JP3716043B2 - 曳航ウインチ - Google Patents

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謙二 佐藤
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は船舶を曳航するためのウインチに関する。
【0002】
【従来の技術】
タグボート等により大型の船舶等を曳航する場合、とくに荒天時には両方の船の相対位置や速度が変動し、曳航用のロープの張力も大きく変動する。通常、大型船を曳航するにはワイヤロープを使用し、400〜500メートルほどの距離を保つ。張力変動によりワイヤロープは最大で概略1%ほど伸び、このため400〜500メートルのワイヤロープは4〜5メートルほど伸びることになる。またワイヤロープの重みにより、懸垂曲線を描いて弛むため、張力が増加したときはこの懸垂曲線による余裕分が、ワイヤロープの伸びに加わり、これらにより、張力変動を吸収し、ワイヤロープの破断や衝撃を回避する。
【0003】
荒天外洋でないときは、ワイヤロープに替えてナイロンロープにより曳航することもある。ナイロンロープはワイヤロープに比較して伸びが大きく、15〜20%が期待できる。ただし、軽量のため懸垂曲線による余裕分が少なく、張力変動の吸収はもっぱら伸びに頼っている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ワイヤロープは通常ウインチにより繰り出されるが、重い上に硬く、その取り扱いが非常に困難である。これに対して軽量のナイロンロープは取り扱いが遥かに容易となるが、経年変化により伸びが少なくなり、破断荷重も低下する。このため信頼性に欠けるという嫌いがある。
【0005】
本発明は曳航用のロープによらず、曳航時の張力変動を吸収することのできる曳航ウインチを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、曳航用のロープをトラクションウインチを経由して巻取るストアウインチを設け、前記トラクションウインチを少なくとも2つの油圧モータにより回転させられる2つのトラクションドラムを備え、これらトラクションドラム間に巻き回した前記ロープをストアウインチに巻取るように構成し、前記油圧モータの駆動回路には油圧切換弁を介して油圧ポンプからの高圧が選択的に供給されるようにする一方、設定圧の相違する複数のアキュムレータからの圧力が導かれるように切替可能に構成し、前記設定圧の相違する複数のアキュムレータに対して高圧回路からの油圧を供給する回路に電磁比例リリーフ弁を介装し、アキュムレータ供給圧力を変更可能に構成し、油圧モータ駆動回路にアキュムレータが接続されているときに前記ロープの曳航張力を所定値に制御するようにした。
【0008】
第2の発明は、前記油圧モータのうち、一方が高速モータ、他方が低速モータで構成され、ロープの巻と取り、繰り出し時に前記油圧切換弁を介して選択的に回転駆動される。
【0009】
【作用】
第1の発明において、曳航中はアキュムレータの設定圧に応じた回転力が油圧モータに働き、これに依存してトラクションウインチに引かれるロープの張力が決まる。曳航中にロープにかかる張力は波浪の状況等に応じて周期的に変動するが、張力が弱まれば、油圧モータの回転によりトラクションウインチがロープを巻き込み、逆にロープの張力が強くなるとアキュムレータに作動油を逆流させつつ油圧モータが逆転し、ロープを繰り出す。このようにして、ロープの張力を略一定に維持し、張力変動に基づくロープの破断や衝撃の発生を確実に回避することができる。
また、複数のアキュムレータに対しては高圧回路からの油圧が供給されるが、その設定値を電磁比例リリーフ弁により調節し、アキュムレータ設定圧に対応したリリーフ圧とすることで、曳航中のロープ張力を決めるアキュムレータを自由に特定できる。これにより、曳航条件の相違に基づくロープ張力の変更が容易に行える。
【0011】
第2の発明では、トラクションウインチによるロープの巻と取り時あるいは繰り出し時に、高速または低速の油圧モータを選択して、その速度を変更することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
図は本発明の実施形態を示すもので、図1に示すように、船体1の甲板には、ストアウインチ2と、トラクションウインチ3と、ガイドローラ4とが配置され、曳航用のロープ(例えばナイロンロープ)5は、ガイドローラ4、トラクションウインチ3を経由してストアウインチ2に巻取られる。
【0013】
トラクションウインチ3はロープ5を巻き込み、あるいは巻き戻すときは、ストアウインチ2と共に所定の低速または高速で回転し、船舶を曳航するときは、後述するアキュムレータの働きによりロープ5に所定の張力を付与し、船間の相対位置、速度変化に基づいての張力変動を吸収、緩和しつつ、一定の曳航距離を維持する。
【0014】
図2〜図4は本発明の主要部であるトラクションウインチ3の構造を示すが、トラクションウインチ3は第1、第2の油圧モータ10と11を備え、それぞれのモータ軸10Aと11Aの同軸上にはトラクションドラム12と13が取付けられる。
【0015】
トラクションドラム12、13の周囲には複数の溝15が形成され、これらの間に曳航用のロープ5が巻き回される。2つのトラクションドラム12と13を互いに同一方向に回転させるため、両方のモータ軸10Aと11Aに固定した歯車10Bと11Bとの間には、互いにかみ合う中間歯車17が設けられる。トラクションドラム13の巻始めの位置にはロープ押さえ用のプレッシャローラ18が、またトラクションドラム12の巻終わりの位置にもロープ押さえ用のプレッシャローラ19が配置され、油圧シリンダ20と21により、それぞれ所定の付勢力によりロープ5を押圧し、溝15からの逸脱を防止している。また、油圧モータ10と11には、ブレーキ22と23が設けられ、油圧ブレーキシリンダ24と25により油圧モータ10と11の回転にブレーキをかけられるようになっている。
【0016】
前記ガイドローラ4は、垂直と水平な直交する2組の対となったローラ4A、4Bから構成され、所定の曳航角の範囲において、ロープ5を安定的にトラクションウインチ3に導く。
【0017】
図5はトラクションウインチ3を駆動するための油圧回路であり、第1の油圧モータ10は低速レンジ、第2の油圧モータ11は高速レンジに設定してあり、それぞれ油圧ポンプ31からの油圧が供給されたときに曳航用ロープ5の巻き込みあるいは巻き戻しのため、低速回転と高速回転を行い、また、アキュムレータ32〜35に接続されたときはそれぞれの設定圧力に基づいての張力維持制御を行う。
【0018】
また、ストアウインチ2の油圧モータ37は同じく油圧ポンプ31からの油圧の供給に伴いロープ5を巻き込み、あるいは巻き戻しを行うと共に、アキュムレータ38との接続に伴い、張力制御時にストアウインチ2とトラクションウインチ3との間のロープ5の弛みを吸収する。
【0019】
前記油圧モータ10の駆動回路40Aと40Bは油圧切換弁41を介してポンプ31からの高圧回路42と、最も低圧のアキュムレータ35と連通する低圧回路43とに選択的に接続する。
【0020】
例えば、油圧切換弁41のaポートに切換えられると、駆動回路40Aが高圧、駆動回路40Bが低圧となり、油圧モータ10が低速で正回転する。同じくbポートに切換えられると、油圧モータ10は低速で逆回転する。
【0021】
これに対して油圧モータ11の駆動回路45Aと45Bは油圧切換弁46を介して高圧回路42と低圧回路43とに選択的に接続され、例えば油圧切換弁46がaポートに切換えられると、油圧モータ11は高速で正回転し、bポートに切換えられると高速で逆回転する。
【0022】
なお、油圧モータ10が低速回転しているときに他方の油圧モータ11を従動させるため、駆動回路45Aと45Bの間を短絡する回路には、各一対の逆方向のチェク弁48と49が設けられ、油圧モータ11を連れ回りさせる。同じようにして、油圧モータ11が高速回転しているときに他方の油圧モータ10を連れ回りさせるため、駆動回路40Aと40Bを短絡する回路に、各一対の逆方向のチェク弁57と58が設けられる。
【0023】
また、油圧モータ10の駆動回路40Aには、3つのそれぞれ設定圧の相違するアキュムレータ32〜34と連通する高蓄圧回路47が接続し、同じく油圧モータ11の駆動回路45Aにも高蓄圧回路48が接続し、各高蓄圧回路47、48に介装した切換弁51と52が図示する開通ポートに切換えられているときは、アキュムレータ32〜34の油圧をそれぞれ一方向速度制御弁(並列のオリフィスとチェック弁)53を介して導く。ただし、切換弁51、52が遮断ポートに切換えられているときは、アキュムレータ32〜34との連通を遮断する。
【0024】
アキュムレータ32〜34は高圧回路42から分岐した分岐高圧回路54と連通し、かつこの分岐高圧回路54には電磁比例リリーフ弁55が介装され、アキュムレータ32〜34の設定圧力を、この電磁比例リリーフ弁55に設定された圧力と同一に維持する。
【0025】
例えば、第1のアキュムレータ32は162barの圧力のガスが封入され、同じく第2のアキュムレータ33は124bar、第3のアキュムレータ34には93barのガスが封入されており、いま電磁比例リリーフ弁55の設定圧力を第1のアキュムレータ32の封入ガスと同一にすると、分岐高圧回路54に導かれたポンプ31からの吐出圧はリリーフ設定圧以上には上昇しない。この状態では第1のアキュムレータ32のみがアキュムレータとして機能し、他の第2、第3のアキュムレータ33と34は内蔵するフリーピストンが上昇限度一杯まで移動したままとなり、第2、第3の設定圧以下とならない限り、アキュムレータとしては機能しない。
【0026】
同じようにして、電磁比例リリーフ弁55の設定圧を第2のアキュムレータ33の設定圧と同じにすると、第1のアキュムレータ32のフリーピストンは下降限度一杯まで移動したまま一切動かず(封入ガスの方が高いため)、これ対して第3のアキュムレータ34のフリーピストンは上昇限度まで移動し、それぞれアキュムレータとしての機能を停止するのであり、このことは、第3のアキュムレータ34の設定圧と一致させたときにも、同じようにして、第3のアキュムレータ34のみが機能し、他の第1、第2のアキュムレータ32と33は実質的な機能を停止する。
【0027】
他方、油圧モータ10と11の駆動回路40Bと45Bは、低蓄圧回路57と58を介して最も低圧のアキュムレータ35と接続する。ただし、この低蓄圧回路57と58にはそれぞれ一対のオペレートチェック弁60、61が介装され、切換弁62によりオペレート圧力が導入されたときにオペレートチェック弁60と61は機能を消失し、リリーフ弁36を介して設定圧が例えば10barと低いアキュムレータ35との間を自由に連通する。
【0028】
したがって、前記した油圧切換弁41と46を中立遮断位置にした状態では、両油圧モータ10と11の駆動回路40Aと45Aは高蓄圧回路47と48に接続し、かつ駆動回路40Bと45Bは低蓄圧回路57と接続することができ、この状態では油圧モータ10と11は、アキュムレータ32〜35の設定圧力に依存するモータ駆動力と、モータ負荷、つまりロープ5にかかる張力との関係に基づいて正転または逆転する。
【0029】
例えば、ロープ5の張力がアキュムレータ32〜35によって設定された圧力よりも弱くなると、油圧モータ10と11は正転し、ロープ5を巻き込み、逆にロープ5の張力が設定圧力よりも強くなると、油圧モータ10と11は逆転され、ロープ5を繰り出すのであり、このようにしてロープ5に過大な張力が作用しないように張力を一定に維持する。
【0030】
なお、上記した高蓄圧回路47と48にもそれぞれ一対のオペレートチェック弁63と64が介装され、これらは切換弁65によるオペレート圧力の供給によりその機能を消失する。
【0031】
次に、油圧モータ10と11のブレーキ22と23を制御する油圧ブレーキシリンダ24、25に対しては、ブレーキ切換弁71を介してアキュムレータ72からの高圧が導かれると、ブレーキシリンダ24と25が作動し、ブレーキ22と23が解除され、逆に低圧に解放されると、スプリング力によりブレーキ作動が行われる。
【0032】
また、プレッシャローラ18、19の作動を制御するシリンダ20と21に対しては、切換弁73により高圧が供給されると、プレッシャローラ18、19がロープ5をトラクションドラム12、13に押し付け、その逸脱を防止する。
【0033】
さらに、前記したストアウインチ2の油圧モータ37の駆動回路81Aと81Bは、油圧切換弁82を介して中圧回路44と低圧回路43とに選択的に接続され、これによりトラクションウインチ3と共にストアウインチ2にロープ5の巻き込み、巻き戻しを行う。
【0034】
また、油圧切換弁82の遮断位置においては、リリーフ弁89により設定圧を規定されたアキュムレータ38と接続する蓄圧回路84からの圧力が駆動回路81Aに導かれるように、蓄圧回路84に介装した切換弁85が開通位置にあり、一方向速度制御弁86を介して油圧が作用する。なお、一対のオペレートチェック弁87は切換弁88からのオペレート圧力が供給されるとその機能を停止し、開通する。また、低圧のアキュムレータ90により、駆動回路81Bからの作動油をチェク弁93を介して吸収し、またチェク弁94を介して作動油を駆動回路81Bに供給する。
【0035】
これらにより、船舶の曳航中にトラクションウインチ3とストアウインチ2との間のロープ5の弛みを防ぐように、トラクションウインチ3の作動に伴い油圧モータ37を可逆的に回転させる。
【0036】
91はストアウインチ2のブレーキシリンダであり、前記と同じく切換弁92を介して油圧が供給されると、ブレーキが解除される。
【0037】
なお、前記した高圧回路42の回路圧力は高圧リリーフ弁95により所定の高圧(例えば210bar)に設定され、低圧回路43は低圧リリーフ弁96により所定の低圧(例えば15bar)に設定され、また中圧回路44は中圧リリーフ弁97により所定の中間圧力(例えば70bar)に設定される。
【0038】
また、図中、101、102、103、104は各回路から油圧ポンプ31への逆流を阻止するチェク弁である。
【0039】
以上のように構成され、次に作用について説明する。
【0040】
まず、ロープ5による曳航時は、例えば400〜500メートルほど繰り出したロープ5の張力をアキュムレータ32〜34で設定した一定の値を維持しながら、トラクションウインチ3を介して船舶を曳航する。
【0041】
どのアキュムレータ32〜34を用いるかは、そのときの曳航条件によって相違し、曳航する船舶が大型化するほど、また曳航速度が速くなるほど、ロープ5の張力は大きくなる。
【0042】
例えば、第2のアキュムレータ33による124barのガス圧力により決まる張力をもって曳航する場合を説明する。
【0043】
曳航時にはトラクションウインチ3の各油圧モータ10、11、37の油圧切換弁41、46、82をそれぞれ遮断位置に保持し、各油圧モータ10、11、37をアキュムレータ圧力により駆動しうる状態にする。このとき、ブレーキシリンダ24、25、91に油圧を作用し、ブレーキを解除しておく。また、油圧シリンダ20、21に油圧を供給し、プレッシャローラ18、19によりロープ5がトラクションウインチ3のトラクションドラム12、13から逸脱しないように押圧する。
【0044】
電磁比例リリーフ弁55の設定圧を第2のアキュムレータ33の設定圧と一致させておき、油圧ポンプ31を駆動し、その吐出圧力を高圧回路42から分岐高圧回路54に供給する。電磁比例リリーフ弁55がリリーフ作用を行うまで油圧を供給したら、油圧ポンプ31を停止する。この状態では前述したように、第1のアキュムレータ32と第3のアキュムレータ35は機能を停止し、第2のアキュムレータ33のみ、ガス圧力とのバランスによりフリーピストンが中間位置に保持される。なお、チェク弁101、102、103等が逆流を阻止するので、高圧回路42にはこの圧力が封じ込まれる。
【0045】
また、低圧回路43と中圧回路44に対しても油圧が供給され、それぞれアキュムレータ35と38にリリーフ弁36と89で設定された圧力が蓄圧維持される。
【0046】
そして、油圧モータ10と11の駆動回路40Aと45Aに接続する高蓄圧回路47と48の切換弁51と52が開通位置に切換られ、同じく駆動回路40Bと45Bの低蓄圧回路57、58についても、切換弁62がオペレートチェック弁60、61の働きをキャンセルさせるようにオペレート圧力を供給し、連通状態に保持する。
【0047】
したがって、油圧モータ10と11には高蓄圧回路47、48からの高圧と、低蓄圧回路57、58の低圧との差圧に応じた回転力が発生し、トラクションウインチ3がロープ5を巻き込み方向に駆動する。このとき、ロープ5には曳航する船舶の大きさ、速度等に応じた繰り出し方向の負荷が働くので、これら巻き込み力と繰り出し力とのバランスによって均衡する。もし、ロープ5の張力が均衡状態から一時的に強くなると、油圧モータ10と11はこの負荷により逆転し、ロープ5を繰り出し、ロープ5にかかる負荷が過大になるの回避する。
【0048】
このとき、油圧モータ10、11の逆転により駆動回路40Bから40Aに、同じく駆動回路45Bから45Aに作動油が流れるが、これらはそれぞれアキュムレータ33に吸収される。
【0049】
逆にロープ5の張力が一時的に弱まれば、油圧モータ10と11がロープ5を巻き込み方向に回転し、ロープ5の弛みを吸収する。
【0050】
この場合、それぞれ駆動回路40B、45Bに流れる作動油は、低蓄圧回路57、58を介して低圧のアキュムレータ35に吸収される。
【0051】
このようにして、ロープ5にかかる張力はアキュムレータ33(電磁比例リリーフ弁55)の設定圧力に応じた一定の状態に維持され、曳航時の張力変動によりロープ5に過大な応力が作用したり、衝撃が作用するのを吸収緩和することができる。
【0052】
トラクションウインチ3の巻き込み、繰り出し作用に伴いストアウインチ2はトラクションウインチ3との間のロープ5の弛みや緊張を防ぐため、ロープ5に一定の弱い張力を付加する。つまり、油圧モータ37の駆動回路81Aにアキュムレータ38の比較的低い圧力が作用し、これによりロープ5に弛みが生じればロープ5を巻き込み、また、トラクションウインチ3の繰り出しによりロープ5の張力が高まれば、油圧モータ37が逆転し、ロープ5を繰り出すのである。
【0053】
この説明では第2のアキュムレータ33の設定圧により張力を制御したが、さらに大きな船舶を曳航するとき、あるいは曳航速度が速いときは、ロープ5にかかる張力も大きくなるので、この場合には第1のアキュムレータ32を利用してより強い張力でもって曳航することができる。あるいは逆に要求されるロープ5の張力がもっと低いときは、第3のアキュムレータ34による低い設定圧に基づいての張力制御を行えばよい。なお、このときの圧力設定は電磁比例リリーフ弁55により行う。
【0054】
なお、このことは、曳航中に曳航距離が徐々に縮まってきたときには、ロープ5にかかる張力が強すぎることを意味するから、アキュムレータ設定圧力を下げればよいし、逆に曳航距離が長くなってきたときは、設定圧力を上げるか、曳航速度を下げればよい。
【0055】
次に、曳航を終えてロープ5を巻き込む場合を説明する。
【0056】
この場合にはロープ5の張力を一定に制御する必要はなく、トラクションウインチ3により低速または高速でロープ5を巻取る。
【0057】
例えば、低速回転する油圧モータ10により巻取りを行う場合は、油圧切換弁41を油圧モータ10が正転する方向に切換える。このとき、高蓄圧回路47と48、さらには低蓄圧回路57の各回路が遮断されるように、各切換弁51、52、62、65等を切換え、また、高速回転する油圧モータ11の油圧切換弁46は遮断位置に保持する。
【0058】
油圧ポンプ31の駆動により高圧回路42に送り込まれた作動油は、油圧切換弁41から駆動回路40Aに流れ、油圧モータ10を回転させる。この作動油は駆動回路40Bから低圧回路43へと流れ、低圧のリリーフ弁36を介してタンクに還流される。
【0059】
これにより、トラクションウインチ3の一方のトラクションドラム12が回転するが、他方のトラクションドラム13も中間歯車を介して同一方向に回転しようとする。このとき、他方の油圧モータ11は油圧切換弁46が遮断位置にあるので、ポンプ31からの高圧は供給されないが、油圧モータ10の回転により強制的に駆動され、駆動回路45Aから作動油を吸込み、駆動回路45Bに吐出する。両駆動回路45Aと45Bは各一対のチェク弁48と49により接続しているため、駆動回路45Bから45Aへと作動油が吸い込まれていき、油圧モータ11は同一回転の継続が許容される。
【0060】
このようにして、トラクションウインチ3の各トラクションドラム12と13が同一回転しながらロープ5を巻込んでいく。
【0061】
このとき、ストアウインチ2がトラクションウインチ3が巻込んだロープ5を弛ませることなく巻取るように、その油圧切換弁82が油圧モータ37の正転方向に切換えられ、中圧回路44からの作動油の供給を受けて回転する。
【0062】
なお、このとき切換弁85と88は遮断位置にあり、アキュムレータ38への逆流を阻止する。
【0063】
このようにしてトラクションウインチ3により巻き込んだロープ5をストアウインチ2に巻取っていくのであり、ストアウインチ2の回転力は供給油圧が低い分だけ、トラクションウインチ3の回転力よりも小さく、したがってストアウインチ2が強制的にロープ5を引き込むこともない。
【0064】
以上は低速の油圧モータ10により巻取りを行う場合であるが、巻取速度を上げたいとき、高速の油圧モータ11を利用すればよい。このときは油圧モータ11の油圧切換弁46を切換え、この油圧モータ11に高圧を供給し、他については上記と同じように制御することで、他方の油圧モータ10を同一回転させながらトラクションウインチ3が高速回転する。
【0065】
なお、ロープ5を繰り出すときは、トラクションウインチ3、ストアウインチ2の回転方向を上記と逆にすればよく、これらが油圧切換弁41、45、82の切換えにより行えることは、容易に理解しうるであろう。
【0066】
とくに説明はしなかったが、ロープ5の巻取り、繰り出し時に各ブレーキの作動を解除しておくことは言うまでもない。
【0067】
【発明の効果】
第1の発明によれば、曳航中にロープにかかる張力が変動し、例えば張力が弱まれば、油圧モータの回転によりトラクションウインチがロープを巻き込み、逆にロープの張力が強くなるとアキュムレータに作動油を逆流させつつ油圧モータが逆転し、ロープを繰り出し、このようにして、ロープの張力を常に略一定に維持し、張力変動に基づくロープの破断や衝撃の発生を確実に回避することができる。
また、複数のアキュムレータと電磁比例リリーフ弁の働きで、曳航条件の相違に基づくロープ張力の変更が容易に行える。
【0069】
第2の発明によれば、トラクションウインチによるロープの巻と取り時あるいは繰り出し時に、必要に応じて高速または低速で作動させることができ、能率的な操作が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示す全体的平面図である。
【図2】トラクションウインチの平面図である。
【図3】同じくその正面図である。
【図4】同じくその側面図である。
【図5】ウインチの油圧駆動回路である。
【符号の説明】
2 ストアウインチ
3 トラクションウインチ
5 ロープ
10 油圧モータ
11 油圧モータ
12 トラクションドラム
13 トラクションドラム
31 油圧ポンプ
32 アキュムレータ
33 アキュムレータ
34 アキュムレータ
41 油圧切換弁
46 油圧切換弁
55 電磁比例リリーフ弁

Claims (2)

  1. 曳航用のロープをトラクションウインチを経由して巻取るストアウインチを設け、
    前記トラクションウインチを少なくとも2つの油圧モータにより回転させられる2つのトラクションドラムを備え、
    これらトラクションドラム間に巻き回した前記ロープをストアウインチに巻取るように構成し、
    前記油圧モータの駆動回路には油圧切換弁を介して油圧ポンプからの高圧が選択的に供給されるようにする一方、
    設定圧の相違する複数のアキュムレータからの圧力が導かれるように切替接続可能に構成し、
    前記設定圧の相違する複数のアキュムレータに対して、高圧回路からの油圧を供給する回路に電磁比例リリーフ弁を介装し、アキュムレータ供給圧力を変更可能に構成し、
    油圧モータ駆動回路にアキュムレータが接続されているときに前記ロープの曳航張力を所定値に制御するようにしたことを特徴とする曳航ウインチ。
  2. 前記油圧モータは、一方が高速モータ、他方が低速モータで構成され、
    ロープの巻と取り、繰り出し時に前記油圧切換弁を介して選択的に回転駆動される請求項1に記載の曳航ウインチ。
JP12846296A 1996-05-23 1996-05-23 曳航ウインチ Expired - Fee Related JP3716043B2 (ja)

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