JP3717453B2 - ポリオール組成物及び絶縁性ポリウレタン樹脂組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として、ポリオール組成物に関し、更に詳しくは、チキソトロピーを呈する絶縁性ポリウレタン樹脂を与えるポリオール組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
絶縁性ポリウレタン樹脂は、LSIや回路基板等種々の電気・電子部品の絶縁材料として幅広く用いられている。これらに含まれている電気回路等を絶縁性ポリウレタン樹脂で封止する際、効率よく封止していくためには、絶縁性ポリウレタン樹脂組成物がチキソトロピーを呈することが求められる。絶縁性ポリウレタン樹脂組成物がチキソトロピーを呈すると、例えば、形成した組成物は流動せず、従って硬化物になるまで待たなくてもよいことから作業性が向上し、又、組成物が流動しないので、回路の必要な個所だけを封止することができる等の利点がある。従って従来では、該要求を満たすために、用いるポリオール成分に紛体が加えられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、絶縁性ポリウレタン樹脂組成物がこのような性状を呈するためには、例えば、ポリオール100重量部に対して50〜400重量部というように多量の紛体を必要とし、そのため得られる絶縁性硬化物は重く、もろくなるという問題を有している。
【0004】
本発明は、上記問題点に鑑み、得られる絶縁性硬化物が軽量で、もろくなく、しかもチキソトロピーを呈する絶縁性ポリウレタン樹脂組成物を与えるポリオール組成物、及び該ポリオール組成物を含有する絶縁性ポリウレタン樹脂組成物を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らが初めて、絶縁性ポリウレタン樹脂を造るポリオール成分として、低い酸素含有率をもつポリオールと高い酸素含有率をもつポリオールとを組み合わせ、これに特定の比表面積を持つ紛体を加えた場合、比較的少量の紛体でチキソトロピーを呈する絶縁性ポリウレタン樹脂組成物が得られることを発見し、本発明を完成した。
【0006】
即ち本発明は、ポリオール成分と、該ポリオール成分100重量部に対して0.1〜10重量部の紛体とを含有し、前記ポリオール成分は、酸素含有率が20重量%以下のポリオールを該ポリオール成分中90〜99.9重量%と、酸素含有率が30重量%以上のポリオールを前記ポリオール成分中0.1〜10重量%含み、前記紛体は比表面積が50m2/g以上であることを特徴とするポリオール組成物を提供する。
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、含まれる紛体の量が比較的少量であるので、得られる硬化物自体軽量で、もろくない。しかも該組成物はチキソトロピーを呈するので、流動性、作業性にも優れる。
【0007】
好ましくは、ポリオール成分のヨウ素価が155mgKOH/g以下である前記ポリオール組成物である。該ポリオール組成物は、さらに耐熱性の優れた絶縁性硬化物を与えうる。
又、本発明は、前記ポリオール組成物とポリイソシアネートとを含有することを特徴とする絶縁性ポリウレタン樹脂組成物を提供する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明で使用されるポリオール成分は、酸素含有率が20重量%以下のポリオール(以下、ポリオール(a)という)を、ポリオール成分中90〜99.9重量%、酸素含有率が30重量%以上のポリオール(以下ポリオール(b)という)を、ポリオール成分中0.1〜10重量%含むポリオール混合物である。
好ましいポリオール(a)としては、酸素含有率が1〜20重量%のポリオールである。ポリオール(a)の酸素含有率がこの範囲であると、高温多湿下に曝されても硬度等の物性が変化し難いという優れた耐湿熱性を有し、電気特性に優れる絶縁性硬化物が得られる。又、好ましいポリオール(b)としては、酸素含有率が30〜60重量%のポリオールである。ポリオール(b)の酸素含有率がこの範囲であると、増粘効果が大となり、優れたキチソトロピーを呈する絶縁性ポリウレタン樹脂組成物が得られる。
ここで、酸素含有率(重量%)は、
【0009】
【式1】
Figure 0003717453
【0010】
で計算される。
【0011】
本発明において、ポリオール成分中のポリオール(a)の含有率が90重量%未満であると電気絶縁性が低下する。一方、該含有率が99.9重量%を超えるとチキソ性が現れにくくなる。又、ポリオール成分中のポリオール(b)の含有率が0.1重量%未満であると、増粘効果が少なくなる。一方、10重量%を超えると、得られる硬化物の電気特性が低下する。
ポリオール成分中のポリオール(a)の好ましい含有率は95〜99重量%である。又ポリオール(b)の好ましい含有率は1〜5重量%である。ポリオール(a)、(b)の含有率がこの範囲であると、得られる硬化物の電気特性が特に優れる。
本発明において、ポリオール成分はポリオール(a)及びポリオール(b)がもつ酸素含有率以外の酸素含有率をもつポリオールも含んでもよい。
【0012】
又、ポリオール成分の酸素含有率、即ち組成物中に含まれる全ポリオールの酸素含有率は、電気特性の点から1〜22重量%に調整されるのが好ましく、更に好ましくは1〜20重量%である。
【0013】
本発明において、ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、その他のポリオール、これらの混合物のいずれも使用できる。
【0014】
ポリエステルポリオールとして、例えば、リシノール酸、オキシカプロン酸、オキシカプリン酸、オキシウンデカン酸、オキシリノール酸、オキシステアリン酸、オキシヘキサンデセン酸のヒドロキシ含有長鎖脂肪酸等の脂肪酸とエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール及びジエチレングリコール等のグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン及びトリエタノールアミン等の3官能ポリオール、ジグリセリン及びペンタエリスリトール等の4官能ポリオール、ソルビトール等の6官能ポリオール、シュガー等の8官能ポリオール等のポリオールとの反応性生物が挙げられる。
ポリエーテルポリオールとして、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、4,4’−ジヒドロキシフェニルプロパン、4,4’−ジヒドロキシフェニルメタン等の2価アルコール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパン、1,2,5−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール等の3価以上の多価アルコールとエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドとの付加重合物等が挙げられる。
その他のポリオールとして、例えば、主鎖が炭素−炭素よりなるポリオール、例えば、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール等が挙げられる。
【0015】
なかでも、ポリオール(a)として、リシノール酸グリセライド〔リシノール酸:グリセリン=3:1〜3(モル比)〕、リシノール酸と1,1,1−トリメチロールプロパンとのポリエステルポリオール(リシノール酸:グリセリン=3:1〜3(モル比)(得られたポリオール中にリシノール酸が残存しないものが特に好ましい)等が好ましい。
また、ポリオール(b)として、メチレングリコール、エチレングリコール、ヘキサンジオール、ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、シュガー等の多官能アルコール化合物;これら多官能アルコール化合物とエチレンオキサイドあるいはエチレンオキサイド/エチレンオキサイド以外のアルキレンオキサイドとの付加物;及びエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、メチレンジフェニルジアミン、トルエンジアミン、アニリン、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等の多官能アミン化合物とエチレンオキサイドあるいはエチレンオキサイド/エチレンオキサイド以外のアルキレンオキサイドとの付加物が好ましい。
【0016】
本発明においてポリオール成分はヨウ素価が155mgKOH/g以下であることが好ましい。ヨウ素価がこの範囲であると、絶縁性硬化物は耐熱性に優れ、高温下に置かれても硬くもろくならない。さらに好ましくは1〜100mgKOH/gである。ヨウ素価がこの範囲であると得られる硬化物の耐熱性が良好となる。
ヨウ素価(mgKOH/g)は、JIS K 3331-1995に従って測定される。
【0017】
本発明において、紛体として、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、カーボン等の無機粒子、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリウレタン、ポリフェノール等の有機高分子の粒子等が使用できる。これらは、単独あるいは混合物として使用できる。粒子の表面は表面処理が施されても良く、ポリウレタン、ポリフェノールはフォーム粉で使用されてもよい。さらに本発明において使用される紛体には多孔質のものも含まれる。
【0018】
本発明において、紛体の比表面積は50m2/g以上である。該比表面積が50m2/g未満であれば、絶縁性ポリウレタン樹脂がチキソトロピーを呈するために、大量の粉末を必要とする。好ましい比表面積は50〜380m2/gである。紛体の比表面積がこの範囲であれば流れ性がよいものとなる。
紛体の比表面積は、窒素ガス吸着法によって測定する。すなわち、液体窒素温度下での窒素ガスの等温吸着曲線からBET式を用いて比表面積を計算する。用いる測定装置は柴田科学器械工業株式会社製の表面積測定装置、型式SA−1000を用いる。
【0019】
ポリオール組成物中に含まれる紛体の含有量は、ポリオール成分100重量部に対して0.1〜10重量部である。紛体の含有量がポリオール成分100重量部に対して0.1重量部未満であれば、絶縁性ポリウレタン樹脂組成物がチキソトロピーを呈さない。一方、10重量部を超えると得られる絶縁性硬化物が重く、もろくなる。
該紛体のポリオール組成物中の好ましい含有量は流れ性及び作業性の点から、ポリオール成分100重量部に対して1〜5重量部である。
【0020】
本発明のポリオール組成物とポリイソシアネートとを混合して絶縁性ポリウレタン樹脂組成物を得る。
【0021】
本発明のポリオール組成物と反応させるポリイソシアネートとしては、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート等が挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(粗MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ポリトリレンポリイソシアネート(粗TDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)等が挙げられる。脂肪族ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等が挙げられる。脂環式ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等が挙げられる。この他に、上記ポリイソシアネートをカルボジイミドで変性したポリイソシアネート(カルボジイミド変性ポリイソシアネート)、イソシアヌレート変性ポリイソシアネート、ウレタンプレポリマー(例えばポリオールと過剰のポリイソシアネートとの反応生成物であってイソシアネート基を分子末端にもつもの)等も使用できる。これらは単独あるいは混合物として使用してもよい。
これらの中でも、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、カルボジイミド変性ポリイソシアネートが好ましい。
【0022】
ポリイソシアネート、ポリオールの配合量は、目的とする絶縁性硬化物の硬度等の物性によって適宜決められるが、通常、水酸基に対してイソシアネート基が0.65〜1.2倍当量、好ましくは0.8〜1.1倍当量である。
【0023】
本発明のポリオール組成物から得られる絶縁性ポリウレタン樹脂組成物は、電気洗濯機、便座、湯沸し器、浄水器、風呂、食器洗浄機等のスイッチ部や電動工具等に使用されている電子、電気部品に含まれる電気・電子回路を水分、湿気から保護するために該回路を封止する封止剤、電気、電子機器のシーリング剤やコーティング剤、及びコンデンサーやコンバーターの絶縁材料等として好適に使用される。
【0024】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳しく説明する。ただし本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
まず、以下に実施例、比較例で行った試験方法を記載する。
【0025】
絶縁性ポリウレタン樹脂組成物の流れ性の測定
25℃で、ポリオール組成物とMDIとを1/1等量比で混合し、60°に傾斜させたアルミ板上に1g滴下し、該滴がアルミ板上を移動した距離が滴下した場所から10mm以内であれば合格(○)とし、10mmを超えるものは不合格(×)とした。
【0026】
絶縁性ポリウレタン樹脂組成物の作業性の測定
タンクに充填されたポリオール組成物とMDIとの1/1等量比混合物を、圧力1kg/cm2で押し出す。この時、直径2mmのノズルから押し出されれば合格(○)、押し出されなければ不合格(×)とした。
【0027】
硬化物の硬さの測定
得られた硬化物の硬さを、アスカーJA型硬度計Aタイプ(高分子計器株式会社製)を使用して測定した。
【0028】
実施例1〜9
表1に示すポリオール(a)及びポリオール(b)に表1に示す紛体を加えてポリオール組成物を得た。表1中のポリオール及び紛体の物性は表2及び表3に示す。
得られた絶縁性ポリウレタン樹脂組成物の流れ性及び作業性を測定した。結果を表1に示す。
(硬化物の形成)
該絶縁性ポリウレタン樹脂組成物を60℃で24時間放置して硬化物を得た。
得られた硬化物の硬さを測定した。結果を表1に示す。
【0029】
【表1】
Figure 0003717453
【0030】
【表2】
Figure 0003717453
【0031】
【表3】
Figure 0003717453
【0032】
比較例1〜9
実施例1と同様にして、表4に示すポリオール成分、紛体を使用して、絶縁性ポリウレタン樹脂組成物を得、さらに硬化物を得た。得られた組成物の流れ性及び作業性の結果及び硬化物の硬さを表4に示す。
【0033】
【表4】
Figure 0003717453
【0034】
【発明の効果】
本発明のポリオール組成物は、得られる絶縁性硬化物が軽量で、もろくなく、しかもチキソトロピーを呈する絶縁性ポリウレタン樹脂組成物を提供することができる。

Claims (3)

  1. ポリオール成分と、該ポリオール成分100重量部に対して0.1〜10重量部の紛体とを含有し、
    前記ポリオール成分は、酸素含有率が20重量%以下のポリオールを該ポリオール成分中90〜99.9重量%と、酸素含有率が30重量%以上のポリオールを前記ポリオール成分中0.1〜10重量%含み、前記紛体は比表面積が50m2/g以上であることを特徴とするポリオール組成物。
  2. ポリオール成分のヨウ素価が155mgKOH/g以下である請求項1記載のポリオール組成物。
  3. 請求項1又は2記載のポリオール組成物とポリイソシアネートとを反応させてなることを特徴とする絶縁性ポリウレタン樹脂組成物。
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