JP3715552B2 - 現像装置およびこれを備えた画像形成装置 - Google Patents
現像装置およびこれを備えた画像形成装置 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は潜像担持体(像担持体)上に形成される静電潜像を現像剤などによって現像する現像装置、およびこれを備えた画像形成装置に関し、特に、進行波電界を用いて現像剤を搬送する機構(電界カーテン)を利用するものに係わる。
【0002】
また、上記の静電潜像は所定の電荷を付与して帯電させた像担持体上に光情報を書き込んだものだけでなく、イオンフロー方式のように誘電体上に直接静電荷潜像を形成するものや、トナージェット方式のように複数の開口部を有する電極に対し任意の電圧を印加することで空間に静電像を形成して現像剤を記録媒体に飛翔させて直接画像形成を行うものにも適用可能である。
【0003】
【従来の技術】
複写機、プリンタ、ファクシミリなどの電子写真プロセスを用いた画像形成装置に適用される現像装置としては、現在、像担持体に現像剤担持体を接触させずに現像を行う非接触方式の現像装置が注目されており、パウダークラウド法、ジャンピング法や電界カーテン(進行波電界)を利用した方法が提案されている。
【0004】
そして、電界カーテンを発生させる手段としては、例えば、特開平9−68864号公報に開示されるように、金属または樹脂で形成された支持基材と、この支持基材上に積層された絶縁層とを備え、この絶縁層内に電界カーテン作用を発生させる電極が3本を1組として、複数組が順次連続して埋設された構成となっており、各電極に対して多相電圧の印加により形成される進行波電界によって、現像剤を現像剤搬送部材の表面上で搬送するようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、進行波電界を利用する現像装置においては、現像剤搬送部材の表面(現像剤搬送面)上で進行波電界を発生させている状態、つまり各電極に異なる電圧が印加されている状態では、感光体などの像担持体が周方向に移動してその担持面(表面)が現像剤搬送部材表面の真上、または非常に近接した位置にあるときに、各電極に印加されている電圧に起因する電位の空間的・時間的分布の影響を受け易いことになる。そのため、像担持体の担持面が現像剤搬送部材の表面に非常に近接した状態にあるときには、像担持体の担持面上の静電潜像現像時に、図9の(a)および(b)に示すように、各電極に印加されている電圧の周波数、その各電極の電極間ピッチ、および像担持体の周速度などに起因する周期的な濃度変化が発生することがある。
【0006】
また、現像剤搬送部材の表面上において現像剤を搬送するには、ある程度の進行波電界の強度が必要となるが、この電界強度は、電極間ピッチと、隣接する電極間の電位差との影響を受けることになる。これは、現像剤の搬送を行う上で必要な進行波電界強度を得るには、電極間ピッチが大きくなれば、隣接する電極間の電位差も大きくする必要があるからである。そこで、進行波電界による現像剤の運動状態を考えてみるに、現像剤は進行波電界によって搬送されるときにクラウド状態となるが、このクラウド状態となる現像剤の現像剤搬送部材表面からの高さは、電極間ピッチが大きくなると高くなる。要するに、電極間ピッチが大きいと、所望の進行波電界を得る上で隣接する電極間の電位差を大きく設定しなければならないために、現像剤に付与される運動エネルギ(現像剤の電荷をq、電位差をVとした場合の運動エネルギqV)は大きくなり、現像剤同士の衝突や、現像剤の搬送速度が大きくなって、空気抵抗の影響による飛翔軌道の偏向などによりクラウド状態の現像剤が現像剤搬送部材表面上で積層して高さが大きくなる傾向にあるからである。このため、このようなクラウド状態の現像剤に像担持体の担持面が完全に浸ってしまうと、本来現像剤が付着しない担持面の非現像領域に現像剤が付着するといった、いわゆる地カブリなどが発生することになる。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、像担持体担持面上での均一な濃度の像を現像し、かつ地カブリの少ない良好な画像形成を行うことができる現像装置およびこれを備えた画像形成装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明では、静電潜像をその表面に担持している像担持体に対向する現像領域に固定した状態で配置し、基材上に所定間隔を存して複数配列された電極を表面保護層によって被覆してなる現像剤搬送部材を備え、各電極に対する多相電圧の印加により形成される進行波電界によって現像剤を現像剤搬送部材上で搬送するようにした現像装置において、上記像担持体の周速度vp(mm/sec)と、その像担持体の周方向における潜像書き込み解像度R(dot/mm)と、上記各電極に対して印加される印加電圧の周波数f(Hz)とを、
vp×R>f
の関係を満たすように設定するとともに、
上記現像剤搬送部材と像担持体との間の空隙d(m)と、上記各電極の電極間ピッチλ(m)とを、
d>λ
の関係を満たすように設定している。
【0009】
この特定事項により、現像剤搬送部材と像担持体との間の空隙dが各電極の電極間ピッチλよりも大きな値に設定されているので、このような条件下においては、現像剤搬送部材の表面上で進行波電界を発生させている状態、つまり各電極に異なる電圧が印加されている状態であっても、像担持体の担持面が現像剤搬送部材表面の真上、または非常に近接した位置において電位の時間的・空間的分布の影響をほとんど受けないことになる。したがって、現像剤搬送部材の表面に非常に近接した状態にある像担持体の担持面においては、隣接する電極間の電位分布がほとんど反映されず、時間的・空間的に均一な状態となる。このため、現像時に電極間の電位分布のムラによって与える影響を少なくし、像担持体担持面上での均一な濃度の像を現像することが可能となる上、担持面の非現像領域に現像剤が付着するといった地カブリなどの発生を防止して良好な画像形成を行うことが可能となる。
【0010】
また、像担持体の周速度vpと、その像担持体の周方向における潜像書き込み解像度Rと、各電極に対して印加される印加電圧の周波数fとが、vp×R>fの関係を満たすように設定されているので、像担持体の担持面における静電潜像の空間周波数はvp×R(dot/sec)となり、この値よりも低い周波数の印加電圧が各電極に対して印加されることになる。
【0011】
これは、像担持体の担持面における静電潜像の空間周波数が進行波電界の周波数よりも大きい場合に、各電極に対して印加される印加電圧が最大値である場合と最小値である場合とでは、像担持体の担持面上の複数の画素単位で現像状態に差異が生じて現像濃度ムラが発生してしまうことになるが、各電極に対して印加される印加電圧の周波数を高くすれば、担持面上の1つの画素が印加電圧の最大値と最小値とを経験して現像されるために、各画素毎での現像濃度ムラは解消されるものの、電源のコストアップを招くという課題に基づいてなされたものである。
【0012】
そのため、現像剤搬送部材と像担持体との間の空隙dと各電極の電極間ピッチλとが、d>λの関係を満たすように設定されていれば、現像剤搬送部材の表面に非常に近接した状態にある像担持体の担持面において電極間の電位分布がほとんど影響されないことから、像担持体の担持面における静電潜像の空間周波数vp×Rよりも低い周波数fの印加電圧を各電極に対して印加することによって、現像濃度ムラのない良好な画像形成が可能となり、かつ電源をコストダウンさせて安価に提供することも可能となる。
【0013】
また、各電極に対して印加される印加電圧の平均値V1(V)と、像担持体の非画像部での帯電電位V0(V)と、現像剤搬送部材と像担持体との間の空隙d(m)とを、
|V0−V1|/d>104
の関係を満たすように設定している場合には、進行波電界により搬送されるクラウド状態の現像剤が像担持体の近傍に到達したときに担持面上の静電潜像の現像に供されなかった現像剤が非画像部(非静電潜像部分)に付着したり、機内飛散しないように再び現像剤搬送部材上に不要な現像剤を戻さなければならず、この戻す作用の度合いが決定されることになる。つまり、像担持体の非画像部と現像剤搬送部材との間の電界が現像剤を現像剤搬送部材側へ戻す方向に与える力によって不要な現像剤を現像剤搬送部材側へ戻す作用の度合いが決定され、このとき、像担持体の非画像部での帯電電位V0と各電極に対する印加電圧の平均値V1との差の絶対値を現像剤搬送部材と像担持体との間の空隙dで除した値が重要なファクタ(不要な現像剤を現像剤搬送部材側へ戻す作用の度合い)となり、この値を104よりも大きく設定しておくことで、地カブリのない良好な画像形成を行うことが可能となる。
【0014】
そして、各電極の電極間ピッチλ(m)を、
100μm〜1000μm
に設定している場合には、各電極の電極間ピッチλが小さすぎたり、大きすぎたりすることなく、最適な条件に設定されることになる。
【0015】
つまり、電極間ピッチが100μmよりも小さくなると、現像剤搬送部材の製造時に電極間の形成がうまくいかず、相隣なる電極間でリークが発生することがあるからである。一方、電極間ピッチが1000μmよりも大きくなると、現像剤を搬送するために必要な進行波電界の強度を得る上で大きな印加電圧を与える必要があり、これによって、電源のコストアップを招いたり、現像剤搬送部材が振動して不要な騒音を引き起こすことがあるからである。かかる点で、各電極の電極間ピッチλを100μm〜1000μmに設定しておけば、相隣なる電極間でのリークの発生が防止され、電源をコストダウンさせて現像剤搬送部材の振動による騒音の発生を低減させることが可能となる。
【0016】
また、現像剤搬送部材と像担持体との間の空隙d(m)を、
0.1mm〜10mm
に設定している場合には、現像剤搬送部材と像担持体との間の空隙dが小さすぎたり、大きすぎたりすることなく、最適な条件に設定されることになる。
【0017】
つまり、現像剤搬送部材と像担持体との空隙が0.1mmよりも小さくなると、非現像領域に現像剤が付着する地カブリが発生し易く、空隙精度の僅かなズレによって現像電界強度を大きく変化させて画像形成が不安定なものとなるからである。一方、現像剤搬送部材と像担持体との空隙が10mmよりも大きくなると、不要な現像剤を現像剤搬送部材側に戻すために必要な電界強度を得る上で、像担持体の帯電電位を高く設定する必要があり、これによって像担持体に対する負荷が大きくなり、像担持体の劣化を招いたりするからである。かかる点で、現像剤搬送部材と像担持体との間の空隙dを0.1mm〜10mmに設定しておけば、像担持体の地カブリを防止し、現像電界強度を安定させて画像形成を円滑に行うことが可能となる上、像担持体の帯電電位を低く設定して像担持体に対する負荷を小さくし、像担持体の劣化を防止することが可能となる。
【0018】
更に、上述した現像装置を画像形成装置に備えている場合には、像担持体の担持面上で均一な濃度の像を現像し、かつ地カブリの少ない良好な画像形成を行い得る画像形成装置を提供することが可能となる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1は本発明の実施形態に係わる現像装置を備えた画像形成装置を示し、この画像形成装置Xの内部には、像担持体としての円筒状の感光体ドラム1が設けられている。この感光体ドラム1を中心として、その周囲に、帯電部材2、露光部材3、現像装置4、転写部材5、クリーニング部材6、および除電部材7が順に配置されている。また、感光体ドラム1と転写部材5との間には、用紙Pが搬送される用紙搬送路が設けられている。この用紙搬送路の搬送方向から見て感光体ドラム1の下流側には、上下一対の定着ローラ81,81を備えた定着装置8が配置されている。
【0021】
電子写真プロセスでは、感光体ドラム1に原稿像、あるいはホストコンピュータ(図示せず)からのデータに対応した静電潜像が形成され、その静電潜像が現像装置によって可視化され、用紙P上に転写されて画像形成が行われる。
【0022】
感光体ドラム1は、基材11上に光導電層12が形成されており、帯電部材2から上記各部材3〜7の配置順に従って回転可能となっている。まず、感光体ドラム1の表面(光導電層12)は、帯電部材2によって所定の電位となるまで帯電される。所定電位まで帯電された感光体ドラム1の表面は、感光体ドラム1の回転によって露光部材3の位置まで到達する。この露光部材3は書き込み手段であり、画像情報に基づいて、たとえばレーザーなどの光によって帯電している感光体ドラム1の表面上に画像を書き込む。これによって、感光体ドラム1上に静電潜像が形成される。静電潜像が形成された感光体ドラム1の表面は、この感光体ドラム1の回転によって現像装置4の位置まで到達する。
【0023】
現像装置4では、トナー搬送部材41上を搬送されるトナーT(現像剤)によって、感光体ドラム1の表面の静電潜像をトナー像として現像する。トナー像が担持された感光体ドラム1の表面は、この感光体ドラム1の回転によって転写部材5の位置まで到達する。
【0024】
転写部材5は、感光体ドラム1の表面上のトナー像を、用紙P上に転写する。感光体ドラム1から用紙P上に転写されたトナー像は、定着装置8によって用紙P上に定着される。
【0025】
トナー像が転写された後の感光体ドラム1の表面は、この感光体ドラム1の回転によってクリーニング部材6の位置まで到達する。クリーニング部材6は、感光体ドラム1の表面に残留しているトナーTや紙粉などを除去する。クリーニング部材6によってクリーニングされた感光体ドラム1の表面は、この感光体ドラム1の回転によって除電部材7の位置まで到達する。除電部材7は、感光体ドラム1の表面に残留している電位を除去する。上述した一連の動作によって一回の画像形成が終了する。
【0026】
上記感光体ドラム1としては、たとえば、アルミニウムなどの金属ドラムを基材11として、その外周面にアモルファスシリコン(a−Si)、セレン(Se)や有機光半導体(OPC)などの光導電層12が薄膜状に形成されてなる構成が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0027】
上記帯電部材2としては、たとえばタングステンワイヤなどの帯電線・金属製のシールド板、グリッド板などよりなるコロナ帯電器や帯電ローラ、帯電ブラシなどの構成が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0028】
上記露光部材3としては、たとえば半導体レーザや発光ダイオードなどが挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0029】
上記転写部材5としては、たとえば、コロナ転写器、転写ローラ、転写ブラシなどが挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0030】
上記クリーニング部材6としては、クリーニングブレードなどが挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0031】
上記除電部材7としては、除電ランプなどが挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0032】
本実施形態では、トナー搬送部材41と感光体ドラム1との間には一定の間隔が設けられ、感光体ドラム1の表面の静電潜像を非接触で現像する構成となっているが、本発明はこれに限定されるものではなく、トナー搬送部材と感光体ドラムの表面とを接触させて接触現像を行う構成であっても構わない。
【0033】
上記現像装置4は、図2に示すように、ケーシング40と、トナー搬送部材41と、ミキシングパドル42と備えている。ケーシング40はトナーTを内部に収容するものである。ミキシングパドル42は、ケーシング40内に収容されているトナーTを混合するためのものである。
【0034】
上記トナー搬送部材41は、感光体ドラム1の現像領域Aに対向して略平面を形成するようなベルト形状となっている。なお、本実施形態では、トナー搬送部材41としてベルト形状のものを示しているが、トナー搬送部材41の形状はこれに限定されるものではなく、例えば、半円弧状のものでも構わない。
【0035】
また、トナー搬送部材41は、現像装置4における上下方向に対して若干傾斜して、感光体ドラム1の表面における現像領域Aの接線に対して略平行となるように配置されている。また、ベルト形状のトナー搬送部材41が上記配置を保持できるように、トナーTを搬送する表面とは反対側の面に、トナー搬送部材41を保持する支持部材43が設けられている。
【0036】
トナー搬送部材41の下方側端部には、このトナー搬送部材41の表面上を搬送されるトナーTを供給する供給部材44が設けられている。一方、トナー搬送部材41の上方側端部には、このトナー搬送部材41の表面のトナーTを回収する回収部材45が設けられている。
【0037】
また、トナー搬送部材41には、多相交流電源47と現像バイアス電源48とが直列に接続されている。上記供給部材44および回収部材45は、いずれも円筒形状を呈し、ベルト形状のトナー搬送部材41の表面に対し回転可能に接触している。
【0038】
上記供給部材44は、ケーシング40内に収容されているトナーTをトナー搬送部材41に供給するためのものであり、その材質としては特に限定されるものではないが、たとえばシリコーン、ウレタン、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン−メチレン共重合体)などのソリッドゴム、発泡ゴムなどが挙げられる。また、カーボンブラックやイオン導電剤を添加することによって導電性を付与してもよい(電圧印加も可能)。上記供給部材44とトナー搬送部材41との接触圧力や供給部材44に印加する電圧値を適切な値に設定し、供給部材44にトナーTを帯電させる機能を付加するようにしても良い。あるいは、上記供給部材44の前段に、例えば薄板状のブレード(材料としては、上記供給部材44と同じものが使用可能)を設けトナーを帯電させるようにしても構わない。
【0039】
上記回収部材45は、感光体ドラム1上の静電潜像の現像に寄与しないトナーTを回収して現像装置4内に戻すためのものであり、その材質としては、特に限定されないが、たとえば上記供給部材44と同様のものを使用することができる。
【0040】
上記支持部材43は、ベルト形状のトナー搬送部材41を感光体ドラム1の現像領域Aに対向した状態を保持するためのもので、その構成は特に限定されるものではない。たとえば、ABS(Acrylonitrile−Butadiene−Styrene:アクリロニトリルブタジエンスチレン)樹脂などを挙げることができる。
【0041】
上記トナー搬送部材41は、電界カーテン作用によりトナーTを搬送するものであり、図3に示すように、絶縁層よりなる基材41a上に、電界カーテン作用を発生させる進行波発生電極41b,…が、4本を一組として複数組が順次連続して配設されている。このトナー搬送部材41の表面側は、誘電体層および高抵抗体層の少なくとも一方よりなる表面保護層41cによって覆われている。そして、これらの電極41b,…にトナー搬送のための多相交流電源47から、多相の交流電圧が印加されることにより、トナー搬送部材41の表面においてそれと平行となる方向に電界カーテンが発生し、これによって現像領域Aまで電界カーテン作用によりトナーTを搬送するようになっている。この場合、各進行波発生電極41bは、幅40μm〜250μmの微小電極となっており、これらが現像領域Aにある感光体ドラム1(光導電層12)の表面に対し互いに平行に配置されている。
【0042】
上記トナー搬送部材41の具体例を挙げると、たとえば、基材41a:ポリイミド(厚さ25μm)、進行波発生電極41b:銅(厚さ18μm)、表面保護層41c:ポリイミド(厚さ25μm)といった構成を挙げることができる。なお、本実施の形態では、4本の進行波発生電極41b,…を1組とし、これら各組の進行波発生電極41b,…に対して、たとえば図4に示すような電圧波形の4相の交番電圧を印加し、進行波発生電極41b,…上に進行波電界を形成しているが、特にこれに限定されるものではなく、3本の進行波発生電極を1組として3相の交番電圧を印加しても構わない。また、感光体ドラム1とトナー搬送部材41との間に現像電界が形成されるようにバイアス電圧(現像バイアス)が印加されていることが好ましい。
【0043】
上記電圧波形は、正弦波や台形波などでもよく、電圧値の範囲としては、進行波発生電極41b,41b間で絶縁破壊が発生しないように、例えば100V〜3kV程度が好ましく、周波数の範囲としては、100Hz〜5kHzが好ましく用いられる。ただし、これらの電圧値や周波数については、進行波発生電極素子の形状、トナーTの搬送速度、トナーTの使用材料などによって適正値を設定すればよく、特に限定されるものではない。
【0044】
そして、本発明の特徴部分として、図5に示すように、上記トナー搬送部材41と感光体ドラム1との間の空隙d(μm)と、上記各進行波発生電極41bの電極間ピッチλ(μm)とは、
d>λ
の関係を満たすように設定されている。
【0045】
これは、図5に示すように、空隙dと電極間ピッチλとの大小関係を変更して、画像形成状態を検討した結果に基づくものである。つまり、図5において、空隙dと電極間ピッチλとが(d>λ)の関係を満たしているとき(図5の総合判定が○か◎となるとき)には、周期的な濃度ムラが良好もしくは非常に良好に抑えられて、地カブリも良好もしくは非常に良好に抑えられているからである。なお、図5の結果は、下記の表1に示す実験条件に基づくものである。
【0046】
【表1】
これにより、トナー搬送部材41と感光体ドラム1との間の空隙dが各進行波発生電極41bの電極間ピッチλよりも大きな値に設定されているので、このような条件下においては、トナー搬送部材41の表面上で進行波電界を発生させている状態、つまり各進行波発生電極41bに異なる電圧が印加されている状態であっても、感光体ドラム1の表面(担持面)がトナー搬送部材41表面の真上、または非常に近接した位置において電位の時間的・空間的分布の影響をほとんど受けないことになる。したがって、トナー搬送部材41の表面に非常に近接した状態にある感光体ドラム1の表面においては、隣接する進行波発生電極41b,41b間の電位分布がほとんど反映されず、時間的・空間的に均一な状態となる。このため、現像時に進行波発生電極41b,41b間の電位分布のムラによって与える影響を少なくし、感光体ドラム1の表面上で均一な濃度の像を現像することができる上、感光体ドラム1表面の非現像領域にトナーTが付着するといった地カブリなどの発生を防止して良好な画像形成を行うことができることになる。 また、各進行波発生電極41bの電極間ピッチλが、段階的に120μm、250μm、500μmに設定されているので、各進行波発生電極41bの電極間ピッチλが小さすぎたり、大きすぎたりすることなく、最適な条件に設定されることになる。
【0047】
つまり、電極間ピッチλが100μmよりも小さくなると、トナー搬送部材41の製造時に進行波発生電極41b,41b間の形成がうまくいかず、相隣なる進行波発生電極41b,41b間でリークが発生することがあるからである。一方、電極間ピッチλが1000μmよりも大きくなると、トナーTを搬送するために必要な進行波電界の強度を得る上で大きな印加電圧を与える必要があり、これによって、電源のコストアップを招いたり、トナー搬送部材41が振動して不要な騒音を引き起こすことがあるからである。かかる点で、各進行波電極41bの電極間ピッチλが120μm、250μm、500μmに設定されていれば、相隣なる進行波発生電極41b,41b間でのリークの発生が防止され、電源をコストダウンさせてトナー搬送部材41の振動による騒音の発生を低減させることができる。
【0048】
更に、トナー搬送部材41と感光体ドラム1との間の空隙dが、300μm〜2000μmの範囲内に設定されているので、トナー搬送部材41と感光体ドラム1との間の空隙dが小さすぎたり、大きすぎたりすることなく、最適な条件に設定されることになる。
【0049】
つまり、トナー搬送部材41と感光体ドラム1との空隙が小さすぎると、非現像領域に現像剤が付着する地カブリが発生し易く、空隙精度の僅かなズレによって現像電界強度を大きく変化させて画像形成が不安定なものとなるからである。一方、トナー搬送部材41と感光体ドラム1との空隙が大きすぎると、不要なトナーをトナー搬送部材41側に戻すために必要な電界強度を得る上で、感光体ドラム1の帯電電位を高く設定する必要があり、これによって感光体ドラム1に対する負荷が大きくなり、感光体ドラム1の劣化を招いたりするからである。かかる点で、トナー搬送部材41と感光体ドラム1との間の空隙dを300μm〜2000μmの範囲内に設定しておけば、感光体ドラム1の地カブリを防止し、現像電界強度を安定させて画像形成を円滑に行うことができる上、感光体ドラム1の帯電電位を低く設定して感光体ドラム1に対する負荷を小さくし、感光体ドラム1の劣化を防止することができる。
【0050】
また、図6に示すように、感光体ドラム1の周速度vp(mm/sec)と、その感光体ドラム1の周方向における潜像書き込み解像度R(dot/mm)と、各進行波発生電極41bに対して印加される印加電圧の周波数f(Hz)とは、
vp×R>f
の関係を満たすように設定されている。
【0051】
これは、図6に示すように、感光体ドラム1の表面における静電潜像の空間周波数vp×R(dot/sec)と印加電圧の周波数fとの大小関係、印加電圧の周波数f、画像解像度Rおよび感光体ドラム1の周速度vpをそれぞれ変更して、周期的な濃度ムラの発生状態を検討した結果に基づくものである。つまり、図6において、静電潜像の空間周波数vp×R(dot/sec)と印加電圧の周波数fとが(vp×Rd>f)の関係を満たしているとき(図6の判定が○か◎となるとき)には、周期的な濃度ムラが良好もしくは非常に良好に抑えられているからである。なお、図6の結果は、下記の表2に示す実験条件に基づくものである。
【0052】
【表2】
これにより、感光体ドラム1の表面における静電潜像の空間周波数vp×R(dot/sec)よりも低い周波数fの印加電圧が各進行波発生電極41bに対して印加されることになる。
【0053】
これは、感光体ドラム1の表面における静電潜像の空間周波数vp×Rが進行波電界の周波数fよりも大きい場合に、各進行波発生電極41bに対して印加される印加電圧が最大値である場合と最小値である場合とでは、図9の(a)および(b)に示すように、感光体ドラム1の表面上の複数の画素単位で現像状態に差異が生じて周期的な現像濃度ムラが発生してしまうことになるが、各進行波発生電極41bに対して印加される印加電圧の周波数fを高くすれば、感光体ドラム1表面上の1つの画素が印加電圧の最大値と最小値とを経験して現像されるために各画素毎での現像濃度ムラは解消されるものの、電源のコストアップを招いてしまうという課題に基づくものである。そのため、トナー搬送部材41と感光体ドラム1との間の空隙dと各進行波発生電極41bの電極間ピッチλとが、d>λの関係を満たすように設定されていれば、トナー搬送部材41の表面に非常に近接した状態にある感光体ドラム1の表面において各進行波発生電極41b,41b間の電位分布がほとんど影響されないことから、感光体ドラム1の表面における静電潜像の空間周波数vp×Rよりも低い周波数fの印加電圧を各進行波発生電極41bに対して印加することによって、図7の(a)および(b)に示すように、現像濃度ムラのない均一で良好な画像形成を行うことができ、しかも、電源をコストダウンさせて安価に提供することもできることになる。
【0054】
そして、図8に示すように、各進行波発生電極41bに対して印加される印加電圧の平均値V1(V)と、感光体ドラム1の非画像部での帯電電位V0(V)と、トナー搬送部材41と感光体ドラム1との間の空隙d(m)とは、
|V0−V1|/d>104
の関係を満たすように設定されている。
【0055】
これは、図8に示すように、空隙dおよび各進行波発生電極41bに対する印加電圧Vをそれぞれ変更して、地カブリの発生状態を検討した結果に基づくものである。つまり、図8において、感光体ドラム1の非画像部での帯電電位V0と各進行波発生電極41bに対する印加電圧の平均値V1との差の絶対値をトナー搬送部材41と感光体ドラム1との間の空隙dで除した値、つまり不要なトナーをトナー搬送部材41側へ戻す電界強度|V0−V1|/dが104よりも大きいとき(図8の判定が○か◎となるとき)には、地カブリが良好もしくは非常に良好に抑えられているからである。なお、図8の結果は、下記の表3に示す実験条件に基づくものである。
【0056】
【表3】
これにより、進行波電界により搬送されるクラウド状態のトナーが感光体ドラム1の近傍に到達したときにその表面上の静電潜像の現像に供されなかったトナーが非画像部(非静電潜像部分)に付着したり、機内飛散しないように再びトナー搬送部材41上に不要なトナーを戻す作用の度合いが決定されることになる。つまり、感光体ドラム1の非画像部とトナー搬送部材41との間の電界がトナーTをトナー搬送部材41側へ戻す方向に与える力によって不要なトナーTをトナー搬送部材41側へ戻す作用の度合いが決定され、このとき、感光体ドラム1の非画像部での帯電電位V0と各進行波発生電極41bに対する印加電圧の平均値V1との差の絶対値をトナー搬送部材41と感光体ドラム1との間の空隙dで除した値が重要なファクタ(不要なトナーをトナー搬送部材41側へ戻す作用の度合い)となり、この値を104よりも大きく設定しておくことで、地カブリのない良好な画像形成を行うことができる。
【0057】
更に、このような現像装置4を画像形成装置Xに備えることで、感光体ドラム1の表面上で均一な濃度の像を現像し、かつ地カブリの少ない良好な画像形成を行い得る画像形成装置Xを提供することができる。
【0058】
なお、本発明は、上記実施形態で述べたように、所定の電荷を付与して帯電させた感光体ドラム上に光情報を書き込んだ静電潜像に限定されるものではなく、イオンフロー方式のように、誘電体上に直接静電荷潜像を形成するものや、トナージェット方式のように、複数の開口部を有する電極に対し任意の電圧を印加することで空間に静電像を形成して現像剤を記録媒体に飛翔させて直接画像形成を行うものにも適用可能である。
【0059】
【発明の効果】
以上のように、現像剤搬送部材と像担持体との間の空隙dを各電極の電極間ピッチλよりも大きな値に設定することで、現像時に電極間の電位分布のムラによる影響を少なくし、像担持体担持面上での均一な濃度の像を現像することができる上、像担持体の地カブリなどの発生を防止して良好な画像形成を行うことができる。
【0060】
加えて、像担持体の周速度vpと像担持体の潜像書き込み解像度Rとの積よりも低い周波数の印加電圧を各電極に対して印加することで、現像剤搬送部材と像担持体との間の空隙dを各電極の電極間ピッチλよりも大きな値に設定した条件下において電極間の電位分布による影響をなくし、現像濃度ムラのない良好な画像形成を行うことができ、かつ電源をコストダウンさせて安価に提供することもできる。
【0061】
また、各電極への印加電圧の平均値V1と像担持体の非画像部での帯電電位V0(V)との差の絶対値を現像剤搬送部材と像担持体との間の空隙dで除した値を104よりも大きく設定することで、担持面上の静電潜像の現像に供されなかった不要な現像剤を再び現像剤搬送部材上に戻す作用の度合いを決定でき、地カブリのない良好な画像形成を行うことができる。
【0062】
そして、各電極の電極間ピッチλを100μm〜1000μmに設定することで、相隣なる電極間でのリークの発生を防止し、電源をコストダウンさせて現像剤搬送部材の振動による騒音の発生を低減させることができる。
【0063】
また、現像剤搬送部材と像担持体との間の空隙dを0.1mm〜10mmに設定することで、像担持体の地カブリを防止し、現像電界強度を安定させて画像形成を円滑に行うことができる上、像担持体の帯電電位を低く設定して像担持体に対する負荷を小さくし、像担持体の劣化を防止することができる。
【0064】
更に、このような現像装置を画像形成装置に備えることで、像担持体の担持面上で均一な濃度の像を現像し、かつ地カブリの少ない良好な画像形成を行い得る画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係わる現像装置が適用される電子写真方式を用いた画像形成装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】現像装置の構成を示す模式図である。
【図3】トナー搬送部材の構成を示す模式図である。
【図4】トナー搬送部材に印加される電圧波形を示す波形図である。
【図5】現像剤搬送部材と像担持体との間の空隙および各電極の電極間ピッチの関係を規定する際の裏付けとなる判定結果を示す図である。
【図6】像担持体の周速度と像担持体の潜像書き込み解像度との積および各進行波発生電極への印加電圧の周波数の関係を規定する際の裏付けとなる判定結果を示す図である。
【図7】(a)は現像濃度ムラのない均一で良好な画像を示す説明図である。
(b)は(a)の一部を拡大した拡大図である。
【図8】トナーを戻す電界強度を規定する際の裏付けとなる判定結果を示す図である。
【図9】(a)は周期的な現像濃度ムラのある画像を示す説明図である。
(b)は(a)の一部を拡大した拡大図である。
【符号の説明】
1 感光体ドラム(像担持体)
4 現像装置
41 トナー搬送部材(現像剤搬送部材)
41a 基材
41b 進行波発生電極(電極)
41c 表面保護層
d 空隙
f 印加電圧の周波数
vp 感光体ドラムの周速度
λ 電極間ピッチ
A 現像領域
R 解像度
V0 感光体ドラムの非画像部での帯電電位
V1 印加電圧の平均値
X 画像形成装置
Claims (5)
- 静電潜像をその表面に担持している像担持体に対向する現像領域に固定した状態で配置し、基材上に所定間隔を存して複数配列された電極を表面保護層によって被覆してなる現像剤搬送部材を備え、各電極に対する多相電圧の印加により形成される進行波電界によって現像剤を現像剤搬送部材上で搬送するようにした現像装置において、
上記像担持体の周速度vp(mm/sec)と、
その像担持体の周方向における潜像書き込み解像度R(dot/mm)と、
上記各電極に対して印加される印加電圧の周波数f(Hz)とは、
vp×R>f
の関係を満たすように設定されているとともに、
上記現像剤搬送部材と像担持体との間の空隙d(m)と、
上記各電極の電極間ピッチλ(m)とは、
d>λ
の関係を満たすように設定されていることを特徴とする現像装置。 - 上記請求項1に記載の現像装置において、
各電極に対して印加される印加電圧の平均値V1(V)と、
像担持体の非画像部での帯電電位V0(V)と、
現像剤搬送部材と像担持体との間の空隙d(m)とは、
|V0−V1|/d>10 4
の関係を満たすように設定されていることを特徴とする現像装置。 - 上記請求項1または請求項2に記載の現像装置において、
各電極の電極間ピッチλ(m)は、
100μm〜1000μm
に設定されていることを特徴とする現像装置。 - 上記請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の現像装置において、
現像剤搬送部材と像担持体との間の空隙d(m)は、
0.1mm〜10mm
に設定されていることを特徴とする現像装置。 - 上記請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の現像装置を備えていることを特徴とする画像形成装置。
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