JP3716768B2 - ノンコートエアバッグ用織物及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は自動車用安全装置の一つであるノンコートエアバッグ用織物に関するものであり、更に詳しくは、必要な機械的特性を保持しつつ、適度に調整された通気度を有し、特に柔軟でかつ軽量、コンパクト性に優れたノンコートエアバッグ用織物を経済的に優れた方法で提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車安全部品の一つとしてのエアバッグは乗員の安全意識の向上に伴い、急速に装着率が向上している。エアバッグは自動車の衝突事故の際、衝撃をセンサーが感知し、インフレーターから高温、高圧のガスを発生させ、このガスによってエアバッグを急激に展開させ、乗員(運転者や同乗者)保護に役立つものである。
【0003】
従来、エアバッグにはクロロプレン、クロルスルフォン化オレフィン、シリコーンなどの合成ゴムが塗布された織物が、耐熱性、空気遮断性(通気度)、難燃性の目的から使用されていた。
【0004】
しかしながら、これらのコーティング織物は基布重量の増加、柔軟性の低下、製造コストの増加、リサイクル不可等の理由によって、エアバッグ用織物に使用するには不具合点が多々認められた。現在でも一部で使用されているシリコーンコーティング織物は上記不具合点をかなり改善されてはきたが、まだまだ満足できるものではない。
【0005】
そこで、最近はコーティングを施さないノンコートエアバッグ用織物が主流になっている。ノンコートエアバッグ用織物はコーティングなしに低通気度化を可能にする必要があるために、大きく分けて次の2通りの製造方法がある。
【0006】
第1の方法は、経、緯の織密度を織機で可能なまで密に製織する方法である。この方法は機械的に原糸の重なりを構築し、空気が洩れることを防ぐ方法で、織機への負荷が大きくなり織機の回転数が上がりにくく、生産性に問題がある。また、織密度を大きくする必要性より、経糸張力を大きくする必要があるため、経糸に損傷を与えやすく、得られた織物の機械的特性の信頼性に問題がある。
【0007】
第2の方法は、特開平4−281062号(特許第2556624号)にあるように、熱気収縮率6〜15%(乾熱160℃処理)の原糸を用いて60〜140℃の水浴処理を施し、引き続き熱固定を伴わない乾燥を行うことで高密度織物を得る方法である。この方法の場合、確かに第1の方法にあったような織物機械特性上の問題は発生せず、また織機での生産性においてもそれ程高密度に製織する必要がなく、有利になる。しかし、この特開平4−281062号本文中の記載によれば、乾燥工程は「常用の機械で130〜170℃で行う」と記載があるだけで、その乾燥機の種類や乾燥条件については開示されていない。
【0008】
更には上記第1の方法の場合、低通気度ノンコートエアバッグ用織物を得ようとすると、前述したように、生産性低下の問題及び、経糸への損傷すなわち得られた織物の機械的特性の信頼性に問題がある。
【0009】
また上記第2の方法の場合には、通常乾燥仕上工程に使用される乾燥機、例えばシリンダードライアー、シュリンクサーファードライアー、ヒートセッターで乾燥仕上げした場合、乾燥後の織物の柔軟性が十分満足できるものではないことや、また織物を急激に乾燥することにより、織物表面でのしわが発生することが認められた。
【0010】
上記第2の方法により得られるような柔軟性に欠ける織物は、エアバッグ展開時に展開がスムーズに行われないことにより、応力集中でその部分からの破壊が起こったり、エアバッグ縫製後の反転での作業性が悪くなり、作業工数が多くかかったりして経済的に好ましくない。
【0011】
また、上記で述べたしわの問題はエアバッグの展開時に、その部分に応力集中が発生した時に機械特性、例えば引裂強力の低下が原因でエアバッグの破壊時内圧が低くなるという問題がある。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の従来の方法では解決できなかった問題点、即ち、織物の機械特性上の問題、乾燥後の織物の柔軟性の問題、織物表面でのしわ発生の問題、織物の柔軟特性から来るエアバッグとして収納後、展開時の問題等を解決し、エアバッグ用織物として必要な機械特性を保持しつつ、軽量、コンパクト化、低通気度化が可能で、かつ経済性に優れ、ソフトな風合いを持ったノンコートエアバッグ用織物を提供することが課題である。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、次の数式(数3)を満足する特性を有することを特徴とするノンコートエアバッグ用織物に関するものである。
【0014】
【数3】
ST5%(経)+ST5%(緯)≦1.2g/d
AP(O)≦0.5cc/cm2 /sec.
AP(T)≦0.5cc/cm2 /sec.
W≦205g/m2
S(経)+S(緯)≦220mm
T≦0.30mm
ここにST5%は織物の5%伸び時の強力を引張方向の原糸の総織度で割った値(g/d)、AP(O)は初期通気度(フラジール法、125Pa差圧)(cc/cm2 /sec.)、AP(T)は環境老化試験後の通気度(フラジール法、125Pa差圧)、Wは織物重量(g/m2 )、Sは剛軟度(カンチレバー法)(mm)、Tは織物厚み(mm)を、それぞれ表わす。
【0015】
上記のノンコートエアバッグ用織物は、織物の機械特性上の問題、乾燥後の織物の柔軟性の問題、織物表面でのしわ発生の問題、織物の柔軟特性から来るエアバッグとして収納した後、展開時の問題等が解決され、エアバッグ用織物として必要な機械特性を保持しつつ、軽量、コンパクト化、初期並びに環境老化試験後において低通気度化が可能で、かつ経済性に優れ、ソフトな風合いを持ったノンコートエアバッグ用織物である。
【0016】
上記のST5%の経、緯の和が上記数値より大きくなると、エアバッグ展開初期に掛かる内圧をエアバッグが受ける時に、エアバッグ袋体の収納形態が適当でない場合、ある部分に応力集中が発生し、その応力を織物の伸びで十分緩和することができず、その部分で破壊することがある。
【0017】
上記のAPが0.5cc/cm2 /sec.より大きくなると、展開時の織物からのガス漏れ量が大きすぎて乗員保護を目的とするエアバッグの機能を十分に果たさなくなる。
【0018】
上記のWが205g/m2 以下、Sの経、緯の和が220mm以下、Tが0.30mm以下であることは軽量でコンパクト性に優れたノンコートエアバッグ用織物を提供する時に重要なファクターとなる。最近、特にエアバッグモジュールが小型化する中で、エアバッグ本体の小型化も重要なテーマとなっており、W、S(経)+S(緯)、Tがそれぞれの範囲を超える場合には、折り畳んだ時の厚みや重さ、柔軟性の点で満足できないものになり好ましくない。
【0019】
本発明のノンコートエアバッグ用織物の製造方法は、少なくとも織物の製織工程、熱水収縮工程、及び乾燥仕上工程を備えたノンコートエアバッグ用織物の製造方法であって、
前記乾燥仕上工程は多段階で行われ、第1段目の設定温度をT1,第2段目の設定温度をT2とした時に、前記T1が70〜170℃、T2が90〜190℃、かつT2−T1が5〜40℃であり、前記第1段目と第2段目の間に張力コントロール工程が設けられおり、前記張力コントロール工程は織物が下記式(数4)を満たすように張力をコントロールするものであることを特徴とする。
【0020】
【数4】
ST5%(経)+ST5%(緯)≦1.2g/d
(ここに、ST5%は織物の5%伸び時の強力を引張方向の原糸の総繊度で割った値(g/d)(経は経方向、緯は緯方向を示す。)である。)
前記乾燥仕上工程はサクションドラム乾燥機を使用することが好ましい。
【0021】
上述の乾燥仕上工程が多段階で行われる。特に前記乾燥仕上工程が2段階で行われ、かつ1段目の設定温度をT1,2段目の設定温度をT2とした時に、T1が70〜170℃、T2が90〜190℃である。
【0022】
また、乾燥仕上工程が2段階である場合、1段目と2段目の間において張力コントロール工程が設けられていることが好適である。
【0023】
張力コントロール工程は、乾燥仕上げ工程と共に、もしくは乾燥仕上げ工程に代えて熱水収縮工程中に設けられていることも好適な態様である。
【0024】
本発明のノンコートエアバッグ用織物の製造方法においては、製織工程はウォータージエットルームを用いることが好適であり、ウォータージェットルームで製織した場合には、製織後、乾燥することなしに直ちに熱水収縮工程、乾燥仕上工程、の順に処理を行うことが好ましい。
【0025】
また本発明のノンコートエアバッグ用織物の製造方法においては、使用原糸の乾熱収縮率が5〜12%であることが好適である。
【0026】
上記の製造方法により、本発明の目的とするノンコートエアバッグ用織物、とりわけ請求項1に記載の特性を満足するノンコートエアバッグ用織物を簡便、かつ確実に製造することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
本発明のノンコートエアバッグ用織物を製造する場合、織物を製織後、熱水収縮工程、乾燥仕上工程、の順に処理を行うに際して、一旦収縮工程を経た織物を別工程でサクションドラム乾燥機に通しても良く、あるいは収縮工程後に引き続き乾燥仕上工程を連続して設けてもよい。ただし、経済性を考慮した場合に、連続して処理するほうが望ましい。ここで言うサクションドラム乾燥機とは、熱風を乾燥機中にあるドラムの外から内に吸い込むことにより、ドラム上にある織物を乾燥させようとするものである。すなわちドラムは通気性のあるメッシュ状、溝状になったようなものを指す。
【0028】
さらに詳しくは、乾燥仕上工程は多段階で行うほど基布の柔軟性向上やしわ抑制には好ましい方向であるが、設備の設置場所の制約や設備投資費用を考慮すると、2段階で行うことが最も好ましい。ここでいう2段階とは、同一乾燥機中に仕切りをして雰囲気温度を変えられるようにしても良いし、別々にユニットを設け独立した系としてもよい。
【0029】
また、乾燥仕上温度は1段目の設定温度をT1,2段目の設定温度をT2とした時に、T1=70〜170℃、T2=90〜190℃、さらに好ましくはT1=90〜130℃、T2=110〜150℃を満足するようにサクションドラム乾燥機を設定し、更にT1<T2を満足するように乾燥仕上条件を設定することで、必要な機械的特性を保持しつつ、適度に調整された通気度を持ち、かつ柔軟性に優れてしわの発生なしに、ノンコートエアバッグ用織物を経済的に優れた方法で製造することができた。
【0030】
ここでT1が70℃よりも低いと予備乾燥工程としての効果が発揮できず、また170℃よりも高いと急激な乾燥によりしわ等が発生し、織物品位上好ましくない。
【0031】
またT2が90℃より低いと、予備乾燥の終わった織物に十分な熱付与ができず、長期熱安定性、例えば自動車メーカーの環境老化試験の一つである120℃×400時間後の通気度上昇率が大きくなり、品質上好ましくない。
【0032】
T2−T1が5〜40℃になるよう設定することで、上記の優位点は助長されることも判った。すなわち、T2−T1は乾燥後に長期安定性を持つノンコートエアバッグ用織物として使用でき、かつしわの発生なしにノンコートエアバッグ用織物が生産できることを決定する点で重要なファクターである。
【0033】
また、乾燥を多段階で行う時の重要な機械上の特徴として、各乾燥機間に張力コントロール装置を導入することが挙げられる。すなわち、多段階で乾燥する時に、乾燥ゾーンでの織物の収縮が発生するため、織物が収縮する時に経方向の緊張をできるだけ小さくするには、前の乾燥ゾーンにおけるドラム周速度を速くする必要がある。すなわち、織物の張力が常に一定になるようにドラム周速度を自動的に調整する機構を設けることが好適である。かかる張力コントロール装置を設けることによって、織物の持つ収縮応力を発現させることが無理なく行え、このことは織物に柔軟性を与える時に重要な点で、サクションドラム乾燥機との組み合わせによって、非常に大きな効果を発生することが判った。熱水収縮工程中における張力コントロール装置についても同様な効果が得られ、かかる装置を設けることも織物の収縮挙動調整のために好ましい構成である。
【0034】
また、サクションドラム乾燥機を乾燥仕上工程に使用することで、他の前述した乾燥機を用いるよりも設備投資費用が約10分の1で済み、経済効果は莫大である。
【0035】
本発明の製造方法において使用される織機については特に限定されるものではなく、例えばウォータージェットル−ム、エアジェットルーム、レピアルーム、プロジェクタイルルーム等が使用可能である。織生産性、原糸への損傷の低減、経糸の糊剤不要等を考慮すると、ウォータージェットルーム、エアジェットルームの使用が特に好適である。また、加工時の原糸油剤、整経油剤の脱落を容易にするためには、製織時に水によってそのほとんどを脱落できるウォータージェットルームが精練工程の簡略化ができる点で最も優れている。
【0036】
本発明におけるエアバッグを構成する合成繊維としては、特に素材が限定されるものではないが、ナイロン−6,6、ナイロン−6、ナイロン−4,6、ナイロン−12等の脂肪族ポリアミド繊維、アラミド繊維のような芳香族ポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル繊維が使用可能である。他には全芳香族ポリエステル、超高分子量ポリエチレン繊維、PPS繊維、ポリエーテルケトン繊維等が挙げられる。ただし、経済性を勘案するとポリエステル繊維、ポリアミド繊維(ナイロン−6,6、ナイロン−4,6、ナイロン−6)の使用が特に好ましい。
【0037】
これらの合成繊維には原糸製造工程や後加工工程での工程通過性を向上させるために、各種添加剤を含有していても何ら問題はない。例えば、酸化防止剤、熱安定剤、平滑剤、帯電防止剤、増粘剤、難燃剤等である。また乾燥前段階で、ディッピング処理等によるある種の加工剤付与を行ってもよい。
【0038】
ここで原糸の機械的特性としては、ノンコートエアバッグ用に使用される時に要求される織物の機械的特性を満足するために、切断強度で8.0g/d以上、さらに好ましくは9.0g/d以上である。また繊度は100〜630d、より好ましくは210〜315dであるが、特に限定されるものではない。
【0039】
本発明のノンコートエアバッグ用織物の製造装置をモデル的に図1に示した。製織装置(図示せず)にて製織された織物は、一旦原反1として巻き取られ、図1の装置に供給される。この製造装置においては、熱水処理槽2、第1乾燥機3a、張力コントロール装置4、第2乾燥機3b、及び製品巻き取り装置5が設けられている。この図に示された乾燥機はいずれもサクションドラム乾燥機であり、空気は外方からドラム内部に通過する。製織装置にウォータージェットルームを使用した場合は、連続工程とすると通常の工程では必要である乾燥工程を必要とせず、直接熱水処理工程を行うことができ、好適である。
【0040】
【実施例】
次に実施例により、本発明を更に詳細に説明する。なお、実施例、比較例中の物性は下記の方法で測定した。
ST5%:JIS L1096 6.12.1.A法(ストリップ法)。サンプル幅5cm、引張スピード200mm/min.で経、緯方向でそれぞれ5%伸長時の強力を求める。その強力をその時引張方向の原糸の総繊度で割って求める。
通気度:JIS L1096 6.27.1.A法(フラジール法)
重量:JIS L1096 6.4.2
剛軟度:JlS L1096 6.19.1.A法(45°カンチレバー法)
厚み:JIS L1096 6.5(240g/cm2 加圧下)
織密度:JlS L1096 6.6
引張強力:JIS L1096 6.1 2.1.A法(ストリップ法)
製織生産性:織機の回転数の相対値で表示
基布品位:加工時のしわ発生状況で表示
(実施例1)
経、緯糸に315d/72fの切断強度9.6g/d、乾熱収縮率8.0%のナイロン66フィラメント原糸を用い、ウォータージェットルームを用いて平織にて製織後、乾燥させずに熱水収縮槽を通過させ、引き続きサクションドラム乾燥機を使い、T1=110℃,T2=130℃の乾燥仕上工程を通過させた。
【0041】
織物の物性を表1に示す。
【0042】
(実施例2)
経、緯糸に350d/96fの切断強度9.2g/d、乾熱収縮率8.0%のポリエステルフィラメント原糸を用い、ウォータージェットルームを用いて平織にて製織後、乾燥させずに熱水収縮槽を通過させ、引き続きサクションドラム乾燥機を使い、T1=130℃,T2=160℃の乾燥仕上工程を通過させた。
【0043】
織物の特性を表1に示す。
【0044】
(実施例3)
経、緯糸に210d/72fの切断強度9.6g/d、乾熱収縮率8.0%のナイロン66フィラメント原糸を用い、ウォータージェットルームを用いて平織にて製織後、乾燥させずに熱水収縮槽を通過させ、引き続きサクションドラム乾燥機を使い、T1=130℃、T2=150℃の乾燥仕上工程を通過させた。
【0045】
織物の物性を表1に示す。
【0046】
(実施例4)
経、緯糸に315d/72fの切断強度9.6g/d、乾熱収縮率8.0%のナイロン66フィラメント原糸を用い、整経油剤を追油し、ジャカード装置を取り付けたレピアルームを用いて袋織にて製織後、熱水収縮槽を通過させ、引き続きサクションドラム乾燥機を使い、T1=130℃,T2=150℃の乾燥仕上工程を通過させた。
【0047】
織物の物性を表1に示す。
【0048】
(比較例1)
経、緯糸に315d/72fの切断強度9.6g/d、乾熱収縮率8.0%のナイロン66フィラメント原糸を用い、ウォータージェットルームを用いて平織にて製織後、乾燥させずに熱水収縮槽を通過させ、引き続きサクションドラム乾燥機を使い、T1=60℃,T2=80℃の乾燥仕上工程を通過させた。
【0049】
織物の物性を表1に示す。
【0050】
(比較例2)
経、緯糸に420d/72fの切断強度9.6g/d、乾熱収縮率4.0%のナイロン66フィラメント原糸を用い、ウォータージェットルームを用いて平織にて製織後、乾燥させずに熱水収縮槽を通過させ、引き続き180℃に設定されたピンセッター(テンター)で経方向のオーパーフィード率0%、緯方向定長のセットを行い仕上げた。
【0051】
織物の物性を表1に示す。
【0052】
(比較例3)
経、緯糸に315d/72fの切断強度9.6g/d、乾熱収縮率8.0%のナイロン66フィラメント原糸を用い、ウォータージェットルームを用いて平織にて製織後、乾燥させずに熱水収縮槽を通過させ、引き続きシリンダードライアーを使い150℃にて乾燥し、仕上げた。
【0053】
織物基布の物性を表1に示す。
【0054】
(比較例4)
経、緯糸に315d/72fの切断強度9.6g/d、乾熱収縮率8.0%のナイロン66フィラメント原糸を用い、整経油剤を追油し、レピアルームを用いて平織にて製織後、熱水収縮槽を通過させ、引き続きシュリンクサーファードライアーを使い150℃にて乾燥し、仕上げた。
【0055】
織物の物性を表1に示す。
【0056】
(比較例5)
経、緯糸に420d/72fの切断強度9.6g/d、乾熱収縮率8.0%のナイロン66フィラメント原糸を用い、ウォータージェットルームを用いて平織にて製織後、乾燥させずに熱水収縮槽を通過させ、引き続き150℃に設定されたピンセッターで経方向に3%のオーバーフィードをかけ乾燥し、仕上げた。
【0057】
織物の物性を表1に示す。
【0058】
【表1】
Figure 0003716768
(表1)から明らかなように、比較例1は通気度が初期値(AP(O))ではノンコートエアバッグ用織物として満足するレベルであるが、120℃×400時間後での値(AP(T))が上昇し、不具合が生じる。
【0059】
比較例2ではエネルギー吸収性において問題となり、また通気度の点で性能を満足しない。また軽量、コンパクト性においても好ましくない。また比較例3、4は1段で高温にさらされ、かつ乾燥機にサクションドラム乾燥機を用いていないため、柔軟性に欠け、しわ発生の問題がある。
【0060】
比較例5の場合には、ノンコートエアバッグ用織物として用いるには通気度が高く好ましくない。
【0061】
【発明の効果】
本発明によれば、ノンコートエアバッグ用織物として必要な機械的特性を保持しつつ、初期並びに環境老化試験後において適度に調整された通気度を持ち、しわ等の織物品位上の問題を持たず柔軟性に優れ、かつ経済的に優れたエアバッグ用織物を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】ノンコートエアバッグの製造装置の概略を示したモデル図

Claims (7)

  1. 下記数式(数1)を満足する特性を有するノンコートエアバッグ用織物。
    【数1】
    ST5%(経)+ST5%(緯)≦1.2g/d
    AP(O)≦0.5cc/cm2 /sec.
    AP(T)≦0.5cc/cm2 /sec.
    W≦205g/m2
    S(経)+S(緯)≦220mm
    T≦0.30mm
    (ここに、
    ST5%:織物の5%伸び時の強力を引張方向の原糸の総繊度で割った値(g/d)(経は経方向、緯は緯方向を示す。)
    AP(O):初期通気度(フラジール法、125Pa差圧)(cc/cm2 /sec.)
    AP(T):環境老化試験後の通気度(フラジール法、125Pa差圧)
    W:織物重量(g/m2
    S:剛軟度(カンチレバー法)(mm)
    T:織物厚み(mm)
    である。)
  2. 少なくとも織物の製織工程、熱水収縮工程、及び乾燥仕上工程を備えたノンコートエアバッグ用織物の製造方法であって、
    前記乾燥仕上工程は多段階で行われ、第1段目の設定温度をT1,第2段目の設定温度をT2とした時に、前記T1が70〜170℃、T2が90〜190℃、かつT2−T1が5〜40℃であり、前記第1段目と第2段目の間に張力コントロール工程が設けられおり、前記張力コントロール工程は織物が下記式(数2)を満たすように張力をコントロールするものであることを特徴とするノンコートエアバッグ用織物の製造方法。
    【数2】
    ST5%(経)+ST5%(緯)≦1.2g/d
    (ここに、ST5%は織物の5%伸び時の強力を引張方向の原糸の総繊度で割った値(g/d)(経は経方向、緯は緯方向を示す。)である。)
  3. 前記乾燥仕上工程はサクションドラム乾燥機を使用するものである請求項2に記載のノンコートエアバッグ用織物の製造方法。
  4. さらに前記熱水収縮工程中にて張カコントロールを行う請求項2又は3に記載のノンコートエアバッグ用織物の製造方法。
  5. 前記製織工程はウォータージェットルームを使用するものである、請求項2〜4のいずれかに記載のノンコートエアバッグ用織物の製造方法。
  6. 前記製織工程後、乾燥することなしに直ちに熱水収縮工程、及び乾燥仕上工程を行うことを特徴とする請求項5に記載のノンコートエアバッグ用織物の製造方法。
  7. 使用原糸の乾熱収縮率(180℃×15分間処理)が5〜12%であることを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載のノンコートエアバッグ用織物の製造方法。
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