JP3717266B2 - 新規な一酸化炭素吸着剤 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、一酸化炭素を含有する混合ガスから一酸化炭素を分離回収する目的に用いる一酸化炭素吸着剤に関する。更に詳しくは、本発明は、特定のジアミン化合物およびハロゲン化銅(I)からなる錯体をシリカゲルに担持してなる一酸化炭素吸着剤に関する。本発明の一酸化炭素吸着剤は、特定のジアミン化合物とハロゲン化銅(I)よりなる錯体をその溶媒に溶解して得られる溶液にシリカゲルを接触させた後、溶媒を除去することにより製造することができる。この一酸化炭素吸着剤を用いて、一酸化炭素を含む混合ガスより一酸化炭素を吸着分離することができるのみならず、一酸化炭素を吸着した複合体より一酸化炭素を脱着することにより、一酸化炭素濃度の高い混合ガスを得ることができる。また、操作上のミスなどによりこの吸着剤に空気などの酸素含有ガスが接触して一酸化炭素吸脱着能が低下した劣化吸着剤となっても、還元性気体、あるいは還元剤を含む溶液で処理することにより該劣化吸着剤の低下した一酸化炭素吸脱着能を増大させることができる。
【0002】
【従来の技術】
一酸化炭素は、有機合成の原料、鉱石の還元および燃料に用いられる。また、C1化学の主原料の一つである。一酸化炭素は、石炭、石油あるいは天然ガスなどを原料として、部分酸化法や水蒸気改質法などにより合成ガスとして製造される。また、製鉄所の副生ガスや石油精製のオフガスなどに含まれる。これらの場合、一酸化炭素は、水素、窒素、二酸化炭素、メタン、酸素などとの混合ガスとして得られる。これらの混合ガスは、いずれも多くの場合、水で飽和している。
従って、一酸化炭素を化学工業原料として用いるためには、混合ガスより分離することが必要である。
混合ガスより一酸化炭素を分離する方法としては、圧力スイング吸着法と温度スイング吸着法がある。圧力スイング吸着法とは、一酸化炭素吸着剤に一酸化炭素を含む混合ガスを接触させて、一酸化炭素を該吸着剤に吸着させ、その後、一酸化炭素を含有する該吸着剤を減圧処理にかけて吸着した一酸化炭素を脱着させて、一酸化炭素と該吸着剤を分離する方法である。温度スイング吸着法とは、一酸化炭素吸着剤に一酸化炭素を含む混合ガスを接触させて、一酸化炭素を該吸着剤に吸着させ、その後、一酸化炭素を含有する該吸着剤を加熱処理にかけて吸着した一酸化炭素を脱着させて、一酸化炭素と該吸着剤を分離する方法である。
【0003】
従来、この圧力スイング吸着法または温度スイング吸着法により一酸化炭素含有混合ガスから一酸化炭素を分離回収するための吸着剤として種々のものが提案されている。
例えば、ハロゲン化銅(I)または酸化銅(I)を溶媒中で撹拌し、溶液または懸濁液とした後、ここに活性炭を加え、しかる後に溶媒を減圧、留去などの方法で除くことによって得られる固体を吸着剤として用いる方法が提案されている(特開昭58−156517号公報、特開昭59−105841号公報参照)。また、銅(II)塩あるいは酸化銅(II)を溶媒中で撹拌し溶液とした後、これに活性炭を加え、しかる後に溶媒を減圧、留去などの方法で除くことによって得られる固体あるいは、これをさらに還元性気体を用いて処理することにより得られる固体を吸着剤として用いる方法が提案されている(特開昭59−69414号公報、特開昭59−136134号公報参照)。
【0004】
同様に、シリカやアルミナ、シリカアルミナに塩化銅(I)を溶媒に溶解させた溶液を接触させた後、溶媒を除去することにより得られる固体を吸着剤として用いる方法が提案されている(特開昭61−263635号公報、特開昭62−113710号公報参照)。
さらには、第1級、第2級及び第3級アミノ基及びそれらの組み合わせから選ばれたアミノ基を有するマクロレティキュラー型ポリスチレン系樹脂にハロゲン化銅(I)をその溶媒に溶解させた溶液を接触させた後、溶媒を除去することにより得られる固体を吸着剤として用いる方法が提案されている(特公平6−9651号公報参照)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の方法にはそれぞれ問題点がある。すなわち、上記ハロゲン化銅(I)、酸化銅(I)、銅(II)塩あるいは酸化銅(II)を活性炭に担持させた吸着剤を用いる方法では、一酸化炭素および二酸化炭素などを含む混合ガスから一酸化炭素を分離しようとする場合、一酸化炭素と同時に二酸化炭素なども吸着する傾向があるため、高純度の一酸化炭素を分離しがたいという欠点がある。さらに、ハロゲン化銅を用いる場合調製に溶媒として塩酸を用いるので、調製装置などの腐蝕が激しいという欠点がある。
【0006】
塩化銅(I)をシリカやアルミナ、シリカアルミナに担持させた吸着剤を用いる方法では、一酸化炭素の吸着量が小さいという欠点がある。さらに、調製に溶媒として塩酸を用いるので、調製装置などの腐蝕が激しいという欠点がある。
また、使用する溶媒量を減らし、且つ、あらかじめ担体を加熱しておいた状態で担体と塩化銅(I)溶液との接触を行うことによって得た吸着剤は、一酸化炭素の吸着量は増加するが吸着した一酸化炭素は減圧処理時に脱着しにくいという欠点がある。
第1級、第2級及び第3級アミノ基及びそれらの組み合わせから選ばれたアミノ基を有するマクロレティキュラー型ポリスチレン系樹脂と該マクロレティキュラー型ポリスチレン系樹脂に固定されているハロゲン化銅(I)からなる吸着剤を用いる方法では、該アミノ基を有する樹脂の製造コストが高く、従ってそれから製造される吸着剤は高価となる。また、そのアミノ基は高分子に結合しているので銅(I)イオンへの配位が困難であり、使用するハロゲン化銅(I)の量に対して吸着する一酸化炭素の量が小さいという欠点がある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このような状況下にあって、本発明者らは、一酸化炭素吸着に関する選択性が優れているとともに、高い一酸化炭素吸脱着能を有する一酸化炭素吸着剤を得るために鋭意研究を行なった。その結果、特定のジアミン化合物およびハロゲン化銅(I)よりなる錯体を、多孔性のシリカゲルに担持させてなる複合体は、従来の吸着剤と比較して、一酸化炭素を高い選択性で吸着できるばかりでなく、吸着された一酸化炭素が温和な条件下で容易に脱着され得ることを見出した。また、操作上のミスなどによりこの吸着剤に空気などの酸素含有ガスが接触して一酸化炭素吸脱着能が低下して劣化吸着剤となっても、還元性気体、あるいは還元剤を含む溶液で処理すると、劣化吸着剤の低下した一酸化炭素吸脱着能を増大させることができることを見出した。本発明は上記の知見に基づきなされたものである。
【0008】
すなわち、本発明の1つの基本的な態様によれば、式1
【化1】
(ここで、nは2または3であり、nが2の場合にはR1,R2,R3,R4のうち少なくとも2個が、またnが3の場合にはR1,R2,R3,R4のうち少なくとも1個が炭素数1〜4のアルキル基であり、残りは水素である。)
で表されるジアミン化合物およびハロゲン化銅(I)よりなる錯体をシリ
カゲルに担持してなる複合体よりなる一酸化炭素吸着剤が提供される。
【0009】
本発明の一酸化炭素吸着剤である上記の複合体は、上記 式1で示されるジアミン化合物とハロゲン化銅(I)とを、水酸基、シアノ基あるいはカルボニル基を有する溶媒またはハロゲン化炭化水素溶媒中で撹拌することにより得られる、式1で示されるジアミン化合物とハロゲン化銅(I)よりなる錯体の溶液に、シリカゲルを浸漬した後、溶媒を除去することにより製造することができる。
【0010】
本発明において、ハロゲン化銅(I)とは、例えば、塩化銅(I)、臭化銅(I)などである。
本発明において、上記式1で示されるジアミン化合物とは、例えば、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−エタンジアミン、N,N,N’−トリメチル−1,2−エタンジアミン、N,N−ジメチル−1,2−エタンジアミン、N,N,N’−トリエチル−1,2−エタンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N’−トリメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N−メチル−1,3−プロパンジアミンなどである。
本発明の一酸化炭素吸着剤である上記の複合体の製造の際に用いる、水酸基、シアノ基あるいはカルボニル基を有する溶媒とは、例えば、メタノール、エタノール、アセトニトリル、プロピオニトリル、アセトン、メチルエチルケトンなどである。また、ハロゲン化炭化水素溶媒とは、例えば、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタンなどである。
【0011】
本発明の一酸化炭素吸着剤である複合体における、上記式1で示されるジアミン化合物のハロゲン化銅(I)に対するモル比は0.2〜5.0、好ましくは0.5〜1.5である。このモル比は、本発明の一酸化炭素吸着剤である複合体の製造の際に用いる上記式1で示されるジアミン化合物とハロゲン化銅(I)との量比を調整することにより達成することができる。
【0012】
シリカゲルとしては、天然品および合成品が用いられるが、合成品が好ましく、その内キセロゲル(Xerogel)型のものが適当である。キセロゲル型のうち、破砕粒シリカゲルおよび球状シリカゲルが用いられる。比表面積50〜800m2/g、平均細孔径2〜70nm、粒度3〜50meshのものが用いられる。耐水性のあるシリカゲルが好ましく用いられる。
【0013】
本発明による式1で示されるジアミン化合物−ハロゲン化銅(I)錯体−シリカゲル複合体において、該錯体の担持量は、銅(I)のモル量換算で表してシリカゲル1g当たり0.2〜10mmolである。
【0014】
本発明の一酸化炭素吸着剤である複合体の製造方法においては、上記式1で示されるジアミン化合物とハロゲン化銅(I)よりなる錯体をその溶媒に溶解して得られる溶液にシリカゲルを接触させることにより、上記式1で示されるジアミン化合物−ハロゲン化銅(I)錯体−シリカゲル複合体を調製するが、以下、その方法について具体的に述べる。
【0015】
以下のすべての操作は、窒素のような不活性ガス雰囲気下で行う。まず、ハロゲン化銅(I)の溶液(20〜2000mmol/l、淡黄色)を調製する。ここで用いられる溶媒として、アセトニトリル、メタノール、エタノール、プロピオニトリル、アセトン、メチルエチルケトンなどが用いられる。この溶液に前記式1で示されるジアミン化合物をハロゲン化銅(I)の0.2〜5.0倍モル加え、0〜90℃で30分〜5時間撹拌または振とうする。この際、淡黄色のハロゲン化銅(I)溶液は無色透明もしくは薄青色、青色あるいは橙色に変色し、式1で示されるジアミン化合物−ハロゲン化銅(I)錯体が生成していることが分かる。この錯体溶液を溶液の重量に対して1〜100重量%の無色透明ないし白色不透明のシリカゲルに加え、0〜90℃で30分〜24時間振とうまたは撹拌する。その後、減圧して溶媒を除去し、0〜90℃、0.1〜10mmHgで30分〜5時間減圧乾燥して、均一に薄青色、青色、紫色、薄緑色あるいは茶色に着色した式1で示されるジアミン化合物−ハロゲン化銅(I)錯体−シリカゲル複合体を得ることができる。
【0016】
上記のようにして得られる式1で示されるジアミン化合物−ハロゲン化銅(I)錯体−シリカゲル複合体について、式1で示されるジアミン化合物−ハロゲン化銅(I)錯体の担持量の測定は、以下のようなチオシアン酸銅(I)法に従って行われる。すなわち、溶媒留去によりシリカゲルへ式1で示されるジアミン化合物−ハロゲン化銅(I)錯体を担持する際、シリカゲルに担持されずに容器内の表面に析出した式1で示されるジアミン化合物−ハロゲン化銅(I)錯体を濃塩酸で溶解し、水を加えて150〜300mlとする。酒石酸5gを加えた後、アンモニア水で僅かにアルカリ性とし、次に硫酸(1+1)を滴下して中和させ、さらにその約10mlを過剰に加える。溶液に亜硫酸ナトリウムを加え銅(I)に還元し、60℃に昇温後、亜硫酸ナトリウムを加えた10%チオシアン酸カリウム水溶液を、チオシアン酸銅(I)の沈澱が生じなくなるまで加える。1時間60℃に保った後、放冷して沈澱を沈降させ、あらかじめ重量を秤った濾紙(セルロース系メンブランフィルター)を用いて濾過し、1%硝酸アンモニウム溶液10mlで5回、20%エタノール10mlで5回洗浄し、100℃で3時間乾燥し、チオシアン酸銅(I)として秤量する。調製時に用いたハロゲン化銅(I)のモル量とこのチオシアン酸銅(I)のモル量との差よりシリカゲルに含有担持されている式1で示されるジアミン化合物−ハロゲン化銅(I)錯体の担持量を求める。
【0017】
前記したように、本発明による式1で示されるジアミン化合物−ハロゲン化銅(I)錯体−シリカゲル複合体において、該錯体の担持量は、銅(I)のモル量換算で表してシリカゲル1g当たり0.2〜10mmolである。
【0018】
この該式1で示されるジアミン化合物−ハロゲン化銅(I)錯体−シリカゲル複合体は、一酸化炭素を含む混合ガスと接触させると、薄青色、青色、紫色、薄緑色あるいは茶色から青色、青緑色、緑色あるいは褐色に変色する。従ってシリカゲル担持式1で示されるジアミン化合物−ハロゲン化銅(I)錯体に一酸化炭素が配位し、吸着されたことがわかる。すなわち本発明の式1で示されるジアミン化合物−ハロゲン化銅(I)錯体を担持してなる複合体は、優れた一酸化炭素吸着能を有し、一酸化炭素吸着剤として有用である。具体的な利用方法としては、本発明の一酸化炭素吸着剤に、一酸化炭素を含む混合ガスを接触させて一酸化炭素を該吸着剤に吸着させることにより、一酸化炭素を含む混合ガスから一酸化炭素を分離することができる。
【0019】
なお、前記したように、第1級、第2級及び第3級アミノ基及びそれらの組み合わせから選ばれたアミノ基を有するマクロレティキュラー型ポリスチレン系樹脂と該マクロレティキュラー型ポリスチレン系樹脂に固定されているハロゲン化銅(I)からなる吸着剤が提供されているが、該アミノ基を有する樹脂は、製造コストが高く、従ってそれから製造される吸着剤は高価となる。また、そのアミノ基は高分子に結合しているので銅(I)イオンへの配位が困難であり、一酸化炭素吸着能も低い。これに対し本発明における一酸化炭素吸着剤は、製造コストが低く、上記式1で示されるジアミン化合物−ハロゲン化銅(I)錯体自体がシリカゲルに担持されており、効果的に一酸化炭素を吸着できる。
【0020】
また、本発明の一酸化炭素吸着剤に一酸化炭素を含む混合ガスを接触させ、その後、一酸化炭素を吸着含有する青色、青緑色、緑色あるいは褐色の吸着剤を所定雰囲気下での40℃以上での加熱処理、減圧雰囲気への暴露処理および貧一酸化炭素雰囲気への暴露処理から選ばれる少なくとも1つの処理にかけると、吸着した一酸化炭素を脱着する。この方法により該処理雰囲気の一酸化炭素濃度を高めることができる。上記の所定雰囲気は、特に限定されないが、その例としては、窒素、少量の一酸化炭素を含有する窒素、またはその他の貧一酸化炭素雰囲気を挙げることができる。
【0021】
また、本発明によれば、本発明の吸着剤に空気などの酸素含有ガスが接触して一酸化炭素吸脱着能が低下して劣化吸着剤となっても、還元性気体、あるいは還元剤を含む溶液で処理することを包含する、劣化吸着剤の低下した一酸化炭素吸脱着能を増大させる方法が提供される。詳細に説明すれば、操作上のミスなどにより本発明の一酸化炭素吸着剤に空気などの酸素含有ガスが接触すると、薄青色、青色、紫色、薄緑色あるいは茶色から濃青色、濃緑色あるいは黒色に変色し、一酸化炭素吸脱着能が低下して劣化吸着剤となる。これは、シリカゲル上の[ジアミン化合物−ハロゲン化銅(I)]錯体が酸素により酸化され、その酸化された錯体は一酸化炭素を配位しないためである。この酸素含有ガスが接触して劣化した吸着剤は、一酸化炭素や水素などの還元性気体雰囲気下1気圧で100〜150℃での加熱処理をした後、0〜90℃0.1〜10mmHgで減圧処理することにより、薄青色あるいは茶色に変色する。この処理において、酸化された錯体は、水素や一酸化炭素などの還元性気体により還元され、酸素に接触する前の錯体に再生される。また、酸素含有ガスが接触して劣化した吸着剤は、仕込みのハロゲン化銅(I)の0.2〜6.0倍モルの例えばヒドロキノン、フェノール、カテコール、クエン酸ナトリウムなどの還元剤を含む溶液を加え、0〜90℃で30分〜24時間撹拌または振とうした後、溶液を除去し、0〜90℃で減圧乾燥することにより、茶色に変色する。還元剤の溶媒は例えばメタノール、アセトニトリル、ジエチルエーテル、メチルエチルケトンなどである。これらの処理により、酸素含有ガスに接触して劣化した吸着剤の一酸化炭素吸脱着能は増大し、酸素含有ガスに接触する前と実質的に同じ一酸化炭素吸脱着能まで再生することができる。
【0022】
上記し、更に以下の実施例に示すとおり、本発明による一酸化炭素吸着剤を0〜100℃で、0.5〜10atmの一酸化炭素分率(一酸化炭素が占める容積%)が1〜100%の混合ガスまたは一酸化炭素ガスと接触せしめると、迅速且つ選択的に一酸化炭素を吸着する。吸着した一酸化炭素は、一酸化炭素吸着剤を50〜150℃の範囲で昇温するか、0.1〜100mmHgの範囲で減圧するか、あるいは一酸化炭素分圧を0〜40%の範囲に減少せしめることにより容易に脱離放出させることができる。また、これらの条件を組み合わせることにより、一酸化炭素吸着剤に吸着した一酸化炭素は、前述よりもさらに穏やかな昇温、減圧および一酸化炭素分圧条件下で脱離放出させることが可能になり、雰囲気中の一酸化炭素濃度はさらに高められる。
【0023】
また、本発明による一酸化炭素吸着剤は、固体であるため、取り扱いが容易であり、充填塔形式、充填カラム形式、および流動層形式などの装置を一酸化炭素分離の装置として用いることができる。
本発明による調製法では、塩酸を溶媒に用いるものと比較して、調製装置等の腐触の危険性がない。また、溶媒に塩酸や水を用いるものに比較して、本発明による調製法では、溶媒に有機溶媒を用いており、蒸発潜熱が小さいことから、加熱、減圧留去の際、エネルギー的に有利であり、且つ、溶媒の回収、再利用が可能であることから省資源的にも優れており、産業上の価値は高い。
【0024】
【実施例】
次に実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例において、温度条件を記述していない場合は20℃、圧力条件を記述していない場合は1気圧下で操作を行なった。
【0025】
実施例1
塩化銅(I)は、関東化学株式会社製の特級試薬を濃塩酸に溶解し得られた溶液を蒸留水中に滴下して再沈精製し、エタノール、ついでエーテルで洗浄後、60℃で12時間、真空乾燥して使用した。N,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−エタンジアミンは、東京化成工業株式会社製の特級試薬を水素化カルシウム(ナカライテスク株式会社製;一級)で脱水処理をした後、減圧蒸留して使用した。アセトニトリルは、関東化学株式会社製の特級試薬をモレキュラーシーブ4Aを用いて脱水処理をした後、常圧蒸留して使用した。シリカゲルは富士シリシア化学株式会社製CARiACT−Q10(平均細孔径10nm、比表面積300m2/g、粒度5〜10mesh、無色透明)を1N−塩酸に一昼夜浸漬した後、上澄み溶液が中性になるまで蒸留水で置換、150℃、0.1mmHgで12時間真空処理したものを用いた。一酸化炭素は、日本酸素株式会社製の純一酸化炭素ボンベガス(99.95%以上)を、使用直前にモレキュラーシーブ3Aの充填塔を通して乾燥精製した。また窒素は日本酸素株式会社製の純窒素ボンベガス(純ガスB,99.9995%以上)をそのまま使用した。
【0026】
50mlの一口ナスフラスコ内を窒素置換した後、ここに0.49g(5.0mmol)の塩化銅(I)を入れ、アセトニトリル10mlを加えて溶解して淡黄色の溶液とした後、0.83ml(5.5mmol)のN,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−エタンジアミン(無色)を加え、磁気撹拌器を用いて1時間撹拌すると無色の溶液となった。
この色の変化により、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−エタンジアミンと塩化銅(I)の2成分錯体が生成したことが明らかである。
シリカゲル5.0gにこのN,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−エタンジアミンと塩化銅(I)の2成分錯体の溶液を加える。これを30oCで1時間振とうした後、フラスコ内の圧力を減じ、溶媒を除去する。その後、70oC、0.1mmHgで3時間真空乾燥し、均一に薄青色に着色したN,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−エタンジアミン−塩化銅(I)錯体−シリカゲル複合体を得た。
得られた複合体について、前記したチオシアン酸銅(I)法により、シリカゲルに含有担持されているN,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−エタンジアミン−塩化銅(I)錯体の担持量を測定した。その結果、複合体1.0gあたり該銅(I)錯体を0.81mmol含有担持していることが分かった。
【0027】
上記のようにして得た複合体6.0gを50ml一口ナスフラスコに入れ、30oCで0.1mmHgまで圧力を減じ、1気圧の純一酸化炭素600mlを入れた容器と二方活栓(標準#15、プラグの孔径3mm)を有する内径12mmのガラス管で連結し、該二方活栓を開くことにより、一酸化炭素をフラスコ中に拡散させ、30oCで一酸化炭素を吸着させた。一酸化炭素の吸着量はガスビュレット法により測定した。
本実施例により得られた複合体6.0gによる一酸化炭素の吸着は迅速で、1分で3.92mmol、3分で4.16mmol、5分で4.23mmol、10分で4.27mmolの一酸化炭素を吸着し、平衡吸着量に達した。複合体1.0gあたり10分で0.71mmolの一酸化炭素を吸着したことになる。
【0028】
この一酸化炭素を吸着した複合体6.1gを入れた50ml一口ナスフラスコを、30oCで10分間、0.6mmHgまで圧力を減じたところ、一酸化炭素を迅速に脱着した。このようにして一酸化炭素を脱着した複合体に、上記したのと同様な方法で再び一酸化炭素を吸着させると、1分で2.88mmol、3分で3.04mmol、5分で3.12mmol、10分で3.15mmolの一酸化炭素を吸着し、平衡吸着量に達した。以後、この吸脱着の操作を繰り返しても、一酸化炭素吸着速度、および吸着量には、ほとんど変化は見られなかった。
この一酸化炭素を吸着した複合体6.1gを入れた50ml一口ナスフラスコを、30oCで30分間、0.1mmHgまで圧力を減じたところ、一酸化炭素を迅速に脱着した。このようにして一酸化炭素を脱着した複合体に、上記したのと同様な方法で再び一酸化炭素を吸着させると、1分で3.61mmol、3分で3.81mmol、5分で3.88mmol、10分で3.91mmolの一酸化炭素を吸着し、平衡吸着量に達した。以後、この吸脱着の操作を繰り返しても、一酸化炭素吸着速度、および吸着量には、ほとんど変化は見られなかった。
【0029】
また、この一酸化炭素を吸着した複合体6.1gの温度を1気圧下で70℃に昇温したところ、一酸化炭素を迅速に脱着し、1分で0.69mmol、3分で0.79mmol、5分で0.81mmol、10分で0.83mmolの一酸化炭素を脱着して平衡に達し、再び吸着剤温度を1気圧下で30℃に戻して、一酸化炭素を吸着させると、脱着した量と等しい量(0.83mmol)の一酸化炭素を吸着した。以後、この吸脱着の操作を繰り返しても、一酸化炭素吸着速度および吸着量にはほとんど変化は見られなかった。
この一酸化炭素を吸着した複合体6.1gの温度を1気圧下で120oCに昇温したところ、一酸化炭素を迅速に脱着し、10分で3.06mmolの一酸化炭素を脱着して平衡に達し、再び吸着剤温度を1気圧下で30oC戻して、一酸化炭素を吸着させると、脱着した量と等しい量(3.06mmol)の一酸化炭素を吸着した。以後、この吸脱着の操作を繰り返しても、一酸化炭素吸着速度および吸着量には、ほとんど変化は見られなかった。
【0030】
本実施例で得た複合体6.0gを用いて、上記と同じ方法で二酸化炭素(日本酸素株式会社製の純二酸化炭素ボンベガス、99.99%以上)の吸着量を測定した。複合体は10分で0.45mmolの二酸化炭素を吸着した。
従って、この複合体は一酸化炭素を二酸化炭素の9.5倍吸着し、二酸化炭素を含むガス混合物から一酸化炭素を分離する機能を有することが分かった。
本実施例で得た複合体6.0gを用いて、上記と同じ方法でメタン(日本酸素株式会社製の標準メタンスプレー缶ガス、99.7%以上)の吸着量を測定した。複合体は10分で0.10mmolのメタンを吸着した。
従って、この複合体は一酸化炭素をメタンの42.7倍吸着し、メタンを含むガス混合物から一酸化炭素を分離する機能を有することが分かった。
【0031】
実施例2
塩化銅(I)1.98g(20.0mmol)、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−エタンジアミン3.32ml(22.0mmol)およびアセトニトリル40mlを用いる以外は、実施例1と同じ方法で複合体の調製を行った。その結果、実施例1よりも青色に着色したN,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−エタンジアミン−塩化銅(I)錯体−シリカゲル複合体が得られた。
前記したチオシアン酸銅(I)法により、シリカゲルに含有担持されているN,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−エタンジアミン−塩化銅(I)錯体の担持量を測定した。その結果、複合体1.0gあたり該銅(I)錯体を1.78mmol含有担持していることが分かった。
上記のようにして得た複合体7.3gを用いて、実施例1と同じ方法で一酸化炭素の吸着量を測定した。複合体の一酸化炭素の吸着は迅速で、1分で8.29mmol、3分で8.95mmol、5分で9.20mmol、10分で9.51mmolの一酸化炭素を吸着し、ほぼ平衡吸着量に達した。複合体1.0gあたり10分で1.30mmolの一酸化炭素を吸着したことになる。
本実施例で得た複合体7.3gを用いて、上記と同じ方法で二酸化炭素の吸着量を測定した。二酸化炭素は、10分で0.44mmol吸着した。
従って、この複合体は一酸化炭素を二酸化炭素の22倍吸着し、二酸化炭素を含むガス混合物から一酸化炭素を分離する能力が高いことが分かった。
【0032】
このように、シリカゲル量あたりに担持させる2成分錯体の量を増やすことによって、一酸化炭素吸着分離能を向上させることができることが分かった。
【0033】
実施例3
N,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−エタンジアミンの代わりにN,N,N’−トリメチル−1,2−エタンジアミンを使用する以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、N,N,N’−トリメチル−1,2−エタンジアミン−塩化銅(I)錯体−シリカゲル複合体を得た。
シリカゲル5.0g、塩化銅(I)5.0mmolおよびN,N,N’−トリメチル−1,2−エタンジアミン(東京化成工業株式会社製の一級試薬)5.5mmolを用い、実施例1と同様な方法で、均一に薄青色に着色したN,N,N’−トリメチル−1,2−エタンジアミン−塩化銅(I)錯体−シリカゲル複合体を調製した。
前記したチオシアン酸銅(I)法により、シリカゲルに含有担持されているN,N,N’−トリメチル−1,2−エタンジアミン−塩化銅(I)錯体の担持量を測定した。その結果、複合体1.0gあたり該銅(I)錯体を0.83mmol含有担持していることが分かった。
【0034】
上記のようにして得た複合体6.0gを用いて、実施例1と同じ方法で一酸化炭素の吸着量を測定した。複合体は、1分で4.12mmol、3分で4.33mmol、5分で4.40mmol、10分で4.43mmolの一酸化炭素を急速に吸着し、平衡吸着量に達した。複合体1.0gあたり10分で0.74mmolの一酸化炭素を吸着したことになる。
この一酸化炭素を吸着した複合体6.1gを入れた50ml一口ナスフラスコを、30oCで30分間、0.3mmHgまで圧力を減じたところ、一酸化炭素を迅速に脱着した。このようにして一酸化炭素を脱着した複合体に、上記したのと同様な方法で再び一酸化炭素を吸着させると、1分で3.70mmol、3分で3.88mmol、5分で3.92mmol、10分で3.95mmolの一酸化炭素を吸着し、平衡吸着量に達した。以後、この吸脱着の操作を繰り返しても、一酸化炭素吸着速度、および吸着量には、ほとんど変化は見られなかった。
また、この一酸化炭素を吸着した複合体6.1gの温度を1気圧下で70℃に昇温したところ、一酸化炭素を迅速に脱着し、10分で0.55mmolの一酸化炭素を脱着して平衡に達し、再び吸着剤温度を1気圧下で30℃に戻して、一酸化炭素を吸着させると、脱着した量と等しい量(0.55mmol)の一酸化炭素を吸着した。以後、この吸脱着の操作を繰り返しても、一酸化炭素吸着速度および吸着量にはほとんど変化は見られなかった。
【0035】
実施例4
N,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−エタンジアミンの代わりにN,N−ジメチル−1,2−エタンジアミンを使用する以外は、実施例1と同様の操作を繰返して、N,N−ジメチル−1,2−エタンジアミン−塩化銅(I)錯体−シリカゲル複合体を得た。
シリカゲル5.0g、塩化銅(I)5.0mmolおよびN,N−ジメチル−1,2−エタンジアミン(東京化成工業株式会社製の一級試薬)5.5mmolを用い、実施例1と同様な方法で、均一に紫色に着色したN,N−ジメチル−1,2−エタンジアミン−塩化銅(I)錯体−シリカゲル複合体を調製した。
前記したチオシアン酸銅(I)法により、シリカゲルに含有担持されているN,N−ジメチル−1,2−エタンジアミン−塩化銅(I)錯体の担持量を測定した。その結果、複合体1.0gあたり該銅(I)錯体を0.68mmol含有担持していることが分かった。上記のようにして得た複合体5.8gを用いて、実施例1と同じ方法で一酸化炭素の吸着量を測定した。複合体は、1分で1.23mmol、3分で1.25mmolの一酸化炭素を急速に吸着し、平衡吸着量に達した。複合体1.0gあたり3分で0.22mmolの一酸化炭素を吸着したことになる。
【0036】
実施例5
N,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−エタンジアミンの代わりにN,N,N’−トリエチル−1,2−エタンジアミンを使用する以外は、実施例1と同様の操作を繰返して、N,N,N’−トリエチル−1,2−エタンジアミン−塩化銅(I)錯体−シリカゲル複合体を得た。シリカゲル5.0g、塩化銅(I)5.0mmolおよびN,N,N’−トリエチル−1,2−エタンジアミン(東京化成工業株式会社製の一級試薬)5.5mmolを用い、実施例1と同様な方法で、均一に茶色に着色したN,N,N’−トリエチル−1,2−エタンジアミン−塩化銅(I)錯体−シリカゲル複合体を調製した。
前記したチオシアン酸銅(I)法により、シリカゲルに含有担持されているN,N,N’−トリエチル−1,2−エタンジアミン−塩化銅(I)錯体の担持量を測定した。その結果、複合体1.0gあたり該銅(I)錯体を0.80mmol含有担持していることが分かった。上記のようにして得た複合体6.2gを用いて、実施例1と同じ方法で一酸化炭素の吸着量を測定した。複合体は、一酸化炭素を急速に吸着し、1分で4.04mmol、3分で4.27mmol、5分で4.33mmol、10分で4.37mmolの一酸化炭素を吸着し、平衡吸着量に達した。 複合体1.0gあたりで10分で0.70mmolの一酸化炭素を吸着したことになる。
【0037】
実施例6
N,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−エタンジアミンの代わりにN,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミンを使用する以外は、実施例1と同様の操作を繰返して、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン塩化銅(I)錯体−シリカゲル複合体を得た。シリカゲル5.0g、塩化銅(I)5.0mmolおよび、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン(東京化成工業株式会社製の特級試薬)5.5mmolを用い、実施例1と同様な方法で、均一に薄緑色に着色したN,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン−塩化銅(I)錯体−シリカゲル複合体を調製した。
前記したチオシアン酸銅(I)法により、シリカゲルに含有担持されているN,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン−塩化銅(I)錯体の担持量を測定した。その結果、複合体1.0gあたり該銅(I)錯体を0.82mmol含有担持していることが分かった。
【0038】
上記のようにして得た複合体6.1gを用いて、実施例1と同じ方法で一酸化炭素の吸着量を測定した。複合体は、1分で3.05mmol、3分で3.38mmol、5分で3.52mmol、10分で3.61mmolの一酸化炭素を急速に吸着し、平衡吸着量に達した。複合体1.0gあたり10分で0.59mmolの一酸化炭素を吸着したことになる。
この一酸化炭素を吸着した複合体6.2gを入れた50ml一口ナスフラスコを、30oCで30分間、0.1mmHgまで圧力を減じたところ、一酸化炭素を迅速に脱着した。このようにして一酸化炭素を脱着した複合体に、上記したのと同様な方法で再び一酸化炭素を吸着させると、1分で2.99mmol、3分で3.28mmol、5分で3.39mmol、10分で3.43mmolの一酸化炭素を吸着し、平衡吸着量に達した。以後、この吸脱着の操作を繰り返しても、一酸化炭素吸着速度、および吸着量には、ほとんど変化は見られなかった。また、この一酸化炭素を吸着した複合体6.2gの温度を1気圧下で70℃に昇温したところ、一酸化炭素を迅速に脱着し、10分で1.45mmolの一酸化炭素を脱着して平衡に達し、再び吸着剤温度を1気圧下で30℃に戻して、一酸化炭素を吸着させると、脱着した量と等しい量(1.45mmol)の一酸化炭素を吸着した。以後、この吸脱着の操作を繰り返しても、一酸化炭素吸着速度および吸着量にはほとんど変化は見られなかった。
【0039】
実施例7
N,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−エタンジアミンの代わりにN,N,N’−トリメチル−1,3−プロパンジアミンを使用する以外は、実施例1と同様の操作を繰返して、N,N,N’−トリメチル−1,3−プロパンジアミン−塩化銅(I)錯体−シリカゲル複合体を得た。シリカゲル5.0g、塩化銅(I)5.0mmolおよびN,N,N’−トリメチル−1,3−プロパンジアミン(Aldrich Chemical Company,Inc.社製)5.5mmolを用い、実施例1と同様な方法で、均一に薄緑色に着色したN,N,N’−トリメチル−1,3−プロパンジアミン−塩化銅(I)錯体−シリカゲル複合体を調製した。
前記したチオシアン酸銅(I)法により、シリカゲルに含有担持されているN,N,N’−トリメチル−1,3−プロパンジアミン−塩化銅(I)錯体の担持量を測定した。その結果、複合体1.0gあたり該銅(I)錯体を0.82mmol含有担持していることが分かった。
【0040】
上記のようにして得た複合体6.1gを用いて、実施例1と同じ方法で一酸化炭素の吸着量を測定した。複合体は、1分で3.90mmol、3分で4.18mmol、5分で4.27mmol、10分で4.33mmolの一酸化炭素を急速に吸着し、平衡吸着量に達した。複合体1.0gあたり10分で0.71mmolの一酸化炭素を吸着したことになる。
この一酸化炭素を吸着した複合体6.2gの温度を1気圧下で70oCに昇温したところ、一酸化炭素を迅速に脱着し、10分で1.02mmolの一酸化炭素を脱着して平衡に達し、再び吸着剤温度を1気圧下で30oCに戻して、一酸化炭素を吸着させると、脱着した量と等しい量(1.02mmol)の一酸化炭素を吸着した。以後、この吸脱着の操作を繰り返しても、一酸化炭素吸着速度および吸着量にはほとんど変化は見られなかった。
【0041】
実施例8
N,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−エタンジアミンの代わりに、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミンを使用する以外は、実施例1と同様の操作を繰返して、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン−塩化銅(I)錯体−シリカゲル複合体を得た。シリカゲル5.0g、塩化銅(I)5.0mmolおよびN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン(東京化成工業株式会社製の一級試薬)5.5mmolを用い、実施例1と同様な方法で、均一に薄青色に着色したN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン−塩化銅(I)錯体−シリカゲル複合体を調製した。
前記したチオシアン酸銅(I)法により、シリカゲルに含有担持されているN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン−塩化銅(I)錯体の担持量を測定した。その結果、複合体1.0gあたり該銅(I)錯体を0.82mmol含有担持していることが分かった。
【0042】
上記のようにして得た複合体6.0gを用いて、実施例1と同じ方法で一酸化炭素の吸着量を測定した。複合体は、1分で3.56mmol、3分で3.98mmol、5分で4.12mmol、10分で4.22mmolの一酸化炭素を急速に吸着し、平衡吸着量に達した。複合体1.0gあたり10分で0.70mmolの一酸化炭素を吸着したことになる。
この一酸化炭素を吸着した複合体6.1gの温度を1気圧下で70oCに昇温したところ、一酸化炭素を迅速に脱着し、10分で1.80mmolの一酸化炭素を脱着して平衡に達し、再び吸着剤温度を1気圧下で30oCに戻して、一酸化炭素を吸着させると、脱着した量と等しい量(1.80mmol)の一酸化炭素を吸着した。以後、この吸脱着の操作を繰り返しても、一酸化炭素吸着速度および吸着量にはほとんど変化は見られなかった。
【0043】
実施例9
N,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−エタンジアミンの代わりにN,N’−ジメチル−1,3−プロパンジアミンを使用する以外は、実施例1と同様の操作を繰返して、N,N’−ジメチル−1,3−プロパンジアミン−塩化銅(I)錯体−シリカゲル複合体を得た。シリカゲル5.0g、塩化銅(I)5.0mmolおよびN,N’−ジメチル−1,3−プロパンジアミン(Aldrich Chemical Company,Inc.社製)5.5mmolを用い、実施例1と同様な方法で、均一に薄青緑色に着色したN,N’−ジメチル−1,3−プロパンジアミン−塩化銅(I)錯体−シリカゲル複合体を調製した。
前記したチオシアン酸銅(I)法により、シリカゲルに含有担持されているN,N’−ジメチル−1,3−プロパンジアミン−塩化銅(I)錯体の担持量を測定した。その結果、複合体1.0gあたり該銅(I)錯体を0.82mmol含有担持していることが分かった。
【0044】
上記のようにして得た複合体6.0gを用いて、実施例1と同じ方法で一酸化炭素の吸着量を測定した。複合体は、1分で3.93mmol、3分で4.20mmol、5分で4.30mmol、10分で4.34mmolの一酸化炭素を急速に吸着し、平衡吸着量に達した。複合体1.0gあたり10分で0.72mmolの一酸化炭素を吸着したことになる。
この一酸化炭素を吸着した複合体6.1gの温度を1気圧下で70oCに昇温したところ、一酸化炭素を迅速に脱着し、10分で0.89mmolの一酸化炭素を脱着して平衡に達し、再び吸着剤温度を1気圧下で30oCに戻して、一酸化炭素を吸着させると、脱着した量と等しい量(0.89mmol)の一酸化炭素を吸着した。以後、この吸脱着の操作を繰り返しても、一酸化炭素吸着速度および吸着量にはほとんど変化は見られなかった。
【0045】
実施例10
N,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−エタンジアミンの代わりにN−メチル−1、3−プロパンジアミンを使用する以外は、実施例1と同様の操作を繰返して、N−メチル−1,3−プロパンジアミン−塩化銅(I)錯体−シリカゲル複合体を得た。
シリカゲル5.0g、塩化銅(I)5.0mmolおよびN−メチル−1,3−プロパンジアミン(東京化成工業株式会社製の一級試薬)5.5mmolを用い、実施例1と同様な方法で、均一に青色に着色したN−メチル−1,3−プロパンジアミン−塩化銅(I)錯体−シリカゲル複合体を調製した。
前記したチオシアン酸銅(I)法により、シリカゲルに含有担持されているN−メチル−1、3−プロパンジアミン−塩化銅(I)錯体の担持量を測定した。その結果、複合体1.0gあたり該銅(I)錯体を0.80mmol含有担持していることが分かった。
【0046】
上記のようにして得た複合体5.9gを用いて、実施例1と同じ方法で一酸化炭素の吸着量を測定した。複合体は、1分で3.24mmol、3分で3.49mmol、5分で3.56mmol、10分で3.60mmolの一酸化炭素を急速に吸着し、平衡吸着量に達した。複合体1.0gあたり10分で0.61mmolの一酸化炭素を吸着したことになる。
この一酸化炭素を吸着した複合体6.0gの温度を1気圧下で70oCに昇温したところ、一酸化炭素を迅速に脱着し、10分で1.10mmolの一酸化炭素を脱着して平衡に達し、再び吸着剤温度を1気圧下で30oC戻して、一酸化炭素を吸着させると、脱着した量と等しい量(1.10mmol)の一酸化炭素を吸着した。以後、この吸脱着の操作を繰り返しても、一酸化炭素吸着速度および吸着量にはほとんど変化は見られなかった。
【0047】
実施例11
実施例1で得たN,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−エタンジアミン−塩化銅(I)−シリカゲル複合体6.0gに、操作上のミスを想定して、大気圧の空気に20oCで10秒間接触させた後、窒素下に保った。この複合体を用いて、実施例1と同じ方法で一酸化炭素の吸着量を測定した。空気に10秒間接触させた後の複合体は、1分で2.95mmol、3分で3.10mmol、5分で3.15mmol、10分で3.18mmolの一酸化炭素を吸着し、平衡吸着量に達した。
空気に10秒間接触させた後の複合体の一酸化炭素吸着量は、空気に接触させていない複合体の一酸化炭素吸着量の74.5%であり、複合体は空気に接触すると一酸化炭素吸着量が減少することが分かった。
【0048】
空気に10秒間接触させた後の複合体を、1気圧の一酸化炭素下、120oCで3時間加熱処理した後、70oCで3時間、0.1mmHgまで圧力を減じた。この複合体を用いて実施例1と同じ方法で一酸化炭素の吸着量を測定した。
空気に10秒間接触させた後一酸化炭素で処理した複合体は、1分で3.88mmol、3分で4.10mmol、5分で4.17mmol、10分で4.22mmolの一酸化炭素を吸着し、平衡吸着量に達した。
空気に10秒間接触させた後一酸化炭素で処理した複合体の一酸化炭素吸着量は、空気に接触させていない複合体の一酸化炭素吸着量の98.8%であり、複合体は空気に接触して一酸化炭素吸着量が低下しても、一酸化炭素で処理することにより一酸化炭素吸着量を空気に接触させていない複合体の一酸化炭素吸着量まで再生できることが分かった。
【0049】
実施例12
実施例1で得たN,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−エタンジアミン−塩化銅(I)−シリカゲル複合体6.0gに、1気圧の酸素(日本酸素社製;純ガスB,99.9%以上)に20oCで30分間接触させた後、窒素下に保った。この複合体を用いて、実施例1と同じ方法で一酸化炭素の吸着量を測定した。酸素に30分間接触させた後の複合体は、1分で0.15mmol、3分で0.17mmol、5分で0.19mmol、10分で0.20mmolの一酸化炭素を吸着し、平衡吸着量に達した。
酸素に30分間接触させた後の複合体の一酸化炭素吸着量は、酸素に接触させていない複合体の一酸化炭素吸着量の4.7%であり、複合体は酸素に接触すると一酸化炭素吸着量が減少することが分かった。
【0050】
酸素に30分間接触させた後の複合体を、1気圧の一酸化炭素下、120oCで3時間加熱処理した後、70oCで3時間、0.1mmHgまで圧力を減じた。この複合体を用いて実施例1と同じ方法で一酸化炭素の吸着量を測定した。酸素に30分間接触させた後一酸化炭素で処理した複合体は、1分で3.90mmol、3分で4.14mmol、5分で4.19mmol、10分で4.25mmolの一酸化炭素を吸着し、平衡吸着量に達した。
酸素に30分間接触させた後一酸化炭素で処理した複合体の一酸化炭素吸着量は、酸素に接触させていない複合体の一酸化炭素吸着量の99.5%であり、複合体は、たとえ、酸素に接触して一酸化炭素吸着量が大きく低下しても、一酸化炭素で処理することにより一酸化炭素吸着量を酸素に接触させていない複合体の一酸化炭素吸着量まで再生できることが分かった。
【0051】
実施例13
実施例1で得たN,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−エタンジアミン−塩化銅(I)−シリカゲル複合体6.0gに、1気圧の酸素に20oCで30分間接触させた後、窒素下に保った。この複合体を1気圧の水素(日本酸素社製;99.99999%以上)下、120oCで3時間加熱処理した後、70oCで3時間、0.1mmHgまで圧力を減じた。この酸素に30分間接触させた後水素で処理した複合体を用いて実施例1と同じ方法で一酸化炭素の吸着量を測定した。酸素に30分間接触させた後水素で処理した複合体は、1分で1.13mmol、3分で1.19mmol、5分で1.21mmol、10分で1.24mmolの一酸化炭素を吸着し、平衡吸着量に達した。
酸素に30分間接触させた後水素で処理した複合体の一酸化炭素吸着量は、酸素に接触させていない複合体の一酸化炭素吸着量の29.0%であり、水素での処理により24.3%増大した。従って、複合体は酸素に接触して一酸化炭素吸着量が低下しても、水素で処理することで一酸化炭素吸着量を増大できることが分かった。
【0052】
実施例14
実施例1で得たN,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−エタンジアミン−塩化銅(I)−シリカゲル複合体6.0gに、1気圧の酸素に20oCで30分間接触させた後、窒素下に保った。2.5mmolのヒドロキノンを10mlのジエチルエーテルに溶解させた溶液を、この複合体に加え、30oCで1時間振とうした後、溶液を除去し、70oCで3時間、0.1mmHgまで圧力を減じた。この酸素に30分間接触させた後ヒドロキノンで処理した複合体を用いて実施例1と同じ方法で一酸化炭素の吸着量を測定した。酸素に30分間接触させた後ヒドロキノンで処理した複合体は、1分で2.94mmol、3分で3.06mmol、5分で3.11mmol、10分で3.18mmolの一酸化炭素を吸着し、平衡吸着量に達した。
酸素に30分間接触させた後ヒドロキノンで処理した複合体の一酸化炭素吸着量は、酸素に接触させていない複合体の一酸化炭素吸着量の74.5%であり、ヒドロキノンでの処理により69.8%増大した。従って、複合体は酸素に接触して一酸化炭素吸着量が低下しても、ヒドロキノンで処理することで一酸化炭素吸着量を増大できることが分かった。
【0053】
実施例11、12、13、14から明らかなように、式1で示されるジアミン化合物−ハロゲン化銅(I)−シリカゲル複合体は、操作上のミスなどにより空気などの酸素含有ガスが接触して一酸化炭素吸脱着能が低下しても、還元性気体、あるいは還元剤を含む溶液で処理することにより一酸化炭素吸脱着能を再生あるいは増大させることができることが分かった。
【0054】
実施例15
実施例1におけるアセトニトリルの代わりに、メタノールを使用して、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−エタンジアミン−塩化銅(I)錯体−シリカゲル複合体を得た。
塩化銅(I)は、関東化学株式会社製の特級試薬を濃塩酸に溶解し得られた溶液を蒸留水中に滴下して再沈精製し、エタノール、次いでエーテルで洗浄後、60oCで12時間、真空乾燥して使用した。N,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−エタンジアミンは、東京化成工業株式会社製の特級試薬を水素化カルシウム(ナカライテスク株式会社製;一級)で脱水処理をした後、減圧蒸留して使用した。メタノールは、関東化学株式会社製の一級試薬を関東化学株式会社製のマグネシウム(リボン状)を用いて脱水処理をした後、常圧蒸留して使用した。シリカゲルは富士シリシア化学株式会社製CARiACT−Q10(平均細孔径10nm、比表面積300m2/g、粒度5〜10mesh、無色透明)を1N−塩酸に一昼夜浸漬した後、上澄み溶液が中性になるまで蒸留水で置換、150oC、0.1mmHgで12時間真空処理したものを用いた。一酸化炭素は、日本酸素株式会社製の純一酸化炭素ボンベガス(99.95%以上)を、使用直前にモレキュラーシーブ3A充填塔を通して乾燥精製した。また窒素は日本酸素株式会社製の純窒素ボンベガス(純ガスB、99.9995%以上)をそのまま使用した。
50mlの一口ナスフラスコ内を窒素置換した後、ここに0.49g(5.0mmol)の塩化銅(I)を入れ、メタノール10mlを加えて白色懸濁液とした後、0.83ml(5.5mmol)のN,N,N’,N’−テトラメチル1,2−エタンジアミン(無色)を加え、磁気撹拌器を用いて1時間撹拌すると無色の透明な溶液となった。
この懸濁液から溶液への変化により、N,N,N’,N’−テトラメチル1,2−エタンジアミンと塩化銅(I)の2成分錯体が生成したことが明らかである。 シリカゲル5.0gにこのN,N,N’,N’−テトラメチル1,2−エタンジアミンと塩化銅(I)の2成分錯体の溶液を加えた。これを30oCで1時間振とうした後、フラスコ内の圧力を減じ、溶媒を除去した。その後、70oC、0.1mmHgで3時間真空乾燥し、紫色に着色したN,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−エタンジアミン−塩化銅(I)錯体−シリカゲル複合体を得た。
得られた複合体について、前記したチオシアン酸銅(I)法により、シリカゲルに含有担持されているN,N,N’,N’−テトラメチル1,2−エタンジアミン−塩化銅(I)錯体の担持量を測定した。その結果、複合体1.0gあたり該銅(I)錯体を0.65mmol含有担持していることがわかった。
上記のようにして得た複合体5.8gを50ml一口ナスフラスコに入れ、30oCで0.1mmHgまで圧力を減じ、1気圧の純一酸化炭素600mlを入れた容器と二方活栓(標準#15、プラグの孔径3mm)を有する内径12mmのガラス管で連結し、該二方活栓を開くことにより、一酸化炭素をフラスコ中に拡散させ、30oCで一酸化炭素を吸着させた。一酸化炭素の吸着量はガスビュレット法により測定した。
本実施例により得られた複合体5.8gによる一酸化炭素の吸着は迅速で、1分で3.14mmol、3分で3.30mmol、5分で3.37mmol、10分で3.42mmolの一酸化炭素を吸着し、平衡吸着量に達した。複合体1.0gあたり10分で0.59mmolの一酸化炭素を吸着したことになる。
【0055】
比較例1
N,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−エタンジアミンを加えないこと以外は、実施例1と同様の操作を繰返し、塩化銅(I)−シリカゲル複合体を得た。
シリカゲル5.0gおよび塩化銅(I)5.0mmolを用い、実施例1と同様な方法で、白色の塩化銅(I)−シリカゲル複合体を調製した。
前記したチオシアン酸銅(I)法により、シリカゲルに含有担持されている塩化銅(I)の担持量を測定した。その結果、複合体1.0gあたり塩化銅(I)を0.76mmol含有担持していることが分かった。
上記のようにして得た複合体5.4gを用いて、実施例1と同じ方法で一酸化炭素の吸着量を測定した。複合体は、1分で0.37mmol、3分で0.41mmol、5分で0.43mmol、10分で0.45mmolの一酸化炭素を吸着し、平衡吸着量に達した。複合体1.0gあたり10分で0.08mmolの一酸化炭素を吸着したことになる。
実施例1で得たN,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−エタンジアミン−塩化銅(I)錯体−シリカゲル複合体は、本比較例で得た塩化銅(I)−シリカゲル複合体より、一酸化炭素を9.5倍吸着し、一酸化炭素吸着能が高いことが分かった。
【0056】
本比較例で得た複合体5.4gを用いて、上記と同じ方法で二酸化炭素の吸着量を測定した。二酸化炭素は、10分で0.92mmol吸着した。
従って、この複合体は一酸化炭素より、二酸化炭素を2.0倍吸着し、二酸化炭素を含むガス混合物から一酸化炭素を分離する能力が低いことが分かった。
実施例1で得たN,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−エタンジアミン−塩化銅(I)錯体−シリカゲル複合体は、本比較例で得た塩化銅(I)−シリカゲル複合体より、二酸化炭素を0.5倍しか吸着せず、二酸化炭素を含むガス混合物から一酸化炭素を分離する能力が高いことが分かった。
本比較例で得た複合体5.4gを用いて、上記と同じ方法でメタンの吸着量を測定した。メタンは、10分で0.13mmol吸着した。
従って、実施例1で得たN,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−エタンジアミン−塩化銅(I)錯体−シリカゲル複合体は、本比較例で得た塩化銅(I)−シリカゲル複合体より、メタンを0.8倍しか吸着せず、メタンを含むガス混合物から一酸化炭素を分離する能力が高いことが分かった。
【0057】
上述のように、式1で示されるジアミン化合物−ハロゲン化銅(I)2成分錯体−シリカゲル複合体は、ハロゲン化銅(I)−シリカゲル複合体よりも、一酸化炭素吸脱着能が高いことが分かった。
【0058】
比較例2
シリカゲルを加えない以外は実施例1と同様の操作を繰返し、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−エタンジアミン−塩化銅(I)錯体を得た。
塩化銅(I)5.0mmolおよびN,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−エタンジアミン5.5mmolを用い、実施例1と同様な方法で、白色のN,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−エタンジアミン−塩化銅(I)錯体を調製した。
上記のようにして得た錯体0.8gを用いて、実施例1と同じ方法で一酸化炭素の吸着量を測定した。錯体は、一酸化炭素をほとんど吸着せず、10分で1.59mmolの一酸化炭素を吸着し、平衡吸着量に達した。
実施例1で得たN,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−エタンジアミン−塩化銅(I)錯体−シリカゲル複合体は、本比較例で得たN,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−エタンジアミン−塩化銅(I)錯体より、一酸化炭素を2.7倍吸着し、一酸化炭素吸着能が高いことが分かった。
【0059】
上述のように、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−エタンジアミン−ハロゲン化銅(I)−2成分錯体は、シリカゲルに担持してN,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−エタンジアミン−ハロゲン化銅(I)2成分錯体−シリカゲル複合体とすることで、高い一酸化炭素吸脱着能を発現することが分かった。
【0060】
【発明の効果】
上記したように、式1で示される化合物およびハロゲン化銅(I)よりなる2成分錯体をシリカゲルに担持してなる本発明の複合体は、一酸化炭素吸着に関する選択性が優れているとともに、高い一酸化炭素吸脱着能を有する。また、操作上のミスなどにより酸素含有ガスが接触して一酸化炭素吸脱着能が低下しても、再生させることができる。
Claims (6)
- 該錯体が銅(I)のモル量換算で表してシリカゲル1g当り0.2〜10mmol担持されてなる請求項1に記載の一酸化炭素吸着剤。
- 該錯体における式1で示されるジアミン化合物のハロゲン化銅(I)に対するモル比が0.2〜5.0である請求項1または2に記載の一酸化炭素吸着剤。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の一酸化炭素吸着剤に一酸化炭素を含む混合ガスを接触させて、一酸化炭素を該吸着剤に吸着させることを包含する、一酸化炭素含有気体からの一酸化炭素の分離方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の一酸化炭素吸着剤に一酸化炭素含有混合ガスを接触させ、その後、一酸化炭素を含有する該吸着剤を所定雰囲気下での加熱処理、減圧雰囲気への暴露および貧一酸化炭素雰囲気への暴露処理から選ばれる少なくとも1つの処理にかけて、吸着した一酸化炭素を脱着させて該処理雰囲気での一酸化炭素濃度を高めることを包含する、雰囲気中の一酸化炭素濃度を高める方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の一酸化炭素吸着剤に酸素含有ガスが接触して一酸化炭素吸脱着能の低下した劣化吸着剤を還元性気体、あるいは還元剤を含む溶液で処理することを包含する、該劣化吸着剤の低下した一酸化炭素吸脱着能を増大させる方法。
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