JP3717210B2 - 光ファイバの被覆方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高速度で被覆した場合でも、被覆層の偏肉を小さくできる、光ファイバの被覆方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
光ファイバは、図4に例示する方法により製造されている。
即ち、光ファイバ母材50を加熱炉51で加熱溶融させ、溶融した光ファイバ母材50を紡糸して光ファイバ52を得、この光ファイバ52を被覆装置60に通して、前記光ファイバ52に被覆流体(樹脂液等)を被覆し、次いで硬化装置61にて被覆流体を硬化させたのち、キャプスタン62とプーリ63を経て巻取機64に巻取る方法である。必要に応じ、前記被覆光ファイバを再度、被覆装置に通して被覆流体を2層に被覆することも行われる。
前記被覆装置60は、例えば図5に示すように、被覆ダイ10とこれに組合わされたニップル20とからなり、被覆ダイ10のテーパ孔11の中にニップル20の先端部23が突出され、この先端部23と被覆ダイ10のテーパ孔11の内面との間に流体流路30が形成され、前記流体流路30の上部に流体導入孔24が形成されたものである。
前記流体導入孔24から供給される被覆流体25は、流体流路30を通って、被覆ダイ10のテーパ孔11に流入し、ニップル20を経てテーパ孔11の中心を通る光ファイバ52と合流し、前記光ファイバ52に被覆される。
そして前記流体流路30は、流体導入孔24部分は広くして被覆流体25がニップル20の全周に十分回り込むように形成され、又流体流路30の途中に被覆流体25の流れを均一化する為に、流体流路30のクリアランスC1を狭くした絞り部41が形成されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
近年、生産性向上の一環として、被覆速度の高速化(830cm/sec以上、即ち約500m/min以上) が強く求められるようになった。しかし、従来法で、被覆速度を高めようとすると、被覆樹脂の偏肉不良が増加するという問題が起きた。
このような事態を踏まえて、本発明者等は偏肉不良の原因を追究した。その結果、偏肉の原因は、被覆流体の流速が速くなると、テーパ孔内の被覆流体の流速が光ファイバの周囲で均一とならず、光ファイバが被覆流体の流速の速い側から遅い側に押されて湾曲する為であることを見極め、更に、この流速差は、テーパ孔の光ファイバと被覆流体の合流部の半径r、流体流路の最終絞り部のクリアランスCを選定することにより低減できることを知見し、更に研究を進めて、本発明を完成するに至った。
本発明は、高速度で被覆した場合でも、被覆層の偏肉を小さくできる、光ファイバの被覆方法の提供を目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、被覆ダイとニップルとを組合わせた被覆装置の前記被覆ダイのテーパ孔に、前記被覆ダイと前記ニップルとの間に形成される流体流路から被覆流体を供給し、この被覆流体を前記ニップルを経てテーパ孔内を 830cm/sec以上の速度で通過する光ファイバに被覆する光ファイバの被覆方法において、下式で表される数値Dが8,000以上、20,000以下となるように、光ファイバと被覆流体との合流部のテーパ孔の半径rと、流体流路の最終絞り部のクリアランスCを選定することを特徴とする光ファイバの被覆方法である。
D=(12μQ)/(πrC2
但し、μ:ダイス内における被覆流体の粘度(g/cm sec)、r:光ファイバと被覆流体が合流する部分のテーパ孔の半径(cm)、C:流体流路の最終絞り部のクリアランス(cm)、Q:被覆流体の単位時間当たりの被覆量(cm3/sec) 、なお、Q=πV(t2 −u2)/4、式中、V:光ファイバの線速(cm/sec)、t:被覆光ファイバの直径(cm)、u:光ファイバの直径(cm)。
【0005】
本発明では、光ファイバと被覆流体との合流部のテーパ孔の半径rと、流体流路の最終絞り部のクリアランスCを選定することにより、前記合流部における被覆流体の流れを均一化して、或いは流速差を小さくして光ファイバに周方向から流体による力が作用するようにして、光ファイバがテーパ孔内で湾曲しないようにして、被覆流体の偏肉を防止したものである。
本発明において、数値Dが偏肉の大きさの指標になること、数値Dが 8,000未満でも、20,000を超えても偏肉が増加することは、多くの実験結果を基にして経験的に見出したものである。
本発明では、被覆流体の溜まり部を2個以上、絞り部を2個以上有する被覆装置を用いると、合流部での被覆流体の流れがより均一化して、偏肉が一層減少して好ましい。
本発明において、被覆流体には、シリコーン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、例えばウレタンアクリレート系樹脂、エポキシレジン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂等の任意の液状樹脂等が使用できる。
【0006】
【実施例】
以下に、本発明を実施例により詳細に説明する。
(実施例1)
図4に示した工程に従って樹脂被覆光ファイバを製造した。
被覆装置には、図1に示すものを用いた。
この被覆装置は、被覆ダイ10の上にニップル20を配して構成されている。
前記被覆ダイ10は、軸心部に設けたテーパ孔11の周囲に環状凹部12を同心状に形成したものである。又ニップル20は、軸心部に設けた通孔21の周囲に環状凸部22を同心状に形成したものである。そして、被覆ダイ10の上にニップル20を軸を合わせて配することにより、被覆ダイ10のテーパ孔11とニップル20の通孔21とが同軸に連結されると同時に、被覆流体の流路30が形成される。
この流体流路30には、樹脂液の溜まり部が2箇所31,32 、絞り部が2箇所41,42 それぞれ形成されている。絞り部41,42 の断面形状は上下方向が短辺(C1,C2) となる長方形である。光ファイバ52には、線径 125μm(u:0.0125cm)φのものを用いた。被覆流体には、ウレタンアクリレート系樹脂(μ=5g/cm・sec 、at60℃)を用いた。被覆厚さは37.5μm(t:0.020cm) とした。
この装置において、テーパ孔11の合流部の半径rと、流体流路30の最終絞り部41のクリアランスC1を種々に変化させた。又光ファイバ52の線速(紡糸速度)は 830cm/sec以上の速度で種々に変化させた。尚、線速の上限は、安定して紡糸できる3300cm/secとした。
【0007】
(実施例2)
図2に示す被覆装置を用いた他は、実施例1と同じ方法により樹脂被覆光ファイバを製造した。
この被覆装置60は、図2に示すように、被覆ダイ10のテーパ孔11の中にニップル20の先端部23を突出させ、この先端部23と被覆ダイ10のテーパ孔11内面との間に流体流路30の最終絞り部41を形成したものである。又この装置60の被覆流体の溜まり部31,32 は2箇所、絞り部41,42,43は3箇所である。
【0008】
(実施例3)
図3に示す被覆装置を用いた他は、実施例1と同じ方法により樹脂被覆光ファイバを製造した。
この被覆装置は、第一の絞り部43を上下の溜まり部31,32 間の中央部分に形成した他は、図2に示した被覆装置と同じである。
【0009】
(実施例4)
図5に示した被覆装置を用いた他は、実施例1と同じ方法により樹脂被覆光ファイバを製造した。
【0010】
このようにして得られた各々の被覆光ファイバについて、被覆層の偏肉の程度を調査した。偏肉は1断面での被覆層の厚さの最大値と最小値の差で表した。
結果を表1に示す。
【0011】
【表1】
Figure 0003717210
【0012】
表1より明らかなように、本発明例品 (No.1〜8)はいずれも偏肉が小さく、中でも、溜まり部や絞り部の多い被覆装置を用いたもの (No.1〜7)は樹脂液の流れがより均一化した為、偏肉が特に小さかった。
これに対し、比較例品 (No.9〜15) はいずれも偏肉が大きかった。これは、被覆装置のr、C等の寸法と被覆速度との関係が適正でなく、テーパ孔内の樹脂液の流速が光ファイバの周囲で不均一になり、光ファイバの側面に流体より力が作用して光ファイバが湾曲した為である。特に図5に示した被覆装置を用いたものは、溜まり部と絞り部が各々1個ずつで少なかった為、偏肉が大きくなった。
【0013】
以上、光ファイバにウレタンアクリレート系樹脂を被覆する場合について説明したが、本発明は、エポキシレジン系樹脂等の他の被覆流体を被覆する場合にも、又既に被覆流体を被覆した被覆光ファイバに、更に被覆流体を被覆する場合にも、同様の効果を奏する。
【0014】
【発明の効果】
以上に述べたように、本発明によれば、テーパ孔内の被覆流体の流れが均一化する為、光ファイバの径方向に外力(流体による抗力)が作用する割合を小さくすることができる為、光ファイバが湾曲せず、被覆層の偏肉が防止される。依って、生産性が向上し、工業上顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法にて用いる被覆装置の第1の実施例を示す縦断面図である。
【図2】本発明方法にて用いる被覆装置の第2の実施例を示す縦断面図である。
【図3】本発明方法にて用いる被覆装置の第3の実施例を示す縦断面図である。
【図4】被覆光ファイバの製造方法の説明図である。
【図5】被覆流体を光ファイバに被覆する装置の説明図である。
【符号の説明】
10……………被覆ダイ
11……………テーパ孔
12……………環状凹部
20……………ニップル
21……………通孔
22……………環状凸部
23……………ニップルの先端部
24……………流体導入孔
25……………被覆流体
30……………流体流路
31,32 ………溜まり部
41,42,43……絞り部
50……………光ファイバ母材
51……………加熱炉
52……………光ファイバ
60……………被覆装置
61……………硬化装置
62……………キャプスタン
63……………プーリ
64……………巻取機

Claims (1)

  1. 被覆ダイとニップルとを組合わせた被覆装置の前記被覆ダイのテーパ孔に、前記被覆ダイと前記ニップルとの間に形成される流体流路から被覆流体を供給し、この被覆流体を前記ニップルを経てテーパ孔内を 830cm/sec以上の速度で通過する光ファイバに被覆する光ファイバの被覆方法において、下式で表される数値Dが8,000以上、20,000以下となるように、光ファイバと被覆流体との合流部のテーパ孔の半径rと、前記流体流路の最終絞り部のクリアランスCを選定することを特徴とする光ファイバの被覆方法。
    D=(12μQ)/(πrC2
    但し、μ:ダイス内における被覆流体の粘度(g/cm sec)、r:光ファイバと被覆流体が合流する部分のテーパ孔の半径(cm)、C:流体流路の最終絞り部のクリアランス(cm)、Q:被覆流体の単位時間当たりの被覆量(cm3/sec) 、なお、Q=πV(t2 −u2)/4、式中、V:光ファイバの線速(cm/sec)、t:被覆光ファイバの直径(cm)、u:光ファイバの直径(cm)。
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