JP3717389B2 - 吸気管 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車の吸気系等に用いられて好適な吸気管に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車においては、エンジンに空気を取り込むために吸気管が設けられる。この吸気管からは、中を通る高速気流の通過音やエンジンの弁の開閉音が発生し、これが吸気口から発散して騒音となる。近時、自動車では、すべての騒音の抑制が叫ばれており、この騒音も例外ではない。このため、吸気管には種々の騒音対策が施されるが、このうち、吸気管に始点(絞り部)から始まって下流側ほど拡径するディフューザ部を形成するのが、コストをかけずに大きな効果が得られるとして注目されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
吸気管にディフューザ部を設けると、吸気管に発生する騒音が絞り部で抑えられて外部への発散が抑制されるからであるが、反対に、管の途中にこのようなディフューザ部を設けると、管壁近くの境界層を流れる気流が管壁から剥離し、その結果、気流全体に圧力損失が起こり、流れを悪くすると言われている。この場合、ディフューザ広がり角が大きいほど、騒音の抑制効果は大きいが、一方で、圧力損失も大きいと推察される。このため、ディフューザ部に圧力損失を補償するある種の細工を施し、これによってある程度のディフューザ広がり角を確保しようとする試みがなされている。
【0004】
具体的には、ディフューザ部に周方向に溝を形成したり、粗面にしたりすることであり、これによって境界層内を流れる気流に乱れを生じさせ、剥離を抑制しようとするものである。本発明も、これに則ったものであるが、溝や粗面加工よりも性能に優れ、かつ、形成の容易な突条を管の内周に突設するとともに、その位置もディフューザ部の始点より前方部分に設けることで、一層の性能向上と低コスト化を可能にしたものである。換言すれば、本発明は、ディフューザ部を形成することによる圧力損失を極力低減させるようにし、その結果、ある程度ディフューザ角を大きく取れるようにして騒音の抑制に効果あらしめるようにしたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
以上の課題の下、本発明は、始点から始まって下流側ほど拡径するディフューザ部を有する吸気管において、始点より上流側に吸気口に続く前方部分を設けるとともに、この前方部分の内周に周方向に延びる下記a〜cを充たす突条を設けたことを特徴とする吸気管。
a.突条の高さ比(管径に対しての突条の高さ)が0.005〜0.01であること。
b.取付け位置(突条が取り付けられる始点から前方部分の上流距離を管径で除した値)が1.0付近であること。
c.広がり角(ディフューザ部の広がり角度)は15°以下であること。
を提供したものである。則ち、本発明は、管内面から突出する突条をディフューザ部の前方部分に設けたことを特徴とするものである。従って、境界層内を流れる気流の乱れはディフューザ部にさしかかる前に起こるから、ディフューザ部における剥離を抑制し、圧力損失を低減させる。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明に係る吸気管の一例を示す断面図であるが、この吸気管Pは、先端に形成された吸気口1に続く前方部分2を有し、前方部分2の終端を始点として下流ほど拡径するディフューザ部3を有するものである。これを図1において説明すると、Aの部分に吸気口1が形成され、AO間が前方部分2であり、このうち、本例では、AB間はベルマウス形状をしており、BO間はストレート形状をしているものである。そして、OC間が下流ほど拡径するディフューザ部3であり、Oがディフューザ部3の始点、Cが終点ということになる。
【0007】
本発明は、以上の吸気管Pの前方部分2に周方向に延びる突条7を形成したものである。この場合、突条7は、吸気管Pと一体に形成するのが通常であるが、別体のものを嵌着又は固着して取り付けてもよい。この突条7を形成する目的は、これによって境界層内を流れる気流に乱れを生じさせて表面からの剥離を抑制し、その結果、圧力損失を低減させようというものである。この機能を最大限に奏するためには、突条7の大きさや(取付)位置及びディフューザ広がり角等に最適な条件がある筈であり、本発明者等はこれを探査してみた。
【0008】
図2は吸気管を通過する気流の圧力損失を計測する装置の説明図であるが、供試の吸気管Pから下流側に順に流通管4、ブロア5、オリフィス流量計6を接続し、ブロア5を吸引して吸気管Pから空気を吸気し、これをオリフィス流量計6に流して圧力損失を調べるようにしたものである。この場合、供試の吸気管Pの前方部分2としては、ディフューザ部3の絞り部(始点)の管径2Rと等しい長さを有するストレート部Sとそれから先に形成されるベルマウス部Mとからなるものを採択した。そして、前方部分2に突条7を取り付けて流量計測をするのであるが、始点からの取付け位置までの長さをxとした。
【0009】
1.突条の高さ
突条を設けると、境界層内の気流の流れに乱れが生じ、その結果、剥離が抑制されて圧力損失が低減するのであるが、一方で、突条そのものは気流の円滑な流れを阻害するものであるから、あまり丈の高い突条を設けると、却って圧力損失を増大させることになる。そこで、突条の最適な高さを求めることとしたが、境界層の厚さは管径2Rにも関係するから、最適な突条の高さを、管径2Rに対する高さ比(突条の高さをhとすれば、h/2R)として求めた。種々の高さの突条を数多くテストした結果、高さ比h/2Rが0.001〜0.1の範囲であるときに効果が見られた。中でも、高さ比h/2Rが0.005〜0.01位の範囲で最大の効果があった。高さ比h/2Rがこれより小さいと、気流の乱し効果が薄く、大きいと、突条の存在による障害の方が大きくなるからだと思われる。
【0010】
2.突条の位置とディフューザ広がり角との関係
本発明は、ディフューザ部の始点よりも上流の前方部分に突条を設けることで、気流がディフューザ部にさしかかるまでには既に境界層の流れが乱れるようにして圧力損失を低減させようとするものであるが、このためにも、突条を前方部分のどの位置に設けるのが良いのかがある筈である。又、ディフューザ広がり角(以下、広がり角)も、どの程度まで許されるのかもある筈である。そこで、突条の高さ比h/2Rを0.007(h=0.4mm、2R=54mm)に固定し、広がり角θを5°、10°、15°、30°に変え、更に、突条の相対的取付位置x/2Rも0.53、1.0、1.25と変えてテストしてみた。
【0011】
図3〜図6はこの結果を示す損失係数ζとレイノルズ数Reとの関係の特性であるが、以下、これを広がり角θごとに見てみると、
1)θ=5°
突条なしが全体的に損失係数(圧力損失に対応する)が高い。次いで、損失係数は突条の相対的取付け位置(以下、取付け位置)x/2Rが0.53、1.0、1.25の順であり、絞り部に近い順に損失係数が高くなっている。これから、広がり角θが5°の場合、突条を設ける効果は認められ、しかも、その取付け位置x/2Rは絞り部から遠いほど圧力損失が低減することがわかった。尚、取付け位置x/2Rが1.0ということは、突条はストレート部Sとベルマウス部Mとの境目に設けられることであり、更に、これが1.25ということはベルマウス部Mに設けられることを意味しているが、このような位置に取り付けても突条の効果が生じているのがわかる。
【0012】
2)θ=10°
取付け位置x/2Rが0.53であると、突条がないものと比べても損失係数が高いが、1.0以上では効果が出ている。このことから、広がり角θが10°になると、取付け位置はx/2Rは0.53を越えなければ効果がないことが判明した。これより近いと、この広がり角θでは、ディフューザ部にさしかかる以前に境界層内の気流の乱れが十分に発生しないからだと思われる。但し、あまり遠い位置に設けても、突条によってディフューザ部における境界層の厚さが増大し過ぎ、効果は喪失するものと思われる。尚、この点については後述する。
【0013】
3)θ=15°
突条を設けることの向上の傾向は、広がり角θが10°の場合と同じであるが、効果が発生する取付け位置x/2Rが1.0以上の場合の損失係数の低減の度合いは前記した広がり角θが10°の場合よりは大きい。この点で、広がり角θが15°になると、既にその効果が低減し始めていることがわかる。
【0014】
4)θ=30°
突条の有無に関係なく、損失係数は高い。このことから、広がり角θが30°にまでなると、根相対的な損失係数も増大するし、突条を設ける意味もないことがわかる。
【0015】
5)前方部分の長さ
図7はストレート部Sの長さを4R(管径2Rの2倍)にして、取付け位置x/2Rが1.0、広がり角θが15°の場合の結果であるが、これを見ると、突条を設けることの効果は出ているが、損失係数の絶対値は上記した好結果が出ているものに比べてかなり高い。このことから、ストレート部Sを(従って、突条を取り付ける位置も)あまり長くすることは、吸気管Pそのものの圧力損失を高めることになってあまり好ましいことではないように思われる。この点で、管径2Rの2倍未満であろう。
【0016】
6)結論
以上のことから、突条を設ける意義、条件が見えてくる。則ち、吸気管の前方部分として絞り部の管径と同じかやや長い程度のものを採用し、突条の高さ比は0.005〜0.01位であり、これをその取付け位置x/2Rとして1.0付近に取り付け、しかも、広がり角θを15°程度以下に設定したものということになる。上記特性の中でもっとも好結果が出たものは、高さ比0.007の突条をその取付け位置x/2Rを1.25にし、広がり角θを10°に設定した場合であり、これにおいては、突条を設けた場合を設けない場合に比べてレイノルズ数Re6×104 〜12×104 の範囲での損失係数の低減量を図上値より計算してみると、平均で実に約40%であった。
【0017】
前記したように、本発明を効果的に適用するためには、前方部分として絞り部の管径かこれをやや越える程度のものは確保される必要はある。このため、限られた長さのものでも、ディフューザ部を後ろにずらせば、前方部分をとれるものとなる。尚、この前方部分はストレートな場合だけでなく、テーパの場合もあろうが、その場合であっても、突条を設ける効果はあるであろう。又、前方部分及びディフューザ部を含む吸気管形状は真っ直ぐばがりでなく、曲がっている場合もあろうが、このようなものでも突条を設ける効果はあるであろう。更に、突条は全周に亘って取り付けられるのが通常であるが、前方部分が湾曲している場合は、圧力損失に影響を及ぼす湾曲内側に部分的に取り付けられることもあるであろう。この他、前方部分の前端は吸気口に形成されるが、吸気口は一般にベルマウス形状になっている。従って、このベルマウス形状も前方部分ということになり、ここに突条を形成してもよいのは上述したとおりである。
【0018】
【発明の効果】
以上より、吸気管にディフューザ部を形成しても、その内周に高さ比がある範囲の突条をディフューザ部より所定の距離だけ前方に形成しておけば、突条を設けないものに比べて圧力損失を低減できる。従って、自動車の吸気管等において、騒音抑制に効果のあるディフューザ管にしても、この構成を施すことで圧力損失を軽減でき、吸気性能の低下を補償できる。加えて、近時の吸気管は樹脂を射出成形又はブロー成形して製作するが、このような突条の形成は当該成形型に所定の細工(射出成形であれば中型に凹溝、ブロー成形であれば外型に凸条)を施しておけば、極めて安価にできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一例を示す吸気管の断面図である。
【図2】本発明の一例を示す吸気管の圧力損失を調べる装置の説明図である。
【図3】本発明の結果を示す損失係数とレイノルズ数との関係の特性である。
【図4】本発明の結果を示す損失係数とレイノルズ数との関係の特性である。
【図5】本発明の結果を示す損失係数とレイノルズ数との関係の特性である。
【図6】本発明の結果を示す損失係数とレイノルズ数との関係の特性である。
【図7】本発明の結果を示す損失係数とレイノルズ数との関係の特性である。
P 吸気管
1 吸気口
2 前方部分
3 ディフューザ部
7 突条
Claims (2)
- 始点から始まって下流側ほど拡径するディフューザ部を有する吸気管において、始点より上流側に吸気口に続く前方部分を設けるとともに、この前方部分の内周に周方向に延びる下記a〜cを充たす突条を設けたことを特徴とする吸気管。
a.突条の高さ比(管径に対しての突条の高さ)が0.005〜0.01であること。
b.取付け位置(突条が取り付けられる始点から前方部分の上流距離を管径で除した値)が1.0付近であること。
c.広がり角(ディフューザ部の広がり角度)は15°以下であること。 - 突条が全周に亘って設けられる請求項1の吸気管。
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