿素及び50mlEDTA含有の50mlトリスHCl(pH7.5)400mlに再けんだくした。15分間かくはん後、けんだく液を10,000×gで30分、4℃で遠心した。この時点で封入体のペレットがあとの使用のために凍結するか、又は6MグアニジンHCl、50mM EDTA及び0.5%β−メルカプトエタノール含有50mMトリスHCl(pH7.5)にとかした。ついでgp70R−デルタポリペプチドを下の実施例13に示す方法の何れかによって精製した。
実施例13 FeLV組換えGP70R−デルタの精製
(方法1) 実施例12の可溶化蛋白を6M尿素、トリス−Cl、pH8.0、5EDTA及び1ジチオスレイトール(DTT)に透析した。蛋白約120mgが、同じ緩衝液で平衡化したCM−TSKカラム(EM Science、1.5cmID×4cm)に用いられた。蛋白は同じ緩衝液中でNaCl(0−1.0M/150ml)の直線勾配で溶離された。分画を集め、10%SDS−ポリアクリルアミドゲル上の電気泳動で分析した。クーマシー染色を用いてgp−70R−デルタ蛋白を同定した。約0.1M NaClで溶離する分画25−31をプールし、免疫に用いた。
(方法2) gp70R−デルタの疎水性を減ずるために、スルフヒドリル基をヨードアセタミドでアルキル化し、リジン残基を無水シトラコン酸でN−アシル化した。実施例8で作った蛋白を5mMボレート、2pH9.0、0.5%β−メルカプトエタノール(v/v)中の6MグアニジンHClにとかした。ヨードアセタミドは1:1のモル比(ヨードアセタミド:総スルフヒドリル基)で加える。アルキル化は室温で1時間、暗所で行った。(蛋白及びβ−メルカプトエタノール)中のすべてのスルフヒドリル基のアルキル化は、完全なアルキル化の保障のためDTNB(エルマンの試薬)でモニターした。蛋白濃度は2mg/mlに調整した。
蛋白は、無水シトラコン(0.0022ml/mg蛋白;遊離リジンに対して約50モル過剰)の添加によって、暗所でシトラコニル化した。これを何度も暗所で50mMボレート、pH9.0に対し透析した。蛋白リジン基のアシル化の終了は、残った遊離リジン基を測定するトリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)との反応で測定した。50mMナトリウムボレート(pH9.0)1ml中の、アルキル化され、シトラコニル化され、透析されたgp70R−デルタ200μgにTNBS(10mM、200μl)を加えた。混合物を暗所で40℃で2時間培養し、これを1N HCl10.5mlと1%SDS0.5mlで失活させ、340nmでの吸収をみた。TNP−リジン濃度は10,400のモル吸光係数を使って測定した。
アルキル化され、シトラコニル化されたgp70R−デルタの精製は、リジン基のデブロッキックを防ぐためにpH9.0で行った。変成蛋白に、最終濃度4Mで尿素を加えた。蛋白は、限外濾過によって3mg/mlまで濃縮しそしてセファローズ6B−C1カラム(1.5×86cm)に加えた。gp70R−デルタ蛋白は、4M尿素及び50mMナトリウムボレート(pH9.0)で6.6ml/時の流速で溶離した。分画(5.3ml/分画)をあつめ、gp70R−デルタを蛋白アッセイ及びSDS−ポリアクリルアミド電気泳動で分画13〜15中で測定した。
gp70R−デルタのシトラコニル化を、室温で48時間、アルキル化されシトラコニル化されたgp70R−デルタ(1.0mg/ml)5mlを50mMナトリウムボレート(pH8.8)中の6M尿素に対し透析することで元にもどした。このgp70R−デルタを、100mM重曹(pH8.0)中の6M尿素に対して透析し、アルブミンヒドロキシサイドに吸収させる前に蛋白濃度を0.8mg/mlに調節した。
(方法3) アルキル化されシトラコニル化されたgp70R−デルタの上記の精製の変法を発展させた。簡単にいうと、アルキル化しシトラコニル化したgp70R−デルタを変成させ、上述のように50mMナトリウムボレート(pH9.0)に透析した。尿素に最終濃度8.0Mで加えた。蛋白は、PM−30膜で限外濾過して濃縮し2.5mg蛋白/mlを得た。蛋白液を、8M尿素を含む50mMナトリウムボレート緩衝液(pH9.0)中のセファクリルS−400カラム(1.5×90cm)にかけ、同じ緩衝液で溶離した。分画(2.9mg/分画)を集め、gp70R−デルタを含む34−37分画をプールした。これらの分画からの蛋白21mgを50mMナトリウムボレート(pH9.0)で4M尿素の最終濃度まで希釈し、DAEK−TSKのカラム(1.5×11cm)にかけた。蛋白を、4M尿素含有の50mMナトリウムボレート(pH9.0)中のNaCl(0−0.5M)の直線勾配で溶離した。3mlの分画を採取した。gp70R−デルタを含む分画89−95をプールし、gp70R−デルタ15mgを回収した。
実施例14 水酸アルミニウム吸収gp70R−デルタによる免疫
水酸化アルミニウムは多くの蛋白にアジュバント効果をもつことが知られており、ワクチンに対してgp70R−デルタの担体として用いられている。実施例13の方法1で作ったgp70R−デルタは、6M尿素を含む50mMトリス−Cl(pH8.0)の存在下に10%水酸化アルミニウムを強固に吸収する。水酸化アルミニウム100μgあたり約3μgのgp70R−デルタが吸収される。水酸化アルミニウムに吸収されたgp70R−デルタはリン酸塩緩衝食塩水(PBS)で洗い、PBSに再けんだくし、そして動物の免疫に用いる。
CD−1マウス(8−10週令)を、HPLC精製のサポニンQA−17若くは18又はQA−17と18の混合物の存在又は不存在下に全量200μlのPBS中にAl(OH)3に対し吸収されたgp70R−デルタで皮下的に免疫する。一用量あたり20〜25μgのgp70R−デルタを注射する。HPLC精製サポニンQA−17若しくは18又はQA−17と18の混合物を10μgの乾燥重量で用いる。各処方についてマウス2匹を使う。マウスは最初の注射のあと6週間たってgp70R−デルタ/水酸化アルミニウムによるブースター注射を行う。マウスのセラを、ELISAイムノアッセイにより、2,4及び8週の後免疫でFEA,FeLVサブグループ,に対する反応性について分析する。免疫のあと4週間、組換えgp70R−デルタで誘発された抗FeLV反応がみられる。HPLC精製サポニンアジュバントQA−17及び18はこの反応をブーストする。この反応は、サポニンアジュバントの不存在での免疫に比べて、QA−17存在下では4週間の後免疫において2オーダー大きい。この実験の結果を図16に示す。
抗FEA抗体ELISAアッセイでしらべる。FEAウイルス(10μg/mlPBS)を、4℃で一夜イムロンIIプレート吸収させる(100μl/ウェル)。プレートをPBSで洗い、非特異性抗体結合を、室温でPBS(10μl/ウェル)中の10%正常ヤギ血清で1時間培養してブロックする。次いでプレートを蒸留水中の0.05%ツイーン20で洗う。セラを、PBS中の10%正常ヤギ血清で希釈し、10,102,103及び104(100μl/ウェル)のセラム希釈でプレート上で室温において1時間培養する。蒸留水中0.05%のツイーン20によりプレートを洗ったあと、PBS中で1/5000に希釈したパーオキシダーゼ結合したヤギ抗マウスIgG(ベーリンガーマンハイム)100μl/mgを用い室温で30分培養する。蒸留水中0.05%のツイーン20でプレートを洗ったあとIgG結合量をDynatechマイクロタイタープレートリーダー上で求めた450nmでの吸収からの3,3',5,5'−テトラメチルベンジジンとのパーオキサイド反応によって測定する。
実施例15 水酸化アルミニウムに吸収されたアルキル化gp70R−デルタによる免疫
CD−1マウス(8〜10週令)を、PBS200μl中で実施例13の方法2で精製された(実施例14にのべた水酸化アルミニウムに吸収された)アルキル化gp70R−デルタの15μg/用量で皮内的に免疫する。HPLCで精製したアジュバントQA−7,17,18及びこれら三者の混合物を10μgの乾燥重量で用いる。各処方についてマウス3匹を使用。マウスのセラを、実施例14にのべたように2及び4週の後免疫で、FEAに対する反応についてELISAにより分析する。実施例14に示した未変成gp70R−デルタでの免疫に関して、アルキル化gp70R−デルタによる免疫は4週間の後免疫により抗FeLVウイルス反応を生ずる。HPLC精製アジュバントQA−7,17及び18はすべて、サポニンアジュバント不存在での免疫に比べて免疫反応を上昇する。QA−17及びQA−17と18の混合物は最高の反応を示し、サポニンアジュバント不存在時の免疫に比べ殆ど2オーダー高い最終タイターを示す。この実験の結果を図17に要約する。
実施例16 QA−7,17,18,19,21及びQuil−Aの毒性
洗キラヤサポニンに関しては、マウスにおける主な毒性症状は肝壊死のようである。肝に対する効果をみるために精製サポニンをマウスに注射する。マウスに各150μgのQA−7,17,18,21及びQuil−Aを皮内注射する。他の成分の精製のための粗原料として粗サポニンエキスを使用。QA−7,17及び21を注射したマウスは当初すこし病的であったが、注射後数時間のうちにちゃんと回復した。Quil−Aは48時間にもわたる重篤な病状を示した。すべてのマウスを48時間に殺し、肝の死後検査を行った。Quil−Aは、急性壊死が多部位にある重篤な肝障害をおこした。QA−7,17及び21は肝に対し顕著な影響をみられなかった。QA−17はまた小猫に対して8及び10週間に各100μg皮下注射してテストしたが、臨床的にもまた血液化学的にも毒性はみられなかった。これに対してQuil−Aは、小猫で数時間にもわたる発熱現象をみた。したがって精製サポニンはマウス及び小猫の双方でQuil−Aよりも毒性が低く、精製操作は粗キラヤエキス中にある1つ又はそれ以上の毒性成分をこれらサポニンから分離して了うことがわかる。それら毒性成分のひとつはQA−19として同定され、それは数日の注射でマウスに対し50μg又はそれ以上の致死量であった。QA−19をさらに精製したところ、QA−19a及びQA−19bの2つのピークに分かれることがわかった。QA−19aはマウスで100μg又はそれ以上の致死量であり、一方QA−19bは150μgまでの用量では致死的でなかった。したがってQA−19aと19bの混合物で大きな毒性を生じる相剰効果は導き出せない。新しいデータはまたQA−18も毒性をもつこと示す(ここには示さず)。Quil−Aから単離した他のマイナーなピークな予備スクリーニングしたところ、他の分画もまた毒性でありうることがわかった。したがって精製のプロトコールは、アジュバント活性サポニンを、もっと毒性のあるか又は毒性共存物と共にクロマトされる類似の但し別個の化合物からの分離を行うものである。
実施例17 構造変性アジュバント活性への影響
サポニンの変性を、アジュバント活性に及ぼす効果をみるために行った。QA−18を過ヨード酸で酸化し、t−ガラクトースとt−アピオースの隣接する水酸基間で分解してジアルデヒドとし、アジュバント活性へのこれら単糖類の分解の効果をみた。
QA−18の過ヨード酸酸化は、非変性QA−18に比べて抗体タイターが5倍減少した。残った活性は、比較的おだやかな酸化条件で生成したこのものの中の非変性QA−18の小部分(約10%)によるものであろう。したがって、キラリア・サポナリアからのすべてのアジュバント活性化合物に共通な残基であるガラクトース又はアピオース(又はその双方)はアジュバント効果に必須のものであろう。
実施例9で述べたようにして作ったQA−18H(QA−18のAフラグメント;図10)及びQA−21H(QA−21のAフラグメント;図10)を、実施例3及び4で作った非水解のもとの生成物のQA−18及び21と直接比べながら、そのBSAに対するアジュバント効果をテストした。QA−18と21は、2週間の後免疫により少なくとも1オーダーだけマウスにおいてBSAに体液免疫反応を増加させた。しかし同量の水解物QA−18Hと21Hは著しい反応の増加がなかった(図18)。したがって最適のアジュバント効果は、手をつけてないサポニンにおいてみられ、もしQA−18や21がそれぞれ18Hや21Hに加水分解されるとアジュバント活性に必要な必須構造が消失又は変化してしまう。
すなわち脂肪酸とアラビノースを取り除くと、アジュバント活性は実質的に減少する。しかし乍らこれがレセプター結合におけるこの特異構造の必要性に因るものなのか、または細胞膜もしくは抗原へのQA−18や21の疎水性内部作用に実質的に影響する変化である本来の部分と比べてのフラグメントAの疎水性の著しい増大に因るものかは明らかでない。疎水性の減少はまた最近のテストによるとCMIの発生にも変化を与えるようである。
実施例18 サポニンQA−21とリゾチームの複合
あまり免疫性がなく極めて親水性の蛋白であるリゾチームを、サポニンQA−21との複合のために選んだ。QA−21のグルクロン酸残基を、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)及びスルホ−N−ヒドロキシサクシニミド(NHS)で活性化し、次のようにしてリゾチームと結合させた。
次のDMSO溶液をつくった。
溶液Aを溶液C100μlと合し、溶液B50μlを加えた。15分、90分及び260分後に反応をHPLC(検出器を280nmにセット)でモニターした。320分後に溶液Bをさらに50μl加え反応をつづけQA−21のNHS溶液をつくった。
0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(5ml,pH7)中のリゾチーム液(72mg,分子量14,400g/モル)を作った。リゾチーム液は、活性エステルの加水分解を制御するためよく濃縮すべきである。ついで粗NHSエステル(約5μモル)をアリコート200μl中のリゾチーム(5μモル)に加えた。最初のアリコートを加えたあと、溶液は曇った。80分及び135分あとにHPLCで反応をモニターした。ついで反応混合物を濾過し、水に透析しそして凍結乾燥して粗製のリゾチーム・QA−21複合物を得た。
ついで凍結乾燥粉末を10mM燐酸ソーダ緩衝液(pH7)約1mlにとかしその液を濾過して約800μlとする。その約300μlをSemiprep C4カラムに入れ、勾配溶離(10〜80%の緩衝液Bで60分;緩衝液A=0.15%のトリフルオロ酢酸水溶液;緩衝液B=0.15%トリフルオロ酢酸のアセトニトリル溶液)で精製した。分画2mlを22分後にあつめた。11〜17分画をプールし、窒素下で乾燥し、凍結乾燥した。ついでこの方法を粗製のリゾチーム−QA21複合物400μlについてくりかえした。
このリゾチーム−QA21複合物は、リゾチームとQA21の1:1モル比に相当するSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分子量に増大を示した。この複合物はまたリゾチームへの炭水化物QA−21の付加によるところの炭水化物呈色PASへの陽性反応を示した。QA−21の活性エステルの増大量がリゾチームに加えられたときの複合反応の一例を図19に示す。
実施例19 QA−21−リゾチーム複合物によるマウスの免疫
実施例18のQA−21−リゾチーム複合物を、アジュバントとしてQA−21の添加と共に又はなしに、マウス(C57bl/6)の免疫に用いた。10匹のマウス(免疫開始時には9週令)を1群として免疫した。免疫は、総量0.2ml(PBSバッファー,pH7)で0日め及び14日めに皮内注射で行った。ワクチンは次の用量の抗原とアジュバントを含んでいた。
マウスは21日めに採血して抗リゾチームIgGタイターを測定した。マイクロタイタープレート(代わりにMicromembraneのCo−bind[登録商標]も使用できる)をPBS約100μl中のリゾチーム10μg/mlで一夜4℃で培養した。ついでプレートをPBSで二度洗い、室温で10%の正常ヤギ抗血清の150μl/ウェルで1時間ブロックした。それからプレートを0.5%ツイーン20水溶液で2回洗った。
マウスの血清を、次のようにしてリゾチーム被覆プレートで培養した。個々の血清サンプル10μlを10%の正常ヤギ血清(PBS溶液)で希釈して100μlとしたもの及びその段階的希釈(1:10)をウェルに加え室温で1時間培養した。次いでウェルを0.05%ツイーン20で4回洗った。次いでウェルを、セイヨウワサビ・パーオキシダーゼ(BioRad)に結合した抗マウスIgGで希釈剤100μl(PBS中10%の正常ヤギ血清)中で室温で2時間培養し、0.05%ツイーン20で4回洗い、水で2回洗った。ついで結合物をテトラメチルベンジジン基質(Bos,E. S. ほか:J. Immunoassay,2:187(1981))で検出した。培養後はOD450を測定した。
免疫されたマウスの各グループの総抗リゾチームIgGタイターは図20,21に示すようである。図20はアジュバントがなくリゾチームのみ(グループ1);リゾチームと遊離の(共有結合のない)QA−21(グループ2);及びQA−21−リゾチーム結合物(グループ3)を注射したマウスについての抗リゾチームタイターを示す。図21はリゾチームのみ;リゾチームと遊離QA−21(グループ4);及び遊離QA−21とQA−21−リゾチーム複合物(グループ5)を注射したマウスの抗リゾチームタイターを比較したものである。
図19〜21に見られるようにリゾチームは単独で又はQA−21をアジュバントとして投与すると免疫性が乏しい。しかしリゾチーム−QA−21複合物を投与されたマウスは、遊離QA−21を投与されたグループの何れよりも抗体タイターが高い。予期せぬことに、リゾチーム−QA−21複合物を遊離QA−21をアジュバントとして共に投与したとき、抗体タイターに著しい上昇がみられた。本発明者はなんら特別な理論によって拘束されることを望まないけれども、リゾチームとQA−21の複合物は、免疫反応を増大させるのに役立つ遊離QA−21の結合部位を提供すると考えられる。
次いで各々のマウスのグループで作られた抗リゾチーム抗体をイソタイプ化した。マイクロタイタープレートを、約100μlのPBS中の10μg/mlのリゾチームと共に一夜4℃で培養した。次いでプレートをPBSで2度洗い、室温でPBS中の10%正常ヤギ血清の150μl/ウェルで1時間ブロックした。ついでプレートを0.05%ツイーン20水溶液で2度洗った。
マウスのセラを、リゾチーム被覆プレートで次のようにして培養した。血清サンプルを別々のレーンでIgG1,IgG2B,IgG2A,IgM及びIgG3についてテストした。各々の血清サンプル(10μl)を血清中10%の正常ヤギ血清で薄めて100μlとし、ウェルにその一連希釈(1:10)を加え、室温で1時間培養した。次いでウェルを0.05%ツイーン20で4回洗い、100μlの希釈剤(PBS中10%の正常ヤギ血清)中でアルカリ性フォスファターゼ(Southern Biotechnology)にそれぞれ結合したヤギ血清IgG1,IgG2B,IgG2A,IgM又はIgG3で、室温で2時間培養し、0.05%ツイーン20で4回洗い、そして水で2回洗った。次いで結合物を0.1ボレート(pH9.0)中の1mg/mlのp−ニトロフェニルホスフェートの100μl/ウェルを加えて検出した。室温で6〜24時間培養後にOD410を測定した。
図22に示すように、リゾチームを単独又は遊離QA−21と共に免疫元として用いたときはIgM抗体のみが生成する。リゾチーム−QA21複合物の投与はIgM,IgG1,IgG2B及びIgG2A抗体の生成をもたらす。驚くべきことには、リゾチーム−QA21複合体を、アジュバントとしての遊離QA−21と共同投与したときは、それぞれのイソタイプについて著しいタイターの上昇がみられた。
実施例20 グルクロン酸のQA−21カルボキシル基によるQA−21のグリシン,エチレンジアミン及びエチルアミンへの複合
(QA−21の活性エステル誘導体の製造)
QA−21の40mg(約20μモル)をジメチルホルムアミド(DMF)0.4mlにとかし、スルホ−N−ヒドロキシサクシニミド(S−NHS,8.7mg,40μモル)をこのQA−21液にとかす。QA−21もS−NHSもDMFには充分とけない。DCC45.3mg/0.5mlDMFのストック液をつくる。DCCを次のようにQA−21液に加える。
最初のDCC添加の24時間あと、反応液を4℃に1時間冷却し、0.45ミクロンのフィルターで濾過する。総量で3mlの酢酸エチルを、この濾過した反応混合物に加える。生じた沈澱を遠心で集める。更に3mlの酢酸エチルを沈澱に加える。沈澱を遠心して集める。酢酸エチルによる洗浄工程をくりかえす。沈澱を減圧デシケータで乾燥する。これをHPLCで分析したQA−21のS−NHS誘導体であることがわかった。これをグリシン誘導体の製造に用いる。
QA−21のエチルアミン及びエチレンジアミン誘導体をつくるために、S−NHS QA−21のグリシン反応のためと同様として作る。但し反応サイズを倍にし、QA−21液に対し一つのアリコート中にDCC 0.300mlを加え、酢酸エチル洗浄工程前に一夜かくはんする。
(QA−21カルボキシルとグリシンアミノ基の間のアミド結合を介してグリシンへ結合したQA−21の製造)
S−NHS−QA21沈澱を、0.1M燐酸ソーダ(pH7.0)1mlにとかしたグリシン75mg(1ミリモル)に加える。室温で2時間反応させたあと、反応混合物を60分間、30%−40%Bの勾配中の逆相HPLC(Vydac C4,300Å細孔径,5ミクロン)に負荷する。溶媒Aは0.1%トリフルオロ酢酸水溶液である。溶媒Bは0.1%TEAのアセトニトリル溶液である。未変成QA−21液や未反応S−NHS−QA21液には存在しなかった新しいピークが34.30分に生じ、これを集め、窒素下で乾かし、凍結乾燥する。この新しい生成物はFAB−MSで同定した。
(QA−21カルボキシルとエチレンジアミンのアミノ基の間のアミド結合を介して結合したQA−21の製造)
エチレンジアミンとQA−21の活性エステル誘導体を反応させるために、エチレンジアミン266mg(2ミリモル)を0.1M燐酸カリ(pH7)2.0mlにとかした。pHを、NaOHの添加で7に再調整した。最終容量2.45ml。この液にS−NHS−QA21の22gを加える。室温で1.5時間反応のあとHPLCで分析し、QA−21よりも短い保持時間の新しいピークの生成をみた。反応混合物を4℃で一夜保存し、次いでグリシン誘導体のときと同じ方法で半調製HPLCで精製する。32.5分でのピークを集め、窒素下で乾かしてアセトニトリルをとばし、そして凍結乾燥する。この誘導体はQA−21を抗原に結合させるのに使える結合剤(リンカー)の一例である。この新しい生成物はFAB−MSで確認した。
(QA−21カルボキシルとエチルアミンのアミノ基の間のアミド結合を介して結合したQA−21の製造)
QA−21のエチルアミン誘導体をつくるため、エチルアミン70mlを、水を使って100mlにうすめた。総量0.091mlのこのエチルアミン液を0.1Mリン酸カリ(pH7.0)1mlに加える。pHを、リン酸で7に再調整する。総量で32mgのS−NHS−QA−21をこの液に加える。45分あとにHPLCで分析する。QA−21よりも疎水性の新しいピークを検出。反応混合物を一夜4℃に保つ。混合物はわずかに曇った。これをアセトニトリル0.1mlの添加で、可溶化する。これをHPLCにかけて、他の2つの誘導体と同じ方法で精製する。52.3分のピークを集め、窒素下にアセトニトリルをとばし、そして凍結乾燥する。この新しい生成物をFAB−MSで確認した。
実施例21 還元的アルキル化によるQA−21トリテルペンアルデヒドへのエチレンジアミンとグリシンへのQA−21の複合
(QA−21トリテルペンアルデヒドとグリシンのアミノ基のシッフ塩基の還元による、グリシンに結合したQA−21の製造)
QA−21トリテルペン上のアルデヒドとグリシンの反応のために、QA−21の20mgを50%メタノール、50mMリン酸ソーダ(pH6.0)0.8mlにとかす。グリシン溶液0.5mlが水中でつくられる。総量で0.1mlのグリシンを、このQA−21液に加える。ナトリウム・ボロハイドライドの0.1M液をメタノール中で作る(32mg/5ml)。総量で0.1mlのナトリウム・ボロハイドライドをQA−21液に加える。ナトリウム・ボロハイドライドの添加を、2,5,21,25及び46時間めにくりかえす。反応混合物を逆相HPLCで精製する。31.3分での新しいピークを集める。この新しい生成物はFAB−MSで確認した。
(QA−21トリテルペンアルデヒドとエチレンジアミンのアミノ基のシッフ塩基の還元による、エチレンジアミンに結合したQA−21の製造)
QA−21トリテルペン上のアルデヒドとエチレンジアミンの反応のために、QA−21の6mgを50%メタノール、20mMトリエチルアミノホスフェート(pH6)の1mlにとかす。総量で0.15mlの0.1Mエチレンジアミン水溶液を加え、次いで50mMのナトリウム・シアノボロハイドライド(メタノール中)0.06mlを加える。ナトリウム・シアノボロハイドライドのアリコートを更に45分及び16時間めに加える。反応を、30−60%B法で逆相HPLCで精製する。19.6分での新しいピークを集める。これを凍結乾燥する。得たピークを逆相TLCで分析し、ニンヒドリンと反応性のあることがわかる。これはQA−21に遊離アミノ基が付加したことを示す。この誘導体は、QA−21の抗原への結合に使用できるリンカーの一例である。
実施例22 QA−21トリテルペンアルデヒドのアルコールへの還元
水4ml中のQA−21の12mgを0.1Mリン酸ソーダ(pH6.0)8mlと混合し、最終QA−21濃度を1mg/mlとする。1Mのナトリウム・ボロハイドライドのストック液を0.01M NaOH中で作る。総量で0.580mlのナトリウム・ボロハイドライドを、QA−21の少量増加分(約50μlのインクレメント)に加える。ナトリウム・ボロハイドライドの最終濃度は0.05M。この反応混合物を室温で1時間培養する。反応を1N酢酸1mlで失活させる。ナトリウム・ボロハイドライドを除くためにQA−21をC18に吸収させる。反応混合物4mlを、C18含有のカートリッジに通す。このカートリッジを水5mlで2回洗う。次いでQA−21をC18から、メタノール5mlで溶離する。この工程を反応混合物の残りの8mlについて行う。メタノールをN2気流下で蒸発させる。還元されたQA−21を30%アセトニトリル/0.15%トリフルオロ酢酸に再溶解させ、HPLCで残存する非還元のQA−21を除いて精製する。(Vydac C4,粒子径5μm;3ml/分の流速で60分間、25−40%の勾配[溶媒Aは0.15%TFA水溶液;溶媒Bは0.15TFA−アセトニトリル溶液])。還元QA−21は46.8分の保持時間で溶離(非還元QA−21の保持時間は48.1分である)。還元QA−21に対応するピークをプールし、水で1/2にうすめ、そして上述のようにC18カートリッジ上に集める。最終生成物を凍結乾燥し、免疫研究に使用する。
実施例23 変性QA−21サポニンのアジュバント活性
実施例20,21及び22で作った変性QA−21サポニンを、実施例11に示すようにしてテストした。C57bl/6マウス(1群5匹)を、オボアルブミン25μg及びQA−21又はその誘導体のうちのひとつ10〜50μg(食塩水中)で皮下免疫した。14日めブースター免疫を行った。抗体反応(総IgG)を第二免疫のあと、酵素イムノアッセイでテストした。グルクロネート・カルボキシル基上での3つの誘導体(エチルアミン,エチレンジアミン,グリシン)は尚もアジュバント活性をもっていたが、最小有効量にQA−21のそれよりも高かった(図23A)。これに対して、トリテルペンアルデヒドにおける還元的アルキル化による誘導体はテスト用量ではアジュバント活性をもっていなかった(図23B)。しかし、トリテルペンアルデヒドがアルコールに還元されている変性QA−21は若干のアジュバント活性をもっている。但し、その最小有効量はQA−21よりも高い(図23C)。二回のブースター免疫を2週間の間隔で行った類似の実験の結果を表7に示す。
実施例24 エチレンジアミン結合基を介してQA−21へのビオチンの複合商業的に入手可能なビオチンの活性エステル誘導体(S−NHS)(Pierce)をこの複合物生成に使用した。この活性化されたビオチンを、実施例20のQA−21のエチレンジアミン誘導体の遊離アミノ基に結合させた。該ビオチン誘導体もまたアジュバント活性を保持していた(図24)。
今や本発明は充分に記述されたので、以下に示すように本発明の範囲や精神から逸脱することなく、多くの変更や改変ができることは当業者にとって明白であろう。
Claims (31)
- キラヤサポナリアから得られ、流速1ml/分で、水/アセトニトリル(15/85%,v/v)中pH6.0の10mM TEAP溶媒中で5μmの粒子径、4.6mmID×200mmLをもつPoly LC PHEAカラム上のHILICでの6.4分のピークを与え、免疫アジュバント活性を有し、かつアジュバントとしてQuil Aより毒性が低い、実質的に純粋なQA−21−V1サポニン。
- キラヤサポナリアから得られ、1ml/分の流速で水/アセトニトリル(15/85%,v/v)中pH6.0の10mM TEAP溶媒中で5μmの粒子径、4.6mmID×200mmLをもつPoly LC PHEAカラム上のHILICでの6.9分のピークを与え、免疫アジュバント活性を有し、かつアジュバントとしてQuil Aより毒性が低い、実質的に純粋なQA−21−V2サポニン。
- QA−21−V1またはQA−21−V2のいずれかの実質的に純粋なサポニンまたはそのいずれかのサポニンのアルカリ加水分解物を含有するサポニン/抗原共有結合複合体であって、該サポニンまたはそのアルカリ加水分解物は直接に又は結合基を介して抗原に結合しており、該結合は動物における免疫反応を刺激する該サポニン又はアルカリ加水分解物の能力を阻害しないものである複合体。
- 該結合基が二機能性分子である請求項3記載のサポニン/抗原共有結合複合体。
- サポニンまたはサポニンアルカリ加水分解物がグルクロネート・カルボキシ基を含んでおり、該サポニンまたは該サポニンアルカリ加水分解物が該グルクロネート・カルボキシ基において抗原と共有結合している、請求項3記載のサポニン/抗原共有結合複合体。
- 実質的に純粋なサポニンが、流速1ml/分で、水/アセトニトリル(15/85%,v/v)中pH6.0の10mM TEAP溶媒中で5μmの粒子径、4.6mmID×200mmLをもつPoly LC PHEAカラム上のHILICでの6.4分の保持時間を有するQA−21−V1である、請求項3の記載のサポニン/抗原共有結合複合体。
- サポニンが乾燥重量あたり約22%炭水化物を含み、該炭水化物が末端アラビノース、末端アピオース、末端キシロース、4−ラムノース、末端ガラクトース、2−フコース、3−キシロース、および2,3−グルクロン酸からなる単糖類組成を有している、請求項4記載のサポニン/抗原共有結合複合体。
- 実質的に純粋なサポニンが、1ml/分の流速で水/アセトニトリル(15/85%,v/v)中pH6.0の10mM TEAP溶媒中で5μm粒子径,4.6mmID×200mmLをもつPoly LC PHEAカラム上のHILICで6.9分の保持時間を有するQA−21−V2である、請求項3記載のサポニン/抗原共有結合複合体。
- サポニンが乾燥重量あたり約22%炭水化物を含み、該炭水化物が末端アラビノース、2つの末端キシロース、4−ラムノース、末端ガラクトース、2−フコース、3−キシロース、および2,3−グルクロン酸からなる単糖類組成を有している、請求項4記載のサポニン/抗原共有結合複合体。
- QA−21−V1またはQA−21−V2のいずれかの実質的に純粋なサポニンまたはそのいずれかのサポニンのアルカリ加水分解物と直接に又は結合基を介して結合した抗原からなるサポニン/抗原共有結合複合体と、医薬的に許容される担体を含有するワクチンであって、該結合が動物における免疫反応を刺激する該サポニン又はアルカリ加水分解物の能力を阻害しないものであるワクチン。
- サポニンまたはサポニンアルカリ加水分解物がグルクロネート・カルボキシ基を含んでおり、該サポニンまたは該サポニンアルカリ加水分解物が該グルクロネート・カルボキシ基において抗原と共有結合している、請求項11記載のワクチン。
- 該結合基が二機能性分子である請求項12記載のワクチン。
- さらにアジュバントを含む請求項13記載のワクチン。
- 該アジュバントがサポニンである請求項13記載のワクチン。
- 免疫学的有効量の抗原、および抗原に対する個体の免疫反応を高めるに充分な量の、少なくともひとつの請求項1または2記載の実質的に純粋なサポニンを含む、個体において抗原に対する抗体の生成を誘発するための医薬組成物。
- 該個体が哺乳動物である請求項17記載の医薬組成物。
- 1)QA−21−VIおよびQA−21−V2からなる群から選択されるサポニン、および
2)共有結合している結合基またはブロック基
を含有している、動物における免疫反応を刺激する能力を保持している実質的に純粋な変性サポニン。 - サポニンがグルクロネート・カルボキシ基を含んでおり、サポニンが該グルクロネート・カルボキシ基において共有結合している、請求項19記載の実質的に純粋な変性サポニン。
- 該ブロック基がエチルアミンである請求項19記載の実質的に純粋な変性サポニン。
- 該結合基が二機能性である請求項19記載の実質的に純粋な変性サポニン。
- 該結合基がエチレンジアミンである請求項23記載の実質的に純粋な変性サポニン。
- 該結合基がグリシンである請求項23記載の実質的に純粋な変性サポニン。
- 免疫学的有効量の抗原、および抗原に対する個体の免疫反応を高めるに充分な量の、少なくともひとつの請求項19〜25記載の実質的に純粋な変性サポニンを含む、個体において抗原に対する抗体の生成を誘発するための医薬組成物。
- 該個体が哺乳動物である請求項26記載の医薬組成物。
- QA−21−V1またはQA−21−V2のいずれかの実質的に純粋なサポニンまたはそのいずれかのサポニンのi)1N NaOHでの室温15分の加水分解またはii)NH4HCO3中の温和なアルカリ加水分解によって調製されるそのいずれかのサポニンのアルカリ加水分解物を含有するサポニン/抗原共有結合複合体であって、該サポニンまたはそのアルカリ加水分解物は直接に又は結合基を介して抗原に結合しており、該結合は動物における免疫反応を刺激する該サポニン又はアルカリ加水分解物の能力を阻害しないものである複合体。
- QA−21−V1またはQA−21−V2のいずれかの実質的に純粋なサポニンまたはそのいずれかのサポニンのi)1N NaOHでの室温15分の加水分解またはii)NH4HCO3中の温和なアルカリ加水分解によって調製されるそのいずれかのサポニンのアルカリ加水分解物と直接に又は結合基を介して結合した抗原からなるサポニン/抗原共有結合複合体と、医薬的に許容される担体を含有するワクチンであって、該結合が動物における免疫反応を刺激する該サポニン又はアルカリ加水分解物の能力を阻害しないものであるワクチン。
- 1)QA−21−V1およびQA−21−V2からなる群から選択されるサポニン;および
2)共有結合しているアミノ酸
を含有している、動物における免疫反応を刺激する能力を保持している実質的に純粋な変性サポニン。 - 該アミノ酸がグリシンである請求項30の実質的に純粋な変性サポニン。
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