JP3715188B2 - 端子と電線の接続方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、端子の電線接続部の内周に複数条の凹凸を形成し、電線接続部を全周に渡って加締めることで、凹凸を電線の心線部等に食い込ませて、確実な電気的接触と固着力のアップを図った端子と電線の接続方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、端子に電線を接続する構造の一形態として、図11に示す如く、端子41の底板部の両側に立設した一対の圧着片42で電線44の端末の皮剥きされた心線部45を加締め圧着して、心線部45と圧着片42との接触を得るものがある。
【0003】
端子41は一方に丸形板状の電気接触部46、他方に電線接続部としての前記一対の心線圧着片42とその後側の一対の被覆圧着片43とを有している。被覆圧着片43は電線44の絶縁樹脂被覆を圧着して、心線圧着片42からの心線部45の抜け出しを防ぐものである。
【0004】
図12に圧着方法を示す如く、圧着治具である上側のクリンパ47と下側のアンビル48との間で一対の圧着片42を略眼鏡状に加締めて、心線部45の各素線を一対の圧着片42と底板部49との間で圧縮させる。
【0005】
しかしながら、上記圧着端子41による接続構造は小径の電線44には有効であるが、例えば大電流を流すシールド電線等の大径の電線に対しては、圧着片42と心線部45との接触面積が小さくなり、電気的抵抗が増大しやすい等の問題があった。また、クリンパ47とアンビル48との接点付近で圧着片42を底板部49から強く屈曲させるために、その屈曲部に応力が集中し、屈曲の仕方によっては端子41の機械的強度が低下するという問題があった。
【0006】
そこで、大径の電線に対しては、図13に示す如く、心線部を周方向等配に加締める形態の端子51が採用されている。この端子51は一方に筒状の電気接触部52、他方に筒状の電線接続部53を有し、電線接続部53に電線54の端末の皮剥きされた心線部を挿入した状態で、電線接続部52が周方向等ピッチで例えば六角形状に加締められる。電線54の被覆部55は電線接続部51の後方に隙間を存して位置する。前側の電気接触部52には相手側の雄端子(図示せず)が挿入やねじ込みにより接続される。
【0007】
この種の端子51と電線54の接続方法(接続構造)の一形態(特公昭50−43746号参照)を図14に示す。
この接続方法は、端子の円筒状の電線接続部に電線の心線部61を挿入した状態で、初期形状が円筒状の電線接続部62を上下一対のダイス63で六角形に加締めて、心線部61を電線接続部62内に密着させるものである。各ダイス63には三つの押圧面64と、各押圧面64の中央の突条65とが形成されている。突条65は六角形の電線接続部62の各外面の中央を径方向に押圧して、電線の心線部61と端子の電線接続部62との接触性を高める。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の接続構造においては、上下一対のダイス63を用いて端子の電線接続部61を加締めた際に、図15の如く心線部61の中心に向かう上下方向の加締力(内部応力)P1 が大きく作用し、左右両側における加締力(内部応力)P2 が減少しやすく、端子の電線接続部62の両側において心線部61の素線間の隙間や、心線部61と電線接続部62との間の隙間が生じやすくなるという問題があった。隙間を生じた場合には、電気抵抗が増大し、通電効率が落ちると共に、接続部が加熱するといった懸念があった。
【0009】
また、心線部61にアルミ材を用いた場合には、心線部61の表面の酸化皮膜が厚いために、それを破る必要があり、一対の圧着片42による部分加締接続や円筒状の電線接続部53による多角加締接続では、完全に酸化皮膜を除去することができず、それによって電気抵抗が増大し、電気的接続の信頼性が損なわれるという問題があった。
【0010】
また、図14でダイス63の突条65を大きく形成した場合には、突条65が電線の心線部61を六箇所で径方向に押圧するために、心線部61が断面亀の子状に変形し、端子の電線接続部62が各突条65による各凹部66の間、すなわち凸部67側で応力集中を起こし、心線部61の加締めが周方向に不均一になり、そのために心線部61の内部に隙間(各素線間の隙間)を生じやすくなると同時に、心線部61と端子の電線接続部62との間にも隙間を生じやすくなり、且つ、電線接続部62が応力集中によって亀裂を生じやすくなったりして、機械的強度が低下するという懸念があった。
【0011】
また、図13の端子51と電線54の接続構造においては、端子51の電線接続部53の内周面に電線54の心線部の各素線が長手方向に線接触で接しているために、加締による機械的強度が弱く、例えば電線54や端子51に強い引張力が作用した際に、心線部が電線接続部53から抜け出しやすいという懸念があった。
【0012】
本発明は、上記した点に鑑み、電線の心線部と端子の電線接続部及び心線部の各素線同士を隙間なく確実に接触させることができることは勿論のこと、たとえアルミニウム材等の酸化皮膜の厚い心線部を用いた場合でも、端子の電線接続部に低い電気抵抗で確実に接触させることができ、しかも電線や端子に強い引張力が作用した場合でも心線部が抜け出すことのない端子と電線の接続方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、円弧状の内周面を有する複数のダイスと、外周のカム面を有して該ダイスと一体に電線径方向に進退自在なバッカと、該ダイスとバッカを電線周方向に回転させるスピンドルと、該スピンドルと外側のリングとの間で該カム面に接する複数のローラとを備えたロータリスウェージ加工装置を用いて、端子と電線を接続させる端子と電線の接続方法であって、前記端子の筒状の電線接続部の周壁に心線係合部を設け、該心線係合部と該周壁の内面とが交差し、該電線接続部内に前記電線の心線部を挿入した状態で、前記ダイスの内周面で該電線接続部を全周に渡って均一に加締めつつ、該心線係合部内に該心線部を進入係合させることを特徴とする端子と電線の接続方法を採用する(請求項1)。
前記心線係合部を孔部ないしは溝部としたことも有効である(請求項2)。
また、前記心線係合部を前記電線接続部の周方向に複数配置したことも有効である(請求項3)。
また、前記交差部がエッジになっていることも有効である(請求項4)。
また、円弧状の内周面を有する複数のダイスと、外周のカム面を有して該ダイスと一体に電線径方向に進退自在なバッカと、該ダイスとバッカを電線周方向に回転させるスピンドルと、該スピンドルと外側のリングとの間で該カム面に接する複数のローラとを備えたロータリスウェージ加工装置を用いて、端子と電線を接続させる端子と電線の接続方法であって、前記端子の筒状の電線接続部の内周面に複数の凹凸を形成し、該電線接続部内に前記電線の心線部を挿入した状態で、前記ダイスの内周面で該電線接続部を全周に渡って均一に加締めつつ、該凹凸を該心線部に食い込ませることを特徴とする端子と電線の接続方法を併せて採用する(請求項5)。
前記凹凸を螺旋状の溝部と山部で構成したことも有効である(請求項6)。
また、前記凹凸の螺旋巻き方向を前記心線部の撚り方向とは逆にしたことも有効である(請求項7)。
また、前記凹凸を交差状の溝部と山部で構成したことも有効である(請求項8)。
また、前記電線の絶縁被覆を前記電線接続部の内周面の複数の凹凸で同時に加締固定することも有効である(請求項9)。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面を用いて詳細に説明する。
図1〜図3は、本発明における端子と電線の接続構造の第一の実施形態を示すものである。
【0015】
図1(a) は導電金属製の端子1に電線2の導体部である心線部3を挿入する状態を示している。端子1は一方に円筒状の相手端子接続部4、他方に円筒状のスリーブである電線接続部5を有し、両接続部4,5は小径の短円柱形の隔壁部6で連結されている。
【0016】
電線接続部5は環状の周壁19に複数の矩形スリット状の孔部(心線係合部)7を形成したことを特徴としている。周壁19は隔壁部6側の底壁28(図3)に続いている。スリット状の孔部7は電線接続部5の長手方向に真直に形成され、電線接続部5の前端と後端のそれぞれ手前側に孔部7の前端7aと後端7bが位置している。本実施形態で図2(a) の如く孔部7は180°方向に左右一対対称に設けられている。
【0017】
孔部7の数は三つ120°等配に配してもよく、四つ90°等配に配してもよい。孔部7を四つ以上設けることも可能であり、必ずしも等配に配さなくともよい。また、孔部7を電線接続部5の前後に分割して設けてもよく、千鳥状に配置してもよい。孔部7は一つでもよいが、複数あることが後述する心線部3の酸化皮膜除去の観点から好ましい。
【0018】
図2(a) の如く孔部7は円筒形の電線接続部5の中心に向けて貫通し、電線接続部5の内側の心線挿入孔8と連通し、且つ電線接続部5の内周面5a及び外周面5bとほぼ直交して、特に内周面5aとの交線が鋭いエッジ9となっている。エッジ9は図1(a) の如く矩形スリット状の孔部7の四辺に対応して前後左右に形成されている。
【0019】
電線接続部5の心線挿入孔8の入口には、心線部3を案内するテーパガイド面(図示せず)が形成されている。相手端子接続部4の内側には相手端子係合孔10が設けられ、例えば複数の弾性接触片を周上に有する相手端子(図示せず)が相手端子係合孔10に挿入されて、相手端子側の電線や補機等(図示せず)と電線2とが雌型で筒状の端子1を介して接続される。
【0020】
図1(b) ,図2(b) ,図3は、端子1の電線接続部5内に電線2の心線部3を挿入した状態で、電線接続部5を全周に渡って均等(均一)に径方向中心に向けて加締めた状態を示すものである。「全周に渡って」とは「電線接続部5の周壁19の外周面5bのどの部分も残らずに」という意味である。
【0021】
電線接続部5を全周に渡って加締めることで、電線接続部5が図2(b) の如く周方向に均一な力で加締められ、電線2の心線部3が全周に渡って均一な力で電線接続部5の内周面5a(図2(b) )に押接されて隙間なく確実に密着し、且つ心線部3を構成する各素線3a同士が隙間なく密着することは勿論のこと、矩形スリット状の孔部7のエッジ9で心線部3の表面の酸化皮膜が破られ、ないし削り取られて、心線部3の導電面(新生面)が電線接続部5に極めて低い電気抵抗で接触する。これは、心線部3にアルミ材等の酸化皮膜の厚い材料を用いた場合に特に効果的である。
【0022】
エッジ9による酸化皮膜の除去は主に電線接続部5を加締めていく途中において行われ、加締完了時には図2(b) ,図3の如くエッジ9がアール形状に湾曲して、この湾曲部11によって心線部3に無理な屈曲力を与えずに、心線部3が湾曲部11に隙間なく確実に密着する。これにより、心線部3の傷み、すなわち各素線3aの切断等が防止される。
【0023】
また、図2(b) の如く電線接続部5の外周において孔部7の開口7c(図2(a) )が内周側よりも縮幅し、これにより孔部7からの心線部3の外側へのはみ出しが防止される。電線接続部5の全周加締によって心線部3には全周に渡って中心に向かう均一な内部応力と外向きの反撥力とが働いている。また、孔部7内に心線部3の一部が入り込むことで、心線部3と電線接続部5との接触面積が増大し、これによっても電気抵抗が低減し、電気的接続の信頼性が高まる。
【0024】
なお、スリット状の孔部7に代えて、心線係合部として円形ないし長円形の孔部(図示せず)を形成したり、孔部7に代えて溝部(凹部)(図示せず)を形成することも可能である。溝部は電気接触部5の内周面5a側に形成されることは言うまでもない。孔部7や溝部の数が多い程、心線部3の酸化皮膜を剥がす部分の面積が増すため、電気性能の向上が期待できる。
【0025】
また、孔部のエッジは必ずしも鋭利なものではなく、電線の心線部の表面の酸化皮膜を全周加締時に破るないし除去できる程度のものであればよい。
孔部7を用いない電線接続部5の全周加締については別出願で提案している。
【0026】
図4は、別出願で提案した全周加締装置の一形態であるロータリスウェージ加工装置の加工部12を示すものである。
図4で、符号5は端子1(図1)の円筒状の電線接続部、3は電線2の心線部、13は外側のリング、14は回動自在のローラ、15は回転駆動されるスピンドル、16は径方向移動自在なバッカ(ハンマ)、17は同じく径方向移動自在なダイスをそれぞれ示す。
【0027】
スピンドル15は図示しないモータによって回転駆動される。ダイス17は四つ等配に配置され、電線径方向に移動自在である。各ダイス17の中央には端子の電線接続部5を挿入する円形の孔部18が構成されている。各ダイス17は外側のバッカ16と一体に電線径方向に移動自在である。バッカ16の外周面は山型状のカム面16aとなっている。ダイス17とバッカ16はスピンドル15と一体に回転する。バッカ16のカム面16aは外側のローラ14の外周に接し、ローラ14は内側のスピンドル15と外側のリング13との間で複数等ピッチに配置され、カム面16aないしスピンドル15の外周面とリング13の内周面とに回転自在に接している。
【0028】
モータ(図示せず)の駆動でスピンドル15が回転すると、ダイス15とバッカ16が矢印Cの如く一体に回動しつつ、バッカ16のカム面16aがローラ14の外周に摺接し、カム面16aの頂部がローラ14に接した際に四つのダイス17が矢印Dの如く閉じ、バッカ16とダイス17が遠心力で矢印Eの如く外側に移動しつつカム面16aの裾部がローラ14に接することで四つのダイス17が開く。このようにして四つのダイス17が回動しながら開閉する。
【0029】
ダイス17が閉じた時に、端子の電線接続部5が各ダイス17の円弧状の内周面(符号18で代用)で叩かれて径方向に圧縮され、ダイス17が開いた時に、ダイス17の内周面18と端子の電線接続部5の外周面との間に隙間が生じる。このダイス17の回転と開閉との繰り返しによって、電線2の心線部3が端子1の電線接続部5でほぼ真円形状に加締められる。
【0030】
端子1(図1)に対してダイス17が回転しながら電線接続部5を径方向に圧縮するから、電線接続部5にバリ等が発生せず、電線接続部5の外周面5bが綺麗になると同時に、電線接続部5が周方向に均一な力で加締められ、心線部3と電線接続部5の内部応力が均一化し、心線部3を構成する各素線3a間の隙間や、心線部3と電線接続部5との間の隙間の発生が防止される。
【0031】
なお、ダイス17及びバッカ16は四つではなく、二つであってもよく、この場合、二つのダイス17は180°方向に対称に配置される。また、端子1の電線接続部5を全周に渡って均一に加締める手段は上記ロータリスウェージ加工装置に限るものではなく、他の加工装置(図示せず)であってもよい。
ロータリスウェージ加工においては例えば断面積20sq程度の電線2と板厚2.2mm程度の端子1が使用されるが、ダイス17等を変えることで、断面積0.3sq程度の電線と板厚0.25mm程度の端子にも対応可能である。
【0032】
図5〜図8は、本発明における端子と電線の接続構造の第二の実施形態を示すものである。
図5は、端子21の円筒状の電線接続部22の周壁30内に電線2の心線部3を挿入して電線接続部22を全周に渡って加締めた状態を示す外観図であり、前記実施形態のようなスリット状の孔部7(図1)を形成せずに、例えば図6,図7に示すような螺旋状の凹凸の一形態である雌ねじ23や、図8に示す交差状の凹凸の一形態であるローレット目24を電線接続部22,22′の周壁30,30′の内周面に形成することで、心線部3と電線接続部22,22′との固着力や密着力のアップを図ったものである。
【0033】
雌ねじ23は螺旋状の複数の凹凸である山部23aと溝部(谷部)23bで構成され、ローレット目24は交差状の複数の凹凸である山部と溝部(谷部)で構成されている。山部23aと溝部23bとは交互に配置されている。
【0034】
図5で、符号4は第一の実施形態と同様の相手端子接続部、6は両接続部4,22を連結する隔壁部を示す。電線接続部22の後端と電線2の絶縁被覆20の前端との間には若干の隙間が存在している。
【0035】
図6で、電線接続部22は全周に渡って加締められ、心線部3の外周側の各素線3aは雌ねじ23の山部23aに食い込まれて、径方向に弾性及び塑性変形を起こしている。これにより、心線部3が電線接続部22の内周面に強固に密着し、電線2や端子21の引張抗力等の機械的強度がアップすると共に、心線部3の外側の各素線3aの酸化皮膜が破られて、あるいは削り取られて、心線部3と電線接続部22とが低い電気抵抗で確実に接触する。
【0036】
心線部3にアルミ材(アルミ合金)を用いた場合でも、厚い酸化皮膜が雌ねじ23の比較的鋭い山部23aの先端で確実に破られて、あるいは全周加締時に電線接続部22が長手方向に延びると同時に厚い酸化皮膜が雌ねじ23の山部23aの先端で削り取られて、電気的接触性が高まる。各素線3aは雌ねじ23の形状に沿って変形し、雌ねじ23の各山部23aと谷部23bとに隙間なく密着する。これにより、心線部3と電線接続部22との接触面積が増大し、これによっても電気抵抗が低減し、電気的接続の信頼性が高まる。雌ねじ23の山部23aは全周加締により電線接続部22が長手方向に伸長するに伴って少し低くなだらかになる。且つ、山部23aの先端が比較的鋭いとはいっても、刃部とは違って山型に傾斜しているから、素線3aが切断される心配はない。
【0037】
雌ねじ23のねじ切り方向は心線部3の撚り方向とは逆にすることが好ましい。例えば心線部3の各素線3aが右方向に撚られている場合は、左ねじの雌ねじ23を形成した端子を用い、心線部3の各素線3aが左方向に撚られている場合は、右ねじの雌ねじ23を形成した端子を用いる。撚りのない心線部3に対しては左右何れの雌ねじ23を用いても構わない。
【0038】
心線部3の撚り方向に対して交差するように雌ねじ23を形成することで、各素線3aと雌ねじ23の山部23aとが交差した状態で押圧・密着され、上記素線3aへの山部23aの食い込みが確実に且つ強力に行われ、上記効果が一層顕著に発揮される。勿論、心線部3の撚り方向と雌ねじ23の切り方向とが同一であっても、上記効果が発揮されることは言うまでもない。ねじ切りはタッピング加工等によって簡単に行われる。ねじ切りは電線接続部22の入口側に電線挿入孔26の半分程度の長さに加工されれば十分に効果を発揮させ得る。
【0039】
なお、雌ねじ23に代えて螺旋状の比較的鋭利な山部や、非連続な同心円状の比較的鋭利な山部を形成することも有効である。雌ねじ23や螺旋状の山部は電線接続部22の電線挿入孔26の内周面に螺旋状の断面三角形の溝を形成することで構成されるが、螺旋状の溝は広いピッチで形成されたものでもよく、あるいは非連続であってもよい。また、溝の形状は断面三角形に限らず、断面矩形状であってもよい。
【0040】
雌ねじ23に代わる図8の網目状のローレット目24は心線部3の撚り方向に関係なく強い密着力と固着力を発揮させ得るものである。ローレット目24は複数の傾斜状(網目状)の溝をクロスして形成することで構成され、上記雌ねじ23と同様に各溝のピッチは狭く、比較的鋭利な先端の山部が構成されていることが好ましい。ローレット目24は例えば外周にクロス状の山部を有する円柱状の金属治具(図示せず)を円筒状の電線接続部22′の周壁30′の心線挿入孔27の内周面に強く押し付けつつ、端子ないし金属治具を回転させることで簡単に形成される。図6はローレット目24を形成した電線接続部22′に電線2の心線部3を全周加締した状態と見ることもできる。
【0041】
ローレット目24を有する電線接続部22′内に心線部3を挿入した状態で図6と同様に電線接続部22′を全周に渡って縮径方向に加締めることで、ローレット目24の山部が心線部3の外周側の素線3aの酸化皮膜を破って、心線部3の新生面が電線接続部22′の内周面に密着する。また、ローレット目24の山部が心線部外周側の素線3aに食い込むことで、心線部3と電線接続部22′との保持力が増し、耐引張性すなわち機械的強度が高まる。これらの作用効果は上記雌ねじ23の場合と同様であるが、ローレット目24が交差しているから、雌ねじ23や螺旋溝の倍の数の山部で、すなわち一層広い接触面積で心線部3が電線接続部22′に接触し、電気抵抗が一層低減されると共に、固着強度が倍加される。
【0042】
ローレット目24の形成範囲は電線接続部22′の心線挿入孔27の全長に渡っていてもよく、あるいは心線挿入孔27の入口側の半分程度の長さに形成されていてもよい。交差状のローレット目24の各山部のピッチを広く設定することも可能である。
【0043】
図9〜図10は、本発明における端子と電線の接続構造の第三の実施形態を示すものである。
この構造は、上記第二の実施形態とほぼ同様に端子31の円筒状の電線接続部32の周壁35の内周面に雌ねじ状や螺旋状やローレット目状等の複数の凹凸33を形成したものであるが、電線2の絶縁被覆20を心線部3と一緒に電線接続部(電線接合部)32の電線挿入孔34内に挿入した状態で、電線接続部32を全周に渡って加締めて、電線接続部32の内側に電線2の絶縁被覆20を心線部3と同時に加締固定したものである。この構成は端子と電線の接続方法としても有効である。加締加工は例えば前述のロータリスウェージ加工装置で行われる。
【0044】
図9の如く、電線2の合成樹脂製ないし合成ゴム製の絶縁被覆20が端子31の円筒状の電線接続部32の先端部32a側で加締められて、電線接続部32の内周面と絶縁被覆20の外周面とが隙間なく密着している。
【0045】
図10の如く、電線接続部32の挿入孔34の内周側には螺旋状や交差状等の複数の凹凸33が全周に渡って形成され、電線接続部32の入口側にも短い環状の周面部(符号34で代用する)と、周面部に続く凹凸33とが形成されている。凹凸は溝部(谷部)33bと山部33aで構成されている。
【0046】
電線2の絶縁被覆20は凹凸33の複数の山部33aによって電線中心に向けて径方向に押圧され、全周に渡って強く圧縮されている。それによって可撓性ないし弾性の絶縁被覆20がしっかりと抜け出しなく固定されている。これにより、端子31と電線2との接続部の耐引張強度や耐捩り強度すなわち固着力が高まり、心線部3が電線接続部32から一層抜け出しにくくなると共に、心線部3が電線接続部32内に密封されて、電線2と端子31との接続部の防水性が向上し、心線部3への水や塵等の侵入や心線部の酸化等が防止される。
【0047】
絶縁被覆20に対応する電線接続部32の内径を心線部3に対応する部分よりも少し大径に設定することも可能である。第二の実施形態と同様に、心線部3は電線接続部32の内周面側の凹凸33すなわち比較的鋭利な先端を有する複数の環状ないし螺旋状の山部33aで酸化皮膜を破られて、低い電気抵抗で確実に接触すると共に、耐引張強度や耐捩り強度がアップする。本実施形態においては心線部3と絶縁被覆20との両方が電線接続部32の凹凸面で加締められるから、第二の実施形態よりも一層、耐引張強度及び耐捩り強度がアップする。
【0048】
なお、電線2の絶縁被覆20に対応する電線接続部32の内周部分を凹凸33のない面で構成し、電線接続部32の全周に渡る加締加工で凹凸33のない面を絶縁被覆20に強く押接・密着させることも可能である。この場合でも、心線部3に対応する電線接続部32の内周部分には凹凸33が形成されることは言うまでもない。
【0049】
なお、上記各実施形態において端子1,21,31の電線接続部5,22,32を完全な円筒形ではなく多角形に形成し、特に電線接続部5,22,32の外周面を多角形(角数が多い程、すなわち断面円形に近いほど良い)として、全周加締において角が潰れて断面ほぼ円形ないし完全な円形となるように構成することも可能である。この場合でも電線接続部5,22,32の外周面は全周に渡って全ての面が残らず電線径方向に圧縮されることが必要である。
上記各端子と電線の接続構造は端子単体の発明として、あるいは端子と電線の接続方法としても有効である。
【0050】
【発明の効果】
以上の如く、請求項1記載の発明によれば、端子の電線接続部を全周に渡って径方向に加締めることで、電線の心線部の外側の部分が心線係合部内に進入係合し、その際に心線部の表面の酸化皮膜が心線係合部の内側の周端縁、すなわち周壁の内面と心線係合部との交差部によって破られ、あるいは加締による塑性変形(心線係合部の内側の周端縁の移動)で削り取られて、心線部の新生面と端子の電線接続部とが低い電気抵抗で確実に接触する。これにより、例えばアルミ材といった酸化皮膜の厚い金属材を心線部として用いた場合でも、低い電気抵抗で確実な且つ安定した電気性能が得られる。また、心線部の一部が心線係合部内に進入係合することで、心線部が端子の電線接続部に強固に固定され、電線や端子に強い引張力が作用した場合でも、電線接続部からの心線部の抜け出しが防止される。これらにより、電気的接続の信頼性が向上する。また、筒状の電線接続部を全周に渡って径方向に加締めることで、電線接続部の径方向中心に向かう内部応力が全周に渡って均一化し、電線接続部と心線部との隙間や心線部間の各素線間の隙間がなくなり、それによって電気的接触性が向上することは言うまでもない。
【0051】
また、請求項2記載の発明によれば、心線係合部としての孔部はダイスやパンチ等を用いた打抜き加工で容易に形成することができる。また、心線係合部としての溝部は電線接続部を径方向外側に貫通しないから、電線接続部内が密閉されて外部からの水等の侵入が防止され、心線部の酸化が抑止される。
【0052】
また、請求項3記載の発明によれば、心線係合部が周方向に複数配置されることで、心線部の新生面と電線接続部との接触面積が拡大し、請求項1記載の発明の効果である電気的接続性の向上や電線接続部への心線部の固定力の増大が一層助長される。
【0053】
また、請求項4記載の発明によれば、心線部の表面の酸化皮膜が心線係合部のエッジによって確実に破られ、あるいは確実に削り取られて、請求項1記載の発明に効果である酸化皮膜の厚い金属材を心線部として用いた場合における電気的接触性の向上が一層助長される。
【0054】
また、請求項5記載の発明によれば、電線接続部の複数の凹凸が心線部に食い込むことで、心線部の表面の酸化皮膜が破られ、あるいは加締変形時の凹凸の移動で削り取られて、心線部の新生面が電線接続部に低い電気抵抗で確実に接触し、電気的接続の信頼性が向上する。それと同時に、凹凸が心線部に食い込むことで、電線接続部への心線部の固着力が高まり、端子や電線に強い引張力が作用した場合でも、心線部の抜け出しが確実に防止され、それによっても電気的接続の信頼性が向上する。
【0055】
また、請求項6記載の発明によれば、螺旋状の溝部と山部として例えば雌ねじを形成することで、凹凸の形成を容易に且つ安価に行うことができる。複数の凹凸である螺旋状の複数の溝部と山部は心線部の全周に均一に食い込んで接触し、電気的接触性を向上させる。
【0056】
また、請求項7記載の発明によれば、心線部が撚られている場合に、撚り方向とは反対の巻き方向の雌ねじを形成することで、心線部の外周側の各素線と山部とが交差して押接し、心線部が全周に渡って均一に且つ確実に電線接続部に接触する。これにより、電気的接続の信頼性が向上する。
【0057】
また、請求項8記載の発明によれば、交差状の山部と溝部によって心線部の巻き方向に関係なく心線部の全周に渡って安定した電気的接触を得ることができる。また、螺旋状の凹凸に較べて山部のピッチが同じであれば、電線接続部に対して心線部の新生面が二倍の接触面積を得ることができ、一層低い電気抵抗で一層安定した電気的接触を得ることができる。また、請求項9記載の発明によれば、心線部が電線接続部内に密封されて、電線と端子との接続部の防水性が向上し、心線部への水や塵等の侵入や心線部の酸化等が防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明における端子と電線の接続構造の第一の実施形態を示し、(a) は接続前の状態、(b) は接続後の状態を示す斜視図である。
【図2】 (a) は図1(a) のA−A断面図、(b) は図1(b) のA′−A′断面図である。
【図3】図1(b) のB−B断面図である。
【図4】端子と電線の接続方法で使用する全周加締装置の加工部の一形態を示す正面図である。
【図5】 本発明における端子と電線の接続構造の第二の実施形態の外観を示す斜視図である。
【図6】図5のF−F断面図である。
【図7】同じく端子の電線接続部の内周面の凹凸形状を示す断面図である。
【図8】端子の電線接続部の内周面の凹凸形状の他の実施形態を示す断面図である。
【図9】 本発明における端子と電線の接続構造の第三の実施形態の外観を示す斜視図である。
【図10】同じく端子と電線の接続(接合)状態を示す断面図である。
【図11】従来の端子と電線の接続構造の一形態を示す平面図である。
【図12】同じく端子と電線の接続方法を示す断面図である。
【図13】従来の端子と電線の接続構造の他の形態を示す平面図である。
【図14】従来の端子と電線の接続方法の一形態を示す断面図である。
【図15】従来の接続方法の問題点を示す説明図である。
【符号の説明】
1,21,31 端子
2 電線
3 心線部
5,22,22′,32 電線接続部
7 孔部(心線係合部)
9 エッジ
19 周壁
20 絶縁被覆部
23 雌ねじ(凹凸)
23a 山部
23b 溝部(谷部)
24 ローレット目(凹凸)
33 凹凸
Claims (9)
- 円弧状の内周面を有する複数のダイスと、外周のカム面を有して該ダイスと一体に電線径方向に進退自在なバッカと、該ダイスとバッカを電線周方向に回転させるスピンドルと、該スピンドルと外側のリングとの間で該カム面に接する複数のローラとを備えたロータリスウェージ加工装置を用いて、端子と電線を接続させる端子と電線の接続方法であって、
前記端子の筒状の電線接続部の周壁に心線係合部を設け、該心線係合部と該周壁の内面とが交差し、該電線接続部内に前記電線の心線部を挿入した状態で、前記ダイスの内周面で該電線接続部を全周に渡って均一に加締めつつ、該心線係合部内に該心線部を進入係合させることを特徴とする端子と電線の接続方法。 - 前記心線係合部を孔部ないしは溝部としたことを特徴とする請求項1記載の端子と電線の接続方法。
- 前記心線係合部を前記電線接続部の周方向に複数配置したことを特徴とする請求項1又は2記載の端子と電線の接続方法。
- 前記交差部がエッジになっていることを特徴とする請求項1〜3の何れか記載の端子と電線の接続方法。
- 円弧状の内周面を有する複数のダイスと、外周のカム面を有して該ダイスと一体に電線径方向に進退自在なバッカと、該ダイスとバッカを電線周方向に回転させるスピンドルと、該スピンドルと外側のリングとの間で該カム面に接する複数のローラとを備えたロータリスウェージ加工装置を用いて、端子と電線を接続させる端子と電線の接続方法であって、
前記端子の筒状の電線接続部の内周面に複数の凹凸を形成し、該電線接続部内に前記電線の心線部を挿入した状態で、前記ダイスの内周面で該電線接続部を全周に渡って均一に加締めつつ、該凹凸を該心線部に食い込ませることを特徴とする端子と電線の接続方法。 - 前記凹凸を螺旋状の溝部と山部で構成したことを特徴とする請求項5記載の端子と電線の接続方法。
- 前記凹凸の螺旋巻き方向を前記心線部の撚り方向とは逆にしたことを特徴とする請求項6記載の端子と電線の接続方法。
- 前記凹凸を交差状の溝部と山部で構成したことを特徴とする請求項5記載の端子と電線の接続方法。
- 前記電線の絶縁被覆を前記電線接続部の内周面の複数の凹凸で同時に加締固定することを特徴とする請求項5記載の端子と電線の接続方法。
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